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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078235
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】系統管理システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/144 20220101AFI20240603BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240603BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20240603BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240603BHJP
   F24H 15/104 20220101ALI20240603BHJP
   F24H 15/421 20220101ALI20240603BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240603BHJP
   F24H 15/215 20220101ALN20240603BHJP
   F24H 15/219 20220101ALN20240603BHJP
   F24H 15/212 20220101ALN20240603BHJP
   F24H 15/238 20220101ALN20240603BHJP
【FI】
F24H15/144
F24H1/00 Z
F24H15/395
F24H15/269
F24H15/104
F24H15/421
G06Q50/10
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/212
F24H15/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190650
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 道治
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】有▲富▼ 陽子
(72)【発明者】
【氏名】永盛 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】厚東 良和
(72)【発明者】
【氏名】伏田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】沖野 健治
【テーマコード(参考)】
3L122
5L049
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA63
3L122AA64
3L122AB22
3L122AB41
3L122BA02
3L122BA13
3L122BA14
3L122BA24
3L122BB22
3L122BB23
3L122BB24
3L122FA24
3L122FA35
3L122GA08
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】熱媒体系統の不具合を適切に検知する系統管理システムを提供する。
【解決手段】系統管理システムX1は、冷却装置E1で冷却された水が配管を介して保冷装置23に導かれるように構成された冷熱システムH1の損失熱量を算出し、損失熱量を含む情報を表示装置に表示させる処理部を備え、処理部は、所定期間における冷却装置E1の供給熱量の積算値と、所定期間における保冷装置23の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、損失熱量を算出し、所定期間は、冷却装置E1の駆動の開始時から、当該駆動に伴う保冷装置23のエネルギ消費の終了時までの期間を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源装置で加熱又は冷却された熱媒体が配管を介して熱エネルギの消費装置に導かれるように構成された熱媒体系統の損失熱量を算出し、前記損失熱量を含む情報を表示装置に表示させる処理部を備え、
前記処理部は、所定期間における前記熱源装置の供給熱量の積算値と、前記所定期間における前記消費装置の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、前記損失熱量を算出し、
前記所定期間は、前記熱源装置の駆動の開始時から、当該駆動に伴う前記消費装置のエネルギ消費の終了時までの期間を含んでいる、系統管理システム。
【請求項2】
熱源装置で加熱又は冷却された熱媒体が蓄熱槽に貯留され、前記蓄熱槽から熱媒体が配管を介して熱エネルギの消費装置に導かれるように構成された熱媒体系統の損失熱量を算出し、前記損失熱量を含む情報を表示装置に表示させる処理部を備え、
前記処理部は、所定期間における前記熱源装置の供給熱量の積算値と、前記所定期間における前記消費装置の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、前記損失熱量を算出し、
前記所定期間は、前記消費装置のエネルギ消費の開始時から、当該エネルギ消費を補うように駆動される前記熱源装置の駆動終了時までの期間を含んでいる、系統管理システム。
【請求項3】
前記所定期間の始点は、前記熱源装置の前回の駆動に伴う前記消費装置の前回のエネルギ消費の終了時から、前記熱源装置の今回の駆動開始時までの間における所定のタイミングであり、
前記所定期間の終点は、前記消費装置の今回のエネルギ消費の終了時から、前記熱源装置の次回の駆動開始時までの間における所定のタイミングであること
を特徴とする請求項1に記載の系統管理システム。
【請求項4】
前記所定期間の始点は、前記熱源装置の前回の駆動終了時から、前記熱源装置の今回の駆動に対応する前記消費装置の今回のエネルギ消費の開始時までの間における所定のタイミングであり、
前記所定期間の終点は、前記熱源装置の今回の駆動終了時から、前記消費装置の次回のエネルギ消費の開始時までの間における所定のタイミングであること
を特徴とする請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項5】
前記熱源装置から前記消費装置に熱媒体を導く配管、及び、前記消費装置から前記熱源装置に熱媒体を導く配管のうちの一方に流量計が設置され、他方にポンプが設置され、
前記処理部は、前記一方の配管における熱媒体の流量を前記流量計から取得し、前記他方の配管を通流する熱媒体の流量を前記ポンプの回転速度に基づいて算出すること
を特徴とする請求項1に記載の系統管理システム。
【請求項6】
前記熱源装置から前記蓄熱槽に熱媒体を導く配管、及び、前記蓄熱槽から前記熱源装置に熱媒体を導く配管のうちの一方に流量計が設置され、他方にポンプが設置され、
前記処理部は、前記一方の配管における熱媒体の流量を前記流量計から取得し、前記他方の配管を通流する熱媒体の流量を前記ポンプの回転速度に基づいて算出すること
を特徴とする請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項7】
前記蓄熱槽から前記消費装置に熱媒体を導く配管、及び、前記消費装置から前記蓄熱槽に熱媒体を導く配管のうちの一方に流量計が設置され、他方にポンプが設置され、
前記処理部は、前記一方の配管における熱媒体の流量を前記流量計から取得し、前記他方の配管を通流する熱媒体の流量を前記ポンプの回転速度に基づいて算出すること
を特徴とする請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項8】
前記処理部は、前記熱媒体系統の初回運転時には、当該初回運転時での前記所定期間における前記供給熱量の積算値及び前記消費熱量の積算値に基づいて、前記損失熱量を算出し、当該損失熱量よりも高い所定の値を損失熱量の基準値として設定し、次回の運転からは、前記基準値に基づいて、前記熱媒体系統の異常を診断すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項9】
前記処理部は、前記熱媒体系統の直近のメンテナンスから所定の期間が経過している場合、前記熱媒体系統の今回の運転に伴う前記損失熱量よりも高い所定の値に前記損失熱量の基準値を更新し、次回の運転からは、更新後の前記基準値に基づいて、前記熱媒体系統の異常を診断すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記熱源装置と前記消費装置との間の配管に設けられるポンプの回転速度と、前記ポンプの流量特性と、に基づいて、前記ポンプの流量を算出し、
前記熱媒体系統の初回運転時である場合、又は、前記熱媒体系統の直近のメンテナンスから所定の期間が経過している場合、前記熱媒体系統の稼働情報に基づいて、前記流量特性のパラメータを更新すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項11】
前記処理部は、前記損失熱量と所定の基準値との間の差分、及び、前記損失熱量の変化速度のうちの少なくとも一方に基づいて、前記熱媒体系統の異常が緊急性を要するものであるか否かを診断し、前記緊急性の有無に応じて、診断後の前記所定期間の長さを変更すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の系統管理システム。
【請求項12】
前記処理部は、前記緊急性がある場合には、前記所定期間の長さを診断前よりも短くするように変更し、
変更前の前記所定期間には、複数の前記期間が含まれていること
