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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078111
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190476
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】上田 奈保
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大輔
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA19
4J043QB31
4J043RA05
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA141
4J043UB131
4J043UB152
4J043UB221
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA03
4J043XA16
4J043YA07
4J043YB35
4J043ZB21
(57)【要約】
【課題】 ポリイミドを製造するための原料として利用した場合に、得られるポリイミドの1%重量減少温度を基準とする耐熱性をより高度なものとすることが可能なポリイミド前駆体樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリイミド前駆体樹脂と、イミダゾール化合物とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記イミダゾール化合物が、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール;フェニル基等の特定の置換基を有するベンゾイミダゾール;並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基等の特定の置換基に置換されてなるイミダゾール;よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするポリイミド前駆体樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体樹脂と、イミダゾール化合物とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記イミダゾール化合物が、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール;フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾール;並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾール;よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項2】
前記イミダゾール化合物が、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、及び、4-イミダゾールカルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体樹脂が、下記式(I):
【化1】
[式(I)中、Xは6員環の脂環構造を有する4価の有機基を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と、ジアミンとの重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ガラス代替用途等に用いる材料としてポリイミドが着目され、そのようなポリイミドを製造するために様々なポリイミド前駆体樹脂組成物が研究されてきた。例えば、国際公開第2015/080158号(特許文献1)には、特定の繰り返し単位を含むポリイミド前駆体と、イミダゾール系化合物とを含むポリイミド前駆体組成物が開示されており、その実施例においては、前記イミダゾール系化合物として、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾールを利用した例が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているようなポリイミド前駆体組成物は、それを用いてポリイミドを製造した場合に、得られるポリイミドの1%重量減少温度を基準とする耐熱性をより高いものとするといった点では十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/080158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリイミドを製造するための原料として利用した場合に、得られるポリイミドの1%重量減少温度を基準とする耐熱性をより高度なものとすることが可能なポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイミド前駆体樹脂と、イミダゾール化合物とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物において、前記イミダゾール化合物を、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール;フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾール;並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾール;よりなる群から選択される少なくとも1種とすることにより、かかる組成物をポリイミドを製造するための原料として利用した場合に、得られるポリイミドの耐熱性(1%重量減少温度を基準とする耐熱性)をより高度なものとすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0007】
[1]ポリイミド前駆体樹脂と、イミダゾール化合物とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記イミダゾール化合物が、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール;フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾール;並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾール;よりなる群から選択される少なくとも1種である、ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【0008】
[2]前記イミダゾール化合物が、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、及び、4-イミダゾールカルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【0009】
[3]前記ポリイミド前駆体樹脂が、下記式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
[式(I)中、Xは6員環の脂環構造を有する4価の有機基を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と、ジアミンとの重合体である、[1]又は[2]に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリイミドを製造するための原料として利用した場合に、得られるポリイミドの1%重量減少温度を基準とする耐熱性をより高度なものとすることが可能なポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値X及びYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
【0014】
(ポリイミド前駆体樹脂組成物)
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体樹脂と、イミダゾール化合物とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物であって、
