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  • 特開-診断装置 図1
  • 特開-診断装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078085
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/48 20060101AFI20240603BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16T1/48 D
F16T1/48 C
G05B23/02 T
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190425
(22)【出願日】2022-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】谷山 浩一
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA21
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF24
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH08
3C223HH23
3C223HH24
(57)【要約】
【課題】携帯可能な診断装置において診断対象物の診断を自動的に開始する。
【解決手段】蒸気トラップ又は配管を含む診断対象物を診断する携帯可能な診断装置1に、先端が診断対象物に押し当てられる棒状のプローブ2と、プローブ2に伝達された振動及び温度を測定する測定部3と、前記振動の測定値及び前記温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、前記振動の測定値及び前記温度の測定値に基づいて診断対象物を診断する診断処理を開始する診断部51と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気トラップ又は配管を含む診断対象物を診断する携帯可能な診断装置であって、
先端が前記診断対象物に押し当てられる棒状のプローブと、
前記プローブに伝達された振動及び温度を測定する測定部と、
前記振動の測定値及び前記温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、前記振動の測定値及び前記温度の測定値に基づいて前記診断対象物を診断する診断処理を開始する診断部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
片手で把持可能な本体部と、
前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた発光素子と、
前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光素子を点灯させる点灯部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
片手で把持可能な本体部と、
前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた、情報を表示する表示部と、
前記表示部の外縁に沿って発光する発光部と、
前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光部を発光させる点灯部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項4】
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記所定量を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、第一所定時間毎に、前記振動の測定値の変化量が第一所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第一所定時間を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、第二所定時間毎に、前記温度の測定値の変化量が第二所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第二所定時間を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気トラップ又は配管を含む診断対象物を診断する携帯可能な診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1等に記載のように、蒸気等の流体が流れる配管又は配管に設置された蒸気トラップ等の診断対象物にプローブの先端を押し当てた状態で、本体部に設けられた検査開始ボタンを押下することにより、診断対象物の診断を開始する診断装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6427705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、配管が複雑に入り組んでいる環境下では、作業者は、無理な姿勢でプローブの先端を診断対象物に押し当てなければならない場合がある。