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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078099
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】遠隔操作ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190455
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】長友 優志
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS10
3C707JT09
3C707JU03
3C707JU12
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX06
3C707LV18
3C707LV24
3C707MS28
3C707MS30
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】フィードバック制御系が不安定にならないように、フィードバック制御系の応答特性を調整することが可能な遠隔操作ロボットを提供する。
【解決手段】作業者がリーダロボットを操作する。フォロワロボットがワークに対して作業を行う。制御装置が、リーダロボットの動作に基づいてフォロワロボットを協調動作させるとともに、フォロワロボットがワークから受ける力を、リーダロボットの動作にフィードバックする。作業者が入力装置に指令を入力する。出力装置が、作業者に情報を通知する。制御装置のフィードバック制御系の少なくとも1つのパラメータが可変である。入力装置に対してパラメータの値を変更する指令が入力されると、制御装置は、フィードバック制御系の安定余裕を計算し、パラメータの値の変化に追従して、安定余裕を示す情報を出力装置に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が操作するリーダロボットと、
ワークに対して作業を行うフォロワロボットと、
前記リーダロボットの動作に基づいて、前記フォロワロボットを協調動作させるとともに、前記フォロワロボットが前記ワークから受ける力を、前記リーダロボットの動作にフィードバックする制御装置と、
作業者が指令を入力する入力装置と、
作業者に情報を通知する出力装置と
を備え、
前記制御装置のフィードバック制御系の少なくとも1つのパラメータが可変であり、
前記入力装置に対して前記パラメータの値を変更する指令が入力されると、前記制御装置は、前記フィードバック制御系の安定余裕を計算し、前記パラメータの値の変化に追従して、安定余裕を示す情報を前記出力装置に出力する遠隔操作ロボット。
【請求項2】
前記制御装置は、前記パラメータを変更する操作があると、前記フィードバック制御系のゲイン余裕及び位相余裕に基づいて前記安定余裕を計算し、前記安定余裕が許容範囲を逸脱すると、前記パラメータの変更を禁止する請求項1に記載の遠隔操作ロボット。
【請求項3】
前記入力装置に対して設定値を識別する設定値識別名が入力されると、前記制御装置は、前記設定値識別名と、現在の前記パラメータの値とを関連付けて記憶し、
前記入力装置に対して前記設定値識別名が指定されて前記パラメータの呼び出しの指令が入力されると、前記制御装置は、指定された前記設定値識別名に関連付けられた前記パラメータの値を、前記パラメータの値として設定する請求項1または2に記載の遠隔操作ロボット。
【請求項4】
作業者が操作するリーダロボットと、
ワークに対して作業を行うフォロワロボットと、
前記リーダロボットの動作に基づいて、前記フォロワロボットを協調動作させるとともに、前記フォロワロボットが前記ワークから受ける触覚に関する情報を、前記リーダロボットの動作にフィードバックする制御装置と、
作業者が指令を入力する入力装置と
を備え、
前記制御装置は、前記入力装置に入力された指令に基づいて、前記フィードバックの程度を調整可能であり、
前記入力装置は、可動範囲内で移動または回転される操作子を含み、前記操作子が操作されることによって前記指令が入力される遠隔操作ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
