(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078143
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】水処理システム、制御装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240603BHJP
【FI】
C02F3/12 A
C02F3/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190530
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 重浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 高士
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028BC18
4D028BC24
4D028BD16
4D028CA10
4D028CB03
4D028CC04
(57)【要約】
【課題】液体に含まれる有機物の除去を行いつつ、液体に含まれる窒素成分の硝化を抑制することを可能とする水処理システム、制御装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】液体を処理する槽と、槽の下部に配置された複数の散気部を介して槽内に酸素を供給する供給装置と、複数の散気部のそれぞれからの酸素の供給を制御する制御装置と、液体の水質を測定する測定装置と、液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する測定装置と、を備え、制御装置は、測定装置によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、測定装置によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、複数の散気部のそれぞれからの酸素の供給を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を処理する槽と、
前記槽の下部に配置された複数の散気部を介して前記槽内に酸素を供給する供給装置と、
前記複数の散気部のそれぞれからの前記酸素の供給を制御する制御装置と、
前記液体の水質を測定する第1測定装置と、
前記液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する第2測定装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1測定装置によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、前記第2測定装置によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部からの前記酸素の供給を制御する、水処理システム。
【請求項2】
前記第1測定装置は、前記液体に含まれる有機物の濃度を前記水質として測定し、
前記制御装置は、前記第1測定装置によって測定された前記濃度が第1閾値以下である場合、前記水質が前記第1条件を満たすと判定する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記第2測定装置は、前記液体に含まれる窒素化合物の濃度を前記硝化状態として測定し、
前記制御装置は、前記第2測定装置によって測定された前記濃度が第2閾値以下である場合、前記硝化状態が前記第2条件を満たすと判定する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記水質が第1条件を満たし、かつ、前記硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部のうちの前記酸素を供給する散気部の数を決定するとともに、前記複数の散気部のうちの前記数に対応する散気部からの酸素の供給量を制御する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記水質が第1条件を満たし、かつ、前記硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部のうちの前記酸素を供給する散気部の数を制御する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記水質が第1条件を満たし、かつ、前記硝化状態が第2条件を満たすように、前記槽内において前記液体を処理する活性汚泥の量を制御する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項7】
液体を処理する槽と、前記槽の下部に配置された複数の散気部を介して前記槽内に酸素を供給する供給装置と、前記液体の水質を測定する第1測定装置と、前記液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する第2測定装置と、を備える水処理システムにおける制御装置であって、
前記第1測定装置によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、前記第2測定装置によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部からの前記酸素の供給を制御する、制御装置。
【請求項8】
液体を処理する槽と、前記槽の下部に配置された複数の散気部を介して前記槽内に酸素を供給する供給装置と、前記液体の水質を測定する第1測定装置と、前記液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する第2測定装置と、を備える水処理システムの水処理方法であって、
前記第1測定装置によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、前記第2測定装置によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部からの前記酸素の供給を制御する、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理システム、制御装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水等の液体(以下、単に液体とも呼ぶ)を処理する処理システム(以下、水処理システムとも呼ぶ)では、液体に含まれる有機物を除去する方法として、例えば、反応槽において繁殖させた微生物(以下、活性汚泥とも呼ぶ)によって有機物の分解を行う活性汚泥方法が用いられる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水処理システムにおいて、液体に含まれる有機物の除去を行いつつ、液体に含まれる窒素成分の硝化を抑制することを可能とする方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における水処理システムは、液体を処理する槽と、前記槽の下部に配置された複数の散気部を介して前記槽内に酸素を供給する供給装置と、前記複数の散気部からの前記酸素の供給を制御する制御装置と、前記液体の水質を測定する測定装置と、前記液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する測定装置と、を備え、前記制御装置は、前記測定装置によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、前記測定装置によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、前記複数の散気部からの前記酸素の供給を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における水処理システムによれば、液体に含まれる有機物の除去を行いつつ、液体に含まれる窒素成分の硝化を抑制することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態における水処理システム1000の構成について説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態における水処理システム1000の構成について説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態における水処理システム1000の構成について説明する図である。
