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特開2024-78168キャリアフィルム付き銅箔、銅箔、銅張積層板およびプリント配線基板
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  • 特開-キャリアフィルム付き銅箔、銅箔、銅張積層板およびプリント配線基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078168
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】キャリアフィルム付き銅箔、銅箔、銅張積層板およびプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240603BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240603BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20240603BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B15/08 J
B32B15/01 D
C23F1/18
C23F1/00 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190563
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】二嶋 悟
(72)【発明者】
【氏名】若林 慶彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4K057
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AB17C
4F100AB31C
4F100AB33C
4F100AB33D
4F100AB40D
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA02B
4F100CB05B
4F100DD07C
4F100DD07D
4F100GB41
4F100JL13B
4F100JN01A
4F100JN01B
4K057WA05
4K057WA12
4K057WB04
4K057WE08
4K057WJ10
4K057WN01
4K057WN02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コスト削減が可能であり、樹脂層との密着性が良好なキャリアフィルム付き銅箔を提供する。
【解決手段】キャリアフィルム付き銅箔は、樹脂基材1、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層2を有するキャリアフィルム11と、上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3と、を有し、上記銅箔の上記キャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材、および前記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムの前記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、
を有し、
前記銅箔の前記キャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、キャリアフィルム付き銅箔。
【請求項2】
前記銅箔が、前記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、銅以外の金属を含む表面層とを有する、請求項1に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
【請求項3】
前記表面層に含まれる前記金属が、セレンである、請求項2に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
【請求項4】
樹脂基材、および前記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムの前記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、
を有し、
前記銅箔が、前記キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有し、
前記銅箔が、前記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、キャリアフィルム付き銅箔。
【請求項5】
前記銅箔の前記キャリアフィルムとは反対側の面における算術平均高さSaが、0.1μm以上0.4μm以下である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
【請求項6】
前記キャリアフィルムが透明性を有する、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
【請求項7】
銅または銅合金を含む銅箔であって、
一方の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅箔。
【請求項8】
他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、銅以外の金属を含む表面層とを有する、請求項7に記載の銅箔。
【請求項9】
前記表面層に含まれる前記金属が、セレンである、請求項8に記載の銅箔。
【請求項10】
銅または銅合金を含む銅箔であって、
一方の面に微細な凹凸を有し、
他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅箔。
【請求項11】
前記一方の面における算術平均高さSaが、0.1μm以上0.4μm以下である、請求項7から請求項10までのいずれかの請求項に記載の銅箔。
【請求項12】
樹脂層と、前記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、
前記銅箔の前記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅張積層板。
【請求項13】
樹脂層と、前記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、
前記銅箔が、前記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、
前記銅箔が、前記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅張積層板。
【請求項14】
樹脂層と、前記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、
前記銅箔の前記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、プリント配線基板。
【請求項15】
樹脂層と、前記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、
前記銅箔が、前記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、
前記銅箔が、前記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、プリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャリアフィルム付き銅箔、銅箔、銅張積層板およびプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化に伴い、各種プリント配線基板の需要が伸びている。プリント配線基板においては、微細回路を形成することが求められている。配線材料としては銅箔が好適に用いられており、上記要求を満たすために、銅箔の厚さを薄くすることが望まれている。
【0003】
一方で、銅箔の厚さを薄くすると、取扱いが困難となる。そこで、キャリアの一方の面に銅箔が配置されたキャリア付き銅箔が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-255462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、キャリア付き銅箔は、高価であるという問題がある。キャリア付き銅箔において、キャリアとしては専ら銅箔が用いられている。取扱い性を良くするために、キャリアである銅箔の厚さは厚くする必要があるが、キャリア自体は剥離され廃棄される部材であるため、コスト上昇を招く。
【0006】
ところで、従来、樹脂層と銅箔とを接着した積層体は、様々な性能に優れるため、電子材料部品、医薬品包装材、飲食品包装材等の各種材料に好適に用いられている。例えば、プリント配線基板においては、樹脂層と銅箔との密着性を高めることによって、信頼性を確保することができる。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コスト削減が可能であり、樹脂層との密着性が良好なキャリアフィルム付き銅箔を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔の上記キャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、キャリアフィルム付き銅箔を提供する。
【0009】
本開示の他の実施形態は、樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、キャリアフィルム付き銅箔を提供する。
【0010】
本開示の他の実施形態は、銅または銅合金を含む銅箔であって、一方の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅箔を提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、銅または銅合金を含む銅箔であって、一方の面に微細な凹凸を有し、他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅箔を提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅張積層板を提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅張積層板を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、プリント配線基板を提供する。
【0015】
