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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078118
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
H02M3/155 E
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190494
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】石倉 祐樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB84
5H730CC14
5H730DD04
5H730FG05
5H730FG15
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】各スイッチング素子のスイッチングに起因してノイズが発生する。
【解決手段】電力変換装置10は、金属筐体20と、複数の電力変換回路30と、各電力変換回路を制御する制御部と、を備え、各電力変換回路30は、高電位入力端子及び低電位入力端子と、出力端子23と、入力コンデンサと、インダクタと、スイッチング素子と、第1コモンモードチョークコイルと、を備えている。第1コモンモードチョークコイルは、磁性コアを備えている。2以上の電力変換回路30の各第1コモンモードチョークコイルは、同一の磁性コアを共有している。制御部は、各電力変換回路30の各スイッチング素子のオンオフのタイミングがずれるように、各スイッチング素子をオンオフ制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属筐体と、
前記金属筐体に内蔵される複数の電力変換回路と、
前記各電力変換回路を制御する制御部と、
を備え、
前記各電力変換回路は、
高電位入力端子及び低電位入力端子と、
出力端子と、
第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子が前記高電位入力端子に接続しており、前記第2端子が前記低電位入力端子に接続している入力コンデンサと、
第3端子及び第4端子を有し、前記第3端子が前記高電位入力端子に接続しているインダクタと、
第5端子、第6端子及び第7端子を有し、前記第5端子が前記インダクタの前記第4端子に接続しており、前記第6端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続しており、前記第7端子に前記制御部からの信号が入力されるスイッチング素子と、
第8端子、第9端子、第10端子、及び第11端子を有し、前記第8端子が前記高電位入力端子に接続し、前記第9端子が前記入力コンデンサの前記第1端子に接続し、前記第9端子が前記低電位入力端子に接続し、前記第11端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続する第1コモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記第1コモンモードチョークコイルは、磁性コアを備え、
2以上の前記電力変換回路の前記各第1コモンモードチョークコイルは、同一の前記磁性コアを共有しており、
前記制御部は、前記各電力変換回路の前記各スイッチング素子のオンオフのタイミングがずれるように、前記各スイッチング素子をオンオフ制御する
電力変換装置。
【請求項2】
前記各電力変換回路の前記高電位入力端子及び前記低電位入力端子は、前記金属筐体に取り付けられている
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
複数の前記電力変換回路の数をN(ただしNは2以上の整数)としたとき、
前記制御部は、前記各電力変換回路の前記各スイッチング素子のオンオフのタイミングを、(1/N)周期ずらして、前記各スイッチング素子をオンオフ制御する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記各第1コモンモードチョークコイルは、
前記高電位入力端子に接続している第1配線と、
前記低電位入力端子に接続している第2配線と、
を備え、
前記磁性コアは、筒状であり、且つ当該磁性コアを共有する前記第1コモンモードチョークコイルのすべての前記第1配線及び前記第2配線を取り囲んでいる
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記各電力変換回路は、
第12端子、第13端子、第14端子、第15端子、を有する第2コモンモードチョークコイルをさらに備え、
前記第12端子は、前記第1コモンモードチョークコイルの前記第9端子に接続し、
前記第13端子は、前記入力コンデンサの前記第1端子に接続し、
前記第14端子は、前記第1コモンモードチョークコイルの前記第11端子に接続し、
前記第15端子は、前記入力コンデンサの前記第2端子に接続しており、
前記第1コモンモードチョークコイルのインダクタンスは、前記第2コモンモードチョークコイルのインダクタンスよりも小さい
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2コモンモードチョークコイルが実装された基板をさらに備え、
前記各第1コモンモードチョークコイルは、
前記高電位入力端子に接続している第1配線と、
前記低電位入力端子に接続している第2配線と、
を備え、
前記各第1コモンモードチョークコイルが共有する前記磁性コアの、当該磁性コアの中心軸に沿う方向の寸法は、前記第1配線又は前記第2配線の配線長の1/10以上である
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記金属筐体は、グランド端子を有し、
前記各電力変換回路は、
第16端子及び第17端子を有するコンデンサをさらに備え、
前記第16端子は、前記第2コモンモードチョークコイルの前記第12端子に接続しており、
前記第17端子は、前記グランド端子に接続している
