(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078078
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント基板およびフレキシブルプリント基板の接続構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20240603BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H05K1/14 G
H05K1/14 H
H05K3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190416
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 昌功
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 隼輔
【テーマコード(参考)】
5E344
【Fターム(参考)】
5E344AA02
5E344AA22
5E344BB02
5E344BB05
5E344CC23
5E344CD04
5E344DD06
5E344EE06
(57)【要約】
【課題】沿面フラッシュオーバーを良好に防止することが可能なフレキシブルプリント基板およびフレキシブルプリント基板の接続構造を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント基板10は、基材20と、基材20の表面21側に配置される第1導体層30Aと、第1導体層30Aの第1配線31Aを外部導体と電気的に接続するための複数の第1端子41Aを備える第1端子部40Aと、基材20の裏面22側に配置される第2導体層30Bと、第2導体層30Bの第2配線31Bを外部導体と電気的に接続するための複数の第2端子41Bを備える第2端子部40Bと、を備え、第1端子部40Aの配列方向の最も外部側の第1端子41Aである第1最外端子41A1と、第2端子部40Bの配列方向の最も外部側の第2端子41Bである第2最外端子41B1との間には、基材20の縁部を経由して、沿面フラッシュオーバーを抑制する抑制間隔S1が存在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を有する材質から形成されている基材と、
前記基材の表面側に配置され、複数の第1配線を備える第1導体層と、
前記第1導体層の接続端部側に配置され、前記第1導体層の前記第1配線を外部導体と電気的に接続するための複数の第1端子を備える第1端子部と、
前記基材の裏面側に配置され、複数の第2配線を備える第2導体層と、
前記第2導体層の接続端部側に配置され、前記第2導体層の前記第2配線を外部導体と電気的に接続するための複数の第2端子を備える第2端子部と、
を備え、
前記第1端子部の配列方向の最も外部側の第1端子である第1最外端子と、前記第2端子部の前記配列方向の最も外部側の第2端子である第2最外端子との間には、前記基材の縁部を経由して、沿面フラッシュオーバーを抑制する抑制間隔が存在している、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
請求項1記載のフレキシブルプリント基板であって、
前記抑制間隔は、2mm以上である、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
請求項1記載のフレキシブルプリント基板であって、
前記第1導体層は、少なくとも一部が第1絶縁層で覆われていて、
前記第2導体層は、少なくとも一部が第2絶縁層で覆われていて、
前記第1絶縁層の前記配列方向の端部側と、前記第2絶縁層の前記配列方向の端部側の少なくとも一方には、前記接続端部側に向かって突出する絶縁突出部が設けられている、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
請求項1記載のフレキシブルプリント基板であって、
前記第1端子部には、外部導体および前記第1配線とは電気的に導通しない第1ダミー端子が前記抑制間隔を前記接続端部に向かって延伸する状態で設けられていて、
前記第2端子部には、外部導体および前記第2配線とは電気的に導通しない第2ダミー端子が前記抑制間隔を前記接続端部に向かって延伸する状態で設けられている、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板であって、
前記第1端子部と前記第2端子部とは、前記基材を挟んで鏡像対称に設けられている、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板と、
主材となる接着剤と、当該接着剤中に分散されている多数の導電粒子とを含む異方性導電接着剤層と、複数の接続端子を備える配線層とを備える接続部材とを備え、
前記接続端子は、前記導電粒子を介して前記第1端子または前記第2端子と電気的に接続されると共に、隣接する前記第1端子または隣接する前記第2端子に対しては、電気的な絶縁性を確保している、
