(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078262
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】罫書用治具
(51)【国際特許分類】
B25H 7/04 20060101AFI20240603BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B25H7/04 E
G01C15/00 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190694
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】米本 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 秋諭
(72)【発明者】
【氏名】京谷 淳史
(57)【要約】
【課題】罫書線を引く際の工程数を低減することができる罫書用治具を提供する。
【解決手段】罫書用治具は、リフレクタの三次元位置を計測する三次元計測装置と共に用いられるものであって、対象物に着脱可能に固定される固定部材と、相対変位可能に固定部材に設けられる可動部材と、可動部材に設けられ、可動部材によって相対変位する定規部材と、を備え、定規部材は、定規部と、第1載置部と、第2載置部と、を含み、第1載置部及び第2載置部の各々には、リフレクタが載置され、定規部は、第1載置部と第2載置部との間に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタの三次元位置を計測する三次元計測装置と共に用いられる罫書用治具であって、
対象物に着脱可能に固定される固定部材と、
相対変位可能に前記固定部材に設けられる可動部材と、
前記可動部材に設けられ、前記可動部材によって相対変位する定規部材と、を備え、
前記定規部材は、定規部と、第1載置部と、第2載置部と、を含み、
前記第1載置部及び前記第2載置部の各々には、前記リフレクタが載置され、
前記定規部は、前記第1載置部と前記第2載置部との間に配置されている、罫書用治具。
【請求項2】
前記可動部材は、互いに交差する第1方向及び第2方向の各々の方向に前記定規部材を相対変位させる第1可動部を含む、請求項1に記載の罫書用治具。
【請求項3】
前記可動部材は、第2可動部を更に含み、
前記第2可動部は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に延びる回動軸線まわりに前記定規部材を相対角変位させる、請求項2に記載の罫書用治具。
【請求項4】
前記第1載置部は、回動軸線上に配置されている、請求項3に記載の罫書用治具。
【請求項5】
前記第2可動部は、回動軸線から55mm以上離れている、請求項4に記載の罫書用治具。
【請求項6】
前記固定部材は、前記対象物に当接させて固定される固定面を有し、
前記定規部材は、前記固定面から浮かせて配置されている、請求項1に記載の罫書用治具。
【請求項7】
前記可動部材は、第3可動部を更に含み、
前記第3可動部は、第3方向に前記定規部材を揺動させる、請求項3に記載の罫書用治具。
【請求項8】
前記定規部材は、前記定規部である第1定規部と異なる第2定規部と、第3載置部とを更に含み、
前記第1定規部及び前記第2定規部は、前記第1載置部から互いに異なる方向に延在し、
前記第3載置部は、前記リフレクタを載置することができ、
前記第2定規部は、前記第1載置部と前記第3載置部との間に配置されている、請求項1に記載の罫書用治具。
【請求項9】
前記定規部材は、第3定規部と、第4載置部とを更に含み、
前記第1乃至第3定規部は、前記第1載置部から互いに異なる方向に延在し、
前記第4載置部は、前記リフレクタを載置することができ、
前記第3定規部は、前記第1載置部と前記第4載置部との間に配置されている、請求項8に記載の罫書用治具。
【請求項10】
前記可動部材は、金属から成り、
前記定規部材は、合成樹脂から成る、請求項1に記載の罫書用治具。
【請求項11】
前記定規部材は、板状に形成され、
前記定規部材の厚みは、1.5mm以上4.2mm以下となっている、請求項1に記載の罫書用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リフレクタの三次元位置を計測する三次元計測装置と共に用いられる罫書用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
