(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078119
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240603BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190495
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】石倉 祐樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA11Y
5H770JA13Y
5H770KA01Y
5H770QA01
5H770QA25
5H770QA27
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】電力変換回路及び金属筐体の間に生じる寄生容量に起因してノイズが発生する。
【解決手段】電力変換装置10は、グランドに接続される金属筐体20と、金属筐体20の内部に位置し、電圧を変換する電力変換回路30と、電力変換回路30及び金属筐体20の間に位置するフィルタ回路40と、を備える。電力変換回路30は、複数の出力端子と、スイッチング素子と、を有している。フィルタ回路40は、複数の出力端子と金属筐体20との間に直列接続される第1コモンモードチョークコイル41及び第2コモンモードチョークコイル46を備える。第1コモンモードチョークコイル41は、金属筐体20を通してグランドに接続する第1コイル42と、グランドに接続されない第2コイル43及び第3コイル44と、を含んでいる。第2コモンモードチョークコイル46は、グランドに接続されない第4コイル47及び第5コイル48と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドに接続される金属筐体と、
前記金属筐体の内部に位置し、電圧を変換する電力変換回路と、
前記金属筐体の内部に位置し、前記電力変換回路及び前記金属筐体の間に位置するフィルタ回路と、
を備え、
前記電力変換回路は、複数の出力端子と、スイッチング素子と、を有し、
前記フィルタ回路は、
複数の前記出力端子と前記金属筐体との間に直列接続される第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1コモンモードチョークコイルに直列接続され、且つ前記グランドに接続されない第2コモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記第1コモンモードチョークコイルは、前記金属筐体を通して前記グランドに接続する第1コイルと、前記グランドに接続されない第2コイル及び第3コイルと、を含む
電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換回路は、ハーフブリッジ回路又はフルブリッジ回路を含む
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2コモンモードチョークコイルは前記出力端子に接続され、
前記第1コモンモードチョークコイルは、前記第2コモンモードチョークコイルと前記金属筐体との間に配置される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1コイル、前記第2コイル、及び前記第3コイルは、前記出力端子に接続する配線と、筒状の磁性コアからなり、
前記磁性コアは、前記第1コイル、前記第2コイル、及び前記第3コイルを構成する前記配線を取り囲むように配置される
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
基板をさらに備え、
前記第2コモンモードチョークコイルは前記基板に実装され、
前記磁性コアの中心軸に沿う寸法は、前記配線の前記金属筐体から前記基板までの配線長の1/10以上である
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2コモンモードチョークコイルは、第4コイルを含み、
前記第2コイルのインダクタンスは、前記第4コイルのインダクタンスよりも小さい
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換回路の前記出力端子と、前記グランドとの間に接続するコンデンサを備える
