(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078122
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61M25/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190499
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小口 拓真
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB08
4C267BB14
4C267CC08
4C267CC19
4C267FF01
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG08
4C267GG22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャフトの内腔に導線を挿通しやすく、生産効率を向上させることができるカテーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】シャフトの遠位部の内腔に、導線挿通具30の遠位部を配置する工程と、シャフトの外部からシャフトの内腔へ向かう方向に導線を側孔へ挿入する工程と、導線の端部を側孔よりも遠位側かつシャフトの遠位端よりも近位側に配置する工程と、導線挿通具をシャフトの近位端から抜去し、導線をシャフトの近位端から露出させる工程と、導線挿通具は、3本以上の線材31と、線材の遠位端31dにおいて複数の線材が互いに固定されている遠位側固定部32と、線材の近位端31pにおいて複数の線材が互いに固定されている近位側固定部33とを有し、導線挿通具は、一の線材31Aと、他の線材31Bと、によって形成される閉ループ34を複数有し、複数の閉ループは、同一平面上にない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に延在している内腔を備えており周壁に側孔を有するシャフトと、前記シャフトの内腔に挿通されている導線と、を有するカテーテルの製造方法であって、
前記シャフトの遠位部の内腔に、導線挿通具の遠位部を配置する工程と、
前記シャフトの外部から前記シャフトの内腔へ向かう方向に前記導線を前記側孔へ挿入する工程と、
前記導線の端部を前記側孔よりも遠位側かつ前記シャフトの遠位端よりも近位側に配置する工程と、
前記導線挿通具を前記シャフトの近位端から抜去し、前記導線を前記シャフトの近位端から露出させる工程と、を含み、
前記導線挿通具は、3本以上の線材と、前記線材の遠位端において複数の前記線材が互いに固定されている遠位側固定部と、前記線材の近位端において複数の前記線材が互いに固定されている近位側固定部と、を有しており、
前記導線挿通具は、一の線材と、前記一の線材とは異なる他の線材と、によって形成される閉ループを複数有し、
複数の前記閉ループは、同一平面上にないカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記導線挿通具は、前記遠位側固定部に遠位側筒部材と、前記近位側固定部に近位側筒部材と、をそれぞれ有しており、
前記遠位側筒部材の内腔に複数の前記線材が配置されており、
前記近位側筒部材の内腔に複数の前記線材が配置されている請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記導線挿通具は、第1の線材と、前記第1の線材に隣接する第2の線材と、を有しており、
前記線材の長手軸方向での長さの中点における前記線材の長手軸に垂直な断面において、複数の前記線材の内接円の中心と前記第1の線材の外形の中心とを結ぶ直線と、複数の前記線材の内接円の中心と前記第2の線材の外形の中心とを結ぶ直線と、がなす角度は、30度以上120度以下である請求項1または2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記線材は、波形形状である請求項1または2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記シャフトは、前記シャフトの長手軸方向において、最も遠位側にある第1側孔と、最も近位側にある第2側孔と、を有しており、
前記導線挿通具の長手軸方向における前記線材の遠位端から前記線材の近位端までの長さは、前記シャフトの前記第1側孔から前記第2側孔までの長さよりも長い請求項1または2に記載のカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの内腔に導線を有するカテーテルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検査や治療において、導線に接続された電極を有するカテーテルを用いることがある。具体的には、心房細動等の不整脈の検査時に、電極を有するカテーテルを心腔内に挿入し、心内電位を測定して不整脈の原因となっている心臓の異常部位を特定する。不整脈の治療時には、カテーテルの電極から高周波電流を不整脈の原因となっている心筋へ流し、不整脈の発生源を焼灼することによって心臓から電気的に分離する(アブレーション手術)。また、これらの検査時や治療時に心房細動が自然に発生した、または、心臓の異常部特定のために心房細動を発生させた場合には、カテーテルの電極から電気的な刺激を心臓に与えて除細動を行う。また、電極の他に、温度センサや圧力センサ等のセンサが導線に接続されたカテーテルを用いることもある。
【0003】