この場合、作業者は、検査開始ボタンを押下することができず、当該診断対象物を診断できない虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、診断対象物の診断を自動的に開始することができる携帯可能な診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る診断装置は、蒸気トラップ又は配管を含む診断対象物を診断する携帯可能な診断装置であって、先端が前記診断対象物に押し当てられる棒状のプローブと、前記プローブに伝達された振動及び温度を測定する測定部と、前記振動の測定値及び前記温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、前記振動の測定値及び前記温度の測定値に基づいて前記診断対象物を診断する診断処理を開始する診断部と、を備える。
【0007】
本構成では、プローブに伝達された振動の測定値及び温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、診断処理が開始される。このため、本構成は、診断装置を携帯する作業者がプローブの先端を診断対象物に押し当て、プローブに伝達された振動の測定値及び温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、自動的に診断対象物の診断を開始することができる。
【0008】
また、上記構成において、片手で把持可能な本体部と、前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた発光素子と、前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光素子を点灯させる点灯部と、を更に備えてもよい。
【0009】
本構成では、発光素子が、本体部が片手で把持された状態で露出する本体部の位置に設けられているので、作業者は、無理な姿勢でプローブの先端を診断対象物に押し当てている場合であっても、発光素子が点灯しているか否かを容易に識別することができる。これにより、作業者は、診断処理が行われているか否かを適切に把握することができる。
【0010】
また、上記構成において、片手で把持可能な本体部と、前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた、情報を表示する表示部と、前記表示部の外縁に沿って発光する発光部と、前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光部を発光させる点灯部と、を更に備えてもよい。
【0011】
本構成では、情報を表示する表示部が、本体部が片手で把持された状態で露出する本体部の位置に設けられ、表示部の外縁に沿って発光する発光部が設けられている。このため、作業者は、無理な姿勢でプローブの先端を診断対象物に押し当てている場合であっても、表示部の外縁が光っているか否かを容易に識別することができる。これにより、作業者は、表示部が情報を表示している状態であるか否かによらず、診断処理が行われているか否かを適切に把握することができる。
【0012】
また、上記構成において、操作部と、作業者による前記操作部の操作に基づいて前記所定量を設定する設定部と、を更に備えてもよい。
【0013】
本構成によれば、作業者は、操作部を操作して前記所定量を任意の値に設定することができる。これにより、作業者は、診断処理が開始されるタイミングを調整することができる。
【0014】
また、上記構成において、前記診断部は、第一所定時間毎に、前記振動の測定値の変化量が第一所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、操作部と、作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第一所定時間を設定する設定部と、を更に備えてもよい。
【0015】
本構成によれば、作業者は、操作部を操作して第一所定時間を任意の値に設定することができる。これにより、作業者は、診断処理が開始されるタイミングを調整することができる。
【0016】
また、上記構成において、前記診断部は、第二所定時間毎に、前記温度の測定値の変化量が第二所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、操作部と、作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第二所定時間を設定する設定部と、を更に備えてもよい。
【0017】
本構成によれば、作業者は、操作部を操作して第二所定時間を任意の値に設定することができる。これにより、作業者は、診断処理が開始されるタイミングを調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、診断対象物の診断を自動的に開始することができる携帯可能な診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】診断装置の外観図である。