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板およびフレキシブルプリント基板の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板と、他のフレキシブルプリント基板を接続するための接続構造としては、たとえば、特許文献1に開示されているような、違法性導電膜(Antisotropic Conductive Film;ACF)を用いたものがある。特許文献1に開示の構成では、第1のフレキシブルプリント配線板(5)の接続電極(9a,10a)と、第2のフレキシブルプリント配線板(11)の接続電極(15a,16a)とを、異方導電性接着剤層(4)を備える接続部材(1)を介して接続している。
【0003】
この接続においては、接続部材(1,1)の異方導電性接着剤層(4)を上記接続電極(9a,10a,15a,16a)を含む領域に掛け渡し状に重ね合わせた後、第1のフレキシブルプリント配線板(5)および第2のフレキシブルプリント配線板(11)と、接続部材(1)とを、所定の温度及び圧力で挟み込む。それにより、導電性粒子が、接続部材(1)の接続配線(3a)と、接続電極(9a,10a,15a,16a)間に噛み込まれ、各接続配線と各接続電極とが、厚み方向に導通させられる。また、異方導電性接着剤層(4)を構成する異方導電性接着剤が流動させられて、接続電極(9a,10a,15a,16a)の間に充填され、接続部材(1,1)と第1及び第2のフレキシブルプリント配線板(5,11)が接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の構成では、接続電極(9a,10a,15a,16a)の端部側では、表面の最も外部側(端部側)に配置された端子と、裏面の最も外部側(端部側)に配置された端子の間で、沿面フラッシュオーバーを生じさせてしまう懸念がある。この沿面フラッシュオーバーは、たとえば導電性接着剤が端部側に向かって過度に流れ出す等が、その原因となり得る。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、沿面フラッシュオーバーを良好に防止することが可能なフレキシブルプリント基板およびフレキシブルプリント基板の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、電気的な絶縁性を有する材質から形成されている基材と、基材の表面側に配置され、複数の第1配線を備える第1導体層と、第1導体層の接続端部側に配置され、第1導体層の第1配線を外部導体と電気的に接続するための複数の第1端子を備える第1端子部と、基材の裏面側に配置され、複数の第2配線を備える第2導体層と、第2導体層の接続端部側に配置され、第2導体層の第2配線を外部導体と電気的に接続するための複数の第2端子を備える第2端子部と、を備え、第1端子部の配列方向の最も外部側の第1端子である第1最外端子と、第2端子部の配列方向の最も外部側の第2端子である第2最外端子との間には、基材の縁部を経由して、沿面フラッシュオーバーを抑制する抑制間隔が存在している、ことを特徴とするフレキシブルプリント基板が提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、抑制間隔は、2mm以上である、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1導体層は、少なくとも一部が第1絶縁層で覆われていて、第2導体層は、少なくとも一部が第2絶縁層で覆われていて、第1絶縁層の配列方向の端部側と、第2絶縁層の配列方向の端部側の少なくとも一方には、接続端部側に向かって突出する絶縁突出部が設けられている、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1端子部には、外部導体および第1配線とは電気的に導通しない第1ダミー端子が抑制間隔を接続端部に向かって延伸する状態で設けられていて、第2端子部には、外部導体および第1配線とは電気的に導通しない第2ダミー端子が抑制間隔を接続端部に向かって延伸する状態で設けられている、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1端子部と第2端子部とは、基材を挟んで鏡像対称に設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の第2の観点によると、上述の各発明に係るフレキシブルプリント基板と、主材となる接着剤と、当該接着剤中に分散されている多数の導電粒子とを含む異方性導電接着剤層と、複数の接続端子を備える配線層とを備える接続部材とを備え、接続端子は、導電粒子を介して第1端子または第2端子と電気的に接続されると共に、隣接する第1端子または隣接する第2端子に対しては、電気的な絶縁性を確保している、ことを特徴とするフレキシブルプリント基板の接続構造が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、沿面フラッシュオーバーを良好に防止することが可能なフレキシブルプリント基板およびフレキシブルプリント基板の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すフレキシブルプリント基板の構成を示す下面図である。
【