前記イミダゾール化合物が、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール;フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾール;並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾール;よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするものである。以下、先ず、前記ポリイミド前駆体樹脂と、前記イミダゾール化合物とを分けて説明する。
【0015】
〈ポリイミド前駆体樹脂〉
本発明にかかるポリイミド前駆体樹脂は、特に制限されず、ポリアミド酸(ポリアミック酸)、あるいは、前記ポリアミド酸の誘導体であってもよい。このようなポリイミド前駆体樹脂としては、テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と、ジアミンとの重合体(より好ましくは付加重合物)であるポリアミド酸及び/又はその誘導体(変性物)が好ましい。
【0016】
また、前記テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されず、公知のテトラカルボン酸二無水物(例えば、国際公開2019/181699号に記載されているテトラカルボン酸二無水物(6員環の脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等);国際公開2019/163703号に記載されているテトラカルボン酸二無水物;等)を適宜利用できる。
【0017】
また、このようなテトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(I):
【0018】
【化2】
【0019】
[式(I)中、Xは6員環の脂環構造を有する4価の有機基を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物をより好適に利用することができる。
【0020】
前記式(I)中のXとして好適な「6員環の脂環構造を有する4価の有機基」において、「6員環」としては、環状の構造を形成する原子の数が6個となっている環であればよく特に制限されない(なお、架橋構造を含む二環式の構造等、多環構造を形成している場合(例えばノルボルナン環構造やビシクロオクタン環構造の場合等)には、そのうちのいずれかの環が、原子の数が6個となっている環であればよい)。
【0021】
このようなXとしての4価の有機基が有する「6員環の脂環構造」としては、特に制限されるものではないが、例えば、下記一般式(i)~(iii):
【0022】
【化3】
【0023】
で表されるような脂肪族6員環からなる構造が挙げられる。このような6員環の脂環構造としては、より高度な耐熱性が得られるといった観点、及び、引張り応力に対する耐性がより高度なものとなり、より高度な機械的強度が得られるといった観点から、上記一般式(ii)で表される脂肪族6員環(ノルボルナン環)からなる構造であることがより好ましい。
【0024】
また、Xとして選択される「6員環の脂環構造を有する4価の有機基」としては、前記6員環の脂環構造を有していればよく、前記6員環の脂環構造を形成する炭素原子には、水素原子、水素原子以外の原子等の各種原子や、他の置換基(他の有機基を含む)等が結合していてもよい。さらに、Xとして選択される「6員環の脂環構造を有する4価の有機基」としては、2つのノルボルナン環を有する4価の有機基であることが好ましい。
【0025】
また、前記式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(IA)~(IB):
【0026】
【化4】
【0027】
[式(IA)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0~12の整数を示す。式(IB)中、Aは単結合;及び置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6~30である2価の芳香族基;よりなる群から選択される1種を示し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~10のアルキル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される化合物等も好適なものとして挙げられる。このような6員環の脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で使用してもよく、あるいは、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
このような一般式(IA)中のR、R、Rとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。また、前記一般式(IA)中のR、R、Rとしては、樹脂を製造した際により高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましく、いずれも水素原子であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR、R、Rは精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。さらに、前記一般式(IA)中のnに関して、より精製が容易となるといった観点から、上限値は5(特に好ましくは3)であることがより好ましく、また、原料化合物の安定性の観点から、下限値は1(特に好ましくは2)であることがより好ましい。このように、一般式(IA)中のnとしては、2~3の整数であることが特に好ましい。
【0029】
前記一般式(IB)中のR及びRはそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~10のアルキル基よりなる群から選択される1種である。このようなR及びRとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、より高度な耐熱性が得られるという観点から、1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。また、このようなR及びRとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、前記一般式(IB)中のR及びRは、より高度な耐熱性が得られること、原料の入手が容易であること、精製がより容易であること、等といった観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基であることが更に好ましく、いずれも水素原子であることが特に好ましい。また、このような式(IB)中のR及びRは、それぞれ、同一のものであってもあるいは異なるものであってもよいが、精製の容易さ等の観点からは、同一のものであることが好ましい。
【0030】
また、前記一般式(IB)中のAは、単結合;及び置換基を有していてもよくかつ芳香環を形成する炭素原子の数が6~30である2価の芳香族基;よりなる群から選択される1種を示す。
【0031】
このようなAとして選択され得る2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基であり、該芳香族基中に含まれる芳香環を形成する炭素の数(なお、ここにいう「芳香環を形成する炭素の数」とは、その芳香族基が炭素を含む置換基(炭化水素基など)を有している場合、その置換基中の炭素の数は含まず、芳香族基中の芳香環が有する炭素の数のみをいう。例えば、2-エチル-1,4-フェニレン基の場合、芳香環を形成する炭素の数は6となる。)が6~30のものである。このように、上記式中のAとして選択され得る2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、かつ、炭素数が6~30の芳香環を有する2価の基(2価の芳香族基)である。このような芳香環を形成する炭素の数が前記上限を超えると、かかる化合物を利用して樹脂を調製した場合に、その樹脂の着色を十分に抑制することが困難となる傾向にある。また、透明性及び精製の容易さの観点からは、前記2価の芳香族基の芳香環を形成する炭素の数は、6~18であることがより好ましく、6~12であることが更に好ましい。
【0032】
