(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078092
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20240603BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240603BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240603BHJP
E01C 7/26 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K3/04
C08K3/013
E01C7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190440
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】冨部 圭一郎
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AD07
2D051AF01
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH02
2D051AH03
4J002AG001
4J002BB032
4J002BB122
4J002CF062
4J002DA017
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DL006
4J002DM006
4J002FD016
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】充填性に優れ作業性に問題なく、耐久性に優れたアスファルト舗装を形成できるアスファルト組成物の提供。
【解決手段】アスファルト及び揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含むアスファルト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、骨材及び、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含むアスファルト混合物。
【請求項2】
不織布製品が、熱可塑性樹脂の繊維成分を含む不織布製品である、請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
半炭化物の含有量が、アスファルト100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項4】
アスファルトと、加熱した骨材と、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物とを混合する工程を含むアスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
アスファルト、及び、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含むアスファルト組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物及びその製造方法、アスファルト組成物、並びに道路舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
しかしながら、アスファルト舗装面は、長期使用によって劣化し、舗装の補修を行う必要が生じる。舗装の補修を行うことにより、維持費用が増大するとともに、自動車の交通に大きな影響を与える結果となっていた。
例えば、特許文献1には、耐わだち掘れ性、耐疲労ひび割れ性に優れたアスファルト舗装を可能とするアスファルト組成物として、アスファルトに特定のセルロース繊維を配合してなるアスファルト組成物が開示されている。
【0004】
一方、有機性廃棄物の量は年々増加の一途をたどっている。そして、有機性廃棄物を炭化処理する技術が開発されており、得られた炭化物の各種用途についても種々検討されている。
例えば、特許文献2には、塩化物を含む水分が吸収された高吸水性樹脂を含む廃棄物を、水溶性のリン酸塩又は硫酸塩の少なくとも1つを含む水溶液と接触させて、塩化物イオンを前記廃棄物から除去し、前記塩化物イオンを除去した後、前記廃棄物を加熱して炭化処理する炭化物の製造方法が開示されている。また、得られた炭化物は、土壌改質剤、水の浄化処理剤、断熱材等の建材、吸着剤、解毒剤、消臭剤、使い捨てカイロの原料、燃料、後述する活性炭等として有効活用することができることが開示されている。
【0005】
さらに、有機性廃棄物などを炭化装置にて炭化処理して得られる炭化物の利用について、アスファルトを含む道路舗装材とする技術がある。
例えば、特許文献3には、加熱した各種粒径の骨材、石粉、溶融アスファルトを所定量ずつ混合して得られるアスファルト混合物に有機性廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を所定量混入して混合してなるアスファルト混合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-210384号公報
【特許文献2】特開2022-21365号公報
【特許文献3】特開2003-184013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術により、アスファルト組成物中でのセルロース繊維の分散性が向上し、耐わだち掘れ性、耐疲労ひび割れ性に優れたアスファルト舗装を可能とするアスファルト組成物が得られる。しかし、特定のセルロース繊維を使用する必要があるため、入手の容易性等の観点から更なる検討が望ましい。
有機性廃棄物の利用は、例え炭化処理を行うにしても、上記の特許文献2等に記載のような用途だけでは消費量に限りがあるため、大量消費が見込める新たな用途が望まれている。
特許文献3では、アスファルト舗装の耐わだち掘れ性等の耐久性については何ら検討されていない。
【0008】
また、アスファルト舗装を形成するためのアスファルト混合物には、充填性等の所定の作業性が求められる。充填性は、例えば製造工程及び/又は施工工程の加熱温度を高くすることで向上できるが、消費燃料が増加する問題がある。そのため、他の充填性等の作業性を向上するための手段が望ましい。
【0009】
本発明は、不織布製品由来の半炭化物を利用した、充填性に優れ作業性に問題なく、耐久性に優れたアスファルト舗装を形成できるアスファルト混合物及びその製造方法、アスファルト組成物、並びに道路舗装方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の<1>~<4>に関する。