製缶品等の対象物に対して罫書きを行う際に罫書用治具が用いられる。罫書用治具の一例として、例えば特許文献1の罫書用治具が知られている。特許文献1の罫書用治具は、接触式の三次元測定機によって罫書用治具の三次元位置(以下、単に「位置」という)を計測可能に構成されている。また、特許文献1の罫書用治具では、ポンチ挿入孔にポンチを挿入することによってワークに打点(目印)を打つことができる。それ故、罫書用治具は、ワークの所定位置に精度よく目印を打たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の罫書用治具を用いて罫書線を引く場合、罫書作業が以下のようにして行われる。即ち、まず、罫書用治具を用いてワークに複数の目印が打たれる。その後、複数の目印を繋ぐように罫書線が引かれる。それ故、ワークに複数の目印を打つ必要があり、その度に罫書用治具をワークから取り外す必要がある。それ故、罫書線を引く際の工程数が多くなる。
【0005】
そこで本開示は、罫書線を引く際の工程数を低減することができる罫書用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の罫書用治具は、リフレクタの三次元位置を計測する三次元計測装置と共に用いられる罫書用治具であって、対象物に着脱可能に固定される固定部材と、相対変位可能に前記固定部材に設けられる可動部材と、前記可動部材に設けられ、前記可動部材によって相対変位する定規部材と、を備え、前記定規部材は、定規部と、第1載置部と、第2載置部と、を含み、前記第1載置部及び前記第2載置部の各々には、前記リフレクタが載置され、前記定規部は、前記第1載置部と前記第2載置部との間に配置されているものである。
【0007】
本開示に従えば、第1載置部と第2載置部との間に定規部が配置されている。それ故、三次元計測装置を用いて所定の三次元位置に第1及び第2載置部の各々を配置した後、定規部材13を用いて所望の罫書線を引くことができる。これにより、罫書用治具を対象物に配置するという1つの作業によって、所望の罫書線を引くことができる。従って、罫書線を引く際の工程数を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、罫書線を引く際の工程数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態の罫書用治具を対象物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の罫書用治具を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図3の罫書用治具において、定規部材を第1方向及び第2方向の各々に動かした状態を示す平面図である。
【
図6】
図3の罫書用治具において、定規部材を回動軸線まわりに角変位させた状態を示す平面図である。
【
図7】
図1の罫書用治具を用いた罫書作業を示す平面図であって、(a)は罫書線を引いている状態を示し、(b)は罫書用治具を取り外した状態を示す。
【
図8】
図1の罫書用治具を用いた罫書作業の手順を示すフロー図である。
【
図9】他の実施形態の罫書用治具を示す斜視図である。
【
図10】更なる他の実施形態の罫書用治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態の罫書用治具1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する罫書用治具1は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0011】
図1に示す罫書用治具1は、対象物W、例えば製缶品に加工基準線等の罫書線を引くための治具である。なお、対象物Wは、製缶品に限定されず、構造物及び建造物を製造する際の中間品等であってもよく、罫書線が引かれるものであればよい対象物W、例えば、製缶品に罫書線を引く際に用いられる。罫書用治具1は、罫書線を引く際、三次元計測装置2と共に使用される。以下では、まず三次元計測装置2の構成が説明される。
【0012】
<三次元計測装置>
三次元計測装置2は、リフレクタ3の三次元位置(以下、単に「位置」という)を計測する。より詳細に説明すると、三次元計測装置2は、測定部2aを有している。測定部2aは、レーザ光Lを発射し且つ受光する。三次元計測装置2は、測定部2aを左右及び上下方向に回転させながら測定部2aからレーザ光Lを発射する。リフレクタ3は、後で詳述するようにレーザ光Lを反射する。三次元計測装置2は、反射されたレーザ光L、即ち反射光を測定部2aで受光することによってリフレクタ3の位置を計測する。三次元計測装置2は、例えばFRRO Vantage(商標)である。但し、三次元計測装置2は、FRRO Vantage(商標)に限定されず、前述する機能を有する計測装置(例えばLeica社のAT960、ATS600、及びAT403、並びにAPI社のRadianPro)であってもよい。
【0013】
<リフレクタ>