また、このようなAとして選択され得る2価の芳香族基としては、上記炭素の数の条件を満たすものであればよく、特に制限されないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ビフェニル、ターフェニル、クオターフェニル、キンクフェニル等の芳香族系の化合物から2つの水素原子が脱離した残基(なお、このような残基としては、脱離する水素原子の位置は特に制限されないが、例えば、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基、9,10-アントラセニレン基等が挙げられる。);及び該残基中の少なくとも1つの水素原子が置換基と置換した基(例えば、2,5-ジメチル-1,4-フェニレン基、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレン基)等を適宜利用することができる。なお、このような残基において、前述のように、脱離する水素原子の位置は特に制限されず、例えば、前記残基がフェニレン基である場合においてはオルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよい。
【0033】
また、前記一般式(IA)で表される化合物としては、例えば、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(ChODA)等が挙げられる。このような一般式(IA)で表される化合物の製造方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、国際公開第2011/099518号に記載の方法等)を適宜採用できる。さらに、前記一般式(IB)で表される化合物としては、例えば、下記式(B-1)~(B-3):
【0034】
【化5】
【0035】
で表される化合物が挙げられる。このような一般式(IB)で表される化合物の製造方法は特に制限されず、公知の方法(例えば国際公開第2015/163314号、国際公開第2017/030019号に記載の方法等)を適宜採用できる。
【0036】
また、このようなテトラカルボン酸二無水物としては、中でも、透明性、耐熱性、高寸法安定性の観点から、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(ChODA)、上記式(B-1)で表される化合物(BNBDA)、上記式(B-2)で表される化合物(BzDA)、上記式(B-3)で表される化合物(BpDA)がより好ましく、CpODA、BNBDA、BzDAが特に好ましい。
【0037】
また、前記テトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、前記テトラカルボン酸二無水物を用いて得られるものであればよく、特に制限されるものではなく、例えば、テトラカルボン酸二無水物を変性して得られるジエステルジカルボン酸やジエステルジカルボン酸ジクロライドなどを挙げることができる。このような誘導体の調製方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0038】
また、前記ジアミンとしては、ポリイミド前駆体樹脂の製造に利用することが可能なものであればよく、特に制限されず、脂肪族ジアミンであってもあるいは芳香族ジアミンであってもよい。このようなジアミンとしては、耐熱性、及び、重合方法の簡便さの観点から、芳香族ジアミンが好ましく、中でも、下記一般式(II):
HYN-R10-NYH (II)
[式(II)中、R10は炭素数6~50のアリーレン基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数3~9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される芳香族ジアミンがより好ましい。なお、このような一般式(II)中のY及びYとして選択され得るアルキルシリル基としてはトリメチルシリル基又はt-ブチルジメチルシリル基がより好ましい。
【0039】
また、このような式(II)中のY及びYは、ポリイミド前駆体樹脂の合成の簡便さの観点から、いずれも水素原子であることがより好ましい。すなわち、上記式(II)で表される芳香族ジアミンとしては、式:HN-R10-NHで表される芳香族ジアミンがより好ましい。
【0040】
また、前記式(II)中のR10として選択され得るアリーレン基は、炭素数が6~50のものであるが、このようなアリーレン基の炭素数は6~40であることが好ましく、6~30であることがより好ましく、12~20であることが更に好ましい。このような炭素数が前記下限未満では、最終的に形成するポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイミドを調製した場合に、そのポリイミドの溶媒に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0041】
前記ジアミンとして好適な式(II)で表される芳香族ジアミンとしては、特に制限されず、式中のR10の位置に炭素数6~50のアリーレン基を含む公知の化合物(例えば、国際公開2019/163703号に記載されている芳香族ジアミン等)を適宜利用でき、市販のものを適宜用いてもよい(なお、この場合、R10は、公知の芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基(2価の基:アリーレン基)となる)。
【0042】
また、このような式(II)中のR10としては、ポリイミドを製造した際に耐熱性をより高度なものとすることが可能であるといった観点から、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)、p-ジアミノベンゼン(PPD)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BODA)、2,7-ジアミノフルオレン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、ベンジジン、o-ジアニシジン、m-ジアニシジン、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジフェニレンスルホン、4,4’’-ジアミノ-p-テルフェニル、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)であることがより好ましく、DABAN、TFMB、PPD、BODAからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)であることが更に好ましい。なお、このような芳香族ジアミンは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0043】
また、芳香族ジアミンを2種類以上組み合わせて利用する場合には、DABAN、TFMB、PPD、BODA、o-トリジン、m-トリジン、4,4’’-ジアミノ-p-テルフェニル、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル(より好ましくはDABAN、TFMB、PPD、BODA)の中から選択される少なくとも2種を利用することが好ましい。また、芳香族ジアミンを2種類以上組み合わせて利用する場合における芳香族ジアミンの組み合わせとしては、DABANとPPDの組み合わせ、DABANとBODAの組み合わせ、DABANとTFMBの組み合わせ、等を好適な例として挙げることができる。
【0044】
なお、式(II)で表されかつ式中のY及びYのうちの少なくとも一方が水素原子以外のものとなる芳香族ジアミンとしては、式:HN-R10-NHで表される芳香族ジアミンとシリル化剤とを反応させて得られるシリル化されたジアミン等が挙げられ、例えば、ビス(4-トリメチルシリルアミノフェニル)エーテル、1,4-ビス(トリメチルシリルアミノ)ベンゼン等が挙げられる。なお、前記シリル化剤としては、例えば、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0045】
また、このようなジアミンを製造するための方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなジアミンとしては市販品を適宜利用してもよい。
【0046】
また、本発明にかかるポリイミド前駆体樹脂としては、前記式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と、前記式(II)で表されるジアミンとの重合体であるポリアミド酸及び/又はその誘導体(変性物)が好ましい。また、このようなポリイミド前駆体樹脂としては、下記一般式(III):
【0047】
【化6】
【0048】