請求項5に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。この電力変換装置は、バッテリと、2つの出力回路と、を備えている。バッテリからの電力は、トランスを介して各出力回路に供給される。各出力回路は、コモンモードチョークコイルを備えている。このコモンモードチョークコイルは、コアと、コアに巻回された配線とを有する。2つの出力回路のコモンモードチョークコイルは、同一のコアを共有している。これにより、出力回路ごとのコモンモードチョークコイルのインピーダンス特性が均一化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-111220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような電力変換装置の出力回路は、多くの場合、金属筐体の内部に搭載される。この場合、出力回路の各配線と金属筐体との間に寄生容量が発生し得る。そして、電力変換装置のスイッチング素子がスイッチングされると、電力変換装置全体としてノイズが無視できないものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、金属筐体と、前記金属筐体に内蔵される複数の電力変換回路と、前記各電力変換回路を制御する制御部と、を備え、前記各電力変換回路は、高電位入力端子及び低電位入力端子と、出力端子と、第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子が前記高電位入力端子に接続しており、前記第2端子が前記低電位入力端子に接続している入力コンデンサと、第3端子及び第4端子を有し、前記第3端子が前記高電位入力端子に接続しているインダクタと、第5端子、第6端子及び第7端子を有し、前記第5端子が前記インダクタの前記第4端子に接続しており、前記第6端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続しており、前記第7端子に前記制御部からの信号が入力されるスイッチング素子と、第8端子、第9端子、第10端子、及び第11端子を有し、前記第8端子が前記高電位入力端子に接続し、前記第9端子が前記入力コンデンサの前記第1端子に接続し、前記第9端子が前記低電位入力端子に接続し、前記第11端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続する第1コモンモードチョークコイルと、を備え、前記第1コモンモードチョークコイルは、磁性コアを備え、2以上の前記電力変換回路の前記各第1コモンモードチョークコイルは、同一の前記磁性コアを共有しており、前記制御部は、前記各電力変換回路の前記各スイッチング素子のオンオフのタイミングがずれるように、前記各スイッチング素子をオンオフ制御する電力変換装置である。
【0006】
上記構成によれば、複数の電力変換回路の各コモンモードチョークコイルは、高電位入力端子及び低電位入力端子に接続している。これにより、各入力端子近傍の配線と金属筐体との間で形成される寄生容量を小さくできる。そのため、この寄生容量を通じて流れる電流に起因するノイズを効率的に抑制できる。
【0007】
一方、各スイッチング素子の、オンとオフのタイミングがずれている。そのため、各電力変換回路のスイッチング素子のオンとオフのタイミングが一致しない。したがって、各スイッチング素子のオンオフ制御のスイッチング動作に起因する電流のピークが重畳しないため、大きなノイズを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
各スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するノイズを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力変換装置の回路図である。
図2】第1コモンモードチョークコイルの図である。
図3】変更例における電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<電力変換装置の一実施形態>
以下、電力変換装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0011】
(電力変換装置の構成)
先ず、電力変換装置10の回路構成について説明する。
図1に示すように、電力変換装置10は、金属筐体20と、複数の電力変換回路30と、制御・駆動回路50と、インバータ60と、を備えている。
【0012】
金属筐体20は、内部に空間を有する箱形状である。金属筐体20の材質は、導電性の金属である。金属筐体20は、グランド端子24を有している。グランド端子24は、金属筐体20の内部において当該金属筐体20に接続している。また、グランド端子24は、金属筐体20の外部において、接地している。
【0013】
電力変換装置10は、第1電力変換回路30Aと、第2電力変換回路30Bと、を備えている。
第1電力変換回路30Aは、第1高電位入力端子31Aaと、第1低電位入力端子31Abと、2つの出力端子23と、を有している。第1高電位入力端子31Aa、第1低電位入力端子31Ab、及び2つの出力端子23は、金属筐体20に取り付けられている。
【0014】
第1高電位入力端子31Aaは、第1直流電源80Aの高電位端子に接続している。第1低電位入力端子31Abは、第1直流電源80Aの低電位端子に接続している。なお、第1直流電源80Aは、金属筐体20の外部に設置されている。また、第1直流電源80Aは、例えば、太陽光発電パネルである。
【0015】
各出力端子23は、各出力端子23から金属筐体20の外部に延びる電力線90を介して、電力系統91に接続している。電力線90は、分電盤、電力量計、コンセント(アウトレット)などの図示しない電気設備を含む。また、電力線90は、負荷回路92に接続している。負荷回路92は、電力線90からの交流電力により動作する電気機器である。負荷回路92は、例えば、照明器具、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、空気調和機、電子レンジ、空気清浄機、等である。
【0016】
第1電力変換回路30Aは、第1入力コンデンサ32Aを備えている。第1入力コンデンサ32Aは、第1端子32Aaと、第2端子32Abと、を有している。第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaは、第1高電位入力端子31Aaに接続している。第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abは、第1低電位入力端子31Abに接続している。また、第1電力変換回路30Aは、第1インダクタ33Aを備えている。第1インダクタ33Aは、第3端子33Aaと、第4端子33Abと、を有している。第1インダクタ33Aの第3端子33Aaは、第1高電位入力端子31Aaに接続している。
【0017】
第1電力変換回路30Aは、第1整流素子34Aを備えている。第1整流素子34Aは、第18端子34Aaと、第19端子34Abと、を有している。第1整流素子34Aの第18端子34Aaは、第1インダクタ33Aの第4端子33Abに接続している。また、第1整流素子34Aの第19端子34Abは、インバータ60を介して出力端子23に接続している。なお、第1整流素子34Aは、第1インダクタ33A側から出力端子23側へ電流が流れることを許容する一方で、出力端子23側から第1インダクタ33A側へ電流が流れることを許容しない。
