(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078227
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】歯磨きスキル評価装置、歯磨きスキル評価方法および歯磨きスキル評価プログラム
(51)【国際特許分類】
A46B 15/00 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A46B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190638
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 敦
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB08
3B202GA07
(57)【要約】
【課題】歯磨きスキルを正しく評価すること。
【解決手段】歯磨きスキル評価装置であって、ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間のユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得部と、取得したセンサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出部と、抽出された動作パターンごとに、ユーザの口腔内における歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出部と、抽出された動作パターンごとの歯ブラシの移動距離と、動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価部と、を備えた。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得部と、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出部と、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出部と、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価部と、
を備える歯磨きスキル評価装置。
【請求項2】
前記移動距離と、前記補正係数と、を乗じて得られる、前記移動距離を補正した補正済み移動距離を、抽出された前記動作パターンごとに算出する補正済み移動距離算出部と、
前記動作パターンごとに算出された前記補正済み移動距離の総和を算出する総和算出部と、
をさらに備え、
前記スキル評価部は、算出された前記補正済み移動距離の総和に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価する、請求項1に記載の歯磨きスキル評価装置。
【請求項3】
取得した前記センサデータから、ユーザが、前記動作パターンを切り替えた回数を切り替え回数としてカウントするカウント部と、
前記補正済み移動距離の総和と、カウントされた前記切り替え回数に応じて決定される補正値と、を乗じて、歯磨きスコアを算出する歯磨きスコア算出部と、
をさらに備え、
前記スキル評価部は、算出された前記歯磨きスコアに基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価する、請求項2に記載の歯磨きスキル評価装置。
【請求項4】
ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価ステップと、
を含む歯磨きスキル評価方法。
【請求項5】
歯ブラシに取り付けられた加速度センサから、ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価ステップと、
をコンピュータに実行させる歯磨きスキル評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨きスキル評価装置、歯磨きスキル評価方法および歯磨きスキル評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、歯ブラシに取り付けられた加速度センサから得られた加速度情報から、単位時間当たりの往復運動回数(ブラッシング周波数)に基づいて、ユーザの歯磨きの巧拙を評価することが開示されています(同文献段落[0101]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、歯ブラシが往復運動した回数で評価するので、歯磨きスキルを正しく評価することできないことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る歯磨きスキル評価装置は、
ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得部と、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出部と、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出部と、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価部と、
を備える。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る歯磨きスキル評価方法は、
ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価ステップと、
