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特開2024-78194画像再構成方法及び画像再構成処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078194
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】画像再構成方法及び画像再構成処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
G01T1/161 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190602
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】勅使川原 学
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK33
(57)【要約】
【課題】PET画像再構成に要する時間を短縮しつつ、画素値の収束基準の不明確さを取り除くこと。
【解決手段】実施形態に係る画像再構成方法は、組み合わせ最適化問題を解く目的関数に基づいてPET画像再構成を行う方法である。実施形態に係る画像再構成方法は、検出データを取得するステップと、前記検出データが組み込まれた前記目的関数に基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うステップと、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせ最適化問題を解く目的関数に基づいてPET画像再構成を行う方法であって、
検出データを取得するステップと、
前記検出データが組み込まれた前記目的関数に基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うステップと、
を含む、画像再構成方法。
【請求項2】
前記目的関数はイジングモデル型のハミルトニアンである、請求項1に記載の画像再構成方法。
【請求項3】
前記目的関数は、定数項と、バイアス項と、カップリング項とを含み、
前記定数項は、前記検出データに基づく項であり、
前記バイアス項は、前記検出データとシステム行列とに基づく項であり、
前記カップリング項は、前記システム行列に基づく項である、
請求項2に記載の画像再構成方法。
【請求項4】
前記システム行列は、検出器視野内の点における陽電子放出事象と反応線による対消滅ガンマ線検出事象の確率関係を記述する、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項5】
前記定数項は、散乱同時計数成分を含む、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項6】
前記定数項は、偶発同時計数成分を含む、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項7】
前記バイアス項は、散乱同時計数成分を含む、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項8】
前記バイアス項は、偶発同時計数成分を含む、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項9】
前記定数項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含み、
前記バイアス項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含む、請求項3に記載の画像再構成方法。
【請求項10】
前記検出データを取得するステップ及び前記PET画像再構成を行うステップは、アニーリングマシンにより実行される、請求項1に記載の画像再構成方法。
【請求項11】
前記アニーリングマシンは、量子アニーリングコンピュータ、シミュレーテッドアニーリングコンピュータ又はイジングマシンである、請求項10に記載の画像再構成方法。
【請求項12】
検出データを取得する医用画像診断装置と、
前記医用画像診断装置とネットワークを介して接続され、前記検出データに基づいて画像再構成を行う再構成処理部と、
を備え、
前記再構成処理部では量子コンピュータによる処理に基づいて画像再構成が実行される、
画像再構成処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像再構成方法及び画像再構成処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の画像診断装置における画像再構成法として、例えば、PET(Positron Emission Tomography)装置では、主に統計的画像再構成が用いられている。基本的な方法として最尤推定-期待値最大化(ML-EM)法があげられる。ML-EM法は、逐次近似方式で実行されるが、用途目的上許容できる画素値の収束に至るには、一般に数十回から数百回の反復を要する。実用上の観点から、実際にはML-EM法のアルゴリズム内のループ組み替えにより画素値の更新の速度を上げたOS-EM法がよく用いられる。しかしながらOS-EM法では、反復回数の極限における画素値の収束が数学的に保証されず、一般にある反復回数以上で画素値は発散に転じる。このため、画素値の収束と発散の振る舞いを画質の観点から計算実行者が観察し、反復回数を設定している。このため、画素値の収束の明確な論理的基準なしに運用されている。
【0003】