【
図4】
図4は、制御装置100の機能について説明する図である。
【
図5】
図5は、制御装置100のハードウエア構成を説明する図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【
図7】
図7は、第1変形例における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【
図8】
図8は、第2変形例における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる説明は限定的な意味に解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に記載の主題を限定するものではない。また、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することがなく様々な変更や置換や改変をすることができる。また、異なる実施の形態を適宜組み合わせることができる。
【0009】
[第1の実施の形態における水処理システム1000]
初めに、第1の実施の形態における水処理システム1000の構成について説明を行う。
図1から
図3は、第1の実施の形態における水処理システム1000の構成について説明する図である。
【0010】
水処理システム1000は、例えば、活性汚泥法を用いた汚泥処理システムである。具体的に、水処理システム1000は、
図1に示すように、例えば、最初沈殿池10と、反応槽20(以下、単に槽20とも呼ぶ)と、最終沈殿池30と、供給装置40とを有する。
【0011】
最初沈殿池10は、例えば、液体(以下、被処理水とも呼ぶ)に含まれる有機物等の汚濁物(例えば、固形性の有機物)を沈殿分離する。そして、最初沈殿池10は、例えば、分離した汚濁物を初沈汚泥として濃縮機(図示せず)に排出するとともに、汚濁物の分離が行われた後の被処理水を反応槽20に排出する。
【0012】
反応槽20は、例えば、最初沈殿池10から被処理水が排出される槽本体21を有する。また、反応槽20は、例えば、槽本体21内に存在する活性汚泥(好気性微生物)に対して、槽本体21の下部(底部)から少なくとも酸素Aを含む気体(以下、単に酸素Aとも呼ぶ)を供給する1以上の散気部22と1以上の散気部23とを有する。そして、反応槽20では、例えば、生物学的処理によって被処理水を処理する。
【0013】
具体的に、反応槽20では、例えば、槽本体21内に存在する活性汚泥に対して酸素Aを供給する曝気処理が行われる。そして、反応槽20では、例えば、被処理水が反応槽20内を最初沈殿池10側から最終沈殿池30側へ流れる(移動する)間において、被処理水に含まれる有機物(例えば、溶解性の有機物)を活性汚泥が分解(消費)する。以下、反応槽20内を被処理水が流れる方向(最初沈殿池10側から最終沈殿池30側に向かう方向)を単に流れ方向とも呼ぶ。その後、活性汚泥によって有機物の分解が行われた後の被処理水は、例えば、反応槽20から最終沈殿池30に排出される。
【0014】
ここで、反応槽20内の領域には、例えば、酸素Aが十分に供給されない嫌気条件下の領域20a(以下、嫌気領域20aとも呼ぶ)と、酸素Aが十分に供給される好機条件下の領域20b(以下、好気領域20bとも呼ぶ)とが含まれる。
【0015】
具体的に、
図1に示す例において、嫌気領域20aには、例えば、活性汚泥を撹拌するための少量の酸素Aが散気部22から供給される。また、
図1に示す例において、好気領域20bには、例えば、活性汚泥を活性化させるために必要な酸素Aが複数の散気部23(散気部23a、散気部23b、散気部23c、散気部23d、散気部23e及び散気部23f)のそれぞれから供給される。
【0016】
そして、嫌気領域20aでは、例えば、活性汚泥に含まれる嫌気性微生物によって、活性汚泥に含まれるリンが被処理水中に放出される。その後、被処理水中に放出されたリンは、例えば、好気領域20bにおいて活性汚泥に含まれる好気性微生物に取り込まれる。
【0017】
また、好気領域20bでは、例えば、活性汚泥に含まれる好気性微生物であるBOD(Biochemical Oxygen Demand)酸化菌によって、最初沈殿池10から排出された被処理水に含まれる有機物が酸化されて分解される。すなわち、好気領域20bでは、例えば、最初沈殿池10から排出された被処理水に含まれる有機物の除去が行われる。
【0018】
さらに、好気領域20bでは、例えば、活性汚泥中の好気性微生物である硝化菌によって、被処理水中のアンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に硝化され、硝化された亜硝酸態窒素が硝酸態窒素に硝化される。
【0019】
最終沈殿池30は、例えば、反応槽20から排出された被処理水に含まれる活性汚泥を沈殿分離して排出する。そして、最終沈殿池30は、例えば、活性汚泥の一部を余剰汚泥として濃縮機(図示せず)に供給するとともに、余剰汚泥以外の活性汚泥を返送汚泥として反応槽20に返送する。さらに、最終沈殿池30は、例えば、活性汚泥の分離を行った後の被処理水(上澄み液)を後段の滅菌処理装置(図示せず)に排出する。その後、滅菌処理装置は、例えば、最終沈殿池30から排出された被処理水を滅菌し、減菌した処理水を河川等に放流する。
【0020】
供給装置40は、例えば、送風ブロワであり、反応槽20に対して酸素Aを供給する。具体的に、供給装置40は、例えば、反応槽20に設けられた複数の散気部23を介して反応槽20内に酸素Aを供給する。
【0021】
なお、
図1に示す例において、反応槽20には、流れ方向に沿って6つの散気部23(散気部23a、散気部23b、散気部23c、散気部23d、散気部23e及び散気部23f)が設置されている。そして、
図1に示す例において、散気部23aには、配管L(以下、配管L1とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給され、散気部23bには、配管L(以下、配管L2とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給され、散気部23cには、配管L(以下、配管L3とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給され、散気部23dには、配管L(以下、配管L4とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給され、散気部23eには、配管L(以下、配管L5とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給され、散気部23fには、配管L(以下、配管L6とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給される。以下、6つの散気部23が反応槽20に設けられる場合について説明を行うが、反応槽20には、例えば、6つ以外の数の散気部23が配置されるものであってもよい。また、以下、反応槽20において複数の散気部23が流れ方向に沿って一直線上に配置される場合について説明を行うが、反応槽20には、例えば、反応槽20の底部において平面状に広がるように設置されるものであってもよい。
【0022】
また、
図1に示す例において、散気部22には、例えば、配管L(以下、配管L7とも呼ぶ)を介して供給装置40からの酸素Aが供給される。配管L7は、例えば、配管L1、配管L2、配管L3、配管L4、配管L5及び配管L6のそれぞれよりも容量の小さい配管であってよい。
【0023】