作業者がリーダロボットを操作し、遠隔のフォロワロボットを協調動作させることにより作業を行う遠隔操作ロボットが公知である。例えば、特許文献1に、内視鏡によって取り込まれた画像を見ながら操作ハンドルを操作することによってマニピュレータを動作させるロボット手術システムが開示されている。特許文献1には、操作ハンドルが操作可能範囲の限界に達したとき、またはマニピュレータが動作可能範囲の限界に達したときに、操作ハンドルを操作可能範囲内に戻し、マニピュレータを動作可能範囲内に戻す際の操作を容易にする技術が開示されている。内視鏡の画像に重ねて表示されたグラフィカルユーザインタフェースにより、この操作を容易に行うことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-88805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工や研磨等の触感に頼る作業を遠隔から行う場合は、加工を行っているフォロワロボットから、作業者が操作しているリーダロボットに、触感に関わる情報、例えばワークから受ける反力や、加工箇所で発生している振動等の情報をフィードバックすることが好ましい。触感に関わる情報のフィードバックの程度は、作業者が作業を行いやすいように調整することが好ましい。すなわち、フィードバック制御系の応答特性を調整できることが好ましい。さらに、制御系の専門知識を持たない作業者でも、容易にフィードバック制御系の応答特性を調整できることが好ましい。
【0005】
フィードバック制御系の応答特性を調整する場合、調整の仕方によってはフィードバック制御系が不安定になり、ロボットの暴走を引き起こす危険性がある。本発明の目的は、フィードバック制御系が不安定にならないように、フィードバック制御系の応答特性を調整することが可能な遠隔操作ロボットを提供することである。本発明の他の目的は、作業者が、フィードバック制御系の応答特性を容易に調整することが可能な遠隔操作ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
作業者が操作するリーダロボットと、
ワークに対して作業を行うフォロワロボットと、
前記リーダロボットの動作に基づいて、前記フォロワロボットを協調動作させるとともに、前記フォロワロボットが前記ワークから受ける力を、前記リーダロボットの動作にフィードバックする制御装置と、
作業者が指令を入力する入力装置と、
作業者に情報を通知する出力装置と
を備え、
前記制御装置のフィードバック制御系の少なくとも1つのパラメータが可変であり、
前記入力装置に対して前記パラメータの値を変更する指令が入力されると、前記制御装置は、前記フィードバック制御系の安定余裕を計算し、前記パラメータの値の変化に追従して、安定余裕を示す情報を前記出力装置に出力する遠隔操作ロボットが提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
作業者が操作するリーダロボットと、
ワークに対して作業を行うフォロワロボットと、
前記リーダロボットの動作に基づいて、前記フォロワロボットを協調動作させるとともに、前記フォロワロボットが前記ワークから受ける触覚に関する情報を、前記リーダロボットの動作にフィードバックする制御装置と、
作業者が指令を入力する入力装置と
を備え、
前記制御装置は、前記入力装置に入力された指令に基づいて、前記フィードバックの程度を調整可能であり、
前記入力装置は、可動範囲内で移動または回転される操作子を含み、前記操作子が操作されることによって前記指令が入力される遠隔操作ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0008】
出力装置に出力された安定余裕を示す情報を確認しながらパラメータを変更することにより、フィードバック制御系が不安定にならないように、フィードバック制御系の応答特性を調整することが可能になる。また、作業者は、操作子を可動範囲内で移動または回転させることにより、フィードバックの程度を指令することができるため、制御に関する専門知識を持っていない作業者でも、容易にフィードバックの程度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施例による遠隔操作ロボットの概略図である。
図2図2は、図1に示した実施例による遠隔操作ロボットの制御装置の1つのフィードバック制御系を表すブロック線図である。