本開示の他の実施形態は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、プリント配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示においては、コスト削減が可能であり、樹脂層との密着性が良好なキャリアフィルム付き銅箔を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔を例示する概略断面図である。
図2】本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔の転写方法を例示する工程図である。
図3】本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔を例示する概略断面図である。
図4】本開示における銅張積層板を例示する概略断面図である。
図5】本開示における銅張積層板を例示する概略断面図である。
図6】本開示におけるプリント配線基板を例示する概略断面図である。
図7】本開示におけるプリント配線基板を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0020】
また、本明細書において、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。
【0021】
以下、本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔、銅箔、銅張積層板およびプリント配線基板について、詳細に説明する。
【0022】
A.キャリアフィルム付き銅箔
本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0023】
I.キャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様
本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔は、樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔の上記キャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である。
【0024】
図1は、本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔を例示する概略断面図である。図1におけるキャリアフィルム付き銅箔10は、樹脂基材1、および樹脂基材1の一方の面に配置された粘着層2を有するキャリアフィルム11と、キャリアフィルム11の粘着層2側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3と、を有する。銅箔3のキャリアフィルム11とは反対側の面S1における表面性状のアスペクト比Strは、所定の範囲内である。
【0025】
本実施態様においては、キャリアフィルムとして樹脂基材を用いることにより、コストを削減することが可能である。特に、安価な樹脂基材を用いることにより、コストを大幅に削減することができる。
【0026】
また、本実施態様においては、キャリアフィルムとして樹脂基材を用いることにより、キャリアフィルムを透明にすることもできる。キャリアフィルムが透明性を有する場合、キャリアフィルム付き銅箔において、キャリアフィルム側から観察することで、銅箔のキャリアフィルム側の面の欠陥を検査することができる。よって、歩留まりを高めることができる。
【0027】
なお、従来のキャリア付き銅箔においては、キャリアとして銅箔が用いられることから、銅箔のキャリア側の面の欠陥を確認することは困難である。
【0028】
ここで、表面性状のアスペクト比Strは、表面性状の等方性、異方性を表す。Strは、表面の方向性の強さを数値で表し、0~1で示される。Strが0に近い場合は、表面が方向性を持つことを示し、一般にStr<0.3で異方性(方向性)表面である。一方、Strが1に近い場合は、表面が方向性を持たず、ランダムであることを示し、一般にStr>0.5で等方性表面である。
【0029】
本実施態様においては、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下であることから、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面は、方向性を持たないランダムな凹凸を有するといえる。
【0030】
また、ここで、本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔は、銅箔の転写に用いられる。例えば図2(a)~(b)に示すように、キャリアフィルム付き銅箔10と樹脂層21とを積層した後、キャリアフィルム付き銅箔10からキャリアフィルム11を剥離することによって、樹脂層21の一方の面に銅箔3を転写する。
【0031】
本実施態様においては、上述したように、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面が、ランダムな凹凸を有する。すなわち、銅箔の樹脂層に接する面が、ランダムな凹凸を有することができる。そのため、銅箔の表面の凹凸によるアンカー効果を高めることができる。よって、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることが可能である。
【0032】
以下、本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔の各構成について説明する。
【0033】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、キャリアフィルムの粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む。
【0034】
(1)銅箔の表面性状
本実施態様において、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strは、0.80以上1.00以下であり、0.80以上0.90以下であることが好ましい。上記Strが上記範囲内であることにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0035】
また、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における算術平均高さSaは、例えば、0.10μm以上0.50μm以下であることが好ましく、0.20μm以上0.45μm以下であることがより好ましく、0.25μm以上0.40μm以下であることがさらに好ましい。上記Saが上記範囲内であることにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0036】
なお、StrおよびSaは、ISO 25178に準拠し、共焦点顕微鏡法により測定できる。表面性状測定装置としては、例えば、キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「VK-X250(制御部))および「VK-X260(測定部)」を用いることができる。
【0037】
(2)銅箔の層構成
本実施態様において、銅箔は、銅または銅合金を含む。銅箔は、銅または銅合金を含む銅層を少なくとも有していればよい。
【0038】
中でも、銅箔は、キャリアフィルム側から順に、銅層と、銅以外の金属を含む表面層とを有することが好ましい。本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔は、上述したように、キャリアフィルム付き銅箔を構成する銅箔を、樹脂層に転写するために用いられる。そのため、銅箔が、キャリアフィルムとは反対側の面に、銅以外の金属を含む表面層を有することにより、樹脂層との密着性をさらに高めることができる。
【0039】
また、銅箔は、キャリアフィルム側から順に、銅層と、カップリング剤層とを有していてもよい。上記の場合と同様に、銅箔が、キャリアフィルムとは反対側の面に、カップリング剤層を有することにより、樹脂層との密着性をさらに高めることができる。
【0040】
また、銅箔は、キャリアフィルム側から順に、銅層と、表面層と、カップリング剤層とを有していてもよい。この場合も、樹脂層との密着性をさらに高めることができる。
【0041】
(a)銅層
銅層は、銅または銅合金を含む。銅合金としては、銅箔を製造可能な銅合金であれば特に限定されない。
【0042】
銅層の厚さは、キャリアフィルム付き銅箔の用途等に応じて適宜選択される。銅層の厚さは、例えば、1μm以上20μm以下であり、1.5μm以上12μm以下であってもよく、2μm以上5μm以下であってもよい。銅層の厚さが上記範囲のように薄い場合には、微細な配線の形成に好適である。
【0043】
銅層としては、例えば、圧延銅箔、電解銅箔を用いることができる。
【0044】
(b)表面層
表面層は、銅以外の金属を含む。銅以外の金属としては、銅層と樹脂層との密着性を高めることができる金属であれば特に限定されず、例えば、セレン、ニッケル、モリブデン、亜鉛、クロム等が挙げられる。中でも、セレンが好ましい。セレンは、40℃程度の低温、かつ短時間で、銅表面に皮膜を形成できる。また、セレンは、硫黄と同族元素であり、-2から+6までの酸化数をとることができるため、化学的な表面反応性が高い。
【0045】
ここで、銅箔が表面層を有することは、エネルギー分散型X線分析(EDX)により分析可能である。
【0046】
表面層の形成方法としては、銅層に表面処理を施す方法が挙げられる。表面処理方法としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等のめっき処理;黒染処理等の化成処理;真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法;等が挙げられる。
【0047】
中でも、黒染処理が好ましい。黒染処理の場合、銅層に黒染剤を塗布する、あるいは、銅層を黒染剤に浸漬することにより、表面層を形成することができるため、短時間で表面層を形成可能である。また、銅層の場合、例えば常温で黒染処理を施すことができるので、低温での処理が可能である。さらに、黒染処理を行うことで、上記Strを大きくすることもできる。
【0048】
黒染処理の場合、黒染剤は、セレン化合物を含有することが好ましい。セレンを含む表面層を形成することができる。
【0049】
(c)カップリング剤層
カップリング剤層は、カップリング剤を含む。カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、アクリロキシ系シランカップリング剤、メタクリロキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、クロロプロピル系シランカップリング剤、スルフィド系シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0051】