ここで、水処理システム1000では、例えば、反応槽20において、被処理水に含まれる有機物の除去とともに、被処理水に含まれるアンモニア態窒素の硝化を行う運転(以下、硝化促進運転とも呼ぶ)だけでなく、被処理水に含まれる有機物の除去を行いつつ、被処理水に含まれるアンモニア態窒素の硝化については抑制する運転(以下、硝化抑制運転とも呼ぶ)が行われる場合がある。具体的に、水処理システム1000では、例えば、被処理水に含まれるアンモニア態窒素の除去を行う必要性が低い時期(例えば、微生物の活動が低下する冬季)等において、硝化促進運転に代えて硝化抑制運転が行われる。
【0024】
これにより、水処理システム1000では、例えば、供給装置40から反応槽20に供給する必要がある酸素Aの量を、硝化促進運転が行われる場合よりも抑制することが可能になる。また、水処理システム1000では、例えば、反応槽20において硝化菌を増殖させる必要がなくなることから、反応槽20におけるASRT(Aerobic Solids Retention Time)を短縮させることが可能になる。そのため、水処理システム1000では、例えば、反応槽20に対する酸素Aの供給に要するエネルギーや返送汚泥の移送に要するエネルギー等を抑制することが可能になる。
【0025】
しかしながら、硝化抑制運転の実施中において、アンモニア態窒素の硝化が中途半端に進行した場合、最終沈殿池30では、例えば、硝酸等が還元されて発生した窒素が活性汚泥の沈降を妨げる場合がある。また、反応槽20において増殖した硝化菌は、例えば、処理水のBOD濃度を上昇させる要因となる場合がある。
【0026】
そのため、水処理システム1000では、硝化抑制運転を行う場合、例えば、反応槽20内に供給する酸素Aの量を、BOD酸化菌が有機物の除去を行うために必要な量であって、かつ、硝化菌の増殖を抑制することが可能な量に調整する必要がある。言い換えれば、水処理システム1000では、この場合、例えば、酸素Aの量が多いほど好ましいBOD酸化菌の制御と、酸素Aの量が少ないほど好ましい硝化菌の制御とを並行して行う必要がある。したがって、例えば、硝化抑制運転の制御がオペレーターの手動によって行われる場合、オペレーターの作業負担は、硝化促進運転の制御が行われる場合よりも増大する。
【0027】
そこで、本実施の形態における水処理システム1000には、
図1等に示すように、例えば、反応槽20に酸素Aを供給する複数の配管Lのそれぞれにおいて、酸素Aの供給量を調整する複数の弁Vがそれぞれ設けられる。また、水処理システム1000には、例えば、反応槽20において、被処理水の水質を測定する測定装置24(以下、第1測定装置24とも呼ぶ)と、被処理水に含まれる窒素の硝化状態を測定する測定装置25(以下、第2測定装置25とも呼ぶ)とがそれぞれ設けられる。
【0028】
そして、本実施の形態における水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24及び第2測定装置25による測定結果に基づいて複数の弁Vのそれぞれの開制御及び閉制御(以下、これらを総称して開閉制御とも呼ぶ)を行うことにより、酸素Aの供給が行われる領域(以下、曝気領域とも呼ぶ)と酸素Aの供給が行われない領域(以下、曝気制限領域)とを制御する処理(以下、曝気制御処理とも呼ぶ)を行う。なお、開制御は、例えば、弁Vを開くことによって散気部23に対する酸素Aの供給が行われる状態にする制御(すなわち、弁Vの開度を0でない状態にする制御)である。また、閉制御は、例えば、弁Vを閉じることによって散気部23に対する酸素Aの供給が行われない状態にする制御(すなわち、弁Vの開度を0にする制御)、または、反応槽20内の活性汚泥が沈殿しない程度のわずかな酸素Aが散気部23に対して供給される状態(微曝気が行われている状態)にする制御(すなわち、弁Vの開度を0に近い状態にする制御)である。
【0029】
具体的に、
図1から
図3に示す例において、水処理システム1000には、例えば、反応槽20に酸素Aを供給する配管L2、配管L3、配管L4及び配管L5のそれぞれにおいて、散気部23bから反応槽20に対して供給する酸素Aの量を調整する弁V(以下、弁V1とも呼ぶ)、散気部23cから反応槽20に対して供給する酸素Aの量を調整する弁V(以下、弁V2とも呼ぶ)、散気部23dから反応槽20に対して供給する酸素Aの量を調整する弁V(以下、弁V3とも呼ぶ)、及び、散気部23eから反応槽20に対して供給する酸素Aの量を調整する弁V(以下、弁V4とも呼ぶ)がそれぞれ設けられている。そして、水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質が条件(以下、第1条件とも呼ぶ)を満たし、かつ、第2測定装置25によって測定された窒素の硝化状態が条件(以下、第2条件とも呼ぶ)を満たすように、弁V1、弁V2、弁V3及び弁V4のそれぞれの開閉制御を行うことにより、散気部23b、散気部23c、散気部23d及び散気部23eのそれぞれからの酸素Aの供給を制御し、好気領域20bを曝気領域と曝気制限領域とのそれぞれに区分けする。さらに具体的に、水処理システム1000は、
図3に示すように、例えば、弁V1と弁V4の開制御を行うとともに、弁V2及び弁V3の閉制御を行うことで、領域20b1及び領域20b3が曝気領域となり、領域20b2が曝気制限領域となるように制御する。
【0030】
すなわち、本実施の形態における水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質が第1条件を満たしており、第1測定装置24によって測定された水質から有機物の除去が十分に行われていると判定した場合、反応槽20に対する酸素Aの供給量を減少させても有機物の除去が継続して行われる可能性が高いと判定する。そのため、水処理システム1000は、この場合、例えば、反応槽20に対する酸素Aの供給量を減少させて曝気制限領域を拡大し、有機物の十分な除去を継続させつつ、硝化菌の増殖を抑制させる制御を開始する。具体的に、水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質と第2測定装置25によって測定された硝化状態とのそれぞれを参照しながら、弁Vの閉制御を行って曝気制限領域を拡大することにより、有機物の十分な除去と硝化菌の増殖の抑制との両方を実現する。
【0031】
一方、本実施の形態における水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質が第1条件を満たしておらず、第1測定装置24によって測定された水質から有機物の除去が十分に行われていないと判定した場合、硝化菌の増殖の抑制よりも有機物の除去量の確保を優先して行う必要があると判定する。そのため、水処理システム1000は、この場合、例えば、反応槽20に対する酸素Aの供給量を増加させて曝気制限領域を縮小し、有機物の除去が十分に行われるように制御する。具体的に、水処理システム1000は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質を参照しながら弁Vの開制御を行って曝気制限領域を縮小することにより、有機物の除去が十分に行われるように制御する。
【0032】
これにより、本実施の形態における水処理システム1000では、例えば、反応槽20における硝化抑制運転を自動的に行うことが可能になる。そのため、水処理システム1000では、例えば、硝化抑制運転に伴うオペレーターの負担を抑制することが可能になる。
【0033】
なお、
図1に示すように、例えば、配管L1、配管L2、配管L3、配管L4、配管L5、配管L6及び配管L7(以下、単に配管L1等とも呼ぶ)と供給装置40との間を連通する配管L(以下、配管L8とも呼ぶ)には、供給装置40から配管L1等に対して供給される酸素Aの量(総量)を調整する弁V(以下、弁V5とも呼ぶ)が設けられるものであってもよい。
【0034】
そして、水処理システム1000では、例えば、曝気制御処理の前段処理として、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整制御と弁V5の開閉制御とを行うことで、各散気部23に対する酸素Aの供給量(酸素Aの供給量の総量)を制御するものであってもよい。
【0035】
