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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078174
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
F04D29/44 D
F04D29/44 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190570
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 弘一
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA66A
3H130CA10
3H130CB01
3H130EA07A
3H130EB01A
3H130ED01A
(57)【要約】
【課題】ポンプ装置の戻り流を抑え、これによりポンプ装置の動力損失を軽減する。
【解決手段】吸込口と、吐出口と、羽根車と、ケーシングと、を備え、前記ケーシング内には、該ケーシング内の液流を前記吐出口側に誘導する舌片部である舌部が設けられ、前記舌部は、前記吐出口につながる流路側に向けられた面である誘導面と、前記羽根車側に向けられた面である裏面と、を有し、前記舌部の裏面には、該裏面側に侵入した流体に乱流を生じさせる乱流発生部が設けられるポンプ装置によりこれを解決する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と、
吐出口と、
羽根車と、
ケーシングと、を備え、
前記ケーシング内には、該ケーシング内の液流を前記吐出口側に誘導する舌片部である舌部が設けられ、
前記舌部は、前記吐出口につながる流路側に向けられた面である誘導面と、前記羽根車側に向けられた面である裏面と、を有し、
前記舌部の裏面には、該裏面側に侵入した流体に乱流を生じさせる乱流発生部が設けられる、
ポンプ装置。
【請求項2】
前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部または凸部である、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部である、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記舌部の裏面に形成された複数本の溝である、
請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記舌部の裏面側を通過する流体の進行方向に沿う方向を該裏面の流路方向というときに、
前記各溝部は、前記流路方向に直交する向きに、又は該流路方向に交差する向きに延びている、
請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記舌部の舌先側端部から最寄りの前記溝までの距離は、前記各溝同士の間隔よりも長い、
請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記舌部を貫通しない深さである、
請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記ケーシングは、前記羽根車の外周を円形に囲む本体部と、該本体部から前記吐出口に向かって筒状に延びる吐出管と、を有し、
前記舌部は、前記本体部と前記吐出管とが鋭角に交わった部分に設けられ、
前記凹部は、前記舌部の舌先側端部から、前記吐出管を構成する壁部の厚み寸法の範囲内に設けられている、
請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記舌部の裏面側に侵入した流体が通過する流路である裏面側流路において、該流体の進行方向を流路方向、該流路方向に直交する方向であって前記裏面に平行な方向を該裏面側流路の高さ方向としたときに、
前記乱流発生部は、前記裏面側流路の高さ寸法の略全長にわたって形成されている、
請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ装置の効率改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、ケーシング内の水流を吐出口側に誘導するフラップを有する渦巻ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-74475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渦巻ポンプは、ケーシング内でインペラを回転させることにより水流に遠心力と圧力を与え、これを吐出口側に押し出す構造を備えている。一般に渦巻ポンプは、ケーシング内の水流を吐出口側に案内する仕切壁である舌部を有している。舌部により吐出口側に仕分けられず、羽根車側に戻ってくる水流(戻り流)は渦巻ポンプの効率を低下させる原因となる。