図2】診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る診断装置1について説明する。診断装置1は、蒸気や復水が流れる配管又は配管に設けられた蒸気トラップを含む診断対象物の振動及び温度に基づき、診断対象物を診断する携帯可能な装置である。図1は、診断装置1の外観図である。図2は、診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
具体的には、図1に示すように、診断装置1は、耐熱性プラスチック等からなる直方体状の本体部4と、本体部4の上面から突出する棒状のプローブ2と、を備えている。
【0022】
本体部4は、片手で把持可能な形状を有している。例えば、本体部4は、右手の親指を本体部4の下部の左側面41に当て、右手の残りの指を本体部4の下部の右側面42に当てて握ることにより、右手で把持可能となっている。また、本体部4は、左手の親指を本体部4の下部の右側面42に当て、左手の残りの指を本体部4の下部の左側面41に当てて握ることにより、左手で把持することもできる。
【0023】
本体部4の外面には、表示部6、操作部7、インジケータ(発光素子)8及び発光部9が設けられている。
【0024】
表示部6は、本体部4における本体部4が片手で把持された状態で露出する位置に設けられている。具体的には、表示部6は、本体部4における本体部4が片手で把持されるときに片手で覆われる位置よりも上方の位置に設けられている。表示部6は、後述の制御部5(図2)による制御の下、診断対象物の振動及び温度の測定結果や当該測定結果に基づく診断対象物の診断結果等の各種情報を表示する。
【0025】
例えば、表示部6は、液晶パネルとバックライトとを備えた液晶ディスプレイによって構成される。液晶パネルにおける表示対象の情報に対応する液晶に印加される電界は、後述の制御部5(図2)により調整される。バックライトは、制御部5による制御の下、液晶パネルの裏面側から液晶パネルの全面を照明する。つまり、表示対象の情報に対応する各液晶が、バックライトからの照明光を透過又は遮断させることで、各液晶に対応する各画素からなる画像が、液晶パネルの表面に表示される。このため、当該表示部6は、情報を表示している間、バックライトからの照明光によって少なからず発光した状態となる。
【0026】
尚、表示部6は、液晶ディスプレイに限らず、例えば有機ELディスプレイによって構成してもよい。有機ELディスプレイは画素を構成する素子そのものが発光するため、当該表示部6も、情報を表示している間、少なからず発光した状態となる。
【0027】
操作部7は、本体部4における表示部6の下方の位置に設けられている。操作部7は、診断装置1の各種の操作を作業者に行わせるためのボタンを備えている。図1は、操作部7が、電源ボタン70、モードボタン71、選択ボタン72及び確定ボタン73を備えている例を示している。
【0028】
電源ボタン70は、後述の電池10(図2)から本体部4への電力の供給と遮断とを切り替える操作を行うためのボタンである。具体的には、電池10から本体部4への電力の供給が遮断されている場合に電源ボタン70が押下されると、電池10から本体部4への電力の供給が開始される。一方、電池10から本体部4へ電力が供給されている場合に、電源ボタン70が押下されると、電池10から本体部4への電力の供給が遮断される。
【0029】
モードボタン71は、診断装置1のモードを、現在のモードから他のモードへ切り替える操作を行うためのボタンである。診断装置1のモードには、例えば、設定モード、測定モード及び診断モードが含まれる。設定モードは、診断装置1の各種設定を行うモードである。測定モードは、診断対象物の振動及び温度の測定を行い、当該測定の結果を表示部6に表示するモードである。診断モードは、診断対象物の振動及び温度の測定を行い、当該測定の結果に基づいて診断対象物の診断を行うモードである。
【0030】
選択ボタン72は、表示部6に表示されたカーソルを上方又は下方に移動させる操作、表示部6に表示された数値を所定値だけ増加又は減少させる操作及び表示部6に表示された複数の選択肢の中から一以上の選択肢を所定の情報として選択する操作を行うためのボタンである。
【0031】
確定ボタン73は、選択ボタン72を用いて選択された一以上の選択肢を前記所定の情報として確定する操作や、表示部6に表示されている情報を前記所定の情報として確定する操作を行うためのボタンである。
【0032】
尚、操作部7が備えるボタンは、図1に示したものに限らない。
【0033】
インジケータ8は、本体部4の下方であって、本体部4が片手で把持された状態で露出する位置に設けられている。インジケータ8は、後述の点灯部52(図2)による制御の下、診断処理が行われている間、点灯する。インジケータ8は、LED等の発光素子によって構成される。
【0034】
発光部9は、後述の点灯部52(図2)による制御の下、診断処理が行われている間、表示部6の外枠に沿って発光する。発光部9は、例えば、表示部6の外縁に沿う形状を有する、内部に蛍光剤が塗布された蛍光管と、当該蛍光管の内部に光を照射するLEDと、によって構成される。また、発光部9は、これに限らず、例えば、表示部6の外縁に沿うように配置された複数のLEDによって構成してもよい。