上述したように、ML-EM法には、収束までに多くの反復回数を要する問題がある。また、計算高速化のために導入されたOS-EM法には、収束の保証がなく一般にある反復回数以上で発散に転じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0020931号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0242816号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0241143号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、PET画像再構成に要する時間を短縮しつつ、画素値の収束基準の不明確さを取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の画像再構成方法は、組み合わせ最適化問題を解く目的関数に基づいてPET画像再構成を行う方法である。実施形態の画像再構成方法は、検出データを取得するステップと、前記検出データが組み込まれた前記目的関数に基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る画像再構成処理システムの構成の一例について説明するための図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るPET-CT装置の全体構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るPET用架台装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るPET用架台装置の構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る計数情報の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るCT用架台装置の構成の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るコンソール装置の構成の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態における同時計数情報の時系列リストの一例を説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る画像再構成装置の構成の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係るシステム行列の一例を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る画像再構成装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、画像再構成方法及び画像再構成処理システムの実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る画像再構成処理システム400の構成の一例について説明するための図である。図1に示すように、画像再構成処理システム400は、PET-CT(Computed Tomography)装置100と、画像再構成装置200とを備える。PET-CT装置100と、画像再構成装置200とは、インターネット等のネットワーク300で接続されており、互いに通信可能である。すなわち、画像再構成装置200は、PET-CT装置100とネットワーク300を介して接続され、後述する検出データgに基づいて画像再構成を行う再構成処理部の一例である。画像再構成装置200では量子コンピュータ又は疑似量子コンピュータによる処理に基づいて画像再構成が実行される。
【0010】
本実施形態では、PET-CT装置100が同時計数情報の時系列リストを画像再構成装置200に送信する。そして、画像再構成装置200は、同時計数情報の時系列リストを用いてPET画像再構成を行うサービスを行う。すなわち、画像再構成装置200は、クラウドコンピューティングにおける上述したサービスを提供するサーバとして機能する。そして、画像再構成装置200は、PET画像再構成により得られたPET画像データをPET-CT装置100に送信する。そして、PET-CT装置100は、PET画像データに基づくPET画像を表示する。PET-CT装置100は、医用画像診断装置の一例である。
【0011】
次に、図2を用いて、第1の実施形態に係るPET-CT装置100の全体構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係るPET-CT装置100の全体構成の一例を示す図である。図2に示すように、第1の実施形態に係るPET-CT装置100は、PET用架台装置1と、CT用架台装置2と、寝台3と、コンソール装置4とを有する。被検体Pには、陽電子放出核種で標識された薬剤(放射性医薬品)が投与されている。PET-CT装置100は、医用画像診断装置の一例である。
【0012】
PET用架台装置1は、陽電子放出核種を取り込んだ生体組織から放出される一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を検出し、ガンマ線の検出信号から計数情報を生成することにより、計数情報を収集する装置である。図3及び図4は、第1の実施形態に係るPET用架台装置1の構成の一例を示す図である。
【0013】
PET用架台装置1は、図3に示すように、PET検出器モジュール11と、計数情報収集回路12とを有する。例えば、図4に示すように、PET用架台装置1では、複数のPET検出器モジュール11が、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置される。PET検出器モジュール11は、被検体P内から放出されたガンマ線を光に変換し、この光を電気信号(検出信号)に変換する。そして、PET検出器モジュール11は、検出信号を計数情報収集回路12に送信する。
【0014】
計数情報収集回路12は、PET検出器モジュール11から出力された検出信号から計数情報を生成し、生成した計数情報を、コンソール装置4の後述するメモリ41に格納する。
【0015】