【0005】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ポンプ装置の戻り流を抑え、これによりポンプ装置の動力損失を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のポンプ装置は、吸込口と、吐出口と、羽根車と、ケーシングと、を備え、前記ケーシング内には、該ケーシング内の液流を前記吐出口側に誘導する舌片部である舌部が設けられ、前記舌部は、前記吐出口につながる流路側に向けられた面である誘導面と、前記羽根車側に向けられた面である裏面と、を有し、前記舌部の裏面には、該裏面側に侵入した流体に乱流を生じさせる乱流発生部が設けられることを要旨とする。
【0007】
舌部の裏面に乱流発生部が設けられることにより、舌部の裏面側に乱流が生じ、すなわち、吐出口側に向かわずに羽根車側に戻ろうとする流体の流路(戻り流路)の入口に乱流が生じ、その乱流により戻り流路に流体が侵入することが妨げられる。つまり戻り流の流量が減る。これによりポンプ装置の動力損失が軽減される。
【0008】
このとき、前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部または凸部であることが好ましく、さらに、前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部であることがより好ましい。戻り流はポンプ装置の性能を損なうものであるため、通常、戻り流路の幅は舌部と羽根車との干渉を防ぐ必要最小限のものとされる。乱流発生部を凹部とすることにより、戻り流路をそれ以上に狭めることなく、つまり羽根車が舌部に衝突する危険性を高めることなく、戻り流路に乱流を発生させることができる。
【0009】
またこのとき、前記凹部は、前記舌部の裏面に形成された複数本の溝であることが好ましく、さらに、前記舌部の裏面側を通過する流体の進行方向に沿う方向を該裏面の流路方向というときに、前記各溝部は、前記流路方向に直交する向きに、又は該流路方向に交差する向きに延びていることがより好ましい。戻り流路に効率的に乱流を発生させるためである。そして、前記舌部の舌先側端部から最寄りの前記溝までの距離は、前記各溝同士の間隔よりも長いことが好ましい。舌部に設けられた溝により舌部の舌先の強度が低下し、これが折損することを防ぐためである。
【0010】
また、前記凹部は、前記舌部を貫通しない深さであることが好ましい。凹部が舌部を貫通すると、それが整流作用を生じ、乱流が抑制されるおそれがあるからである。
【0011】
また、前記ケーシングは、前記羽根車の外周を円形に囲む本体部と、該本体部から前記吐出口に向かって筒状に延びる吐出管と、を有し、前記舌部は、前記本体部と前記吐出管とが鋭角に交わった部分に設けられ、前記凹部は、前記舌部の舌先側端部から、前記吐出管を構成する壁部の厚み寸法の範囲内に設けられていることが好ましい。これにより、戻り流の抑制効果とケーシングの強度維持との両立を図ることができる。
【0012】
また、前記舌部の裏面側に侵入した流体が通過する流路である裏面側流路(つまり戻り流路)において、該流体の進行方向を流路方向、該流路方向に直交する方向であって前記裏面に平行な方向を該裏面側流路の高さ方向としたときに、前記乱流発生部は、前記裏面側流路の高さ寸法の略全長にわたって形成されていることが好ましい。乱流による戻り流の抑制効果を最大化するためである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、ポンプ装置の戻り流を抑え、これによりポンプ装置の動力損失を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るポンプ装置の外観を示す斜視図である。
図2】ポンプ装置の内部構造を示す側面視断面図である。
図3】ポンプ装置の流路構造を示す平面視断面図である。
図4図3の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
図5図3のポンプ装置をA-A方向に見た側面視断面図(a)と、溝の変形例を示す図(b)である。
図6】舌部の他の形態を示す模式図である。
図7】軸体、マグネット、及びインペラの分解斜視図である。
図8】マグネットの平面図(a)及び下面図(b)である。
図9】軸体の下面図(a)、及び、軸体にマグネットが固定されたときのカシメ部の形状を示す側面視断面図(b)である。
図10】第1凹部と第2凹部の上下方向の深さの違いを示す模式図である。