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。この電力変換装置は、直流電源と、電力変換回路と、コモンモードチョークコイルと、2つの外部端子と、アース端子と、を備えている。電力変換回路は、昇圧コンバータと、インバータと、を備えている。直流電源から供給された電力は、昇圧コンバータを介してインバータに入力される。インバータは、入力された直流電力を単相交流の電力に変換して、外部端子から出力する。アース端子は、電力変換回路に接続している。コモンモードチョークコイルは、電力変換回路及び外部端子の間に挿入される2つのインダクタと、電力変換回路及びアース端子の間に挿入されるインダクタで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような電力変換装置の電力変換回路は、多くの場合、金属筐体の内部に搭載される。この場合、電力変換回路を構成する各素子及び金属筐体の間に寄生容量が発生し得る。そして、この寄生容量に伴い電流が流れると、ノイズが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、グランドに接続される金属筐体と、前記金属筐体の内部に位置し、電圧を変換する電力変換回路と、前記金属筐体の内部に位置し、前記電力変換回路及び前記金属筐体の間に位置するフィルタ回路と、を備え、前記電力変換回路は、複数の出力端子と、スイッチング素子と、を有し、前記フィルタ回路は、複数の前記出力端子と前記金属筐体との間に直列接続される第1コモンモードチョークコイルと、前記第1コモンモードチョークコイルに直列接続され、且つ前記グランドに接続されない第2コモンモードチョークコイルと、を備え、前記第1コモンモードチョークコイルは、前記金属筐体を通して前記グランドに接続する第1コイルと、前記グランドに接続されない第2コイル及び第3コイルと、を含む電力変換装置である。
【0006】
上記構成によれば、電力変換回路は、グランド端子に接続するコイルを含む第1コモンモードチョークコイルに加えて、当該コイルを含まない第2コモンモードチョークコイルを備えている。それにより、電力変換回路を構成する各素子及び金属筐体の間で発生する寄生容量に起因するノイズを小さくできる。
【発明の効果】
【0007】
電力変換回路及び金属筐体の間に生じる寄生容量に起因するノイズを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1コモンモードチョークコイルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電力変換装置の一実施形態>
以下、電力変換装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(電力変換装置の構成)
先ず、電力変換装置10の回路構成について説明する。
図1に示すように、電力変換装置10は、金属筐体20を備えている。そして、電力変換装置10は、金属筐体20の内部に、電力変換回路30と、フィルタ回路40と、制御・駆動回路50と、を備えている。
【0011】
金属筐体20は、内部に空間を有する箱形状である。金属筐体20の材質は、導電性の金属である。金属筐体20は、複数の外部接続端子を備えている。複数の外部接続端子は、第1高電位外部入力端子21Aと、第2高電位外部入力端子21Bと、第1外部出力端子23Aと、第2外部出力端子23Bと、グランド端子24と、を含む。
【0012】
第1高電位外部入力端子21Aは、第1直流電源80Aの高電位端子に接続している。第1低電位外部入力端子22Aは、第1直流電源80Aの低電位端子に接続している。なお、第1直流電源80Aは、金属筐体20の外部に設置されている。また、第1直流電源80Aは、例えば、太陽光発電パネルである。
【0013】
第2高電位外部入力端子21Bは、第2直流電源80Bの高電位端子に接続している。第2低電位外部入力端子22Bは、第2直流電源80Bの低電位端子に接続している。なお、第2直流電源80Bは、金属筐体20の外部に設置されている。また、第2直流電源80Bは、第1直流電源80Aとは別の太陽光発電パネルである。
【0014】
第1外部出力端子23A及び第2外部出力端子23Bは、各外部出力端子から金属筐体20の外部に延びる電力線90を介して、電力系統91に接続している。電力線90は、分電盤、電力量計、コンセント(アウトレット)などの図示しない電気設備を含む。また、電力線90は、負荷回路92に接続している。負荷回路92は、電力線90からの交流電力により動作する電気機器である。負荷回路92は、例えば、照明器具、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、空気調和機、電子レンジ、空気清浄機、等である。
【0015】
グランド端子24は、金属筐体20の内部において、当該金属筐体20に接続している。また、グランド端子24は、金属筐体20の外部において、接地している。