を特徴とする請求項11に記載の系統管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、系統管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式の給湯機に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「ヒートポンプへの沸き上げ指示後の所定期間内に該算出手段が算出する該ヒートポンプ実効出力熱量が予め定めた熱量に到達しなかった場合、該ヒートポンプの加熱能力低下と判断する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-57168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、給湯機の貯湯タンクを含む温水経路で水漏れが生じて、微小な熱損失が継続的に生じている場合、単位時間当たりの加熱能力の低下幅が微小になるため、水漏れの検知が困難になる。水漏れ等の不具合を早期に発見して、電気使用量や水道使用量の長期的な損失を見逃さないようにすることが望ましいが、そのような技術については特許文献1には記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る系統管理システムは、熱源装置で加熱又は冷却された熱媒体が配管を介して熱エネルギの消費装置に導かれるように構成された熱媒体系統の損失熱量を算出し、前記損失熱量を含む情報を表示装置に表示させる処理部を備え、前記処理部は、所定期間における前記熱源装置の供給熱量の積算値と、前記所定期間における前記消費装置の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、前記損失熱量を算出し、前記所定期間は、前記熱源装置の駆動の開始時から、当該駆動に伴う前記消費装置のエネルギ消費の終了時までの期間を含んでいることとした。なお、その他については、実施形態の中で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る系統管理システムを含む構成図である。
図2】第1実施形態に係る系統管理システムを含む機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る系統管理システムにおける処理の流れを示す説明図である。
図4】第1実施形態に係る系統管理システムの対象である冷熱システムにおける供給熱量及び消費熱量の瞬時値の変化を示す説明図である。
図5】第1実施形態に係る系統管理システムにおいて、供給熱量及び消費熱量の各積算値の推移を示す表示画面例である。
図6】第1実施形態に係る系統管理システムにおいて、供給熱量及び損失熱量の各積算値の推移を示す別の表示画面例である。
図7】第2実施形態に係る系統管理システムを含む構成図である。
図8】第2実施形態に係る系統管理システムが備える系統管理装置を含む機能ブロック図である。
図9】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの沸上げ運転時の冷媒や湯水の流れを示す説明図である。
図10】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの給湯運転時の湯水の流れを示す説明図である。
図11】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの湯はり運転時の湯水の流れを示す説明図である。
図12】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの追焚き運転時の湯水の流れを示す説明図である。
図13】第2実施形態に係る系統管理システムにおいて、給湯システムの稼働情報に基づく正常性診断の流れを示す説明図である。
図14】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムにおける供給熱量及び消費熱量の瞬時値の変化を示す説明図である。
図15】第2実施形態に係る系統管理システムにおける診断の1サイクルごとの損失熱量の変化を示す説明図である。
図16】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの異常が入出力装置に通知される場合の例を示す説明図である。
図17】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの異常がユーザの端末装置に通知された場合の表示画面を示す説明図である。
図18】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの異常がユーザの端末装置に通知された場合の別の表示画面を示す説明図である。
図19】第2実施形態に係る系統管理システムの対象である給湯システムの異常がユーザの端末装置に通知された場合のさらに別の表示画面を示す説明図である。
図20】第2実施形態に係る系統管理システムにおける、損失熱量の更新に関するフローチャートである。
図21】第2実施形態に係る系統管理システムにおける、熱源側ポンプの流量特性の更新に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る系統管理システムX1を含む構成図である。
なお、図1の太い実線は、冷媒等が流れる配管を示している。また、図1の破線は、信号線(無線通信の場合も含む)を示している。図1に示す系統管理システムX1は、冷熱システムH1(熱媒体系統)における損失熱量等を算出するシステムであり、系統管理装置100を含んで構成されている。以下では、まず、冷熱システムH1について簡単に説明した後、系統管理システムX1について詳細に説明する。
【0008】
<冷熱システムの構成>
冷熱システムH1(熱媒体系統)は、冷却装置E1で冷やされた水(熱媒体)によって、保冷装置23の保冷空間A1を所定の温度範囲に維持するシステムである。図1に示すように、冷熱システムH1は、冷媒が循環する1次側システム10と、水が循環する2次側システム20と、を含んで構成されている。1次側システム10と2次側システム20とは、吸熱器14において熱的に接触している。
【0009】
図1に示すように、1次側システム10は、圧縮機11と、放熱器12(凝縮器)と、膨張弁13と、吸熱器14(蒸発器)と、を順次に介して冷媒が循環する回路である。1次側システム10の冷媒には、例えば、代替フロン冷媒であるR32やR1234yfの他、自然冷媒であるR744といったものが用いられる。
【0010】
圧縮機11は、冷媒を圧縮する機器である。放熱器12は、圧縮機11から吐出される高温高圧の冷媒と、送風ファン15によって送り込まれる空気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。このような放熱器12として、例えば、クロスフィンチューブ熱交換器や扁平管熱交換器が用いられる。膨張弁13は、放熱器12で凝縮した冷媒を減圧する弁である。なお、膨張弁13に代えて、キャピラリチューブ(図示せず)が用いられてもよい。膨張弁13で減圧された冷媒は、吸熱器14に導かれる。
【0011】
吸熱器14は、1次側システム10の冷媒が通流する伝熱管と、2次側システム20の水が通流する水配管と、が流れ方向で熱的に接触するように構成されている。なお、吸熱器14として、1次側システム10の冷媒が通流する伝熱管が貯水タンク(図示せず)の内側又は外側に配置された構成のものが用いられてもよい。
【0012】
2次側システム20は、搬送ポンプ21と、吸熱器14の水配管と、流量計22と、保冷装置23の容器23aと、を順次に介して水が循環する回路である。図1の例では、吸熱器14における水配管の入口側に冷却前温度センサ24が設置されている。また、吸熱器14における水配管の出口側に冷却後温度センサ25が設置されている。流量計22は、保冷装置23に向かう水の流量を検出するものであり、保冷装置23の上流側の水配管に設置されている。
【0013】
保冷装置23は、食品等の冷却対象を保管するための保冷空間A1が設けられた容器23aと、この容器23aの外側に巻回される水配管(図示せず)と、を備えている。容器23aに巻回される水配管の入口側には保冷装置入口温度センサ26が設置され、出口側には保冷装置出口温度センサ27が設置されている。なお、保冷空間A1の外側に所定の貯水空間(図示せず)を設けて、吸熱器14で冷やされた水を貯水空間に流入させ、さらに、貯水空間の下側から水を流出させるようにしてもよい。
【0014】
図1の例では、冷媒が循環する1次側システム10の他、搬送ポンプ21といった2次側システム20の一部の機器が冷却装置E1(熱源装置)に設置されている。また、2次側システム20の残りの各機器が保冷装置23(消費装置)に設置されている。図1に示す接続配管K1は、冷却装置E1で冷やされた水を保冷装置23に導く配管である。別の接続配管K2は、保冷装置23で吸熱した水を冷却装置E1に戻す配管である。これらの接続配管K1,K2は、その外周側が断熱材(図示せず)で覆われている。
【0015】
そして、冷熱システムH1(熱媒体系統)は、冷却装置E1(熱源装置)で冷却された水(熱媒体)が配管を介して保冷装置23(熱エネルギの消費装置)に導かれるように構成されている。その結果、保冷空間A1の熱(初期状態で存在する熱や外部から侵入する熱)が低温の水に放熱され、保冷空間A1が冷却される。
【0016】
また、接続配管K1,K2の長さが長いほど外部から熱が侵入しやすくなるため、熱損失が生じやすくなる。また、配管の継ぎ目等を介して水が漏れ出ている場合には、少量ずつの漏洩であっても、長期的には大きな熱損失になる可能性がある。そこで、第1実施形態では、系統管理システムX1が冷熱システムH1の損失熱量を算出するようにしている。
【0017】
<系統管理装システムの構成>
図2は、系統管理システムX1を含む機能ブロック図である。
