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特開2024-78163水性インクジェットインキ用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078163
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】水性インクジェットインキ用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240603BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240603BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 112
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190558
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇都木 正貴
(72)【発明者】
【氏名】服部 和昌
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FC01
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB56
2H186FB58
4J039AD02
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD10
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC09
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA33
4J039EA36
4J039EA39
4J039EA41
4J039EA44
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、フィルム基材などの非浸透性基材への印刷においても、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性が良好で、優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を付与する水性インクジェットインキ用樹脂組成物、水性インクジェットインキおよび印刷物を提供することである。
【解決手段】コアポリマー(A)と、コアポリマー(A)を被覆するシェルポリマー(B)とを含有するコアシェル構造を有する水性インクジェットインキ用樹脂組成物であって、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であり、かつ、コアポリマー(A)のガラス転移温度がシェルポリマー(B)のガラス転移温度より高く、シェルポリマー(B)の酸価が200mgKOH/g以上であり、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)の質量比が90/10~60/40であることを特徴とする水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアポリマー(A)と、コアポリマー(A)を被覆するシェルポリマー(B)とを含有するコアシェル構造を有する水性インクジェットインキ用樹脂組成物であって、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であり、かつ、コアポリマー(A)のガラス転移温度がシェルポリマー(B)のガラス転移温度より高く、シェルポリマー(B)の酸価が200mgKOH/g以上であり、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)との質量比が90/10~60/40であることを特徴とする水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【請求項2】
コアポリマー(A)は、スチレン及びα-メチルスチレンから選ばれるビニル単量体単位の含有量が15~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【請求項3】
コアポリマー(A)は、親水性ビニル単量体単位の含有量が1~5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【請求項4】
コアポリマー(A)は、多官能ビニル単量体単位の含有量が0~2質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【請求項5】
50%体積平均粒子径が40~90nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の水性インクジェットインキ用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の水性インクジェットインキ用樹脂組成物を含む水性インクジェットインキ。
【請求項7】
請求項6に記載の水性インクジェットインキを用いた印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクジェットインキ用樹脂組成物、及び、それを用いてなるインキ、並びにその印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の小ロット化やニーズの多様化に伴い、デジタル印刷方式の普及が急速に進んでいる。デジタル印刷方式では、版を必要としないことから、小ロット対応、コストの削減、印刷装置の小型化が実現可能である。
【0003】
デジタル印刷方式の一種であるインクジェット印刷方式とは、記録媒体に対してインクジェットヘッドからインキの微小液滴を飛翔及び着弾させて、前記記録媒体上に画像や文字( 以下総称して「印刷物」ともいう) を形成する方式である。他のデジタル印刷方式と比べて、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易性などの面で優れており、近年では産業印刷用途においても利用が進んでいる。
【0004】
インクジェット印刷方式に使用されるインキとしては、油系、溶剤系、活性エネルギー線硬化系、水系など多岐に渡る。これまで、産業印刷用途では、溶剤系や活性エネルギー線硬化系のインキが使用されてきた。しかし近年の、環境や人に対する有害性への配慮・対応といった点から、水系インキの需要が高まっている。
【0005】
また近年では、インクジェット印刷方式の用途拡大の要望の中で、産業印刷用途に加えて、紙器、ラベル、包装フィルムといったパッケージ用途への展開が求められている。その場合、コート紙やアート紙のような難浸透性の基材、及び、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような非浸透性の基材に対して、実使用に耐えられる特性を有する印刷物の形成が要求されることになる。
【0006】