電力変換回路30は、DC/DCコンバータ60を備えている。DC/DCコンバータ60の入力側の各端子は、第1高電位外部入力端子21A、第1低電位外部入力端子22A、第2高電位外部入力端子21B、及び第2低電位外部入力端子22Bに接続している。また、DC/DCコンバータ60の出力側の各端子は、第1外部出力端子23A及び第2外部出力端子23Bに接続している。DC/DCコンバータ60は、金属筐体20の各入力端子を介して入力された直流電圧を変圧して出力する。
【0016】
電力変換回路30は、第1上段スイッチング素子31A、第1下段スイッチング素子32A、第2上段スイッチング素子31B、第2下段スイッチング素子32Bを備えている。なお、各スイッチング素子はnチャネル型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。したがって、各スイッチング素子の第1端子はドレイン端子である。各スイッチング素子の第2端子はソース端子である。各スイッチング素子の第3端子はゲート端子である。
【0017】
第1上段スイッチング素子31Aの第1端子は、DC/DCコンバータ60の高電位側端子に接続している。第1上段スイッチング素子31Aの第2端子は、第1外部出力端子23Aに接続している。
【0018】
第1下段スイッチング素子32Aの第1端子は、第1上段スイッチング素子31Aの第2端子及び第1外部出力端子23Aに接続している。第1下段スイッチング素子32Aの第2端子は、DC/DCコンバータ60の低電位側端子に接続している。
【0019】
第2上段スイッチング素子31Bの第1端子は、DC/DCコンバータ60の高電位側端子に接続している。第2上段スイッチング素子31Bの第2端子は、第2外部出力端子23Bに接続している。
【0020】
第2下段スイッチング素子32Bの第1端子は、第2上段スイッチング素子31Bの第2端子及び第2外部出力端子23Bに接続している。第2下段スイッチング素子32Bの第2端子は、DC/DCコンバータ60の低電位側端子に接続している。すなわち、電力変換回路30は、フルブリッジ回路を含んでいる。
【0021】
制御・駆動回路50は、各スイッチング素子の第3端子に接続している。制御・駆動回路50は、第1上段スイッチング素子31Aの第3端子に、第1スイッチング信号S1を出力する。第1スイッチング信号S1はPWM信号であり、周期的に高電位及び低電位が切り替わる信号である。これにより、第1上段スイッチング素子31Aは、オンオフが切り替わる。同様に、制御・駆動回路50は、第1下段スイッチング素子32Aの第3端子に、第2スイッチング信号S2を出力する。制御・駆動回路50は、第2上段スイッチング素子31Bの第3端子に、第3スイッチング信号S3を出力する。制御・駆動回路50は、第2下段スイッチング素子32Bの第3端子に、第4スイッチング信号S4を出力する。制御・駆動回路50は、電力線90に出力する交流電圧を正弦波に近づけるように、各スイッチング信号のパルス幅を、例えばPWM(パルス幅変調)方式により調整する。したがって、電力変換回路30は、各スイッチング素子のオンオフ動作によって、DC/DCコンバータ60からの直流電圧を、交流電圧に変換する。つまり、電力変換回路30は、インバータとして機能する。
【0022】
電力変換回路30は、第1インダクタ33Aと、第2インダクタ33Bと、を備えている。
第1インダクタ33Aの第1端は、第1上段スイッチング素子31Aの第2端子及び第1下段スイッチング素子32Aの第1端子に接続している。第1インダクタ33Aの第2端は、第1外部出力端子23Aに接続している。すなわち、第1インダクタ33Aは、第1上段スイッチング素子31A及び第1外部出力端子23Aの間、且つ、第1下段スイッチング素子32A及び第1外部出力端子23Aの間に位置する。
【0023】
第2インダクタ33Bの第1端は、第2上段スイッチング素子31Bの第2端子及び第2下段スイッチング素子32Bの第1端子に接続している。第2インダクタ33Bの第2端は、第2外部出力端子23Bに接続している。すなわち、第2インダクタ33Bは、第2上段スイッチング素子31B及び第2外部出力端子23Bの間、且つ、第2下段スイッチング素子32B及び第2外部出力端子23Bの間に位置する。
【0024】
電力変換回路30は、出力コンデンサ35を備えている。出力コンデンサ35の第1端は、第1インダクタ33Aの第2端に接続している。また、出力コンデンサ35の第1端は、第1外部出力端子23Aに接続している。一方、出力コンデンサ35の第2端は、第2インダクタ33Bの第2端に接続している。また、出力コンデンサ35の第2端は、第2外部出力端子23Bに接続している。
【0025】
電力変換回路30は、複数の出力端子を備えている。具体的には、電力変換回路30は、第1出力端子36Aと、第2出力端子36Bと、を備えている。電力変換回路30の第1出力端子36Aは、出力コンデンサ35の第1端である。電力変換回路30の第2出力端子36Bは、出力コンデンサ35の第2端である。