【0018】
第1電力変換回路30Aは、第1スイッチング素子35Aを備える。第1スイッチング素子35Aは、第5端子35Aaと、第6端子35Abと、第7端子35Acと、を有している。第1スイッチング素子35Aは、Nチャネル型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。そして、第1スイッチング素子35Aの第5端子35Aaはドレイン端子である。第1スイッチング素子35Aの第6端子35Abはソース端子である。第1スイッチング素子35Aの第7端子35Acはゲート端子である。第1スイッチング素子35Aの第5端子35Aaは、第1インダクタ33Aの第4端子33Abに接続している。第1スイッチング素子35Aの第6端子35Abは、第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abに接続している。また、第1スイッチング素子35Aの第6端子35Abは、インバータ60を介して出力端子23に接続している。そして、第1スイッチング素子35Aの第7端子35Acは、制御・駆動回路50に接続している。
【0019】
第1電力変換回路30Aは、出力コンデンサ39を備えている。出力コンデンサ39は、第20端子39aと、第21端子39bと、を有している。出力コンデンサ39の第20端子39aは、第1整流素子34Aを介して、第1スイッチング素子35Aの第5端子35Aaに接続している。また、出力コンデンサ39の第20端子39aは、インバータ60を介して一方の出力端子23に接続している。一方、出力コンデンサ39の第21端子39bは、第1スイッチング素子35Aの第6端子35Abに接続している。また、出力コンデンサ39の第21端子39bは、インバータ60を介して他方の出力端子23に接続している。なお、出力コンデンサ39はアルミ電解コンデンサである。
【0020】
第1電力変換回路30Aは、第1コモンモードチョークコイルと、第2コモンモードチョークコイルを備えている。以下、本実施形態においては、第1電力変換回路30Aが有する第1コモンモードチョークコイルを「第1前段コモンモードチョークコイル36A」と呼ぶ。また、以下、本実施形態においては、第1電力変換回路30Aが有する第2コモンモードチョークコイルを「第1後段コモンモードチョークコイル37A」と呼ぶ。
【0021】
第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、第8端子36Aaと、第9端子36Abと、第10端子36Acと、第11端子36Adと、を備えている。また、第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、2つのコイルと、後述する磁性コア40と、を有している。そして、当該2つのコイルは、1つの磁性コア40を共有している。
【0022】
第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第8端子36Aa及び第9端子36Abは、一方のコイルが有する2つの端子と同一である。第8端子36Aaは、第1高電位入力端子31Aaに接続している。また、第9端子36Abは、第1後段コモンモードチョークコイル37Aを介して、第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaに接続している。
【0023】
第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第10端子36Ac及び第11端子36Adは、他方のコイルが有する2つの端子と同一である。第10端子36Acは、第1低電位入力端子31Abに接続している。第11端子36Adは、第1後段コモンモードチョークコイル37Aを介して、第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abに接続している。このように、第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、第1高電位入力端子31Aa及び第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaの間、且つ、第1低電位入力端子31Ab及び第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abの間に位置している。
【0024】
第1後段コモンモードチョークコイル37Aは、第12端子37Aaと、第13端子37Abと、第14端子37Acと、第15端子37Adと、を備えている。また、第1後段コモンモードチョークコイル37Aは、2つのコイルと、環状の磁性体であるコアと、を有している。当該2つのコイルは、1つのコアを共有している。
【0025】
第1後段コモンモードチョークコイル37Aの第12端子37Aa及び第13端子37Abは、一方のコイルが有する2つの端子と同一である。第12端子37Aaは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第9端子36Abに接続している。また、第13端子37Abは、第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaに接続している。
【0026】
第1後段コモンモードチョークコイル37Aの第14端子37Ac及び第15端子37Adは、他方のコイルが有する2つの端子と同一である。第14端子37Acは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第11端子36Adに接続している。第15端子37Adは、第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abに接続している。このように、第1後段コモンモードチョークコイル37Aは、第1前段コモンモードチョークコイル36A及び第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaの間、且つ第1前段コモンモードチョークコイル36A及び第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abの間に位置している。そして、上述の第1前段コモンモードチョークコイル36Aのインダクタンスは、第1後段コモンモードチョークコイル37Aのインダクタンスよりも小さくなっている。
【0027】
第1電力変換回路30Aは、第1コンデンサ38Aを備えている。第1コンデンサ38Aは、第16端子38Aaと、第17端子38Abと、を有している。第1コンデンサ38Aの第16端子38Aaは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第9端子36Abと、第1後段コモンモードチョークコイル37Aの第12端子37Aaと、の間の配線に接続している。第1コンデンサ38Aの第17端子38Abは、グランド端子24に接続している。すなわち、第1コンデンサ38Aは、いわゆるYコンデンサである。