図11】ロータのマグネットに着磁する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のポンプ装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明するポンプ装置Pは、様々な装置に用いられる小型の渦巻ポンプである。
【0016】
<全体構成>
図1はポンプ装置Pの外観を示す斜視図である。図2は、ポンプ装置Pの内部構造を示す側面視断面図である。図3は、ポンプ装置Pの流路構造を示す平面視断面図である。以下、図1から図3を参照してポンプ装置Pの全体構成について説明する。尚、以下の説明において「上下」とは、図1等に描かれたZ軸(Z1-Z2)に沿う方向をいい、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。また、以下の説明ではポンプ装置Pの移送液体を水と仮定しているが、ポンプ装置Pが移送する液体の種類はポンプ装置Pの用途によって異なる。
【0017】
図1に示すように、ポンプ装置Pは、ケーシングを構成する第1ケース部材50及び第2ケース部材40を有している。第1ケース部材50及び第2ケース部材40は上下に結合され、その内部に渦巻型の流路であるボリュートが形成される。
【0018】
第1ケース部材50は、吸込口52aを有する吸込管52、吐出口53aを有する吐出管53、及び、これら吸込管52及び吐出管53が接続された平面視円形の本体部51により構成されている。本形態では、吐出管52は本体部51の上面中央に鉛直に接続され、吐出管53は本体部51の外周面に対して接線方向に接続されている。
【0019】
第2ケース部材40は、後述するステータ41がその内部にモールド(樹脂封止)されたケース部材である。第2ケース部材40の外周面には、電源ケーブルが接続されるコネクタ42が設けられている。第2ケース部材40の底付近には後述する制御基板48が収容されており、第2ケース部材40の底の開口には底蓋49が被せられている。
【0020】
図2に示すように、ポンプ装置Pの内部には、ロータRを構成する軸体10とマグネット20、軸体10に組み付けられた羽根車であるインペラ60、及び、ポンプ装置Pの動作を制御する制御基板48が収容されている。軸体10は略円筒形状の胴部を有する中空部材であり、マグネット20は軸体10の外周面に装着される円筒形状の永久磁石である。ポンプ装置Pの内部において、ロータRとインペラ60は第2ケース部材40の上に、制御基板48は第2ケース部材40の下に配置されている。
【0021】
第2ケース部材40はその上面に、ロータRを収容する凹部が設けられている。第2ケース部材40の上面中央には、固定軸31を保持する軸受部43が設けられており、ロータRは、軸体10の内側に配置されたベアリング32を介して固定軸31に支持されている。ポンプ装置Pのボリュートは第1ケース部材50の内面と第2ケース部材40の上面とにより区画されており、ロータRはその流路内に配置される。つまりロータRは水に浸かる。上でも述べたように、ロータRを回転させるステータ41は第2ケース部材40の内部にモールドされており、ステータ41は、第2ケース部材40の内部において、マグネット20の外周面を環状に取り囲んでいる。
【0022】
図3に示すように、第1ケース部材50の本体部51はインペラ60の外周を取り囲んでいる。そして、本体部51と吸込管52が鋭角に交わる部分には、仕切壁である舌部54が形成されている。
【0023】
吸込管52から本体部51に取り込まれた水は、インペラ61の回転により遠心力と圧力とが加えられ、インペラ60の周囲を平面視(図3視)時計回りに流れる。インペラ61の周りの水流は、舌部54により吐出管52側に切り離され、切り離された水流は吐出管52を通って吐出口53aから吐き出される。
【0024】
<舌部の構成>
図4は、図3の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図であり、本形態の舌部54を上から見た構造を示している。図5は、図3のポンプ装置PをA-A方向に見た側面視断面図(a)と、後述する溝55の変形例を示す図(b)であり、本形態の舌部54を側方から見た構造を示している。以下、図4及び図5を参照してポンプ装置Pの舌部54の特徴について説明する。
【0025】
図4に示すように、舌部54は、ボリュート内の水流を吐出口52a側、つまり吐出管53に誘導する舌片部である。舌部54は、吐出管53側に向けられた面である誘導面54aと、インペラ60側に向けられた面である裏面54bと、を有している。そして、舌部54の裏面54bには、乱流発生部である3本の溝55が形成されている。これら溝55は、舌部54の裏面54bに沿う流路である戻り流路90を流れる水の方向に対して直交する向きに延びている。