<1> アスファルト、骨材及び、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含むアスファルト混合物。
<2> アスファルトと、加熱した骨材と、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物とを混合する工程を含むアスファルト混合物の製造方法。
<3> アスファルト、及び、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含むアスファルト組成物。
<4> 上記<1>に記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充填性に優れ作業性に問題なく、耐久性に優れたアスファルト舗装の提供が可能であるアスファルト組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、半炭化物の製造において使用した、攪拌するための攪拌羽根、ヒータ及び送風機構を有する炉の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[アスファルト混合物]
本発明のアスファルト混合物は、アスファルト、骨材及び揮発分が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含む。
本発明者らは、揮発分が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含有するアスファルト混合物であれば、充填性に優れ作業性に問題がなく、耐久性が優れるアスファルト舗装を提供できることを見出した。
【0014】
耐久性に優れるアスファルト舗装は、例えば耐わだち掘れ性に優れる。アスファルト舗装の耐わだち掘れ性は、例えば後述の実施例で示すホイールトラッキング試験により評価することができる。
【0015】
また、アスファルト混合物の充填性は、例えば後述の実施例で示す空隙率の測定により評価することができる。
充填性は締固め度ともいい、充填性(締固め度)が優れたアスファルト混合物により、ヘアクラック(微小ひび割れ)の発生が少ない、表面美観に優れたアスファルト舗装が形成される。
【0016】
<アスファルト>
本発明のアスファルト混合物が含むアスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。アスファルトは、好ましくはアスファルト舗装に使用された経歴のないアスファルト(バージンアスファルト又は未使用アスファルトともいう。)である。一方、アスファルト再生骨材に由来する使用済みアスファルトを併用することもできる。
アスファルトの具体例として、例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトから選択されることが好ましく、アスファルト舗装の耐久性の観点からはポリマー改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。ポリマー改質アスファルトとしては、熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルトがより好ましい。
改質アスファルトは、好ましくはポリマー改質アスファルトであり、より好ましくは熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトである。
【0017】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、好ましくは、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種である。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種、より好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体及びスチレン/イソプレンランダム共重合体
から選択される少なくとも1種、更に好ましくはスチレン/ブタジエンランダム共重合体及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体から選択される少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、アスファルト舗装の耐久性及び表面美観の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0018】
<骨材>
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材、粒径0.075mm未満のフィラーを使用することができる。
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm未満の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm未満の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の砕石が挙げられる。
細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂が挙げられる。
粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A5001:2008に規定されるふるい分け試験方法に基づく値である。
【0019】
フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末等の炭酸カルシウム粉末、消石灰等が挙げられる。これらの中でも、アスファルト舗装の耐久性の観点から、炭酸カルシウム粉末が好ましい。
フィラーの平均粒径は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。
ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径(D50)を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0020】
骨材として、粗骨材と細骨材を併用することが好ましい。
この場合、粗骨材と細骨材との質量比率は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0021】
骨材は、アスファルト再生骨材を含むことができる。
アスファルト再生骨材とは、使用済みのアスファルト舗装体を回収し、破砕及び分級したものである。
アスファルト再生骨材が由来する使用済みのアスファルト舗装体は、アスファルト及び骨材を含み、必要に応じて他の添加剤を含むことができる。
【0022】