図3】
図1に示すフレキシブルプリント基板の構成を示すと共に、線および端子に沿ってY方向に切断した状態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示すフレキシブルプリント基板において、第1導体層と第2導体層のうちの少なくとも一方の複数の配線が、1本の配線から分岐しているような櫛歯形状に設けられている構成を示す平面図である。
【
図5】
図1に示すフレキシブルプリント基板において、基材の外縁側に抑制間隔が存在する状態を示す図である。
【
図6】
図1に示すフレキシブルプリント基板が接続される接続部材の構成を示す断面図である。
【
図7】
図6に示す接続部材において、異方性導電接着剤層の異方導電性接着剤が流れ出すイメージを示す図である。
【
図8】第2構成例に係るフレキシブルプリント基板を示す平面図である。
【
図9】第2構成例に係るフレキシブルプリント基板を示す下面図である。
【
図10】
図8において第1絶縁突出部および第2絶縁突出部を配列方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図11】第3構成例に係るフレキシブルプリント基板を示す平面図である。
【
図12】第3構成例に係るフレキシブルプリント基板を示す下面図である。
【
図13】第3構成例に係るフレキシブルプリント基板を用いたフレキシブルプリント基板の接続構造に関して、第1ダミー端子および第2ダミー端子を配列方向で切断した状態を示す断面図である。
【
図14】本発明の変形例に係り、第1絶縁突出部および第2絶縁突出部に代えて、第1基材突出部および第2基材突出部が設けられている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板10およびフレキシブルプリント基板の接続構造11について、図面に基づいて説明する。以下の説明では、
図1における配線および端子の並びの方向(配列方向)をX方向とし、X1側は
図1における紙面右側、X2側は
図1における紙面左側とする。また、
図1における配線および端子の延伸方向をY方向とし、Y1側は
図1における紙面手前側、Y2側は
図1における紙面奥側とする。また、Z方向は
図2に示すフレキシブルプリント基板10の厚み方向とし、Z1側は
図3における上側、Z2側は
図3における下側とする。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板10の構成を示す平面図であり、
図2は、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板10の構成を示す下面図である。また、
図3は、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板10の構成を示すと共に、配線および端子に沿ってY方向に切断した状態を示す断面図である。
【0017】
<フレキシブルプリント基板置の構成について>
図1から
図3に示すように、フレキシブルプリント基板10は、基材20と、第1導体層30Aと、第2導体層30Bと、第1端子部40Aと、第2端子部40Bと、第1絶縁層50Aと、第2絶縁層50Bとを主要な構成要素としている。また、第1端子部40Aの第1最外端子41A1と、第2端子部40Bの第2最外端子41B1との間には、抑制間隔S1が存在している。以下、これらの構成について、説明する。
【0018】
基材20は、たとえばフィルム状の部材であり、その材質は、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートのような、電気的な絶縁性を有し、可撓性を備えるものから形成されている。この基材20の表面21には、第1導体層30Aが積層されていると共に、基材20の裏面22には、第2導体層30Bが積層されている。
【0019】
第1導体層30Aおよび第2導体層30Bは、たとえば銅箔等のような導電性を有する材質から形成されている。この第1導体層30Aおよび第2導体層30Bには、たとえばエッチング等の通常のフォトファブリケーション手法を用いた所定の工程を経ることで、複数の第1配線31Aおよび複数の第2配線31Bが形成されている。
【0020】
これら第1導体層30Aと第2導体層30Bとは、基材20を挟んで鏡像対称に設けられていても良いが、鏡像対称には設けられていなくても良い。また、
図4に示すように、第1導体層30Aと第2導体層30Bのうちの少なくとも一方の複数の配線31A,31Bが、1本の配線から分岐しているような櫛歯形状に設けられていても良い(この部分を櫛歯端子部43Aとする。)。なお、
図4においては、基材20の表面21側に櫛歯端子部43Aが設けられている構成を示しているが、基材20の裏面22側に同様の櫛歯端子部が設けられる構成を採用することができることは勿論である。
【0021】
また、基材20の表面21側の接続端部20E側(本実施の形態ではY1側とする)には、第1端子部40Aが設けられている。同じく、基材20の裏面22側の接続端部20E側(Y1側)には、第2端子部40Bが設けられている。これら第1端子部40Aと第2端子部40Bにも、上述した第1導体層30Aおよび第2導体層30Bと同様に、たとえばエッチング等の通常のフォトファブリケーション手法を用いた所定の工程を経ることで、複数の第1端子41Aおよび複数の第2端子41Bが形成されている。