パッケージ材料を製造するためにインクジェット印刷を利用する場合、フィルム基材に対する画像形成が必須となる。これまでに存在する、インクジェット印刷で用いる水性インキは、普通紙や専用紙(例えば、写真光沢紙)のような浸透性の高い基材に対して画像形成するためのものであり、フィルム基材のような非浸透性の基材に対して印刷した場合、着弾した後のインキ液滴が、基材中に全く浸透せず、色材である顔料が基材表面に付着されている状態のため摩擦に対する耐性が低い。さらに、インキの安定性を得るため,水に対する溶解性の高いものが一般的に用いられるため水やアルコールに対する耐性が低いといった問題が発生する。
【0007】
耐性が低い課題に対して、例えば特許文献1~2には、インキ中にエマルジョンを使用することで耐性に一定の向上効果が得られることが開示されているが、いずれもインクジェットヘッドのノズル目詰まりが生じやすく、目詰まりが回復しにくいといった問題が発生する。
【0008】
ノズルの目詰まりの課題に対して、例えば特許文献3~4には、インキ中にコアシェルエマルジョンを使用することで目詰まりが回復に向上効果が得られることが開示されているが、いずれも湿潤時の摩擦に対する十分な耐性(耐水擦過性・耐アルコール擦過性)が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開1991-160068号公報
【特許文献2】特開2002-256194号公報
【特許文献3】特開2015-101690号公報
【特許文献4】特開2015-187235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、フィルム基材などの非浸透性基材への印刷においても、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性が良好で、優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を付与する水性インクジェットインキ用樹脂組成物、水性インクジェットインキおよび印刷物を提供することである。
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、特定のガラス転移温度、酸価とコアポリマー/シェルポリマー質量比であるコアシェル構造を有する水性インクジェットインキ用樹脂組成物を用いて製造された印刷物によって、前記課題が好適に解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、コアポリマー(A)と、コアポリマー(A)を被覆するシェルポリマー(B)とを含有するコアシェル構造を有する水性インクジェットインキ用樹脂組成物であって、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であり、かつ、コアポリマー(A)のガラス転移温度がシェルポリマー(B)のガラス転移温度より高く、シェルポリマー(B)の酸価が200mgKOH/g以上であり、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)との質量比が90/10~60/40であることを特徴とする水性インクジェットインキ用樹脂組成物に関する。
【0013】
また本発明は、コアポリマー(A)は、スチレン及びα-メチルスチレンから選ばれるビニル単量体単位の含有量が15~50質量%である、水性インクジェットインキ用樹脂組成物に関する。
【0014】
また本発明は、コアポリマー(A)は、親水性ビニル単量体単位の含有量が1~5質量%である、水性インクジェットインキ用樹脂組成物に関する。
【0015】
また本発明は、コアポリマー(A)は、多官能ビニル単量体単位の含有量が0~2質量%である、水性インクジェットインキ用樹脂組成物に関する。
【0016】
また本発明は、50%体積平均粒子径が40~90nmである、水性インクジェットインキ用樹脂組成物に関する。
【0017】
また本発明は、水性インクジェットインキ用樹脂組成物を含む水性インクジェットインキに関する。
【0018】
また本発明は、水性インクジェットインキ用樹脂組成物を含む水性インクジェットインキを用いた印刷物に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水性インクジェットインキ用樹脂組成物は、ノズル目詰まりの回復性が良好で、印刷物に優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、好ましい形態を上げて、本発明の実施形態である水性インクジェットインキ用樹脂組成物について説明する。
【0021】
<コアシェル型エマルジョン樹脂>
本発明の水性インクジェットインキ用樹脂組成物は、エマルジョン樹脂を含む。エマルジョン樹脂は基材上で超高分子量の樹脂を成膜させることで、擦過性を発現することができる。しかし、インクジェットヘッドノズルの目詰まりが生じやすく、目詰まりが回復しにくいといった問題とより高度な耐性である耐水擦過性、耐アルコール擦過性を両立させることが難しく印刷物に必要な耐性が得られず、外観不良を発生してしまう。
【0022】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、コアポリマー(A)と、コアポリマー(A)を被覆するシェルポリマー(B)とを含有するコアシェル構造を有する水性インクジェットインキ用樹脂組成物であって、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であり、かつ、コアポリマー(A)のガラス転移温度がシェルポリマー(B)のガラス転移温度より高く、シェルポリマー(B)の酸価が200mgKOH/g以上であり、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)の質量比が90/10~60/40であることを特徴とする水性インクジェットインキ用樹脂組成物において、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性が良好で、優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を付与する印刷物が得られることを見いだした。詳細なメカニズムは定かではないが、例えば以下を考えている。
【0023】
まず、本発明の水性インクジェットインキ用樹脂組成物における、各成分の役割は以下のとおりである。
コアポリマー(A)と、コアポリマー(A)を被覆するシェルポリマー(B)とを含有するコアシェル構造を有するエマルション樹脂において、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であり、かつ、コアポリマー(A)のガラス転移温度がシェルポリマー(B)のガラス転移温度より高いことにより、印刷乾燥時にまずシェルポリマー(B)が溶融し、コアポリマー(A)の成膜助剤となることで高速生産低乾燥エネルギー下でもエマルション樹脂が成膜することで優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を有する印刷物が得られたと考える。また、シェルポリマー(B)の酸価が200mgKOH/g以上にすることで、水への再分散性が向上し、さらに、コアポリマー(A)のガラス転移温度が65℃以上であることで水性インクジェットヘッドの使用温度付近ではコアポリマー(A)同士の融着を防止することで、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性を向上させ良好な吐出安定性を得られたものと考える。さらに、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)の質量比が90/10~60/40であることで、印刷物の優れた耐性と良好な吐出安定性を両立させるという困難な課題を解決できたものと考える。