【0026】
舌部54により吐出管53側に仕分けられず、インペラ60側に戻ってくる水流である「戻り流」は、ポンプ装置Pの効率を低下させる原因となる。本形態の舌部54は、舌部54の裏面54bに溝55が設けられることにより、戻り流路90の入口に乱流が生じ、その乱流により戻り流路90に水が侵入することが妨げられる。つまり戻り流の流量が減る。これによりポンプ装置Pの動力損失が軽減されている。
【0027】
そして、図5に示すように、本形態の溝55は、戻り流路90の高さ寸法(上下寸法)の略全長にわたって形成されている。これにより、戻り流路90の入口の略全体に乱流の壁が作られ、戻り流の抑制効果が高められている。図5(a)に示すように、本形態の溝55は上下方向に鉛直に延びている。溝55は、戻り流路90に乱流を発生させるためのものである。よって、各溝55の向きを戻り流路90の水流方向と平行にすることは避けるべきである。ただ、図5(b)に示すように、溝55を斜めに傾ける程度であれば乱流の発生効果は得られるものと考えられる。つまり、溝55は、戻り流路90の水流方向に対して交差する向きに形成されていればよい。
【0028】
図6は舌部54の他の形態を示す模式図である。ポンプ装置Pでは、乱流発生部として、凹部の一種である溝55が採用されている。舌部54に溝55が刻まれることで、舌部54の強度は多少なりとも低下する。図4に示すように、本形態の舌部54は、溝55による強度の低下を最小限とすべく、溝55が、吐出管53の肉厚の範囲内に形成されている。一方、舌部54は、その尖った舌先が強度上のボトルネックとなる。そこで、図6(a)に示すように、舌部54の舌先側端部から最寄りの溝55までの距離d1を、各溝55同士の間隔d2よりも長くしてもよい。こうすることで、舌部54の舌先の強度の低下を軽減することができる。また、乱流発生部は、戻り流路90の水流をかき乱す形状であればよく、常に凹部である必要はない。乱流発生部は、例えば図6(b)に示すように、突条(線状に連続した凸部)55bのような形態であってもよい。乱流発生部を凸部にすることで、舌部54の強度の低下は避けられるが、凸部が折損することがないようにその形状や強度を設計する必要がある。また、通常、戻り流路90の幅は舌部54とインペラ60との干渉を防ぐ必要最小限のものとされているため、インペラ60がその凸部に衝突することがないよう注意しなければならない。
【0029】
このように、本形態のポンプ装置Pは、その舌部54の裏面54bに溝55が刻まれていることで、戻り流路90の入口に乱流が生じ、これにより戻り流の流量が抑えられ、ポンプ装置Pの動力損失が軽減される。尚、ポンプ装置Pでは、乱流発生部として3本の溝55が採用されているが、仮に溝55が2本であったとしても、2本なりの乱流発生効果は得られると考えられる。同様に、溝55が1本であったとしても、1本なりの乱流発生効果が得られる。逆に、溝55を4本以上にすることも可能である。但し、乱流を発生させる範囲をあまり広くしすぎると、脈流や吐出量の低下などの弊害が生じるおそれがある。よって、溝55の数やその形成範囲は、ポンプ効率の向上効果とその弊害とのバランスが最適化されるように調節する必要がある。また、乱流発生部は必ずしも溝55のように連続した凹部である必要はなく、散点的に配置された凹部や、一つの半球形状の凹部であってもよい。乱流発生部が凸部でもよいことは上で述べたとおりである。尚、溝55の深さは舌部54を貫通しない深さであることが望ましい。溝55が舌部54を貫通すると、整流作用が生じることで乱流が抑制されるおそれがある。
【0030】
<ロータの構成>
本形態のポンプ装置Pは、ロータRを構成する軸体10とマグネット20の結合構造にも特徴を有している。具体的には、マグネット20の上下面に設けられた凹部に軸体10の凸部を嵌合するにあたり、軸体10に装着されたマグネット20を熱カシメする際の溶融樹脂をマグネット20の一部の凹部に充填し、これを固化させることで凸部としている。以下、この特徴とその付随的な特徴について説明する。
【0031】
図7は、軸体10、マグネット20、及びインペラ60の分解斜視図である。図8は、マグネット20の平面図(a)及び下面図(b)である。図9は、軸体10の下面図(a)、及び、軸体10にマグネット20が固定されたときのカシメ部15の形状を示す側面視断面図(b)である。
【0032】