カップリング剤層の形成方法としては、例えば、銅層の表面に、シランカップリング剤および溶媒を含む溶液を塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0052】
2.キャリアフィルム
本実施態様におけるキャリアフィルムは、樹脂基材と、樹脂基材の一方の面に配置された粘着層とを有する。キャリアフィルムは、銅箔を支持する部材である。
【0053】
(1)樹脂基材
樹脂基材は、粘着層および銅箔を支持する部材である。
【0054】
樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、アラミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0055】
中でも、樹脂基材は、耐熱性樹脂を含有することが好ましい。本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔を構成する銅箔を、樹脂層に転写する際、キャリアフィルム付き銅箔と樹脂層とを加熱および加圧する場合がある。樹脂基材が耐熱性樹脂を含有することにより、加熱加圧による銅箔の転写が可能である。
【0056】
なお、耐熱性樹脂とは、樹脂基材としたときの軟化点が266℃以上である熱可塑性樹脂、あるいは、樹脂基材としたときのガラス転移点が200℃以上である熱硬化性樹脂をいう。すなわち、耐熱性樹脂を含有する樹脂基材は、樹脂基材の軟化点が266℃以上であることが好ましく、あるいは、樹脂基材のガラス転移点が200℃以上であることが好ましい。
【0057】
耐熱性樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材の軟化点は、266℃以上であり、268℃以上であってもよく、270℃以上であってもよい。
【0058】
なお、熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材の軟化点は、JIS K7196:2012(熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法)に準拠し、熱機械分析(TMA)により測定できる。
【0059】
また、耐熱性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂を含有する樹脂基材のガラス転移点は、200℃以上であり、220℃以上であってもよく、320℃以上であってもよい。
【0060】
なお、熱硬化性樹脂を含有する樹脂基材のガラス転移点は、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定できる。
【0061】
耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、アラミド樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂が挙げられる。中でも、シンジオタクチックポリスチレン樹脂が好ましい。シンジオタクチックポリスチレン樹脂は、耐熱性に優れており、さらに安価である。
【0062】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂(syndiotactic polystyrene)は、いわゆるシンジオタクチック構造を有するスチレンポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、すなわち、炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味する。
【0063】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂のタクティシティー(立体規則性)は、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量することができる。13C-NMR法により測定されるシンジオタクチックポリスチレン樹脂のタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば、2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。
【0064】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂は、ラセミダイアッドで75%以上、中でも85%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることが好ましい。また、シンジオタクチックポリスチレン樹脂は、ラセミトリアッドで60%以上、中でも75%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることも好ましい。また、シンジオタクチックポリスチレン樹脂は、ラセミペンタッドで30%以上、中でも50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレンポリマーであることが好ましい。
【0065】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂としてのスチレンポリマーの種類としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体、これらの混合物、またはこれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0066】
ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(ビニ
ルスチレン)等が挙げられる。
【0067】
ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。
【0068】
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
【0069】
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
【0070】
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0071】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂の重量平均分子量は、例えば、好ましくは10,000以上3,000,000以下であり、より好ましくは30,000以上1,500,000以下であり、さらに好ましくは50,000以上500,000以下である。
【0072】
シンジオタクチックポリスチレン樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法によって製造してもよい。
【0073】
また、シンジオタクチックポリスチレン樹脂として、タクティシティー(ラセミダイアッド、ラセミトリアッドまたはラセミペンタッド)、種類、ガラス転移点、融点の少なくともいずれかが異なる2種類以上のシンジオタクチックポリスチレン樹脂を用いてもよい。
【0074】
また、樹脂基材がシンジオタクチックポリスチレン樹脂を含有する場合、シンジオタクチックポリスチレン樹脂以外に、他のポリマーを含有してもよい。
【0075】
他の樹脂としては、例えば、上記シンジオタクチックポリスチレン樹脂以外のポリスチレン樹脂、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等のポリスチレン系合成ゴム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンサルファイト;ポリアリレート;ポリエーテルサルホン;ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0076】
上記シンジオタクチックポリスチレン樹脂以外のポリスチレン樹脂とは、いわゆるアイソタクチックポリスチレン系樹脂およびアタクチックポリスチレン系樹脂を包含して意味する。
【0077】
樹脂基材中のシンジオタクチックポリスチレン樹脂の含有量は、耐熱性のさらなる向上の観点から、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0078】
樹脂基材は、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0079】
中でも、樹脂基材がシンジオタクチックポリスチレン樹脂を含有する場合、酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0080】
酸化防止剤としては、樹脂基材の黄変防止を目的として使用される酸化防止剤を用いることができる。例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
フェノール系酸化防止剤は、フェノール骨格を含有する有機化合物であり、一般的にフェノール系酸化防止剤として使用されているフェノール骨格含有有機化合物を用いることができる。フェノール系酸化防止剤は、市販品を用いてもよい。
【0082】
リン系酸化防止剤は、リン原子を含有する有機化合物であり、一般的にリン系酸化防止剤として使用されているリン原子含有有機化合物を用いることができる。リン系酸化防止剤は、市販品を用いてもよい。
【0083】
硫黄系酸化防止剤は、硫黄原子を含有する有機化合物であり、一般的に硫黄系酸化防止剤として使用されている硫黄原子含有有機化合物を用いることができる。硫黄系酸化防止剤は、市販品を用いてもよい。
【0084】
酸化防止剤の含有量は、耐熱性の観点から、シンジオタクチックポリスチレン樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましい。
【0085】
耐熱性のさらなる向上の観点からは、酸化防止剤は、少なくともフェノール系酸化防止剤を含むことが好ましく、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤の少なくともいずれか一方とを含むことがより好ましく、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤とを含むことがさらに好ましい。この場合、各酸化防止剤の含有量はそれぞれ、シンジオタクチックポリスチレン樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましく、0.02質量部以上1.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0086】
樹脂基材は、透明性を有することが好ましい。樹脂基材が透明性を有する場合、キャリアフィルム付き銅箔において、樹脂基材側から観察することで、銅箔の樹脂基材側の面の欠陥を検査することができる。よって、歩留まりを高めることができる。
【0087】
樹脂基材が透明性を有する場合、樹脂基材の全光線透過率は、例えば、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0088】