【0022】
ここで、複数の第1端子41Aのうち、その第1端子41Aの配列方向(X方向)の最も外部側の端子を、第1最外端子41A1とする。同様に、複数の第2端子41Bのうち、その第2端子41Bの配列方向(X方向)の最も外部側の端子を第2最外端子41B1とする。
【0023】
この第1最外端子41A1と第2最外端子41B1の間には、抑制間隔S1が存在している。具体的には、
図5に示すように、第1最外端子41A1のうち隣接する第1端子41Aが存在しない側の側面と、第2最外端子41B1のうち隣接する第2端子41Bが存在しない側の側面との間には、基材20の側面23を経由する状態で、抑制間隔S1が存在している。
【0024】
この抑制間隔S1は、第1最外端子41A1と第2最外端子41B1の間で、電気的な短絡が生じる、いわゆる沿面フラッシュオーバーを防止するための間隔となっている。この抑制間隔S1は、その寸法を大きくすればするほど、沿面フラッシュオーバーを効果的に抑制可能である。しかしながら、抑制間隔S1をあまりにも大きくしてしまうと、フレキシブルプリント基板10の大型化を招いてしまう。このため、第1端子41Aおよび第2端子41Bに、100~300Vほどの高電圧を印加する場合においては、後述する異方性導電接着剤層130からの若干の流れ出しを考慮して、抑制間隔S1は、2mm程度とするのが好適である。しかしながら、抑制間隔S1は、その他の寸法に設定することも可能である。具体的には、2mm~5mmの範囲とすることが可能である。
【0025】
また、
図1から
図4に示すように、第1導体層30Aは、少なくとも一部(
図1では、ほぼこれらの全体)が、第1絶縁層50Aで覆われている。同じく、第2導体層30Bは、少なくとも一部(
図2では、ほぼこれらの全体)が、第2絶縁層50Bで覆われている。第1絶縁層50Aおよび第2絶縁層50Bは、たとえばエポキシ系の接着材のような、第1配線31Aや第2配線31Bの間に入り込むと共に、電気的な絶縁性を有する材質から形成されることが好ましい。しかしながら、第1絶縁層50Aおよび第2絶縁層50Bは、電気的な絶縁性を有するものであれば、その他の材質から形成されても良い。
【0026】
なお、第1絶縁層50Aおよび第2絶縁層50Bは、上記の接着材以外に、カバー層を備える構成であっても良い。このようなカバー層としては、フィルム状のLCP(Liquid Crystal Polymer)や、フィルム状のポリイミドを挙げることが可能である。
【0027】
<接続部材100について>
次に、接続部材100について説明する。
図6は、接続部材100の構成を示す断面図である。
図6に示すように、接続部材100は、基材110と、配線層120と、異方性導電接着剤層130とを備えている。これらのうち、基材110は、上述の基材20と同様に、たとえばフィルム状の部材であり、その材質は、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートのような、電気的な絶縁性を有し、可撓性を備えるものから形成されている。なお、基材110は、可撓性を備えるものには限られず、硬質のリジット基板であっても良い。
【0028】
また、配線層120には、上述した第1導体層30Aおよび第2導体層30Bと同様に、たとえば銅箔等のような導電性を有する材質に対し、エッチング等の通常のフォトファブリケーション手法を用いた所定の工程を経ることで、複数の接続端子121が形成されている。この接続端子121は、異方性導電接着剤層130の導電粒子を介して、第1端子41Aまたは第2端子41Bと電気的に接続される。それにより、フレキシブルプリント基板10は、接続部材100を介して、外部の電気部品の端子と電気的に接続可能となる。
【0029】
また、異方性導電接着剤層130は、上述した基材110および配線層120に対し、ペースト状の異方導電性接着剤を所定の厚みとなる状態で塗着することで形成されている。この異方性導電接着剤層130の元となる異方導電性接着剤は、熱硬化性エポキシ樹脂を主剤とする接着剤成分中に、導電性粒子が分散配合されることで形成されている。なお、上記の熱硬化性エポキシ樹脂を取材とする接着剤成分中に、硬化剤を封止したマイクロカプセルを分散配合しても良い。
【0030】
ここで、第1端子部40Aまたは第2端子部40Bと、接続部材100とを電気的に接続する場合、第1端子部40Aまたは第2端子部40Bが、異方性導電接着剤層130で覆われる状態とする。その後に、接続部材100(特に異方性導電接着剤層130)を、所定温度で加熱及び加圧する。それにより、熱硬化性エポキシ樹脂が硬化させられる。
【0031】
この熱硬化においては、異方性導電接着剤層130に含まれる導電性粒子が、第1端子41Aまたは第2端子41Bと、接続端子121との間に掛け渡されて電気的に導通可能な電極接続部140が実現される。一方、隣接する電極接続部140の間には、電気的な絶縁性を有する熱硬化性エポキシ樹脂で隔てられて、電気的に絶縁された状態となる。
【0032】
このような、接続部材100(特に異方性導電接着剤層130)を、所定温度で加熱及び加圧して、電極接続部140を構成する場合においては、異方導電性接着剤が流れ出して、流れ出し部分F1が形成されてしまう虞がある。