例えば、特許文献1には、導線に接続された電極を有するカテーテルの製造方法であって、遠位側と近位側と内腔とを備え、内腔と外部とが連通する第1の穴および第2の穴を有するシャフトを湾曲させる工程と、第1の穴からシャフトの内腔に第1の導線を挿通して、第1の導線をシャフトの近位端から露出させる工程と、湾曲工程より後に、第1の導線をシャフトの湾曲の内側に寄せる工程と、第2の穴からシャフトの内腔に第2の導線を挿通して、第2の導線をシャフトの近位端から露出させる工程と、を含み、第2の導線の挿通工程は、第1の導線をシャフトの湾曲の内側に寄せる工程より後に行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極を有するカテーテルのシャフトの内腔には、電極に応じて導線が複数配置されていることが一般的である。また、低侵襲性の向上のため、カテーテルのシャフトの細径化が求められている。カテーテルの製造において、外径が小さいシャフトの内腔に複数の導線を挿通する工程において、導線の挿通を円滑に行い、カテーテルの生産性を向上させる点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャフトの内腔に導線を挿通しやすく、生産効率を向上させることができるカテーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明の実施の形態に係るカテーテルの製造方法は、以下の通りである。
[1]長手軸方向に延在している内腔を備えており周壁に側孔を有するシャフトと、前記シャフトの内腔に挿通されている導線と、を有するカテーテルの製造方法であって、
前記シャフトの遠位部の内腔に、導線挿通具の遠位部を配置する工程と、
前記シャフトの外部から前記シャフトの内腔へ向かう方向に前記導線を前記側孔へ挿入する工程と、
前記導線の端部を前記側孔よりも遠位側かつ前記シャフトの遠位端よりも近位側に配置する工程と、
前記導線挿通具を前記シャフトの近位端から抜去し、前記導線を前記シャフトの近位端から露出させる工程と、を含み、
前記導線挿通具は、3本以上の線材と、前記線材の遠位端において複数の前記線材が互いに固定されている遠位側固定部と、前記線材の近位端において複数の前記線材が互いに固定されている近位側固定部と、を有しており、
前記導線挿通具は、一の線材と、前記一の線材とは異なる他の線材と、によって形成される閉ループを複数有し、
複数の前記閉ループは、同一平面上にないカテーテルの製造方法。
[2]前記導線挿通具は、前記遠位側固定部に遠位側筒部材と、前記近位側固定部に近位側筒部材と、をそれぞれ有しており、
前記遠位側筒部材の内腔に複数の前記線材が配置されており、
前記近位側筒部材の内腔に複数の前記線材が配置されている[1]に記載のカテーテルの製造方法。
[3]前記導線挿通具は、第1の線材と、前記第1の線材に隣接する第2の線材と、を有しており、
前記線材の長手軸方向での長さの中点における前記線材の長手軸に垂直な断面において、複数の前記線材の内接円の中心と前記第1の線材の外形の中心とを結ぶ直線と、複数の前記線材の内接円の中心と前記第2の線材の外形の中心とを結ぶ直線と、がなす角度は、30度以上120度以下である[1]または[2]に記載のカテーテルの製造方法。
[4]前記線材は、波形形状である[1]~[3]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
[5]前記シャフトは、前記シャフトの長手軸方向において、最も遠位側にある第1側孔と、最も近位側にある第2側孔と、を有しており、
前記導線挿通具の長手軸方向における前記線材の遠位端から前記線材の近位端までの長さは、前記シャフトの前記第1側孔から前記第2側孔までの長さよりも長い[1]~[4]のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
従来の製造方法では、導線をシャフトの内腔に挿通する工程が行いにくい傾向にあったため、シャフトの側孔からシャフトの内腔に挿入した導線を、シャフトの先端から露出させてから導線挿通具に通し、導線挿通具をシャフトの内腔に挿入することによって導線をシャフトの内腔に挿通することが一般的であった。本発明のカテーテルの製造方法によれば、導線挿通具が3本以上の線材と、線材の遠位端において複数の線材が互いに固定されている遠位側固定部と、線材の近位端において複数の線材が互いに固定されている近位側固定部と、を有しており、導線挿通具が一の線材と、一の線材とは異なる他の線材と、によって形成される閉ループを複数有し、複数の閉ループが同一平面上にないことにより、導線挿通具が有している閉ループの中に導線が入りやすくなる。そのため、シャフトの内腔であっても、導線が導線挿通具に引っ掛かりやすく、導線をシャフトの内腔に挿通する工程が行いやすくなり、カテーテルの生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態における導線挿通具の遠位部の拡大平面図を表す。
【
図2】
図1に示した導線挿通具のII-II断面図を表す。
【
図3】本発明の一実施の形態におけるシャフトの内腔に導線挿通具を配置する工程の断面模式図を表す。
【
図4】本発明の一実施の形態における導線を側孔へ挿入する工程の断面模式図を表す。
【
図5】本発明の一実施の形態における導線を配置する工程の断面模式図を表す。
【
図6】本発明の一実施の形態における導線をシャフトの近位端から露出させる工程の断面模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態における導線挿通具30の遠位部の拡大平面図であり、
図2は導線挿通具30の断面図である。つまり、
図2は、導線挿通具30の、線材31の長手軸方向での長さの中点P1における線材31の長手軸に垂直な断面図である。また、
図3~
図6は本発明の一実施の形態におけるカテーテル1の製造方法での各工程の断面模式図である。
【0012】
本発明において、近位側とはシャフト10の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、シャフト10の延在方向を長手軸方向と称する。なお、
図1~
図6において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
【0013】
図3~
図6に示すように、本発明は、長手軸方向に延在している内腔を備えており周壁に側孔11を有するシャフト10と、シャフト10の内腔に挿通されている導線20と、を有するカテーテル1の製造方法である。
【0014】
導線20には、電極40が接続されていてもよい。つまり、カテーテル1が導線20に接続されている電極40をさらに有していてもよい。導線20に接続されている電極40は、例えば、シャフト10の外表面に配置される。また、図示していないが、導線20にセンサが接続されていてもよい。