なお、樹脂基材の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。
【0089】
樹脂基材がシンジオタクチックポリスチレン樹脂を含有する場合、樹脂基材は二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸を行うことにより、MD方向およびTD方向における、機械的強度や熱収縮率のバランスに優れる樹脂基材を得ることができる。また、二軸延伸を行うことで、耐熱性を高めることができる。
【0090】
樹脂基材の厚さは、例えば、25μm以上250μm以下であることが好ましく、25μm以上100μm以下であることがより好ましく、25μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。樹脂基材の厚さが薄すぎると、キャリアフィルム付き銅箔の取扱い性が損なわれたり、キャリアフィルム付き銅箔からキャリアフィルムを剥離するのが困難になったりする可能性がある。また、樹脂基材の厚さが厚すぎても、キャリアフィルム付き銅箔からキャリアフィルムを剥離するのが困難になる可能性がある。さらに、樹脂基材の厚さが厚すぎると、樹脂基材の透明性が低下する可能性がある。
【0091】
(2)粘着層
本実施態様における粘着層は、樹脂基材と銅箔との間に配置される部材である。本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔を構成する銅箔を、樹脂層に転写する際、粘着層と銅箔との界面で剥離する。
【0092】
粘着層は、樹脂基材および銅箔を密着させることができ、かつ、再剥離性を有する粘着層であれば特に限定されない。
【0093】
中でも、粘着層は、耐熱性を有することが好ましい。本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔を構成する銅箔を、樹脂層に転写する際、キャリアフィルム付き銅箔と樹脂層とを加熱および加圧する場合がある。粘着層が耐熱性を有することにより、加熱加圧による銅箔の転写が可能である。
【0094】
粘着層に使用される粘着剤としては、再剥離性、耐熱性、透明性等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。すなわち、粘着層は、主剤であるアクリルポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物の架橋物を含有することが好ましい。
【0095】
アクリルポリマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0096】
アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。中でも、水酸基を含有する共重合可能なモノマーは、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0098】
アクリルポリマーにおいて、水酸基を含有する共重合可能なモノマーの含有量は、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、0.1質量部以上8.0質量部以下であることが好ましい。また、水酸基を含有する共重合可能なモノマーのうち、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの合計含有量は、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、1質量部未満であることが好ましく、0質量部以上0.9質量部以下であることが好ましい。
【0099】
カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、および2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0100】
アクリルポリマーにおいて、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーの含有量は、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、0.35質量部以上1.0質量部以下であることが好ましく、0.35質量部以上0.6質量部以下であることが好ましい。
【0101】
アクリルポリマーは、共重合体を構成するモノマーとして、さらにポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことができる。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、主剤ポリマーに共重合することができる。他の水酸基は、OHのままでもよく、メチルエーテルやエチルエーテル等のアルキルエーテルや、酢酸エステル等の飽和カルボン酸エステル等となっていてもよい。
【0102】
ポリアルキレングリコールの有するアルキレン基としては、特に限定されず、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられ、該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
【0103】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、およびエトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【0104】
具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート;エトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0105】
アクリルポリマーにおいて、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの含有量は、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、1質量以上20質量部以下であることが好ましい。
【0106】
アクリルポリマーは、共重合体を構成するモノマーとして、さらに窒素含有ビニルモノマーを含むことができる。窒素含有ビニルモノマーとしては、アミド結合を含有するビニルモノマー、アミノ基を含有するビニルモノマー、窒素含有の複素環式構造を有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0107】
具体的には、窒素含有ビニルモノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム等の、N-ビニル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼチジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン等の、N-(メタ)アクリロイル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等の、窒素原子及びエチレン系不飽和結合を環内に有する複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等の無置換又はモノアルキル置換の(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の、(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸ニトリル類;等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
窒素含有ビニルモノマーは、水酸基を含有しないことが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を含有しないことがより好ましい。このような窒素含有ビニルモノマーとしては、上述の窒素含有ビニルモノマー、例えば、N,N-ジアルキル置換アミノ基やN,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドン等のN-ビニル置換ラクタム類;N-(メタ)アクリロイルモルホリンやN-(メタ)アクリロイルピロリジンなどのN-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0109】
アクリルポリマーは、共重合体を構成するモノマーとして、さらにアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことができる。アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート、4-プロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-イソプロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-ブトキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の原子がアルコキシ基で置換された構造を有する。
【0110】
アクリルポリマーにおいて、水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アルキル基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0111】
架橋剤としては、一般にアクリル系粘着剤に用いられる架橋剤を使用することができる。中でも、架橋剤は、イソシアネート化合物であることが好ましい。イソシアネート化合物としては、脂肪族系イソシアネート化合物、芳香族系イソシアネート化合物、非環式系イソシアネート化合物、脂環式系イソシアネート化合物のいずれも用いることができる。
【0112】
また、イソシアネート化合物は、1分子中に、2個以上のイソシアネート基を有することが好ましく、3個以上のイソシアネート基を有することがより好ましい。
【0113】
イソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
【0114】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類(1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)等が挙げられる。
【0115】
また、イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、およびイソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる、第1の脂肪族系イソシアネート化合物群から選択される一種以上と、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、および水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体からなる、第2の芳香族系イソシアネート化合物群から選択される一種以上とを含むことが好ましい。第1の脂肪族系イソシアネート化合物群と、第2の芳香族系イソシアネート化合物群とを併用することにより、剥離速度による粘着力の変化を少なくすることができる。