図7に示すように、軸体10は、円筒形状の胴部14、胴部14の中ほどから径方向外側に向かって円形に広がった第1フランジ部11、胴部14の上端から径方向外側に向かって円形に広がった第2フランジ部13、及び、胴部14の下端部分を構成するカシメ部15により構成されている。図7のカシメ部15は、熱カシメされる前の状態を示している。胴部14はその一部に、マグネット20が取り付けられるマグネット装着部14aを有している。第1フランジ部11の下面はマグネット20の上面が突き当たる当接面11aであり、当接面11aには複数の突起である第1凸部12が形成されている。第2フランジ部13の上面にはインペラ60が溶着される。
【0033】
図9(a)に示すように、軸体10の当接面11aには、3つの突起である第1凸部12が周方向に120°間隔で配置されている。第1凸部12は胴部14にも接しており、胴部14から突き出していると見ることもできる。図8(a)に示すように、マグネット20の上面には、これら第1凸部12に対応する位置に、第1凸部12が嵌合される3つの窪みである第1凹部22が形成されている。マグネット20が軸体10のマグネット装着部14aに組み付けられることで、これら第1凸部12と第1凹部22とが嵌合される。
【0034】
図8(b)に示すように、マグネット20の下面には、筒穴21の周縁の全周にわたる窪みである環状凹部23と、環状凹部23からさらに窪んだ部分である3つの第2凹部24とが形成されている。第2凹部24は周方向に120°間隔で配置されている。そして、図9(b)に示すように、軸体10のカシメ部15は、熱を加えられながらマグネット20の下面側にプレスされることで、溶融した樹脂が環状凹部23と第2凹部24の中に入り込んで固化する。このうち、環状凹部23の中で固化した部分は、軸体10に対するマグネット20の上下位置を固定し、マグネット20の脱落を阻止する環状部151となり、第2凹部24の中で固化した部分は、第2凹部24に嵌合され、マグネット20と周方向に係合する第2凸部152となる。当然、第2凸部152にもマグネット20の上下位置を固定する機能はある。尚、環状凹部23は、熱カシメされたカシメ部15とマグネット20の下面との間に段差が生じることを防ぎ、これらをフラットな面にするための凹部である。
【0035】
このように、本形態のロータRは、マグネット20の上下面に軸体10と周方向に係合する凹凸を設けることにより、軸体10に対してマグネット20を強固に結合することができる。また、ロータRの回転時に各凹凸にかかる負荷が分散され、ロータRの耐久性が向上する。さらに、軸体10に対してマグネット20を熱カシメする際に、カシメ部15の一部を第2凸部152に変形させることにより、別途第2凸部152に相当する部品や構造を用意する構成に比べ、ロータRの構造効率が高められている。
【0036】
また、図8に示すように、本形態のマグネット20は、3つの第1凹部22が周方向に沿って回転対称に配置され、3つの第2凹部24も周方向に沿って回転対称に配置されている。そして、これら第1凹部22と第2凹部24は、マグネット20の周方向における位置が重ならないように、互いに周方向に60°ずれた位置に配置されている。つまり、図8(a)において、各第2凹部24は、ちょうどゲート痕29の裏側に配置されている。本形態のロータRは、マグネット20の上下面における凹部の位置を周方向にずらして配置することにより、凹部に起因するマグネットの磁力バランスの乱れを抑えている。
【0037】
尚、本形態のロータRは、マグネット20の上下にそれぞれ3組ずつの凹凸を設けているが、これは、本形態のマグネット20が6極に着磁されており、また、マグネット20上面には周方向に120°間隔で3つのゲート痕29が残るため、つまりマグネット20の成形時にその位置にゲートが来るため、上下の凹凸を3組ずつにすることが構造上妥当だったからである。マグネット20の上下に配置される凹凸の数は、それぞれ回転対称な数であればよく、3組ずつには限られない。但し、第2凸部152と第2凹部24の組数は、カシメ部15の体積や溶融時の流動性を考慮して、第2凸部152の形状が不完全にならないよう注意する必要がある。
【0038】
図10は、第1凹部22と第2凹部24の上下方向の深さの違いを示す模式図である。図10に示すように、本形態のロータRは、第1凹部22の上下方向の深さh1が、第2凹部24の上下方向の深さh2よりも深い。そして、図8に示すように、第1凹部22の半径方向の長さL1は、第2凹部24の半径方向の長さL2よりも長い。一方で、第2凹部24の周方向の幅w2は、第1凹部22の周方向の幅w1よりも大きい。
【0039】