図3図3A及び図3Bは、入力装置の一例を示す斜視図であり、図3Cは、出力装置の表示画面に表示された画像の一例を示す図である。
図4図4は、作業者がパラメータの設定値を変更したときの出力装置の表示の変化を示す図である。
図5図5A及び図5Bは、他の実施例による遠隔操作ロボットの出力装置の表示画面に表示された画像の一例を示す図である。
図6図6は、さらに他の実施例による遠隔操作ロボットの制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図4を参照して、一実施例による遠隔操作ロボットについて説明する。
図1は、本実施例による遠隔操作ロボットの概略図である。本実施例による遠隔操作ロボットは、リーダロボット10、フォロワロボット20、制御装置50、入力装置60、及び出力装置70を含む。リーダロボット10及びフォロワロボット20は、例えば多関節ロボットアームを含む。リーダロボット10及びフォロワロボット20の先端に、それぞれ工作機械12、22が取り付けられている。リーダロボット10の先端には、さらに操作ハンドル13が取り付けられている。
【0011】
作業者90が、操作ハンドル13を把持してリーダロボット10を動かすと、制御装置50の制御下でフォロワロボット20が協調動作する。すなわち、フォロワロボット20は、リーダロボット10の動作と同じ動作を行う。フォロワロボット20が動作すると、その先端に取り付けられた工作機械22がワーク80に対して作用を及ぼす。例えば、工作機械22は研削機器(グラインダ)であり、フォロワロボット20が協調動作することにより、ワーク80に対して研削加工が行われる。なお、フォロワロボット20の先端にワーク80を保持し、固定された工作機械22に対してワーク80の位置を変化させてもよい。また、リーダロボット10の先端には、必ずしも工作機械12を取り付ける必要はない。
【0012】
リーダロボット10の各軸に対応して力覚センサ11が取り付けられている。力覚センサ11は、リーダロボット10の各軸に作用する力を測定する。力覚センサ11の測定結果が制御装置50に取り込まれる。同様に、フォロワロボット20にも、各軸に対応して力覚センサ21が取り付けられている。力覚センサ21は、フォロワロボット20の各軸に作用する力を測定する。力覚センサ21の測定結果が制御装置50に取り込まれる。なお、図1では、複数の力覚センサ11のうち1つ、及び複数の力覚センサ21のうち1つを代表して表している。
【0013】
作業者90が入力装置60を操作することにより、制御装置50に対して種々の指令を与える。入力装置60として、例えばロータリボリューム、スライドボリューム、タッチパネル等が用いられる。作業者90に通知する種々の情報が出力装置70に出力される。出力装置70として、例えば表示装置、スピーカ等が用いられる。
【0014】
次に、図2を参照して制御装置50が実行するフィードバック制御について説明する。図2は、制御装置50の1つのフィードバック制御系を表すブロック線図である。リーダロボット10及びフォロワロボット20の相互に対応する軸ごとに1つのフィードバック制御系が定義される。図2において、変数θは位置(例えば、関節の回転角)を表し、変数Fは力を表し、変数iは電流を表す。各変数の添え字humanは、作業者90の操作に関する変数であることを意味し、添え字leaderは、リーダロボット10の動作に関する変数であることを意味し、添え字followerは、フォロワロボット20の動作に関する変数であることを意味し、workはワーク80に関する変数であることを意味する。
【0015】
以下、リーダロボット10の1つの軸、及びフォロワロボット20の対応する軸に関するフィードバック制御系について説明する。作業者90(図1)がリーダロボット10に対して軸の位置θhumanを変化させる操作を行うと、力覚センサ11に力Fhumanが作用する。リーダロボット10が操作されることにより、リーダロボット10の軸の位置θleaderが変化する。フォロワロボット20の対応する軸の現在の位置θfollowerに対するリーダロボット10の軸の位置θleaderの偏差θerrorに応じて、制御装置50がフォロワロボット20を駆動する電流ifollowerを発生する。偏差θerrorを電流ifollowerに変換するときのゲインをKp_positionと標記する。
【0016】