具体的に、水処理システム1000では、この場合、例えば、第1測定装置24によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、第2測定装置25によって測定された窒素の硝化状態が第2条件を満たすように、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整制御と弁V5の開閉制御とを行うものであってもよい。
【0036】
その結果、例えば、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整と弁V5の開閉制御とを行うことによっても、第1測定装置24によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、第2測定装置25によって測定された窒素の硝化状態が第2条件を満たしている状態にならない場合(反応槽20における有機物の十分な除去と硝化菌の増殖の抑制との両方を達成することができない場合)、水処理システム1000では、曝気制御処理の実行を開始するものであってもよい。具体的に、水処理システム1000では、例えば、供給装置40からの酸素Aの供給量が予め定められた上限に到達した場合に、曝気制御処理を開始するものであってもよい。
【0037】
すなわち、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整及び弁V5の開閉制御は、例えば、曝気制御処理による制御よりもオペレーターの負担が少ない場合がある。そのため、水処理システム1000では、例えば、曝気制御処理を行う前に、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整及び弁V5の開閉制御を行うことによって、反応槽20における有機物の十分な除去と硝化菌の増殖の抑制との両方の達成を試みるものであってよい。これにより、水処理システム1000では、例えば、オペレーターの負担をより抑制することが可能になる。
【0038】
また、以下、第1測定装置24及び第2測定装置25のそれぞれが反応槽20内における最終沈殿池30側に設けられる場合について説明を行うが、第1測定装置24及び第2測定装置25のそれぞれは、例えば、反応槽20と最終沈殿池30とを連通する配管や最終沈殿池30に設けられるものであってもよい。また、以下、複数の配管Lのそれぞれに5つの弁V(弁V1、弁V2、弁V3、弁V4及び弁V5)が設けられる場合について説明を行うが、反応槽20では、例えば、5つ以外の数の弁Vが複数の配管Lのそれぞれに設けられるものであってもよい。
【0039】
さらに、水処理システム1000には、例えば、反応槽20に酸素Aを供給する配管L7においても、散気部22から反応槽20に対して供給する酸素Aの量を調整する弁(図示せず)が設けられるものであってもよい。
【0040】
[第1の実施の形態における制御装置100]
次に、第1の実施の形態における制御装置100の構成について説明を行う。
図4は、制御装置100のハードウエア構成を説明する図である。また、
図5は、制御装置100の機能について説明する図である。
【0041】
水処理システム1000は、
図4及び
図5に示すように、曝気制御処理を実行する制御装置100を有する。
【0042】
制御装置100は、
図4に示すように、例えば、プロセッサであるCPU101と、メモリ102と、通信装置103と、記憶媒体104とを有するコンピュータ装置である。各部は、例えば、バス105を介して互いに接続される。
【0043】
記憶媒体104は、例えば、曝気制御処理を行うためのプログラム(図示しない)を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。また、記憶媒体104は、例えば、曝気制御処理を行う際に用いられる情報を記憶する記憶部130(以下、情報格納領域130とも呼ぶ)を有する。なお、記憶媒体104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0044】
CPU101は、例えば、記憶媒体104からメモリ102にロードされたプログラムを実行することによって曝気制御処理を行う。
【0045】
通信装置103は、例えば、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介してオペレーターが必要な情報の入力等を行う操作端末(図示せず)とアクセスを行う。
【0046】
そして、制御装置100は、
図5に示すように、例えば、曝気制御処理において複数の弁Vのそれぞれの開閉制御を行う。なお、制御装置100は、例えば、曝気制御処理を行う前において、供給装置40から供給される酸素Aの量の調整及び弁V5の開閉制御を行うものであってもよい。以下、曝気制御処理の具体例について説明を行う。
【0047】
[第1の実施の形態における曝気制御処理]
次に、第1の実施の形態における曝気制御処理について説明する。
図6は、第1の実施の形態における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【0048】
制御装置100は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質を示す値(以下、水質値とも呼ぶ)を取得する(
図6のステップS1)。
【0049】
具体的に、制御装置100は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質値を数十秒から数分ごと等の定期的な間隔で取得する。
【0050】
なお、第1測定装置24は、例えば、反応槽20内におけるCOD(Chemical Oxygen Demand)値を測定するCOD計であってよい。そして、制御装置100は、この場合、例えば、第1測定装置24によって測定されたCOD値を水質値として取得するものであってよい。また、第1測定装置24は、例えば、反応槽20内におけるBOD値と相関関係を有する他の水質値を測定するものであってもよい。
【0051】
そして、制御装置100は、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たすか否かを判定する(
図6のステップS2)。具体的に、制御装置100は、例えば、ステップS1において取得したCOD値が閾値(以下、第1閾値とも呼ぶ)以下であるか否かを判定する。
【0052】
その結果、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていないと判定した場合(ステップS2のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの開制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を増加させて曝気領域の大きく(曝気制限領域を小さく)する(
図6のステップS3)。そして、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0053】
すなわち、例えば、第1測定装置24から取得した水質値が第1条件を満たしていない場合、制御装置100は、反応槽20においてBOD酸化菌による有機物の除去が十分に行われていないと判定する。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20に対して供給する酸素Aの量(曝気量)を増加させることによって、BOD酸化菌を活性化させ、反応槽20における有機物の除去量が上昇するように制御を行う。
【0054】
これにより、制御装置100は、例えば、反応槽20における有機物の除去が安定的に行われるように制御することが可能になる。
【0055】
一方、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていると判定した場合(ステップS2のYES)、制御装置100は、第2測定装置25によって測定された硝化状態を示す値(以下、硝化状態値とも呼ぶ)を取得する(
図6のステップS4)。
【0056】
具体的に、制御装置100は、例えば、第2測定装置25によって測定された硝化状態値を数十秒から数分ごと等の定期的な間隔で取得する。