【0015】
シャフト10は、内腔を1つ有しているシングルルーメン構造であってもよく、内腔を複数有しているマルチルーメン構造であってもよい。中でも、シャフト10は、内腔を1つ有しているシングルルーメン構造であることが好ましい。シャフト10がシングルルーメン構造である場合、シャフト10の内部に内腔を区分けする隔壁等が存在しないため、シャフト10の内部の空間を大きくすることができる。そのため、シャフト10の内腔へ導線20を挿通しやすくなる。
【0016】
シャフト10を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEE
K等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。シャフト10は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。シャフト10が複層構造である場合、例えば、シャフト10を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。シャフト10を構成する材料は、フッ素系樹脂であることが好ましく、PTFEであることがより好ましい。シャフト10を構成する材料がフッ素系樹脂であることにより、外表面のすべり性が向上し、また、適度な剛性を付与することができるため、血管への挿通性がよいカテーテル1とすることができる。
【0017】
シャフト10の長手軸方向の長さは、カテーテル1を用いた治療に適切な長さを選択することができる。例えば、シャフト10の長手軸方向の長さは、500mm以上2000mm以下とすることができる。シャフト10の長手軸方向の長さとは、シャフト10の遠位端10dからシャフト10の近位端10pまでの長さを示す。
【0018】
シャフト10の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。シャフト10の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10に適度な剛性を与え、カテーテル1のプッシャビリティを高めることができる。また、シャフト10の外径は、3mm以下であることが好ましく、2.8mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることがさらに好ましい。シャフト10の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、カテーテル1を細径化することができ、血管等の生体内管腔への挿通性を高め、低侵襲性を向上させることが可能となる。
【0019】
シャフト10の周壁の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。シャフト10の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の剛性を高め、挿通性がよいカテーテル1とすることが可能となる。また、シャフト10の周壁の厚みは、350μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。シャフト10の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、シャフト10の内腔を広くすることができ、導線20をシャフト10の内腔へ挿通することが行いやすくなる。
【0020】
側孔11は、シャフト10の周壁に形成されている。側孔11は、シャフト10の内腔とシャフト10の外部とが連通している。
【0021】
長手軸方向における側孔11の長さは、電極40やセンサ等の長手軸方向の長さに応じて設定することができる。長手軸方向における側孔11の長さは、電極40やセンサ等の長手軸方向の長さよりも短いことが好ましい。側孔11の長手軸方向の長さは、100μm以上であることが好ましく、125μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。側孔11の長手軸方向の長さの下限値を上記の範囲に設定することにより、側孔11へ導線20を挿通しやすくすることができる。また、側孔11の長手軸方向の長さは、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。側孔11の長手軸方向の長さの上限値を上記の範囲に設定することにより、側孔11と導線20との間の隙間を小さくすることができる。その結果、カテーテル1の使用時において、側孔11と導線20との隙間から血液等の液体がシャフト10の内腔に入り込みにくくすることができる。側孔11の形状が円形や多角形である場合、側孔11の外径は、上記側孔11の長手軸方向に垂直な方向の長さと同様の範囲の大きさとすることが好ましい。
【0022】
図3~
図6に示すように、シャフト10が周壁に有している側孔11の数は、複数であることが好ましい。シャフト10が有している側孔11の数が複数であることにより、複数の導線20を有するカテーテル1とすることができ、各側孔11にそれぞれ異なる導線20を挿通することが可能となる。その結果、各導線20にそれぞれ電極40やセンサ等を接続することによって、複数の電極40やセンサを有するカテーテル1となり、カテーテル1が多機能なものとなる。
【0023】
シャフト10が複数の側孔11を有している場合、側孔11は、シャフト10の周方向に複数配置されていてもよく、シャフト10の長手軸方向に複数配置されていてもよい。また、側孔11は、シャフト10の周方向および長手軸方向にそれぞれ複数配置されていてもよい。中でも、側孔11は、シャフト10の長手軸方向に複数配置されていることが好ましい。複数の側孔11がシャフト10の長手軸方向に配置されていることにより、シャフト10の内腔に導線20を挿通する際に、シャフト10の内腔において複数の導線20が絡まりにくく、導線20を挿通する工程が行いやすくなる。
【0024】