図2に示すようにリフレクタ3は、前述の通り照射されるレーザ光Lを反射する。より詳細に説明すると、リフレクタ3は、再帰反射性を有している。即ち、リフレクタ3は、三次元計測装置2からレーザ光Lがリフレクタ3に入射されると、入射方向に平行且つ入射方向と反対方向にレーザ光Lを反射する。これにより、リフレクタ3は、照射されるレーザ光Lを三次元計測装置2に戻すことができる。更に詳細に説明すると、リフレクタ3は、球体状になっている。リフレクタ3は、その内部にレンズ3aを有している。レンズ3aは、リフレクタ3の外表面に形成される開口3bから外側に表出している。リフレクタ3は、レンズ3aに入射するレーザ光Lを再帰反射する。また、リフレクタ3は、固定磁石を有している。それ故、リフレクタ3は、金属から成る部分に吸着させることができる。
【0014】
<罫書用治具>
罫書用治具1は、前述の通り、対象物Wに罫書線を引く際に用いられる。また、罫書用治具1は、三次元計測装置2と共に使用されることによって、所望の位置に外線を引かせることができる。罫書用治具1は、固定部材11と、可動部材12と、定規部材13と、を備えている。
【0015】
<固定部材>
固定部材11は、対象物Wに着脱可能に固定される。より詳細に説明すると、固定部材11は、固定磁石を有している。固定部材11は、固定磁石の磁力によって金属から成る対象物W(より詳しくは対象物Wの表面)に固定される。固定部材11の底面である固定面11aは、例えば
図3に示すように平坦に形成されている。本実施形態において、固定部材11は、直方体状に形成されている。そして、固定面11aは、その高さ方向一方側の面である。固定部材11は、固定面11aに対象物Wの表面に当接させることによって対象物Wに着脱可能に固定される。本実施形態において、固定部材11は、
図4に示す操作部11b(例えば、つまみ)を操作することによって磁力のオン及びオフを切り替えることができる。これにより、固定部材11を対象物Wの表面に着脱することができる。
【0016】
<可動部材>
図2に示す可動部材12は、相対変位可能に固定部材11に設けられている。そして、可動部材12は、相対変位することによって後で詳述する定規部材13を動かすことができる(
図5及び
図6の実線及び二点鎖線も参照)。なお、
図5及び
図6において、二点鎖線は、相対変位前の罫書用治具1の状態を示し、実線は、相対変位後の罫書用治具1の状態を示している。可動部材12について更に詳細に説明すると、可動部材12は、固定部材11に対して定規部材13を第1方向及び第2方向に相対変位することができる。また、可動部材12は、第3方向に定規部材13を揺動させることができる。更に、可動部材12は、回動軸線L1まわりに定規部材13を相対角変位させる。第1方向及び第2方向は、互いに交差する方向である。本実施形態において、第1方向及び第2方向は、互いに直交する方向である。また、第1方向及び第2方向は、前述する高さ方向に直交する方向である。ここで、第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向である。本実施形態において、第3方向は、固定部材11の固定面11aに直交する高さ方向に相当する。更に、回動軸線L1は、第3方向に延在する軸線である。また、可動部材12は、金属から成る。本実施形態において、可動部材12は、スライド部21と、揺動部22と、回動部23とを含んでいる。
【0017】
第1可動部の一例であるスライド部21は、固定部材11に対して第1方向及び第2方向の各々の方向に定規部材13を相対変位させる(
図5の実線及び二点鎖線参照)。より詳細に説明すると、スライド部21は、
図3に示すように底面21aと取付面21bとを有している。本実施形態において、底面21aは、スライド部21の第3方向一方側の面であり、取付面21bは、スライド部21の第3方向他方の面である。スライド部21では、底面21aが固定部材11に固定されている。そして、スライド部21は、取付面21bを底面21aに対して第1方向及び第2方向の各々の方向にスライドさせることができる。本実施形態において、スライド部21は、固定部分21cと、第1スライド部分21dと、第2スライド部分21eとを有している。
【0018】
固定部分21c、第1スライド部分21d、及び第2スライド部分21eは、第3方向一方側からそれらの順で積層されている。固定部分21cは、第3方向一方側に底面21aを有しており、固定部材11に固定される。第1スライド部分21dは、第1方向にスライド可能に固定部分21cに設けられ、第2スライド部分21eは、第2方向にスライド可能に第1スライド部分21dに設けられている。また、第2スライド部分21eは、第3方向他方側に取付面21bを有している。それ故、取付面21bは、第1スライド部分21dをスライドさせることによって第1方向に相対変位し、第2スライド部分21eをスライドさせることによって第2方向に相対変位する。
【0019】
また、スライド部21は、
図4に示すように第1スライド機構21fと、第2スライド機構21gとを有している。第1スライド機構21fは、例えば送りねじ及びマイクロメータヘッド等の送り機構である。そして、第1スライド機構21fは、第1送り部21hを操作する(例えば回すことによって)、第1スライド部分21dを第1方向にスライドさせることができる(例えば、