なお、アスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、熱及び光等の環境因子の影響によって物理的及び化学的性状が、新規アスファルトと比較して劣化している。アスファルトの物理的及び化学的性状は、アスファルトの針入度、軟化点、曲げ強度、破断時歪み、アスファルト組成等を測定することで評価することができる。一般的には、アスファルト中のマルテン留分がアスファルテンに移行し、針入度が低下したアスファルトを劣化アスファルトと呼ぶことが多い。ただし、再生アスファルトの針入度が新規アスファルトの針入度と同等であったとしても、他の性状が変化することで新規アスファルトと同等の性能を発揮できないことがある。
【0023】
使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物は、骨材を含む。この骨材は、当該使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物自体が、骨材としてアスファルト再生骨材を使用したものでる。このような骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等の道路舗装用アスファルト混合物に一般的に使用されている骨材が挙げられる。
【0024】
<不織布製品由来の半炭化物>
本発明のアスファルト組成物は、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である不織布製品由来の半炭化物を含む。
不織布製品由来の半炭化物とは、原料の不織布製品を比較的低温の加熱処理により、水分を限りなくゼロにし、かつ、可燃物(エネルギー)を限りなく残存した成分を意味する。
【0025】
半炭化物は、揮発分の含有量が、耐久性と作業性の観点から、半炭化物の全質量100質量%に対して、50質量%以上90質量%以下であり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
揮発分とは、半炭化物中の可燃性成分であり、加熱により主に炭化水素ガスからなる可燃性ガスを発生させる成分である。
揮発分の含有量は、JIS M8812:2006「石炭類及びコークス類-工業分析方法」に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0026】
半炭化物は、固定炭素の含有量が、耐久性と作業性の観点から、半炭化物の全質量100質量%に対して、7質量%以上40質量%以下であり、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
固定炭素の含有量は、JIS M8812:2006「石炭類及びコークス類-工業分析方法」に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0027】
半炭化物は、半炭化処理によって水分はほとんど含有しない。例えば、半炭化物の全質量100質量%に対して0.01質量%以下である。
半炭化物は、燃料比[固定炭素(質量%)/揮発分(質量%)]が、耐久性と作業性の観点から、好ましくは0.08以上、より好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下である。半炭化物は、燃料比が高く完全な炭化が進行した炭化物とは区別される。
【0028】
本発明において、半炭化物は、不織布製品由来の半炭化物である。
不織布製品を構成する不織布は、JIS L 0222:2022に定義されるとおり、物理的方法及び/又は化学的方法によって所定のレベルの構造的強さが得られている平面状の繊維集合体である。
不織布を構成する繊維成分は、好ましくは熱可塑性樹脂からなる繊維成分、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる繊維成分である。熱可塑性樹脂の繊維成分は、不織布を構成する繊維成分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして100質量%以下である。
なお、熱可塑性樹脂以外の繊維成分としては、パルプ繊維、コットン繊維等の天然繊維;レーヨン等の再生繊維が挙げられる。
このような不織布の好ましい具体例として、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布等及びこれらの2種以上の組み合わせの複合材料が挙げられる。
【0029】
不織布製品の好ましい具体例として、乳幼児用若しくは大人用おむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品が挙げられる。不織布製品である吸収性物品は、典型的には不織布からなる表面材及び吸収体を有する。吸収体は、典型的には、パルプ繊維の集合体、又はパルプ繊維と高吸水性ポリマー材の集合体を有する。
【0030】
アスファルト舗装の耐久性向上を期待してパルプ、レーヨン等の繊維成分を配合した場合、繊維成分の極性が高く、アスファルト中で十分に分散せずに、繊維が凝集してしまう傾向がある。その結果、充填性が不十分となり作業性が劣る場合がある。
本発明のごとく、不織布製品由来の半炭化物、特に好ましい吸収性物品由来の半炭化物を使用すれば、不織布製品が含むパルプ、レーヨン等の繊維成分がアスファルト中で均一に分散することで、充填性に優れ作業性に問題なく、耐久性が優れるアスファルト舗装を提供できるアスファルト混合物が得られると考えられる。より具体的には、不織布を構成するポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の繊維成分が半炭化物の製造時に溶融し、パルプ、レーヨン等の繊維成分をコーティングすると推定される。このアスファルトと親和性が高い熱可塑性樹脂の繊維成分が介在し、アスファルトとパルプ、レーヨン等の繊維成分との混和性を向上させて微分散を可能とすることで、充填性に優れ作業性に問題なく、耐久性が優れるアスファルト舗装が提供できると考えられる。
【0031】
半炭化物の製造は、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である半炭化物を製造できる方法であれば限定されず、原料を所定の低温で加熱する工程により製造することができる。
【0032】
半炭化物の製造(半炭化処理)は、例えば、原料である不織布製品を炉の中に入れ、加熱によって原料の炭化を進行させる方法が挙げられる。加熱は、室温から加熱温度に達するまで昇温し、加熱温度に達した後に温度を保持する方法が挙げられる。
加熱温度は好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
室温から加熱温度の達するまでの昇温速度は、好ましく0.1℃/分以上、より好ましくは0.3℃/分以上であり、好ましくは5℃/分以下、より好ましくは3℃/分以下である。