図2に示すように、系統管理装置100は、処理部30と、出力部42と、送受信部43と、を備えている。処理部30は、冷熱システムH1(熱媒体系統:図1参照)の損失熱量を算出し、この損失熱量を含む情報を出力部42(表示装置)や端末装置50(表示装置)に表示させる機能を有している。図2に示すように、処理部30は、制御部31と、供給温度差取得部32と、搬送流量推定部33と、搬送推定情報記憶部34と、供給流量取得部35と、供給熱量算出部36と、熱量記憶部37と、を備えている。また、系統管理装置100は、前記した構成の他に、消費温度差取得部38と、消費流量取得部39と、消費熱量算出部40と、損失熱量算出部41と、を備えている。
【0018】
制御部31は、前記した各センサの検出値に基づいて、搬送ポンプ21の回転速度指令値を算出する。この回転速度指令値は、搬送ポンプ21に出力される他、後記する搬送流量推定部33にも出力される。供給温度差取得部32は、吸熱器14(図1参照)に向かう水の温度と、吸熱器14(図1参照)で冷やされた水の温度と、の間の温度差を算出する。すなわち、供給温度差取得部32は、冷却前温度センサ24の検出値から冷却後温度センサ25の検出値を減算することで、吸熱器14(図1参照)の上流側・下流側の温度差を算出する。
【0019】
搬送流量推定部33は、搬送ポンプ21の回転速度指令値に基づいて、搬送ポンプ21の流量を算出する。なお、搬送ポンプ21の回転速度と流量との間の関係は、所定の数式又はデータテーブルとして、搬送推定情報記憶部34に予め記憶されている。供給流量取得部35は、搬送ポンプ21の流量を搬送流量推定部33から取得し、取得した流量を供給熱量算出部36に出力する。
【0020】
供給熱量算出部36は、供給温度差取得部32で算出された温度差や、供給流量取得部35で取得された流量の他、水の密度・比熱に基づいて、吸熱器14(図1参照)で水が冷やされる際の瞬時熱量(単位時間当たりの水の放熱量)を算出する。供給熱量算出部36の算出結果は、熱量記憶部37に格納される。熱量記憶部37には、供給熱量算出部36の算出値等が日付・時刻に対応付けて格納される。
【0021】
消費温度差取得部38は、保冷装置23(図1参照)に向かう水の温度と、保冷装置23で吸熱した水の温度と、の間の温度差を算出する。すなわち、消費温度差取得部38は、保冷装置出口温度センサ27の検出値から保冷装置入口温度センサ26の検出値を減算することで、保冷装置23(図1参照)の上流側・下流側の温度差を算出する。
【0022】
消費流量取得部39は、流量計22の検出値を取得し、この検出値を消費熱量算出部40に出力する。消費熱量算出部40は、消費温度差取得部38で算出された温度差や、消費流量取得部39で取得された流量の他、水の比熱・密度に基づいて、保冷装置23(図1参照)が水で冷やされる際の瞬時熱量(単位時間当たりの水の吸熱量)を算出する。消費熱量算出部40の算出結果は、日付・時刻に対応付けて熱量記憶部37に格納される。
【0023】
損失熱量算出部41は、所定期間における供給熱量(吸熱器14での水の放熱量)の積算値、及び、所定期間における消費熱量(保冷装置23での水の吸熱量)の積算値を算出する。そして、損失熱量算出部41は、供給熱量の積算値から消費熱量の積算値を減算することで、損失熱量を算出する。損失熱量算出部41の算出結果は、日付・時刻に対応付けて、熱量記憶部37に格納される。
【0024】
図2に示す出力部42は、例えば、ディスプレイであり、供給熱量・消費熱量の積算値や損失熱量といった情報を所定に表示する。送受信部43は、端末装置50との間でデータの送受信を行う。このような端末装置50として、ユーザのスマートフォンやタブレットや携帯電話といった携帯端末の他、中央管理室(図示せず)のモニタが挙げられる。
【0025】
<系統管理装システムの処理>
図3は、系統管理システムにおける処理の流れを示す説明図である(適宜、図2も参照)。
図3のステップS101において系統管理装置100の処理部30は、冷熱システムH1(図1参照)の稼働情報を取得する。稼働情報には、冷熱システムH1の各センサの検出値の他、搬送ポンプ21の回転速度指令値が含まれている。
ステップS102において処理部30は、供給温度差取得部32によって、吸熱器14(図1参照)の上流側・下流側の温度差(冷却前後温度差)を算出する。
【0026】
ステップ103において処理部30は、搬送流量推定部33によって、搬送ポンプ21の回転速度指令値に基づき、搬送ポンプ21の搬送流量を算出する。
ステップS104において処理部30は、供給熱量算出部36によって、冷却前後の水の温度差や搬送流量に基づき、吸熱器14(図1参照)で水が冷却される際の単位時間当たりの水の放熱量(瞬時供給熱量)を算出する。
ステップS105において処理部30は、損失熱量算出部41によって、所定期間での瞬時供給熱量を積算する(逐次に和をとる)ことで、積算供給熱量を算出する。
【0027】
ステップS106において処理部30は、消費温度差取得部38によって、保冷装置23(図1参照)の上流側・下流側の温度差(保冷装置前後温度差)を算出する。
ステップS107において処理部30は、消費流量取得部39によって、流量計22の検出値(搬送流量)を取得する。
ステップS108において処理部30は、消費熱量算出部40によって、保冷装置前後温度差や搬送流量に基づき、保冷装置23(図1参照)が水で冷やされる際の単位時間当たりの水の吸熱量(瞬時消費熱量)を算出する。
【0028】
ステップS109において処理部30は、損失熱量算出部41によって、所定期間での瞬時消費熱量を積算する(逐次に和をとる)ことで、積算消費熱量を算出する。
ステップS110において処理部30は、損失熱量算出部41によって、積算供給熱量と積算消費熱量との差をとることで、損失熱量を算出する。
ステップS111において処理部30は、積算供給熱量や積算消費熱量、損失熱量等の算出結果を出力部42に表示させる。
ステップS112において処理部30は、送受信部43を介して、積算供給熱量や積算消費熱量、損失熱量の算出結果を端末装置50に送信する。なお、図3に示す一連の処理は、所定に繰り返される。
【0029】
図1に示す冷却装置E1は、保冷装置23の保冷空間A1を所定の温度範囲に維持するように制御される。例えば、保冷空間A1の温度が下がり過ぎた場合には、冷却を止めるために圧縮機11が停止される。また、保冷空間A1の温度が上がり過ぎた場合には、冷却を再開するために圧縮機11が再び駆動される。その結果、圧縮機11は、駆動・停止を交互に繰り返すことになる。なお、冷却装置E1の供給能力と、保冷装置23の消費熱量と、が拮抗し続けている場合には、圧縮機11が停止せずに運転が継続されることになるが、その場合でも、1日間や1週間、1か月等、ユーザが定めた所定の運用ルールに基づく周期で圧縮機11の駆動・停止が繰り返される。
【0030】
図4は、冷熱システムにおける供給熱量及び消費熱量の瞬時値の変化を示す説明図である(適宜、図1も参照)。
なお、図4の上段・下段のグラフの横軸は、時刻である。図4の上段のグラフの縦軸は供給熱量の瞬時値であり、また、下段のグラフの縦軸は消費熱量の瞬時値である。供給熱量の瞬時値とは、吸熱器14(図1参照)における水から冷媒への時々刻々の放熱量である。図4では、定常状態における供給熱量の瞬時値をQ1としている。また、消費熱量の瞬時値とは、保冷装置23(図1参照)における水の時々刻々の吸熱量である。図4では、定常状態における消費熱量の瞬時値をQ2としている。
【0031】
図1に示す冷熱システムH1では、吸熱器14で冷やされた水が、接続配管K1を介して保冷装置23に導かれる。その結果、接続配管K1では、周囲と水と間の温度差に起因する熱侵入が生じる。したがって、保冷空間A1の冷却が定常的に継続されているときには、図4に示すように、供給熱量Q1が消費熱量Q2よりも大きくなる。この場合の時々刻々の熱侵入量は、供給熱量Q1から消費熱量Q2を減算することで算出される。冷却装置E1と保冷装置23とは、接続配管K1の長さの分だけ離れているため、冷却効果には所定の時間遅れが生ずる。図4では、この冷却効果の時間遅れをΔt1としている。
【0032】
系統管理装置100が積算供給熱量(図3のS104)や積算消費熱量(図3のS108)を算出する際には、その積算の対象とする所定期間D1(図4参照)が次のように設定される。すなわち、圧縮機11の駆動が開始されてから圧縮機11が停止した後、保冷装置23の消費熱量の瞬時値が略ゼロになるまでの期間(例えば、図4の時刻t1~t4)が所定期間D1として設定される。つまり、所定期間D1は、冷却装置E1(熱源装置)の駆動の開始時から、当該駆動に伴う保冷装置23(消費装置)のエネルギ消費の終了時までの期間を含んでいる。なお、供給熱量及び消費熱量の各瞬時値の双方がゼロになる期間が含まれていても積算結果は特に変わらないため、積算の始点・終点のタイミングは適宜に変更可能である。
【0033】
例えば、前回の消費熱量がゼロになってから、今回の消費熱量がゼロになるまでを所定期間D1として、供給熱量や消費熱量の積算値が算出されるようにしてもよい。また、圧縮機11の今回の駆動が開始されたときから、圧縮機11の次回の始動開始までを所定期間D1として、供給熱量や消費熱量の積算値が算出されるようにしてもよい。より詳しく説明すると、所定期間D1の始点(例えば、図4の時刻t1)は、冷却装置E1の前回の駆動に伴う保冷装置23の前回のエネルギ消費の終了時から、冷却装置E1の今回の駆動開始時までの間における所定のタイミングである。また、所定期間D1の終点(例えば、図4の時刻t4)は、保冷装置23の今回のエネルギ消費の終了時から、冷却装置E1の次回の駆動開始時までの間における所定のタイミングである。なお、圧縮機11の駆動・停止の周期が一定である必要は特にないため、図4に示す複数の所定期間D1の長さが異なっていてもよい。
【0034】
そして、系統管理装置100の処理部30は、所定期間D1における冷却装置E1(熱源装置)の供給熱量の積算値と、所定期間D1における消費装置の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、損失熱量を算出する(図3のS110)。