【0057】
なお、第2測定装置25は、例えば、反応槽20内におけるNOx値を測定するNOx計であってよい。そして、制御装置100は、この場合、例えば、第2測定装置25によって測定されたNOx値を硝化状態値として取得するものであってよい。
【0058】
すなわち、例えば、第1測定装置24から取得した水質値が第1条件を満たしている場合、制御装置100は、反応槽20においてBOD酸化菌による有機物の除去が十分に行われていると判定する。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20に対して供給する酸素Aの量を減少させる余地があると判定し、反応槽20における被処理水の硝化状態の制御を開始する。
【0059】
そして、制御装置100は、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たすか否かを判定する(
図6のステップS5)。具体的に、制御装置100は、例えば、ステップS4において取得したNOx値が閾値(以下、第2閾値とも呼ぶ)以下であるか否かを判定する。
【0060】
なお、制御装置100は、例えば、ステップS5を数日に1回程度の頻度で行うものであってよい。すなわち、制御装置100は、例えば、ステップS4において硝化状態値を取得するごとにステップS5を行うのではなく、ステップS5をステップS4よりも低い頻度で行うものであってよい。また、制御装置100は、例えば、ステップS5を数日に1回程度の頻度で行う場合、ステップS4についても同じ程度の頻度(例えば、数日に1回程度の頻度)で行うものであってもよい。
【0061】
その結果、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たしていないと判定した場合(ステップS5のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を減少させて曝気制限領域の大きく(曝気領域を小さく)する(
図6のステップS6)。そして、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0062】
すなわち、例えば、第2測定装置25から取得した硝化状態値が第2条件を満たしていない場合、制御装置100は、反応槽20において硝化菌が増殖していると判定する。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20に対して供給する酸素Aの量(曝気量)を減少させることによって硝化菌の増殖を抑制し、反応槽20においてアンモニア態窒素の硝化が抑制されるように制御を行う。
【0063】
なお、ステップS6において弁Vの閉制御を行ったことによって、反応槽20において有機物の除去が十分に行われなくなった場合、次回以降に行われる曝気制御処理のステップS1において測定される水質値が第1条件を満たさなくなり、次回以降に行われる曝気制御処理のステップS3において弁V3の開制御が行われることになる。そのため、制御装置100は、例えば、ステップS6における弁Vの開制御によって有機物の除去量が一時的に減少した場合であっても、有機物の除去量が再度増加するように自動的に制御を行うことが可能になる。
【0064】
一方、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たしていると判定した場合(ステップS5のYES)、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0065】
すなわち、例えば、第1測定装置24から取得した水質値が第1条件を満たしており、かつ、第2測定装置25から取得した硝化状態値が第2条件を満たしている場合、制御装置100は、反応槽20において有機物の除去が十分に行われている状態であり、かつ、アンモニア態窒素の硝化についても抑制されている状態であると判定する。そのため、制御装置100は、この場合、複数の弁Vにおける開閉制御を行わない。
【0066】
このように、本実施の形態における水処理システム1000は、例えば、液体を処理する槽20と、槽20の下部に配置された複数の散気部23を介して槽20内に酸素Aを供給する供給装置40と、複数の散気部23からの酸素Aの供給を制御する制御装置100と、液体の水質を測定する第1測定装置24と、液体に含まれる窒素の硝化状態を測定する第2測定装置25と、を備える。そして、制御装置100は、例えば、第1測定装置24によって測定された水質が第1条件を満たし、かつ、第2測定装置25によって測定された硝化状態が第2条件を満たすように、複数の散気部23からの酸素Aの供給を制御する。
【0067】
具体的に、本実施の形態における第1測定装置24は、例えば、液体に含まれる有機物の濃度を測定し、制御装置100は、例えば、第1測定装置24によって測定された濃度が第1閾値以下である場合、液体の水質が第1条件を満たすと判定する。
【0068】
また、本実施の形態における第2測定装置25は、例えば、液体に含まれる窒素化合物の濃度を測定し、制御装置100は、例えば、第2測定装置25によって測定された濃度が第2閾値以下である場合、液体に含まれる窒素の硝化状態が第2条件を満たすと判定する。
【0069】
また、本実施の形態における制御装置100は、例えば、液体の水質が第1条件を満たし、かつ、液体に含まれる窒素の硝化状態が第2条件を満たすように、複数の散気部23のうちの酸素Aを供給する散気部23の数を制御する。
【0070】
さらに具体的に、本実施の形態における制御装置100は、例えば、液体の水質が第1条件を満たし、かつ、液体に含まれる窒素の硝化状態が第2条件を満たさない場合、複数の散気部23のうちの酸素Aを供給する散気部23の数を減少させる。
【0071】
また、本実施の形態における制御装置100は、液体の水質が第1条件を満たさない場合、複数の散気部23のうちの酸素Aを供給する散気部23の数を増加させる。
【0072】
これにより、本実施の形態における制御装置100は、例えば、反応槽20において有機物の除去を十分に行いつつ、硝化菌の増殖(アンモニア態窒素の硝化)を抑制することが可能になる。
【0073】
なお、制御装置100は、例えば、反応槽20において硝化菌を維持するために最低限必要なASRTと反応槽20における被処理水の水温との対応関係を示す対応情報(図示せず)を情報格納領域130に予め記憶するものであってよい。
【0074】
そして、制御装置100は、ステップS6において、例えば、情報格納領域130に記憶された対応情報を参照して、反応槽20に設けられた水温計(図示せず)によって測定された水温に対応するASRT(以下、特定のASRTとも呼ぶ)を特定するものであってよい。さらに、制御装置100は、例えば、反応槽20におけるASRTが特定のASRT以下になるように、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御を行い、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を減少させるものであってよい。
【0075】
また、制御装置100は、ステップS6において、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御を行うことによって活性汚泥の流動性(反応槽20内において有機物の除去を行うために必要な流動性)が確保されなくなる場合、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御に代えて、最終沈殿池30から反応槽20に対して供給される返送汚泥の量を減少させることにより、反応槽20における活性汚泥の量を減少させて硝化菌の増殖を抑制するものであってもよい。言い換えれば、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20におけるMLSS(Mixed liquor suspended solids)が低下するように制御することにより、反応槽20における硝化菌の増殖を抑制するものであってもよい。
【0076】
[第1の実施の形態の第1変形例における曝気制御処理]