【0028】
第2電力変換回路30Bは、第2高電位入力端子31Baと、第2低電位入力端子31Bbと、2つの出力端子23と、を有している。第2高電位入力端子31Ba、第2低電位入力端子31Bb、及び2つの出力端子23は、金属筐体20に取り付けられている。第2高電位入力端子31Baは、第2直流電源80Bの高電位端子に接続している。第2低電位入力端子31Bbは、第2直流電源80Bの低電位端子に接続している。なお、第2直流電源80Bは、金属筐体20の外部に設置されている。また、第2直流電源80Bは、第1直流電源80Aとは別の太陽光発電パネルである。
【0029】
第2電力変換回路30Bが有する各出力端子23は、第1電力変換回路30Aが有する各出力端子23と同一である。すなわち、各出力端子23から金属筐体20の外部に延びる電力線90を介して、電力系統91に接続している。
【0030】
第2電力変換回路30Bは、第2入力コンデンサ32Bを備えている。第2入力コンデンサ32Bは、第1端子32Baと、第2端子32Bbと、を有している。第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baは、第2高電位入力端子31Baに接続している。第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbは、第2低電位入力端子31Bbに接続している。また、第2電力変換回路30Bは、第2インダクタ33Bを備えている。第2インダクタ33Bは、第3端子33Baと、第4端子33Bbと、を有している。第2インダクタ33Bの第3端子33Baは、第2高電位入力端子31Baに接続している。
【0031】
第2電力変換回路30Bは、第2整流素子34Bを備えている。第2整流素子34Bは、第18端子34Baと、第19端子34Bbと、を有している。第2整流素子34Bの第18端子34Baは、第2インダクタ33Bの第4端子33Bbに接続している。また、第2整流素子34Bの第19端子34Bbは、インバータ60を介して出力端子23に接続している。なお、第2整流素子34Bは、第2インダクタ33B側から出力端子23側へ電流が流れることを許容する一方で、出力端子23側から第2インダクタ33B側へ電流が流れることを許容しない。
【0032】
第2電力変換回路30Bは、第2スイッチング素子35Bを備えている。第2スイッチング素子35Bは、第5端子35Baと、第6端子35Bbと、第7端子35Bcと、を有している。第2スイッチング素子35Bは、Nチャネル型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。そして、第2スイッチング素子35Bの第5端子35Baはドレイン端子である。第2スイッチング素子35Bの第6端子35Bbはソース端子である。第2スイッチング素子35Bの第7端子35Bcはゲート端子である。第2スイッチング素子35Bの第5端子35Baは、第2インダクタ33Bの第4端子33Bbに接続している。第2スイッチング素子35Bの第6端子35Bbは、第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbに接続している。また、第2スイッチング素子35Bの第6端子35Bbは、インバータ60を介して出力端子23に接続している。そして、第2スイッチング素子35Bの第7端子35Bcは、制御・駆動回路50に接続している。
【0033】
第2電力変換回路30Bは、出力コンデンサ39を備えている。この出力コンデンサ39は、第1電力変換回路30Aの出力コンデンサ39と同一のものである。つまり、第2電力変換回路30Bは、第1電力変換回路30Aと出力コンデンサ39を共有している。
【0034】
第2電力変換回路30Bは、第1コモンモードチョークコイルと、第2コモンモードチョークコイルを備えている。以下、本実施形態においては、第2電力変換回路30Bが有する第1コモンモードチョークコイルを「第2前段コモンモードチョークコイル36B」と呼ぶ。また、以下、本実施形態においては、第2電力変換回路30Bが有する第2コモンモードチョークコイルを「第2後段コモンモードチョークコイル37B」と呼ぶ。
【0035】
第2前段コモンモードチョークコイル36Bは、第8端子36Baと、第9端子36Bbと、第10端子36Bcと、第11端子36Bdと、を備えている。また、第2前段コモンモードチョークコイル36Bは、2つのコイルと、後述する磁性コア40と、を有している。そして、当該2つのコイルは、1つの磁性コア40を共有している。
【0036】
第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第8端子36Ba及び第9端子36Bbは、一方のコイルが有する2つの端子と同一である。第8端子36Baは、第2高電位入力端子31Baに接続している。また、第9端子36Bbは、第2後段コモンモードチョークコイル37Bを介して、第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baに接続している。
【0037】
第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第10端子36Bc及び第11端子36Bdは、他方のコイルが有する2つの端子と同一である。第10端子36Bcは、第2低電位入力端子31Bbに接続している。第11端子36Bdは、第2後段コモンモードチョークコイル37Bを介して、第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbに接続している。このように、第2前段コモンモードチョークコイル36Bは、第2高電位入力端子31Ba及び第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baの間、且つ、第2低電位入力端子31Bb及び第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbの間に位置している。
【0038】
第2後段コモンモードチョークコイル37Bは、第12端子37Baと、第13端子37Bbと、第14端子37Bcと、第15端子37Bdと、を備えている。また、第2後段コモンモードチョークコイル37Bは、2つのコイルと、環状の磁性体であるコアと、を有している。当該2つのコイルは、1つのコアを共有している。
【0039】
第2後段コモンモードチョークコイル37Bの第12端子37Ba及び第13端子37Bbは、一方のコイルが有する2つの端子と同一である。第12端子37Baは、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第9端子36Bbに接続している。また、第13端子37Bbは、第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baに接続している。
