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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078130
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/12 20060101AFI20240603BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20240603BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240603BHJP
   H01M 10/613 20140101ALN20240603BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20240603BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALN20240603BHJP
【FI】
F28F3/12 C
F28F3/04 A
H05K7/20 M
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190512
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金森 真弥
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴昭
【テーマコード(参考)】
5E322
5H031
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AB02
5E322DA04
5E322EA10
5E322FA04
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】熱交換媒体の流速を高めつつ、部品点数を低減できる熱交換器を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、第1板と、第1板に重ね合わされると共に、第1板から離れる方向に凹んだ少なくとも1つの凹条部を有する第2板と、第1板と第2板との間に設けられた媒体流路と、を備える熱交換器である。媒体流路は、少なくとも1つの凹条部によって画定されると共に、曲がり部を有する複数の主流路と、複数の主流路のうち、隣接する2つの主流路の曲がり部同士を連結する少なくとも1つのバイパス流路と、を有する。少なくとも1つのバイパス流路は、一方の曲がり部の曲げの外側領域と、他方の曲がり部の曲げの内側領域とに接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板と、
前記第1板に重ね合わされると共に、前記第1板から離れる方向に凹んだ少なくとも1つの凹条部を有する第2板と、
前記第1板と前記第2板との間に設けられた媒体流路と、
を備え、
前記媒体流路は、
前記少なくとも1つの凹条部によって画定されると共に、曲がり部を有する複数の主流路と、
前記複数の主流路のうち、隣接する2つの主流路の前記曲がり部同士を連結する少なくとも1つのバイパス流路と、
を有し、
前記少なくとも1つのバイパス流路は、一方の曲がり部の曲げの外側領域と、他方の曲がり部の曲げの内側領域とに接続される、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記少なくとも1つのバイパス流路における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積は、前記複数の主流路における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積よりも小さい、熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器であって、
前記媒体流路は、前記少なくとも1つのバイパス流路としての複数のバイパス流路を有し、
前記複数のバイパス流路は、1つの前記曲がり部の前記外側領域及び前記内側領域のいずれか一方のみに接続される、熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器であって、
前記第2板は、
前記少なくとも1つの凹条部としての複数の凹条部と、
前記第1板から離れる方向に凹むと共に、前記複数の凹条部のうち、隣接する2つの凹条部を連結する補助凹部と、
を有する、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換媒体を用いた熱交換器において、板材に取り付けられたフィンで複数の主流路を構成すると共に、フィンの開口によってバイパス流路を構成した構成が公知である(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-205802号公報
【特許文献2】特開2019-102505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の熱交換器では、バイパス流路によって熱交換媒体の流速が高められる。しかしながら、熱交換器の構成部品として、少なくとも複数のフィンと複数のフィンを挟む2つの板材とが必要となり、部品点数の増加が避けられない。
【0005】
本開示の一局面は、熱交換媒体の流速を高めつつ、部品点数を低減できる熱交換器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1板と、第1板に重ね合わされると共に、第1板から離れる方向に凹んだ少なくとも1つの凹条部を有する第2板と、第1板と第2板との間に設けられた媒体流路と、を備える熱交換器である。媒体流路は、少なくとも1つの凹条部によって画定されると共に、曲がり部を有する複数の主流路と、複数の主流路のうち、隣接する2つの主流路の曲がり部同士を連結する少なくとも1つのバイパス流路と、を有する。少なくとも1つのバイパス流路は、一方の曲がり部の曲げの外側領域と、他方の曲がり部の曲げの内側領域とに接続される。
【0007】