電流ifollowerによってフォロワロボット20が駆動され、位置θfollowerが変化する。フォロワロボット20の位置θfollowerが変化すると、フォロワロボット20の力覚センサ21がワーク80から受ける反力Fworkが変化する。力覚センサ21は、ワーク80からの反力Fworkにローパスフィルタ21LPを作用させ、フィルタリングされた反力Fworkを出力する。なお、図2において、力覚センサ21の剛性に起因するゲインをK_sensorと標記し、ローパスフィルタ21LPの時定数をTと標記している。
【0017】
リーダロボット10の軸に作用する力Fhumanに対するフォロワロボット20の対応する軸に加わる反力Fworkの偏差FerrorにゲインKp_forceを与えて電流ileaderを発生する。電流ileaderと重力を補償するための重力補償値Gcに相当する電流igcとの合計の電流でリーダロボット10を駆動する。リーダロボット10は、電流ileader及び電流igcによる駆動力と、作業者90の操作による駆動力Fhumanとによって位置θleaderを変化させる。
【0018】
重力補償値Gcは、リーダロボット10に作用する重力を補償するためのパラメータである。重力補償値Gcを大きくすると、リーダロボット10に取り付けられている工作機械12に作用する重力の影響が軽減される。このため、作業者90は、工作機械12をより軽く感じることになる。
【0019】
ゲインKp_forceは、接触のわかりやすさを調整するパラメータである。ゲインKp_forceを大きくすると、フォロワロボット20がワーク80から受ける反力をより大きく感じる。これにより、ワーク80への工作機械22の接触がわかりやすくなる。
【0020】
ローパスフィルタ21LPの時定数Tは、振動のわかりやすさを調整するパラメータである。時定数Tを大きくすると、作業者90は、フォロワロボット20に発生している振動を感じにくくなる。
【0021】
作業者90は、入力装置60(図1)を操作することにより、フィードバック制御系のこれらのパラメータの値を変更することにより、フィードバック制御系の応答特性を調整することができる。
【0022】
図3Aは、入力装置60の一例を示す斜視図である。入力装置60は、3つのロータリボリューム61を備えている。3つのロータリボリューム61は、作業者が変更することができる3つのパラメータに対応している。作業者90が1つのパラメータに対応するロータリボリューム61を操作すると、制御装置50は、リーダロボット10またはフォロワロボット20の複数軸のそれぞれの対応するパラメータの設定値を、操作量に応じて変更する。ロータリボリューム61の操作量と、パラメータの値の変更量との対応関係は、軸ごとに予め決められている。
【0023】
図3Bは、入力装置60の他の例を示す斜視図である。入力装置60は、3つのスライドボリューム62を備えている。3つのスライドボリューム62は、作業者が変更することができる3つのパラメータに対応している。
【0024】
図3A及び図3Bに示したように、入力装置60は、可動範囲内で移動または回転する操作子を備えている。作業者が、この操作子を可動範囲内で移動または回転させることにより、フィードバックの程度を指令することができる。なお、操作子をタッチパネルに表示し、作業者がタッチパネルを操作して操作子を移動または回転させるようにしてもよい。
【0025】
図3Cは、出力装置70(図1)の表示画面に表示された画像の一例を示す図である。
表示画面内に、作業者が変更可能な3つのパラメータのそれぞれの現在の設定値を示すインジケータ71が、その意味と共に表示されている。例えば、インジケータ71は、それぞれ円形の中心から半径方向に延びる指針の向きによって、パラメータの設定値を表す。3つのインジケータ71のそれぞれが持つ意味として、例えば「軽さ」、「接触のわかりやすさ」、「振動の程度」という文字列が表示されている。「軽さ」に対応するインジケータ71は、重力補償値Gcの設定値を表している。「接触のわかりやすさ」に対応するインジケータ71は、ゲインKp_forceの設定値を表している。「振動の程度」に対応するインジケータ71は、ローパスフィルタ21LPの時定数Tの設定値を表している。
【0026】
さらに、表示画面に、フィードバック制御系の安定余裕を示すインジケータ72が表示されている。インジケータ72には、「危険度合い」という文字列が付されている。安定余裕は、フィードバック制御系のゲイン余裕及び位相余裕から求めることができる。例えば、ゲイン余裕及び位相余裕を正規化し、両者の正規化した値のうち、安定限界に近い方の値を、安定余裕の値とすることができる。