【0035】
例えば、接続配管K1,K2(図1参照)を覆う断熱材に劣化が生じたり、水の循環経路の途中で異常な加熱が生じたりした場合には、循環経路の水への侵入熱が正常時よりも増加する。このような場合、消費熱量に対して供給熱量を多く確保するように冷却装置E1が制御されるため、消費熱量の瞬時値と供給熱量の瞬時値との間の差が拡大する。
【0036】
そこで、第1実施形態では、例えば、圧縮機11(図1参照)の駆動開始時から保冷装置23(図1参照)でのエネルギ消費の終了時までの所定期間D1を対象として、供給熱量・消費熱量の積算値を算出するようにしている。これによって、例えば、正常時からの損失熱量の増加幅が小さく、供給熱量・消費熱量の瞬時値の差分では損失熱量の増加が検知しにくいような場合でも、水漏れ等の異常を適切に検知できる。また、供給熱量や消費熱量の積算値の収支で損失熱量が評価されるため、各センサの検出誤差が平均化され、測定精度に起因する測定ばらつきの影響を抑制できる。
【0037】
仮に、同時刻における供給熱量・消費熱量の各瞬時値が比較されると、前記した時間遅れΔt1(図4参照)が存在するため、因果関係のない瞬時熱量が相互に比較されることになる。その結果、熱損失の微小な増加を検知することが困難になる可能性がある。これに対して第1実施形態では、圧縮機11(図1参照)の駆動に伴う冷熱が保冷装置23(図1参照)で消費され終わるまでを1つの運転サイクルとして、供給熱量・消費熱量を積算するようにしている。これによって、因果関係のある熱の需給関係を評価することが可能になるため、同時刻での供給熱量・消費熱量の各瞬時値の比較では検知できないような小さな熱損失の増加を高精度に検知できる。
【0038】
図5は、供給熱量及び消費熱量の各積算値の推移を示す表示画面例である。
なお、図5の横軸は、冷熱システムH1(図1参照)の運転サイクル数である。また、図5の縦軸は、冷熱システムH1(図1参照)の供給熱量の積算値、及び消費熱量の積算値である。なお、圧縮機11の駆動開始から、圧縮機11の停止後に保冷装置23での熱消費がほぼなくなるまでを1つの運転サイクルとしている。また、初回(又はメンテナンスの直後)の運転サイクルを「1」とし、圧縮機11の停止後に再び駆動が開始されるたびに、運転サイクル数がインクリメントされるものとする。
【0039】
図5に示すように、運転サイクルごと(つまり、運転サイクルの1回分である所定期間D1:図4参照)の供給熱量・消費熱量の各積算値が出力部42(図2参照)に棒グラフで表示される。これによって、熱供給が増加傾向にあるのか、それとも減少傾向にあるのかをユーザが一目で把握できる。図5の例では、供給熱量の最新の積算値が「10kJ」と表示され、また、消費熱量の最新の積算値が「8kJ」と表示されている。このような表示画面は、1つの運転サイクルが終了するたびに適宜に更新される。
【0040】
図6は、供給熱量及び損失熱量の各積算値の推移を示す別の表示画面例である。
なお、図6の横軸は、冷熱システムH1(図1参照)の運転サイクル数である。また、図6の縦軸は、冷熱システムH1の供給熱量の積算値、及び損失熱量である。例えば、端末装置50(図2参照)には、運転サイクルごとの供給熱量の積算値の推移が棒グラフで表示され、また、損失熱量の推移が折れ線グラフで表示される。図6の例では、途中から供給熱量及び損失熱量が増加している例を示している。
【0041】
このように、供給熱量の積算値の変化を視覚的にわかりやすく表示することで、消費エネルギがどの程度増加しているかをユーザが把握し、電気料金に換算するなどして対策を講じることができる。また、損失熱量を定量化して表示することで、異常が発生した日時の特定や、損失熱量の大きさから原因を推定するといった分析を管理者等が行うこともできる。
【0042】
<効果>
第1実施形態によれば、冷熱システムH1の損失熱量を集計する際の期間(図4の所定期間D1)が、例えば、冷却装置E1の駆動の開始時から保冷装置23のエネルギ消費の終了時までの期間に設定される。これによって、冷却装置E1で冷やされた水の熱量が保冷装置23で利用されるという因果関係が成立するため、供給熱量と消費熱量とに基づいて、熱収支を示す損失熱量を高精度に算出できる。
【0043】
また、冷却装置E1における供給熱量の算出には、搬送ポンプ21(図1参照)の回転速度が用いられる一方、保冷装置23における消費熱量の算出には流量計22(図1参照)の検出値が用いられる。これによって、冷却装置E1の供給熱量や保冷装置23の消費熱量を個別的に算出する際の精度が高められる。例えば、接続配管K1,K2の一部から水漏れが生じた場合に、流量計22の検出値と、搬送ポンプ21の回転速度に基づく流量と、の間に差が生じることで、熱量の収支にも差が生じる。その結果、損失熱量の増加として、水漏れを検知することが可能になる。また、冷却装置E1と保冷装置23の付近の2か所に流量計を設ける必要が特にないため、設備コストを削減できる。
【0044】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、系統管理システムX2(図7参照)が給湯システムH2(図7参照)の損失熱量等を算出する点が、第1実施形態とは異なっている。また、第2実施形態は、系統管理システムX2によって損失熱量等を算出される際の集計対象となる「所定期間」の設定の仕方が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0045】
図7は、第2実施形態に係る系統管理システムX2を含む構成図である。
なお、図7の太い実線は、冷媒等が流れる配管を示している。また、図1の破線は、信号線を示している。図7に示す給湯システムH2(熱媒体系統)は、風呂リモコンや台所リモコンといった入出力装置91の操作に基づいて、沸上げ運転や追焚き運転、湯はり運転等を行うシステムである。
【0046】
<給湯システムの構成>
図7に示すように、給湯システムH2は、加熱装置W1(熱源装置)と、貯湯ユニットU1(消費装置)と、入出力装置91と、制御基板92と、を含んで構成されている。加熱装置W1は、沸上げ運転の際、貯湯タンク71(蓄熱槽)からの湯水(熱媒体)を加熱するヒートポンプユニットである。なお、「沸上げ運転」とは、貯湯タンク71の湯水を加熱装置W1で加熱する運転である。また、「追焚き運転」とは、浴槽B1の湯水を再加熱する運転である。
【0047】
図7に示すように、加熱装置W1は、圧縮機61と、放熱器62(凝縮器)と、膨張弁63と、吸熱器64(蒸発器)と、を順次に介して冷媒が循環する回路を備える他、吸熱器64に空気を送り込むための送風ファン65を備えている。また、加熱装置W1は、前記した構成の他に、熱源側ポンプ67と、加熱前温度センサ68と、加熱後温度センサ69と、を備えている。熱源側ポンプ67は、放熱器62の水配管で熱交換した湯水を貯湯タンク71の上部に圧送するポンプである。加熱前温度センサ68は、放熱器62に向かう湯水の温度を検出するセンサである。加熱後温度センサ69は、放熱器62で熱交換した湯水の温度を検出するセンサである。
【0048】
貯湯ユニットU1は、加熱装置W1で加熱された湯水を貯湯タンク71に貯留する他、貯湯タンク71の湯水を適宜に温度調整した上で、給湯端末T1や浴槽B1に供給する機器である。図7に示すように、貯湯ユニットU1は、貯湯タンク71と、減圧弁72と、給水温度センサ73と、給湯混合弁74と、給湯流量計75と、給湯温度センサ76と、湯はり混合弁77と、電磁弁78と、を備えている。また、貯湯ユニットU1は、前記した構成の他に、三方弁79と、ふろ流量計80と、ふろ往き温度センサ81と、追焚き用熱交換器82と、ふろ戻り温度センサ83と、ふろ用ポンプ84と、を備えている。
【0049】
貯湯タンク71は、湯水を貯留するタンクであり、断熱材(図示せず)で覆われている。なお、貯湯タンク71は、常時満水の状態になっている。貯湯タンク71の下部は、配管を介して放熱器62の2次側に接続されるとともに、減圧弁72を介して上水道配管に接続されている。図6に示す給水温度センサ73は、減圧弁72で減圧された水の温度を検出するセンサである。
【0050】
貯湯タンク71の上部は、配管を介して放熱器62の2次側に接続されるとともに、別の配管等を介して給湯端末T1や浴槽B1に接続されている。例えば、給湯端末T1に湯水が導かれる場合には、減圧弁72で減圧された水と、貯湯タンク71の上部からの湯水と、が給湯混合弁74で合流し、合流した湯水が給湯流量計75及び給湯温度センサ76を順次に介して、給湯端末T1に導かれる。また、例えば、浴槽B1に湯水が導かれる場合には、減圧弁72で減圧された水と、貯湯タンク71の上部からの湯水と、が湯はり混合弁77で合流し、合流した湯水が電磁弁78、三方弁79、ふろ流量計80、及びふろ往き温度センサ81を順次に介して、浴槽B1に導かれる。
【0051】
図7に示す追焚き用熱交換器82は、浴槽B1から流入する湯水を貯湯タンク71の高温水で加熱するための熱交換器であり、貯湯タンク71の内部に設置されている。例えば、追焚き運転時には、浴槽B1、ふろ戻り温度センサ83、ふろ用ポンプ84、追焚き用熱交換器82、三方弁79、ふろ流量計80、及びふろ往き温度センサ81を順次に介して、浴槽B1に湯水が戻される。このように、加熱装置W1(熱源装置)で加熱された湯水(熱媒体)が貯湯タンク71(蓄熱槽)に貯留され、貯湯タンク71からの湯水が配管を介して給湯端末T1や浴槽B1(熱エネルギの消費装置)に導かれるように構成されている。なお、図7に示す貯湯ユニットU1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0052】
入出力装置91は、ユーザによる所定の入力操作を受け付ける入力部91aと、加熱装置W1や貯湯ユニットU1の稼働情報を出力する出力部91bを備える他、端末装置93との間で通信を行う送受信部91cを備えている。
【0053】