で表される繰り返し単位を有するものがより好ましい。なお、前記式(III)中のXは、上記一般式(I)中のXと同義である(その好適なものも式(I)中のXと同義である)。また、前記式(III)中のR10は炭素数6~50のアリーレン基を示す。このような一般式(III)中のR10は上記一般式(II)中のR10と同様のものである(その好適なものも上記一般式(II)中のR10と同様である)。また、式(III)中のY及びYはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、又は、炭素数3~9のアルキルシリル基のいずれかである。このようなY、Yは、その置換基の種類、及び、置換基の導入率を、その製造条件(用いるジアミンの種類等)を適宜変更することで変化させることができる。このようなY、Yは、いずれも水素原子である場合(いわゆるポリアミド酸の繰り返し単位となる場合)には、これを用いてポリイミドを製造する場合にその製造がより容易となる傾向がある。
【0049】
また、前記式(III)中のY、Yが炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。また、Y、Yが炭素数1~6(好ましくは炭素数1~3)のアルキル基である場合、Y、Yはメチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0050】
また、前記式(III)中のY、Yが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。このようにY、Yが炭素数3~9のアルキルシリル基である場合、Y、Yはトリメチルシリル基又はt-ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。
【0051】
さらに、前記式(III)中のY、Yに関して、水素原子以外の基(アルキル基及び/又はアルキルシリル基)の導入率は、特に限定されないが、樹脂中に含まれる前記式(III)で表される繰り返し単位中の全てのY及びYのうちの少なくとも一部をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とする場合、全ての前記式(III)で表される繰り返し単位中のY、Yの総量の25%以上(より好ましくは50%以上、更に好ましくは75%以上)をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とすることが好ましい(なお、この場合、アルキル基及び/又はアルキルシリル基以外のY、Yは水素原子となる)。また、前記式(III)で表される繰り返し単位中のY、Yのそれぞれについて、総量の25%以上をアルキル基及び/又はアルキルシリル基にすることで、ポリイミド前駆体の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。
【0052】
前記式(III)で表される繰り返し単位は、上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体と、上記一般式(II)で表される芳香族ジアミン(HYN-R10-NYH)とを反応させることにより、容易に形成することができる。このように、モノマー成分を目的の設計に併せて適宜選択することで、前記式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体(ポリイミド前駆体樹脂)を形成できる。
【0053】
また、このようなポリイミド前駆体樹脂(重合体)が前記式(III)で表される繰り返し単位を含有する場合、前記式(III)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して20~100モル%(更に好ましくは30~100モル%、より好ましくは40~100モル%、更に好ましくは50~100モル%、特に好ましくは60~100モル%)であることが好ましい。また、前記式(III)で表される繰り返し単位の含有量の前記数値範囲の下限値は、70モル%であることがより好ましく、80モル%であることが更に好ましく、90モル%であることが最も好ましい。このような繰り返し単位の含有量が前記下限未満では、耐熱性をより高度な水準のものとすることが困難となる傾向にある。
【0054】
また、本発明にかかるポリイミド前駆体樹脂としては、用いる用途などに応じて、前記式(III)で表される繰り返し単位とともに、他の繰り返し単位を更に含むものを好適に利用できる。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリイミド前駆体樹脂の繰り返し単位として利用できる公知の繰り返し単位が挙げられる。このような他の繰り返し単位としては、例えば、前記式(I)で表される化合物以外の他のテトラカルボン酸二無水物を用いて、これらを上記式:HYN-R10-NYHで表される芳香族ジアミンと反応させることで形成される繰り返し単位等としてもよい。
【0055】
このような他のテトラカルボン酸二無水物としては特に制限されず、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の前記式(I)で表される化合物以外の公知のテトラカルボン酸二無水物を適宜利用できる。
【0056】
また、本発明にかかるポリイミド前駆体樹脂がポリアミド酸である場合、その固有粘度[η]は0.05~3.0dL/gであることが好ましく、0.1~2.0dL/gであることがより好ましい。このようなポリアミド酸の固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このようなポリアミド酸の固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N-ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用いる。
【0057】
このようなポリイミド前駆体樹脂(重合体)の製造方法は特に制限されず、例えば、目的の設計に応じ、モノマーとして、テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、前記ジアミンとを適宜選択し、公知のポリイミド前駆体樹脂(重合体)の調製方法(重合方法)と同様の方法を採用して製造してもよい。例えば、上記テトラカルボン酸二無水物としてCpODAを利用する場合には、国際公開第2011/099518号に記載されているポリアミド酸を製造するための方法等を適宜採用してもよい。このように、用いるモノマー(上記テトラカルボン酸二無水物及び上記ジアミン)の種類に応じて、公知の文献に記載されている重合条件等を適宜利用してポリイミド前駆体樹脂(重合体)を調製することができる。
【0058】
〈イミダゾール化合物〉
本発明にかかるイミダゾール化合物は、炭素数2~10のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾール(以下、場合により「イミダゾール化合物(A)」と称する);フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾール(以下、場合により「イミダゾール化合物(B)」と称する);並びに、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾール(以下、場合により「イミダゾール化合物(C)」と称する)よりなる群から選択される少なくとも1種である。以下、本発明のイミダゾール化合物として利用され得るイミダゾール化合物(A)~(C)を分けて説明する。
【0059】
前記イミダゾール化合物(A)は、炭素数2~10(より好ましくは2~8、更に好ましくは2~6)のアルキル基のみを置換基として有するイミダゾールである(このように、イミダゾール化合物(A)は、置換基として炭素数2~10のアルキル基のみを有するものであり、他の置換基を含まないものである)。このようなイミダゾール化合物(A)中の置換基のアルキル基の炭素数を前記下限以上とすることで、前記下限未満とした場合と比較して、かかる化合物を含む組成物を利用してポリイミドを製造した場合に、1%重量減少温度を基準とした耐熱性をより高度なものとすることが可能となり、他方、前記炭素数を前記上限以下とすることで、前記上限を超えた場合と比較して、1%重量減少温度を基準とした耐熱性をより高度なものとすることが可能となる。また、このようなイミダゾール化合物(A)の置換基としてのアルキル基は、炭素数が前記範囲にあればよく、それ以外は特に制限されず、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。このようなアルキル基の中でも、耐熱性の更なる向上の観点からは、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基が好ましく、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましい。