導線20は、カテーテル1の電源装置等の外部機器(図示せず)と電極40やセンサとを電気的に接続するものである。導線20をカテーテル1の外部機器に接続することにより、カテーテル1の外部機器と電極40やセンサとが電気的に接続される。また、図示していないが、カテーテル1の近位側にコネクタを有しており、導線20がコネクタに接続されている構成であって、コネクタをカテーテル1の外部機器に接続することによって外部機器と電極40やセンサとを接続してもよい。
【0025】
導線20は、コアと被覆を有していることが好ましい。導線20のコアを構成する材料は、導電性材料であればよいが、例えば、鉄、銅、銀、ステンレス、タングステン、ニッケル、チタン、またはこれらの合金等の金属材料が挙げられる。中でも、導線20のコアを構成する材料はステンレスであることが好ましい。ステンレスは真直性と剛性があるため、導線20のコアを構成する材料がステンレスであることにより、導線20をシャフト10の内腔に挿通することが容易となり、また、導線20の断線が生じにくくなる。
【0026】
導線20の被覆は、絶縁性材料であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。中でも、導線20の被覆を構成する材料は、フッ素系樹脂であることが好ましく、PFAであることがより好ましい。導線20の被覆がフッ素系樹脂であることにより、導線20の絶縁性を高めることができ、また、シャフト10の内腔において、他の導線20等の他物との摺動性を向上し、導線20の被覆と他物が接触することによる被覆の破損を防ぐことができる。
【0027】
導線20は、電極40やセンサ等の他物と接続される両端部以外の部分に被覆を有していることが好ましい。具体的には、例えば、導線20の一方端部の被覆を一部除去し、この部分を電極40やセンサに溶接すること等によって、導線20の一方端部を電極40やセンサに接続し、カテーテル1の外部機器またはコネクタに接続する導線20の他方端部の被覆を一部除去することにより、導線20が両端部以外の部分に被覆を有する構成とすることができる。
【0028】
電極40またはセンサの形状は、長方形あるいは正方形等の平板状であってもよく、リング形状であってもよい。電極40またはセンサが平板状である場合、平板の裏面(内側面)および表面(外側面)の少なくとも一方が、シャフト10の表面の曲面に沿いやすいように、曲面であってもよい。中でも、電極40またはセンサは、リング形状であることが好ましい。電極40またはセンサがリング形状であることにより、シャフト10の周上における電極40またはセンサの面積を大きくすることができ、心臓の内壁等の目的部位へ電極40またはセンサを接触させることが容易となる。
【0029】
電極40またはセンサを構成する材料は、例えば、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、またはこれらの合金等の金属材料が挙げられる。中でも、電極40またはセンサを構成する材料は、白金またはその合金であることが好ましい。電極40またはセンサを構成する材料が白金またはその合金であることにより、電極40またはセンサのX線に対する造影性を高めることができ、カテーテル1の使用時にX線を用いることによって電極40またはセンサの位置を確認することができる。
【0030】
電極40またはセンサに導線20を接続する方法としては、例えば、溶接、はんだ等のろう付け、かしめ等による接続等を用いることができる。中でも、電極40またはセンサへの導線20の接続方法は、溶接であることが好ましい。導線20が溶接によって電極40またはセンサへ接続されていることにより、導線20と電極40またはセンサとの接続を容易に強固なものとすることができる。また、図示していないが、導線20と電極40またはセンサとの間に導電性を有する部材を介した状態にて、導線20と電極40またはセンサとが接続されていてもよい。
【0031】
導線20と電極40またはセンサとの接続部は、大気中等に含まれる水分等による酸化劣化が生じないようにするため、樹脂等によりコーティングを行うことが好ましい。このコーティングに用いる樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0032】
電極40またはセンサがリング形状である場合、リングの内側に導線20が接続されていることが好ましい。電極40またはセンサが形状であり、リングの内側に導線20が接続されている構成であることにより、電極40またはセンサと導線20との接続部分が外方に露出せず、接続部分が他物に接触する等して導線20が電極40またはセンサから外れてしまうことを防ぐことができる。
【0033】
図3に示すように、シャフト10の遠位部の内腔に、
図1および
図2に示す導線挿通具30の遠位部を配置する工程を行う。この工程を、導線挿通具配置工程と称することがある。
【0034】
シャフト10の遠位部とは、シャフト10の長手軸方向の長さのうち遠位側の半分を指し、シャフト10の近位部とは、シャフト10の長手軸方向の長さのうち近位側の半分を指す。導線挿通具30の遠位部とは、導線挿通具30の長手軸方向の長さのうち遠位側の半分を指し、導線挿通具30の近位部とは、導線挿通具30の長手軸方向の長さのうち近位側の半分を指す。
【0035】
導線挿通具配置工程において、シャフト10の遠位部の内腔の少なくとも一部に、導線挿通具30の遠位部の少なくとも一部を配置する。導線挿通具配置工程において、導線挿通具30の遠位端30dをシャフト10の近位端に挿入して導線挿通具30をシャフト10の内腔に配置してもよいが、導線挿通具30の近位端をシャフト10の遠位端10dに挿入して導線挿通具30をシャフト10の内腔に配置することが好ましい。導線挿通具配置工程において、導線挿通具30の近位端をシャフト10の遠位端10dに挿入することにより、導線挿通具30の遠位部をシャフト10の遠位部の内腔に迅速かつ円滑に配置しやすくなり、導線挿通具配置工程が行いやすくなる。
【0036】
図4に示すように、シャフト10の外部からシャフト10の内腔へ向かう方向に導線20を側孔11へ挿入する工程を行う。つまり、導線20の端部21を側孔11内に挿入する。この工程を、導線挿入工程と称することがある。
【0037】
図4に示すように、導線20の一方端に電極40やセンサが接続されている場合、導線挿入工程において、電極40やセンサが接続されていない側の端部である導線20の他方端を導線20側孔11へ挿入する。
【0038】