制御基板92は、加熱装置W1や貯湯ユニットU1を制御するための回路が実装された基板である。制御基板92は、制御回路92aと、通信回路92bと、を備えている。制御回路92aは、熱源側ポンプ67の回転速度指令値を加熱装置W1に送信する他、加熱装置W1や貯湯ユニットU1の各センサの検出値(稼働情報)を取得する。図7に示すように、制御回路92aは、加熱装置W1の他、入力部91a及び出力部91bに信号線を介して接続されている。通信回路92bは、制御回路92aによって取得された稼働情報を系統管理装置100Aに送信する。
【0054】
系統管理装置100Aは、給湯システムH2の損失熱量に基づいて、給湯システムH2の異常の有無を判定し、その結果をユーザに報知する機能を有している。このような系統管理装置100Aの構成について、図8を用いて説明する。
【0055】
<系統管理装置の構成>
図8は、系統管理装置100Aを含む機能ブロック図である。
図8に示すように、系統管理装置100Aは、処理部30Aを含んでいる。処理部30Aは、給湯システムH2(熱媒体系統)の損失熱量を算出し、損失熱量を含む情報を入出力装置91(表示装置:図7参照)や端末装置93(表示装置)に表示させる機能を有している。処理部30Aは、湯水への供給熱量の算出に関わる構成として、供給温度差取得部51aと、搬送流量推定部51bと、搬送推定情報記憶部51cと、供給流量取得部51dと、供給熱量算出部51eと、熱量記憶部51fと、を備えている。
【0056】
供給温度差取得部51aは、放熱器62(図7参照)に向かう湯水の温度と、放熱器62(図7参照)で吸熱した水の温度と、の間の温度差を算出する。搬送流量推定部51bは、熱源側ポンプ67の回転速度指令値に基づいて、熱源側ポンプ67の搬送流量を算出する。搬送推定情報記憶部51cには、熱源側ポンプ67の回転速度と推定流量との間の関係が格納される。供給流量取得部51dは、所定の日付・時刻における熱源側ポンプ67の搬送流量を搬送流量推定部51bから取得し、取得した搬送流量を供給熱量算出部51eに出力する。
【0057】
供給熱量算出部51eは、供給温度差取得部51aで算出された温度差や、供給流量取得部51dで取得された搬送流量の他、水の密度・比熱に基づいて、放熱器62(図7参照)で湯水が加熱される際の瞬時熱量(単位時間当たりの水の吸熱量)を算出する。供給熱量算出部51eの算出結果は、熱量記憶部51fに格納される。熱量記憶部51fには、供給熱量算出部51e等の算出結果が日付・時刻に対応付けて格納される。
【0058】
また、系統管理装置100Aの処理部30Aは、給湯運転時の消費熱量の瞬時値を算出するための構成として、給湯温度差取得部52aと、給湯流量取得部52bと、を備えている。なお、「給湯運転」とは、給湯端末T1(図7参照)に湯水を供給する運転である。また、系統管理装置100Aの処理部30Aは、湯はり運転時の消費熱量の瞬時値を算出するための構成として、湯はり温度差取得部52cと、湯はり流量取得部52dと、を備えている。なお、「湯はり運転」とは、浴槽B1(図7参照)に湯水を供給する運転である。また、系統管理装置100Aの処理部30Aは、追焚き運転時の消費熱量の瞬時値を算出するための構成として、追焚き温度差取得部52eと、追焚き流量取得部52fと、を備えている。前記したように、「追焚き運転」とは、浴槽B1の湯水を再加熱する運転である。
【0059】
また、系統管理装置100Aの処理部30Aは、前記した構成の他に、消費熱量算出部52gと、損失熱量算出部53と、正常性演算部54と、基準値記憶部55と、基準値更新部56と、稼働情報記憶部57と、異常原因推定部58と、通信部59aと、送受信部59bと、搬送推定情報更新部60と、を備えている。
消費熱量算出部52gは、給湯運転や湯はり運転、追焚き運転における単位時間当たりの消費熱量を算出する。熱量記憶部51fには、供給熱量算出部51eや消費熱量算出部52gの算出結果の他、次に説明する損失熱量算出部53の算出結果が日付・時刻に対応付けて格納される。
【0060】
損失熱量算出部53は、所定期間における供給熱量(放熱器62における湯水の吸熱量)の積算値、及び、所定期間における消費熱量(貯湯ユニットU1で消費された熱エネルギ)の積算値を算出する。そして、損失熱量算出部53は、供給熱量の積算値と、消費熱量の積算値と、の差をとることで、損失熱量を算出する。損失熱量算出部53の処理結果は、熱量記憶部51fに格納される。
【0061】
正常性演算部54は、基準値記憶部55に格納された損失熱量の基準値と、実際の損失熱量の値と、に基づいて、加熱装置W1や貯湯ユニットU1の正常性に関する診断を行う。正常性演算部54の演算結果は、通信部59a及び制御基板92を順次に介して入出力装置91に出力される他、送受信部59bを介して端末装置93に送信される。基準値記憶部55には、給湯システムH2の損失熱量に関する基準値が格納されている。
【0062】
基準値更新部56は、熱量記憶部51fに格納されている情報に基づいて、損失熱量の基準値を所定のタイミングで更新する。基準値更新部56の処理結果(新たな基準値)は、基準値記憶部55に格納される。稼働情報記憶部57には、給湯システムH2(図7参照)の各センサの検出値や熱源側ポンプ67の回転速度指令値を含む稼働情報が、日付・時刻に対応付けて格納される。異常原因推定部58は、前記した稼働情報に基づいて、給湯システムH2(図7参照)の異常の有無を判定し、異常ありの場合には異常原因を推定する。異常原因推定部58の推定結果は、入出力装置91や端末装置93に表示される。
【0063】
搬送推定情報更新部60は、熱源側ポンプ67(図7参照)の回転速度と搬送流量との間の関係を示す情報を更新する。前記した関係は、所定の数式でもよいし、また、データテーブルであってもよい。熱源側ポンプ67の回転速度と推定流量との間の関係が搬送推定情報更新部60によって更新された場合、更新後の情報は、搬送推定情報記憶部51cに格納される。次に、給湯システムH2の各運転モードについて、図9図12を用いて順に説明する。
【0064】
図9は、沸上げ運転時の冷媒や湯水の流れを示す説明図である。
なお、図9における太線は、冷媒や湯水が循環する経路を示している(図10図12も同様)。沸上げ運転時には、加熱装置W1において周知の冷凍サイクルで冷媒が循環する。また、熱源側ポンプ67の駆動に伴い、放熱器62で加熱された湯水が貯湯タンク71の上部に導かれるとともに、貯湯タンク71の下部からの湯水が放熱器62に導かれる。このような沸上げ運転が継続されることで、貯湯タンク71の高温域・中温域の間の境界面の高さ位置が徐々に低くなり、貯湯タンク71の大部分が高温水で満たされる。貯湯タンク71の高温水は、給湯運転・湯はり運転・追焚き運転で用いられる。
【0065】
図10は、給湯運転時の湯水の流れを示す説明図である。
給湯運転では、貯湯タンク71の上部から供給される温水と、上水道配管を介して供給される水と、が給湯混合弁74で合流し、合流後の湯水が給湯端末T1に供給される。なお、給湯端末T1としては、キッチンの蛇口やバスルームのシャワー、食洗器といったものが挙げられる。給湯混合弁74の開度は、給湯温度が所定の目標値となるように適宜に調整される。
【0066】
図11は、湯はり運転時の湯水の流れを示す説明図である。
湯はり運転では、電磁弁78が開かれることで温水の供給が開始される。このとき、三方弁79は、湯はり混合弁77側に全開になっているため、追焚き用熱交換器82に温水が流入することは特にない。貯湯タンク71の上部から供給される温水と、上水道配管を介して供給される水と、が湯はり混合弁77で合流し、合流後の温水が浴槽B1に供給される。湯はり混合弁77の開度は、浴槽B1に向かう温水の温度が所定の目標値となるように適宜に調整される。
【0067】
図12は、追焚き運転時の湯水の流れを示す説明図である。
追焚き運転では、三方弁79が追焚き用熱交換器82の側に全開にされ、さらに、ふろ用ポンプ84が稼働される。これによって、浴槽B1の温水が追焚き用熱交換器82を経由するように通流し、貯湯タンク71の高温水で加熱された後、浴槽B1に戻される。ふろ戻り温度センサ83の検出値が所定の目標値に達した場合、追焚き運転は終了する。
【0068】
<系統管理装置の処理>
図13は、給湯システムの稼働情報に基づく正常性診断の流れを示す説明図である(適宜、図7も参照)。
図13のステップS201において系統管理装置100Aの処理部30Aは、給湯システムH2の稼働情報を取得する。稼働情報には、給湯システムH2の各センサの検出値や各ポンプの回転速度指令値が含まれている。
ステップS202において処理部30Aは、供給温度差取得部51a(図8参照)によって、加熱後温度センサ69の検出値から加熱前温度センサ68の検出値を減算することで、放熱器62の上流側・下流側の温度差(加熱前後温度差)を算出する。
【0069】
ステップ203において処理部30Aは、搬送流量推定部51b(図8参照)によって、熱源側ポンプ67の回転速度指令値に基づき、熱源側ポンプ67の搬送流量を算出する。すなわち、処理部30Aは、加熱装置W1(熱源装置)と貯湯ユニットU1(消費装置)との間の配管に設けられる熱源側ポンプ67(ポンプ)の回転速度と、熱源側ポンプ67の流量特性と、に基づいて、熱源側ポンプ67の流量を算出する。
【0070】
ステップS204において処理部30Aは、供給熱量算出部51e(図8参照)によって、加熱前後温度差及び搬送流量に基づき、放熱器62で湯水が加熱される際の単位時間当たりの水の吸熱量(瞬時供給熱量)を算出する。
ステップS205において処理部30Aは、損失熱量算出部53(図8参照)によって、所定期間での瞬時供給熱量を積算する(逐次に和をとる)ことで、積算供給熱量を算出する。
【0071】
また、消費熱量の瞬時値については、給湯運転・湯はり運転・追焚き運転のいずれかに対応して、次のように算出される。まず、給湯運転時には、給湯温度差取得部52a(図8参照)によって、給湯温度センサ76の検出値から給水温度センサ73の検出値が減算されることで、湯水の温度差(給湯温度差)が算出される(S206)。そして、消費熱量算出部52gによって、給湯温度差や給湯流量計75の検出値の他、水の比熱・密度に基づき、単位時間当たりの消費熱量(瞬時給湯熱量)が算出される(S207)。