加熱時間は、半炭化物が得られるように適宜設定することができ、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下である。なお、加熱時間とは上記加熱温度に達した後に維持する時間である。
加熱は、好ましくは空気との接触を遮断して行う。
加熱終了後は、炉の中に空気や窒素を流通させ、得られる半炭化物の冷却を促進することができる。
冷却のための降温速度は、好ましく0.05℃/分以上、より好ましくは0.1℃/分以上であり、好ましくは3℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下である。
【0033】
半炭化物の製造において、原料を攪拌しながら製造を行うことが好ましい。一般に水分を失った半炭化物は脆く、攪拌によって得られる半炭化物は破砕され、粒状体として得られるためである。
【0034】
半炭化物の製造は、炭化炉を用いて行うことができる。より具体的には、シャフト炉、キルン等が挙げられる。
【0035】
<添加剤>
本発明のアスファルト混合物は、上記のアスファルト、骨材、及び上記半炭化物に加え、必要に応じて、従来、アスファルト混合物に慣用されている各種添加剤、例えば、造膜剤、増粘安定剤、乳化剤等を含むことができる。
【0036】
<ポリエステル樹脂>
更に含むことができる添加剤の一例として、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含む、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
ポリエステル樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂が挙げられ、好ましくは非晶質ポリエステル樹脂である。
以下、アルコール成分及びカルボン酸成分について説明する。
【0037】
(アルコール成分)
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
脂肪族ジオールとしては、好ましくは主鎖の炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは主鎖の炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールである。
また、脂肪族ジオールは好ましくは飽和脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0039】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0040】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0041】
【0042】
〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
【0043】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
3価以上の多価アルコールとしては、好ましくは3価アルコールである。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
【0045】
アルコール成分は、物性調整の観点から、1価の脂肪族アルコールを更に含有することができる。1価の脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。これらの1価の脂肪族アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上6価以下の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸としては、主鎖の炭素数が、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、より好ましくは6以下の脂肪族ジカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、炭素数1以上20以下のアルキル基若しくは炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
【0048】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。以上の芳香族ジカルボン酸の中でも、骨材飛散の抑制及び耐水性の観点から、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0049】
3価以上6価以下の多価カルボン酸は、好ましくは3価カルボン酸である。3価以上6価以下の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、又はこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0050】
カルボン酸成分は、物性調整の観点から、1価の脂肪族カルボン酸を更に含有することができる。1価の脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、それらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等の炭素数12以上20以下の1価の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。これらの1価の脂肪族カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
(ポリエチレンテレフタレート由来の構成単位)
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位を含むことができる。ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール由来及びテレフタル酸由来の構成単位の他にブタンジオールやイソフタル酸等の成分を少量含有してもよい。ポリエチレンテレフタレートは、回収されたポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール及びテレフタル酸からなる構成単位を含む場合、「アルコール成分由来の構成単位」はポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位を含み、「カルボン酸成分由来の構成単位」はポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位を含む。
【0052】
ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂は、具体的には、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられる。好ましい変性されたポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0053】
<各成分の含有量>
アスファルト混合物中のアスファルトの含有量は、耐久性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0054】
アスファルト混合物がアスファルト再生骨材を含む場合、アスファルトの含有量とは、新規アスファルトとアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの合計含有量である。アスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、新規アスファルトと区別するために再生骨材由来のアスファルト又は劣化アスファルトという場合もある。
新規アスファルトの含有量は、耐久性の観点から、アスファルト中、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、そして、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。再生骨材由来のアスファルトの含有量は、耐久性の観点から、アスファルト中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
アスファルト再生骨材中の再生骨材由来のアスファルトの含有量は、溶媒抽出法又は強熱減量法により測定することができる。通常、使用済みのアスファルト舗装に由来するアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの含有量は、概ね5.5質量%程度である。
本発明において再生骨材由来のアスファルトの含有量は、強熱減量測定であるAASHTO(American Association of State Highway and Transportation Officials;米国全州道路交通運輸行政官協会) T 308-10(2015)に規定される手法に従って行う。骨材としてアスファルト再生骨材を含むため、アスファルト再生骨材の強熱減量からアスファルト量を求めて、配合計算に用いる。
【0055】
本発明のアスファルト混合物における上記半炭化物の含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、アスファルト100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして作業性を維持する観点から好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0056】
アスファルト混合物中の骨材の含有量は、耐久性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
アスファルト混合物がアスファルト再生骨材を含む場合、骨材の含有量とは、アスファルト再生骨材及び任意で含む新規骨材の合計含有量である。アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト舗装の廃材を再利用する観点から、アスファルト再生骨材及び新規骨材の合計含有量100質量部中、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上であり、アスファルト再生骨材の使用と優れた舗装物性を両立する観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
なお、骨材の含有量に再生骨材由来のアスファルトの含有量は算入する。
【0057】
アスファルト混合物における好適な骨材の配合例として、以下の(1)~(3)が挙げられる。(1)30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、5容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む細粒度アスファルト。(2)一例のアスファルト混合物は、例えば、45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以45容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む密粒度アスファルト。(3)70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含むポーラスアスファルト。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、公益社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に従って用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及び上記半炭化物の合計量に相当する。ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0058】
[アスファルト混合物の製造方法]
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルトと、骨材と、上記半炭化物とを混合する工程を含む。
混合は、好ましくは加熱条件下での混合であり、より好ましくは骨材が加熱した骨材である。
混合する工程は、アスファルト、骨材及び、上記半炭化物を同時に又は順不同で混合することができる。アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは、上記半炭化物を、アスファルトの後に、骨材と混合する。
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプレミックス方式、プラントミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。いずれも加熱した骨材にアスファルト及び半炭化物を添加する方法である。添加方法は、例えば、アスファルト及び半炭化物を予め溶解させたプレミックス方式、又はアスファルトを加熱した骨材に添加し、その後に上記半炭化物塩を同時に又は順不同で投入するプラントミックス方式が挙げられる。これらの中でも、アスファルト性能を発揮する観点から、プラントミックス方式が好ましい。
より具体的には、アスファルト混合物の製造方法は、当該混合する工程において、好ましくは、