【0060】
また、このようなイミダゾール化合物(A)としては、例えば、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール等が挙げられる。このようなイミダゾール化合物(A)の中でも、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の点でより高い効果が得られることから、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-プロピルイミダゾールがより好ましく、2-エチルイミダゾールが特に好ましい。
【0061】
前記イミダゾール化合物(B)は、フェニル基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を有するベンゾイミダゾールである。このようなイミダゾール化合物(B)が有する置換基としては、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の点でより高い効果が得られるといった観点から、特に、フェニル基又はアミノ基であることが好ましい。また、このようなイミダゾール化合物(B)としては、中でも、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の点でより高い効果が得られることから、2-アミノベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾールがより好ましい。
【0062】
前記イミダゾール化合物(C)は、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子がメチル基、ヒドロキシメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキサミド基、アクリル酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種の置換基に置換されてなるイミダゾールである。このようなイミダゾール化合物(C)の4位の位置の水素原子が置換される置換基(4位の位置に有する置換基)としては、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の観点から、メチル基、フェニル基、アミノ基、カルボキシ基がより好ましく、フェニル基、メチル基が特に好ましい。なお、このようなイミダゾール化合物(C)は、1位の位置の水素原子は置換されておらずかつ4位の位置の水素原子が上記置換基に置換されているものであればよく、他の位置の水素原子が更に置換基に置換されていてもよい。このような他の位置の置換基としては4位の位置の置換基と同様のものであってもよく、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニトリル基、フルオロフェニル基、カルボン酸フェニル基、クロロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基等を好適に利用できる。また、このようなイミダゾール化合物(C)としては、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の点でより高い効果が得られることから、4位の位置にのみ置換基を有するイミダゾール化合物が好ましく、中でも、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾールがより好ましく、4-メチルイミダゾールが特に好ましい。
【0063】
また、本発明にかかるイミダゾール化合物(前記イミダゾール化合物(A)~(C)よりなる群から選択される少なくとも1種のイミダゾール化合物)として利用可能な化合物としては、例えば、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸、4-アミノイミダゾール、4-アミノ-1H-イミダゾール-5-カルボニトリル、4-エチルイミダゾール、4-シアノメチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、5-シアノ-1H-イミダゾール-4-カルボキサミド、4,5-ジフェニルイミダゾール、4-イミダゾールアクリル酸、4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、4-(トリフルオロメチル)イミダゾール、2-(4-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、4-(4,5-ジフェニル-1H-イミダゾール-2-イル)安息香酸、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-(4-シアノフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1H-イミダゾール-4,5-ジカルボン酸が挙げられる。
【0064】
また、本発明にかかるイミダゾール化合物(前記イミダゾール化合物(A)~(C)よりなる群から選択される少なくとも1種のイミダゾール化合物)としては、1%重量減少温度を基準とした耐熱性の点でより高い効果が得られるといった観点から、中でも、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸が好ましく、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾールがより好ましく、2-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾールが更に好ましく、2-エチルイミダゾール、4-メチルイミダゾールが特に好ましい。
【0065】
〈組成物の組成等について〉
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記ポリイミド前駆体樹脂と、前記イミダゾール化合物とを含有するものである。
【0066】
このようなポリイミド前駆体樹脂組成物において、前記ポリイミド前駆体樹脂(以下、場合により「第一成分」と称する)の含有量と、前記イミダゾール化合物(以下、場合により「第二成分」と称する)の含有量は特に制限されないが、第一成分100質量部に対する第二成分の含有量が1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることが特に好ましい。このようなイミダゾール化合物(第二成分)の含有量が前記下限未満では、ポリイミドを製造した場合にポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイミドを製造した場合に耐熱性が低下する傾向にある。
【0067】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、重合時や製膜時の作業性がより向上するといった観点から、前記ポリイミド前駆体樹脂(第一成分)、及び、前記イミダゾール化合物(第二成分)とともに、溶媒を含むことが好ましい。すなわち、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記ポリイミド前駆体樹脂(第一成分)と前記イミダゾール化合物(第二成分)と溶媒とを含有するものを好適な実施形態として挙げることができる。このような溶媒を含む形態のポリイミド前駆体樹脂組成物は、いわゆる樹脂ワニスとして利用することが可能であり、これにより、より効率よくフィルム状のポリイミドを製造すること等も可能となる。
【0068】
また、このような溶媒としては特に制限されず、例えば、ポリアミド酸の樹脂溶液に利用することが可能なものを好適に利用することができる。このような溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコール、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;シクロペンタノンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート等の酢酸エステル系溶媒、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒などが挙げられる。
【0069】