【0072】
湯はり運転時には、湯はり温度差取得部52c(図8参照)によって、ふろ往き温度センサ81の検出値から給水温度センサ73の検出値が減算されることで、湯水の温度差(ふろ温度差)が算出される(S208)。そして、ふろ温度差やふろ流量計80の検出値の他、水の密度・比熱に基づき、単位時間当たりの消費熱量(湯はり瞬時熱量)が算出される(S209)。
【0073】
追焚き運転時には、追焚き温度差取得部52e(図8参照)によって、ふろ戻り温度センサ83の検出値からふろ往き温度センサ81の検出値が減算されることで、湯水の温度差(追焚き温度差)が算出される(S210)。そして、追焚き温度差やふろ流量計80の検出値の他、水の密度・比熱に基づき、単位時間当たりの消費熱量(追焚き瞬時熱量)が算出される(S211)。前記した給湯運転・湯はり運転・追焚き運転の各瞬時熱量は、消費熱量算出部52gによって、瞬時消費熱量として合算される(S212)。
【0074】
ステップS213において処理部30Aは、損失熱量算出部53(図8参照)によって、所定期間での瞬時消費熱量を積算する(逐次に和をとる)ことで、積算消費熱量を算出する。
ステップS214において処理部30Aは、損失熱量算出部53(図8参照)によって、所定期間における積算供給熱量と、所定期間における積算消費熱量と、の差をとることで、損失熱量を算出する。つまり、処理部30Aは、所定期間における加熱装置W1(熱源装置)の供給熱量の積算値と、所定期間における貯湯ユニットU1(消費装置)の消費熱量の積算値と、の差に基づいて、損失熱量を算出する。なお、積算供給熱量や積算消費熱量の集計対象となる「所定期間」については後記する。
【0075】
ステップS215において処理部30Aは、正常性演算部54(図8参照)によって、損失熱量と所定の基準値との間の差分や、損失熱量の変化速度を算出する。
ステップS216において処理部30Aは、正常性演算部54(図8参照)によって、給湯システムH2の正常性を診断する。
【0076】
ステップS217において処理部30Aは、異常原因推定部58(図8参照)によって、給湯システムH2の稼働情報に基づき、異常原因を推定する。このような異常原因として、例えば、温水経路の水漏れや詰まりの他、貯湯タンク71を覆う断熱材の劣化といったものが挙げられる。
ステップS218において処理部30Aは、正常性演算部54(図8参照)の演算結果や異常原因推定部58(図8参照)の推定結果を出力する。すなわち、処理部30Aは、給湯システムH2の正常性や異常原因に関する情報を、送受信部59b(図8参照)を介して端末装置93(図8参照)に送信する他、入出力装置91(図8参照)に出力する。
【0077】
図14は、給湯システムにおける供給熱量及び消費熱量の瞬時値の変化を示す説明図である(適宜、図7も参照)。
なお、図14の上段・下段の各グラフの横軸は、時刻である。なお、横軸に示す複数の区間P1のそれぞれが1日(0時からの24時間)に対応している。また、図14の上段のグラフの縦軸は、加熱装置W1による湯水への供給熱量の瞬時値である。図14の下段のグラフの縦軸は、貯湯ユニットU1における消費熱量の瞬時値である。
【0078】
ユーザの生活習慣や都合によって日々の消費熱量の利用パターンが異なるため、消費熱量の発生時刻や最大消費熱量の大きさも日によって異なっている。また、熱供給については、ユーザの電力契約等に適した時間帯に沸上げ運転が適宜に行われる。図14で供給熱量が発生している時間帯には、沸上げ運転(図9参照)が行われる。沸上げ運転は、契約電力の料金が安価な深夜の時間帯に開始されることが多いが、太陽光発電システムと連携している場合や電力料金の契約内容によっては、昼間に行われることもある。図14で消費熱量が発生している時間帯には、給湯運転・湯はり運転・追焚き運転のいずれかが行われる。
【0079】
例えば、加熱装置W1(図7参照)や貯湯ユニットU1(図7参照)の水配管の接続部では、パッキンの劣化の他、地震や振動による継手の弛み等に起因して、水漏れが生じることがある。特に温水が流れる経路では、温度変化に伴って材料の熱膨張・熱収縮が繰り返されるため、漏れのリスクが高くなる傾向がある。その他、放熱器62から貯湯タンク71までの温水経路に設けられる断熱材や、貯湯タンク71の周囲を覆う断熱材に劣化が生じた場合でも、損失熱量が増加する。
【0080】
これまでの技術では、水漏れや断熱材の劣化の程度が軽微である場合、熱損失の増加にユーザが気づきにくく、長期的な損失につながる可能性があった。特に給湯システムH2では、熱が使用される時間帯と、蓄熱が行われる時間帯と、の間に時間的なズレが存在するため、同一時刻の瞬時熱量の比較に基づく異常検出は困難であった。
【0081】
そこで、第2実施形態では、供給熱量や消費熱量が積算される際の集計対象となる所定期間D2を、供給熱の生成終了時から、次回の供給熱の生成終了までとしている。これによって、各センサの検出誤差が平均化され、測定精度に起因する測定ばらつきの影響を抑制できる。また、1サイクルの所定期間D2の中では、消費された分の熱量を補うように熱が供給されるという需給関係が成立するため、損失熱量に基づいて水漏れ等を高精度に検知できる。
【0082】
なお、供給熱量及び消費熱量の双方が発生していない期間が所定期間D2に含められた場合でも、供給熱量及び消費熱量の積算値は変わらない。したがって、例えば、供給熱の生成終了後であって、消費熱が増加し始める時刻を所定期間D2の始点とし、次回の供給熱が生成終了後に消費熱が増加し始める時刻を所定期間D2の終点としてもよい。要するに、貯湯ユニットU1(消費装置)のエネルギ消費の開始時から、このエネルギ消費を補うように駆動される加熱装置W1(熱源装置)の駆動終了時までの期間が所定期間D2に含まれるようにすればよい。
【0083】
所定期間D2の始点は、加熱装置W1の前回の駆動終了時から、加熱装置W1の今回の駆動に対応する貯湯ユニットU1の今回のエネルギ消費の開始時までの間における所定のタイミングである。また、所定期間D2の終点は、加熱装置W1の今回の駆動終了時から、貯湯ユニットU1の次回のエネルギ消費の開始時までの間における所定のタイミングである。
【0084】
このような所定期間D2は、ユーザの電力契約や湯水の使用パターンによって日々変化する。日常的に湯水が利用される場合には、通常、毎日1回以上の沸上げ運転が行われるため、所定期間は1日程度の長さが基本となる。例えば、図13に示す一連の処理が日ごとに行われ、損失熱量に基づく正常性や異常原因の情報がユーザの端末装置93(図7参照)に通知される。なお、熱量の消費が多い場合や貯湯タンク71(図7参照)のサイズが小さい場合には、1日に複数回の沸上げ運転が実行されることもあるため、ユーザへの通知の周期については適宜に変更可能である。
【0085】
図15は、診断の1サイクルごとの損失熱量の変化を示す説明図である。
なお、図15の横軸は、系統管理装置100A(図7参照)における診断サイクルであり、縦軸は、給湯システムH2(図7参照)の損失熱量である。なお、1回分の診断サイクルは、前記した所定期間D2(図14参照)の1回分に対応している。図15にプロットした複数の点は、それぞれが1サイクルごとの損失熱量を示している。図15では、給湯システムH2(図7参照)に何らかの異常が生じて、途中から損失熱量が増加している例を示している。
【0086】
例えば、系統管理装置100Aの処理部30A(図8参照)は、損失熱量の基準値Qthと実際の損失熱量との間の差分の他、損失熱量がプロットされた複数の点の近似直線の傾きに基づいて、給湯システムH2(図7参照)の正常性を診断する(図13のS215、S216)。具体的には、損失熱量が基準値Qthを超えている場合、又は、損失熱量の近似直線の傾き(変化速度)が所定値を超えている場合、処理部30Aは、給湯システムH2に異常ありと診断する。
【0087】
また、損失熱量の基準値からの乖離の程度や、損失熱量の変化速度に基づいて、不具合に対処する際の「緊急性」の有無が判定されるようにしてもよい。例えば、処理部30A(図8参照)は、損失熱量と所定の基準値との間の差分、及び、損失熱量の変化速度のうちの少なくとも一方に基づいて、給湯システムH2(熱媒体系統)の異常が緊急性を要するものであるか否かを診断する。なお、損失熱量の基準値Qthとして、初期の運転結果に基づく値や、仕様として定められた固定値が用いられる。また、損失熱量の基準値Qthが定期的に更新されるようにしてもよい。次に、正常性の診断結果の表示例について、図16図19を用いて順に説明する。
【0088】
図16は、給湯システムの異常が入出力装置91に通知される場合の例を示す説明図である。
図16に示すように、入出力装置91は、パネルの前面に設けられる前面入力部911~913と、開閉可能なカバーV1の内側に設けられるカバー内入力部914と、を備えている。さらに、入出力装置91は、出力部91b(図7参照)として、設定情報や状態を通知するためのディスプレイ915を備えている。給湯システムH2(図7参照)に異常が生じた場合には、図16に示すような、異常を通知するための所定の情報がディスプレイ915に表示される。なお、ディスプレイ915への表示は文字情報に限定されず、損失熱量の数値やグラフであってもよい。
【0089】
図17は、給湯システムの異常がユーザの端末装置93に通知された場合の表示画面を示す説明図である。
給湯システムH2(図7参照)に何らかの異常が生じていた場合、例えば、図17に示すようなメッセージが端末装置93に表示される。端末装置93に表示される情報は、図17に示すような文字情報であってもよいし、また、図表や数値の他、音や振動といった所定のアラームであってもよい。また、正常性の診断結果に応じて、異なる種類の通知方法が用いられるようにしてもよい。例えば、緊急性が高い場合には、緊急性の高さを示す所定の文字列や図が端末装置93に表示される他、コールセンタへの通知を促す所定のメッセージが表示されるようにしてもよい。