次に、第1の実施の形態の第1変形例(以下、単に第1変形例とも呼ぶ)における曝気制御処理について説明する。
図7は、第1変形例における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【0077】
本変形例における曝気制御処理は、例えば、複数の弁Vのそれぞれの開閉制御に加え、複数の弁Vのそれぞれの開度についての制御を行うことにより、反応槽20において有機物の除去を十分に行いつつ、アンモニア態窒素の硝化を抑制する。
【0078】
制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、第1測定装置24によって測定された水質値を取得する(
図7のステップS1)。
【0079】
そして、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たすか否かを判定する(
図7のステップS2)。
【0080】
その結果、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていないと判定した場合(ステップS2のNO)、制御装置100は、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしているか否かを判定する(
図7のステップS31)。第3条件は、例えば、反応槽20における水質を改善する処理が前回の曝気制御処理において行われていたか否かを判定するための条件である。
【0081】
具体的に、制御装置100は、例えば、前回の曝気制御処理においてステップS32が行われていた場合(前回の曝気制御処理のステップS2においても水質値が第1条件を満たしていないと判定していた場合)、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていると判定する。なお、制御装置100は、例えば、前回までに行われた曝気制御処理においてステップS32が連続して所定回行われていた場合に、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていると判定するものであってもよい。
【0082】
そして、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていないと判定した場合(S31のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの弁Vの開度を大きくする(
図7のステップS32)。その後、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0083】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われている弁V(開度が0でない弁V)の開度を大きくする。
【0084】
すなわち、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていない場合とは、例えば、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たさなくなった後、その水質値を改善させるための制御がまだ行われていない場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの弁の開度を大きくする制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を増加させる。
【0085】
なお、第1変形例では、例えば、曝気制御処理が行われる前のタイミングにおいて、複数の弁Vのうちの所定数の弁Vの開制御が予め行われているものであってよい。言い換えれば、第1変形例では、例えば、曝気制御処理が行われる前のタイミングにおいて、所定数の散気部23からの酸素Aの供給が行われるように予め調整されているものであってよい。また、第1変形例では、例えば、所定数の弁Vのそれぞれの開度が所定開度になるように予め調整されるものであってよい。
【0086】
一方、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていると判定した場合(S31のYES)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの開制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を増加させて曝気領域の大きく(曝気制限領域を小さく)する(
図7のステップS33)。
【0087】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われていない弁V(開度が0である弁V)の開制御を行う。
【0088】
すなわち、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしている場合とは、例えば、反応槽20における被処理水の水質値を改善させるための制御(弁Vの開度を大きくする制御)が前回の曝気制御処理において行われたにもかかわらず、水質値の改善がまだ不十分である場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20における被処理水の水質値を改善させるためのさらなる制御を行う。具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、弁Vの開制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を増加させてASRTを増加させる。
【0089】
言い換えれば、制御装置100は、例えば、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの開度を大きくする制御と弁Vの開制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たすように制御を行う。
【0090】
図7に戻り、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていると判定した場合(ステップS2のYES)、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、第2測定装置25によって測定された硝化状態値を取得する(
図7のステップS4)。
【0091】
そして、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たすか否かを判定する(
図7のステップS5)。
【0092】
その結果、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たしていないと判定した場合(ステップS5のNO)、制御装置100は、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしているか否かを判定する(
図7のステップS61)。第4条件は、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態を改善する処理が前回の曝気制御処理において行われていたか否かを判定するための条件である。
【0093】
具体的に、制御装置100は、例えば、前回の曝気制御処理においてステップS62が行われていた場合(前回の曝気制御処理のステップS5においても硝化状態値が第2条件を満たしていないと判定していた場合)、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていると判定する。なお、制御装置100は、例えば、前回までに行われた曝気制御処理においてステップS62が連続して所定回行われていた場合に、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていると判定するものであってもよい。
【0094】
そして、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていないと判定した場合(S61のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの弁Vの開度を小さくする(