を含む。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る歯磨きスキル評価プログラムは、
ユーザが歯ブラシを用いて歯磨きをしている間の前記ユーザの歯磨き動作のセンサデータを取得するセンサデータ取得ステップと、
取得した前記センサデータから、ユーザの歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する動作パターン抽出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとに、ユーザの口腔内における前記歯ブラシの移動距離を導出する移動距離導出ステップと、
抽出された前記動作パターンごとの前記歯ブラシの移動距離と、前記動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価するスキル評価ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯磨きスキルを正しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置による移動距離の総和の計算例を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置が有する補正係数テーブルの一例を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る歯磨きスキル評価装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る歯磨きスキル評価装置が有する補正値テーブルの一例を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る歯磨きスキル評価装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る歯磨きスキル評価装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
次に本発明の第1実施形態に係る歯磨きスキル評価装置について、
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る歯磨きスキル評価装置100の動作の概要を説明するための図である。本実施形態に係る歯磨きスキル評価装置100は、ユーザが歯磨き中の歯ブラシの動作パターンと移動距離に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価する装置である。
【0012】
図1に示したように、ユーザ110は、加速度センサ120が取り付けられた歯ブラシを用いて、歯磨きを行う。歯磨きスキル評価装置100は、ユーザ110が、当該歯ブラシを用いて歯磨きを行っている最中の加速度センサ120で計測されたセンサデータ130を取得する。歯磨きスキル評価装置100は、取得したセンサデータ130を解析して、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する。取得するセンサデータ130は、加速度データおよび角速度データであるが、加速度データからでも動作パターン等を抽出することは可能である。なお、角速度データも併せて解析を行うと、より確度の高い動作解析や動作パターン抽出を行うことが可能となる。
【0013】
センサデータ130に示したように、ユーザ110の歯磨き動作には、様々な動作パターン(ブラッシング法)が含まれている。
図1に示した例では、動作パターンとして、スクラブ法131、横磨き法132、縦磨き法133、フォーンズ法134、舌側135(歯の裏側)、ローリング法136が含まれていることがわかる。これらの動作パターンは、センサデータ130から得られた加速度のX軸成分、Y軸成分、Z軸成分および角速度のX軸成分、Y軸成分、Z軸成分の波形の特徴や振幅、ピッチなどから特定することができる。抽出される動作パターンとしては、上述したように、スクラブ法131、横磨き法132、縦磨き法133、フォーンズ法134およびローリング法136などが挙げられる。
【0014】
そして、歯磨きスキル評価装置100は、センサデータ130を解析し、上述したような、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出し、抽出した動作パターンごとの歯ブラシの移動距離を導出する。ここで、歯ブラシの移動距離は、歯ブラシに取り付けられた加速度センサ120から得られたセンサデータから導出される距離であり、この距離は、加速度センサ120の移動距離となる。しかしながら、加速度センサ120は、歯ブラシに取り付けられているため、加速度センサ120の移動距離は、歯ブラシの移動距離(例えば、口腔内における歯ブラシのヘッドの移動距離)と同一視することができる。
【0015】
歯磨きスキル評価装置100は、導出した歯ブラシの移動距離に基づいて、ユーザの歯磨きスキルを評価する。歯磨きスキルの評価においては、歯磨きスキル評価装置100は、導出された移動距離をそのまま用いるのではなく、動作パターンごとの歯磨き効果に応じた知見を加味した補正済み移動距離に基づいて、ユーザ110のスキルを評価する。
【0016】
そして、歯磨きスキル評価装置100は、例えば、評価結果をユーザ110が所持するスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末へ送信してもよい。なお、歯磨きスキル評価装置100は、近距離無線技術を用いた無線通信を介して加速度センサ120からセンサデータを取得する。あるいは、加速度センサ120に一時的にセンサデータを記憶しておき、歯磨きスキル評価装置100は、ユーザ110の歯磨きが終了したら、加速度センサ120に記憶されているセンサデータを吸い上げるようにしてもよい。このように、歯磨きスキル評価装置100は、ユーザ110が歯磨き中にセンサデータを取得しても、ユーザ110の歯磨きが終了した後にセンサデータを取得してもよい。