【0116】
また、イソシアネート化合物は、第1の脂肪族系イソシアネート化合物群の中から選択される一種以上と、第2の芳香族系イソシアネート化合物群の中から選択される一種以上とを含み、アクリルポリマー100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下含まれることが好ましい。また、第1の脂肪族系イソシアネート化合物群の中から選択される一種以上と、第2の芳香族系イソシアネート化合物群の中から選択される一種以上との混合比率は、質量比で、10%:90%~90%:10%の範囲内であることが好ましい。
【0117】
粘着剤組成物は、架橋遅延剤を含有してもよい。架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性化合物であり、イソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
【0118】
架橋遅延剤は、ケトエノール互変異性化合物であることが好ましく、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択される一種以上であることが好ましい。
【0119】
粘着剤組成物において、架橋遅延剤の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、1.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0120】
粘着剤組成物は、架橋触媒を含有してもよい。架橋触媒は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、アクリルポリマーと架橋剤との架橋反応に対して触媒として機能する物質であればよい。架橋触媒としては、第三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0121】
第三級アミンとしては、トリアルキルアミン、N,N,N’,N’-テトラアルキルジアミン、N,N-ジアルキルアミノアルコール、トリエチレンジアミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。
【0122】
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。
【0123】
架橋触媒は、有機錫化合物であることが好ましく、特にジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレートからなる化合物群の中から選択される一種以上であることが好ましい。
【0124】
粘着剤組成物において、架橋触媒の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
【0125】
粘着剤組成物は、ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してもよい。ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着力および再剥離性を良くすることができる。ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
【0126】
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が7以上12以下であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。HLBとは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0127】
粘着剤組成物において、ポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量は、アクリルポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
【0128】
粘着剤組成物は、ポリエーテル化合物を含有してもよい。ポリエーテル化合物としては、ポリアルキレンオキサイド基を有する化合物であり、ポリアルキレングリコール等のポリエーテルポリオールやこれらの誘導体が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド基に含まれるアルキレン基としては、特に限定されず、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
【0129】
ポリアルキレングリコールの誘導体としては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルやポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルやポリオキシアルキレンジアルケニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアリールエーテルやポリオキシアルキレンジアリールエーテル等のポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノ脂肪酸エステルやポリオキシアルキレングリコールジ脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。
【0130】
ここで、ポリアルキレングリコール誘導体におけるアルキルエーテルとしては、メチルエーテルやエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、ラウリルエーテルやステアリルエーテル等の高級アルキルエーテルが挙げられる。ポリアルキレングリコール誘導体におけるアルケニルエーテルとしては、ビニルエーテル、アリルエーテル、オレイルエーテル等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール誘導体における脂肪酸エステルとしては、酢酸エステルやステアリン酸エステル等の飽和脂肪酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルやオレイン酸エステル等の不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。
【0131】
ポリエーテル化合物は、エチレンオキシド基を含有する化合物であることが好ましく、ポリエチレンオキシド基を含有する化合物であることが好ましい。
【0132】
ポリエーテル化合物が、重合性官能基を有する場合、(メタ)アクリルポリマーと共重合させることもできる。重合性官能基は、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等のビニル性官能基であることが好ましい。重合性官能基を有するポリエーテル化合物としては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、ポリアルキレングリコールジアリルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールアリルエーテル、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、アルコキシポリアルキレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0133】
粘着剤組成物は、必要に応じて、アルキレンオキサイドを含有する共重合可能な(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ジアルキル置換アクリルアミドモノマー、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。また、イオン性のアクリルモノマーを主剤の共重合体に共重合させることによって、帯電防止性能を付与することもできる。
【0135】
アクリルポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルモノマーや(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド類等のアクリルモノマーの含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0136】
また、アクリルポリマーの酸価は、0.01以上9.0以下であることが好ましい。これにより、糊残りを効果的に抑制することができる。
【0137】
ここで、「酸価」とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有するポリマー1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0138】
粘着層の厚さは、例えば、3μm以上20μm以下であることが好ましく、4μm以上15μm以下であることがより好ましく、5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。粘着層の厚さが薄すぎると、樹脂基材と銅箔との密着性が低下する可能性がある。また、粘着層の厚さが厚すぎると、再剥離性が低下する可能性がある。
【0139】
(3)キャリアフィルムの物性
キャリアフィルムは、透明性を有することが好ましい。キャリアフィルムが透明性を有する場合、キャリアフィルム付き銅箔において、キャリアフィルム側から観察することで、銅箔のキャリアフィルム側の面の欠陥を検査することができる。よって、歩留まりを高めることができる。
【0140】
キャリアフィルムが透明性を有する場合、キャリアフィルムの全光線透過率は、例えば、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0141】
なお、キャリアフィルムの全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定することができる。
【0142】
3.キャリアフィルム付き銅箔の製造方法
本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔の製造方法は、例えば、キャリアフィルムの粘着層側の面に銅層を配置する配置工程と、銅層をエッチングすることにより、銅層の厚さを薄くするエッチング工程と、を有することができる。エッチングによって銅層の厚さを薄くすることにより、銅層の厚さを、微細な配線の形成に適した厚さとすることができる。さらに、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面におけるStrを所定の範囲内にすることができる。