図5の矢符A1)。第2スライド機構21gもまた、例えば送りねじ及びマイクロメータヘッド等の送り機構である。そして、第2スライド機構21gは、第2送り部21iを操作する(例えば回すことによって)、第2スライド部分21eを第2方向にスライドさせることができる(例えば、
図5の矢符A2)。
【0020】
このように構成されるスライド部21は、例えばミスミのXY軸 アリ溝 正方形の手動ステージである。但し、スライド部21は、前述するもの限定されず、取付面21bを第1方向及び第2方向に相対変位可能なものであればよい。
【0021】
第3可動部の一例である揺動部22は、第3方向に定規部材13を揺動させる。より詳細に説明すると、揺動部22は、
図3に示すようにスライド部21に取り付けられている。本実施形態において、揺動部22は、スライド部21の取付面21bに取り付けられる。また、揺動部22は、取付面21bから所定方向(本実施形態において第1方向)に延在している。揺動部22は、例えば板状で且つ側面視でクランク状に形成されている。即ち、揺動部22は、取付面21bから第1方向一方に延在した先で、第3方向一方へと折れ曲がる。更に、揺動部22は、固定面11a付近まで延在した先で第1方向一方へと折れ曲がっている。なお、揺動部22において、第1方向一方へと折れ曲がった先の部分は固定面11aから浮かせて配置されている。従って、揺動部22は、固定面11aより第3方向他方側に配置されている。また、揺動部22は、第1方向一方側にある先端部分が残余部分に対して第3方向に揺動可能に構成されている。従って、揺動部22は、揺動軸線L2まわりに先端部分を揺動させる。ここで、揺動軸線L2は、第3方向に直交する方向(本実施形態において、第2方向)に延在し且つ揺動部22の先端部分を通る軸線である。
【0022】
第2可動部である回動部23は、回動軸線L1まわりに定規部材13を相対角変位させる(
図6の実線及び二点鎖線参照)。回動部23は、揺動部22の先端に取り付けられている。回動部23は、
図4に示すように回動軸線L1から距離R(R≧55mm)離れている。即ち、回動部23の回動半径Rが55mm以上となっている。また、
図3に示すように、回動部23は、揺動部22と同じく固定面11aから浮かせて配置されている。回動部23は、例えば固定面11aから2mm以上浮かせて配置されている。このように構成されている回動部23は、基部23aと、回動部分23bとを有している。
【0023】
基部23aは、揺動部22の先端に固定されている。回動部分23bは、回動軸線L1まわりに回動するように基部23aに設けられている。本実施形態において、基部23aは、第1方向一方に向く摺動面23cを有している。摺動面23cは、回動軸線L1を中心とする部分円柱面状に形成されている。回動部分23bもまた、部分円柱面状に形成されており、摺動面23c上を摺動する。これにより、回動部分23bが回動軸線L1周りに回動する、即ち角変位する。また、回動部23は、回動機構23dを有している。回動機構23dは、例えばウォーム等の回転機構である。そして、回動機構23dは、回動送り部23eを操作する(例えば回す)ことによって、回動部分23bを回動させることができる(
図6の実線参照)。
【0024】
このように構成される回動部23は、例えばミスミのゴニオ アリ溝 1軸の手動ステージである。但し、回動部23は、前述するもの限定されず、回動部分23bを回動軸線L1まわりに回動可能なものであればよい。
【0025】
<定規部材>
図4に示す定規部材13は、罫書線を引く作業を補助する。より詳細に説明すると、定規部材13は、
図7に示すように対象となる2点間(例えば2つの目標位置P1,P2の間)に部分的に位置するように対象物W(より詳細に説明すると、対象物Wの表面)に当てられる。そして、定規部材13は、対象となる2点間に直線又は曲線等の罫書線を引くことを可能にする。本実施形態において、罫書線は、直線であって罫書用具5によって引かれる。なお、罫書用具5は、例えば罫書針又はペン等であって、本実施形態においてペンである。
【0026】
定規部材13は、
図4に示すように可動部材12に設けられている。定規部材13は、可動部材12によって相対変位する。即ち、定規部材13は、可動部材12(より詳細に説明すると、スライド部21)によって、第1方向及び第2方向の各々の方向に相対変位する(
図5参照)。また、定規部材13は、可動部材12(より詳細に説明すると、揺動部22)によって揺動軸線L2まわりに揺動する、つまり第3方向に揺動する。更に、定規部材13は、可動部材12(より詳細に説明すると、回動部23)によって、回動軸線L1まわりに回動する(
図6参照)。
【0027】
また、定規部材13は、例えば以下のように構成されている。即ち、