【0040】
第2後段コモンモードチョークコイル37Bの第14端子37Bc及び第15端子37Bdは、他方のコイルが有する2つの端子と同一である。第14端子37Bcは、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第11端子36Bdに接続している。第15端子37Bdは、第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbに接続している。このように、第2後段コモンモードチョークコイル37Bは、第2前段コモンモードチョークコイル36B及び第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baの間、且つ第2前段コモンモードチョークコイル36B及び第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbの間に位置している。なお、上述の第2前段コモンモードチョークコイル36Bのインダクタンスは、第2後段コモンモードチョークコイル37Bのインダクタンスよりも小さくなっている。また、第2前段コモンモードチョークコイル36Bのインダクタンスは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aのインダクタンスとほぼ同じになっている。
【0041】
第2電力変換回路30Bは、第2コンデンサ38Bを備えている。第2コンデンサ38Bは、第16端子38Baと、第17端子38Bbと、を有している。第2コンデンサ38Bの第16端子38Baは、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第9端子36Bbと、第2後段コモンモードチョークコイル37Bの第12端子37Baと、の間の配線に接続している。第2コンデンサ38Bの第17端子38Bbは、グランド端子24に接続している。すなわち、第2コンデンサ38Bは、いわゆるYコンデンサである。
【0042】
インバータ60は、第22端子60aと、第23端子60bと、第24端子60cと、第25端子60dと、を備えている。インバータ60の第22端子60aは、出力コンデンサ39の第20端子39aに接続されている。インバータ60の第23端子60bは、出力コンデンサ39の第21端子39bに接続されている。インバータ60の第24端子60cは、一方の出力端子23に接続されている。インバータ60の第25端子60dは、他方の出力端子23に接続されている。
【0043】
制御・駆動回路50は、各電力変換回路30を制御する制御部である。制御・駆動回路50は、第1スイッチング素子35Aの第7端子35Acに、第1スイッチング信号S1を出力する。第1スイッチング信号S1はPWM信号であり、周期的に第1スイッチング素子35Aをオンオフ制御する。同様に、制御・駆動回路50は、第2スイッチング素子35Bの第7端子35Bcに、第2スイッチング信号S2を出力する。制御・駆動回路50は、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bのオンオフのタイミングがずれるように、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bをオンオフ制御する。なお、各スイッチング素子のオンオフのタイミングがずれるとは、各スイッチング素子がオフからオンになるタイミングがずれること、又は、各スイッチング素子がオンからオフになるタイミングがずれることを意味する。
【0044】
具体的には、複数の電力変換回路30の数をN(ただしNは2以上の整数)としたとき、制御・駆動回路50は、各電力変換回路30の各スイッチング素子のスイッチングのタイミングを、(1/N)周期ずらして、各スイッチング素子をオンオフ制御する。本実施形態においては、電力変換回路30の数が2つである(N=2)。そのため、制御・駆動回路50は、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bのスイッチング周期を1/2周期ずらして、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bをオンオフ制御する。すなわち、この実施形態では、第1スイッチング信号S1の位相と第2スイッチング信号S2の位相とが逆位相となる。したがって、第1スイッチング素子35Aがオンのとき、第2スイッチング素子35Bはオフであり、第2スイッチング素子35Bがオンのとき、第1スイッチング素子35Aはオフとなる。
【0045】
(コモンモードチョークコイルについて)
上記のように構成された第1電力変換回路30Aのうち、第1前段コモンモードチョークコイル36Aを除く部分は、基板70上に実装されている。なお、図2では、基板70に実装された各素子の図示を省略している。
【0046】
一方、図2に示すように、第1電力変換回路30Aの第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、第1配線41Aと、第2配線42Aと、磁性コア40と、を備えている。第1配線41Aの一方の端は、第1高電位入力端子31Aaに接続している。第1配線41Aの他方の端は、基板70上の接続端子71を介して、第1入力コンデンサ32Aの第1端子32Aaに接続している。この第1配線41Aは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの2つのコイルのうちの一方のコイルを構成している。第2配線42Aの一方の端は、第1低電位入力端子31Abに接続している。第2配線42Aの他方の端は、基板70上の接続端子71を介して、第1入力コンデンサ32Aの第2端子32Abに接続している。この第2配線42Aは、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの2つのコイルのうち、第1配線41Aが構成するものとは別のコイルを構成している。図示は省略するが、これら第1配線41A及び第2配線42Aは、導体配線と、当該導体配線を被覆する絶縁膜と、を有している。
【0047】
磁性コア40は、略円筒状である。磁性コア40の材質はフェライト等の磁性材を含んでいる。磁性コア40は、第1配線41A及び第2配線42Aを取り囲んでいる。換言すると、第1配線41A及び第2配線42Aは、磁性コア40の中央の孔に挿通されている。
【0048】