また、このような溶媒としては、溶解性、成膜性、生産性、工業的入手性、既存設備の有無、価格といった観点から、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素がより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿素が特に好ましい。なお、このような溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0070】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物が溶媒を含有する場合、その溶媒の含有量は特に制限されないが、50~99質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることが更に好ましく、70~90質量%であることが特に好ましい。このような溶媒の含有量が前記下限未満では、ポリイミド前駆体樹脂を溶媒に十分に溶解させた状態とすることが困難となり、均一なワニス組成物とすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイミド前駆体樹脂をイミド化し、硬化させてポリイミドを製造した際にポリイミドの機械的強度が低下する傾向にある。
【0071】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記ポリイミド前駆体樹脂(第一成分)、前記イミダゾール化合物(第二成分)及び前記溶媒以外の他の成分を更に含んでいてもよい。このような他の成分としては、特に制限されないが、例えば、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、核剤、樹脂添加剤(フィラー、タルク、ガラス繊維など)、難燃剤、加工性改良剤・滑材等が挙られる。また、これらの他の成分(酸化防止剤等)としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のものを利用してもよい。なお、このような他の成分の含有量は特に制限されるものではないが、第一成分100質量部に対して0.01~90質量部であることが好ましい。
【0072】
このような本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を製造するための方法は特に制限されず、上記ポリイミド前駆体樹脂(第一成分)と、上記イミダゾール化合物(第二成分)とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物を製造することが可能な方法であればよい。このような方法としては、例えば、溶媒の存在下、前記テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と;前記ジアミンと;を反応(重合反応を進行)させて、ポリイミド前駆体樹脂(例えばポリアミド酸等)を形成し、ポリイミド前駆体樹脂と溶媒との混合物を得た後、前記混合物に前記イミダゾール化合物を添加することで、ポリイミド前駆体樹脂組成物を得る方法(I)を好適に採用することができる。なお、このような方法(I)に用いるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体、ジアミン、イミダゾール化合物、及び、溶媒は既に説明したものと同様のものである(その好適なものも同様のものである)。なお、テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体や、ジアミンは、形成するポリイミド前駆体樹脂の設計に応じて、好適なものを適宜選択して利用すればよい。
【0073】
このような方法(I)において、溶媒の存在下において、前記テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種と、前記ジアミンとを反応させるための条件は、目的とする反応が進行するような条件であればよく、特に制限されず、用いる成分の種類に応じて重合反応が進行するように、その条件を適宜設定すればよい。例えば、ポリイミド前駆体樹脂としてポリアミド酸を製造する場合には、公知のポリアミド酸の製造方法(例えば、国際公開第2011/099518号に記載されているポリアミド酸を製造するための方法等)で採用している条件の中から好適な条件を適宜採用してもよい。このようにして、溶媒の存在下において、テトラカルボン酸二無水物及び/又はその誘導体と、ジアミンとを反応させることにより、ポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸)を形成することができ、ポリイミド前駆体樹脂(例えば、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体樹脂)と、溶媒との混合物を得ることができる。そして、そのような混合物に、前記イミダゾール化合物を添加することで、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を効率よく製造することができる。なお、このような方法(I)を採用した場合、得られるポリイミド前駆体樹脂組成物は、溶媒を含有する形態(本発明の好適な一実施形態)のものとすることができる。また、このようにして得られる溶媒を含有する形態の本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、これをそのままポリイミド調製用のワニス(樹脂溶液)として利用することもできる。なお、このように、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物をワニス(樹脂溶液)として利用した場合、例えば、それを加熱硬化することで、ポリイミド(ポリイミド前駆体樹脂組成物の加熱硬化物)を効率よく得ることも可能である。
【0074】
さらに、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を利用してポリイミドを形成するための方法は、特に制限されず、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体樹脂をイミド化してポリイミドとすることが可能な公知の方法を適宜採用することができる。このようなイミド化の方法としては特に制限されず、前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ポリイミド前駆体樹脂がポリアミド酸である場合、国際公開第2011/099518号に記載されているイミド化の方法や、国際公開第2015/163314号に記載されているイミド化の方法、国際公開第2017/030019号に記載されているイミド化の方法、等を適宜採用できる。なお、テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体と、ジアミンの種類を適宜選択して製造した上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体樹脂を含む本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を利用してポリイミドを調製した場合には、下記一般式(IV):
【0075】
【化7】
【0076】
[式中、X、R10はそれぞれ上記一般式(III)中のX、R10と同義である。]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドを調製することもできる。
【0077】
また、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を利用してポリイミドを調製した場合(本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物のイミド化物を調製した場合)には、Td1%を基準とする耐熱性がより高度なポリイミドを製造することが可能となる。なお、このようにして本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を用いて得られるポリイミドは、その特性から、例えば、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、半導体の再配線用絶縁膜、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、複写機用シームレスポリイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、透明電極基板(有機EL用透明電極基板、太陽電池用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)、層間絶縁膜、センサー基板、イメージセンサーの基板、発光ダイオード(LED)の反射板(LED照明の反射板:LED反射板)、LED照明用のカバー、LED反射板照明用カバー、カバーレイフィルム、高延性複合体基板、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、カラーフィルタ基材等を製造するための材料として特に有用である。また、このような本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を用いて得られるポリイミドは、上述のような用途以外にも、その形状を粉状体としたり、各種成形体とすること等により、例えば、自動車用部品、航空宇宙用部品、軸受部品、シール材、ベアリング部品、ギアホイールおよびバルブ部品などに適宜利用することも可能である。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