【0024】
以上のように、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性が良好であり、パッケージ印刷物に必要な優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を有する印刷物を得るには、本発明の水性インクジェットインキ用樹脂組成物が必要不可欠である。
【0025】
<コアポリマー(A)>
コアポリマー(A)を構成するポリマーは単独重合体であっても共重合体であってもよい。コアポリマー(A)のガラス転移温度は、良好な耐水擦過性、耐アルコール擦過性および水性インクジェットヘッドの使用温度付近ではコアポリマー(A)同士の融着を防止させ良好な吐出安定性の観点から65℃以上である必要がある。より好ましくは90℃以上であり、特に好ましくは100℃以上である。
コアポリマー(A)のガラス転移温度は、シェルポリマー(B)のガラス転移温度より5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。また、コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)のガラス転移温度の差は50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
【0026】
コアポリマー(A)を構成するポリマーが単独重合体である場合、単独重合体のガラス転移温度は各種文献(例えばポリマーハンドブック等)に記載されているものを使用することができる。また、コアポリマーを構成するポリマーが共重合体である場合、共重合体のガラス転移温度は、各種単独重合体のガラス転移温度と、単量体の質量分率とから下記FOX式によって算出することができる。
【0027】
【数1】

Wn :各単量体の質量分率
Tgn:各単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位:K)
Tg :共重合体のガラス転移温度(単位:K)
【0028】
コアポリマー(A)を構成するビニル単量体としては、疎水性ビニル単量体及び親水性ビニル単量体のいずれも使用できる。前記疎水性ビニル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有ビニル単量体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有ビニル単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等の芳香族ビニル単量体;
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。なお本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0029】
これら疎水性ビニル単量体としては芳香族ビニル単量体が好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有量は、コアポリマー(A)100質量部に対し15~50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20~40質量%である。含有量を上記範囲にすることでコアシェル型樹脂エマルジョンの耐水性、耐アルコール性がより向上する。さらにシェルポリマー(B)との相溶性が良好となり印刷物の光沢が向上する。
芳香族ビニル単量体としてはスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレン及びα-メチルスチレンから選ばれるビニル単量体単位の合計の含有量が15~50質量%であることが好ましい。なお本発明において、ビニル単量体単位とは、ビニル単量体に由来する構造単位を意味する。
【0030】
前記親水性ビニル単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル単量体;
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリロイルオキシイソ酪酸、メタクリロイルオキシイソ酪酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのジカルボン酸ビニル単量体及びその無水物又は半エステル等のアニオン基含有ビニル単量体;
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。これらに中でもアミド基含有ビニル単量体を使用するとコアシェル型樹脂エマルジョンの保存安定性をより向上できる。
【0031】
これら親水性ビニル単量体単位の含有量は、コアポリマー(A)100質量部に対し1~5質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは2~4質量%である。含有量を上記範囲にすることで親水・疎水性のバランス調整、コアシェル型樹脂エマルジョンの保存安定性がより向上する。さらにシェルポリマー(B)との相溶性が良好となり印刷物の光沢が向上する。
【0032】
本発明のコアポリマー(A)には多官能ビニル単量体を使用することができる。
具体的には、例えば、アリル(メタ)アクリレート、1-メチルアリル(メタ)アクリレート、2-メチルアリル(メタ)アクリレート、1-ブテニル(メタ)アクリレート、2-ブテニル(メタ)アクリレート、3-ブテニル(メタ)アクリレート、1,3-メチル-3-ブテニル(メタ)アクリレート、2-クロルアリル(メタ)アクリレート、3-クロルアリル(メタ)アクリレート、o-アリルフェニル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のビニル基を有するビニル単量体;
等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。
【0033】
これら多官能ビニル単量体単位の含有量は、コアポリマー(A)100質量部に対し0~2質量%の範囲であり、より好ましくは0.5~1質量%である。含有量を上記範囲にすることで耐水性、耐アルコール性がより向上する。
【0034】
<シェルポリマー(B)>
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョンに使用されるシェルポリマー(B)には、コアポリマー(A)に使用するモノマーを共重合させる高分子界面活性剤の役割がある。そのため適度な親水性を有するアニオン基を含むビニル単量体と、適度な疎水性を有する芳香族ビニル単量体を含むビニル単量体を使用することが好ましい。シェルポリマー(B)の酸価は、コアシェル型樹脂エマルジョンの良好な水への再分散性の観点から200mgKOH/g以上である必要がある。より好ましくは210mgKOH/g以上であり、特に好ましくは220mgKOH/g以上である。酸価を上記範囲にすることでインクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性がより向上する。なお酸価とは、1gの試料中に含まれる酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を意味する。樹脂の酸価は、前記樹脂を構成する各構成単位(単量体)から算出することができる。