図2に示すように、定規部材13は、第3方向に厚みを有する板部材である。本実施形態において、定規部材13の厚みは、1.5mm以上4.2mm以下となっている、また、定規部材13は、3つの方向に延在する三又状に形成されている。即ち、定規部材13は、延伸部分13a~13cが中央部分から3つの方向に夫々延びている。本実施形態において、定規部材13は、平面視でT字状に形成されており、延伸部分13a~13cが中央部分から第1方向一方、第2方向一方、及び第2方向他方の各々に延びている(
図4も参照)。このような形状を有する定規部材13は、第1載置部31と、第2載置部32と、第3載置部33と、第4載置部34と、第1定規部35と、第2定規部36と、第3定規部37とを有している。
【0028】
第1載置部31は、
図3及び
図4に示すように可動部材12に設けられている。より詳細に説明すると、第1載置部31は、回動部23の回動部分23bに取り付けられている。第1載置部31は、定規部材13の中央部分を成している。第1載置部31には、リフレクタ3を載置することができる。より詳細に説明すると、第1載置部31は、金属から成る円環状の載置台31aを有している。載置台31aは、リフレクタ3を磁力吸着させることができる。これにより、載置台31aは、内孔に部分的に嵌り込むように、載置台31aの上にリフレクタ3を固定させることができる。
【0029】
また、第1載置部31は、回動軸線L1上に配置されている。より詳細に説明すると、載置台31aは、その中心が回動軸線L1上に位置するように配置されている。これにより、回動部23によって定規部材13を角変位させた際に第1載置部31の位置が変わることがない、即ち、第1載置部31上のリフレクタ3の中心位置が変わらない。また、載置台31aの中心が回動軸線L1上に位置し且つ回動部23が回動軸線L1から55mm以上離れているので、載置台31aを回動部23から離すことができる。
【0030】
第2乃至第4載置部32~34は、定規部材13の第1方向一端部分、第2方向一端部分、及び第2方向他端部分に夫々位置している。より詳細に説明すると、第2載置部32は、第1方向他方に延びる第1延伸部分13aの先端側部分を成している。第3載置部33は、第2方向一方に延びる第2延伸部分13bの先端側部分を成している。第4載置部34は、第2方向他方に延びる第3延伸部分13cの先端側部分を成している。そして、第2乃至第4載置部32~34にもまた、リフレクタ3を載置することができる。即ち、第2乃至第4載置部32~34もまた、第1載置部31と同じく載置台32a~34aを夫々有している。そして、第2乃至第4載置部32~34もまた、リフレクタ3を載置台32a~34aの各々に磁力吸着させることによって載置台32a~34a上にリフレクタ3を夫々固定させることができる。
【0031】
また、第2乃至第4載置部32~34の各々の載置台32a~34aは、本実施形態において以下のように配置されている。即ち、載置台32a~34aの各々は、各々の中心と第1載置部31の載置台32aの中心(即ち、平面視で回動軸線L1に対応)とを結ぶ仮想線L3~L5が回動軸線L1から第1方向一方、第2方向一方、及び第2方向他方の各々に直線的に延びるように配置されている。これにより、第2乃至第4載置部32~34の各々に載置されるリフレクタ3は、第1載置部31上のリフレクタ3に対して、第1方向一方、第2方向一方、及び第2方向他方の各々に離れた位置に載置することができる。更に、第2乃至第4載置部32~34の各々は、その中心と第1載置部31の載置台31aの中心との距離が同じになるように配置されている。但し、第2乃至第4載置部32~34の各々の中心と第1載置部31の載置台31aの中心との距離は、必ずしも同じである必要はない。
【0032】
第1定規部35は、第1載置部31と第2載置部32との間に配置されている。より詳細に説明すると、第1定規部35は、第1延伸部分13aの基端(換言すると、第1載置部31との接続端)から第2載置部32までの部分を成している。第1定規部35では、第2方向の一側面(本実施形態において、第2方向一方側の側面)が定規35aを成している。定規35aには、罫書用具5の先端があてがわれる。そして、罫書用具5の先端は、対象物Wの表面に押し付けたまま、定規35aに沿って対象物Wの表面上で動かされる(
図7(a)の罫書用具5参照)。これにより、罫書線が引かれる(
図7(b)の罫書線M参照)。本実施形態において、定規35aは、平面視で仮想線L3に一致するように形成されている。より詳細に説明すると、定規35aは、罫書用具5の先端の外径分だけ仮想線L3から第2方向他方側にオフセットされている。これにより、定規35aによって平面視で仮想線L3に重なる罫書線を引くことができる。
【0033】