【0017】
図2Aは、本実施形態に係る歯磨きスキル評価装置100の構成を説明するためのブロック図である。歯磨きスキル評価装置100は、センサデータ取得部201、動作パターン抽出部202、移動距離導出部203、補正済み移動距離算出部204、総和算出部205およびスキル評価部206を有する。
【0018】
センサデータ取得部201は、歯ブラシに取り付けられた加速度センサ120から、ユーザ110が当該歯ブラシを用いて歯磨きをしている間のセンサデータ130を取得する。加速度センサ120は、X(左右)軸、Y(前後)軸、Z(上下)軸の3軸加速度、および、当該3軸の角速度(3軸角速度)を計測するセンサである。そして、センサデータ取得部201は、ユーザ110が歯磨きをしている間の3軸加速度および3軸角速度のセンサデータ130を取得する。センサデータ取得部201によるセンサデータ取得の時間間隔は、任意の時間間隔とすることができる。
【0019】
なお、加速度センサ120は、歯ブラシの持ち手の近傍に設けられているが、歯ブラシのヘッド部分やその他の部分に設けられていてもよい。また、センサデータ取得部201は、例えば、ユーザ110の身体(例えば、手首)に装着されたスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスからセンサデータ130である加速度および角速度のデータを取得してもよい。また、センサデータ取得部201と加速度センサ120との通信方式は、近距離無線通信およびその他の無線通信であるが、これらには限定されず、有線通信であってもよい。
【0020】
動作パターン抽出部202は、取得したセンサデータ130から、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する。抽出される動作パターンは、ブラッシングの種類(ブラッシング法)に応じて、複数の動作パターンが組み合わされて抽出されることも、あるいは、単独の動作パターンのみが抽出されることもある。また、各ブラッシング法には、以下に示すような特徴があるため、動作パターン抽出部202は、取得したセンサデータ130を解析して、これらの特徴を表すセンサデータ130から各動作パターンを抽出する。ここで、ブラッシング法には、例えば、スクラブ法131(スクラビング法)、横磨き法132(水平法)、縦磨き法133、フォーンズ法134、ローリング法136、バス法および舌側磨き(歯の裏側磨き)などが含まれる。
【0021】
動作パターン抽出部202は、センサデータ130の解析の結果、以下のような特徴を見出した場合、それぞれの特徴に応じて、以下のブラッシング法を対応させて、対応するブラッシング法を動作パターンとして抽出する。
【0022】
スクラブ法131は、歯と歯茎とに対して直角に歯ブラシを当て、細かく左右に振動させるように歯を磨くブラッシング法であり、1つの歯に対して20~30回、歯ブラシを動かすブラッシング法である。歯の隙間の汚れを落とす磨き方であり、ブラシが固い場合には、歯茎がやせる原因になる。
【0023】
つまり、スクラブ法131は、歯ブラシハンドルが水平付近での細かい水平の動きをするブラッシング法である。スクラブ法131では、加速度センサ120の姿勢が水平付近(Y軸加速度0付近)であり、最も大きな変化を示すのはY軸加速度となる。Y軸加速度を2重積分して得られる移動距離(振幅)が、10mm未満(5~15mm未満、好ましくは、10mm未満)となる。ピッチは、2~6Hz程度となる。
【0024】
横磨き法132(水平法)は、大きなストロークで複数の歯を磨くブラッシング法である。すなわち、横磨き法132は、歯ブラシハンドルが水平付近での大きな水平の動きをするブラッシング法であり、スクラブ法131と比較すると振幅以外は同様のセンサデータ130を示す。振幅は、10mm以上(5~15mm以上、好ましくは、10mm以上)となる。ピッチは、2~4Hz程度となる。
【0025】
また、縦磨き法133は、横磨き法132による歯ブラシの動きの方向に対して直角の方向に歯ブラシを動かすブラッシング法である。歯ブラシの持ち方は、好ましくは横磨き法132と同じ持ち方で、歯ブラシを上下に動かす、あるいは、歯ブラシを垂直に持ち、上下に動かす、ブラッシング法である。
【0026】
すなわち、縦磨き法133は、歯ブラシハンドルが垂直付近での上下方向の動きをするブラッシング法である。縦磨き法133では、加速度センサ120の姿勢が水平付近(Y軸加速度0付近)であり、最も大きな変化を示すのはY軸加速度となる。振幅は、口の上下方向(上顎および下顎)で制約されるため、5~20mm程度となる。ピッチは、2~4Hz程度となる。
【0027】
フォーンズ法134は、子供や高齢者、歯磨きがうまくできない人が行いやすいブラッシング法であり、歯の表面に対して直角にブラシを当て、円を描くように上下の歯を一緒に磨くブラッシング法である。歯の表面の汚れを効果的に落とすことができるブラッシング法である。
【0028】
つまり、フォーンズ法134は、歯ブラシハンドルが水平付近でのハンドル軸を固定した回転運動をするブラッシング法である。フォーンズ法134では、加速度センサ120の姿勢が水平付近(Y軸加速度0付近)であり、X軸加速度およびY軸加速度の両方が変化する。角速度を計測できる場合には、Z軸角速度が他の方法と比べて大きく変化する。ピッチは、2~4Hz程度となる。
【0029】
ローリング法136は、歯ブラシを歯茎から歯に向かって回転させるように動かす磨き方である。従来は、テレビのコマーシャルなどでもよく見られたが、虫歯予防には適さないことが明らかになったため、最近ではあまり推奨されていないブラッシング法である。