【0143】
配置工程においては、粘着層によってキャリアフィルムと銅層とを貼り合わせることができる。この際、銅層としては、厚さの厚い電解銅箔や圧延銅箔を用いることができる。
【0144】
エッチング工程において、銅層のエッチング方法としては、一般的な銅箔のエッチング方法を用いることができる。
【0145】
また、エッチング工程後に、銅層にエッチングによる粗化処理を施す粗化処理工程をさらに行ってもよい。これにより、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面におけるStrを所定の範囲内にすることもできる。粗化処理工程において、銅層のエッチング方法としては、一般的な銅箔のエッチング方法を用いることができる。例えば、エッチング液の濃度や温度を調整することにより、表面性状を制御できる。
【0146】
エッチング工程後に、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面に表面層を形成する表面層形成工程や、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面にカップリング剤層を形成するカップリング剤層形成工程を行ってもよい。表面層の形成方法およびカップリング剤層の形成方法は、上述したとおりである。
【0147】
II.キャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様
本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔は、樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0148】
図3は、本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔を例示する概略断面図である。図1におけるキャリアフィルム付き銅箔10は、樹脂基材1、および樹脂基材1の一方の面に配置された粘着層2を有するキャリアフィルム11と、キャリアフィルム11の粘着層2側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3と、を有する。銅箔3は、キャリアフィルム11とは反対側の面S1に微細な凹凸を有する。また、銅箔3は、キャリアフィルム11側から順に、銅または銅合金を含む銅層3aと、セレンを含む表面層3bとを有する。
【0149】
本実施態様においては、キャリアフィルムとして樹脂基材を用いることにより、コストを削減することが可能である。特に、安価な樹脂基材を用いることにより、コストを大幅に削減することができる。
【0150】
また、本実施態様においては、キャリアフィルムとして樹脂基材を用いることにより、キャリアフィルムを透明にすることもできる。キャリアフィルムが透明性を有する場合、キャリアフィルム付き銅箔において、キャリアフィルム側から観察することで、銅箔のキャリアフィルム側の面の欠陥を検査することができる。よって、歩留まりを高めることができる。
【0151】
また、本実施態様においては、銅箔が、キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有しており、セレンを含む表面層を有することにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることが可能である。なお、セレンを含む表面層による、銅箔と樹脂層との密着性向上の効果については、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様の項に記載した内容と同様である。
【0152】
以下、本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔の各構成について説明する。
【0153】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有し、キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0154】
(1)銅箔の表面性状
本実施態様において、銅箔は、キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有する。銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における算術平均高さSaについては、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における銅箔と同様である。
【0155】
(2)銅箔の層構成
銅箔は、キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0156】
(a)銅層
銅層は、銅または銅合金を含む。銅層については、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における銅層と同様である。
【0157】
(b)表面層
表面層は、セレンを含む。
【0158】
ここで、銅箔がセレンを含む表面層を有することは、エネルギー分散型X線分析(EDX)により確認することができる。
【0159】
セレンを含む表面層の形成方法としては、黒染処理が好ましく用いられる。黒染処理については、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における表面層の形成方法と同様である。
【0160】
(c)カップリング剤層
銅箔は、キャリアフィルム側から順に、銅層と、表面層と、カップリング剤層とを有していてもよい。樹脂層との密着性をさらに高めることができる。
【0161】
カップリング剤層については、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様におけるカップリング剤層と同様である。
【0162】
2.キャリアフィルム
キャリアフィルムについては、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様におけるキャリアフィルムと同様である。
【0163】
3.キャリアフィルム付き銅箔の製造方法
本実施態様のキャリアフィルム付き銅箔の製造方法は、例えば、キャリアフィルムの粘着層側の面に銅層を配置する配置工程と、銅層をエッチングすることにより、銅層の厚さを薄くするエッチング工程と、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面に表面層を形成する表面層形成工程と、を有することができる。エッチングによって銅層の厚さを薄くすることにより、銅層の厚さを、微細な配線の形成に適した厚さとすることができる。さらに、銅層のキャリアフィルムとは反対側の面に、微細な凹凸を形成することができる。
【0164】
また、エッチング工程と表面層形成工程との間に、銅層にエッチングによる粗化処理を施す粗化処理工程をさらに行ってもよい。
【0165】
また、表面層形成工程後に、表面層の銅層とは反対側の面にカップリング剤層を形成するカップリング剤層形成工程を行ってもよい。
【0166】
配置工程、エッチング工程、粗化処理工程、表面層形成工程、およびカップリング剤層形成工程については、上記のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様におけるキャリアフィルム付き銅箔の製造方法と同様である。
【0167】
B.銅箔
本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0168】
I.銅箔の第1実施態様
本実施態様の銅箔は、銅または銅合金を含む銅箔であって、一方の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である。
【0169】
本実施態様の銅箔においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様の項に記載したように、一方の面における表面性状のアスペクト比Strが所定の範囲内であることにより、樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0170】
銅箔については、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における銅箔と同様である。
【0171】
II.銅箔の第2実施態様
本実施態様の銅箔は、銅または銅合金を含む銅箔であって、一方の面に微細な凹凸を有し、他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0172】
本実施態様の銅箔においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様の項に記載したように、一方の面に微細な凹凸を有し、セレンを含む表面層が配置されていることにより、樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0173】
銅箔については、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様における銅箔と同様である。
【0174】
C.銅張積層板
本開示における銅張積層板は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0175】
I.銅張積層板の第1実施態様
本実施態様の銅張積層板は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である。
【0176】
図4(a)、(b)は、本実施態様の銅張積層板を例示する概略断面図である。図4(a)に示す銅張積層板30は、樹脂層31と、樹脂層31の片面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3とを有する。銅箔3の樹脂層31側の面における表面性状のアスペクト比Strは、所定の範囲内である。図4(b)に示す銅張積層板30は、樹脂層31と、樹脂層31の両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3とを有する。銅箔3の樹脂層31側の面における表面性状のアスペクト比Strは、所定の範囲内である。
【0177】
本実施態様の銅張積層板においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様の項に記載したように、銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが所定の範囲内であることにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0178】
以下、本実施態様の銅張積層板の各構成について説明する。