【0026】
フィルタ回路40は、第1コモンモードチョークコイル41と、第2コモンモードチョークコイル46と、を備えている。
第1コモンモードチョークコイル41は、第1コイル42と、第2コイル43と、第3コイル44と、後述する磁性コア45と、を有している。そして、当該3つのコイルは、1つの磁性コア45を共有している。すなわち、第1コモンモードチョークコイル41の3つのコイルは、磁気結合している。
【0027】
第1コモンモードチョークコイル41を構成する第1コイル42の第1端は、金属筐体20に接続している。また、第1コイル42の第2端は、グランド端子24に接続している。すなわち、第1コモンモードチョークコイル41は、金属筐体20を通してグランドに接続している。
【0028】
第1コモンモードチョークコイル41を構成する第2コイル43の第1端は、第2コモンモードチョークコイル46を介して、電力変換回路30の第2出力端子36Bに接続している。また、第2コイル43の第2端は、第2外部出力端子23Bに接続している。すなわち、第2コイル43は、グランドに接続されない。
【0029】
第1コモンモードチョークコイル41を構成する第3コイル44の第1端は、第2コモンモードチョークコイル46を介して、電力変換回路30の第1出力端子36Aに接続している。また、第3コイル44の第2端は、第1外部出力端子23Aに接続している。すなわち、第3コイル44は、グランドに接続されない。
【0030】
このように、第1コモンモードチョークコイル41は、各上段スイッチング素子の第2端子及び各外部出力端子の間、且つ各下段スイッチング素子の第1端子及び各外部出力端子の間に位置している。すなわち、第1コモンモードチョークコイル41は、複数の出力端子と金属筐体20との間に直列接続している。
【0031】
第2コモンモードチョークコイル46は、第4コイル47と、第5コイル48と、1つのコアと、を有している。当該2つのコイルは、1つのコアを共有している。すなわち、第2コモンモードチョークコイル46の2つのコイルは、磁気結合している。
【0032】
第2コモンモードチョークコイル46を構成する第4コイル47の第1端は、電力変換回路30の第2出力端子36Bに接続している。また、第4コイル47の第2端は、第1コモンモードチョークコイル41を介して、第1外部出力端子23Aに接続している。すなわち、第4コイル47は、グランドに接続されない。
【0033】
第2コモンモードチョークコイル46を構成する第5コイル48の第1端は、電力変換回路30の第1出力端子36Aに接続している。また、第5コイル48の第2端は、第1コモンモードチョークコイル41を介して、第2外部出力端子23Bに接続している。すなわち、第5コイル48は、グランドに接続されない。したがって、第2コモンモードチョークコイル46は、第1コモンモードチョークコイル41と直列接続している。そして、第2コモンモードチョークコイル46は、グランドに接続されない。
【0034】
以上のとおり、フィルタ回路40は、電力変換回路30及び金属筐体20の間に位置している。また、第1コモンモードチョークコイル41は、第2コモンモードチョークコイル46及び金属筐体20の間に位置している。そして、第2コモンモードチョークコイル46は、電力変換回路30の各出力端子及び第1コモンモードチョークコイル41の間に位置している。
【0035】
なお、第2コイル43のインダクタンスは、第4コイル47のインダクタンスよりも小さい。また、第3コイル44のインダクタンスは、第5コイル48のインダクタンスよりも小さい。
【0036】
電力変換装置10は、第1コンデンサ34Aと、第2コンデンサ34Bと、を備えている。
第1コンデンサ34Aの第1端は、第1出力端子36Aに接続している。一方、第1コンデンサ34Aの第2端は、第1コモンモードチョークコイル41の第1コイル42を介して、グランド端子24に接続している。すなわち、第1コンデンサ34Aは、Yコンデンサとして機能する。
【0037】
第2コンデンサ34Bの第1端は、第2出力端子36Bに接続している。一方、第2コンデンサ34Bの第2端は、第1コモンモードチョークコイル41の第1コイル42を介して、グランド端子24に接続している。すなわち、第2コンデンサ34Bは、Yコンデンサとして機能する。
【0038】
(第1コモンモードチョークコイルについて)
上記のように構成された電力変換回路30のうち、第1コモンモードチョークコイル41を除く部分は、基板70上に実装されている。なお、
図2では、基板70に実装された各素子の図示を省略している。
【0039】
図2に示すように、第1コモンモードチョークコイル41は、第1配線42Wと、第2配線43Wと、第3配線44Wと、磁性コア45と、を備えている。