【0030】
ローリング法136は、歯ブラシハンドルが水平付近でのハンドル軸(Y軸)の回転運動をするブラッシング法である。ローリング法136では、加速度センサ120がY軸を中心に回転するため、X軸およびZ軸の加速度が大きく変化し、Y軸加速度の変化は小さい。ローリング法136は、角速度を計測できる場合には、Y軸角速度が他の方法に比べ大きく変化する。ピッチは、1~4Hz程度となる。
【0031】
バス法は、歯と歯茎との境界部分に斜め(約45度の角度)に歯ブラシを当てて、左右に振動させるブラッシング法である。歯茎のマッサージ効果が高く、指3本ほどでブラシを持ち、力を入れずに軽く左右に振動させることが望ましいとされているブラッシング法である。歯ブラシを握りしめて強く左右に振動させると、逆に歯茎を削ってしまうこととなる。バス法は歯ブラシを振動させるように動かすためピッチ3-6Hz、ストロークは5mm以下となり、軽く歯ブラシが斜めに接しているため歯ブラシの毛の一部しか接触できないため効率の低い方法で、十分な清掃効果得るためには長い時間が必要になる。
【0032】
舌側(歯の裏側)磨きは、歯ブラシハンドルの姿勢が斜めとなるスクラブ法131である(スクラブ法131と縦磨き法133との間)。舌側磨きでは、加速度センサ120の姿勢が上顎では斜め下向き、下顎では斜め上を向く。スクラブ法131とは姿勢の違い(3軸の加速度の直流成分:重力加速度の向き)で判別する。舌側磨きでは、最も大きな変化を示すのはY軸加速度となる。Y軸加速度を2重積分して得られる移動距離(振幅)が、5~20mm程度となる。ピッチは、2~6Hz程度となる。
【0033】
ここで、振幅は、加速度を2重積分して得られる歯ブラシの移動距離である。例えば、フォーンズ法134の場合には、歯ブラシが回転しているので、X軸およびY軸の加速度から振幅を求め、楕円近似し、円周を振幅とすることができる。ローリング法136の場合には、歯ブラシの回転角を求め、歯ブラシの毛の長さ(12mm程度)を半径とした扇型の弧の長さを振幅とすることができる。
【0034】
歯ブラシの姿勢は、各軸の重力に対する向きで変化するので、次のようにして判断することができる。歯ブラシのハンドルが地面に対して水平を向いている場合には、Y軸の加速度は0となり、そのまま軸を固定して、長手方向に回転させるとX軸の加速度の値が変化する(ローリング法136の動き)。
【0035】
そして、動作パターン抽出部202は、例えば、歯ブラシの動きの方向が直線(Y方向)であり、センサデータ130の振幅が小さく(例えば、10mm未満)、歯ブラシの姿勢が水平であるセンサデータ130が得られた場合、スクラブ法131の動作パターンとして抽出する。
【0036】
また、動作パターン抽出部202は、歯ブラシの動きの方向が直線(Y方向)であり、センサデータ130の振幅が大きく(例えば、15mm以上)、歯ブラシの姿勢が水平であるセンサデータ130が得られた場合、横磨き法132(水平法)の動作パターンとして抽出する。
【0037】
さらに、動作パターン抽出部202は、歯ブラシの動きの方向が直線(Y方向)であり、歯ブラシの姿勢が略垂直の場合、あるいは、歯ブラシの動きの方向が直線(X方向)であり、歯ブラシの姿勢が水平の場合、縦磨き法133の動作パターンとして抽出する。
【0038】
さらにまた、動作パターン抽出部202は、歯ブラシの動きが回転、つまり、加速度は、XY方向成分が、角速度は、Z軸成分が検出された場合、フォーンズ法134の動作パターンとして抽出する。また、動作パターン抽出部202は、歯ブラシの動きが回転、つまり、加速度は、XZ方向成分が、角速度は、Y軸成分が検出された場合、ローリング法136の動作パターンとして抽出する。
【0039】
動作パターン抽出部202は、上述したように、取得したセンサデータ130を解析し、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する。なお、ユーザ110は、歯磨き中に、歯磨き部位に応じて、様々なブラッシング法を用いて歯磨きを行うため、動作パターン抽出部202は、センサデータ130から、一度の歯磨き行為に含まれる複数の動作パターンを抽出する。なお、ユーザ110が単一のブラッシング法のみで歯磨きを行う場合には、動作パターン抽出部202は、1つの動作パターンのみを抽出することとなる。
【0040】
移動距離導出部203は、抽出された動作パターンごとに、ユーザの口腔内における歯ブラシの移動距離を導出する。移動距離は、1回の歯磨き行為に含まれる動作パターンごとに導出される。移動距離は、加速度センサ120から取得したセンサデータ130から導出される。移動距離は、例えば、口腔内における歯ブラシヘッドの移動速度を200[mm/sec]、歯磨き時間として3分間を基準とした場合、1回の歯磨きの歯ブラシヘッドの移動距離の基準値は、36[m]となる。
【0041】
つまり、この基準値となる移動距離、36[m]を上回る場合には、歯磨きが効果的に行われていると考えられ、これを下回る場合には、歯磨きが効果的に行われていない(不十分である)と考えられる。なお、歯ブラシヘッドの移動距離については、歯磨きスキル評価装置100は、実際に導出された移動距離をそのまま用いていない。すなわち、歯磨きスキル評価装置100は、次に説明するように、導出された移動距離に補正を行うことで、各ブラッシング法における歯磨き効果を反映させた、補正済み移動距離を用いて、ユーザ110の歯磨きスキルを評価する。
【0042】