導線挿入工程は、導線挿通具配置工程の後に行うことが好ましい。導線挿通具配置工程の後に導線挿入工程を行うことにより、導線挿通具30をシャフト10の内腔に配置する際に、導線挿通具30が導線20に接触することがなく、導線20が破損することを防ぎ、カテーテル1の製造効率を高めることが可能となる。
【0039】
導線挿入工程を行う前に、側孔11へ挿入される導線20の端部を先鋭加工してもよい。導線20の端部の先鋭加工とは、導線20の端部を尖らせる加工である。導線20の端部を先鋭加工することにより、導線20の端部が尖り、側孔11に導線20の端部を挿入しやすくなる。
【0040】
導線20の端部の先鋭加工の具体例としては、導線20の端部を斜めに切断すること、導線20の端部を研磨して尖らせること、導線20の端部を加圧して扁平にすること、導線20が複数の金属線材によって構成されている場合、導線20を構成する複数の金属線材の端部をねじってより合わせること等が挙げられる。中でも、導線20の端部の先鋭加工は、導線20の端部を斜めに切断することによって行うことが好ましい。導線20の端部を斜めに切断することによって先鋭加工を行うことにより、導線20の端部を容易に尖らせることができる。
【0041】
図5に示すように、導線20の端部21を側孔11よりも遠位側かつシャフト10の遠位端10dよりも近位側に配置する工程を行う。この工程を、導線配置工程と称することがある。導線配置工程は、導線挿入工程の後に行う。
【0042】
導線配置工程において、導線20の端部21を側孔11よりも遠位側かつシャフト10の遠位端10dよりも近位側に配置する。つまり、導線配置工程において、導線20の端部21は、シャフト10の遠位端から露出させない。導線20の端部21を側孔11よりも遠位側に配置するには、例えば、導線挿入工程において、導線20をシャフト10の内腔の方向かつシャフト10の遠位側に向かって、シャフト10の外部からシャフト10の側孔11へ挿入し、その後、導線配置工程を行う等の方法が挙げられる。
【0043】
導線配置工程において、側孔11よりも遠位側かつシャフト10の遠位端10dよりも近位側に導線20の端部21が配置され、導線20の遠位端部が、シャフト10の遠位部の内腔に配置されている導線挿通具30の遠位部に位置することとなる。そのため、導線20が導線挿通具30に引っ掛かりやすくなる。導線挿通具30の詳細については後述する。
【0044】
導線配置工程において、導線20の近位端は、シャフト10の外部に位置していることが好ましい。つまり、導線配置工程において、導線20の近位端は、シャフト10の側孔11を通過してシャフト10の内腔に配置されないことが好ましい。導線20の近位端がシャフト10の外部に位置していることにより、シャフト10の内腔にある導線20の長さが必要以上に長くなりにくく、シャフト10の内腔において導線20が絡まることを防ぎ、シャフト10の内腔に導線20を円滑に挿通しやすくなる。
【0045】
図6に示すように、導線挿通具30をシャフト10の近位端10pから抜去し、導線20の端部をシャフト10の近位端10pから露出させる工程を行う。この工程を、導線露出工程と称することがある。導線露出工程は、導線配置工程の後に行う。
【0046】
導線露出工程において、導線挿通具30の近位端をシャフト10の近位端10pから露出させて導線挿通具30の全体をシャフト10の内腔から抜去する。導線配置工程において、導線20が導線挿通具30に引っ掛かっていれば、導線挿通具30をシャフト10の近位端10pから抜去すると、導線挿通具30に引っ掛かっている導線20の遠位端部もシャフト10の近位端10pから露出することとなる。その結果、シャフト10の側孔11へ挿入した導線20を、シャフト10の側孔11からシャフト10の近位端10pにわたって、シャフト10の内腔に挿通することができる。また、導線挿通具30を用いて、導線挿通具配置工程、導線挿入工程、導線配置工程、および導線露出工程を行うことにより、シャフト10への導線20の挿通を円滑かつ容易に行いやすくなる。
【0047】
一の導線20および他の導線20を含む導線20を複数有し、シャフト10が一の側孔11および他の側孔11を含む複数の側孔11を有するカテーテル1を製造する場合、導線挿通具配置工程を行い、一の導線20および一の側孔11について導線挿入工程、導線配置工程、および導線露出工程を行った後に、再度、導線挿通具配置工程を行い、他の導線20および他の側孔11について導線挿入工程、導線配置工程、および導線露出工程を行うことが好ましい。一の導線20および一の側孔11について導線挿通具配置工程、導線挿入工程、導線配置工程、および導線露出工程を行った後に、他の導線20および他の側孔11について再度、導線挿通具配置工程、導線挿入工程、導線配置工程、および導線露出工程を行うことにより、シャフト10の内腔において複数の導線20が絡まりにくくなり、カテーテル1の製造工程を円滑に行うことが可能となる。
【0048】
図1および
図2に示すように、導線挿通具30は、3本以上の線材31と、線材31の遠位端31dにおいて複数の線材31が互いに固定されている遠位側固定部32と、線材31の近位端31pにおいて複数の線材31が互いに固定されている近位側固定部33と、を有しており、導線挿通具30は、一の線材31Aと、一の線材31Aとは異なる他の線材31Bと、によって形成される閉ループ34を複数有し、複数の閉ループ34は、同一平面上にないものである。複数の閉ループ34が同一平面上にないことは、それぞれの閉ループ34が形成する面が同じ平面上に存在しないことを意味する。
【0049】
閉ループ34は、一の線材31Aと、一の線材31Aとは異なる他の線材31Bと、によって、一の線材31Aと他の線材31Bとの間に形成される、閉じたループ状の領域である。他の線材31Bは、一の線材31Aと隣接する線材31である。なお、
図1および
図2において、閉ループ34は破線にて模式的に図示している。
【0050】
導線挿通具30が有している線材31の数は、3本以上である。導線挿通具30が3本以上の線材31を有していることにより、2つの線材31によって形成される閉ループ34が複数となる。導線挿通具30が複数の閉ループ34を有しており、かつ、複数の閉ループ34が同一平面上にないことにより、複数の閉ループ34が存在している導線挿通具30の遠位部が立体的な形状となり、導線挿入工程や導線配置工程において、導線20が閉ループ34内に入り込みやすくなって導線20が導線挿通具30に引っ掛かりやすく、シャフト10の内腔に導線20を挿通しやすくすることができる。