第1配線42Wの第1端は、接続端子71を介して、金属筐体20に接続している。第1配線42Wの第2端は、グランド端子24に接続している。この第1配線42Wは、第1コモンモードチョークコイル41の第1コイル42を構成している。
【0040】
第2配線43Wの第1端は、接続端子71を介して、第2コモンモードチョークコイル46の第4コイル47の第2端に接続している。第2配線43Wの第2端は、第2外部出力端子23Bに接続している。この第2配線43Wは、第1コモンモードチョークコイル41の第2コイル43を構成している。
【0041】
第3配線44Wの第1端は、接続端子71を介して、第2コモンモードチョークコイル46の第5コイル48の第2端に接続している。第3配線44Wの第2端は、第1外部出力端子23Aに接続している。この第3配線44Wは、第1コモンモードチョークコイル41の第3コイル44を構成している。
【0042】
また、図示は省略するが、第1配線42W、第2配線43W及び第3配線44Wは、導体配線と、当該導体配線を被覆する絶縁膜と、を有している。
磁性コア45は、略円筒状である。磁性コア45の材質は、フェライト等の磁性材を含んでいる。磁性コア45は、第1配線42W、第2配線43W及び第3配線44Wを取り囲んでいる。換言すると、第1配線42W、第2配線43W及び第3配線44Wは、磁性コア45の中央の孔を挿し通っている。
【0043】
ここで、第1コモンモードチョークコイル41が有する磁性コア45の、当該磁性コア45の中心軸に沿う方向の長さを、磁性コア45の長さ寸法L1とする。このとき、磁性コア45の長さ寸法L1は、第1配線42W、第2配線43W、または、第3配線44Wから選ばれる1つの配線の配線長L2の、1/10以上である。なお、磁性コア45の中心軸は、次のように定義する。すなわち、中心軸は、筒状の磁性コア45が有する貫通穴において、金属筐体20の各外部出力端子側の開口縁で形成される平面図形の幾何中心と、電力変換回路30の各出力端子側の開口縁で形成される平面図形の幾何中心と、を結ぶ直線である。また、第1配線42Wの配線長L2は、グランド端子24から接続端子71までの配線の長さである。第2配線43Wの配線長L2は、第2外部出力端子23Bから接続端子71までの配線の長さである。第3配線44Wの配線長L2は、第1外部出力端子23Aから接続端子71までの配線の長さである。なお、
図2においては、第1配線42Wの配線長L2を示している。
【0044】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態において、電力変換回路30は、グランド端子24に接続する第1コイル42を含む第1コモンモードチョークコイル41に加えて、グランドに接続されない第2コモンモードチョークコイル46を備えている。それにより、電力変換回路30を構成する各素子及び金属筐体20の間で形成される寄生容量に起因するノイズを小さくできる。
【0045】
(2)上記実施形態によれば、電力変換回路30は、ハーフブリッジ回路又はフルブリッジ回路を含んでいる。これにより、電力変換回路30による電力の変換効率を向上できる。
【0046】
(3)上記実施形態によれば、第1コモンモードチョークコイル41は、第2コモンモードチョークコイル46と金属筐体20との間に配置されている。グランド端子24に接続する第1コイル42を含む第1コモンモードチョークコイル41が金属筐体20側に配置されていることにより、金属筐体20と各配線との接触箇所近傍で発生するノイズを小さくしやすい。
【0047】
(4)上記実施形態によれば、電力変換回路30の第1コモンモードチョークコイル41は、略円筒状の磁性コア45を有している。そして、この磁性コア45により第1コモンモードチョークコイル41の第1配線42W、第2配線43W、第3配線44Wが束ねられた状態になっている。これにより、基板70に対して、第1コモンモードチョークコイル41を直接実装する場合に比べて、金属筐体20と上記各配線との距離が物理的に離れる。これに伴い、第1コモンモードチョークコイル41の各配線と金属筐体20との間に形成される寄生容量を小さくできる。したがって、当該寄生容量に起因して発生するノイズを小さくできる。
【0048】
(5)上記実施形態によれば、磁性コア45の長さ寸法L1は、金属筐体20から基板70までの配線長L2の1/10以上である。これにより、金属筐体20と、基板70との間に物理的な距離をとることができる。金属筐体20との接触箇所近傍の配線では寄生容量が発生しやすいため、これらの寄生容量に起因するノイズを効率的に小さくできる。
【0049】