【0179】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、銅または銅合金を含む。また、銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strは、0.80以上1.00以下である。
【0180】
銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strについては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strと同様である。
【0181】
また、銅箔についても、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における銅箔と同様である。
【0182】
銅箔は、樹脂層の片面に配置されていてもよく、樹脂層の両面に配置されていてもよい。銅箔は、樹脂層と接していることが好ましい。
【0183】
2.樹脂層
樹脂層としては、複数のプリプレグを積層してなる積層体が挙げられる。プリプレグは、繊維を含有する基材に樹脂を含浸させた複合材料である。プリプレグとしては、一般に銅張積層板に用いられるプリプレグを使用できる。
【0184】
3.銅張積層板
本実施態様の銅張積層板は、樹脂層と、樹脂層の片面または両面に配置された銅箔とを有していればよく、銅張積層板の層構成としては、公知の層構成を適用することができる。
【0185】
銅張積層板の製造方法は、銅張積層板の層構成に応じて適宜選択される。
【0186】
例えば、上述のキャリアフィルム付き銅箔を用いて、プリプレグの積層体である樹脂層の片面または両面に銅箔を転写することにより、銅張積層体を製造することができる。
【0187】
II.銅張積層板の第2実施態様
本実施態様の銅張積層板は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0188】
図5(a)、(b)は、本実施態様の銅張積層板を例示する概略断面図である。図5(a)に示す銅張積層板30は、樹脂層31と、樹脂層31の片面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3とを有する。銅箔3は、樹脂層31側の面に微細な凹凸を有しており、樹脂層31とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層3aと、セレンを含む表面層3bとを有する。図5(b)に示す銅張積層板30は、樹脂層31と、樹脂層31の両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔3とを有する。銅箔3は、樹脂層31側の面に微細な凹凸を有しており、樹脂層31とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層3aと、セレンを含む表面層3bとを有する。
【0189】
本実施態様の銅張積層板においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様の項に記載したように、銅箔が、樹脂層側の面に微細な凹凸を有しており、セレンを含む表面層を有することにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0190】
以下、本実施態様の銅張積層板の各構成について説明する。
【0191】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、銅または銅合金を含む。また、銅箔は、樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0192】
銅箔については、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様における銅箔と同様である。
【0193】
銅箔は、樹脂層の片面に配置されていてもよく、樹脂層の両面に配置されていてもよい。銅箔は、樹脂層と接していることが好ましい。
【0194】
2.樹脂層
樹脂層については、上記の銅張積層板の第1実施態様における樹脂層と同様である。
【0195】
3.銅張積層板
本実施態様の銅張積層板の層構成、製造方法については、上記の銅張積層板の第1実施態様と同様である。
【0196】
D.プリント配線基板
本開示におけるプリント配線基板は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0197】
I.プリント配線基板の第1実施態様
本実施態様のプリント配線基板は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である。
【0198】
図6(a)、(b)は、本実施態様のプリント配線基板を例示する概略断面図である。図6(a)に示すプリント配線基板40は、樹脂層41と、樹脂層41の片面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔3とを有する。銅箔3の樹脂層41側の面における表面性状のアスペクト比Strは、所定の範囲内である。図6(b)に示すプリント配線基板40は、樹脂層41と、樹脂層41の両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔3とを有する。銅箔3の樹脂層41側の面における表面性状のアスペクト比Strは、所定の範囲内である。
【0199】
本実施態様のプリント配線基板においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様の項に記載したように、銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが所定の範囲内であることにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0200】
以下、本実施態様のプリント配線基板の各構成について説明する。
【0201】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、銅または銅合金を含み、パターン状である。また、銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strは、0.80以上1.00以下である。
【0202】
銅箔の樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strについては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における、銅箔のキャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strと同様である。
【0203】
また、銅箔についても、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第1実施態様における銅箔と同様である。
【0204】
銅箔は、樹脂層の片面に配置されていてもよく、樹脂層の両面に配置されていてもよい。銅箔は、樹脂層と接していることが好ましい。
【0205】
2.樹脂層
樹脂層としては、プリプレグが挙げられる。プリプレグは、繊維を含有する基材に樹脂を含浸させた複合材料である。プリプレグとしては、一般にプリント配線基板に用いられるプリプレグを使用することができる。
【0206】
また、樹脂層は、樹脂フィルムであってもよい。樹脂フィルムは、絶縁性樹脂を含有することが好ましい。絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0207】
また、樹脂層は、絶縁性を向上する等の観点から、シリカ、アルミナ等の無機フィラーを含有してもよい。
【0208】
樹脂層は、複数の層で構成されていてよい。
【0209】
樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上1000μm以下であり、2μm以上400μm以下であってもよく、3μm以上200μm以下であってもよい。
【0210】
3.プリント配線基板
本実施態様のプリント配線基板は、樹脂層と、樹脂層の片面または両面に配置されたパターン状の銅箔とを有していればよく、プリント配線基板の層構成としては、公知の層構成を適用することができる。
【0211】
プリント配線基板としては、片面または両面プリント配線基板、多層プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板等が挙げられる。また、プリント配線基板は、ビルドアップ配線基板であってもよい。
【0212】
プリント配線基板の製造方法は、プリント配線基板の層構成に応じて適宜選択される。
【0213】
例えば、上述のキャリアフィルム付き銅箔を用いて、プリプレグである樹脂層の片面または両面に銅箔を転写して銅張積層板を作製した後、銅箔をパターニングして回路を形成することにより、片面または両面プリント配線基板を製造することができる。
【0214】
また、上記の片面または両面プリント配線基板を多層化することによって、多層プリント配線基板を製造することができる。
【0215】
また、例えば、上述のキャリアフィルム付き銅箔を用いて、樹脂フィルムの片面に銅箔を転写した後、銅箔をパターニングして回路を形成することにより、フレキシブルプリント配線基板を製造することができる。
【0216】
また、ビルドアップ配線基板の製造方法は、特に限定されないが、ディファイド・セミアディティブ(MSAP)法であることが好ましい。MSAP法は、微細配線形成に適している。
【0217】
II.プリント配線基板の第2実施態様
本実施態様のプリント配線基板は、樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0218】
図7(a)、(b)は、本実施態様のプリント配線基板を例示する概略断面図である。図7(a)に示すプリント配線基板40は、樹脂層41と、樹脂層41の片面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔3とを有する。銅箔3は、樹脂層41側の面に微細な凹凸を有しており、樹脂層31とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層3aと、セレンを含む表面層3bとを有する。図7(b)に示すプリント配線基板40は、樹脂層41と、樹脂層41の両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔3とを有する。銅箔3は、樹脂層41側の面に微細な凹凸を有しており、樹脂層31とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層3aと、セレンを含む表面層3bとを有する。
【0219】
本実施態様のプリント配線基板においては、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様の項に記載したように、銅箔が、樹脂層側の面に微細な凹凸を有しており、セレンを含む表面層を有することにより、銅箔と樹脂層との密着性を良好にすることができる。