【0035】
前記アニオン基を含むビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリロイルオキシイソ酪酸、メタクリロイルオキシイソ酪酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのジカルボン酸ビニル単量体及びその無水物又は半エステル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。
【0036】
前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。
【0037】
シェルポリマー(B)には、さらに他のビニル単量体を使用できる。
具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有ビニル単量体;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル単量体;等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用できる。
【0038】
コアポリマー(A)とシェルポリマー(B)の質量比は、印刷物の優れた耐性と良好な吐出安定性を両立させる観点から90/10~60/40であることが必要である。より好ましくは85/15~65/35であり、特に好ましくは80/20~70/30である。さらに質量比を上記範囲内にすることで、乳化重合が容易になり、均一なコアシェル型樹脂エマルジョンを得ることができることに加え、良好な保存安定性が得られる。
【0039】
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョンは50%体積平均粒子径が40~90nmの範囲であり、より好ましくは50~80nmである。50%体積平均粒子径を記範囲にすることで印刷物の光沢がより向上する。なお、50%体積平均粒子径とは体積基準での累積50%径であり、例えば、日機装社製ナノトラックUPA-EX150により求めることができる。
【0040】
シェルポリマー(B)の合成には、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤は、ビニル単量体100質量部に対して、0.1~10質量部を使用することが好ましい。
【0041】
前記重合開始剤は、有機過酸化物およびアゾ化合物が好ましい。前記有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。前記アゾ化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリルド等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0042】
シェルポリマー(B)は、重量平均分子量5,000~30,000が好ましく、7,000~20,000がより好ましい。重量平均分子量が5,000~30,000の範囲にあることで、コア部の共重合性を向上できる。更には、コアポリマー(A)の成膜助剤としての働きにより耐水性、耐アルコール性がより向上できる。なお、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値をいう。
【0043】
また、シェルポリマー(B)は、市販品を使用することもできる。例えば、BASF社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL683、JONCRYL690、JONCRYL57J、JONCRYL60J、JONCRYL61J、JONCRYL62J、JONCRYL63J、JONCRYLHPD-96J、JONCRYL501J、JONCRYLPDX-6102B、ビックケミー社製DISPERBYK、DISPERBYK180、DISPERBYK187、DISPERBYK190、DISPERBYK191、DISPERBYK194、DISPERBYK2010、DISPERBYK2015、DISPERBYK2090、DISPERBYK2091、DISPERBYK2095、DISPERBYK2155、ゼネカ社製SOLSPERS41000、サートマー社製、SMA1000H、SMA1440H、SMA2000H、SMA3000H、SMA17352H等が挙げられる。
【0044】
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョンの合成には、水溶性の重合開始剤の過硫酸塩、過酸化物、およびアゾ化合物を使用できる。具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなどが好ましい。前記水溶性の重合開始剤は、ビニル単量体100質量部に対して、0.1~10質量部を使用することが好ましい。
【0045】
また、水溶性の重合開始剤に還元剤を併用することで、重合速度を速めること、あるい
は低い反応温度で重合ができる。具体的には、例えば、スコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性の無機化合物が挙げられる。前記還元剤は、ビニル単量体100質量部に対して、0.05~5質量部使用することが好ましい。
【0046】
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョンの合成には、シェルポリマー(B)を中和して使用することができる。前記中和によりシェルポリマー(B)を水溶化できる。前記中和は、塩基性化合物を使用できる。具体的には、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどのアミン類;
水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化物塩;等が挙げられる。これらの中でも、印刷後の乾燥での除去が容易なアンモニアが好ましい。
【0047】
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョン(C)の合成には、緩衝剤および連鎖移動剤を適宜使用できる。前記緩衝剤は、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、前記連鎖移動剤は、例えば、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンが挙げられる。
【0048】
本発明のコアシェル型樹脂エマルジョンは、重量平均分子量200,000~1,000,000が好ましく、300,000~500,000がより好ましい。重量平均分子量200,000~1,000,000の範囲にあることで、より耐水性、耐アルコール性を向上できる。
【0049】
<水性インクジェットインキ>