(6)上記実施形態によれば、第1コモンモードチョークコイル41のインダクタンスは、第2コモンモードチョークコイル46のインダクタンスよりも小さい。これらの構成により、例えば第1コモンモードチョークコイル41及び第2コモンモードチョークコイル46のいずれかのみでは小さくすることが難しい広い周波数帯のノイズを小さくできる。
【0050】
(7)上記実施形態によれば、電力変換回路30は、Yコンデンサとして機能する第1コンデンサ34A及び第2コンデンサ34Bを備える。これにより、コモンモードノイズなどのノイズをさらに小さくできる。
【0051】
(8)上記実施形態によれば、第1配線42W、第2配線43W及び第3配線44Wは、導体配線の外面を絶縁体で被覆したケーブルである。これにより、第1コモンモードチョークコイル41の各配線の間で形成される寄生容量、及び各配線と金属筐体20との間に形成される寄生容量の大きさを小さくできる。したがって、コモンモードノイズなどのノイズを小さくできる。
【0052】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・金属筐体20が有する高電位外部入力端子及び低電位外部入力端子は、2組に限らない。1組でもよいし、3組以上有していてもよい。
・金属筐体20は、外部接続端子の一部または全部を備えていなくてもよい。例えば、金属筐体20は、第1外部出力端子23A、第2外部出力端子23B及びグランド端子24の代わりに、金属筐体20の内部と外部を連通する穴を有していてもよい。その場合、第1配線42W、第2配線43W、及び第3配線44Wは、当該穴を通って、金属筐体20の外部に延びていてもよい。ただし、このような場合、当該穴における金属筐体20の内部と外部の境界近傍において、各配線と金属筐体20との間に寄生容量が発生しうる。そのため、例えば配線長L2を求める際に、当該境界を外部接続端子とみなして、配線長L2を求める。
【0054】
・電力変換回路30は、DC/DCコンバータ60を備えていなくてもよいし、電力変換回路30は、DC/DCコンバータ60のみを備えていてもよい。
・電力変換回路30は、ハーフブリッジ回路又はフルブリッジ回路を含まなくてもよい。その場合でも、(1)に記載の効果は得られる。
【0055】
・電力変換回路30は、本実施形態のような、いわゆる単相2線に限られない。例えば、単相3線としてもよい。この例の場合、金属筐体20は、第3外部出力端子を有していればよい。そして、電力変換回路30は、第3上段スイッチング素子、第3下段スイッチング素子及び第3インダクタを備えていればよい。なお、この例の場合、各素子の接続関係は、第1上段スイッチング素子31A、第1下段スイッチング素子32A及び第1インダクタ33A等と同様である。また、この場合、第1コモンモードチョークコイル41は、第3出力端子に接続する4つ目のコイルを有し、第2コモンモードチョークコイル46は、第3出力端子に接続する3つ目のコイルを有していることが好ましい。また、この例以外にも、電力変換装置10は、三相4線等でもよい。
【0056】
・各スイッチング素子は、本実施形態の例に限られない。制御・駆動回路50によりスイッチングを操作できれば、MOSFET以外の素子でもよい。
・電力変換回路30は、第1インダクタ33A、第2インダクタ33B及び出力コンデンサ35を備えていなくてもよい。
【0057】
・電力変換回路30は、第1コンデンサ34A及び第2コンデンサ34Bを備えていなくてもよい。これらを備えていなくても、(1)に記載の効果は得られる。
・第1コモンモードチョークコイル41の第2コイル43のインダクタンスは、第2コモンモードチョークコイル46の第4コイル47のインダクタンス以上であってもよい。同様に、第1コモンモードチョークコイル41の第3コイル44のインダクタンスは、第2コモンモードチョークコイル46の第5コイル48のインダクタンス以上であってもよい。第1コモンモードチョークコイル41に加えて第2コモンモードチョークコイル46を有してさえいれば、有していない場合に比べてコモンモードノイズを小さくできる。
【0058】
・第1コモンモードチョークコイル41は、第2コモンモードチョークコイル46及び金属筐体20の間に位置していなくてもよい。例えば、第1コモンモードチョークコイル41は、出力コンデンサ35と、第2コモンモードチョークコイル46の間に位置していてもよい。第1コモンモードチョークコイル41と第2コモンモードチョークコイル46の位置関係が異なっていても、電力変換回路30及び金属筐体20の間で生じる寄生容量に起因するノイズと、電力変換回路30及び大地の間で生じる寄生容量に起因するノイズと、を両方小さくできる。
【0059】