第2及び第3定規部36,37は、第1載置部31から第1定規部25と異なり且つ互いも異なる方向に延在している。また、第2及び第3定規部36,37は、第1載置部31と第3載置部33との間、及び第1載置部31と第4載置部34との間に夫々配置されている。より詳細説明すると、第2定規部36は、第2延伸部分13bの基端(換言すると、第1載置部31との接続端)から第3載置部33までの部分を成している。他方、第3定規部37は、第3延伸部分13cの基端(換言すると、第1載置部31との接続端)から第4載置部34までの部分を成している。そして、第2及び第3定規部36,37の各々では、第1方向の一側面(本実施形態において、第1方向一方側の側面)が定規36a,37aを成している。定規36a,37aは、第1定規部35の定規35aと同様の機能を有する。即ち、罫書用具5の先端を定規36a,37aにあてがい且つ対象物Wの表面に押し付けたまま定規35aに沿って対象物Wの表面上で動かすことによって、罫書線が引かれる。本実施形態において、定規36a,37aは、平面視で仮想線L4,L5に一致するように形成されている。より詳細に説明すると、定規36a,37aは、罫書用具5の先端の外径分だけ仮想線L4,L5から第1方向他方側にオフセットされている。これにより、定規36a,37aによって、仮想線L4,L5に重なるように罫書線を引くことができる。
【0034】
更に、定規部材13は、
図3に示すように固定面11aから浮かせて配置されている。定規部材13と対象物W(より詳細には、対象物Wの表面)との接触面積を小さくできるので、定規部材13に生じる摩擦力を低減することができる。これにより、対象物Wの表面上において定規部材13を動かそうとする際、定規部材13が摩擦力で動かなかったり撓んだりすることを抑制できる。また、定規部材13は、合成樹脂から成る。それ故、定規部材13は、定規部材13の板厚方向(本実施形態において、第3方向)に弾性変形することができる。これにより、定規部材13を対象物Wの表面に沿わせるように弾性変形させることができる。従って、定規部材13が対象物Wの表面から大きく浮いている場合に比べて、罫書線が引きやすい。なお、前述の通り、定規部材13が固定面11aから浮いている。それ故、対象物Wの表面に沿うように弾性変形させて弾性変形復帰力を発生させることができる。これにより、リフレクタ3の吸着磁力に対する反力を高めることができるので、弾性変形した際も対象物W(より詳細には、対象物Wの表面)摩擦力を低減することができる。
【0035】
<罫書用治具を用いた罫書作業>
以下では、罫書用治具1を用いて行われる罫書作業が
図8のフロー図を参照しながら説明される。罫書作業が行われる場合、まずステップS1に移行する。準備工程であるステップS1では、図示しないコンピュータ等において事前に対象物Wの三次元設計モデルが作成される。そして、三次元設計モデルにおいて罫書線を引く位置が決められる。本実施形態では、三次元設計モデルにおいて一本の罫書線が引かれる。引く位置が決められると、次に罫書線の両端に対してリフレクタ3を配置すべき位置である目標位置P1,P2が夫々算出される。本実施形態では、罫書線の両端からその延長線上に所定距離離れた位置に目標位置P1,P2が設定される。なお、目標位置P1,P2の算出方法は、前述する方法に限定されない。目標位置P1,P2の各々が算出されると、ステップS2に移行する。
【0036】
罫書用治具取付工程であるステップS2では、対象物Wの表面に罫書用治具1が配置される(例えば
図1参照)。より詳細に説明すると、罫書用治具1は、三次元設計モデルの罫書線を参照しながら、載置部31~34の各々が各目標位置付近に位置するように配置される。本実施形態では、一本の罫書線が引かれるので、罫書用治具1が以下のように対象物Wの表面に配置される。即ち、一方の目標位置P1付近に第1載置部31を位置させ、且つ他方の目標位置P2付近に第2載置部32を位置させるように罫書用治具1が配置される。その後、固定部材11の操作部11bが操作されることによって、固定部材11が対象物Wの表面に磁力吸着される。これにより、罫書用治具1が対象物Wの表面に固定される。そうすると、ステップS3に移行する。
【0037】
リフレクタ載置工程であるステップS3では、罫書用治具1の載置部31,32にリフレクタ3が夫々載置される。本実施形態では、第1載置部31及び第2載置部32の各々の載置台31a,32aにリフレクタ3が載置される。リフレクタ3は固定磁石を有している。それ故、リフレクタ3の各々が載置されると。リフレクタ3の各々が載置台31a,32aに磁力吸着される。これにより、リフレクタ3の各々が各載置部31,32上で固定される。なお、リフレクタ3の各々は、金属から成る対象物Wの表面にも吸引される。それ故、各載置部31,32が対象物Wの表面に向かって押される。これにより、定規部材13を対象物Wの表面形状に沿わせるように弾性変形させることができる。また、リフレクタ載置工程は、罫書用治具取付工程の前工程であってもよい。リフレクタ3が載置部31,32に固定されると、ステップS4に移行する。
【0038】