【0035】
プローブ2は、筒状の探針21と、探針21の内周面に非接触の状態で配置された熱電対22と、を備えている。熱電対22を構成する二本の熱電対素線の一端は、探針21の先端において内側から外側に出没可能に付勢された接触板(不図示)に溶接されている。
【0036】
更に、診断装置1は、図2に示すように、本体部4の内部に、電池10と、測定部3と、制御部5と、を備えている。
【0037】
電池10は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池で構成され、本体部4の各部に電力を供給する。
【0038】
測定部3は、プローブ2に伝達された振動及び温度を測定する。具体的には、測定部3は、振動測定回路31と、温度測定回路32と、を備えている。
【0039】
振動測定回路31は、電池10から電力の供給が開始されると、所定のサンプリング周期(例えば0.5秒間)で、探針21に伝達された振動を測定し、当該振動の測定値を示すデータ(以降、振動データ)を制御部5へ出力することを繰り返す。
【0040】
温度測定回路32は、電池10から電力の供給が開始されると、所定のサンプリング周期(例えば2秒間)で、熱電対22の接触板に伝達される温度を測定し、当該温度の測定値を示す(以降、温度データ)を制御部5へ出力することを繰り返す。
【0041】
制御部5は、例えば、所定の演算処理を実行する不図示のCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたEEPROM等の不図示の不揮発性メモリーと、データを一時的に記憶するための不図示のRAM(Random Access Memory)と、これらの周辺回路と、を備えている。
【0042】
制御部5は、不揮発性メモリー等に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、診断装置1の各部を統括制御する。
【0043】
例えば、制御部5は、電池10から電力の供給が開始されると、診断装置1を診断モードに切り替え、その後、モードボタン71の操作に応じて、診断装置1を設定モード、測定モード又は診断モードに切り替える。
【0044】
また、制御部5は、診断装置1が測定モードである場合、振動測定回路31から振動データを受信する度に、当該振動データが示す振動の測定値を表示部6に表示し、温度測定回路32から温度データを受信する度に、当該温度データが示す温度の測定値を表示部6に表示する。
【0045】
また、制御部5は、不揮発性メモリー等に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、診断部51、点灯部52及び設定部53として動作する。
【0046】
診断部51は、診断装置1が診断モードである場合、測定部3から受信した振動データが示す振動の測定値及び測定部3から受信した温度データが示す温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、診断処理を開始する。診断処理とは、測定部3から受信した振動データが示す振動の測定値及び測定部3から受信した温度データが示す温度の測定値に基づいて診断対象物を診断する処理である。
【0047】
具体的には、診断部51は、例えば2秒等の所定時間(以降、第一所定時間)毎に、振動の測定値の変化量が所定量(以降、第一所定量)を超えたか否かを判定することを繰り返し、振動の測定値の変化量が第一所定量を超えた場合、診断処理を開始する。
【0048】
詳しくは、診断部51は、第一所定時間毎に、第一所定時間中に測定部3から受信した複数の振動データが示す複数の振動の測定値の代表値を算出することを繰り返し、今回算出した代表値(以降、現在振動値)と前回算出した代表値(以降、前回振動値)との差分の絶対値を、振動の測定値の変化量として算出する。代表値とは、例えば、平均値、最大値又は最小値である。尚、第一所定時間は、不揮発性メモリーに予め記憶されている。また、振動の測定値の変化量は、これに限らず、前回振動値に対する現在振動値の比率(=現在振動値/前回振動値)と1との差分の絶対値であってもよい。
【0049】
診断部51は、算出した振動の測定値の変化量が第一所定量よりも大きい場合、診断処理を開始する。尚、第一所定量は、不揮発性メモリーに予め記憶されている。また、診断部51は、診断処理において現在振動値を振動の測定値として用いる。
【0050】
又は、診断部51は、例えば10秒等の所定時間(以降、第二所定時間)毎に、温度の測定値の変化量が所定量(以降、第二所定量)を超えたか否かを判定することを繰り返し、温度の測定値の変化量が第二所定量を超えた場合、診断処理を開始する。
【0051】
詳しくは、診断部51は、第二所定時間毎に、第二所定時間中に測定部3から受信した複数の温度データが示す複数の温度の測定値の代表値を算出することを繰り返し、今回算出した代表値(以降、現在温度値)と前回算出した代表値(以降、前回温度値)との差分の絶対値を、温度の測定値の変化量として算出する。代表値とは、例えば、平均値、最大値又は最小値である。尚、第二所定時間は、不揮発性メモリーに予め記憶されている。また、温度の測定値の変化量は、これに限らず、前回温度値に対する現在温度値の比率(=現在温度値/前回温度値)と1との差分の絶対値であってもよい。