〔モノマー等の略称について〕
先ず、各実施例等において用いたテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及びイミダゾール化合物の種類を簡単に説明する(テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンについては、化学式や略称等を記載する)。なお、以下の実施例等においては、場合により、下記略称等を利用して化合物を表現する。
【0080】
(1)テトラカルボン酸二無水物
各実施例等において用いたテトラカルボン酸二無水物の略称等を下記表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
ただし、BzDAを利用した各実施例等においては、表1に示す式で表される化合物(BzDA)であって、かつ、酸無水物基がいずれもノルボルナン環に対してエキソ(exo)の立体配座を取った構造を有する「exo,exo-5,5'-(1,4-phenylene)bis(bicyclo[2.2.1]heptane-2,3-exo-dicarboxylic anhydride)」を利用した。
【0083】
(2)芳香族ジアミン
各実施例等において用いた芳香族ジアミンの略称等を下記表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
(3)イミダゾール化合物
各実施例等において用いたイミダゾール化合物の名称を下記表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
(4)溶媒
各実施例において用いた溶媒の略称等を下記表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
〔ポリイミド前駆体樹脂組成物の特性評価の方法について〕
ここで、後述の各実施例等で得られたポリイミド前駆体樹脂組成物の特性の評価方法について説明する。なお、各実施例等で得られたポリイミド前駆体樹脂組成物については、その特性を評価するために、各実施例等で製造したポリイミドからなるフィルムを用いて以下に示す測定をそれぞれ行った。
【0090】
<1%重量減少温度(Td1%)及び5%重量減少温度(Td5%)の測定>
各実施例で製造したポリイミドからなるフィルムをそれぞれ用いて、ポリイミドの10mg前後の試料を準備し、これをアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA7200」)を使用して、窒素ガス雰囲気下、走査温度を40℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が1%減少する温度(Td1%)と、5%減少する温度(Td5%)をそれぞれ測定することにより、ポリイミドのTd1%及びTd5%を求めた。
【0091】
<黄色度(YI)の測定>
各実施例で得られたポリイミドからなるフィルムをそれぞれ用いて、得られたポリイミドの黄色度(YI)を、以下のようにして測定した(ただし、一部の実施例は未測定)。すなわち、前記ポリイミドからなるフィルムをそのまま測定用の試料として用い、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用い、ASTM E313-05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより、各実施例等で得られたフィルムを構成するポリイミの黄色度(YI)を求めた。
【0092】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
各実施例で得られたポリイミドからなるフィルムをそれぞれ用いて、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を以下のようにして測定した(ただし、一部の実施例は未測定)。すなわち、測定試料として前記ポリイミドからなるフィルムから切り出した縦20mm、横5mmの大きさの試料(かかる試料の厚みは測定値に影響するものではないため、実施例で得られたフィルムの厚みのままとした)を用い、かつ、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)の値(単位:℃)を求めた。
【0093】
<線膨張係数(CTE)の測定>
各実施例で得られたポリイミドからなるフィルム(ポリイミド前駆体樹脂組成物のイミド化物)をそれぞれ用いて、ポリイミドの線膨張係数を以下のようにして測定した(ただし、一部の実施例は未測定)。すなわち、先ず、前記ポリイミドからなるフィルムから、縦:20mm、横:5mmの大きさの測定用のフィルムを形成し(なお、表5~9に示すような厚みの範囲であれば、測定用のフィルムの厚みは測定値に特に影響するものではないため、測定用のフィルムの厚みとしては各実施例等のフィルムの厚みをそのまま採用した)。次に、得られた測定用のフィルムを真空乾燥(120℃、1時間)した後、窒素雰囲気下、200℃で1時間熱処理することにより、測定試料(乾燥フィルム)を調製した。次いで、得られた測定試料(乾燥フィルム)を用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃~200℃における前記測定試料の長さの変化を測定して、100℃~200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより測定した。
【0094】
(実施例1)
<ポリイミド前駆体樹脂組成物の調製工程>
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、ジアミンとして、DABANを0.4545g(2.00mmol)及びPPDを0.3244g(3.00mmol)導入するとともに、テトラカルボン酸二無水物としてCpODAを1.9219g(5.00mmol)導入した([モノマーのモル比]CpODA:DABAN:PPD=1:0.4:0.6)。次いで、前記スクリュー管内に、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を15.3045g添加して、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の総量(モノマーの総量)の比率(含有量)が15質量%となる混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、80℃にて攪拌して結晶の溶解を確認した後、更に室温(25℃程度)の温度条件下で1日間撹拌し、溶液中においてポリアミド酸(ポリイミド前駆体樹脂)を形成せしめて、ポリアミド酸を含む反応液を得た。次に、前記ポリアミド酸の製造に用いたジアミンとテトラカルボン酸二無水物の総量(モノマーの総量:2.7008g)の12質量%に相当する量(0.3241g)の2-エチルイミダゾールを、前記反応液に加え、室温にて1時間攪拌することにより、溶媒と、2-エチルイミダゾールと、ポリイミド前駆体樹脂とを含有するポリイミド前駆体樹脂組成物(組成物中のポリイミド前駆体樹脂の含有量(ポリイミド前駆体樹脂の製造に利用したモノマーの総量)は15質量%)を得た。なお、このようなポリイミド前駆体樹脂組成物の調製工程から、得られた組成物において、ポリイミド前駆体樹脂の含有量(ポリイミド前駆体樹脂の製造に利用したモノマーの総量)100質量部に対する2-エチルイミダゾール(イミダゾール化合物)の含有量は12質量部であることが分かる。
【0095】
<ポリイミド前駆体樹脂組成物を利用したポリイミドの調製工程>
