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特開2024-78121ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078121
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240603BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240603BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K9/06
A61K47/10
A61P31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190498
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】溝上 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 利博
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 靖久
(72)【発明者】
【氏名】高見 篤郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC32
4C076DD01F
4C076DD37
4C076FF43
4C076FF68
4C076GG41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206KA03
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA89
4C206ZB35
(57)【要約】
【課題】本発明は、温度(季節)によっても使用感が低下せず、ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を含むクリーム剤であって、該クリーム剤が、ジャー容器用であり、5℃~40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、5℃および40℃における粘度の差が、38,000 mPa・s以下である、前記クリーム剤などに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を含む、クリーム剤であって、
該クリーム剤が、ジャー容器用であり、
5℃~40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、
5℃および40℃における粘度の差が、38,000 mPa・s以下である、
前記クリーム剤。
【請求項2】
5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1 ~1である、請求項1に記載のクリーム剤。
【請求項3】
異なるアルキル鎖長の高級アルコールを含む、請求項1または2に記載のクリーム剤。
【請求項4】
ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤を製造する方法であって、
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を混合して得られたクリーム剤の粘度を測定し、以下の条件を満たすか否かを判断し:
‐ 5℃、25℃、40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであること、および
‐ 5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であること、
かかる条件を満たすクリーム剤を調製することを含む、
前記方法。
【請求項5】
‐ 5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1~1であること
の条件を満たすか否かについても判断し、
かかる条件も満たすクリーム剤を調製する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クリーム剤が、異なるアルキル鎖長の高級アルコールを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を判定する方法であって、
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を混合して得られたクリーム剤の粘度を測定し、以下の条件
‐ 5℃、25℃、40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであること、および
‐ 5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であること、
を満たすか否かを判断することを含む、前記方法。
【請求項8】
‐ 5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1~1であること
の条件を満たすか否かについても判断する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水虫治療薬であるブテナフィン塩酸塩を含有する皮膚外用剤は、既に種々の剤形で市販されており、臨床現場や一般家庭においても広く使用されている。
皮膚外用剤には、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、スプレー剤、貼付剤等の剤形があるが、その中でもクリーム剤は皮膚透過性や使用感に優れる剤形であることが知られている。ブテナフィン塩酸塩を含有するクリーム剤としては、例えば、特許文献1に角質貯留性の改善および佐薬の配合により治療効果を高めた塩酸ブテナフィン含有クリーム剤が記載されている。
他方、クリーム剤を充填する容器としては、チューブ容器、ジャー容器等が挙げられる。ジャー容器は、チューブ容器に比べて容器の開口部(内容物の取り出し口)が大きいため、所望する量のクリーム剤を指で簡単に掬い取ることができ、所望する部位に塗布し易いという特徴があるが、これまでブテナフィン塩酸塩を含有するクリーム剤ではチューブ容器が通常では使用されており、ジャー容器は使用されてはこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-239679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤の検討を行ったところ、チューブ容器に充填されたクリーム剤では問題とならなかった、温度による粘度の変化が問題となる知見、より具体的には、温度により粘度が変化し、季節(例えば、夏場や冬場)によってはジャー容器に充填されているクリーム剤を指で掬い難く、塗布しづらい等の使用感が低下する可能性があるとの知見を得るに至った。