例えば、計数情報収集回路12は、PET検出器モジュール11から出力された検出信号から計数情報を生成することにより、計数情報を収集する。この計数情報には、ガンマ線の検出位置、エネルギー値、及び検出時間が含まれる。図5は、第1の実施形態に係る計数情報の一例を示す図である。例えば、図5に示すように、計数情報は、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)及び検出時間(T)を含む。計数情報では、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)及び検出時間(T)がPET検出器モジュール11を識別するモジュールIDに対応付けられている。
【0016】
図2の説明に戻る。本実施形態に係るCT用架台装置2は、被検体Pを透過したX線を検出することで、CT画像データ(X線CT画像データ)の元となるX線投影データを生成する装置である。また、CT用架台装置2は、2次元又は3次元のスキャノグラムの元となるX線投影データを生成することができる。
【0017】
図6は、第1の実施形態に係るCT用架台装置2の構成の一例を示す図である。CT用架台装置2は、図6に示すように、X線管21と、X線検出器22と、データ収集回路23とを有する。X線管21は、X線ビームを発生し、発生したX線ビームを被検体Pに照射する装置である。X線検出器22は、X線管21に対向する位置において、被検体Pを透過したX線を検出する装置である。具体的には、X線検出器22は、被検体Pを透過したX線の2次元強度分布のデータ(2次元X線強度分布データ)を検出する2次元アレイ型検出器である。より具体的には、X線検出器22では、複数チャンネル分の複数のX線検出素子を含む検出素子列が被検体Pの体軸方向に沿って複数列配列されている。なお、X線管21およびX線検出器22は、CT用架台装置2の内部にて、図示しない回転フレームにより支持されている。
【0018】
データ収集回路23は、DAS(Data Acquisition System)であり、X線検出器22により検出された2次元X線強度分布データに対して、増幅処理やA/D(Analog to Digital)変換処理等を行なって、X線投影データを生成する。そして、データ収集回路23は、X線投影データをコンソール装置4に送信する。
【0019】
図2の説明に戻る。寝台3は、被検体Pを載せるベッドであり、天板31と、支持フレーム32と、寝台装置33とを有する。寝台3は、コンソール装置4を介して受け付けたPET-CT装置100の操作者からの指示に基づいて、被検体Pを、CT用架台装置2及びPET用架台装置1それぞれの撮影口に順次移動する。すなわち、PET-CT装置100は、寝台3を制御することで、最初に、CT画像データの撮影を行ない、その後、PET画像データの撮影を行なう。なお、図2においては、寝台3側にCT用架台装置2が配設される例について示しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、寝台3側にPET用架台装置1が配設される場合でもよい。
【0020】
寝台3は、図示しない駆動機構によって天板31と支持フレーム32とをCT用架台装置2及びPET用架台装置1における検出器視野の中心軸方向に移動させる。換言すると、寝台3は、天板31及び支持フレーム32を、天板31及び支持フレーム32の長手方向に沿った方向に移動させる。
【0021】
コンソール装置4は、操作者からの指示を受け付けて、PET-CT装置100による処理を制御する装置である。図7は、第1の実施形態に係るコンソール装置4の構成の一例を示す図である。図7に示すように、コンソール装置4は、ディスプレイ40と、メモリ41と、入力インタフェース42と、処理回路43とを有する。
【0022】
ディスプレイ40は、PET-CT装置100の操作者が入力インタフェース42を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、ディスプレイ40は、制御機能43aによる表示制御によって、PET画像データにより示されるPET画像等を表示したりする。また、ディスプレイ40は、処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ40は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0023】
メモリ41は、PET用架台装置1から送信された計数情報を記憶する。この計数情報は、同時計数同定機能43bによる処理に用いられる。メモリ41に記憶された計数情報は、同時計数同定機能43bによる処理に用いられた後に、メモリ41から削除されてもよい。また、メモリ41に記憶された計数情報は、一定期間保存された後に、削除されてもよい。
【0024】
また、メモリ41は、同時計数同定機能43bにより生成された後述する同時計数情報を記憶する。また、メモリ41は、画像再構成装置200から送信されたPET画像データを記憶する。また、メモリ41は、データ収集回路23から送信されたX線投影データを記憶する。また、メモリ41は、処理回路43がPET-CT装置100による処理の全体を制御する際に用いられるデータ等を記憶する。また、メモリ41は、処理回路43によって実行されるプログラムを記憶する。メモリ41は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。なお、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0025】
入力インタフェース42は、各種設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェース42は、処理回路43に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路43へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース42は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路43へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0026】