位置調整工程であるステップS4では、可動部材12によって載置部31,32の位置が調整される。より詳細に説明すると、可動部材12によって載置部31,32の各々に載置されるリフレクタ3の位置が調整される。例えば、三次元計測装置2を用いて各リフレクタ3の位置が計測される。そして、計測されるリフレクタ3の位置である計測位置と目標位置P1,P2とが作業者又はコンピュータによって比較される。そして、比較結果(例えば、計測位置と目標位置P1,P2の各座標成分の差分)に応じてスライド部21及び回動部23の各々の送り部21h,21i,23eが操作される。
【0039】
より詳細に説明すると、まず第1載置部31上のリフレクタ3を目標位置P1に配置すべく、第1載置部31上のリフレクタ3の計測位置と目標位置P1とが比較される。そして、比較結果に応じてスライド部21の送り部21h,21iが操作される。これにより、第1載置部31が対象物Wの表面上を第1方向及び第2方向にスライドさせられる(
図5の二点鎖線及び実線参照)。そうして、第1載置部31上のリフレクタ3が目標位置P1に移動させられる。次に、第2載置部32上のリフレクタ3を目標位置P2に配置すべく、第2載置部32上のリフレクタ3の計測位置と目標位置P2とが比較される。そして、比較結果に応じて回動部23の回動送り部23eが操作される。これにより、第2載置部32が回動軸線L1回りに回動させられる(
図6の二点鎖線及び実線参照)。そうして、第2載置部32上のリフレクタ3が目標位置P2に移動させられる。そうすると、各リフレクタ3が目標位置P1,P2に位置する。各リフレクタ3が目標位置P1,P2に位置すると、ステップS5に移行する。
【0040】
罫書き工程であるステップS5では、罫書用治具1の定規35aに沿って罫書線が引かれる。より詳細に説明すると、
図7に示すように罫書用治具1の定規35aに罫書用具5の先端があてがわれる(
図7(a)の実線参照)。そして、罫書用具5の先端は、対象物Wの表面に押し付けられ、そのまま定規35aに沿って対象物Wの表面上を動かされる(
図7(a)の二点鎖線参照)。これにより、対象物Wにおいて、三次元設計モデルで決められた位置に対応する位置に罫書線が引かれる(
図7(b)の罫書線M参照)。なお、定規35aを用いて罫書線を引くと共に、定規36a,37aを用いて他の罫書線が引かれてもよい。罫書線が引かれると、ステップS6に移行する。
【0041】
罫書用治具取外し工程であるステップS6では、罫書用治具1が対象物Wから取り外される(
図7(b)参照)。より詳細に説明すると、罫書用治具1の固定部材11において操作部11bが操作されることによって、固定部材11の磁力が遮断される。これにより、罫書用治具1が対象物Wから取り外される。取り外されると、罫書作業が終了する。
【0042】
本実施形態の罫書用治具1では、第1載置部31と第2載置部32との間に定規部35が配置されている。それ故、三次元計測装置2を用いて目標位置P1,P2に載置部31及び第2載置部32の各々を配置した後、定規部35を用いて所望の罫書線を引くことができる。これにより、罫書用治具1を対象物Wに配置するという1つの作業によって、所望の罫書線を引くことができる。従って、罫書線Mを引く際の工程数を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態の罫書用治具1では、スライド部21が、第1方向及び第2方向の各々の方向に定規部材13を相対変位させる。それ故、固定部材11を対象物Wに固定した後にスライド部21によって第1載置部31及び第2載置部32の位置を調整することができる。これにより、第1載置部31及び第2載置部32を所望の位置に配置することができるので、所望の位置に罫書線を引くことが容易である。
【0044】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、回動部23が、回動軸線L1まわりに定規部材13を相対角変位させる。それ故、固定部材11を対象物Wに固定した後に回動部23によって第1載置部31及び第2載置部32の位置を調整することができる。これにより、第1載置部31及び第2載置部32を所望の位置に配置することができるので、所望の位置に罫書線を引くことが容易である。
【0045】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、第1載置部31が回動軸線L1上に配置されている。それ故、回動部23によって定規部材13を角変位させても第1載置部31の位置が変わらない。従って、スライド部21によって第1載置部31の位置を合わせた後、回動部23によって第2載置部32の位置合わせを行うことができる。このように第1載置部31及び第2載置部32を順に位置合わせできるので、2つの載置部31,32の位置合わせを容易に行うことができる。
【0046】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、回動部23が回動軸線L1から55mm以上離れている。それ故、第1載置部31に載置されるリフレクタ3に対して発射される三次元計測装置2のレーザ光Lが可動部材12によって遮られることを抑制することができる。これにより、罫書用治具1の利便性を向上させることができる。