したがって、本発明の課題は、温度(季節)によっても使用感が低下せず、ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を提供することである。
【0005】
本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意研究を行う中で、温度(季節)によっても使用感が低下せず、ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を提供できることを発見し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下[1]~[6]に関する。
[1]
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を含む、クリーム剤であって、
該クリーム剤が、ジャー容器用であり、
5℃~40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、
5℃および40℃における粘度の差が、38,000 mPa・s以下である、
前記クリーム剤。
[2] 5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1 ~1である、[1]に記載のクリーム剤。
[3] 異なるアルキル鎖長の高級アルコールを含む、[1]または[2]に記載のクリーム剤。
【0007】
[4] ジャー容器用のブテナフィン含有クリーム剤を製造する方法であって、
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を混合して得られたクリーム剤の粘度を測定し、以下の条件を満たすか否かを判断し:
‐ 5℃、25℃、40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであること、および
‐ 5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であること、
かかる条件を満たすクリーム剤を調製することを含む、
前記方法。
[5] ‐ 5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1~1であること
の条件を満たすか否かについても判断し、
かかる条件も満たすクリーム剤を調製する、[4]に記載の方法。
[6] クリーム剤が、異なるアルキル鎖長の高級アルコールを含む、[4]または[5]に記載の方法。
[7] ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を判定する方法であって、
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を混合して得られたクリーム剤の粘度を測定し、以下の条件
‐ 5℃、25℃、40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであること、および
‐ 5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であること、
を満たすか否かを判断することを含む、前記方法。
[8] ‐ 5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、0.1~1である
の条件を満たすか否かについても判断する、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度(季節)によっても使用感が低下せず、ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のクリーム剤は、ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩、水、高級アルコールおよび界面活性剤を含む。
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩は、抗真菌薬であり、本発明のクリーム剤における有効成分である。ブテナフィンの薬学的に許容し得る塩としては、ブテナフィン塩酸塩が挙げられる。
本明細書において、ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩を含有するクリーム剤をまとめて「ブテナフィン含有クリーム剤」とも称する。
ブテナフィンまたはその薬学的に許容し得る塩の配合量は、適宜選択することができるが、抗真菌薬としての効能の観点から、製剤全体を基準として、ブテナフィン塩酸塩換算で、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である(本明細書において、特に断らない限り、「質量%」は製剤全体を基準とした質量%を意味する)。
【0010】
水の配合量は、適宜選択することができるが、安定性および使用感の観点から、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65重量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0011】
本発明のクリーム剤は、高級アルコールとして、医薬品、医薬部外品などに一般的に用いられる、あらゆる高級アルコールを含むことができる。本発明の一態様において、容易に適切な粘度のクリーム剤を得られる観点から、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましいが、その他の高級アルコールを含むこともでき、例えば、アラキジルアルコール、セリルアルコール、ラウリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどの他の高級アルコールを単独で、または組み合わせて含むこともできる。
高級アルコールの配合量は、使用する高級アルコールの種類や、追加の油剤の種類およびその配合量などによって適宜選択することができるが、温度(季節)によって使用感が低下することを防ぐ観点から、好ましくは4~15質量%、より好ましくは6~12質量%、さらに好ましくは7~10質量%である。
【0012】
本発明の一態様において、乳化安定性の観点から、本発明のクリーム剤は、異なるアルキル鎖長の高級アルコールを含むことが好ましい。
したがって、本発明の好ましい態様において、本発明のクリーム剤は、セチルアルコールおよびステアリルアルコールを含有する混合物であるセトステアリルアルコールを含む。さらに好ましい態様において、クリーム剤の質感、つや感が良好となる観点から、本発明のクリーム剤は、セトステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールを含む。