【0051】
導線挿通具30が有している線材31の数は、3本以上であればよいが、4本以上であることが好ましく、5本以上であることがより好ましく、6本以上であることがさらに好ましい。導線挿通具30が有している線材31の数の下限値を上記の範囲に設定することにより、導線挿通具30が有する閉ループ34の数が増え、閉ループ34内に導線20が入り込みやすくなる。また、導線挿通具30が有している線材31の数は、15本以下であることが好ましく、10本以下であることがより好ましく、7本以下であることがさらに好ましい。導線挿通具30が有している線材31の数の上限値を上記の範囲に設定することにより、導線挿通具30の外径を小さくすることができ、シャフト10の内腔に導線挿通具30を挿通しやすくなる。
【0052】
線材31を構成する材料としては、金属線や繊維等が挙げられる。金属線を構成する素材は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、炭素鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられる。金属線は、単線であってもよいし、撚線であってもよい。繊維を構成する素材は、例えば、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。繊維は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。
【0053】
中でも、線材31を構成する材料は、金属線であることが好ましく、ステンレス鋼で構成される金属線であることがより好ましい。線材31を構成する材料がステンレス鋼の金属線であることにより、弾性に優れた線材31となり、シャフト10の内腔に挿通しやすく、耐久性の高い導線挿通具30とすることができる。
【0054】
3本以上の線材31は、線材31の遠位端31dにて遠位側固定部32によって固定されており、線材31の近位端31pにて近位側固定部33によって固定されている。遠位側固定部32と近位側固定部33との間に配置されている線材31は、たわんだ状態であることが好ましい。つまり、遠位側固定部32と近位側固定部33との間に配置されている線材31の延在方向に沿った長さは、遠位側固定部32と近位側固定部33との最短距離よりも長いことが好ましい。遠位側固定部32と近位側固定部33との間に配置されている線材31がたわんだ状態であることにより、一の線材31Aおよび他の線材31Bによって形成される閉ループ34の大きさが大きくなりやすく、導線20が閉ループ34内に入り込みやすくすることができる。
【0055】
導線挿通具30の遠位端30dから近位端までの長さは、シャフト10の遠位端10dから近位端10pまでの長さよりも長いことが好ましい。長手軸方向における導線挿通具30の長さがシャフト10の長さよりも長いことにより、導線挿通具配置工程において、シャフト10の遠位部の内腔に導線挿通具30の遠位部を配置した際に、導線挿通具30の近位端がシャフト10の近位端10pからシャフト10の外部へ露出しやすくなる。その結果、導線挿通具配置工程の後に行う導線露出工程において、導線挿通具30をシャフト10の近位端10pから抜去しやすくなり、カテーテル1の製造を円滑に行うことができる。
【0056】
導線挿通具30は、閉ループ34の少なくとも一部が導線挿通具30の遠位部にあることが好ましく、閉ループ34の全体が導線挿通具30の遠位部にあることがより好ましい。つまり、導線挿通具配置工程において、導線挿通具30が有する閉ループ34の少なくとも一部をシャフト10の遠位部の内腔に配置することが好ましい。閉ループ34の少なくとも一部をシャフト10の遠位部の内腔に配置することにより、導線挿入工程や導線配置工程において、導線20が閉ループ34内に入り込みやすく、シャフト10の内腔に導線20を挿通しやすくなる。
【0057】
遠位側固定部32および近位側固定部33において、複数の線材31は互いに直接固定されていてもよく、他の部品を介して固定されていてもよい。複数の線材31を互いに直接固定する方法としては、溶接、はんだ等のろう付け、接着剤による接着、複数の線材31をねじり合わせて固定すること、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。他の部品を介して複数の線材31を固定する方法としては、円筒状や多角筒状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状の部材を用いた溶接、接着、係合、かしめ金具を用いてかしめる方法、熱収縮チューブを用いた固定、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0058】
図1に示すように、導線挿通具30は、遠位側固定部32に遠位側筒部材35と、近位側固定部33に近位側筒部材36と、をそれぞれ有しており、遠位側筒部材35の内腔に複数の線材31が配置されており、近位側筒部材36の内腔に複数の線材31が配置されていることが好ましい。導線挿通具30が、遠位側固定部32において遠位側筒部材35の内腔に複数の線材31が配置されており、近位側固定部33において近位側筒部材36の内腔に複数の線材31が配置されている構成であることにより、遠位側固定部32および近位側固定部33において、複数の線材31を強固に固定しやすくなる。
【0059】
導線挿通具30は、遠位側筒部材35の内腔に線材31の遠位端31dが配置され、近位側筒部材36の内腔に線材31の近位端31pが配置されていることが好ましい。遠位側筒部材35の内腔に線材31の遠位端31dが配置されており、近位側筒部材36の内腔に線材31の近位端31pが配置されていることにより、線材31の端部が露出していない構成となる。そのため、導線挿通具30をシャフト10の内腔に挿通する際に、線材31の端部によってシャフト10を傷付けにくくすることができる。
【0060】