【0027】
インジケータ72は、例えば、縦に長い帯状の領域内で、ハッチングを付した危険度を示す領域72Aが下端から上端に向かって延びている。フィードバック制御系の安定余裕が小さくなると、危険度を示す領域72Aが長くなる。すなわち、危険度合いが大きくなる。安定余裕の限界値に相当する位置に、限界線72Bが表示されている。危険度を示す領域72Aが限界線72Bに達しない範囲でパラメータを調整することが推奨される。
【0028】
インジケータ72には、例えばリーダロボット10及びフォロワロボット20の複数軸のそれぞれに対応するフィードバック制御系の安定余裕のうち、安定余裕が最も小さい軸(危険度が最も高い軸)に関する情報を表示するとよい。
【0029】
表示画面内には、保存パラメータリスト表示領域73が確保されている。表示画面に、さらに、現調整保存ボタン74、及び調整呼び出しボタン75が表示されている。表示画面は、タッチパネルとして機能し、入力装置60(図1)を兼ねている。作業者が現調整保存ボタン74をタップすると、制御装置50は、フィードバック制御系の現在のパラメータの設定値をメモリに保存する。このとき、パラメータの設定値を含む情報に、適当な設定値識別名を付与することができる。例えば、設定値識別名に、作業者90の名前及びワーク80の種類等を含めるとよい。
【0030】
保存パラメータリスト表示領域73に、現在までにメモリに保存されているパラメータの設定値の設定値識別名が、リスト形式で表示される。作業者90が、リストの中から1つの設定値識別名を選択し、調整呼び出しボタン75をタップすると、制御装置50は、選択された設定値識別名で特定されるパラメータの設定値をメモリから呼び出し、パラメータに、呼び出した設定値を設定する。フィードバック制御系は、呼び出されたパラメータの設定値でフィードバック制御を行う。
【0031】
図4は、作業者90がパラメータの設定値を変更したときの出力装置70の表示の変化を示す図である。例えば、「軽さ」に関わるパラメータの値を変更すると、「軽さ」に対応するインジケータ71の指針の向きが変化する。同様に、「接触のわかりやすさ」や、「振動の程度」に関わるパラメータを変更すると、「接触のわかりやすさ」や「振動の程度」に対応するインジケータ71の指針の向きが変化する。また、制御装置50は、パラメータ変更後のフィードバック制御系の安定余裕を計算し、その結果を、危険度合いを示すインジケータ72に反映させる。例えば、安定余裕が小さくなる場合は、インジケータ72内の危険度を示す領域72Aを上方に向かって延ばす。なお、危険度が増すとともに、危険度を示す領域72Aの色を変化させてもよい。
【0032】
次に、本実施例の優れた効果について、比較例と比較しながら説明する。
従来の遠隔操作ロボット(比較例)においてフィードバック制御系のパラメータを変更する方法の一例について説明する。フィードバック制御系の専門知識を持たない作業者がパラメータを変更すると、フィードバック制御系の安定余裕が小さくなって、動作が不安定になる場合がある。パラメータの設定値によっては、ロボットが暴走する場合もある。
【0033】
動作が不安定になることを回避するために、作業に熟練した作業者と、制御系の専門知識を持つ技術者とが一組になり、パラメータの調整を行う。例えば、熟練作業者がリーダロボット10を操作して、その時の感触から操作感に対する要望を出す。制御技術者は、この要望を満たすようにパラメータを変更する。パラメータの変更後に、熟練作業者が操作を行い、操作感の改善の程度を確認する。
【0034】
このように、比較例においては、パラメータの調整を、熟練作業者と制御技術者とが一組にいなって行う必要がある。
【0035】
これに対して本実施例では、作業者90が、接触に関するインジケータ71や危険の度合いを示すインジケータ72を見てパラメータの調整を行うことができる。このため、フィードバック制御系の専門知識を持たない作業者90でも、安心してパラメータの調整を行うことができる。
【0036】
さらに、本実施例では、パラメータの設定値をメモリに格納することができる。次に作業するときは、パラメータの設定値をメモリから読み出して遠隔操作ロボットの操作を行うことができる。
【0037】