処理回路43は、PET-CT装置100全体の制御を行う。例えば、処理回路43は、図7に示すように、制御機能43a、メモリ41及び補正データ取得機能43cを実行する。ここで、例えば、図7に示す処理回路43の構成要素である、制御機能43a、同時計数同定機能43b及び補正データ取得機能43cが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41に記録されている。処理回路43は、各プログラムをメモリ41から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路43は、図7の処理回路43内に示された各機能を有することとなる。
【0027】
なお、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0028】
制御機能43aは、PET-CT装置100の動作を制御する。例えば、制御機能43aは、入力インタフェース42を介して操作者の指示を受け付け、受け付けた指示に応じて、PET用架台装置1、CT用架台装置2、及び、寝台3を制御することで、スキャノグラムの収集、スキャン(本撮影)、画像再構成、画像生成、画像表示などの各処理を実行する。制御機能43aは、制御部又は表示制御部の一例である。
【0029】
同時計数同定機能43bは、メモリ41に記憶された複数の計数情報を用いて、同時計数情報の時系列リストを生成する。例えば、同時計数同定機能43bは、複数の計数情報から、一対の対消滅ガンマ線を略同時に計数した計数情報の組を、計数情報の検出時間(T)に基づいて検索する。すなわち、同時計数同定機能43bは、複数の計数情報から、一対の対消滅ガンマ線を略同時に計数した計数情報の組を同定する。そして、同時計数同定機能43bは、同定された計数情報の組毎に、同時計数情報を生成し、生成した同時計数情報を、概ね時系列順に並べて、メモリ41に格納する。
【0030】
図8は、第1の実施形態における同時計数情報の時系列リストの一例を説明するための図である。図8に示すように、メモリ41は、同時計数情報の通し番号である「コインシデンスNo.」に対応付けて、計数情報の組を記憶する。なお、第1の実施形態において、同時計数情報の時系列リストは、計数情報の検出時間(T)に基づき概ね時系列順に並んでいる。
【0031】
例えば、同時計数同定機能43bは、操作者によって入力された、同時計数情報を生成する際の条件(同時計数情報生成条件)に基づいて、同時計数情報を生成する。同時計数情報生成条件には、時間ウィンドウ幅が指定される。例えば、同時計数同定機能43bは、時間ウィンドウ幅に基づいて、同時計数情報を生成する。このようにして、同時計数同定機能43bは、同時計数情報を生成することにより、同時計数情報を収集する。
【0032】
例えば、同時計数同定機能43bは、メモリ41を参照し、検出時間(T)の時間差が時間ウィンドウ幅以内にある計数情報の組を、PET検出器モジュール11間で検索する。例えば、同時計数同定機能43bは、同時計数情報生成条件を満たす組として、「P11、E11、T11」と「P22、E22、T22」との組を検索すると、この組を同時計数情報として生成し、メモリ41に格納する。なお、同時計数同定機能43bは、時間ウィンドウ幅とともにエネルギーウィンドウ幅を用いて同時計数情報を生成してもよい。また、同時計数同定機能43bは、PET用架台装置1内に設けられてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、同時計数同定機能43bは、生成された同時計数情報の時系列リストを、ネットワーク300を介して画像再構成装置200に送信する。以下の説明では、i番目の応答線(Line of Response(LOR))に対応する同時計数情報は、「検出データg」と表記される場合がある。ここで、本実施形態では、応答線の総数を「N1」とする。このため、「i」の値は、「1」~「N1」の範囲を取り得る。
【0034】
補正データ取得機能43cは、メモリ41に記憶されたX線投影データを取得し、取得されたX線投影データを再構成することで得られたCT再構成画像データを補正データとして取得する。ここで、補正データは、PET画像データを再構成する際に用いられる。補正データとしては、例えば、減弱マップ又はμ-マップ等が挙げられる。補正データ取得機能43cは、生成された補正データを、ネットワーク300を介して画像再構成装置200に送信する。
【0035】
図9は、第1の実施形態に係る画像再構成装置200の構成の一例を示す図である。例えば、画像再構成装置200は、アニーリングマシンである。アニーリングマシンには、量子コンピュータである量子アニーリングコンピュータ、及び、古典的なコンピュータであるシミュレーテッドアニーリングコンピュータが含まれる。アニーリングマシンの他の具体例としては、一般的に、イジングマシンと呼ばれるコンピュータが挙げられる。
【0036】
画像再構成装置200は、目的関数としてイジングモデル型のハミルトニアンを扱うことが可能である。画像再構成装置200は、取得機能201及び画像再構成機能202を備える。
【0037】
取得機能201は、同時計数同定機能43bにより送信された検出データgを取得する。
【0038】
画像再構成機能202は、従来の統計的画像再構成法と同様に、検出器視野内の点における陽電子放出事象と反応線による対消滅ガンマ線の検出事象の確率関係を記述するシステム行列Cijを用いる。図10は、第1の実施形態に係るシステム行列Cijの一例を説明するための図である。システム行列Cijは、図10に示すVoxelから発せされた対消滅ガンマ線が、図10に示すLORで検出される確率である。ここで、Voxelは、j番目の画素(ボクセル)を指す。本実施形態では、画素の総数を「N2」とする。このため、「j」の値は、「1」~「N2」の範囲を取り得る。また、LORは、i番目の応答線を指す。