【0013】
本発明のクリーム剤は、界面活性剤として、医薬品、医薬部外品などに一般的に用いられる、あらゆる界面活性剤を使用することができ、ノニオン系界面活性剤;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両性界面活性剤のいずれであってもよい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、および、ポリオキシエチレンノニルエーテル、モノオキシエチレンセチルエーテル、モノオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテル、およびそれ以外のポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、アルキル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられる。
界面活性剤の配合量は、特に限定されず、使用する界面活性剤の種類、高級アルコールの配合量、追加の油剤の種類および配合量などに依存して適宜選択することができるが、好ましくは3~15質量%であり、より好ましくは6~10質量%である。
【0014】
本発明の好ましい態様において、クリーム剤は、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルを含み、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルの配合量は、特に限定されず、高級アルコールの配合量、追加の油剤の種類および配合量などに依存して適宜選択することができるが、好ましくは1~5質量%であり、より好ましくは2~4質量%である。
【0015】
本発明の好ましい態様において、クリーム剤はモノステアリン酸グリセリンを含むことが好ましく、本発明において、モノステアリン酸グリセリンは、モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、および親油型モノステアリン酸グリセリンのいずれであってもよい。
本発明の一態様において、モノステアリン酸グリセリンは自己乳化型モノステアリン酸グリセリンであることが好ましい。
モノステアリン酸グリセリンの配合量は、特に限定されず、高級アルコールの配合量、追加の油剤の種類および配合量などに依存して適宜選択することができるが、好ましくは2~10質量%であり、より好ましくは4~6質量%である。
【0016】
容易に適切な粘度のクリーム剤を得られる観点から、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルおよびモノステアリン酸グリセリンを含むことが好ましい。
本発明の好ましい態様において、クリーム剤はポリオキシエチレンベヘニルエーテルおよびモノステアリン酸グリセリンを含み、ここで、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル:モノステアリン酸グリセリンの配合比は、特に限定されないが、好ましくは2:1~1:3、より好ましくは1:1~1:2.5、さらに好ましくは1:1.5~1:2である。
本発明の一態様において、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルおよびモノステアリン酸グリセリンを用いることが好ましく、これに、追加の界面活性剤を組み合わせることができ、その配合量は、適宜選択することができ、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルおよびモノステアリン酸グリセリンの配合量よりも少ないことが好ましく、例えば0~3質量%、より好ましくは0~2質量%である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、界面活性剤としてポリオキシエチレンベヘニルエーテルおよびモノステアリン酸グリセリンのみを含み、追加の界面活性剤を含まない。
【0017】
本発明のクリーム剤は、ジャー容器に充填されるものである。
ジャー容器の形状および大きさは特に限定されないが、容器の開口部(内容物の取り出し口)は、所望の量のクリーム剤を指で簡単に掬うことができる大きさが好ましく、その内径は好ましくは30mm~100mmであり、より好ましくは30mm~60mmである。また、ジャー容器の深さは、好ましくは20~80mmであり、より好ましくは25~40mmである。また、ジャー容器の素材は、特に限定されないが、耐薬物性の観点から、ポリプロピレンであることが好ましい。
ジャー容器に充填されていることで、例えば、かかと、足裏などの比較的広い部位に塗布する量を指で十分に掬いやすい製品を提供することができる。チューブ容器の場合には、クリーム剤を押し出せる開口部の面積が比較的狭いことから、一度に指先に取り出せるクリーム剤の量は限られているが、ジャー容器からは、開口部が十分に広いので、一度に目的の量を任意に、かつ容易に取り出すことができる。
【0018】
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、上記成分以外に、佐薬、高級アルコール以外の追加の油剤、水性成分などを含むことができる。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、佐薬を含み、その例として、
ジブカイン塩酸塩、リドカインなどの局所麻酔薬;
クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬;
グリチルレチン酸、アラントインなどの抗炎症薬;
イソプロピルメチルフェノールなどの抗菌成分;
l-メントール、クロタミトンなどの鎮痒剤
などが挙げられる。
本発明の一態様において、異なる作用を有する佐薬を組み合わせることで、様々な症状を抑える観点から、本発明のクリーム剤は、ジブカイン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、グリチルレチン酸およびイソプロピルメチルフェノールを含む。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、l-メントールおよび/またはクロタミトンを含まない。
【0019】
これらの佐薬の配合量は、求める効果に充分な量として適宜選択することができ、例えば、
0.01~5.0質量%のジブカイン塩酸塩、
0.05~5.0質量%のクロルフェニラミンマレイン酸塩