このような構成によれば、第1板と第2板との接合によって、主流路及びバイパス流路を有する媒体流路を形成することができる。また、バイパス流路が隣接する2つの曲がり部それぞれの外側領域と内側領域とに接続されることで、バイパス流路における流速を高めることができる。その結果、熱交換媒体の流速を高めて熱交換器の効率を向上させつつ、熱交換器の部品点数を低減できる。
【0008】
本開示の一態様では、少なくとも1つのバイパス流路における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積は、複数の主流路における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積よりも小さくてもよい。このような構成によれば、バイパス流路における流速の向上効果が促進される。
【0009】
本開示の一態様では、媒体流路は、少なくとも1つのバイパス流路としての複数のバイパス流路を有してもよい。複数のバイパス流路は、1つの曲がり部の外側領域及び内側領域のいずれか一方のみに接続されてもよい。このような構成によれば、複数のバイパス流路が1つの曲がり部の両側に接続されることによる流速の低下を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、第2板は、少なくとも1つの凹条部としての複数の凹条部と、第1板から離れる方向に凹むと共に、複数の凹条部のうち、隣接する2つの凹条部を連結する補助凹部と、を有してもよい。このような構成によれば、第1板に凹凸を設ける必要がなくなるため、第1板の発熱体との接触面積を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、実施形態における熱交換器の模式的な斜視図であり、図1Bは、図1AのIB-IB線での模式的な断面図である。
図2図2は、図1Aの熱交換器における第2板の模式的な平面図である。
図3図3Aは、図2のIIIA-IIIA線での模式的な断面図であり、図3Bは、図2のIIIB-IIIB線での模式的な断面図である。
図4図4A図4B及び図4Cは、図2の第2板における溶接線を示す模式的な平面図である。
図5図5Aは、図2とは異なる実施形態における第2板の模式的な平面図であり、図5Bは、図5AのVB-VB線での模式的な断面図である。
図6図6A図6B及び図6Cは、図3Bとは異なる実施形態における第2板の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び図1Bに示す熱交換器1は、冷却水等の熱交換媒体を用いて発熱体100を冷却する。熱交換器1は、例えば、自動車の電池モジュールの冷却に用いられる。熱交換器1は、第1板2と、第2板3と、媒体流路4とを備える。
【0013】
<第1板>
第1板2は、発熱体100に接触し、発熱体100と熱交換を行う熱交換面を有する。第1板2は、例えばステンレス、銅、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属で構成されている。
【0014】
第1板2は、表面に凹凸を有しない平板形状である。熱交換面は、第1板2の2つの板面のうち、第2板3とは反対側の板面(つまり媒体流路4とは反対側の板面)で構成されており、平坦な面である。第1板2には、熱交換媒体の供給口5と、熱交換媒体の排出口6とが接続されている。なお、第1板2は、熱交換面のうち、発熱体100と接触しない領域において凹凸を有してもよい。
【0015】
<第2板>
第2板3は、厚み方向において第1板2に重ね合わされている。第2板3は、第1板2と共に、媒体流路4を画定している。第2板3は、第1板2と同質の金属(例えばステンレス)で構成されている。
【0016】
図2に示すように、第2板3は、複数の凹条部31と、複数の補助凹部32とを有する。凹条部31は、第2板3を構成する板材を厚み方向に突出するように変形させた部位であり、第1板2から離れる方向に凹んでいる。
【0017】
複数の凹条部31は、それぞれ媒体流路4の主流路41を構成している。凹条部31の側面及び底面は、それぞれ主流路41の側面及び底面を構成する。凹条部31は、平面視で(つまり第1板2の厚み方向と平行視で)、S字が連続した波状に湾曲している。
【0018】
複数の補助凹部32は、それぞれ媒体流路4のバイパス流路42を構成している。補助凹部32は、第1板2から離れる方向に凹むと共に、複数の凹条部31のうち隣接する2つの凹条部31を連結している。
【0019】
図3A及び図3Bに示すように、補助凹部32の深さ(つまり底面の第1板2からの距離)は、凹条部31の深さよりも小さい。補助凹部32は、2つの凹条部31の間の領域を厚み方向にオフセット変形させた部位である。
【0020】
第2板3の板厚は限定されないが、プレス加工が可能な板厚が好ましい。プレス加工により、容易に複数の凹条部31と複数の補助凹部32とを有する第2板3を成形することができる。
【0021】
<媒体流路>
図1Bに示すように、媒体流路4は、第1板2と第2板3との間に設けられている。具体的には、媒体流路4は、第1板2と第2板3との間に存在する空間で構成されている。
【0022】
図2に示すように、媒体流路4は、複数の主流路41と、複数のバイパス流路42と、入口部43と、出口部44とを有する。
【0023】
複数の主流路41は、それぞれ、入口部43と出口部44とに連結されている。換言すれば、媒体流路4は、入口部43で複数の主流路41に分岐し、出口部44で複数の主流路41が合流する。入口部43には、供給口5が接続され、出口部44には、排出口6が接続されている。
【0024】
各主流路41は、複数の円弧状の曲がり部411,412を有する。各主流路41において、平面視で第2板3の図2における右側(つまり、入口部43から出口部44に向かう方向と交差する方向)に突出した第1曲がり部411と、左側(つまり、第1曲がり部411とは反対側)に突出した第2曲がり部412とが熱交換媒体の流れ方向に沿って交互に配置されている。
【0025】
図3Aに示すように、主流路41は、第2板3の複数の凹条部31と、第1板2の板面とによって画定されている。複数の主流路41の熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積は、互いに等しい。
【0026】
図2に示すように、複数のバイパス流路42は、それぞれ、複数の主流路41のうち、隣接する2つの主流路41を連結している。具体的には、バイパス流路42は、隣接する2つの主流路41の第1曲がり部411同士、又は第2曲がり部412同士を連結している。