図7は、接続部材100において、異方性導電接着剤層130の異方導電性接着剤が流れ出すイメージを示す図である。
【0033】
ここで、本実施の形態では、基材20の側面23側には、抑制間隔S1が設けられている。したがって、
図7に示すような、異方性導電接着剤層130の流れ出しが生じたとしても、沿面フラッシュオーバーを良好に防止することが可能となっている。
【0034】
<フレキシブルプリント基板の第2構成例について>
図8は、第2構成例に係るフレキシブルプリント基板10を示す平面図である。
図9は、第2構成例に係るフレキシブルプリント基板10を示す下面図である。また、
図10は、
図8において第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bを配列方向(X方向)に沿って切断した状態を示す断面図である。
【0035】
図8および
図10に示すように、第1絶縁層50Aにおいては、上記の配列方向(X方向)の端部側に、接続端部20E側(Y1側)に向かって突出する第1絶縁突出部51Aが設けられる構成を採用することができる。また、
図9および
図10に示すように、第2絶縁層50Bにおいては、上記の配列方向(X方向)の端部側に、接続端部20E側(Y1側)に向かって突出する第2絶縁突出部51Bが設けられる構成を採用することができる。なお、第1絶縁突出部51Aと第2絶縁突出部51Bとは、絶縁突出部に対応する。
【0036】
上記の
図8から
図10に示す構成を採用する場合には、一層良好に、沿面フラッシュオーバーを抑制することが可能となる。特に、第1端子部40Aと第1絶縁層50Aの境界B1付近は、上記の接続部材100を所定の温度および圧力で挟み込む際に、異方性導電接着剤層130がY1方向にはみ出す(逃げる)のが抑制されるので、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出し易い部位である。そのため、上記の第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bを設けることにより、第1端子部40Aと第1絶縁層50Aの境界B1付近において、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出すのを防止でき、それによって沿面フラッシュオーバーを一層良好に抑制することが可能となる。
【0037】
なお、第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bは、たとえば、抑制間隔S1のY方向の1/10~1/3程度とするように設定することが好ましい。しかしながら、第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bは、上記の境界B1付近を超えて、接続端部20E側(Y1側)に一層突出するように設けるようにしても良い。たとえば、抑制間隔S1のY方向の全体に設けるようにしても良く、抑制間隔S1のY方向の1/3~2/3程度だけ設けるようにしても良い。
【0038】
<フレキシブルプリント基板の第3構成例について>
図11は、第3構成例に係るフレキシブルプリント基板10を示す平面図である。
図12は、第3構成例に係るフレキシブルプリント基板10を示す下面図である。また、
図13は、第3構成例に係るフレキシブルプリント基板10を用いたフレキシブルプリント基板の接続構造11に関して、第1ダミー端子42Aおよび第2ダミー端子42Bを配列方向(X方向)で切断した状態を示す断面図である。
図11および
図13に示すように、第1端子部40Aには、第1端子41Aの他に、第1ダミー端子42Aが、抑制間隔S1を接続端部20Eに向かって延伸する状態で設けられている。また、
図12および
図13に示すように、第2端子部40Bには、第2端子41Bの他に、第2ダミー端子42Bが、抑制間隔S1を接続端部20Eに向かって延伸する状態で設けられている。
【0039】
これら第1ダミー端子42Aおよび第2ダミー端子42Bは、上述の第1配線31Aおよび第2配線31Bとは電気的に接続されていない。しかしながら、第1ダミー端子42Aおよび第2ダミー端子42Bは、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出すのを防止する防波堤の役割を果たす部分となっている。このため、沿面フラッシュオーバーを一層良好に抑制することが可能となる。
【0040】
<効果について>
以上のような構成を有するフレキシブルプリント基板10およびフレキシブルプリント基板の接続構造11によると、電気的な絶縁性を有する材質から形成されている基材20と、基材20の表面21側に配置され、複数の第1配線31Aを備える第1導体層30Aと、第1導体層30Aの接続端部20E側に配置され、第1導体層30Aの第1配線31Aを外部導体と電気的に接続するための複数の第1端子41Aを備える第1端子部40Aと、基材20の裏面22側に配置され、複数の第2配線31Bを備える第2導体層30Bと、第2導体層30Bの接続端部20E側に配置され、第2導体層30Bの第2配線31Bを外部導体と電気的に接続するための複数の第2端子41Bを備える第2端子部40Bと、を備え、第1端子部40Aの配列方向(X方向)の最も外部側の第1端子41Aである第1最外端子41A1と、第2端子部40Bの配列方向の最も外部側の第2端子41Bである第2最外端子41B1との間には、基材20の縁部を経由して、沿面フラッシュオーバーを抑制する抑制間隔S1が存在している。
