(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078082
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ホームドア設備
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20240603BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B61B1/02
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190421
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 達也
(72)【発明者】
【氏名】石川 宣高
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
【Fターム(参考)】
3D101AA03
3D101AA05
3D101AA12
3D101AA24
3D101AC05
3D101AC10
3D101AD02
5H161AA01
5H161MM02
5H161MM15
5H161NN01
5H161PP01
5H161PP11
5H161QQ01
5H161QQ03
(57)【要約】
【課題】脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ脱出させる。
【解決手段】ホームドア設備1は、鉄道の駅のホーム10(プラットホーム)の軌道側(線路側)に設置される。ホームドア設備1は、旅客が鉄道に乗車する際又は鉄道から降車する際、ホーム10から転落することを防止する。ホームドア設備1は、少なくとも、1つ(1セット)のホームドア2、戸袋3、ステップ4、及び侵入防止柵5を備えている。ステップ4は、戸袋3の軌道側に設けられた、梯子(ラダー)、踏み台、凸部、凹部等の足掛かりである。旅客は、ステップ4を足掛かりにしてホームドア設備1を乗り越え、軌道側から(ホームの)内側に脱出することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸袋の軌道側の壁面に、該戸袋を乗り越え可能にするステップが設置されたホームドア設備。
【請求項2】
前記ステップは、軌道に沿って前記壁面の全域に伸びている請求項1に記載のホームドア設備。
【請求項3】
前記ステップは、前記壁面の端に設けられたセンサ筐体、又は侵入防止柵に連結されている請求項1又は2に記載のホームドア設備。
【請求項4】
前記ステップは、前記壁面の端に設けられたセンサ筐体、又は侵入防止柵によって構成されている請求項1に記載のホームドア設備。
【請求項5】
前記ステップは、前記センサ筐体、又は前記侵入防止柵が変形することにより形成される請求項4に記載のホームドア設備。
【請求項6】
前記ステップは、前記軌道側に引出し可能に設置されている請求項1に記載のホームドア設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時に旅客を列車からホームへ避難させるための設備の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
緊急時に旅客を列車からホームへ避難させるための技術として、特許文献1には、戸袋をスライド移動させて緊急脱出領域を形成できるホームドア装置が開示されている。また、特許文献2には、戸袋体に非常脱出ドアとしての機能を持たせるプラットホームドア装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-10079号公報
【特許文献2】特開2015-63300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホームドアを設備したホームにおいて、緊急時に列車内の旅客がホームに脱出する際、列車が定位置からずれて停車した場合、乗降口がホームドア筐体の位置にあるため、ホームドアとは別に脱出口を設ける必要がある。
【0005】
本発明は、脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ容易に脱出させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、戸袋の軌道側の壁面に、該戸袋を乗り越え可能にするステップが設置されたホームドア設備を第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様のホームドア設備によれば、脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ容易に脱出させることができる。
【0008】
上記の第1の態様のホームドア設備において、前記ステップは、軌道に沿って前記壁面の全域に伸びている、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様のホームドア設備によれば、列車がどの位置に止まっても旅客が戸袋を乗り越え易くすることができる。
【0010】
上記の第1又は第2の態様のホームドア設備において、前記ステップは、前記壁面の端に設けられたセンサ筐体、又は侵入防止柵に連結されている、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様のホームドア設備によれば、ステップがセンサ筐体、又は侵入防止柵と互いに補強し合うことができる。
【0012】
上記の第1の態様のホームドア設備において、前記壁面の端に設けられたセンサ筐体、又は侵入防止柵によって構成されている、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様のホームドア設備によれば、脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ容易に脱出させることができる。
【0014】