【0090】
図18は、給湯システムの異常がユーザの端末装置93に通知された場合の別の表示画面を示す説明図である。
図18の表示画面は、例えば、給湯システムH2のサービス提供者の端末装置93に表示される。図18の例では、給湯システムH2(図7参照)の運転状態及び緊急度が端末装置93の表示画面に文字情報で表示され、その下に診断結果の根拠となるグラフG1が表示されている。「運転状態」では、給湯システムH2が正常であるか、それとも異常であるかが示される。正常又は異常の判定は、前記した正常性の判定結果(図13のS216)に基づいている。「緊急度」は、前記した「緊急性」と同様の意味であり、異常が生じた場合に緊急の対処を要するか否かが示される。
【0091】
図18に示すグラフG1は、異常度の推移を示している。グラフG1の横軸は日付であり、縦軸は給湯システムH2(図7参照)の異常度である。ここで、「異常度」とは、給湯システムH2の異常の度合いを示す数値であり、損失熱量と基準値との間の差分に基づいて算出される。なお、縦軸については、損失熱量に代えて、電気料金や水道使用量の増加分に換算した値が表示されるようにしてもよい。この場合に処理部30A(図8参照)は、損失熱量の基準値からの増加分と、加熱装置W1(図7参照)の成績係数と、に基づいて、損失熱量の増加分を電力量に換算し、さらに、電力量を電気料金に換算する。また、処理部30A(図8参照)は、損失熱量の基準値からの増加分を給湯量や水漏れ量に換算し、さらに、給湯量等を水道使用量に換算する。
【0092】
図18の例では、最新の情報が円形のマーカG11で示され、これよりも過去の履歴G12(異常度の推移)が実線で示されている他、未来の異常度の予測値G13が破線で示されている。予測値G13は、例えば、直近の異常度の変化(直線の傾き)がそのまま継続するとの仮定に基づいて算出される。
【0093】
グラフG1の下側には、シャワーの使用量に換算した場合の損失(ロス)の大きさを説明するための所定の文章が表示されている。さらにその下側には、推定結果である複数の異常原因と、その可能性を示す百分率の値が異常原因に対応付けて表示される。このような百分率の値は、異常原因推定部58(図8参照)によって適宜に算出される。
【0094】
図18では、前記した所定期間の1サイクル毎に正常性が診断される場合の例を示したが、これに限らない。例えば、緊急性の有無に応じて、診断後の「所定期間」の長さを処理部30Aが変更するようにしてもよい。具体的には、処理部30Aは、緊急性がある場合には、「所定期間」の長さを診断前よりも短くするように変更する。なお、変更前の「所定期間」には、複数の「期間」(1サイクルの所定期間D2:図14参照)が含まれているものとする。例えば、処理部30Aは、緊急性が高い場合には、その後に1サイクルごとに正常性を小刻みに診断し、また、緊急性が低い場合には、その後に複数サイクルでの損失熱量の平均値等に基づいて長期的な視点で処理を行う。これによって、緊急性が高い場合には、その後に迅速に対処することが可能になる。また、緊急性が低い場合の診断精度を高めることができる。
【0095】
図19は、給湯システムの異常がユーザの端末装置93に通知された場合のさらに別の表示画面を示す説明図である。
図19の表示画面は、例えば、日常的にユーザが確認可能な診断結果の画面として端末装置93に表示される。図19の例では、表示画面の上部に損失熱量の状態が文字情報で表示され、その根拠となる状態の変化がグラフG2で示されている。グラフG2の横軸は、給湯システムH2(図7参照)の使用開始時からの経過年数であり、縦軸は給湯システムH2の正常度である。
【0096】
ここで、「正常度」とは、例えば、損失熱量の基準値からの増加量を、所定の許容最大損失熱量で正規化した値である。なお、損失熱量が大きいほど、正常度が低くなるものとする。図19の例では、給湯システムH2(図7参照)の使用開始時から現在に至るまでの正常度の履歴G22が実線で示されている。また、使用に際しての注意を要する注意ライン(許容最大損失熱量に対応する正常度)が破線で示されている。
【0097】
グラフG5の下側には、診断結果を伝えるための複数のメッセージが表示されている。1つ目のメッセージは、熱損失が増加して保温性能が下がっていることの説明である。2つ目は、損失熱量の増加分を電気料金に換算した値である。3点目は、前記したグラフG2の注意ラインに関する説明である。図19の例では、注意ラインに達した場合、特に寒い日に蓄熱量が不足する可能性が高くなることが説明されている。このような情報を提示することで、給湯システムH2(図7参照)の不具合や、それに伴う損失をユーザが容易に把握できる。次に、損失熱量に関する基準値の更新や、熱源側ポンプ67(図7参照)の流量特性の更新について順次に説明する。
【0098】
図20は、損失熱量の更新に関するフローチャートである(適宜、図8も参照)。
ステップS301において系統管理装置100Aの処理部30Aは、給湯システムH2(図7参照)の据付後やリセット後の初回運転であるか、又は、直近のメンテナンスから一定期間が経過しているか否かを判定する。給湯システムH2の据付後やリセット後の初回運転でなく、また、直近のメンテナンスから一定期間が経過していない場合(S301:No)、処理部30Aは一連の処理を終了する(END)。また、ステップS301において、給湯システムH2の据付後やリセット後の初回運転であるか、又は、直近のメンテナンスから一定期間が経過している場合(S301:Yes)、処理部30Aの処理はステップS302に進む。
【0099】
ステップS302において処理部30Aは、熱量記憶部51f(図8参照)に損失熱量の値が格納(記録)されていないか否かを判定する。初回運転等で熱量記憶部51fに損失熱量の値が格納されていない場合(S302:Yes)、処理部30Aの処理はステップS303に進む。なお、次のステップS303~S306は、損失熱量の基準値を算出するための処理である。
【0100】
ステップS303において処理部30Aは、温水の使用(熱の消費)やその後の沸上げ運転(熱の供給)を含む1サイクル分(図14の所定期間D2に対応)の運転を実行する。
ステップS304において処理部30Aは、所定期間D2(図14参照)における加熱装置W1(図7参照)の供給熱量を算出する。
ステップS305において処理部30Aは、所定期間D2(図14参照)における貯湯ユニットU1(図7参照)での消費熱量を算出する。
ステップS306において処理部30Aは、供給熱量及び消費熱量に基づいて、損失熱量を算出する。
【0101】
ステップS307において処理部30Aは、供給熱量や消費熱量や損失熱量といった各熱量の情報を日付・時刻に対応付けて、熱量記憶部51f(図8参照)に格納する。
ステップS308において処理部30Aは、基準値更新演算を実行する。例えば、処理部30Aは、初回運転やメンテナンスの直後には給湯システムH2が正常であるとみなして、次のような処理を行う。すなわち、処理部30Aは、給湯システムH2(熱媒体系統)の初回運転時には、この初回運転時での所定期間D2(図14参照)における供給熱量の積算値及び消費熱量の積算値に基づいて、損失熱量を算出する。そして、処理部30Aは、この損失熱量よりも高い所定の値を損失熱量の基準値として設定し、次回の運転からは、新たな基準値に基づいて、給湯システムH2の異常を診断する。また、処理部30Aは、給湯システムH2(熱媒体系統)の直近のメンテナンスから所定の期間が経過している場合、給湯システムH2の今回の運転に伴う損失熱量よりも高い所定の値に損失熱量の基準値を更新する。そして、処理部30Aは、次回の運転からは、更新後の基準値に基づいて、給湯システムH2の異常を診断する。
ステップS309において処理部30Aは、新たな基準値を基準値記憶部55(図8参照)に格納する。
【0102】
また、ステップS302において熱量記憶部51f(図8参照)に損失熱量の値が格納されている場合(S302:No)、処理部30Aは、ステップS308において基準値更新演算を実行する。例えば、処理部30Aは、複数サイクル(複数の所定期間D2:図14参照)における損失熱量の平均値に基づいて、損失熱量の新たな基準値を算出する。例えば、給湯システムH2(図7参照)の配管の付け替えが行われたり、部品交換が行われたりした場合、正常時の損失熱量の大きさが変化することがある。このような場合でも、前記したように損失熱量の基準値が更新されることで、給湯システムH2の診断を高精度に行うことができる。
【0103】
図21は、熱源側ポンプの流量特性の更新に関するフローチャートである(適宜、図8も参照)。
ステップS401において系統管理装置100Aの処理部30Aは、給湯システムH2(図7参照)の据付後やリセット後の初回運転であるか、又は、直近のメンテナンスから一定期間が経過しているか否かを判定する。給湯システムH2の据付後やリセット後の初回運転ではなく、また、直近のメンテナンスから一定期間が経過していない場合(S401:No)、処理部30Aは、一連の処理を終了する(END)。また、ステップS401において給湯システムH2の据付後やリセット後の初回運転であるか、又は、直近のメンテナンスから一定期間が経過している場合(S401:Yes)、処理部30Aの処理はステップS402に進む。
【0104】
ステップS402において処理部30Aは、搬送推定情報を更新する。すなわち、処理部30Aは、稼働情報記憶部57(図8参照)に格納されている熱源側ポンプ67(図7参照)の回転速度の履歴と、その他の運転履歴と、に基づいて、新たな流量特性を設定する。なお、流量特性とは、熱源側ポンプ67の回転速度と流量との間の関係を示す数式やデータテーブルである。処理部30Aは、給湯システムH2(熱媒体系統)の初回運転時である場合、又は、給湯システムH2の直近のメンテナンスから所定の期間が経過している場合、給湯システムH2の稼働情報に基づいて、熱源側ポンプ67(ポンプ)の流量特性のパラメータを更新(設定)する。このようなパラメータの例として、熱源側ポンプ67の回転速度から流量を導く数式に含まれる所定の係数が挙げられる。