また、図2に示すように、第2電力変換回路30Bの第2前段コモンモードチョークコイル36Bは、第1配線41Bと、第2配線42Bと、磁性コア40と、を備えている。第1配線41Bの一方の端は、第2高電位入力端子31Baに接続している。第1配線41Bの他方の端は、基板70上の接続端子71を介して、第2入力コンデンサ32Bの第1端子32Baに接続している。この第1配線41Bは、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの2つのコイルのうちの一方のコイルを構成している。第2配線42Bの一方の端は、第2低電位入力端子31Bbに接続している。第2配線42Bの他方の端は、基板70上の接続端子71を介して、第2入力コンデンサ32Bの第2端子32Bbに接続している。この第2配線42Bは、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの2つのコイルのうち、第1配線41Bが構成するものとは別のコイルを構成している。図示は省略するが、これら第1配線41B及び第2配線42Bは、導体配線と、当該導体配線を被覆する絶縁膜と、を有している。
【0049】
上記の磁性コア40は、第1電力変換回路30Aにおける第1配線41A及び第2配線42Aに加え、第2電力変換回路30Bにおける第1配線41B及び第2配線42Bを、すべて取り囲んでいる。すなわち、第1前段コモンモードチョークコイル36A及び第2前段コモンモードチョークコイル36Bは、同一の磁性コア40を共有している。
【0050】
ここで、各第1コモンモードチョークコイルが共有する磁性コア40の、当該磁性コア40の中心軸に沿う方向の長さを寸法L1とする。このとき、磁性コア40の寸法L1は、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第1配線41A又は第2配線42A、もしくは、第2前段コモンモードチョークコイル36B又は第1配線41B又は第2配線42Bから選ばれる1つの配線の配線長L2の1/10以上である。なお、磁性コア40の中心軸とは、筒状の磁性コア40が有する貫通穴において、各入力端子側の開口縁で形成される平面図形の幾何中心と、各第2コモンモードチョークコイル側の開口縁で形成される平面図形の幾何中心と、を結ぶ直線のことをいう。また、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第1配線41Aの配線長L2は、第1高電位入力端子31Aaから接続端子71までの配線の長さである。第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第2配線42Aの配線長L2は、第1低電位入力端子31Abから接続端子71までの配線の長さである。第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第1配線41Bの配線長L2は、第2高電位入力端子31Baから接続端子71までの配線の長さである。第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第2配線42Bの配線長L2は、第2低電位入力端子31Bbから接続端子71までの配線の長さである。なお、図2においては、第2前段コモンモードチョークコイル36Bの第2配線42Bの配線長L2を示している。
【0051】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、第1電力変換回路30Aの第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、第1高電位入力端子31Aa及び第1低電位入力端子31Abに接続している。これにより、各入力端子近傍の配線と金属筐体20との間で形成される寄生容量を小さくできる。そのため、この寄生容量を通じて流れる電流に起因するノイズを効率的に抑制できる。例えば、寄生容量を通じて流れる電流にはコモンモード電流がある。すなわち、コモンモードノイズを効率的に抑制できる。この点、第2電力変換回路30Bの第2前段コモンモードチョークコイル36B、第2高電位入力端子31Ba及び第2低電位入力端子31Bbに関しても同様である。
【0052】
一方、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bの、オンとオフのスイッチングのタイミングがずれている。そのため、第1電力変換回路30Aのスイッチング素子と第2電力変換回路30Bのスイッチング素子のオンオフのタイミングが一致しない。したがって、各スイッチング素子のオンオフ制御のスイッチング動作に起因する電流のピークが重畳しないため、大きなノイズを抑制できる。例えば、スイッチング動作に起因する電流には、コモンモード電流がある。すなわち、各スイッチング素子のスイッチング動作に起因するコモンモード電流のピークが重畳しないため、コモンモードノイズを小さくできる。
【0053】
(2)上記実施形態によれば、第1電力変換回路30Aの第1高電位入力端子31Aa及び第1低電位入力端子31Abは、金属筐体20に取り付けられている。第1電力変換回路30Aと金属筐体20との接触箇所は、ノイズ電流の経路となりやすい。そのため、第1前段コモンモードチョークコイル36Aが接続している各入力端子を金属筐体20に取り付けることで、ノイズを効率的に抑制できる。この点、第2電力変換回路30B、第2高電位入力端子31Ba、第2低電位入力端子31Bb及び第2前段コモンモードチョークコイル36Bに関しても同様である。
【0054】
(3)特に上記実施形態では、第1スイッチング素子35A及び第2スイッチング素子35Bの、オンとオフのスイッチングのタイミングが(1/N)周期ずれている。つまり、第1電力変換回路30Aと第2電力変換回路30Bのスイッチング素子のオンとオフとのタイミングが反転している。第2電力変換回路30Bにおける電位のピークに対して、1周期の中で最も離れている。したがって、各スイッチング素子のスイッチング動作に起因するコモンモード電流が打ち消し合い、コモンモード電流が小さくなる。そして、コモンモード電流が小さくなることに従い、コモンモードノイズが小さくなる。
【0055】
(4)上記実施形態によれば、第1電力変換回路30Aの第1前段コモンモードチョークコイル36Aは、略円筒状の磁性コア40を有している。そして、この磁性コア40により第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第1配線41A、第2配線42Aが束ねられた状態になっている。これにより、基板70に対して直接に第1前段コモンモードチョークコイル36Aを実装する場合に比べて、金属筐体20と上記各配線との距離が物理的に離れる。これに伴い、第1前段コモンモードチョークコイル36Aの各配線と金属筐体20との間に形成される寄生容量を小さくできる。したがって、当該寄生容量に起因して生じるコモンモードノイズを小さくできる。この点、第2電力変換回路30Bの第2前段コモンモードチョークコイル36Bに関しても同様である。