【0039】
システム行列Cijは、検出器の幾何に基づく検出確率行列、陽電子飛程行列、検出器素子のガンマ線検出効率因子、被検体によるガンマ線減弱係数等、陽電子放出から対消滅ガンマ線の検出に至る物理過程を表す因子で構成される。これらの因子のうちのいくつかの因子は、システム行列Cijにではなく、検出データgの事前補正に用いられる場合もある。
【0040】
ここで、以下の式(1)に示すように、システム行列Cijにより、検出器視野中に仮定した放射線濃度分布を表す画素値λからLORへの順投影Σijλが算出され、LORによる検出データgとΣijλとの差分の二乗の総和Hが目的関数として定義される。
【0041】
【数1】
【0042】
なお、画素値λは、j番目の画素の画素値である。このように、PET画像再構成問題が目的関数Hを最小化する画素値組合せ最適化問題として定義される。上述した式(1)の右辺が展開され、画素値λの次数ごとに整理されると、以下の式(2)が得られる。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、以下の式群(3)と置くと、以下の式(4)に示すイジングモデル型の目的関数Hにより、PET画像再構成問題が、イジングモデルのスピン変数を整数に拡張した「Constrained Quadratic Model」と呼ばれる組合せ最適化問題として定式化される。
【数3】
【数4】
【0045】
そこで、画像再構成機能202は、式(4)に示す目的関数Hを最小化するときのλ,λ,・・・,λN2を得ることにより、PET画像データを再構成する。このようにして、画像再構成機能202は、PET画像データを生成する。そして、画像再構成機能202は、生成されたPET画像データをネットワーク300を介してPET-CT装置100に送信する。
【0046】
このように、本実施形態では、画像再構成処理が、検出データgを最もよく再現する被検体モデルを探索する最適化問題として陽に定式化されている。画像再構成機能202は、上述したように、組み合わせ最適化問題を解く目的関数Hに基づいてPET画像再構成を行う。具体的には、画像再構成機能202は、検出データgが組み込まれた目的関数Hに基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行う。目的関数Hは、イジングモデル型のハミルトニアンである。また、目的関数Hは、式(4)の右辺における第1項である定数項と、第2項であるバイアス項と、第3項であるカップリング項とを含む。定数項は、検出データgに基づく項である。バイアス項は、検出データgとシステム行列Cijとに基づく項である。カップリング項は、システム行列Cijに基づく項である。
【0047】
なお、取得機能201がPET-CT装置100から送信された補正データを取得し、画像再構成機能202がPET画像再構成を行う際に、補正データを用いてPET画像データを補正してもよい。
【0048】
図11は、第1の実施形態に係る画像再構成装置200が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
図11に示すように、取得機能201は、PET-CT装置100から送信された検出データgを取得する(ステップS101)。そして、画像再構成機能202は、検出データgが組み込まれた目的関数Hに基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うことにより、PET画像データを生成する(ステップS102)。そして、画像再構成機能202は、生成されたPET画像データをネットワーク300を介してPET-CT装置100に送信し(ステップS103)、図11に示す処理を終了する。
【0050】
以上、第1の実施形態に係る画像再構成方法及び画像再構成処理システム400について説明した。第1の実施形態では、量子コンピュータ又は疑似量子コンピュータである画像再構成装置200が、検出データgが組み込まれた目的関数Hに基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うことにより、PET画像データを生成する。したがって、第1の実施形態によれば、従来の統計的画像再構成処理に要する時間よりも大幅に短縮された時間でPET画像データを生成することができ、また、画素値の収束の基準の不明確さを取り除くことができる。すなわち、第1の実施形態によれば、PET画像再構成に要する時間を短縮しつつ、画素値の収束基準の不明確さを取り除くことができる。
【0051】
更に、第1の実施形態によれば、全身視野、多フレームダイナミック画像再構成を即時に実行できる。この結果、操作者は、薬剤動態のリアルタイムでの把握が可能になるため、医療措置の迅速性や柔軟性の向上が期待できる。
【0052】
また、第1の実施形態によれば、ローカルコンソール不要のクラウドコンピューティングを用いるため、検査室及び操作室の省スペース化が図られたり、据付しやすさの向上が期待できたり、装置一式のコストダウン等が期待できる。また、これらのことにより、新しい画像診断の在り方に道を開くことができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、画像再構成装置200は、更に、散乱線同時補正及び偶発同時計数補正を行ってもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態として説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0054】
例えば、以下の式群(5)における目的関数H´に示すように、検出データgから散乱線同時計数S及び偶発同時計数Rを差し引いたものを画像再構成の対象とする。
【0055】
【数5】
【0056】
散乱線同時計数S及び偶発同時計数Rは、公知の技術により得られる。例えば、散乱線同時計数Sは、モンテカルロ法を用いたシミュレーションにより得られる。また、偶発同時計数Rは、計数情報を用いたシミュレーションにより得られる。例えば、散乱線同時計数Sは、LORに対応する散乱線同時計数成分である。また、例えば、偶発同時計数Rは、LORに対応する偶発同時計数成分である。