上記の第4の態様のホームドア設備において、前記ステップは、前記センサ筐体、又は前記侵入防止柵が変形することにより形成される、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様のホームドア設備によれば、脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ容易に脱出させることができる。
【0016】
上記の第1の態様のホームドア設備において、前記軌道側に引出し可能に設置されている、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0017】
第6の態様のホームドア設備によれば、脱出口を別途設ける場合に比べて低コストで、旅客を列車内からホームへ容易に脱出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】列車が定位置に停車していない場合におけるホームドア設備を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1]実施例
図1は、実施例に係るホームドア設備1を表す図である。ホームドア設備1は、鉄道の駅のホーム10(プラットホーム)の軌道側(線路側)に設置される。ホームドア設備1は、旅客が鉄道に乗車する際又は鉄道から降車する際、ホーム10から転落することを防止する。
図1(a)は、軌道側から見たホームドア設備1を表している。また、
図1(b)は、鉛直上方から見たホームドア設備1を表している。本実施例では、複数のホームドア設備1が設置されている。複数のホームドア設備1は、それぞれがホーム10の延伸方向(線路の延伸方向)の全体に並べて設置されることで、ホーム10を軌道側と(ホームの)内側とに分離している。
【0020】
ホームドア設備1は、少なくとも、1つ(1セット)のホームドア2、戸袋3、ステップ4、及び侵入防止柵5を備えている。ホームドア2は、戸袋3に備えられた駆動手段(図示無し)によって水平方向(A1の方向)に開閉(出し入れ)される部材である。ホームドア2は、板状であり、水平方向(A1の方向)における一端が戸袋3に接続されている。戸袋3は、駆動手段によってホームドア2を出し入れする装置である。戸袋3は、板状かつ中空であり、ホームドア2を開閉(出し入れ)する方向に開口部(図示無し)を有している。戸袋3は、ホームドア2を収納することでホームドア2を開状態にし、また、ホームドア2を展開することでホームドア2を閉状態にする。
【0021】
ステップ4は、戸袋3の軌道側に設けられた、梯子(ラダー)、踏み台、凸部、凹部等の足掛かりである。旅客は、ステップ4を足掛かりにしてホームドア設備1を乗り越え、軌道側から(ホームの)内側に脱出することができる。
【0022】
侵入防止柵5は、ホームドア2が開状態の場合において、ホーム10にいる旅客が戸袋3の軌道側に侵入することを防止する。侵入防止柵5は、人感センサを有するセンサ筐体であってもよい。人感センサとは、電磁波を送受信してTOF(Time Of Flight)方式により物体までの距離と方向に応じた信号を出力する装置である。
【0023】
図2は、列車が定位置に停車していない場合におけるホームドア設備1を表す図である。定位置とは、旅客を乗車又は降車させるため、列車のドアと、ホームドアとが重なり合うように列車が停車する位置である。列車8は、通常、列車ドア81と、ホームドア2とが重なり合うように停車し、旅客が列車を乗車又は降車できるようにする。しかし、事故、災害等の緊急時には、列車が急停止しなければならず、定位置に停車できない場合がある。この場合、降車しようとする旅客は、列車ドア81が開状態になったとしても戸袋3が障害となり、ホームの内側に脱出することができない。また、一般的なホームドア設備(戸袋)の高さは1,000mm以上あるため、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えて脱出することは容易ではない。
【0024】
図3は、旅客がステップを使用する際の例を表す図である。旅客は、上記のようなホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えて脱出しなければならない状況において、戸袋3に備えられたステップ4を足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。つまり、本実施形態に係るホームドア設備1は、戸袋の軌道側の壁面に、該戸袋を乗り越え可能にするステップが設置されたホームドア設備の例である。このような構成にすることで、ステップ4がない場合と比較して、容易にホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えて脱出することができる。
【0025】
[2]変形例
上述した実施例は、本発明の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0026】
[2-1]
実施例では、ステップ4が戸袋3に備えられて、また、梯子(ラダー)であったが、ステップ4の形状は、これに限定されない。
【0027】
図4は、変形例1のステップを表す図である。
図4には、軌道側から見たホームドア設備1が示されている。
【0028】
変形例1において、ステップ4は、
図4に表すように、戸袋3の壁面全域に伸展してもよい。壁面全域とは、戸袋の水平方向における一端から他端までの領域をいう。なお、戸袋3に侵入防止柵5又はセンサ筐体6が設置されている場合には、壁面全域とは、戸袋3の水平方向における一端の侵入防止柵5又はセンサ筐体6から他端の侵入防止柵5又はセンサ筐体6までの領域をいうことになる。ステップ4が、例えば、梯子(ラダー)である場合、梯子(ラダー)の支柱が、侵入防止柵5又はセンサ筐体6の一端及び他端と接触するように設置されることになる。例えば、緊急時において、旅客は、戸袋3に備えられたステップ4を足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。
【0029】
変形例1おけるステップ4は、軌道に沿って戸袋の軌道側の壁面の全域に伸びているステップの一例である。この構成により、列車がどの位置に止まっても旅客が戸袋を乗り越え易くすることができる。なお、
図4において、戸袋3には2つの侵入防止柵5及び4つの足場(踏桟)を有するステップ4が形成されているが、ステップ4の形状及び配置は、これに限定されない。