遠位側筒部材35および近位側筒部材36を構成する材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、炭素鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属や、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0061】
中でも、遠位側筒部材35および近位側筒部材36を構成する材料は、金属であることが好ましく、ステンレス鋼であることがより好ましい。遠位側筒部材35および近位側筒部材36を構成する材料が金属であることにより、遠位側筒部材35および近位側筒部材36の強度を高めることができる。
【0062】
遠位側固定部32において、遠位側筒部材35の内腔に複数の線材31が配置され、溶接によって複数の線材31と遠位側筒部材35とが固定されており、近位側固定部33において、近位側筒部材36の内腔に複数の線材31が配置され、溶接によって複数の線材31と近位側筒部材36とが固定されていることが好ましい。遠位側固定部32にて複数の線材31と遠位側筒部材35とが溶接によって固定され、近位側固定部33にて複数の線材31と近位側筒部材36とが溶接によって固定されていることにより、複数の線材31を強固に固定しやすく、遠位側固定部32や近位側固定部33において線材31が外れにくくなる。
【0063】
図1および
図2に示すように、導線挿通具30は、第1の線材311と、第1の線材311に隣接する第2の線材312と、を有しており、線材31の長手軸方向での長さの中点P1における線材31の長手軸に垂直な断面において、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第1の線材311の外形の中心P3とを結ぶ直線L1と、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第2の線材312の外形の中心P4とを結ぶ直線L2と、がなす角度θ1は、30度以上120度以下であることが好ましい。複数の線材31の内接円C1は、導線挿通具30が有している3本以上の線材31のうち、線材31の長手軸に垂直な断面における少なくとも2つの線材31に内接する円を指す。直線L1と直線L2とがなす角度θ1が30度以上120度以下であることにより、第1の線材311と第2の線材312とによって形成される閉ループ34の大きさを十分に確保しやすくなる。そのため、シャフト10の内腔に導線挿通具30を配置した状態において、閉ループ34内に導線20が入り込みやすくなり、シャフト10の内腔に導線20を挿通することが行いやすくなる。
【0064】
線材31の長手軸方向での長さの中点P1における線材31の長手軸に垂直な断面において、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第1の線材311の外形の中心P3とを結ぶ直線L1と、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第2の線材312の外形の中心P4とを結ぶ直線L2と、がなす角度θ1は、35度以上であることが好ましく、40度以上であることがより好ましく、45度以上であることがさらに好ましい。直線L1と直線L2とがなす角度θ1の下限値を上記の範囲に設定することにより、第1の線材311および第2の線材312によって形成される閉ループ34の大きさが大きくなりやすく、閉ループ34内に導線20が入りやすくなる。また、線材31の長手軸方向での長さの中点P1における線材31の長手軸に垂直な断面において、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第1の線材311の外形の中心P3とを結ぶ直線L1と、複数の線材31の内接円C1の中心P2と第2の線材312の外形の中心P4とを結ぶ直線L2と、がなす角度θ1は、110度以下であることが好ましく、100度以下であることがより好ましく、95度以下であることがさらに好ましい。直線L1と直線L2とがなす角度θ1の上限値を上記の範囲に設定することにより、導線挿通具30がある程度の大きさを有する閉ループ34を複数有することとなり、シャフト10の内腔において導線20が閉ループ34内に入りやすくすることができる。
【0065】
長手軸方向に垂直な断面における線材31の形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、線材31の断面形状は、円形であることが好ましい。線材31の断面形状が円形であることにより、線材31の外表面が滑らかなものとなる。そのため、シャフト10の内腔に導線挿通具30を配置する際に、導線挿通具30の摺動性を高め、また、線材31が接触することによってシャフト10の内表面を傷付けにくくすることができる。
【0066】
長手軸方向における線材31の形状は、直線状の形状、円弧形状、波形形状、ジグザグ状の形状、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、線材31は、波形形状であることが好ましい。線材31が波形形状であることにより、線材31に導線20が引っ掛かりやすくなる。そのため、一の線材31Aと他の線材31Bによって形成される閉ループ34内に入り込んだ導線20が線材31に引っ掛かりやすく、閉ループ34から導線20が脱落しにくくすることができ、シャフト10の内腔に導線20を挿通する工程を行いやすくすることができる。
【0067】
図1に示すように、導線挿通具30は、線材31の近位側に線材31とは異なる長尺部材50を有していてもよい。換言すると、導線挿通具30は長尺部材50をさらに有しており、長尺部材50の遠位部に線材31が配置されていてもよい。導線挿通具30が長尺部材50をさらに有していることにより、導線挿通具30の近位部の剛性が高まり、導線挿通具30をシャフト10の内腔に挿通しやすくなる。
【0068】
長尺部材50を構成する材料としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、炭素鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属や、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0069】