【0052】
診断部51は、算出した温度の測定値の変化量が第二所定量よりも大きい場合、診断処理を開始する。尚、第二所定量は、不揮発性メモリーに予め記憶されている。また、診断部51は、診断処理において現在温度値を温度の測定値として用いる。
【0053】
尚、診断部51が、診断装置1が診断モードである場合に、測定部3から受信した振動データが示す振動の測定値及び測定部3から受信した温度データが示す温度の測定値の変化量が共に所定量を超えたときに、診断処理を開始するようにしてもよい。
【0054】
具体的には、第二所定時間が第一所定時間よりも長いとする。この場合、診断部51が、第二所定時間中に、振動の測定値の変化量が第一所定量よりも大きいと判定した回数が所定回数(例えば、1回)以上であり、且つ、当該第二所定時間中における温度の測定値の変化量が第二所定量よりも大きいと判定したときに、診断処理を開始するようにしてもよい。
【0055】
一方、第一所定時間が第二所定時間よりも長いとする。この場合、診断部51が、第一所定時間中に、温度の測定値の変化量が第二所定量よりも大きいと判定した回数が所定回数(例えば、1回)以上であり、且つ、当該第一所定時間中における振動の測定値の変化量が第一所定量よりも大きいと判定したときに、診断処理を開始するようにしてもよい。
【0056】
尚、上記診断処理では、診断部51は、振動データ及び温度データが示す診断対象物の振動及び温度の測定値と、不揮発性メモリーに記憶されている所定の閾値と、を比較した結果に基づき、診断対象物が正常状態であるか、蒸気漏出状態であるか、ドレン(復水)排出不良状態であるか、閉塞状態であるかを診断し、当該診断の結果を表示部6に表示する。
【0057】
点灯部52は、診断部51が診断処理を行っている間、インジケータ8を点灯させる。このため、作業者は、無理な姿勢でプローブ2の先端を診断対象物に押し当てている場合であっても、本体部4における本体部4が片手で把持された状態で露出する位置に設けられたインジケータ8が点灯しているか否かを容易に識別することができる。これにより、作業者は、無理な姿勢でプローブ2の先端を診断対象物に押し当てている場合であっても、診断処理が行われているか否かを適切に把握することができる。
【0058】
また、点灯部52は、診断部51が診断処理を行っている間、発光部9を発光させる。このため、作業者は、無理な姿勢でプローブ2の先端を診断対象物に押し当てている場合であっても、表示部6の外縁が光っているか否かを容易に識別することができる。これにより、作業者は、表示部6が情報を表示している状態であるか否かによらず、診断処理が行われているか否かを適切に把握することができる。
【0059】
尚、インジケータ8及び発光部9のうち何れか一方だけを本体部4に設けるようにしてもよい。そして、診断部51が診断処理を行っている間、点灯部52が当該何れか一方だけを点灯又は発光させるようにしてもよい。また、本体部4に、インジケータ8及び発光部9を設けないようにし、制御部5が点灯部52として動作しないようにしてもよい。
【0060】
設定部53は、診断装置1が設定モードである場合、作業者による操作部7の操作に基づいて前記第一所定量及び前記第二所定量を設定する。
【0061】
具体的には、設定部53は、表示部6に第一所定量及び第二所定量の編集が可能な操作画面を表示部6に表示する。その後、作業者が選択ボタン72及び確定ボタン73(図1)を操作し、当該操作画面において第一所定量及び第二所定量の編集を終了すると、設定部53は、当該編集後の第一所定量及び第二所定量によって、不揮発性メモリに記憶されている第一所定量及び第二所定量を更新する。
【0062】
また、設定部53は、診断装置1が設定モードである場合、作業者による操作部7の操作に基づいて前記第一所定時間及び前記第二所定時間を設定する。
【0063】
具体的には、設定部53は、表示部6に第一所定時間及び第二所定時間の編集が可能な操作画面を表示部6に表示する。その後、作業者が選択ボタン72及び確定ボタン73(図1)を操作して、当該操作画面において第一所定時間及び第二所定時間の編集を終了すると、設定部53は、当該編集後の第一所定時間及び第二所定時間によって、不揮発性メモリに記憶されている第一所定時間及び第二所定時間を更新する。
【0064】
つまり、作業者は、表示部6に表示された診断結果を視認して、診断処理が適切なタイミングで開始されなかったと判断した場合に、モードボタン71を操作して診断装置1を設定モードに切り替えることができる。また、作業者は、第一所定量、第二所定量、第一所定周期及び第二所定周期のうちの少なくとも一つを編集することで、診断処理が開始されるタイミングを適宜調整することができる。
【0065】
尚、設定部53が、診断装置1が設定モードである場合に、作業者による操作部7の操作に基づいて、前記第一所定時間及び前記第二所定時間のうち何れか一方だけを設定できるようにしてもよい。また、制御部5が設定部53として動作しないようにしてもよい。
【0066】