【0041】
このように、フレキシブルプリント基板10には、抑制間隔S1が設けられている。このため、たとえば異方性導電接着剤層130の流れ出しが、基材20の端部側に向かって生じていたとしても、上記の抑制間隔S1によって、沿面フラッシュオーバーを防止することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態では、抑制間隔は、2mm以上とすることが可能となる。このように構成する場合には、沿面フラッシュオーバーを一層良好に防止することが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態では、第1導体層30Aは、少なくとも一部が第1絶縁層50Aで覆われていて、第1絶縁層50Aの配列方向(X方向)の端部側には、接続端部20E側に向かって突出する第1絶縁突出部51A(絶縁突出部)が設けられている。また、第2導体層30Bは、少なくとも一部が第2絶縁層50Bで覆われていて、第2絶縁層50Bの配列方向(X方向)の端部側には、接続端部20E側に向かって突出する第2絶縁突出部51B(絶縁突出部)が設けられている。
【0044】
このように、第1絶縁突出部51A(絶縁突出部)および第2絶縁突出部51B(絶縁突出部)を設けることにより、第1端子部40Aと第1絶縁層50Aの境界B1付近において、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出すのを防止できる。それにより、フレキシブルプリント基板10において沿面フラッシュオーバーを一層良好に抑制することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態では、第1端子部40Aには、外部導体および第1配線31Aとは電気的に導通しない第1ダミー端子42Aが抑制間隔S1を接続端部20Eに向かって延伸する状態で設けられている。また、第2端子部40Bには、外部導体および第2配線31Bとは電気的に導通しない第2ダミー端子42Bが抑制間隔S1を接続端部20Eに向かって延伸する状態で設けられている。
【0046】
このように構成する場合には、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出しても、第1ダミー端子42Aおよび第2ダミー端子42Bによって、当該異方性導電接着剤層130の側面23側に向かう流れ出しを停止させることができる。すなわち、第1ダミー端子42Aおよび第2ダミー端子42Bは、異方性導電接着剤層130が流れ出すのを防止する防波堤として機能させることができる。このため、沿面フラッシュオーバーを一層良好に抑制することが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態では、第1端子部40Aと第2端子部40Bとは、基材20を挟んで鏡像対称に設けられている。このため、接続部材100の配線層120の接続端子121と、第1端子41Aまたは第2端子41Bとの間の電気的な接続を図り易くなり、フレキシブルプリント基板の接続構造11の製造が容易となる。
【0048】
また、本実施の形態では、上述したフレキシブルプリント基板10と、主材となる接着剤と、当該接着剤中に分散されている多数の導電粒子とを含む異方性導電接着剤層130と、複数の接続端子121を備える配線層120とを備える接続部材100とを備え、接続部材100は、導電粒子を介して第1端子41Aまたは第2端子41Bと電気的に接続されると共に、隣接する第1端子41Aまたは隣接する第2端子41Bに対しては、電気的な絶縁性を確保している。
【0049】
このため、フレキシブルプリント基板10と接続部材100を用いて形成されたフレキシブルプリント基板の接続構造11には、抑制間隔S1が設けられている。このため、たとえば異方性導電接着剤層130の流れ出しが、基材20の端部側に向かって生じていたとしても、上記の抑制間隔S1によって、沿面フラッシュオーバーを防止することが可能となる。
【0050】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0051】
上述の実施の形態では、第1絶縁層50Aには接続端部20E側に向かって突出する第1絶縁突出部51A(絶縁突出部)が設けられ、第2絶縁層50Bには接続端部20E側に向かって突出する第2絶縁突出部51B(絶縁突出部)が設けれている構成について説明している。しかしながら、第1絶縁層50Aと第2絶縁層50Bのいずれか一方のみに、絶縁突出部を設ける構成を採用しても良い。すなわち、第1絶縁層50Aには第1絶縁突出部51Aを設けずに第2絶縁層50Bのみに第2絶縁突出部51Bを設けても良く、それとは逆に、第2絶縁層50Bには第2絶縁突出部51Bを設けずに第1絶縁層50Aのみに第1絶縁突出部51Aを設けても良い。
【0052】