(i)加熱した骨材に、アスファルトを添加及び混合して混合物を得た後、上記半炭化物を添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、アスファルト及び上記半炭化物を同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合したアスファルト及び上記半炭化物の混合物を添加及び混合する。
これらの中でも、当該混合する工程は、(i)の方法が好ましい。
【0059】
(iii)の方法において、アスファルト及び上記半炭化物を事前に加熱混合する混合温度は、アスファルト中に半炭化物を均一に分散させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは160℃以上、より更に好ましくは170℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下、より更に好ましくは190℃以下である。
また、アスファルトと上記半炭化物との混合時間は、アスファルト中に半炭化物を均一に分散させる観点から好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上であり、そして、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分間以下である。
アスファルトと上記半炭化物との混合は、例えばホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等を使用して行うことができる。
【0060】
(i)~(iii)の方法において、加熱した骨材の温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、アスファルトの性能安定性の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
加熱温度は、十分な混合によって耐久性を向上させる観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。そして、性能安定性の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
混合時の温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、アスファルトの性能安定性の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
混合時間は、特に限定されない。好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上であり、そして、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分間以下である。
【0061】
混合物を調製する方法は特に限定されないが、アスファルトを加熱溶融し、上記半炭化物及び必要に応じて他の添加剤を添加し、通常用いられている混合機にて、各成分が均一に分散するまで撹拌混合する工程を含むことが好ましい。通常用いられている混合機としては、二軸パグミル型、強制二軸型、水平一軸型、パン型ミキサーなどが挙げられる。
【0062】
本発明のアスファルト混合物は、水を実質的に含まない加熱アスファルト混合物として使用してもよく、また、上記アスファルト混合物に乳化剤や水を配合してアスファルト乳剤とし、これに骨材等を配合し、常温アスファルト混合物として使用してもよい。アスファルト、及び上記半炭化物の混合物は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは水を実質的に含まない。
【0063】
アスファルト混合物を加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の製造方法については、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、通常、骨材とアスファルト組成物とを含むアスファルト混合物の製造方法に準じて行えばよい。
【0064】
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、原料から半炭化物を製造する工程を含むことができる。
このような態様として、下記工程1a及び工程2aを含むアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。
工程1a:原料を150℃以上400℃以下で加熱し、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である半炭化物を製造する工程
工程2a:アスファルトと、加熱した骨材と、前記工程1aで得た半炭化物とを混合する工程
【0065】
上記工程1aにおける加熱温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
加熱時間は、半炭化が達成できるように適宜設定することができ、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下である。
加熱は、好ましくは空気との接触を遮断して行う。
半炭化物の製造は、原料を攪拌しながら製造を行うことが好ましい。
半炭化物の製造は、炭化炉を用いて行うことができる。より具体的には、シャフト炉、キルン等が挙げられる。
【0066】
[道路舗装の施工方法]
本発明のアスファルト混合物は、道路舗装用として好適である。本発明の道路舗装の施工方法は、好ましくは、本発明のアスファルト混合物を道路等に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。アスファルト舗装材層は、通常は道路の基層又は表層であり、耐久性の効果を発揮する観点から、好ましくは道路の表層である。
【0067】
なお、道路舗装方法において、アスファルト混合物は、通常のアスファルト混合物と同様の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の締固め温度は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
【0068】
アスファルト混合物を道路等に施工し形成されるアスファルト舗装材は、耐久性と作業性の観点から、空隙率が好ましくは2.5%以上、より好ましくは3%以上であり、そして、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは6%以下である。
空隙率は、「舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)」(公益社団法人日本道路協会編)の「B008-1 密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」に規定される測定方法に準拠して求めることができる。