次に、本発明を構成する水性インクジェットインキについて説明する。前記水性インクジェットインキ(以下、単に「水性インキ」「インキ」ともいう)は、前記コアシェル型樹脂エマルジョン、顔料、顔料分散樹脂、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び水とを含んでいる。
【0050】
本発明の前記コアシェル型樹脂エマルジョンの含有量は、水性インクジェットインキ全量に対し、5質量%以上40質量%以下の範囲であり、より好ましくは8質量%以上30質量%以下の範囲であり、特に好ましくは10質量%以上20質量%以下の範囲である。前記コアシェル型樹脂エマルジョンの含有量を上記範囲内にすることで、優れた耐水擦過性、耐アルコール擦過性を有する印刷物が得られ、更に、インクジェットヘッドのノズル目詰まり回復性を向上させ良好な吐出安定性を有する水性インクジェットインキを得ることができる。
【0051】
<顔料>
本発明の水性インクジェットインキに使用される顔料としては、無機顔料、及び有機顔料のいずれも使用でき、特に限定されない。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系などの顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。酸化チタンは、少なくともシリカまたはアルミナで表面被覆された酸化チタンが好ましい。なお、カラーインデックスに収載のC.I.ピグメントとして記載されている顔料を随時使用することができる。
【0052】
なお、白色顔料として、中空樹脂粒子を使用することも好適である。中空樹脂粒子は、酸化チタン等と比較して比重(見かけ密度)が小さく、経時における沈降を抑制しやすいため、保存安定性に優れたインキが得られる。
【0053】
これらの顔料は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。上記顔料はホワイトインキの場合を除き、インキ全量に対して2質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、2.5質量%以上15質量%以下の範囲で含まれることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることが特に好ましい。また、ホワイトインキの場合、顔料の含有量は、ホワイトインキ全量に対して5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、8質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有率を2質量%以上(ホワイトインキの場合は5質量%以上)にすることで、1パス印刷であっても十分な発色性(ホワイトインキの場合は隠蔽性)を得ることができる。また、顔料の含有率を20質量%以下(ホワイトインキの場合は40質量%以下)とすることで、インキの粘度をインクジェット印刷に適した範囲に収めることができる。
【0054】
<顔料分散樹脂>
顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、(1)顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、(2)水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散樹脂や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法(自己分散顔料)、(4)水不溶性樹脂で顔料を被覆し、必要に応じて更に別の顔料分散樹脂や界面活性剤を用いてインキ中に分散させる方法などを挙げることができる。
【0055】
本発明で用いられる水性インクジェットインキでは、耐水性・耐アルコール性の観点から上記のうち(1)または(4)の方法がより好ましい。顔料分散樹脂が、構成単位として、アニオン基を含むビニル単量体由来の構造を含むことで、水及び水溶性有機溶剤に対する溶解性が確保できる。更には、顔料の分散状態が好適なものとなることで、顔料分散液の粘度を抑えることができる点からも好ましい。また、上記効果がより好適に発現することから、顔料分散樹脂の酸価は、30~375mgKOH/gが好ましく、より好ましくは65~350mgKOH/gであり、更に好ましくは100~300mgKOH/gである。
【0056】
上記顔料分散樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、(無水)マレイン酸系樹脂、スチレン(無水)マレイン酸系樹脂、オレフィン(無水)マレイン酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを使用することができる。中でも、材料選択性の多さや合成の容易さの点で、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することが特に好ましい。また上記の顔料分散樹脂は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。なお本発明において「(無水)マレイン酸」とは、マレイン酸または無水マレイン酸を表す。
【0057】
なお、顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、顔料分散樹脂に水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、インキへの溶解度を上げるため、前記顔料分散樹脂中の酸基を塩基で中和することが好ましい。インクジェットインキのpHが7~11であることが好ましく、7.5~10.0であることがより好ましい。
【0058】
上記の顔料分散樹脂を中和するための塩基としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを挙げることができる。
【0059】
また、顔料分散樹脂の分子量は、重量平均分子量が1,000以上200,000以下の範囲内であることが好ましく、5,000以上100,000以下の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、またインクジェットインキに適用した際の粘度調整などが行いやすい。
【0060】
本発明において、顔料分散樹脂の配合量は、顔料に対して1~50質量%であることが好ましい。顔料分散樹脂の配合量を、顔料に対して1~50質量%とすることで、顔料分散液の粘度を抑え、前記顔料分散液やインクジェットインキの粘度安定性・分散安定性が良化することができるため好ましい。顔料に対する顔料分散樹脂の配合量としてより好ましくは2~45質量%、更に好ましくは3~40質量%であり、最も好ましくは4~35質量%である。
【0061】
本発明で用いられる顔料分散樹脂は、構成単位として、アニオン基を含むビニル単量体由来の構造を含むことが好ましい。なお前記「アニオン基」として、カルボン酸(カルボキシル)基、スルホン酸基、ホスホン酸基等があり、本発明ではいずれを選択してもよい。中でも、水及び水溶性有機溶剤に対する溶解性が確保でき分散安定性に優れることに加え、耐水性・耐アルコール性を向上させることができる観点から、カルボキシル基を選択することが好ましい。