【0220】
以下、本実施態様のプリント配線基板の各構成について説明する。
【0221】
1.銅箔
本実施態様における銅箔は、銅または銅合金を含み、パターン状である。また、銅箔は、樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する。
【0222】
銅箔については、上述のキャリアフィルム付き銅箔の第2実施態様における銅箔と同様である。
【0223】
銅箔は、樹脂層の片面に配置されていてもよく、樹脂層の両面に配置されていてもよい。銅箔は、樹脂層と接していることが好ましい。
【0224】
2.樹脂層
樹脂層については、上記のプリント配線基板の第1実施態様における樹脂層と同様である。
【0225】
3.プリント配線基板
本実施態様のプリント配線基板の層構成、種類、製造方法については、上記のプリント配線基板の第1実施態様と同様である。
【0226】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0227】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0228】
[実施例1]
キャリアフィルムとして、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)を含有する、厚さ25μmのポリスチレンフィルム(倉敷紡績社製「Oidys」耐熱グレードNHL)と、厚さ10μmの粘着層と、剥離フィルムとをこの順に有する、粘着フィルム(藤森工業社製「GP3500KO」)を用いた。上記キャリアフィルムの粘着層上に、厚さ8μmの銅箔(古河電工社製「NC-WS」)を貼合した。次いで、塩化第二鉄ベースのエッチング液を用いて、銅箔の厚さが3μmになるまで、銅箔をエッチングした。これにより、キャリアフィルム付き銅箔を得た。
【0229】
[実施例2]
銅箔のエッチング後に、塩化第二鉄溶液を用い、塩化第二鉄溶液の比重を8Bh、温度を35℃とし、銅箔を粗化処理したこと以外は、実施例1と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0230】
[実施例3]
銅箔のエッチング後に、塩化第二鉄溶液を用い、塩化第二鉄溶液の比重を16Bh、温度を35℃とし、銅箔を粗化処理したこと以外は、実施例1と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0231】
[実施例4]
銅箔のエッチング後に、塩化第二鉄溶液を用い、塩化第二鉄溶液の比重を21Bh、温度を40℃とし、銅箔を粗化処理したこと以外は、実施例1と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0232】
[実施例5]
銅箔のエッチング後に、塩化第二鉄溶液を用い、塩化第二鉄溶液の比重を23Bh、温度を40℃とし、銅箔を粗化処理したこと以外は、実施例1と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0233】
[実施例6]
銅箔のエッチング後に、塩化第二鉄溶液を用い、塩化第二鉄溶液の比重を20Bh、温度を40℃とし、銅箔を粗化処理したこと以外は、実施例1と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0234】
[実施例7]
銅箔の粗化処理後、黒染処理およびシランカップリング剤処理を順に行ったこと以外は、実施例6と同様にして、キャリアフィルム付き銅箔を作製した。
【0235】
黒染処理では、東美化学社製の黒染剤「ブラッキーC N-20」を用いた。この黒染剤は、亜セレン酸、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、精製水を含む、常温黒染剤である。また、シランカップリング剤処理では、JX金属社製のシランカップリング剤「IS-1」を用いた。
【0236】
[比較例1]
DOWAメタルテック社製の厚さ150μmの圧延銅箔「C-7035-ESH」を用いた。
【0237】
[比較例2]
福田金属箔粉工業社製の厚さ15μmの銅箔「LB9」を用いた。
【0238】
[比較例3]
福田金属箔粉工業社製の厚さ12μmの銅箔「FLEQ HD2」を用いた。銅箔の粗化処理面に対して評価した。
【0239】
[評価]
(1)StrおよびSa
銅箔の表面について、キーエンス社製の形状解析レーザ顕微鏡「VK-X250(制御部))および「VK-X260(測定部)」を用いて、ISO 25178に準拠し、共焦点顕微鏡法により、StrおよびSaを測定した。
【0240】
(2)密着性
銅箔と樹脂層との密着性の指標として、銅箔とプリプレグとの間の剥離強度を測定した。プリプレグは、三菱ガス化学社製「GHPL-830 SQ73」を用いた。
【0241】
実施例のキャリアフィルム付き銅箔については、まず、キャリアフィルム付き銅箔とプリプレグとを重ね合わせ、真空加熱プレスを行った。その後、キャリアフィルム付き金属箔とプリプレグとの積層体から、キャリアフィルムを剥離することによって、プリプレグの一方の面に銅箔を転写した。次に、感光性樹脂(ドライフィルム)を貼合し、露光および現像し、銅箔をエッチングした後に、感光性樹脂を剥離して、1mm幅のパターンを形成した。次に、電解メッキにより、12μmの厚さまで銅箔をメッキアップした。これにより、試験片を得た。
【0242】
比較例の銅箔については、まず、銅箔とプリプレグとを重ね合わせ、真空加熱プレスを行った。次に、上記と同様にして、銅箔を1mm幅にパターニングした。これにより、試験片を得た。
【0243】
万能引張試験機(オリエンテック社製「RTC-1250A」)を用い、剥離速度50mm/sec、剥離角度180°、剥離長さ80mmの条件で引張試験を行い、銅箔とプリプレグとの間の剥離強度を測定した。
【0244】
【表1】
【0245】
表1より、Strが所定の範囲内である場合、銅箔とプリプレグとの間の剥離強度が大きくなった。これにより、Strが所定の範囲内であることにより、銅箔と樹脂層との密着性が向上することが示唆された。
【0246】
また、実施例7では、実施例1~6よりも剥離強度が大きくなった。これにより、銅箔が、セレンを含む表面層を有する場合、銅箔と樹脂層との密着性がさらに向上することが示唆された。
【0247】
以上より、本開示におけるキャリアフィルム付き銅箔は、従来のような高価なキャリア箔付き銅箔の代替として、利用可能であり、コスト削減が可能であることが示唆された。
【0248】
本開示は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1]樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、
上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、
を有し、
上記銅箔の上記キャリアフィルムとは反対側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、キャリアフィルム付き銅箔。
[2]上記銅箔が、上記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、銅以外の金属を含む表面層とを有する、[1]に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
[3]上記表面層に含まれる上記金属が、セレンである、[2]に記載のキャリアフィルム付き銅箔。
[4]樹脂基材、および上記樹脂基材の一方の面に配置された粘着層を有するキャリアフィルムと、
上記キャリアフィルムの上記粘着層側の面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、
を有し、
上記銅箔が、上記キャリアフィルムとは反対側の面に微細な凹凸を有し、
上記銅箔が、上記キャリアフィルム側から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、キャリアフィルム付き銅箔。
[5]上記銅箔の上記キャリアフィルムとは反対側の面における算術平均高さSaが、0.1μm以上0.4μm以下である、[1]から[4]までのいずれかに記載のキャリアフィルム付き銅箔。
[6]上記キャリアフィルムが透明性を有する、[1]から[5]までのいずれかに記載のキャリアフィルム付き銅箔。
[7]銅または銅合金を含む銅箔であって、
一方の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅箔。
[8]他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、銅以外の金属を含む表面層とを有する、[7]に記載の銅箔。
[9]上記表面層に含まれる上記金属が、セレンである、[8]に記載の銅箔。
[10]銅または銅合金を含む銅箔であって、
一方の面に微細な凹凸を有し、
他方の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅箔。
[11]上記一方の面における算術平均高さSaが、0.1μm以上0.4μm以下である、[7]から[10]までのいずれかに記載の銅箔。
[12]樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、
上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、銅張積層板。
[13]樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含む銅箔と、を有し、
上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、
上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、銅張積層板。
[14]樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、
上記銅箔の上記樹脂層側の面における表面性状のアスペクト比Strが、0.80以上1.00以下である、プリント配線基板。
[15]樹脂層と、上記樹脂層の片面または両面に配置され、銅または銅合金を含み、パターン状の銅箔と、を有し、
上記銅箔が、上記樹脂層側の面に微細な凹凸を有し、
上記銅箔が、上記樹脂層とは反対側の面から順に、銅または銅合金を含む銅層と、セレンを含む表面層とを有する、プリント配線基板。
【符号の説明】
【0249】
1 … 樹脂基材
2 … 粘着層
3 … 銅箔
3a … 銅層
3b … 表面層
10 … キャリアフィルム付き銅箔
11 … キャリアフィルム
21、31 … 樹脂層
30 … 銅張積層板
40 … プリント配線基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7