なお、空隙率は、骨材中の粗骨材、細骨材及びフィラーの比率により調整することができる。
【0069】
[アスファルト組成物]
本発明は、アスファルト組成物をも提供する。
本発明のアスファルト組成物は、アスファルト、及び、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である半炭化物を含む。
アスファルト及び半炭化物の説明及び好ましい態様は、上記のとおりである。
【0070】
本発明のアスファルト組成物において、上記半炭化物の含有量は、耐久性の観点から、アスファルト100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0071】
本発明のアスファルト組成物は、バインダ組成物であり、例えば、該アスファルト組成物に、骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用できる。すなわち、本発明のアスファルト組成物は、舗装用として好適であり、特に道路舗装用として好適である。
【0072】
[アスファルト組成物の製造方法]
本発明のアスファルト組成物を製造する方法は、アスファルトと、上記半炭化物とを混合する工程を含むことが好ましい。
【0073】
アスファルト組成物は、アスファルトを加熱溶融し、半炭化物を添加し、通常用いられている混合機にて、各成分が均一に分散するまで撹拌混合することにより得られる。通常用いられている混合機としては、ホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等が挙げられる。
【0074】
アスファルトと、半炭化物との混合温度は、アスファルト中に半炭化物を均一に分散させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは160℃以上、より更に好ましくは170℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下、より更に好ましくは190℃以下である。
【0075】
また、アスファルトと、半炭化物との混合時間は、アスファルト中に半炭化物を均一に分散させる観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1.0時間以上、より更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、更に好ましくは5時間以下、より更に好ましくは3時間以下である。
【0076】
本発明のアスファルト組成物の製造方法は、原料から半炭化物を製造する工程を含むことができる。
このような態様として、下記工程1b及び工程2bを含むアスファルト組成物の製造方法が挙げられる。
工程1b:原料を150℃以上400℃以下で加熱し、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である半炭化物を製造する工程
工程2b:アスファルトと、加熱した骨材と、前記工程1bで得た半炭化物とを混合する工程
【0077】
上記工程1bにおける加熱温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
加熱時間は、半炭化が達成できるように適宜設定することができ、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下である。
加熱は、好ましくは空気との接触を遮断して行う。
半炭化物の製造は、原料を攪拌しながら製造を行うことが好ましい。
半炭化物の製造は、炭化炉を用いて行うことができる。より具体的には、シャフト炉、キルン等が挙げられる。
【0078】
[アスファルト改質剤]
本発明は、アスファルト改質剤をも提供する。
本発明のアスファルト改質剤は、揮発分の含有量が50質量%以上90質量%以下、かつ、固定炭素の含有量が7質量%以上40質量%以下である半炭化物を含む。
半炭化物の説明及び好ましい態様は、上記のとおりである。
【0079】
本発明のアスファルト改質剤は、例えばアスファルトと混合し、アスファルト組成物を得るために使用することができる。得られたアスファルト組成物に、加熱した骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用することができる。
本発明のアスファルト改質剤はまた、骨材を含むアスファルト混合物に配合するための改質剤として使用することができる。
【実施例0080】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0081】
[測定方法]
(1)揮発分の含有量の測定
揮発分の含有量は、JIS M8812:2006「石炭類及びコークス類-工業分析方法」に記載の測定方法に準拠して測定した。
(2)固定炭素の含有量の測定
固定炭素の含有量は、JIS M8812:2006「石炭類及びコークス類-工業分析方法」に記載の測定方法に準拠して測定した。
【0082】
試料1
半炭化及び炭化の処理対象の試料1として、未使用の乳幼児用紙おむつ(商品名「メリーズパンツさらさらエアリースルーLサイズ」、花王株式会社製)15kgに水道水7.5kgを吸水させ、さらにりん酸2水素アンモニウム0.6kgを添加したものを使用した。
【0083】
「メリーズパンツさらさらエアリースルーLサイズ」の素材は以下の通りである。なお、素材の表示は、(一社)日本衛生材料工業連合会のガイドラインに基づくものである。
表面材:ポリエステル/ポリオレフィン不織布
吸水材:吸収紙/綿状パルプ/アクリル系高分子吸水材
防水材:ポリオレフィン系フィルム
止着材:ポリオレフィン系フィルム
伸縮材:ポリウレタン
結合材:スチレン系エラストマー合成樹脂など
【0084】
ポリエステル/ポリオレフィン不織布を構成するポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)等であり、ポリオレフィンはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等である。
【0085】
上記条件は使用済み吸収性物品を模擬した条件であり、りん酸2水素アンモニウムは尿に含まれる成分を模擬したものである。
【0086】
試料2
半炭化の処理対象の試料2として、試料1で用いた乳幼児用紙おむつの使用済みのおむつ15kgを使用した。
【0087】
製造例1(半炭化物1の製造)
上記試料1を、原料を攪拌するための攪拌羽根、ヒータ及び送風機構を有する炉を用いて、20℃から250℃まで0.5℃/分で昇温し、250℃で180分間維持し、試料1を加熱した。その後、送風しながら250℃から30℃まで0.2℃/分で降温し、試料を冷却した。加熱及び冷却の間、試料を連続して攪拌した。紙おむつの粒状体の半炭化物である半炭化物1を得た。