第2凸部152は軸体10のカシメ部15を熱カシメすることで形成されることから、第1凸部12に比べてその形状や体積、密度のコントロールが難しい。具体的には、第2凹部24が上下方向に不必要に深かったり、半径方向に長かったりすると、第2凸部152の体積が足りず形状が不完全になったり、密度が不十分になったりするおそれがある。一方、第2凹部24の周方向の幅が狭いと、カシメ部15が第2凹部24に入り込むことが困難になる。また、第2凸部152は第1凸部12よりも強度に劣るため、周方向の幅が狭いと折れやすくなる。第2凹部24を浅く、半径方向に短くする代わりに、第1凹部22を深く、半径方向に長く形成したり、第2凹部24を第1凹部22よりも周方向に広く形成したりすることで、第2凸部152のこのような短所を補うことができる。これらの工夫は、カシメ部15の体積や、溶融時の流動性、第2凸部152の数、第2凸部152に要求される強度などの条件を考慮して、これらの一部を採用したり、全てを採用したり、逆に、第1凹部22と第2凹部24とを同数・同形状にしたりしてよい。
【0040】
<ポンプ装置の製造方法>
図11は、ロータRのマグネット20に着磁する様子を示す模式図である。本形態のポンプ装置Pの製造工程は、軸体10にマグネット20を取り付ける工程と、カシメ部15に熱を加えながらこれをマグネット側20にプレスする工程と、ロータRにインペラ60を組み付ける工程とを含んでいる。そして、マグネット20への着磁工程は、ロータRにインペラ60を組み付けた後で行われる。
【0041】
軸体10にマグネット20を装着し、さらにインペラ60を取り付けた後でマグネット20を着磁装置99にセットすることにより、軸体10やインペラ60をマグネット20の支持具・治具として用いることができ、組立作業が効率化されるとともに、ロータRやインペラ60の組立中にマグネット20に異物が付着することが防止される。このことによってもポンプ装置Pの耐久性が高められている。
【0042】
<その他>
尚、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
吸込口と、
吐出口と、
羽根車と、
ケーシングと、を備え、
前記ケーシング内には、該ケーシング内の液流を前記吐出口側に誘導する舌片部である舌部が設けられ、
前記舌部は、前記吐出口につながる流路側に向けられた面である誘導面と、前記羽根車側に向けられた面である裏面と、を有し、
前記舌部の裏面には、該裏面側に侵入した流体に乱流を生じさせる乱流発生部が設けられる、
ポンプ装置。
(2)
前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部または凸部である、
(1)に記載のポンプ装置。
(3)
前記乱流発生部は、前記舌部の裏面に形成された凹部である、
(1)に記載のポンプ装置。
(4)
前記凹部は、前記舌部の裏面に形成された複数本の溝である、
(3)に記載のポンプ装置。
(5)
前記舌部の裏面側を通過する流体の進行方向に沿う方向を該裏面の流路方向というときに、
前記各溝部は、前記流路方向に直交する向きに、又は該流路方向に交差する向き に延びている、
(4)に記載のポンプ装置。
(6)
前記舌部の舌先側端部から最寄りの前記溝までの距離は、前記各溝同士の間隔よりも長い、
(5)に記載のポンプ装置。
(7)
前記凹部は、前記舌部を貫通しない深さである、
(3)から(6)のいずれかに記載のポンプ装置。
(8)
前記ケーシングは、前記羽根車の外周を円形に囲む本体部と、該本体部から前記吐出口に向かって筒状に延びる吐出管と、を有し、
前記舌部は、前記本体部と前記吐出管とが鋭角に交わった部分に設けられ、
前記凹部は、前記舌部の舌先側端部から、前記吐出管を構成する壁部の厚み寸法の範囲内に設けられている、
(3)から(7)のいずれかに記載のポンプ装置。
(9)
前記舌部の裏面側に侵入した流体が通過する流路である裏面側流路において、該流体の進行方向を流路方向、該流路方向に直交する方向であって前記裏面に平行な方向を該裏面側流路の高さ方向としたときに、
前記乱流発生部は、前記裏面側流路の高さ寸法の略全長にわたって形成されている、
(1)から(8)のいずれかに記載のポンプ装置。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0044】
P:ポンプ装置,R:ロータ,10:軸体,11:第1フランジ部,11a:当接面,12:第1凸部,13:第2フランジ部,14:胴部,14a:マグネット装着部,15:カシメ部,151:環状部,152:第2凸部,20:マグネット,21:筒穴,22:第1凹部,23:環状凹部,24:第2凹部,29:ゲート痕,31:固定軸,32:ベアリング,40:第2ケース部材(ケーシング),41:ステータ,42:コネクタ,43:軸受部,48:制御基板,49:底蓋,50:第1ケース部材(ケーシング),51:本体部,52:吸込管,52a:吸込口,53:吐出管,53a:吐出口,54:舌部,54a:誘導面,54b:裏面,55:溝,55b:突条,60:インペラ,90:戻り流路,99:着磁装置
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