【0062】
アニオン基を含むビニル単量体としては、公知の物を使用することができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリロイルオキシイソ酪酸、メタクリロイルオキシイソ酪酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシエチルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンカルボン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのアニオン基を含むビニル単量体は、単独、あるいは複数使用可能である。
【0063】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤としては、特に限定されるものでなく、既知のものを任意に用いることができるが、前記コアシェル型樹脂エマルジョンや、前記顔料分散樹脂、界面活性剤等の材料成分との相溶性・親和性の観点から、グリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を含有することが好ましい。アルキルポリオール系溶剤としては、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどを挙げることができる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、などのグリコールジアルキルエーテル類などを挙げることができる。
【0064】
これらの水溶性有機溶剤は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。上記水溶性有機溶剤は、インキ全量に対して3質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%であることがより好ましく、8質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量を3質量%以上にすることでインキの保湿性、吐出安定性、印刷基材上での水性インキの濡れ性が良好となる。また水溶性有機溶剤の含有量の合計を40質量%以下にすることで、乾燥性及び混色滲みが良好となり、かつ、耐ブロッキング性が良好な印刷物が得られる。
【0065】
<界面活性剤>
本発明で用いられる水性インクジェットインキは、その表面張力を調整し、フィルム基材上の濡れ性を確保し、印刷画質を向上させる目的で、界面活性剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎると、インクジェットヘッドのノズル面が水性インキで濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と量の選択は重要である。最適な濡れ性の確保と、インクジェットヘッドからの安定吐出の実現という観点から、シロキサン系、アセチレン系、アクリル系、フッ素系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系等の界面活性剤を使用することが好ましく、シロキサン系及び/またはアセチレン系界面活性剤を使用することが特に好ましい。界面活性剤の添加量としては、水性インクジェットインキ全量に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。0.05質量%以上とすることで界面活性剤の機能を十分に発揮することができ、また、5.0質量%以下とすることで、水性インキの保存安定性及び吐出安定性を好適なレベルに維持できる。
【0066】
本発明で用いられる水性インクジェットインキは、基材への密着性向上や、樹脂の常温架橋(ケト基含有の場合)等の目的で、ヒドラジド系添加剤を使用する事ができる。ヒドラジド系添加剤としては、例えば、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0067】
<その他の成分>
本発明の水性インクジェットインキにはその他、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、ワックスなどを適宜に添加することができる。
【0068】
<印刷物>
本発明の水性インクジェットインキは、インクジェット印刷方式によって、基材上に印刷される。その際、1パス印刷方式(ラインプリント方式とも言う)により印刷されることが好適である。1パス印刷方式は、インクジェットヘッドを複数回走査するマルチパス方式に比べて走査回数が少なく、印刷速度を上げることができることから、印刷速度が要求される産業用途に好適である。また、600dpi以上の高い記録解像度において印刷画質の高い印刷物が得られることからも、好適である。なお「記録解像度」はdpi(DotsPerInch)の単位で表されるものであり、1インチあたりに印刷される水性インクジェットインキ液滴の数を表す。また本明細書中における「記録解像度」は、基材の搬送方向における記録解像度、及び前記基材面内で搬送方向に対し垂直方向(以下、記録幅方向とする)における記録解像度の両方を指すものとする。
【0069】
水性インキを1パス印刷方式で印刷する際、水性インキのドロップボリュームは、インクジェットヘッドの性能によるところが大きいが、解像度が高く、発色の優れた印刷物を得るため、0.6~60pLの範囲であることが好ましい。より好ましくは1~50pLであり、特に好ましくは1.4~40pLである。また、高品質の画像を得るために、ドロップボリュームを変化させることができる階調仕様のインクジェットヘッドを使用することが特に好ましい。
【0070】
<基材>
本発明のインキを印刷する基材は、特に限定されるものではなく、既知のものを任意に使用できる。中でも、パッケージ用途では、非浸透性基材または難浸透性基材が好適であり、特に非浸透性基材に対して好適に使用できる。なお本明細書では、記録媒体の浸透性は、動的走査吸液計によって測定される吸水量によって判断するものとする。具体的には、下記方法によって測定される、接触時間100msecにおける純水の吸水量が、1g/m未満である記録媒体を「非浸透性基材」とし、1~10g/mである記録媒体を「難浸透性基材」とする。
【0071】
記録媒体の吸水量は、例えば以下の条件で測定できる。動的走査吸液計として、熊谷理機工業社製KM500winを使用し、23℃・50%RHの条件下、15~20cm角程度にした記録媒体を用いて、以下に示す条件で、純水の転移量を測定する。
・測定方法:螺旋走査(Spiral Method)
・測定開始半径:20mm
・測定終了半径:60mm
・接触時間:10~1,000msec
・サンプリング点数:19(接触時間の平方根に対してほぼ等間隔になるよう測定)
・走査間隔:7mm
・回転テーブルの速度切替角度:86.3度
・ヘッドボックス条件:幅5mm、スリット幅1mm
【0072】
非浸透性基材または難浸透性基材の例として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコールの様なプラスチック基材、コート紙、アート紙、キャスト紙のような塗工紙基材、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタンの様な金属基材、ガラス基材などが挙げられる。