【0056】
(5)上記実施形態によれば、各電力変換回路30は、前段コモンモードチョークコイルとは別に、各電力変換回路30で個別に後段コモンモードチョークコイルを有する。また、各電力変換回路30の前段コモンモードチョークコイルにおいて、巻数が小さく、インダクタンスは、後段コモンモードチョークコイルのインダクタンスよりも小さい。巻数が少ないことにより巻線間の寄生容量が小さくなり、高周波においてもインダクタンスが低下しづらく、高周波特性にすぐれる。これらの構成により、例えば前段コモンモードチョークコイルのみでは抑制が難しい広い周波数帯のコモンモードノイズを抑制できる。
【0057】
(6)上記実施形態によれば、磁性コア40の寸法L1は、各第1配線又は各前記第2配線の配線長L2の1/10以上である。これにより、各入力端子と、基板70との間に物理的な距離をとることができる。各入力端子の近傍の配線では寄生容量が発生しやすいため、これらの寄生容量に起因するコモンモードノイズを効率的に抑制できる。
【0058】
(7)上記実施形態によれば、第1電力変換回路30Aは第1コンデンサ38Aを備える。これにより、コモンモードノイズをさらに抑制できる。この点、第2電力変換回路30B及び第2コンデンサ38Bについても同様である。
【0059】
(8)上記実施形態によれば、第1電力変換回路30Aの第1前段コモンモードチョークコイル36Aの第1配線41A及び第2配線42Aは、導体配線の外面を絶縁体で被覆したケーブルである。これにより、各配線と金属筐体20との間に発生する寄生容量を小さくできる。したがって、コモンモードノイズを抑制できる。この点、第2電力変換回路30Bについても同様である。
【0060】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・各電力変換回路30における各スイッチング素子のスイッチング周期のずれは(1/N)周期でなくてもよい。少なくとも各スイッチング素子のスイッチングのオンオフのタイミングがずれていれば、各電力変換回路30における配線の電位のピークが完全に一致することがない。したがって、各電力変換回路30のスイッチング素子におけるスイッチング動作に起因するコモンモード電流のピークが重畳しないため、コモンモードノイズを小さくすることができる。
【0062】
・電力変換回路30の数は、2つに限られない。電力変換装置10は、電力変換回路30を3つ以上備えていてもよい。
例えば、図3に示す例では、電力変換装置10は、第1電力変換回路30A及び第2電力変換回路30Bに加えて、第3直流電源80Cに接続された第3電力変換回路30Cを備えている。この第3電力変換回路30Cは、第3高電位入力端子31Ca、第3低電位入力端子31Cb、第3入力コンデンサ32C、第3インダクタ33C、第3整流素子34C、第3スイッチング素子35C、及び第3コンデンサ38Cを備えている。第3入力コンデンサ32Cは、第1端子32Ca及び第2端子32Cbを有している。第3インダクタ33Cは、第3端子33Ca及び第4端子33Cbを有している。第3整流素子34Cは、第18端子34Ca及び第19端子34Cbを有している。第3スイッチング素子35Cは、第5端子35Ca、第6端子35Cb、及び第7端子35Ccを有している。第3コンデンサ38Cは、第16端子38Ca及び第17端子38Cbを有している。また、第3電力変換回路30Cは、第1電力変換回路30A及び第2電力変換回路30Bと同一の出力コンデンサ39を共有している。これら各素子及び各端子の接続関係は、第1電力変換回路30Aと同様である。
【0063】
また、第3電力変換回路30Cは、第1コモンモードチョークコイルとして第3前段コモンモードチョークコイル36Cを、第2コモンモードチョークコイルとして第3後段コモンモードチョークコイル37Cを備えている。第3前段コモンモードチョークコイル36Cは、第8端子36Ca、第9端子36Cb、第10端子36Cc、及び第11端子36Cdを有している。第3後段コモンモードチョークコイル37Cは、第12端子37Ca、第13端子37Cb、第14端子37Cc、及び第15端子37Cdを有している。第3前段コモンモードチョークコイル36Cは、第1前段コモンモードチョークコイル36A及び第2前段コモンモードチョークコイル36Bと同一の磁性コア40を共有している。また、これら各素子及び各端子の接続関係は、第1電力変換回路30Aと同様である。
【0064】
この変更例の場合、制御・駆動回路50は、第3スイッチング素子35Cの第7端子35Ccに第3スイッチング信号S3を出力する。そして、制御・駆動回路50は、各スイッチング素子のオンオフのタイミングを、(1/3)周期ずらして、各スイッチング素子をオンオフ制御する。
【0065】
・各電力変換回路30の各入力端子は、金属筐体20に取り付けられていなくてもよい。その場合においても、(1)に記載の効果は得られる。
・各電力変換回路30のスイッチング素子は、本実施形態の例に限られない。制御・駆動回路50によりスイッチングを操作できれば、MOSFET以外の素子でもよい。
【0066】
・各電力変換回路30の出力コンデンサ39は本実施形態の例に限られない。例えば、出力コンデンサ39には、フィルムコンデンサを用いてもよい。また、各電力変換回路30は出力コンデンサ39を備えていなくてもよい。
【0067】
・第1電力変換回路30Aは、第1コンデンサ38Aを備えていなくてもよい。第1コンデンサ38Aを備えていなくても、(1)に記載の効果は得られる。この点、第2電力変換回路30Bの第2コンデンサ38Bについても同様である。
【0068】
・インバータ60は、金属筐体20の外部に設置されていてもよい。すなわち、電力変換装置10は、インバータ60を備えていなくてもよい。
・各電力変換回路30の構成要素のうち、どの素子及び配線が基板70に実装されているかは任意である。また、各第1コモンモードチョークコイルが基板70上に実装されていてもよい。各第1コモンモードチョークコイルが基板70上に実装されていても、磁性コア40を共有していることによるコモンモードノイズの抑制効果が得られる。
【0069】
・各電力変換回路30は、後段コモンモードチョークコイルを備えていなくてもよい。また、各第1コモンモードチョークコイルのインダクタンスは、各第2コモンモードチョークコイルのインダクタンス以上であってもよい。前段コモンモードチョークコイルを有してさえいれば、有していない場合に比べてコモンモードノイズを抑制できる。
【0070】
・各第1コモンモードチョークコイルの第1配線及び第2配線は、導体配線を被覆する絶縁膜を有していなくてもよい。その場合、各導体配線が被覆以外の方法で絶縁していることが好ましい。
【0071】
・複数の電力変換回路30が共有する磁性コア40は、1つに限られない。各第1コモンモードチョークコイルの第1配線及び第2配線を、2つの磁性コア40が取り囲んでいてもよい。