0.05~10.0質量%のグリチルレチン酸
0.01~5.0質量%イソプロピルメチルフェノール
を含む。
【0020】
本発明のクリーム剤に用いられる、追加の油剤は、医薬品、医薬部外品などに一般的に用いられる成分であれば特に限定されないが、例としては、炭化水素油;エステル油;シリコーン油などの油剤が挙げられ、これらを単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどが挙げられる。
炭化水素油の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができ、好ましくは高級アルコールの配合量より少なく、例えば、0.01~5.0質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%である。
本発明の一態様において、保湿効果の観点から、スクワランが好ましい。
【0022】
エステル油としては、2-エチルヘキサン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸などの高級脂肪酸と炭素数1~18のアルコールとのエステルが挙げられる。
経皮吸収促進剤としても機能する観点から、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどが好ましい。
エステル油の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができ、好ましくは高級アルコールの配合量より少なく、例えば、1~10質量%であり、より好ましくは3~5質量%である。
【0023】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
シリコーン油の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができ、好ましくは高級アルコールの配合量より少なく、例えば、0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
【0024】
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤において、高級アルコールの配合量が、追加の油剤の配合量よりも多いことが好ましく、より特別な態様においては、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群から選択される高級アルコールの配合量よりも、これら以外の油剤の配合量が少ないことが好ましい。
【0025】
本発明のクリーム剤は、多価アルコールなどの水性成分を含むこともできる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0026】
本発明のクリーム剤は、皮膚外用クリーム剤に通常配合される酸化防止剤、防腐剤、保存剤、保湿剤、キレート剤、ゲル化剤、香料、その他の添加剤をさらに含むことができる。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、水虫によりカサカサとしたかかと、足裏などの部位に塗布されることから、ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿剤を含むことが好ましい。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、使用感の観点から、ゲル化剤を含まない。
【0027】
本発明のクリーム剤は、5℃~40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sである。7,000mPa・s以下である場合、指でクリーム剤を掬う際にたれ落ちが起きやすくなる。一方、50,000mPa・s以上である場合、硬すぎるためクリーム剤を指で掬いにくくジャー容器用のクリーム剤としては使いにくい。
また、粘度を7,000mPa・s~50,000mPa・sとすることで、かかと、足裏などの、広い範囲に指で塗布するために適した使用感のクリーム剤とすることができ、特に水虫によりカサカサとしたかかと、足裏などの部位への指での塗布に適した使用感となる。
【0028】
本発明の一態様において、ジャー容器から、クリーム剤を指で掬う際のたれ落ちを防ぐ観点から、本発明のクリーム剤は、5℃~40℃における粘度が、7,000mPa・s以上であり、好ましくは9,000mPa・s以上であり、より好ましくは11,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは12,000mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは14,000mPa・s以上である。
【0029】
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、5℃における粘度が、7,000mPa・s以上であり、好ましくは15,000mPa・s以上であり、より好ましくは25,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは30,000mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは32,000mPa・s以上である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、25℃における粘度が、7,000mPa・s以上であり、好ましくは10,000mPa・s以上であり、より好ましくは15,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは20,000mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは21,000mPa・s以上である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、40℃における粘度が、7,000mPa・s以上であり、好ましくは8,000mPa・s以上であり、より好ましくは9,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは10,000mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは14,000mPa・s以上である。
【0030】
本発明の一態様において、ジャー容器から、クリーム剤を指で掬いやすくする観点から、本発明のクリーム剤は、5℃~40℃における粘度が、50,000mPa・s以下であり、好ましくは47,000mPa・s以下であり、より好ましくは44,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは41,000mPa・s以下であり、よりさらに好ましくは39,000mPa・s以下である。