パラメータの適正な設定値は、作業者の間で同一であるとは限らない。例えば、作業者の技能や癖等に応じてパラメータの適正な設定値が異なる場合が想定される。さらに、ワーク80の種類によっても、パラメータの適正な設定値が変わる場合がある。本実施例では、パラメータの設定値を、作業者ごと、及びワークごとに記録することができる。このため、複数の作業者がロボットを扱うような現場においても、ロボットを操作する作業者は、自分好みのパラメータの設定値を直ちに呼び出すことができる。また、ワーク80の種類が変わっても、パラメータの値を直ちに適正な設定値に変更することができる。
【0038】
次に、図5A及び図5Bを参照して、他の実施例による遠隔操作ロボットについて説明する。以下、図1図4を参照して説明した実施例による遠隔操作ロボットと共通の構成については説明を省略する。
【0039】
図5A及び図5Bは、本実施例による遠隔操作ロボットの出力装置70(図1)の表示画面に表示された画像の一例を示す図である。図3Cに示した実施例では、危険度合いを示すインジケータ72が、帯状の外形を有しており、危険度を示す領域72Aの長さによって危険度合いを表している。これに対して本実施例では、危険度合いを示すインジケータ72が、円形のランプを模している。インジケータ72の色を変化させることにより、危険度合いを作業者90に通知する。例えば、危険度合いが高くない場合は、図5Aに示すように、インジケータ72を緑色にし、危険度合いが許容上限値を超えると、図5Bに示すように、インジケータ72を赤色にして点滅させる。
【0040】
本実施例のように、危険度合いをインジケータ72の色を可変にして通知するようにしてもよい。
【0041】
次に、図6を参照して、さらに他の実施例による遠隔操作ロボットについて説明する。以下、図1図4を参照して説明した実施例による遠隔操作ロボットと共通の構成については説明を省略する。
【0042】
図6は、本実施例による遠隔操作ロボットの制御装置50が実行する手順を示すフローチャートである。制御装置50は、パラメータの変更の操作があるまで待機し(ステップS1)、パラメータ変更の操作があると、変更後のパラメータの値で、フィードバック制御系の安定余裕を計算する(ステップS2)。安定余裕は、フィードバック制御系のゲイン余裕と位相余裕とを計算することにより求めることができる。
【0043】
計算で求められた安定余裕が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS3)。安定余裕が許容範囲内である場合、パラメータの設定値を変更する(ステップS4)。安定余裕が許容範囲を逸脱している場合、パラメータの変更不可を作業者90に通知する(ステップS5)。例えば、出力装置70に、「パラメータ変更不可」のメッセージを表示する。ステップS1からステップS4、S5までの手順を、遠隔操作ロボットの操作が終了するまで繰り返す(ステップS6)。
【0044】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、遠隔操作ロボットの動作が不安定になるようなパラメータの変更が禁止される。これにより、遠隔操作ロボットの不安定な動作を事前に回避することができる。
【0045】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0046】
例えば、上記実施例で用いられる技術的思想は、作業機械を遠隔から操作するような遠隔操作システムにも適用することができる。例えば、ショベルの運転席の操作レバーや操作ペダルを模した遠隔操作装置がリーダロボットに相当し、ショベルの油圧アクチュエータがフォロワロボットに相当する。フォロワロボットの作業対象であるワークは、ショベルのブーム、アーム、バケット等と考えればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 リーダロボット
11 力覚センサ
12 工作機械
13 ハンドル
20 フォロワロボット
21 力覚センサ
21LP ローパスフィルタ
22 工作機械
50 制御装置
60 入力装置
61 ロータリボリューム
62 スライドボリューム
70 出力装置
71、72 インジケータ
72A 危険度を示す領域
72B 危険度の限界線
73 保存パラメータリスト表示領域
74 現調整保存ボタン
75 調整呼び出しボタン
80 ワーク
90 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6