【0072】
・磁性コア40の形状及び大きさは、本実施形態の例に限られない。例えば、環状の磁性コア40に各第1コモンモードチョークコイルの第1配線及び第2配線が巻回されて構成されていてもよい。また、例えば、複数の環状の磁性コア40で各第1コモンモードチョークコイルの第1配線及び第2配線を取り囲んでもよい。
【0073】
・2以上の電力変換回路30の各第1コモンモードチョークコイルが同一の磁性コア40を共有していればよく、電力変換装置10が電力変換回路30を3つ以上備える場合、同一の磁性コア40を共有していない前段コモンモードチョークコイルが1つ以上あってもよい。
【0074】
・磁性コア40は、当該磁性コア40を共有する各第1コモンモードチョークコイルのすべての第1配線及び第2配線を取り囲んでいればよい。ただし、複数の磁性コア40を有する場合、1つの磁性コア40が、すべての電力変換回路30の各第1コモンモードチョークコイルの第1配線及び第2配線を取り囲んでいる必要はない。例えば、本実施形態に加えて第3電力変換回路30Cを有している場合、第1電力変換回路30A及び第2電力変換回路30Bの各第1コモンモードチョークコイルが磁性コア40を共有し、且つ、第2電力変換回路30B及び第3電力変換回路30Cの各第1コモンモードチョークコイルが上記とは別の磁性コア40を共有していてもよい。
【0075】
・磁性コア40の中心軸に沿う方向において、磁性コア40の寸法L1は、各第1配線又は各第2配線の配線長L2の1/10未満でもよい。複数の電力変換回路30の第1コモンモードチョークコイルが磁性コア40を共有してさえいれば、複数の第1コモンモードチョークコイルのインピーダンス特性が均一化する。そのため、コモンモードノイズを抑制することができる。
【0076】
・磁性コア40の材質は、フェライトに限られない。例えば、パーマロイ等でもよい。
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
【0077】
[1]
金属筐体と、
前記金属筐体に内蔵される複数の電力変換回路と、
前記各電力変換回路を制御する制御部と、
を備え、
前記各電力変換回路は、
高電位入力端子及び低電位入力端子と、
出力端子と、
第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子が前記高電位入力端子に接続しており、前記第2端子が前記低電位入力端子に接続している入力コンデンサと、
第3端子及び第4端子を有し、前記第3端子が前記高電位入力端子に接続しているインダクタと、
第5端子、第6端子及び第7端子を有し、前記第5端子が前記インダクタの前記第4端子に接続しており、前記第6端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続しており、前記第7端子に前記制御部からの信号が入力されるスイッチング素子と、
第8端子、第9端子、第10端子、及び第11端子を有し、前記第8端子が前記高電位入力端子に接続し、前記第9端子が前記入力コンデンサの前記第1端子に接続し、前記第9端子が前記低電位入力端子に接続し、前記第11端子が前記入力コンデンサの前記第2端子に接続する第1コモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記第1コモンモードチョークコイルは、磁性コアを備え、
2以上の前記電力変換回路の前記各第1コモンモードチョークコイルは、同一の前記磁性コアを共有しており、
前記制御部は、前記各電力変換回路の前記各スイッチング素子のオンオフのタイミングがずれるように、前記各スイッチング素子をオンオフ制御する電力変換装置。
【0078】
[2]
前記各電力変換回路の前記高電位入力端子及び前記低電位入力端子は、前記金属筐体に取り付けられている[1]に記載の電力変換装置。
【0079】
[3]
複数の前記電力変換回路の数をN(ただしNは2以上の整数)としたとき、
前記制御部は、前記各電力変換回路の前記各スイッチング素子のオンオフのタイミングを、(1/N)周期ずらして、前記各スイッチング素子をオンオフ制御する[1]又は[2]に記載の電力変換装置。
【0080】
[4]
前記各第1コモンモードチョークコイルは、
前記高電位入力端子に接続している第1配線と、
前記低電位入力端子に接続している第2配線と、
を備え、
前記磁性コアは、筒状であり、且つ当該磁性コアを共有する前記第1コモンモードチョークコイルのすべての前記第1配線及び前記第2配線を取り囲んでいる[1]~[3]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0081】
[5]
前記各電力変換回路は、
第12端子、第13端子、第14端子、第15端子、を有する第2コモンモードチョークコイルをさらに備え、
前記第12端子は、前記第1コモンモードチョークコイルの前記第9端子に接続し、
前記第13端子は、前記入力コンデンサの前記第1端子に接続し、
前記第14端子は、前記第1コモンモードチョークコイルの前記第11端子に接続し、
前記第15端子は、前記入力コンデンサの前記第2端子に接続しており、
前記第1コモンモードチョークコイルのインダクタンスは、前記第2コモンモードチョークコイルのインダクタンスよりも小さい[1]~[4]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0082】
[6]
前記第2コモンモードチョークコイルが実装された基板をさらに備え、
前記各第1コモンモードチョークコイルは、
前記高電位入力端子に接続している第1配線と、
前記低電位入力端子に接続している第2配線と、
を備え、
前記各第1コモンモードチョークコイルが共有する前記磁性コアの、当該磁性コアの中心軸に沿う方向の寸法は、前記第1配線又は前記第2配線の配線長の1/10以上である[5]に記載の電力変換装置。
【0083】
[7]
前記金属筐体は、グランド端子を有し、
前記各電力変換回路は、
第16端子及び第17端子を有するコンデンサをさらに備え、
前記第16端子は、前記第2コモンモードチョークコイルの前記第12端子に接続しており、
前記第17端子は、前記グランド端子に接続している[5]又は[6]に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0084】
10…電力変換装置
20…金属筐体
30A…第1電力変換回路
30B…第2電力変換回路
35A…第1スイッチング素子
35B…第2スイッチング素子
36A…第1前段コモンモードチョークコイル
36B…第2前段コモンモードチョークコイル
37A…第1後段コモンモードチョークコイル
37B…第2後段コモンモードチョークコイル
40…磁性コア
41A…第1配線
41B…第1配線
42A…第2配線
42B…第2配線
50…制御・駆動回路
図1
図2
図3