【0031】
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、5℃における粘度が、50,000mPa・s以下であり、好ましくは48,000mPa・s以下であり、より好ましくは46,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは44,000mPa・s以下であり、よりさらに好ましくは39,000mPa・s以下である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、25℃における粘度が、50,000mPa・s以下であり、好ましくは44,000mPa・s以下であり、より好ましくは38,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは32,000mPa・s以下であり、よりさらに好ましくは26,000mPa・s以下である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、40℃における粘度が、50,000mPa・s以下であり、好ましくは30,000mPa・s以下であり、より好ましくは25,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは20,000mPa・s以下であり、よりさらに好ましくは17,000mPa・s以下である。
【0032】
本発明のクリーム剤は、5℃~40℃における粘度は、好ましくは9,000~47,000mPa・s、より好ましくは11,000~44,000mPa・s、さらに好ましくは、12,000~41,000mPa・s、特に好ましくは、14,000~39,000mPa・sである。
本発明のクリーム剤は、5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であり、好ましくは35,000mPa・s以下、より好ましくは33,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは29,000mPa・s以下であり、よりさらに好ましくは23,000mPa・s以下である。
本発明の一態様において、本発明のクリーム剤は、5℃および40℃における粘度の比(40℃における粘度/5℃における粘度)が、好ましくは0.1~1であり、より好ましくは0.15~1であり、さらに好ましくは0.2~1であり、よりさらに好ましくは0.4~1である。
【0033】
本発明のクリーム剤は、常法に従って、各成分を混合、乳化することにより製造することができる。
得られたクリームの粘度を測定し、以下の条件を満たすか否かを判断することで、ジャー容器に適したブテナフィン含有クリーム剤を提供できる
‐ 5℃および40℃における粘度の差が、38,000mPa・s以下であること、および
‐ 5℃、25℃、40℃における粘度が、7,000mPa・s~50,000mPa・sであること。

以下、本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的な思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書において、特に明示しない場合には、%は質量%を意味する。
【実施例0034】
[試験例1]
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
*その他の成分として、油剤(ジメチルポリシロキサン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル)、プロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ジエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、メチルパラベンそれぞれを、各比較例、実施例において同量で配合。
【0037】
1. クリーム剤の製造方法
上記表1および表2の組成に従って各成分を秤取、混合、乳化し、ジャー容器に充填してクリーム剤を製造した。
【0038】
2. 粘度測定
クリーム剤を製造した後、下記の条件により各クリーム剤の粘度を測定した。
<測定条件>
機器名:BROOKFIELD VISCOMETER(米国ブルックフィールド社製)
型式:RVDV2T
スピンドル/チャンバー:SC4-14/SC4-6R(P)
スピンドル回転数:10rpm
測定時間:330秒
測定温度:5℃、25℃または40℃
【0039】
3. 評価・判定
〇: 5℃~40℃における粘度が7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、5℃および40℃における粘度の差が、38,000 mPa・s以下である場合
×: 5℃、25℃、40℃のいずれかの温度において、粘度が上記範囲外である場合、および/または5℃および40℃における粘度の差が、38,000 mPa・s以上である場合
【0040】
4. 考察
比較例1~5のクリーム剤では5~40℃のいずれかの温度における粘度が低く、ジャー容器用のクリーム剤としては不適であることが確認された。例えば、比較例4は25℃、5℃における粘度は良好なものの、40℃における粘度が極端に低下し、特に夏場に本クリーム剤を使用する場合において、たれ落ちが発生する可能性が高く、ジャー容器用のクリーム剤として採用することができない。
【0041】
実施例1(セチルアルコール)のクリーム剤は5℃~40℃における粘度が7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、温度による粘度変化も小さく、ジャー容器に適した値を示すことが確認された。
実施例2、3(セトステアリルアルコール)のクリーム剤は5℃~40℃における粘度が7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、温度による粘度変化も特に小さく、ジャー容器に適した値を示すことが確認された。
実施例4、5(ベヘニルアルコール)のクリーム剤は5℃~40℃における粘度が7,000mPa・s~50,000mPa・sであり、ジャー容器に適した値を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のクリーム剤は、温度(季節)によっても使用感が低下せず、ジャー容器において用いることができ、ジャー容器に充填したブテナフィン含有クリーム剤製品を提供することできる。