【0027】
また、バイパス流路42は、一方の第1曲がり部411又は第2曲がり部412の曲げの外側領域と、他方の第1曲がり部411又は第2曲がり部412の曲げの内側領域とに接続されている。バイパス流路42は、1つの曲がり部411,412に対し、最も近接する他の主流路41の曲がり部411,412を最短距離で連結している。
【0028】
ここで、「曲げの外側領域」とは、曲がり部411,412の平面視における2つの外縁のうち、熱交換媒体の流れに沿った長さが大きい外縁を含む領域であり、「曲げの内側領域」とは、曲げの外側領域とは反対側の外縁を含む領域である。
【0029】
さらに、各バイパス流路42は、1つの第1曲がり部411及び第2曲がり部412の外側領域及び内側領域のいずれか一方のみに接続される。つまり、外側領域にバイパス流路42が接続された曲がり部411,412の内側領域には、他のバイパス流路42は接続されていない。同様に、内側領域にバイパス流路42が接続された曲がり部411,412の外側領域には、他のバイパス流路42は接続されていない。
【0030】
換言すれば、平面視で左右2つの主流路41に挟まれた主流路41(例えば図2の左から2番目の主流路41)では、左隣の主流路41と連結されたバイパス流路42と、右隣の主流路41と連結されたバイパス流路42とが、熱交換媒体の流れ方向において交互に配置されている。
【0031】
図3Bに示すように、バイパス流路42は、第2板3の複数の補助凹部32と、第1板2の板面とによって画定されている。複数のバイパス流路42の熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積は、互いに等しい。また、バイパス流路42における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積は、主流路41における熱交換媒体の流れ方向と直交する断面積よりも小さい。
【0032】
<第1板と第2板との接合>
第1板2と第2板3とは、例えば、レーザ溶接等の溶接によって接合される。図4Aに示すように、溶接線W(つまり、溶接ビード)は、平面視で凹条部31及び補助凹部32の側壁と重なる位置に設けられるとよい。つまり、凹条部31及び補助凹部32の外縁に沿って溶接が行われるとよい。これにより、流路の封止性能が向上する。
【0033】
さらに、図4Bに示すように、溶接の始点と終点とが、溶接線Wで囲まれた領域の内側に位置するとよい。これにより、溶接の始点及び終点における割れによる封止性能の低下を抑制できる。なお、図4Cに示すように、溶接線Wは、必ずしも閉じていなくてもよく、例えば直線状であってもよい。
【0034】
さらに、第1板2と第2板3とは、ロウなどの接着剤によって接合されてもよい。接着剤を用いる場合は、第2板3の凹条部31及び補助凹部32以外の領域(つまり平坦領域)の全体を接合面とすることで、熱交換器1の剛性が高められる。
【0035】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1板2と第2板3との接合によって、主流路41及びバイパス流路42を有する媒体流路4を形成することができる。また、バイパス流路42が隣接する2つの曲がり部411,412それぞれの外側領域と内側領域とに接続されることで、バイパス流路42における流速を高めることができる。その結果、熱交換媒体の流速を高めて熱交換器1の効率を向上させつつ、熱交換器1の部品点数を低減できる。
【0036】
(1b)バイパス流路42の断面積が主流路41の断面積よりも小さいことで、バイパス流路42における流速の向上効果が促進される。
【0037】
(1c)バイパス流路42が1つの曲がり部411,412の外側領域及び内側領域のいずれか一方のみに接続されることで、複数のバイパス流路42が1つの曲がり部411,412の両側に接続されることによる流速の低下を抑制できる。
【0038】
(1d)第2板3が2つの凹条部31を連結する補助凹部32を有することで、第1板2に凹凸を設ける必要がなくなるため、第1板2の発熱体100との接触面積を大きくできる。
【0039】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0040】
(2a)上記実施形態の熱交換器において、バイパス流路は、必ずしも1つの曲がり部の外側領域及び内側領域のいずれか一方のみに接続されなくてもよい。例えば、図5A及び5Bに示すように、1つの曲がり部の外側領域及び内側領域の双方にバイパス流路42が接続されてもよい。
【0041】
(2b)上記実施形態の熱交換器において、図6Aに示すように、第2板3の凹条部31及び補助凹部32は、第2板3を構成する板材の切削、又は鋳造によって形成されてもよい。
【0042】
また、第2板は、必ずしも補助凹部を有しなくてもよい。例えば、図6Bに示すように、2つの主流路41及びバイパス流路42が、1つの凹条部31と、1つの凸部21とによって画定されてもよい。
【0043】
凸部21は、凹条部31内において、第1板2から第2板3に向かって第1板2の厚み方向に突出した部位である。凸部21のうち、バイパス流路42を構成する部位は、第2板3から離れている。図6Cに示すように、凸部21のうち、バイパス流路42を構成しない部位は、第2板3に接合されることで、2つの主流路41を隔離している。
【0044】
(2c)上記実施形態の熱交換器において、主流路の曲がり部は、必ずしも円弧状でなくてもよい。曲がり部は、例えば角を有する屈曲形状であってもよい。
【0045】
(2d)上記実施形態の熱交換器は、発熱体を冷却する用途に替えて、被加熱体を加熱する用途にも使用可能である。この場合、熱交換器には、熱交換媒体として被加熱体よりも温度の高い流体が供給される。
【0046】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0047】
1…熱交換器、2…第1板、3…第2板、4…媒体流路、5…供給口、6…排出口、
21…凸部、31…凹条部、32…補助凹部、41…主流路、42…バイパス流路、
43…入口部、44…出口部、100…発熱体、411…第1曲がり部、
412…第2曲がり部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6