つまり、本実施形態の診断装置1は、プローブ2に伝達された振動の測定値及び温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、診断処理を開始する。このため、診断装置1を携帯する作業者がプローブ2の先端を診断対象物に押し当て、プローブ2に伝達された振動の測定値及び温度の測定値のうち少なくとも一方の変化量が所定量を超えたときに、自動的に診断対象物の診断を開始することができる。
【0067】
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。
【0068】
例えば、診断装置1にスピーカー又はイヤホンジャックを備え、診断処理による診断の結果を示す音声信号を、当該スピーカー又は当該イヤホンジャックに出力させるようにしてもよい。また、本体部4の底面等の本体部4における所定の位置に、伸縮自在な把持棒を取り付けることができるように本体部4を構成してもよい。
【0069】
また、制御部5が、モードボタン71の操作に応じて診断装置1を更に手動開始モードに切り替えるようにしてもよい。これに合わせて、診断装置1が手動開始モードである場合、診断部51が、例えば確定ボタン73等の作業者による操作部7の操作があった時点から所定時間が経過した時点で、診断処理を開始するようにしてもよい。
【0070】
この構成によれば、作業者は、無理な姿勢でプローブ2の先端を診断対象物に押し当てなければならない場合であっても、確定ボタン73等の操作部7の操作を行ってから所定時間が経過するまでの間にプローブ2の先端を診断対象物に押し当てることによって、当該操作部7の操作から所定時間が経過した時点で診断処理を開始することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :診断装置
2 :プローブ
3 :測定部
4 :本体部
51 :診断部
52 :点灯部
53 :設定部
6 :表示部
7 :操作部
8 :インジケータ(発光素子)
9 :発光部
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気トラップ又は配管を含む診断対象物を診断する携帯可能な診断装置であって、
先端が前記診断対象物に押し当てられる棒状のプローブと、
前記プローブに伝達された振動及び温度を測定する測定部と、
前記振動の測定値及び前記温度の測定値の化量が共に所定量を超えたときに、前記振動の測定値及び前記温度の測定値に基づいて前記診断対象物を診断する診断処理を開始する診断部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
片手で把持可能な本体部と、
前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた発光素子と、
前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光素子を点灯させる点灯部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
片手で把持可能な本体部と、
前記本体部における前記本体部が片手で把持された状態で露出する位置に設けられた、情報を表示する表示部と、
前記表示部の外縁に沿って発光する発光部と、
前記診断部が前記診断処理を行っている間、前記発光部を発光させる点灯部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項4】
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記所定量を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、第一所定時間毎に、前記振動の測定値の変化量が第一所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第一所定時間を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、第二所定時間毎に、前記温度の測定値の変化量が第二所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
操作部と、
作業者による前記操作部の操作に基づいて前記第二所定時間を設定する設定部と、
を更に備える請求項1に記載の診断装置。
【請求項7】
前記診断部は、
第一所定時間毎に、前記振動の測定値の変化量が第一所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
第二所定時間毎に、前記温度の測定値の変化量が第二所定量を超えたか否かを判定することを繰り返し、
前記第二所定時間が前記第一所定時間よりも長い場合、前記第二所定時間中に、前記振動の測定値の変化量が前記第一所定量を超えた回数が第一所定回数以上であり、且つ、前記第二所定時間中における前記温度の測定値の変化量が前記第二所定量を超えたときに、前記診断処理を開始し、
前記第一所定時間が前記第二所定時間よりも長い場合、前記第一所定時間中に、前記温度の測定値の変化量が前記第二所定量を超えた回数が第二所定回数以上であり、且つ、前記第一所定時間中における前記振動の測定値の変化量が前記第一所定量を超えたときに、前記診断処理を開始する、
請求項1に記載の診断装置。