中でも、長尺部材50を構成する材料は、金属であることが好ましく、ステンレス鋼であることがより好ましい。長尺部材50を構成する材料が金属であることにより、長尺部材50が強度と弾性を有するものとなり、シャフト10の内腔へ導線挿通具30を円滑に挿通しやすくすることができる。
【0070】
長手軸方向に垂直な断面における長尺部材50の形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、長尺部材50の断面形状は、円形であることが好ましい。長尺部材50の断面形状が円形であることにより、長尺部材50の外表面が滑らかとなり、摺動性を高めることができる。その結果、シャフト10の内腔に導線挿通具30を配置する際に、導線挿通具30を円滑に挿通しやすくなる。
【0071】
長手軸方向における長尺部材50の外形の大きさは、線材31の外形の大きさよりも大きいことが好ましい。長尺部材50の外形の大きさは、長尺部材50の断面形状の外接円の直径を指す。線材31の外形の大きさは、線材31の断面形状の外接円の直径を指す。長尺部材50の外形の大きさが線材31の外形の大きさよりも大きいことにより、導線挿通具30の近位部の剛性が高まりやすく、導線挿通具30のシャフト10の内腔への挿通性を向上させることができる。
【0072】
長尺部材50と線材31との接続方法は、溶接、はんだ等のろう付け、接着剤による接着、円筒状や多角筒状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状の部材を用いた係合、かしめ加工、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、「接続」とは、2つの要素が直接接続されている態様も、2つの要素が一以上の他の要素を介して間接的に接続されている態様も含むものとする。
【0073】
中でも、導線挿通具30が近位側固定部33に近位側筒部材36を有しており、長尺部材50の遠位端50dを近位側筒部材36の内腔に配置して、長尺部材50と線材31とが接続されていることが好ましい。長尺部材50と線材31とが近位側筒部材36を介して接続されていることにより、長尺部材50と線材31との接続強度を容易に高めることが可能となる。
【0074】
図3~
図6に示すように、シャフト10は、シャフト10の長手軸方向において、最も遠位側にある第1側孔111と、最も近位側にある第2側孔112と、を有しており、導線挿通具30の長手軸方向における線材31の遠位端31dから線材31の近位端31pまでの長さD1は、シャフト10の第1側孔111から第2側孔112までの長さD2よりも長いことが好ましい。なお、シャフト10の第1側孔111から第2側孔112までの長さD2は、シャフト10の長手軸方向における、第1側孔111の遠位端から第2側孔112の近位端までの最短距離を指す。
【0075】
線材31の遠位端31dから線材31の近位端31pまでの長さD1が第1側孔111から第2側孔112までの長さD2よりも長いことにより、導線挿通具配置工程において、シャフト10の遠位部の内腔に導線挿通具30の遠位部を配置した際に、導線挿通具30の閉ループ34が第1側孔111の位置および第2側孔112の位置の両方に存在しやすくなる。そのため、導線挿入工程において、側孔11に挿入した導線20の端部21が導線挿通具30の閉ループ34内に入りやすくなって、導線20が導線挿通具30に引っ掛かりやすく、導線挿通具30をシャフト10から抜去することによって導線20をシャフト10から露出させることが円滑に行いやすくなる。つまり、複数の導線20を有するカテーテル1の製造効率を高めることが可能となる。
【0076】
導線挿通具30の長手軸方向における線材31の遠位端31dから線材31の近位端31pまでの長さD1は、シャフト10の第1側孔111から第2側孔112までの長さD2の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。線材31の長さD1と第1側孔111から第2側孔112までの長さD2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第1側孔111および第2側孔112の位置に導線挿通具30の閉ループ34が配置されやすく、側孔11に挿入した導線20の端部21が閉ループ34内に入り込みやすくなる。また、導線挿通具30の長手軸方向における線材31の遠位端31dから線材31の近位端31pまでの長さD1は、シャフト10の第1側孔111から第2側孔112までの長さD2の3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。線材31の長さD1と第1側孔111から第2側孔112までの長さD2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、線材31の長さが必要以上に長くなりにくくなる。その結果、導線挿通具30の遠位部の剛性が高まり、シャフト10への挿通性のよい導線挿通具30とすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1:カテーテル
10:シャフト
10d:シャフトの遠位端
10p:シャフトの近位端
11:側孔
111:第1側孔
112:第2側孔
20:導線
21:導線の端部
30:導線挿通具
30d:導線挿通具の遠位端
31:線材
31d:線材の遠位端
31p:線材の近位端
31A:一の線材
31B:他の線材
311:第1の線材
312:第2の線材
32:遠位側固定部
33:近位側固定部
34:閉ループ
35:遠位側筒部材
36:近位側筒部材
40:電極
50:長尺部材
50d:長尺部材の遠位端
C1:線材の内接円
P1:線材の長手軸方向での長さの中点
P2:線材の内接円の中心
P3:第1の線材の外形の中心
P4:第2の線材の外形の中心
L1:中心P2と中心P3とを結ぶ直線
L2:中心P2と中心P4とを結ぶ直線
θ1:直線L1と直線L2とがなす角度
D1:線材の遠位端から線材の近位端までの長さ
D2:第1側孔から第2側孔までの長さ