【0030】
[2-2]
図5は、変形例2のステップを表す図である。
図5には、軌道側から見たホームドア設備1が示されている。
【0031】
変形例2において、ステップ4は、
図5に表すように、侵入防止柵5又はセンサ筐体6に連結されてもよい。または、ステップ4は、
図5に表すように、侵入防止柵5又はセンサ筐体6によって構成されてもよい。ステップ4が、例えば、梯子(ラダー)である場合、侵入防止柵5又はセンサ筐体6は、支柱の役割を果たし、足場(踏桟)を保持する。例えば、緊急時において、旅客は、戸袋3に備えられたステップ4を足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。
【0032】
変形例2におけるステップ4は、壁面の端に設けられたセンサ筐体、又は侵入防止柵に連結されているステップの一例である。この構成により、ステップ4がセンサ筐体6又は侵入防止柵5と互いに補強し合うことができる。なお、
図4において、戸袋3には2つの侵入防止柵5及び4つの足場(踏桟)を有するステップ4が形成されているが、ステップ4の形状及び配置は、これに限定されない。
【0033】
[2-3]
図6は、変形例3のステップを表す図である。
図6(a)には、軌道側から見たホームドア設備1が示されている。
図6(b)には、ホーム10の延伸方向から見たホームドア設備1が示されている。
【0034】
変形例3において、ステップ4は、
図6に表すように、凸部41であってもよい。例えば、緊急時において、旅客は、戸袋3に備えられた凸部41を足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。
【0035】
なお、
図6において、戸袋3には2つの凸部41が形成されているが、凸部41の数及び配置は、これに限定されない。
【0036】
[2-4]
図7は、変形例4のステップを表す図である。
図7(a)には、軌道側から見たホームドア設備1が示されている。
図7(b)には、ホーム10の延伸方向から見たホームドア設備1が示されている。
【0037】
変形例4において、ステップ4は、
図7に表すように、凹部42であってもよい。例えば、緊急時において、旅客は、戸袋3に備えられた凹部42を足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。
【0038】
なお、
図7において、戸袋3には2つの凹部42が形成されているが、凹部42の数及び配置は、これに限定されない。
【0039】
[2-5]
図8は、変形例5のステップを表す図である。
図8(a)には、軌道側から見た変形前のホームドア設備1が示されている。
図8(b)には、ホーム10の延伸方向から見た変形前のホームドア設備1が示されている。
図8(c)には、軌道側から見た変形後のホームドア設備1が示されている。
図8(d)には、ホーム10の延伸方向から見た変形後のホームドア設備1が示されている。
【0040】
変形例5において、ステップ4は、
図8に表すように、軌道側に引出し可能に設置された引出ステップ43であってもよい。引出ステップ43は、引出ステップ43を軌道側に引き出す持手431を有する。引出ステップ43は、通常時には、
図8(a)及び(b)に表すように、戸袋3に収納されている。一方、緊急時には、
図8(a)及び(b)に表すように、引出ステップ43は、旅客が持手431を軌道側に引き出すことで出現する。例えば、緊急時において、旅客は、戸袋3に備えられた引出ステップ43の持手431を軌道側に引き出して引出ステップ43を出現させ、これを足掛かりにし、ホームドア設備1(戸袋3)を乗り越えてホームの内側に脱出する。
【0041】
変形例5に係るステップ4は、軌道側に引出し可能に設置されているステップの一例である。なお、
図8において、戸袋3には2つの引出ステップ43が形成されているが、引出ステップ43の数及び配置は、これに限定されない。また、引出ステップ43は、引き出される以外の態様で変形してもよい。
【0042】
[2-6]
図9は、変形例6のステップを表す図である。
図9(a)には、軌道側から見た変形前のホームドア設備1が示されている。
図9(b)には、ホーム10の延伸方向から見た変形前のホームドア設備1が示されている。
図9(c)には、軌道側から見た変形後のホームドア設備1が示されている。
図9(d)には、ホーム10の延伸方向から見た変形後のホームドア設備1が示されている。
【0043】
変形例6において、ステップ4は、
図9に表すように、軌道側に倒すように変形可能な変形ステップ44であってもよい。変形ステップ44は、ステップ本体442と、このステップ本体442を戸袋3に接続する蝶番441とを有する。変形ステップ44のステップ本体442は、通常時には、
図9の(a)及び(b)に示す通り、長手方向が上に向いている。一方、緊急時には、ステップ本体442は、
図9の(c)及び(d)に示す通り、旅客が蝶番441を中心にその長手方向を軌道側に向けるように倒すことで変形させられる。
【0044】
変形例6におけるステップ4は、変形することにより形成されるステップの一例である。この構成によれば、ステップ4は、通常時において戸袋3の内部に収容され、又は、戸袋3の外表面に沿った位置に配置されているので列車の邪魔になることがない。
【0045】
なお、変形ステップ44は、通常時において長手方向が上に向いているが、この方向は上に限られない。変形ステップ44は、例えば、通常時において長手方向が下に向いており、緊急時に引き起こされて軌道側に向くように構成されていてもよい。また、
図9において、戸袋3には1つの変形ステップ44が形成されているが、変形ステップ44の数及び配置は、これに限定されない。
【0046】
また、この変形ステップ44は、通常時において、侵入防止柵5又はセンサ筐体6として機能してもよい。つまり、この変形ステップ44は、センサ筐体、又は侵入防止柵が変形することにより形成されるステップであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ホームドア設備、2…ホームドア、3…戸袋、4…ステップ、5…侵入防止柵、6…センサ筐体、8…列車、10…ホーム