補正済み移動距離算出部204は、移動距離と、補正係数と、を乗じて得られる、移動距離を補正した補正済み移動距離を、抽出された動作パターンごとに算出する。ここで、補正係数は、ブラッシング法に応じて決められる係数である。例えば、フォーンズ法と134とローリング法136との2つの動作パターンを含む歯磨き法で、歯磨きを行い、2つの動作パターンにおける歯ブラシヘッドの移動距離が同じ場合を考える。上述したように、どのブラッシング法を用いて歯磨きをするかによって、歯垢や歯石などの除去具合に違いが生じていることが分かる。つまり、ブラッシング法により、歯磨き効果(ブラッシング効果)が異なることが分かる。したがって、異なるブラッシング法において、歯ブラシヘッドの移動距離が同じであったとしても、歯磨き効果には差異が生じる。
【0043】
そのため、上述のように、歯磨き行為に含まれる動作パターン(ブラッシング法)を抽出し、抽出された動作パターンごとに決められた補正係数を用いて、歯ブラシヘッドの移動距離を補正することにより、歯磨き効果を加味して、移動距離を適切に評価することができるようになる。すなわち、補正係数を導入することにより、歯ブラシヘッドの移動距離だけで歯磨きスキルの巧拙を決めるのではなく、歯磨き行為に含まれる動作パターン(ブラッシング法)に依存する歯磨き効果をも考慮した補正済み移動距離により歯磨きスキルの巧拙を決めることが可能となる。これにより、従来の歯磨きスキル評価方法と比較して、歯磨きスキルを適切に評価できるようになる。
【0044】
具体的には、補正係数は、以下のように、動作パターンごとの歯磨き効果に応じて、数値が決められている。左側が、動作パターン(ブラッシング法)、右側が、補正係数となっている。補正係数はブラッシング速度やブラッシング力などにより増減する場合があるため、一定の範囲で決めることができる。
【0045】
バス法 :0.3(0.1-0.6)
フォーンズ法 :1.5(1.0-2.0)
スクラブ法(st5mm未満) :0.4(0.1-0.6)
スクラブ法(st5~10mm未満) :0.8(0.4-1.2)
横磨き法(st10~20mm未満) :1.0(0.6-1.5)
横磨き法(st20~25mm未満) :0.8(0.4-1.2)
横磨き法(st25mm以上) :0.6(0.2-1.0)
縦磨き法 :1.0(0.6-1.5)
ローリング法 :0.3(0.1-0.6)
【0046】
以上示したように、歯磨き効果が大きい動作パターンには、高い値の補正係数が、歯磨き効果が小さい動作パターンには、小さい値の補正係数が割り当てられている。つまり、補正係数の値が高い動作パターンの場合には、実際の歯ブラシの移動距離よりも大きい移動距離として取り扱い、補正係数が低い値の動作パターンの場合には、実際の歯ブラシの移動距離よりも小さい移動距離として取り扱うこととなる。移動距離について、このような取り扱いをすることにより、最終的には、ユーザ110の歯磨きスキルを適切に評価することができるようになる。そして、補正済み移動距離算出部204は、この補正係数を用いて、移動距離を補正する。
【0047】
総和算出部205は、動作パターンごとに算出された補正済み移動距離の総和を算出する。ここで、
図2Bを参照して、補正済み移動距離の算出および補正済み移動距離の総和の算出の一例について説明する。同図に示した例では、抽出された動作パターン(ブラッシング法)は、全部で14要素であり、その内訳は、フォーンズ法134が2要素、横磨き法132が8要素、スクラブ法4要素である。そして、振幅は、1回の動作における歯ブラシの移動距離を示している。ここで、フォーンズ法134では、歯ブラシの1回転を1回の動作としてカウントし、スクラブ法131、横磨き法132や縦磨き法133では、歯ブラシの往復動作ではなく、片道動作を1回の動作としてカウントする。
【0048】
次に、各動作パターンにおける移動距離を導出する。動作パターンの移動距離は、振幅[mm]に動作パターンを行った回数を掛けて導出される。例えば、No.1のフォーンズ法134では、振幅が70[mm]で、回数が100[回]なので、歯ブラシの移動距離は、70[mm]×100=7[m]となる。同様に、No.2の横磨き法132では、振幅が18[mm]で、回数が120[回]なので、歯ブラシの移動距離は、18[mm]×120=2.16[m]となるが、ここでは、四捨五入して、2[m]としている。
【0049】
同様に、No.4のスクラブ法131では、振幅が8[mm]で、回数が100[回]となるので、歯ブラシの移動距離は、8[mm]×100=0.8[m]となる。このような計算を、No.1~14の全ての動作パターンについて繰り返して、1回の歯磨きに含まれる全ての動作パターンについての歯ブラシの移動距離を導出する。導出結果は、
図2Bに示した通りとなっている。
【0050】
次に、抽出された動作パターン(ブラッシング法)について、補正係数を決定する。補正係数は、上述したとおり、動作パターンごとに予め決められているので、適切な補正係数を選択すればよい。例えば、No.3の横磨き法132の場合、振幅(st)が18[mm]であるので、横磨き法(st10~20mm未満)の補正係数である、1.0が選択される。同様に、例えば、No.6のフォーンズ法134の場合は、1.5が補正係数として選択される。これを、抽出された全ての動作パターンについて繰り返して、各動作パターンの補正係数を選択する。選択結果は、
図2Bに示した通りとなっている。
【0051】
そして、補正済み移動距離の算出を行うが、補正済み移動距離は、各動作パターンについて、導出された移動距離と選択された補正係数とを乗ずることで得られる。例えば、No.1のフォーンズ法134の場合、移動距離が7[m]であり、補正係数が1.5であるので、補正済み移動距離は、7[m]×1.5=10.5[m]となる。また、例えば、No.2の横磨き法132の場合、移動距離が2[m]であり、補正係数が1であるので、補正済み移動距離は、2[m]×1=2[m]となる。このような計算を全ての動作パターンについて繰り返し、最後に、算出された補正済み移動距離の総和を算出する。