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を、縦76mm、横52mmの大きさのガラス基板にスピンコーターを用いて塗布し、ガラス基板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を真空ホットチャンバーにセットし、減圧条件下(圧力:150Pa)、70℃で30分間加熱する工程を実施し、前記塗膜から溶媒を除去した。その後、溶媒除去後の前記塗膜が積層された状態の前記ガラス基板をイナートオーブンの加熱室内にセットし、加熱室内に窒素パージを実施した。次いで、イナートオーブンの温度を380℃まで昇温して1時間保持した後(かかる加熱温度及び保持時間の条件を以下において、場合により「製膜加熱条件」と称する)、室温(25℃程度)まで放冷するように、イナートオーブンを操作することにより、ガラス基板上にポリイミドを形成し、ポリイミドからなるフィルムがコートされたガラス基板を得た。次いで、当該ガラス基板から、ポリイミドからなるフィルムを剥離し、無色透明のポリイミドからなるフィルムを得た。得られたポリイミドの膜厚や各種特性を表5~6に示す。
【0096】
(本願の実施例1と、上記特許文献1の実施例1~5との対比)
上記特許文献1(国際公開第2015/080158号)の実施例1~5の記載、表2-1の記載、合成例1(ワニスA)の記載を参照すると、かかる特許文献1の実施例1~5においては、CpODA(1.0モル)、DABAN(0.4モル)及びPPD(0.6モル)をモノマーとして利用して得られたワニスA(合成例1)を利用して、ポリイミド前駆体樹脂と、1,2-ジメチルイミダゾールとを含む組成物を調製し、その後、ポリイミドを製造しています。このように、上記特許文献1の実施例1~5は、モノマーのモル比(CpODA:DABAN:PPD)が1:0.4:0.6となっているため、上記本願の実施例1と、ポリイミド前駆体樹脂のモノマーの組成比(モル比)が同じものとなります。なお、上記特許文献1の実施例1~5に記載されているポリイミド前駆体樹脂溶液(組成物)におけるポリイミド前駆体樹脂の含有量(製造に利用したモノマーの総量)は、文献の記載から計算すると16質量%となり、上記本願の実施例1に記載したポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体樹脂の含有量とほぼ同等となります。そこで、参照のために、上記特許文献1の実施例1~5のTd1%のデータと、本願の実施例1で得られたポリイミドのTd1%のデータを、表5に示して対比する。なお、本願と上記特許文献1とにおいては、Td1%の測定方法が測定装置と走査温度の範囲の点で異なりますが、昇温速度が同じ温度(10℃/分)であり、基本的に同じ測定値になるものと理解することが可能です。また、表5に示す1,2-ジメチルイミダゾールの使用量(ポリイミド前駆体樹脂100質量部に対する含有量:質量部)は、上記特許文献1の実施例1~5における1,2-ジメチルイミダゾールの使用量の記載に基いて計算により求めた値です。
【0097】
【表5】
【0098】
表5に示すデータから、本願の実施例1で得られたポリイミドは、上記特許文献1の実施例1~5で得られたポリイミドと比較してTd1%がより高い値を示していることが分かる。このような比較結果から、イミダゾール化合物の種類の違いに基いて、実施例1で得られたポリイミドはTd1%を基準とした耐熱性がより高い水準のものとなることが分かる。
【0099】
(実施例2~36)
ジアミンの種類及び使用量、テトラカルボン酸二無水物の種類及び使用量、溶媒の種類及び使用量、イミダゾール化合物の種類及び使用量、並びに、製膜加熱条件(加熱温度及び保持時間)をそれぞれ表6~表8に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体樹脂組成物を製造するとともに、そのポリイミド前駆体樹脂組成物を利用してポリイミドからなるフィルムを製造した。得られたポリイミドの膜厚や各種特性を表6~表8に示す。
【0100】
(比較例1)
<比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物の調製工程>
窒素雰囲気下において、30mLのスクリュー管内に、ジアミンとしてTFMBを1.60g(5.00mmol)導入するとともに、テトラカルボン酸二無水物としてCpODAを1.92g(5.00mmol)導入した。次いで、前記スクリュー管内に、溶媒であるDMAcを14.1g添加して混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、60℃の温度条件下で12時間撹拌し、溶液中においてポリアミド酸(ポリイミド前駆体樹脂)を形成せしめて、ポリアミド酸を含む反応液を得て、これを比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物とした。
【0101】
<比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物を利用したポリイミドの調製工程>
ガラス板上に前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス板をオーブンに投入し、温度条件を70℃として、窒素雰囲気下において2時間静置し、次いで、温度条件を135℃に変更して30分間静置し、更に、温度条件を380℃に変更して1時間静置することにより、ポリイミドからなるフィルムがコートされたガラス基板を得た。次いで、当該ガラス基板から、ポリイミドからなるフィルムを剥離して、無色透明のポリイミドからなるフィルムを得た。得られたポリイミドの膜厚や各種特性を表9に示す。
【0102】
(比較例2)
<比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物の調製工程>
窒素雰囲気下において、50mLのスクリュー管内に、芳香族ジアミンとしてDABANを0.56g(2.46mmol)導入するとともに、テトラカルボン酸二無水物としてBzDAを1.00g(2.46mmol)導入した。次いで、前記スクリュー管内に、溶媒であるテトラメチルウレア(TMU)を8.1g添加して混合液を得た。次に、得られた混合液を、窒素雰囲気下、室温の温度条件下で48時間撹拌し、溶液中においてポリアミド酸(ポリイミド前駆体樹脂)を形成せしめて、ポリアミド酸を含む反応液を得て、これを比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物とした。
【0103】
<比較のためのポリイミド前駆体樹脂組成物を利用したポリイミドの調製工程>
ガラス板上に前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス板を真空ホットチャンバーにセットし、減圧条件下、70℃で30分間加熱する工程を実施し、前記塗膜から溶媒を除去した。次いで、前記ガラス基板をイナートオーブンの加熱室内にセットし、加熱室内に窒素パージを実施した。次いで、イナートオーブンの温度を135℃まで昇温して1時間加熱した後、更に350℃まで昇温して350℃で1時間保持し、その後、室温まで放冷するように、イナートオーブンを操作することにより、ガラス基板上にポリイミドを形成し、ポリイミドからなるフィルムがコートされたガラス基板を得た。次いで、当該ガラス基板から、ポリイミドからなるフィルムを剥離し、無色透明のポリイミドからなるフィルムを得た。得られたポリイミドの膜厚や各種特性を表9に示す。
【0104】
(比較例3)
ジアミンの種類及び使用量、テトラカルボン酸二無水物の種類及び使用量、溶媒の種類及び使用量、並びに、製膜加熱条件(加熱温度及び保持時間)をそれぞれ表9に示すように変更した以外は、比較例2と同様にして、ポリイミド前駆体樹脂組成物を製造するとともに、そのポリイミド前駆体樹脂組成物を利用してポリイミドからなるフィルムを製造した(なお、製造時に、イミダゾール化合物は不使用である)。得られたポリイミドの膜厚や各種特性を表9に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本発明によれば、ポリイミドを製造するための原料として利用した場合に、得られるポリイミドの1%重量減少温度を基準とする耐熱性をより高度なものとすることが可能なポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することが可能となる。
【0110】
したがって、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、耐熱性の要求される用途に利用されるポリイミドを製造するための材料等として有用である。