使用した攪拌するための攪拌羽根、ヒータ及び送風機構を有する炉の構成を
図1に示す。
半炭化物1中の揮発分の含有量は、70.4質量%であった。また、半炭化物1中の固定炭素の含有量は、17.2質量%であった。
【0088】
製造例2(半炭化物2の製造)
加熱温度を200℃に変更した以外は、製造例1と同様にして、紙おむつの半炭化物である半炭化物2を得た。
半炭化物2中の揮発分の含有量は、81.6質量%であった。また、半炭化物2中の固定炭素の含有量は、9.9質量%であった。
【0089】
製造例3(半炭化物3の製造)
試料1に替えて試料2(使用済み紙おむつ)を使用した以外は、製造例1と同様にして、紙おむつの半炭化物である半炭化物3を得た。
半炭化物3中の揮発分の含有量は、55.6質量%であった。また、半炭化物3中の固定炭素の含有量は、27.8質量%であった。
【0090】
製造例4(半炭化物4の製造)
加熱温度を300℃に変更した以外は、製造例1と同様にして、紙おむつの半炭化物である半炭化物4を得た。
半炭化物4中の揮発分の含有量は、59.0質量%であった。また、半炭化物3中の固定炭素の含有量は、11.7質量%であった。
【0091】
製造例5(炭化物1の製造)
試料1をるつぼに投入し、電気炉にて20℃から800℃まで10℃/分で昇温し、800℃で30分維持し、試料1を加熱した。その後、800℃から30℃まで10℃/分で降温し、試料を冷却して炭化物1を得た。
炭化物1中の揮発分の含有量は、0質量%であった。また、炭化物1中の固定炭素の含有量は、54.1質量%であった。
【0092】
製造例6(未処理物1)
未使用の乳幼児用紙おむつ(商品名「メリーズパンツさらさらエアリースルーLサイズ」)を、はさみを使用して約1cm四方の大きさに裁断して、未処理物1を得た。
未処理物1を使用して均一に混合したアスファルト混合物を得ることができなかった。
【0093】
実施例1
180℃に加熱した骨材(骨材の組成は以下を参照)15kgをアスファルト用混合機に入れ、180℃にて60秒間混合した。次いでストレートアスファルト(三菱商事エネルギー株式会社製)820gを加え、アスファルト用混合機にて1分間混合した。
次いで製造例1で得た半炭化物1を41g加え、アスファルト用混合機にて2分間混合し、アスファルト混合物を得た。
半炭化物1の含有量は、ストレートアスファルト100質量部に対して10質量部であった。
(骨材の組成:)
6号砕石 40.0質量部
7号砕石 13.0質量部
砕砂 10.0質量部
川砂 22.0質量部
山砂 10.0質量部
石粉(炭酸カルシウム)5.0質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 88.7質量%
ふるい目 5 mm: 60.5質量%
ふるい目 2.5 mm: 42.6質量%
ふるい目 1.2 mm: 29.9質量%
ふるい目 0.6 mm: 19.8質量%
ふるい目 0.3 mm: 11.5質量%
ふるい目 0.15mm: 6.2質量%
【0094】
得られたアスファルト混合物を速やかに300mm×300mm×50mmの型枠に充填し、ローラーコンパクター(株式会社岩田工業所製)を用い、温度150℃、荷重0.44kPaにて25回転圧処理を行い、180℃2時間熱養生をかけアスファルト供試体を作製した。また、アスファルト合材1.2kgを計量し、マーシャル試験つき固め機(株式会社ナカジマ技販製、「アスファルト自動つき固め装置」)で円柱状の供試体を作製した。供試体は常温まで徐冷し、脱型機により脱型を行った。
【0095】
[評価]
<ホイールトラッキング試験:わだち掘れ量の評価>
60℃恒温室にて60℃に設定した温水にアスファルト供試体を浸漬し、ホイールトラッキング試験機(株式会社岩田工業所製、荷重1716N、鉄輪幅47mm、線圧291.5N/cm)を用いて、速度15回往復/分にて供試体上に車輪を往復させ、通過回数1,250往復回時の変位量を測定した。その他の測定条件は、「舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)」(公益社団法人日本道路協会編)に記載される「B003 ホイールトラッキング試験方法」に規定される測定方法に従った。
結果を表1に示す。
【0096】
<空隙率の測定>
「舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)」(公益社団法人日本道路協会編)の「B008-1 密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」に規定される測定方法に準拠してアスファルト供試体の空隙率を求めた。
同一条件で空隙率を測定することで、アスファルト混合物の作業性を評価することができる。
【0097】
実施例2~3
半炭化物1の配合量を表1に示した量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、ホイールトラッキング試験を実施した。また、アスファルト供試体の空隙率を測定した。
結果を表1に示す。
【0098】
実施例4~6
半炭化物1を表1に示した半炭化物2~4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、ホイールトラッキング試験を実施した。また、アスファルト供試体の空隙率を測定した。
結果を表1に示す。
【0099】
比較例1
半炭化物1を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、ホイールトラッキング試験を実施した。また、アスファルト供試体の空隙率を測定した。
【0100】
比較例2
半炭化物1を炭化物1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アスファルト供試体を作製し、ホイールトラッキング試験を実施した。また、アスファルト供試体の空隙率を測定した。
【0101】
【0102】
表1に示す結果から、本発明により耐久性が優れるアスファルト舗装が提供できるアスファルト混合物が得られることが分かる。
実施例1~6では3~6%の充填性を達成できており、半炭化物1~4を配合しても舗装の作業性に問題ないことが分かる。
そして、実施例1、4及び6の対比から、揮発分量が多くなるとわだち掘れ量が少なくなり、一方で空隙率が大きくなる傾向があることが分かる。揮発分量に寄与すると考えられる不織布製品に含まれる熱可塑性樹脂の繊維成分が半炭化処理により溶融し、耐久性の向上に寄与する一方で、アスファルトバインダーを増粘させ流動性が低下するためであると考えられる。
また、実施例5及び6の対比から、揮発分量がほぼ同じである場合、固定炭素量が低いほど、空隙率が小さくなる傾向があることが分かる。要因は明確ではないが、固定炭素量が多くなると半炭化物が団粒化し、充填性を低下させる傾向があると推測される。