【0052】
したがって、
図2Bに示した例では、補正済み移動距離の総和は、10.5+2+2+0.64+0.64+10.5+2+2+2+2+0.64+0.64+2+2=39.56[m]となる。
【0053】
スキル評価部206は、抽出された動作パターンごとの歯ブラシの移動距離と、動作パターンに応じて決定される補正係数と、に基づいて、ユーザ110の歯磨きスキルを評価する。より詳細には、スキル評価部206は、算出された補正済み移動距離の総和に基づいて、ユーザ110の歯磨きスキルを評価する。
【0054】
スキル評価部206は、例えば、上述した、歯ブラシヘッドの移動距離の基準値36[m]と算出された総和とを比較することにより、ユーザの歯磨きスキルを評価する。
図2Bに示した例の場合、補正済み移動距離の総和が39.56[m]であり、基準値36[m]と比較すると、基準値を上回っていることが分かる。そのため、スキル評価部206は、
図2Bに示した例のユーザ110の歯磨きスキルに高い評価を与える。また、補正済み移動距離の総和が、基準値36[m]を下回っている場合には、そのユーザ110の歯磨きスキルに低い評価を与える。
【0055】
なお、歯磨きスキル評価装置100は、スキル評価部206において、評価されたユーザ110の歯磨きスキルについて、評価結果を、例えば、ユーザ110が所持するスマートフォンなどの携帯端末140へ送信する送信部を有してもよい。さらに、送信部は、評価結果の送信と共に、ユーザ110に適した道具(歯ブラシ)などの情報を送信して、ユーザ110に評価結果の改善方法を提案してもよい。
【0056】
次に、
図3を参照して、歯磨きスキル評価装置100が有する補正係数テーブル301の一例について説明する。補正係数テーブル301は、ブラッシング法311に関連付けて補正係数312を記憶する。ブラッシング法311は、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンである。例えば、歯ブラシをY軸方向に動かす、スクラブ法131、横磨き法132では、歯ブラシを動かすストロークの長さに応じて、5段階に分類されている。つまり、同じ動き方であっても一度に動かす歯ブラシの距離(片道動作の長さ)によって、歯磨き効果が異なるため、このように分類をしている。補正係数312は、各動作パターンに応じて決められた補正値である。そして、補正済み移動距離算出部204は、補正係数テーブル301を参照して、適切な補正係数を選択する。
【0057】
図4を参照して、歯磨きスキル評価装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2の歯磨きスキル評価装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0058】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。センサデータ441は、加速度センサ120から取得したデータである。動作パターンデータ442は、センサデータを解析して抽出された歯磨き動作に含まれる動作のパターンについてのデータである。移動距離データ443は、抽出された動作パターンごとの歯ブラシヘッドの移動距離についてのデータである。補正係数データ444は、抽出された動作パターンに応じて決められている移動距離を補正するための係数のデータである。
【0059】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0060】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、補正係数テーブル301を格納する。補正係数テーブル301は、ブラッシング法311と補正係数312との関係を管理するテーブルである。
【0061】
ストレージ450は、さらに、センサデータ取得モジュール451、動作パターン抽出モジュール452、移動距離導出モジュール453、補正済み移動距離算出モジュール454、総和算出モジュール455およびスキル評価モジュール456を格納する。センサデータ取得モジュール451は、歯ブラシに取り付けられた加速度センサ120から、ユーザ110が当該歯ブラシを用いて歯磨きをしている間のセンサデータを取得するモジュールである。動作パターン抽出モジュール452は、取得したセンサデータから、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出するモジュールである。移動距離導出モジュール453は、抽出された動作パターンごとに、ユーザ110の口腔内における歯ブラシの移動距離を導出するモジュールである。補正済み移動距離算出モジュール454は、移動距離と、補正係数と、を乗じて得られる、移動距離を補正した補正済み移動距離を、抽出された動作パターンごとに算出するモジュールである。総和算出モジュール455は、動作パターンごとに算出された補正済み移動距離の総和を算出するモジュールである。スキル評価モジュール456は、算出された補正済み移動距離の総和に基づいて、ユーザ110の歯磨きスキルを評価するモジュールである。これらのモジュール451~456は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム457は、歯磨きスキル評価装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0062】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、歯磨きスキル評価装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0063】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、歯磨きスキル評価装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2の歯磨きスキル評価装置100の各機能構成を実現する。