図7のステップS62)。その後、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0095】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われている弁V(開度が0でない弁V)の開度を小さくする。
【0096】
すなわち、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていない場合とは、例えば、反応槽20における被処理水に含まれる窒素の硝化状態値が第2条件を満たさなくなった後、その硝化状態値を改善させるための制御がまだ行われていない場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの弁の開度を小さくする制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を減少させる。
【0097】
一方、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていると判定した場合(S61のYES)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を減少させて曝気制限領域の大きく(曝気領域を小さく)する(
図7のステップS63)。
【0098】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われている弁V(開度が0でない弁V)の閉制御を行う。
【0099】
すなわち、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしている場合とは、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値を改善させるための制御(弁Vの開度を小さくする制御)が前回の曝気制御処理において行われたにもかかわらず、硝化状態値の改善がまだ不十分である場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値を改善させるためのさらなる制御を行う。具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、弁Vの閉制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を減少させてASRTを短縮させる。
【0100】
言い換えれば、制御装置100は、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの開度を小さくする制御と弁Vの閉制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たすように制御を行う。
【0101】
このように、本実施の形態における制御装置100は、例えば、液体の水質が第1条件を満たし、かつ、液体に含まれる窒素の硝化状態が第2条件を満たすように、複数の散気部23のうちの酸素Aを供給する散気部23の数を決定するとともに、複数の散気部23のうち、決定した数に対応する散気部23からの酸素Aの供給量を制御する。
【0102】
具体的に、例えば、ステップS3またはステップS6(以下、これらを総称してステップS3等とも呼ぶ)が行われる前の段階においては、予め弁Vの開制御が行われていた散気部23の数(すなわち、初期値が示す数)を、酸素Aの供給を行う散気部23の数として決定する。また、例えば、ステップS3等が行われた後の段階においては、ステップS3等における弁Vの開閉制御によって増減した散気部23の数(ステップS3等が行われた後の段階において弁Vの開制御が行われている散気部23の数)を、酸素Aの供給を行う散気部23の数として決定する。
【0103】
これにより、本変形例における制御装置100は、
図6等で説明した場合と同様に、例えば、反応槽20における液体の水質が第1条件を安定的に満たすように制御を行いつつ、反応槽20における窒素の硝化状態が第2条件を満たすように制御を行うことが可能になる。
【0104】
また、制御装置100は、例えば、弁Vの開度調整によっても水質の制御を行うことができない場合に限り、弁Vの開閉制御を行うことで、弁Vの開閉制御が行われる頻度を抑制することが可能になる。そのため、制御装置100は、例えば、液体の水質の制御に伴うオペレーターの負担を抑制することが可能になる。
【0105】
さらに、制御装置100は、例えば、弁Vの開度調整によっても窒素の硝化状態の制御を行うことができない場合に限り、弁Vの開閉制御を行うことで、弁Vの開閉制御が行われる頻度を抑制することが可能になる。そのため、制御装置100は、例えば、液体に含まれる窒素の硝化状態の制御に伴うオペレーターの負担を抑制することが可能になる。
【0106】
[第1の実施の形態の第2変形例における曝気制御処理]
次に、第1の実施の形態の第2変形例(以下、単に第2変形例とも呼ぶ)における曝気制御処理について説明する。
図8は、変形例における曝気制御処理を説明するフローチャート図である。
【0107】
本変形例における曝気制御処理は、例えば、複数の弁Vのそれぞれの開閉制御に加え、反応槽20に対する返送汚泥の量の制御(反応槽20において有機物の除去を行う活性汚泥の量の制御)を行うことにより、反応槽20において有機物の除去を十分に行いつつ、アンモニア態窒素の硝化を抑制する。
【0108】
制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、第1測定装置24によって測定された水質値を取得する(
図8のステップS1)。
【0109】
そして、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たすか否かを判定する(
図8のステップS2)。
【0110】
その結果、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていないと判定した場合(ステップS2のNO)、制御装置100は、
図7で説明した場合と同様に、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしているか否かを判定する(
図8のステップS31)。
【0111】
そして、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていないと判定した場合(S31のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの開制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を増加させて曝気領域の大きく(曝気制限領域を小さく)する(
図8のステップS34)。その後、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0112】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われていない弁V(開度が0である弁V)の開制御を行う。
【0113】
すなわち、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていない場合とは、例えば、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たさなくなった後、その水質値を改善させるための制御がまだ行われていない場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの開制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を増加させてASRTを増加させる。
【0114】
一方、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしていると判定した場合(S31のYES)、制御装置100は、例えば、返送汚泥の量(反応槽20における活性汚泥の量)の増加させる(
図8のステップS35)。
【0115】