・電力変換回路30の構成要素のうち、どの素子及び配線が基板70に実装されているかは任意である。例えば、第1コモンモードチョークコイル41が、基板70上に実装可能な素子として構成されているのであれば、第1コモンモードチョークコイル41が基板70上に実装されていてもよい。第1コモンモードチョークコイル41が基板70上に実装されていても、ノイズを小さくする効果は得られる。また、第2コモンモードチョークコイル46が基板70上に実装されていなくてもよく、その場合、第2コモンモードチョークコイル46は第1コモンモードチョークコイル41と同様に、複数の配線を取り囲む筒状のコアを有していてもよい。
【0060】
・第3配線44W、第2配線43W及び第1配線42Wは、導体配線を被覆する絶縁膜を有していなくてもよい。その場合、各導体配線が被覆以外の方法で絶縁していることが好ましい。
【0061】
・電力変換回路30が有する磁性コア45は、1つに限られない。例えば、第3配線44W、第2配線43W及び第1配線42Wを、2つの磁性コア45が取り囲んでいてもよい。
【0062】
・磁性コア45の形状は、本実施形態の例に限られない。例えば、柱状の磁性コア45に第3配線44W、第2配線43W、第1配線42Wが巻回されて構成されていてもよい。また、例えば、複数の環状の磁性コア45で第3配線44W、第2配線43W及び第1配線42Wを取り囲んでもよい。
【0063】
・磁性コア45の中心軸に沿う方向において、磁性コア45の長さ寸法L1は、各外部出力端子から、基板70までの配線長L2の1/10未満でもよい。第1コモンモードチョークコイル41が磁性コア45を共有してさえいれば、コモンモードノイズを抑制することができる。
【0064】
・磁性コア45は、第1配線42Wに加えて、各外部出力端子に接続している複数の配線のうち、少なくとも1つの配線を取り囲んでいればよい。例えば、磁性コア45は、第3配線44W及び第1配線42Wのみ取り囲んでいてもよい。グランド端子24に接続するコイルを含む第1コモンモードチョークコイル41と、当該コイルを含まない第2コモンモードチョークコイル46を有していれば、第2コモンモードチョークコイル46を有していない場合に比べてコモンモードノイズを小さくできる。
【0065】
・磁性コア45の材質は、フェライトに限られない。例えば、パーマロイ等でもよい。
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
【0066】
[1]
グランドに接続される金属筐体と、
前記金属筐体の内部に位置し、電圧を変換する電力変換回路と、
前記金属筐体の内部に位置し、前記電力変換回路及び前記金属筐体の間に位置するフィルタ回路と、
を備え、
前記電力変換回路は、複数の出力端子と、スイッチング素子と、を有し、
前記フィルタ回路は、
複数の前記出力端子と前記金属筐体との間に直列接続される第1コモンモードチョークコイルと、
前記第1コモンモードチョークコイルに直列接続され、且つ前記グランドに接続されない第2コモンモードチョークコイルと、
を備え、
前記第1コモンモードチョークコイルは、前記金属筐体を通して前記グランドに接続する第1コイルと、前記グランドに接続されない第2コイル及び第3コイルと、を含む電力変換装置。
【0067】
[2]
前記電力変換回路は、ハーフブリッジ回路又はフルブリッジ回路を含む[1]に記載の電力変換装置。
【0068】
[3]
前記第2コモンモードチョークコイルは前記出力端子に接続され、
前記第1コモンモードチョークコイルは、前記第2コモンモードチョークコイルと前記金属筐体との間に配置される[1]又は[2]に記載の電力変換装置。
【0069】
[4]
前記第1コイル、前記第2コイル、及び前記第3コイルは、前記出力端子に接続する配線と、筒状の磁性コアからなり、
前記磁性コアは、前記第1コイル、前記第2コイル、及び前記第3コイルを構成する前記配線を取り囲むように配置される[1]~[3]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0070】
[5]
基板をさらに備え、
前記第2コモンモードチョークコイルは前記基板に実装され、
前記磁性コアの中心軸に沿う寸法は、前記配線の前記金属筐体から前記基板までの配線長の1/10以上である[4]に記載の電力変換装置。
【0071】
[6]
前記第2コモンモードチョークコイルは、第4コイルを含み、
前記第2コイルのインダクタンスは、前記第4コイルのインダクタンスよりも小さい[1]~[5]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0072】
[7]
前記電力変換回路の前記出力端子と、前記グランドとの間に接続するコンデンサを備える[1]~[6]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0073】
10…電力変換装置
20…金属筐体
21…外部接続端子
30…電力変換回路
40…フィルタ回路
41…第1コモンモードチョークコイル
46…第2コモンモードチョークコイル