【0073】
上記の基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであってもよいし、透明、半透明、不透明のいずれであってもよい。また、これらの記録媒体の2種以上を互いに張り合わせたものでもよい。更に印字面の反対側に剥離粘着層などを設けてもよく、また印字後、印字面に粘着層などを設けてもよい。また本発明のインクジェット記録方法で使用される記録媒体の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
【0074】
なお、本発明の水性インクジェットインキの濡れ性を向上し、画像品質や乾燥性を向上させ、また、印刷物表面が均一化するため耐擦過性や密着性もまた向上できるため、上記に例示した非浸透性基材または難浸透性基材に対し、コロナ処理やプラズマ処理といった表面改質方法を施すことも好ましい。
【実施例0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態である水性インクジェットインキ用樹脂組成物について、更に具体的に説明する。なお、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0076】
(酸価)
樹脂固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、乾燥させた樹脂について、JISK2501に記載の方法に従い、水酸化カリウム
・エタノール溶液で電位差滴定により算出した。
【0077】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算値であり、樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1%の溶液に調製し、東ソー製HLC-8320-GPC(カラム;TSKgel-SuperMultiporeHZ-M分子量測定範囲約2000~約2000000)により重量平均分子量を測定した。
【0078】
(50%体積平均粒子径)
マイクロトラック・ベル社製 ナノトラックUPA150を用いて、動的光散乱法による粒子分布測定法で測定し、D50の値を平均粒子径とした。
【0079】
<シェルポリマー(B)1の合成例>
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール60.7部を仕込み、攪拌しながら、窒素還流下で温度80℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートを準備し、一方に、スチレン50.0部、メタクリル酸メチル15.5部、ブチルアクリレート6.9部、アクリル酸27.6部を仕込み3時間かけて滴下した。他方にはジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート10.0部をイソプロピルアルコール6.0部に溶解させて仕込み、4時間かけて滴下した。滴下完了後、還流温度で10時間反応を継続した後反応を終了した。更に、室温まで冷却した後、濃度25%のアンモニア水を添加して完全に中和したのち、水を150部添加し、水性化した。その後、100℃に加熱し、イソプロピルアルコールを水と共沸させてイソプロピルアルコールを留去し、固形分濃度が30%になるように調整した。これより、固形分濃度30%の水溶性高分子化合物であるシェルポリマー(B)1を得た。シェルポリマー(B)1のTgは85℃、重量平均分子量は9000、酸価は215mgKOH/gであった。
【0080】
<シェルポリマー(B)2~5の合成例>
表1に示す原料および配合比に変更した以外は、シェルポリマー(B)1と同様に反応することでシェルポリマー(B)2~5を得た。
【0081】
【表1】
【0082】
<シェルポリマー(B)1で被覆されたコアポリマー(A)1を持つコアシェル型樹脂エマルジョン1の合成例>
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、シェルポリマー(B)1 111.1部、イオン交換水55.5部を仕込み、窒素還流下で温度80℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートを準備し、一方に、スチレン25.0部、メタクリル酸メチル73.0部、ダイアセトンアクリルアミド2.0を仕込み2時間かけて滴下した。他方には、濃度20%の過硫酸アンモニウム水溶液1.0部を仕込み2時間かけて滴下した。滴下完了後、80℃で2時間反応を継続した後反応を終了した。次いでイオン交換水で溶液の不揮発分を40%に調整することでシェルポリマー(B)1で被覆されたコアポリマー(A)1を持つコアシェル型樹脂エマルジョン1を得た。コアポリマー(A)1とシェルポリマー(B)1の質量比は75/25、コアポリマー(A)1のTgは103℃、コアシェル型樹脂エマルジョン1の重量平均分子量は530000、50%体積平均粒子径は62nmであった。
【0083】
<コアシェル型樹脂エマルジョン2~21の合成例>
表2に示す原料および配合比に変更した以外はコアシェル型樹脂エマルジョン1と同様に反応することでコアシェル型樹脂エマルジョン2~21を得た。
【0084】
表1及び表2中に記載のモノマーを下記に示す。
・St:スチレン
・MMA:メタクリル酸メチル
・BA:ブチルアクリレート
・AA:アクリル酸
・IB-X:イソボルニルメタクリレート
・DAAM:ダイアセトンアクリルアミド
・DVB:ジビニルベンゼン
【0085】
【表2】
【0086】
<水性インクジェットインキの製造>
<顔料分散樹脂の合成例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール95部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン35部、アクリル酸35部、ベへニルアクリレート30部、及び重合開始剤であるV-601(富士フイルム和光純薬社製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、更に110℃で3時間反応させた後、V-601を0.6部添加し、更に110℃で1時間反応を続けて、顔料分散樹脂の溶液を得た。更に、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを添加して完全に中和したのち、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分濃度が30%になるように調整した。これより、顔料分散樹脂の固形分濃度30%の水性化溶液を得た。顔料分散樹脂の重量平均分子量は28,000、酸価は、273mgKOH/gであった。
【0087】
<顔料分散液(C、M、Y、K)の製造例>
トーヨーカラー社製Lionol Blue 7358G(C.I.PIgment Blue 15:4)を20部、顔料分散樹脂の水性化溶液(固形分濃度30%)を15部、水65部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、顔料分散液C(シアン)を得た。また、上記C.I.PIgment Blue 15:3を、以下に示す顔料にそれぞれ置き換えた以外は顔料分散液Cと同様にして、顔料分散液M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)を得た。