【0064】
ステップS501において、センサデータ取得部201は、加速度センサ120からユーザ110が歯磨きをしている間のセンサデータを取得する。ステップS503において、動作パターン抽出部202は、取得したセンサデータから、ユーザ110の歯磨き動作に含まれる動作パターンを抽出する。ステップS505において、移動距離導出部203は、抽出された動作パターンごとに、ユーザ110の口腔内における歯ブラシの移動距離を導出する。ステップS507において、歯磨きスキル評価装置100は、抽出された動作パターンに対応する補正係数を決定する。ステップS509において、歯磨きスキル評価装置100は、抽出された全ての動作パターンに対応する補正係数が選択されたか否かを判断する。選択されていないと判断した場合(ステップS509のNO)、歯磨きスキル評価装置100は、ステップS507へ戻る。選択されたと判断した場合(ステップS509のYES)、歯磨きスキル評価装置100は、次のステップへ進む。
【0065】
ステップS511において、補正済み移動距離算出部204は、全ての動作パターンについて、導出された移動距離に動作パターンに応じて決められている補正係数を掛けて、補正済み移動距離を算出する。ステップS513において、総和算出部205は、動作パターンごとに算出された補正済み移動距離の総和を算出する。ステップS515において、スキル評価部206は、算出された補正済み移動距離の総和に基づいて、ユーザの110歯磨きスキルを評価する。なお、歯磨きスキルの評価結果をユーザ110が所持する携帯端末140に送信してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、動作パターンに応じた補正係数を導入して、歯ブラシの移動距離を補正して、ユーザの歯磨きスキルを評価するので、動作パターンごとの歯磨き効果を反映した、より正確な歯磨きスキル評価をすることができる。また、ユーザに歯磨きスキルの評価結果を送信するので、ユーザは、自己の歯磨きスキルを客観的に認識することができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る歯磨きスキル評価装置600について、
図6~
図9を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る歯磨きスキル評価装置600の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係る歯磨きスキル評価装置600は、上記第1実施形態と比べると、カウント部、歯磨きスコア算出部および送信部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0068】
歯磨きスキル評価装置600は、カウント部601、歯磨きスコア算出部602および送信部603をさらに有する。カウント部601は、取得したセンサデータ130から、ユーザ110が、動作パターンを切り替えた回数を切り替え回数としてカウントする。
【0069】
ユーザ110が、口腔内の歯の部位を意識して歯磨きを行っている場合には、最低でも16回のブラシ位置の切り替えが必要となる。つまり、頬側の歯(歯の正面側)の面について、正面側、左右側面側の計3回、舌側の歯(歯の裏側)の面について、同様に、正面側、左右側面側の計3回、咬合面の左右の奥歯側の計2回、合計8回の切り替えが必要となる。さらに、これを、上下の歯について2回繰り返すので、合計16回が切り替え回数の基準となる。また、ユーザ110の歯磨きスキルが高い場合、同じ部位を磨いていても、歯ブラシの角度を少しずつ変えてブラッシングを行うことがあるので、切り替え回数が、さらに増えることとなる。
【0070】
このように、歯ブラシの角度が変わった場合も、動作パターンの切り替え回数としてカウントする。なお、フォーンズ法134の場合は、上下の歯を同時に磨くので、切り替え回数が減る場合がある。たたし、フォーンズ法134の場合、切り替え回数は減少する傾向にあるが、歯磨き効果が高いので、上述した補正係数として大きな値を設定している。そのため、フォーンズ法134では、歯ブラシの移動距離と切り替え回数とをトータルで考慮すると、歯磨きスキルが高いと評価される。
【0071】
歯磨きスコア算出部602は、補正済み移動距離の総和と、カウントされた切り替え回数に応じて決定される補正値と、を乗じて、歯磨きスコアを算出する。ブラッシング法の切り替え回数は、全顎で16回を基準として、切り替え回数に基づく補正値が決められている。
【0072】
例えば、切り替え回数と補正値との対応関係は、
8回未満 :0.5
8~14回未満:0.8
14~18回未満:1.0
18回以上 :1.25
となっている。
【0073】
歯磨きスコア算出部602は、カウントされた切り替え回数に基づいて、補正値を選択して、歯磨きスコアを算出する。例えば、
図2Bに示した例では、切り替え回数が14回であるので、歯磨きスコア算出部602は、補正値として、0.8を用いて、歯磨きスコアを算出する。歯磨きスコアは、39.56[m]×0.8=31.65[m]となる。
【0074】