すなわち、ステップS1において取得した水質値が第3条件を満たしている場合とは、例えば、反応槽20における被処理水の水質値を改善させるための制御(弁Vの開制御)が前回の曝気制御処理において行われたにもかかわらず、水質値の改善がまだ不十分である場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20における被処理水の水質値を改善させるためのさらなる制御を行う。具体的に、制御装置100は、例えば、反応槽20に対する返送汚泥の量を増加させる制御を行うことによってASRTを増加させる。
【0116】
言い換えれば、制御装置100は、例えば、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの開制御と返送汚泥の量を増加させる制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たすように制御を行う。
【0117】
図8に戻り、例えば、ステップS1において取得した水質値が第1条件を満たしていると判定した場合(ステップS2のYES)、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、第2測定装置25によって測定された硝化状態値を取得する(
図8のステップS4)。
【0118】
そして、制御装置100は、
図6で説明した場合と同様に、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たすか否かを判定する(
図8のステップS5)。
【0119】
その結果、例えば、ステップS4において取得した硝化状態値が第2条件を満たしていないと判定した場合(ステップS5のNO)、制御装置100は、
図7で説明した場合と同様に、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしているか否かを判定する(
図8のステップS61)。
【0120】
そして、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていないと判定した場合(S61のNO)、制御装置100は、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれか(1以上の弁V)の閉制御を行うことによって、反応槽20に対して酸素Aを供給する散気部23の数を減少させて曝気制限領域の大きく(曝気領域を小さく)する(
図8のステップS64)。その後、制御装置100は、例えば、ステップS1に戻る。
【0121】
具体的に、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの酸素Aの供給が行われている弁V(開度が0でない弁V)の閉制御を行う。
【0122】
すなわち、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていない場合とは、例えば、反応槽20における被処理水に含まれる窒素の硝化状態値が第2条件を満たさなくなった後、その硝化状態値を改善させるための制御がまだ行われていない場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、複数の弁Vのうちの少なくともいずれかの閉制御を行うことによって、反応槽20に対する酸素Aの供給量を減少さてASRTを短縮させる。
【0123】
一方、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしていると判定した場合(S61のYES)、制御装置100は、例えば、返送汚泥の量(反応槽20における活性汚泥の量)の減少させる(
図8のステップS65)。
【0124】
すなわち、ステップS4において取得した硝化状態値が第4条件を満たしている場合とは、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値を改善させるための制御(弁Vの閉制御)が前回の曝気制御処理において行われたにもかかわらず、硝化状態値の改善がまだ不十分である場合である。そのため、制御装置100は、この場合、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値を改善させるためのさらなる制御を行う。具体的に、制御装置100は、この場合、反応槽20に対する返送汚泥の量を減少させる制御を行うことによってASRTを短縮させる。
【0125】
言い換えれば、制御装置100は、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの閉制御と返送汚泥の量を減少させる制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たすように制御を行う。
【0126】
このように、本実施の形態における制御装置100は、例えば、液体の水質が第1条件を満たし、かつ、液体に含まれる窒素の硝化状態が第2条件を満たすように、槽20内において液体を処理する活性汚泥の量を制御する。
【0127】
これにより、本変形例における制御装置100は、
図6等で説明した場合と同様に、例えば、反応槽20における液体の水質が第1条件を安定的に満たすように制御を行いつつ、反応槽20における窒素の硝化状態が第2条件を満たすように制御を行うことが可能になる。
【0128】
[第1の実施の形態の第3変形例における曝気制御処理]
次に、第1の実施の形態の第3変形例(以下、単に第3変形例とも呼ぶ)における曝気制御処理について説明する。
【0129】
本変形例における曝気制御処理は、例えば、第1変形例における曝気制御処理において、反応槽20に対する返送汚泥の量の制御をさらに行う。
【0130】
具体的に、例えば、
図7のステップS31において、前回の曝気制御処理において
図7のステップS33が行われていたと判定した場合、制御装置100は、
図8のステップS35と同様に、返送汚泥の量を増加させる制御を行う。
【0131】
すなわち、制御装置100は、例えば、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの開度を大きくする制御と弁Vの開制御と返送汚泥の量を増加させる制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における被処理水の水質値が第1条件を満たすように制御を行う。
【0132】
また、例えば、
図7のステップS61において、前回の曝気制御処理において
図7のステップS63が行われていたと判定した場合、制御装置100は、
図8のステップS65と同様に、返送汚泥の量を減少させる制御を行う。
【0133】
すなわち、制御装置100は、例えば、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たさなくなったことを検知した場合、弁Vの開度を小さくする制御と弁Vの閉制御と返送汚泥の量を減少させる制御とを段階的に行うことによって、反応槽20における窒素の硝化状態値が第2条件を満たすように制御を行う。
【0134】
これにより、本変形例における制御装置100は、
図6等で説明した場合と同様に、例えば、反応槽20における液体の水質が第1条件を安定的に満たすように制御を行いつつ、反応槽20における窒素の硝化状態が第2条件を満たすように制御を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0135】
10:最初沈殿池 20:反応槽
20a:嫌気領域 20b:好気領域
20b1:曝気領域 20b2:曝気制限領域
20b3:曝気領域 21:槽本体
22:散気部 23:散気部
23a:散気部 23b:散気部
23c:散気部 23d:散気部
23e:散気部 23f:散気部
24:測定装置 25:測定装置
30:最終沈殿池 40:供給装置
100:制御装置 101:CPU
102:メモリ 103:通信装置
104:記憶媒体 105:バス
130:情報格納領域 1000:水処理システム
A:酸素 L:配管
L1:配管 L2:配管
L3:配管 L4:配管
L5:配管 L6:配管
L7:配管 L8:配管
V:弁 V1:弁
V2:弁 V3:弁
V4:弁 V5:弁