・Magenta:DIC社製FASTGEN SUPER MAGENTA RGT
(C.I.PIgment Red 122)
・Yellow:トーヨーカラー社製LIONOL YELLOW TT-1405G
(C.I.PIgment Yellow 14)
・Black:オリオンエンジニアドカーボンズ社製Printex85
(C.I.PIgment Black 7)
【0088】
<顔料分散液Wの製造例>
石原産業社製CR-90-2(酸化チタン)を40部、顔料分散樹脂の水性化溶液(固形分濃度30%)を30部、水30部を混合し、顔料分散液Cと同様の方法にて分散を行い、顔料分散液Wを得た。
【0089】
<インクジェットインキの製造例>
下記インクジェットインキC記載の材料をディスパーで攪拌を行いながら混合容器へ順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行うことでインキCを得た。また顔料分散液Cの代わりに、顔料分散液M、Y、Kをそれぞれ使用することにより、インキM、インキY、インキKを得た。また、下記インクジェットインキW記載の材料からインキWを得た。合わせて5色からなる各インクジェットインキ1を得た。
インクジェットインキC
顔料分散液C 25.0部
コアシェル型樹脂エマルジョン1(固形分濃度40%) 30.0部
1,2-プロパンジオール 20.0部
サーフィノール 465 1.0部
BYK-349 1.0部
プロキセルGXL 0.05部
イオン交換水 22.95部

インクジェットインキW
顔料分散液W 40.0部
コアシェル型樹脂エマルジョン1(固形分濃度40%) 30.0部
1,2-プロパンジオール 20.0部
サーフィノール 465 1.0部
BYK-349 1.0部
プロキセルGXL 0.05部
イオン交換水 7.95部
・BYK-349:ビッグケミー・ジャパン社製シロキサン系界面活性剤
・サーフィノール465:エアープロダクツ社製アセチレンジオール系界面活性剤
【0090】
<インクジェットインキ2~21の製造例>
表3記載の材料を使用する以外はインクジェットインキ1と同様の方法により、インクジェットインキ2~21を得た。
【0091】
【表3】
【0092】
<印刷物および評価用塗工物の作製例>
得られたインクジェットインキを用いて、印刷物の作製を次のように行った。
【0093】
印刷基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B-1200(京セラ社製、解像度1200dpi、最大駆動周波数64kHz)を設置し、上記で作製したインクジェットインキを上流側から、W(ホワイト)、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の順番に充填した。次いで、前記コンベア上に、フィルム基材を固定したのち、前記コンベヤを50m/分で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、インクジェットインキを吐出し、印刷を行った。なお印刷時のドロップボリュームは、1.5pL~5pLの範囲で、所望の層の厚さとなるように調整した。そして、速やかに、前記印刷物を70℃のエアオーブンに投入し3分間の乾燥を行って評価用印刷物を得た。なお、フィルム基材としてAvery Dennison製OPPフィルムラベルAE406を用いた。
【0094】
[実施例1~17、比較例1~4]
上記で製造した各インクジェットインキ及び評価用印刷物について、以下に示す評価1~6を行った。
【0095】
<評価1:保存安定性>
インクジェットインキについて、70℃、6週間の条件下で、粘度の経時変化によりインキ保存安定性の評価を行った。粘度はレオメーター(TAインスツルメンツ社製AR-2000)を使用して測定した。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:インクジェットインキの粘度変化が±3%未満である
○:インクジェットインキの粘度変化が±3%以上、±5%未満である
△:インクジェットインキの粘度変化が±5%以上、±10%未満である
×:インクジェットインキの粘度変化が±10%以上である
【0096】
<評価2:目詰り回復性>
インクジェットヘッドKJ4B-1200(京セラ社製、解像度1200dpi、最大駆動周波数64kH)にインクジェットインキを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常印刷できることを確認した。その後、キャップを外したまま1週間室温にて静置した。放置後、再び全ノズルよりインクジェットインキを吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでに必要とされたクリーニングの回数を計測した。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:クリーニング0回で全ノズルが復帰した
○:クリーニング1~3回以内で全ノズルが復帰した
△:クリーニング4~9回以内で全ノズルが復帰した
×:10回のクリーニングでも復帰しなかった
【0097】
<評価3:耐水擦過性>
得られた印刷物について、学振型摩擦堅牢度試験機を使用し、塗工面/含水カナキン3号にて500g/cm、20回擦り、塗工層の剥がれた面積の割合から耐水擦過性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:塗工皮膜の剥がれがない
〇:塗工皮膜の剥がれが10%未満である
△:塗工皮膜の剥がれが10%以上50%未満である
×:塗工皮膜の剥がれが50%以上である
【0098】
<評価4:耐アルコール擦過性>
得られた印刷物について、学振型摩擦堅牢度試験機を使用し、塗工面/含水・エタノール混合溶剤(重量比:50/50)カナキン3号にて200g/cm、10回擦り、塗工層の剥がれた面積の割合から耐水擦過性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:塗工皮膜の剥がれがない
〇:塗工皮膜の剥がれが10%未満である
△:塗工皮膜の剥がれが10%以上50%未満である
×:塗工皮膜の剥がれが50%以上である
【0099】
<評価5:耐擦過性>
得られた印刷物について、学振型摩擦堅牢度試験機を使用し、塗工面/カナキン3号にて500g/cm、100回擦り、塗工層の剥がれた面積の割合から耐擦過性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:塗工皮膜の剥がれがない
〇:塗工皮膜の剥がれが10%未満である
△:塗工皮膜の剥がれが10%以上50%未満である
×:塗工皮膜の剥がれが50%以上である
【0100】
<評価6:光沢>
得られた塗工物について、光沢計(BYK Gardner社製 Micro-TRI-gloss)にて60°光沢を測定した。評価基準は以下の通りとし、◎、〇評価を実使用可能領域とした。結果は表3に記載した。
◎:光沢80以上である
○:光沢65以上、80未満である
△:光沢50以上、65未満である
×:光沢50未満である