そして、スキル評価部206は、算出された歯磨きスコアに基づいて、ユーザ110の歯磨きスキルを評価する。スキルの評価は、例えば、移動距離の基準値である36[m]に対して、どれだけたくさん移動させたか、あるいは、移動させていないかについて行われる。このような評価を行うために、スキル評価部206は、算出された歯磨きスコアをポイント化してもよい。
【0075】
つまり、スキル評価部206は、歯ブラシの移動距離の基準値36[m]を用いて、算出した歯磨きスコアをポイント化する。スキル評価部206は、次の計算により、歯磨きスコアのポイント=(31.65[m]/36[m])×100=87.92[ポイント]を算出する。このように、基準値36[m]を用いて、歯磨きスコアをポイント化すると、基準ポイント(100[ポイント])と比較することにより、歯磨きスコアの良し悪しを容易に評価することができる。
【0076】
送信部603は、ユーザ110の歯磨きスキルの評価結果を、例えば、ユーザ110が所持するスマートフォンなどの携帯端末140等に送信する。つまり、送信部603は、算出された歯磨きスコア、あるいは、ポイント化された歯磨きスコアを送信する。
【0077】
また、送信部603は、歯磨きスコア等の送信とともに、例えば、ブラッシングに関するアドバイスや、歯ブラシ選択に関するアドバイス、歯磨き剤に関するアドバイスなどを送信してもよい。
【0078】
ブラッシングに関するアドバイスは、例えば、「もう少し小さな幅で磨いてみてください」、「どこを磨いているかを意識して、全体を磨くようにして下さい」、「一番奥の奥歯を意識して磨いてみて下さい」、「上手にブラッシングできていいます」などであるが、これらには限定されない。
【0079】
また、歯ブラシ選択に関するアドバイスは、例えば、「大き目の複合植毛の歯ブラシを推奨」、「歯周病が気になる場合ヘッドの幅が広くてやわらかめがおすすめ」、「忙しいときには大きめヘッドの歯ブラシで時短できます」などであるが、これらには限定されない。
【0080】
さらに、歯磨き剤に関するアドバイスは、例えば、「虫歯が心配なら高濃度フッ素配合の歯磨き剤を1g以上使用してください」、「歯磨き剤を付けたら、一番虫歯が気になるところを最初に磨いてください」、「歯磨き剤をつけると飛沫が飛びにくくなります」などであるが、これらには限定されない。
【0081】
次に、
図7を参照して、歯磨きスキル評価装置600が有する補正値テーブル701の一例について説明する。補正値テーブル701は、切り替え回数711に関連付けて補正値712を記憶する。切り替え回数711は、ユーザ110が歯磨き中に動作パターン等を切り替えた回数である。補正値712は、切り替え回数に応じて、補正済み移動距離の総和を補正するための値である。そして、歯磨きスコア算出部602は、補正値テーブル701を参照して、切り替え回数に応じて補正値を選択する。
【0082】
図8を参照して、歯磨きスキル評価装置600のハードウェア構成について説明する。RAM840は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM840には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。切り替え回数データ841は、ユーザ110が歯磨き中に動作パターン等を切り替えた回数をカウントしたデータである。補正値データ842は、カウントされた切り替え回数に応じて選択された補正済み移動距離を補正するための値のデータである。
【0083】
ストレージ850には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、補正値テーブル701を格納する。補正値テーブル701は、切り替え回数711と補正値712との関係を管理するテーブルである。
【0084】
ストレージ850は、さらに、カウントモジュール851、歯磨きスコア算出モジュール852および送信モジュール853を格納する。カウントモジュール851は、ユーザ110が、歯磨き中に動作パターンを切り替えた回数をカウントするモジュールである。歯磨きスコア算出モジュール852は、補正済み移動距離の総和と補正値とを乗じて歯磨きスコアを算出するモジュールである。送信モジュール853は、算出された歯磨きスコア等をユーザ110が所持する携帯端末140等に送信するモジュールである。これらのモジュール851~853は、CPU410によりRAM840のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。
【0085】
次に、
図9に示したフローチャートを参照して、歯磨きスキル評価装置600の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図8のCPU410がRAM840を使用して実行し、
図6の歯磨きスキル評価装置600の各機能構成を実現する。
【0086】
ステップS901において、カウント部601は、ユーザ110が歯磨き中の動作パターン等の切り替え回数をカウントする。ステップS903において、歯磨きスコア算出部602は、補正済み移動距離の総和と切り替え回数に応じて決定される補正値とを乗じて歯磨きスコアを算出する。ステップS905において、送信部603は、歯磨きスキルの評価結果をユーザ110が所持する携帯端末140等へ送信する。
【0087】
本実施形態によれば、切り替え回数を加味してユーザの歯磨きスキルを評価するのでより正確な評価を行うことができる。また、切り替え回数の大小から、ユーザが歯磨き部位を意識しているか否かも推定できるので、歯磨きスキルの評価とともに、ユーザに対して適切なアドバイスを送ることもできる。
【0088】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0089】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。