【0057】
このように、PET画像再構成問題が目的関数H´を最小化する画素値組合せ最適化問題として定義される。上述した式群(5)における目的関数H´の式から、以下の式(6)に示すイジングモデル型の目的関数H´が得られる。
【0058】
【数6】
【0059】
イジングモデル型の目的関数H´により、PET画像再構成問題が、「Constrained Quadratic Model」と呼ばれる組合せ最適化問題として定式化される。式(6)に示す目的関数H´は、イジングモデル型のハミルトニアンである。また、式(6)に示すイジングモデル型の目的関数H´は、式(6)の右辺における第1項である定数項と、第2項であるバイアス項と、第3項であるカップリング項とを含む。定数項は、検出データgに基づく項である。バイアス項は、検出データgとシステム行列Cijとに基づく項である。カップリング項は、システム行列Cijに基づく項である。定数項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含む。また、バイアス項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含む。
【0060】
画像再構成機能202は、式(6)に示す目的関数H´を最小化するときのλ,λ,・・・,λN2を得ることにより、PET画像データを再構成する。このようにして、画像再構成機能202は、PET画像データを生成する。そして、画像再構成機能202は、生成されたPET画像データをネットワーク300を介してPET-CT装置100に送信する。
【0061】
以上、第2の実施形態に係る画像再構成方法及び画像再構成処理システム400について説明した。第2の実施形態によれば、PET画像データに対して散乱同時計数補正及び偶発同時計数補正を行うとともに、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態において、PET-CT装置100は、画像再構成装置200と同様の装置を備えてもよい。すなわち、PET-CT装置100内で、画像再構成装置200と同様の装置により、PET画像データが生成されてもよい。
【0063】
ここで、プロセッサによって実行される処理プログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶部等に予め組み込まれて提供される。なお、この処理プログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、この処理プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、この処理プログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0064】
また、上述した実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0065】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、PET画像再構成に要する時間を短縮しつつ、画素値の収束基準の不明確さを取り除くことができる。
【0066】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0067】
(付記1)
本発明の一つの側面において提供される方法は、組み合わせ最適化問題を解く目的関数に基づいてPET画像再構成を行う方法であって、検出データを取得するステップと、前記検出データが組み込まれた前記目的関数に基づいて、組み合わせ最適化問題を解くことでPET画像再構成を行うステップと、を含む。
(付記2)
前記目的関数はイジングモデル型のハミルトニアンであってもよい。
(付記3)
前記目的関数は、定数項と、バイアス項と、カップリング項とを含んでもよく、
前記定数項は、前記検出データに基づく項であってもよく、
前記バイアス項は、前記検出データとシステム行列とに基づく項であってもよく、
前記カップリング項は、前記システム行列に基づく項であってもよい。
(付記4)
前記システム行列は、検出器視野内の点における陽電子放出事象と反応線による対消滅ガンマ線検出事象の確率関係を記述してもよい。
(付記5)
前記定数項は、散乱同時計数成分を含んでもよい。
(付記6)
前記定数項は、偶発同時計数成分を含んでもよい。
(付記7)
前記バイアス項は、散乱同時計数成分を含んでもよい。
(付記8)
前記バイアス項は、偶発同時計数成分を含んでもよい。
(付記9)
前記定数項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含んでもよく、
前記バイアス項は、散乱同時計数成分及び偶発同時計数成分を含んでもよい。
(付記10)
前記検出データを取得するステップ及び前記PET画像再構成を行うステップは、アニーリングマシンにより実行されてもよい。
(付記11)
前記アニーリングマシンは、量子アニーリングコンピュータ、シミュレーテッドアニーリングコンピュータ又はイジングマシンであってもよい。
(付記12)
検出データを取得する医用画像診断装置と、前記医用画像診断装置とネットワークを介して接続され、前記検出データに基づいて画像再構成を行ってもよく、前記再構成処理部では量子コンピュータによる処理に基づいて画像再構成が実行されてもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
200 画像再構成装置
201 取得機能
202 画像再構成機能
図1
図2
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図4
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図11