【0105】
例えば、放熱器62(図7参照)の水配管に詰まりが生じた場合には、熱源側ポンプ67の回転速度と流量との関係が変化するため、その流量特性を更新することで、湯水の流量の推定精度を維持できる。
次にステップS403において処理部30Aは、新たな流量特性を示す搬送推定情報を搬送推定情報記憶部51c(図8参照)に格納する。
【0106】
<効果>
第2実施形態によれば、給湯システムH2の損失熱量を集計する際の期間(図14の所定期間D2)が、加熱装置W1の今回の駆動終了時から次回の駆動終了時までの期間に設定される。これによって、加熱装置W1で加熱された湯水の熱量が貯湯ユニットU1で利用されるという因果関係が成立するため、供給熱量と消費熱量との熱収支を示す損失熱量を高精度に算出できる。そして、微小な熱損失が発生した場合でも、水漏れ等の発生をユーザに報知できる。また、第2実施形態によれば、温度の検出精度を高めるために、貯湯タンク71(図7参照)の温度センサの個数を増やすといったことを行う必要が特にないため、設備コストの増加を抑制できる。
【0107】
≪変形例≫
以上、本開示に係る系統管理装置100,100Aについて各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、熱量の集計対象である所定期間D1(図4参照)には、冷却装置E1の駆動開始時から保冷装置23のエネルギ消費の終了時までの1サイクル分の期間が含まれる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、「所定期間」に複数サイクル分の期間が含まれるようにしてもよい。この場合でも、第1実施形態と同様の効果が奏される他、サイクルごとの各センサの検出値の変動が平均化されるため、水漏れ等を高精度で検知できる。なお、第2実施形態についても同様のことがいえる。
【0108】
また、第1実施形態では、系統管理装置100(図1参照)が冷却装置E1(図1参照)や保冷装置23(図1参照)とは別体である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、系統管理装置100に相当する所定の回路が冷却装置E1の制御基板(図示せず)に実装されるようにしてもよいし、また、保冷装置23の制御基板(図示せず)に実装されるようにしてもよい。なお、第2実施形態についても同様のことがいえる。
【0109】
また、第1実施形態では、冷却装置E1から保冷装置23に水を導く経路に流量計22(図1参照)が設置され、保冷装置23から冷却装置E1に水を導く経路に搬送ポンプ21(ポンプ)が設置される場合について説明したが、搬送ポンプ21や流量計22の設置箇所は適宜に変更可能である。すなわち、冷却装置E1(熱源装置)から保冷装置23(消費装置)に水(熱媒体)を導く配管、及び、保冷装置23から冷却装置E1に水を導く配管のうちの一方に流量計22が設置され、他方に搬送ポンプ21(ポンプ)が設置されるようにしてもよい。このような構成において、処理部30は、前記した一方の配管における水(熱媒体)の流量を流量計22から取得し、他方の配管を通流する水の流量を搬送ポンプ21の回転速度に基づいて算出する。これによって、各配管における水の流量を個別に算出できる。
【0110】
また、第1実施形態では、系統管理装置100(図1参照)の処理結果である損失熱量が出力部42(図2参照)や端末装置50(図2参照)に表示される場合について説明したが、これに限らない。例えば、損失熱量に相当する消費電力量や、消費電力量に相当する電気使用料金の他、所定の温度差における損失熱量に対応する水量や、水量に相当する水道使用料金が表示されるようにしてもよい。また、損失熱量に相当する冷却装置E1の稼働時間や、保冷装置23の稼働時間が表示されるようにしてもよい。なお、第2実施形態についても同様のことがいえる。
【0111】
また、各実施形態では、使用される「熱媒体」が水である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、不凍液や所定の冷媒、空気といった他の種類の「熱媒体」が用いられてもよい。
また、各実施形態において、熱源装置が出力可能な最大供給熱量と、熱エネルギの消費装置の最大消費熱量との差の値が表示されるようにしてもよい。また、許容可能な最大損失熱量が予め設定されている場合において、この最大損失熱量の値が実際の損失熱量と併せて表示されるようにしてもよい。これによって、最大損失熱量に対して、現状の損失熱量がどの程度の大きさであるかをユーザが把握できる。
【0112】
また、第1実施形態では、熱源装置である冷却装置E1(図1参照)で水が冷却され、冷却された水が保冷装置23(図1参照)に供給される場合について説明したが、これに限らない。例えば、熱源装置で水(熱媒体)が加熱され、加熱された水が熱エネルギの消費装置に供給されるようにしてもよい。
また、第2実施形態では、加熱装置W1(図7参照)で湯水が加熱され、加熱された湯水が蓄熱槽である貯湯タンク71(図7参照)に供給される場合について説明したが、これに限らない。例えば、熱源装置で水(熱媒体)が冷却され、冷却された水が蓄熱槽に供給されるようにしてもよい。
【0113】
また、第2実施形態の給湯システムH2(図7参照)の構成は一例であり、適宜に変更可能である。例えば、貯湯ユニットU1(図7参照)の内部経路の一部をバイパスさせたり、適宜に組み替えたりしてもよい。また、例えば、給水温度センサ73は貯湯タンク71の温度測定用に設置した別のセンサで代替し、1サイクルの中の代表値を用いて給水温度を推定することも可能である。また、追焚き用熱交換器が貯湯タンク71の外部に設置されるようにしてもよい。また、貯湯タンク71の上部から配管を介して通流する温水と、上水道配管からの水と、が熱交換器で熱交換し、さらに、貯湯タンク71の下部に導かれるようにしてもよい。
【0114】
また、第2実施形態において、加熱装置W1(熱源装置)から貯湯タンク71(蓄熱槽)に冷媒(熱媒体)を導く配管、及び、貯湯タンク71から加熱装置W1に冷媒を導く配管のうちの一方に流量計(図示せず)が設置され、他方に熱源側ポンプ67(ポンプ)が設置される構成にしてもよい。このような構成において、処理部30Aは、前記した一方の配管における冷媒の流量を流量計から取得し、他方の配管を通流する冷媒の流量を熱源側ポンプ67の回転速度に基づいて算出する。これによって、各配管における冷媒の流量に基づき、処理部30Aが供給熱量や消費熱量を適切に算出できる。
【0115】
また、第2実施形態において、貯湯タンク71(蓄熱槽)から浴槽B1(消費装置)に湯水(熱媒体)を導く配管、及び、浴槽B1から貯湯タンク71(蓄熱槽)に湯水を導く配管のうちの一方にふろ流量計80(流量計)が設置され、他方にふろ用ポンプ84(ポンプ)が設置される構成で、次の処理が行われるようにしてもよい。すなわち、処理部30Aが、前記した一方の配管における湯水の流量をふろ流量計80から取得し、他方の配管を通流する湯水の流量をふろ用ポンプ84の回転速度に基づいて算出するようにしてもよい。これによって、各配管における湯水の流量に基づき、処理部30Aが供給熱量や消費熱量を適切に算出できる。
【0116】
また、第2実施形態における給湯システムH2の異常原因の推定には、さまざまな方法を用いることが可能である。例えば、一つ又は複数の稼働情報の変動パターンと、所定の条件分岐と、に基づいて、処理部30Aが給湯システムH2の異常原因を分類するようにしてもよい。その他、所定の機械学習や深層学習を用いて、異常原因ごとの特徴を処理部30Aが事前に学習しておき、学習結果に含まれる所定のパラメータに基づいて、給湯システムH2の稼働情報の特徴を分類するようにしてもよい。
【0117】
また、第1実施形態で説明した系統管理装置100は、温熱又は冷熱を生成する熱源装置から配管を介して消費側に熱媒体を導くように構成されたさまざまな機器に適用できる。また、第2実施形態で説明した系統管理装置100Aは、熱源装置で生成した温熱又は冷熱を蓄熱槽に蓄え、蓄熱槽から配管を介して熱媒体を消費側に導くように構成されたさまざまな機器に適用できる。
また、第2実施形態(図7参照)では、1対の加熱装置W1と貯湯ユニットU1に対して、1台の系統管理装置100Aが設けられる構成について説明したが、これに限らない。例えば、複数セットの加熱装置及び貯湯ユニットが、1つの系統管理装置100Aに接続されるようにしてもよい。また、複数セットの加熱装置及び貯湯ユニットが接続されている1つの系統管理装置は、インターネット網を介してサーバ上に構築されてもよい。
【0118】
また、系統管理装置100,100Aが実行するプログラム(系統管理方法等のプログラム)は、通信回線を介して提供することもできる他、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
また、実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0119】
23 保冷装置(消費装置)
30,30A 処理部
21 搬送ポンプ(ポンプ)
42 出力部(表示装置)
50 端末装置(表示装置)
60 搬送推定情報更新部
67 熱源側ポンプ(ポンプ)
71 貯湯タンク(蓄熱槽)
80 ふろ流量計(流量計)
84 ふろ用ポンプ(ポンプ)
91 入出力装置(表示装置)
92 制御基板
93 端末装置(表示装置)
100,100A 系統管理装置
B1 浴槽(消費装置)
E1 冷却装置(熱源装置)
H1 冷熱システム(熱媒体系統)
H2 給湯システム(熱媒体系統)
K1,K2 接続配管
T1 給湯端末(消費装置)
U1 貯湯ユニット(消費装置)
W1 加熱装置(熱源装置)
X1 系統管理システム
図1
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