また、上述の実施の形態では、第1絶縁層50Aに第1絶縁突出部51Aを設け、さらに第2絶縁層50Bに第2絶縁突出部51Bを設けることで、第1端子部40Aと第1絶縁層50Aの境界B1付近において、異方性導電接着剤層130が側面23側に向かって流れ出すのを防止している。しかしながら、このような構成に代えて、
図14に示すような構成を採用しても良い。
【0053】
図14に示す構成では、基材20の表面21における配列方向(X方向)の端部側に、接続端部20E側に向かって突出する第1基材突出部24Aが設けられている。また、基材20の裏面22における配列方向(X方向)の端部側には、接続端部20E側に向かって突出する第2基材突出部24Bが設けられている。
【0054】
このように構成しても、異方性導電接着剤層130が基材20の側面23側に向かって流れ出すのを、第1基材突出部24Aまたは第2基材突出部24Bによって防止できる。それにより、フレキシブルプリント基板10において沿面フラッシュオーバーを一層良好に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
10…フレキシブルプリント基板、11…フレキシブルプリント基板の接続構造、20…基材、20E…接続端部、21…表面、22…裏面、23…側面、24A…第1基材突出部、24B…第2基材突出部、30A…第1導体層、30B…第2導体層、31A…第1配線、31B…第2配線、40A…第1端子部、40B…第2端子部、41A…第1端子、41B…第2端子、41A1…第1最外端子、41B1…第2最外端子、42A…第1ダミー端子、42B…第2ダミー端子、50A…第1絶縁層、50B…第2絶縁層、51A…第1絶縁突出部、51B…第2絶縁突出部、100…接続部材、110…基材、120…配線層、121…接続端子、130…異方性導電接着剤層、B1…境界、S1…抑制間隔
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
フレキシブルプリント基板と、他のフレキシブルプリント基板を接続するための接続構造としては、たとえば、特許文献1に開示されているような、異方性導電膜(Anisotropic Conductive Film;ACF)を用いたものがある。特許文献1に開示の構成では、第1のフレキシブルプリント配線板(5)の接続電極(9a,10a)と、第2のフレキシブルプリント配線板(11)の接続電極(15a,16a)とを、異方導電性接着剤層(4)を備える接続部材(1)を介して接続している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板10およびフレキシブルプリント基板の接続構造11について、図面に基づいて説明する。以下の説明では、
図1における配線および端子の並びの方向(配列方向)をX方向とし、X1側は
図1における紙面右側、X2側は
図1における紙面左側とする。また、
図1における配線および端子の延伸方向をY方向とし、Y1側は
図1における紙面
上側、Y2側は
図1における紙面
下側とする。また、Z方向は
図3に示すフレキシブルプリント基板10の厚み方向とし、Z1側は
図3における上側、Z2側は
図3における下側とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
<フレキシブルプリント
基板の構成について>
図1から
図3に示すように、フレキシブルプリント基板10は、基材20と、第1導体層30Aと、第2導体層30Bと、第1端子部40Aと、第2端子部40Bと、第1絶縁層50Aと、第2絶縁層50Bとを主要な構成要素としている。また、第1端子部40Aの第1最外端子41A1と、第2端子部40Bの第2最外端子41B1との間には、抑制間隔S1が存在している。以下、これらの構成について、説明する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
また、異方性導電接着剤層130は、上述した基材110および配線層120に対し、ペースト状の異方導電性接着剤を所定の厚みとなる状態で塗着することで形成されている。この異方性導電接着剤層130の元となる異方導電性接着剤は、熱硬化性エポキシ樹脂を主剤とする接着剤成分中に、導電性粒子が分散配合されることで形成されている。なお、上記の熱硬化性エポキシ樹脂を主剤とする接着剤成分中に、硬化剤を封止したマイクロカプセルを分散配合しても良い。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
なお、第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bは、たとえば、境界B1から接続端部20EまでのY方向の長さの1/10~1/3程度とするように設定することが好ましい。しかしながら、第1絶縁突出部51Aおよび第2絶縁突出部51Bは、上記の境界B1付近を超えて、接続端部20E側(Y1側)に一層突出するように設けるようにしても良い。たとえば、抑制間隔S1のY方向の全体に設けるようにしても良く、境界B1から接続端部20EまでのY方向の長さの1/3~2/3程度だけ設けるようにしても良い。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】