【0047】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、定規部材13が固定面11aから浮かせて配置されている。それ故、定規部材13と対象物W(より詳細には、対象物Wの表面)との接触面積を小さくすることができる。従って、可動部材12によって定規部材13を動かす際に生じる摩擦力を低減することができる。これにより、定規部材13を動かそうとする際に、定規部材13が摩擦力によって動かなかったり撓んだりすることを抑制することができる。それ故、罫書線Mが所望の形状、例えば真っすぐ引くことができる。
【0048】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、揺動部22が第3方向に定規部材13を揺動させる。それ故、対象物Wの表面が平坦でない、例えば湾曲している場合、固定部材11を対象物Wに固定した後に表面に沿うように揺動部22によって定規部材13を揺動させることができる。そうすると、第1載置部31及び第2載置部32をより表面に近づけることができる。これにより、第1載置部31及び第2載置部32が表面に対して大きく浮くことを抑制できるので、所望の位置に罫書線を引くことができる。
【0049】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、第2定規部36が第1定規部35と異なる方向に延在し且つ第1載置部31と第3載置部33との間に配置されている。それ故、第1定規部35の延在する方向と異なる方向に罫書線を引くことができる。
【0050】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、第3定規部37が第1定規部35及び第2定規部36と異なる方向に延在し且つ第1載置部31と第4載置部34との間に配置されている。それ故、第1定規部35及び第2定規部36の延在する方向と異なる方向に罫書線を引くことができる。
【0051】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、可動部材12が金属から成り、且つ定規部材13が合成樹脂から成る。それ故、可動部材12に関して高い剛性で保つことができるので、移動時において定規部材13を所望の位置まで移動させることができる。他方、定規部材13に柔軟性をもたせることができる。それ故、対象物Wの表面に沿わせて配置することができる。これにより、所望の位置に罫書線を引くことができる。
【0052】
更に、本実施形態の罫書用治具1では、定規部材13の厚みは、1.5mm以上4.2mm以下となっている。それ故、リフレクタ3を対象物Wに磁力吸着させる際、リフレクタ3を適度な吸着力で対象物Wに吸着させることができる。これにより、吸着力によって載置部31~34が動かなくなることを抑制することができる。
【0053】
<その他の実施形態について>
本実施形態の罫書用治具1では、定規部材13が三又状に形成されているが、必ずしもこのような形状である必要はない。例えば、
図9に示す罫書用治具1Aのように定規部材13AがL字状に形成されていてもよい。更に、
図10に示すように罫書用治具1Bのように定規部材13Bが一直線状に形成されていてもよい。更に、第1定規部35は、必ずしも第1方向一方に延在している必要はなく、第2方向一方又は第2方向他方に延在していてもよい。定規部材13の定規35a,36a,37aの形状は、直線状である必要はなく、曲線等であってもよい。
【0054】
また、本実施形態の罫書用治具1では、スライド部21が定規部材13を第1方向及び第2方向に移動させるが、定規部材13を第1方向及び第2方向の何れか一方だけに移動させてもよい。また、罫書用治具1は、必ずしも揺動部22及び回動部23を有している必要はない。また、定規部材13は、必ずしも固定面11aから浮いている必要はない。更に、定規部材13は、金属で構成されてもよく、可動部材12は、合成樹脂によって構成されてもよい。
【0055】
<例示的な実施形態>
第1の局面における罫書用治具では、リフレクタの三次元位置を計測する三次元計測装置と共に用いられる罫書用治具であって、対象物に着脱可能に固定される固定部材と、相対変位可能に前記固定部材に設けられる可動部材と、前記可動部材に設けられ、前記可動部材によって相対変位する定規部材と、を備え、前記定規部材は、定規部と、第1載置部と、第2載置部と、を含み、前記第1載置部及び前記第2載置部の各々には、前記リフレクタが載置され、前記定規部は、前記第1載置部と前記第2載置部との間に配置されているものである。
【0056】
上記局面に従えば、第1載置部と第2載置部との間に定規部が配置されている。それ故、三次元計測装置を用いて所定の三次元位置に第1及び第2載置部の各々を配置した後、定規部材13を用いて所望の罫書線を引くことができる。これにより、罫書用治具を対象物に配置するという1つの作業によって、所望の罫書線を引くことができる。従って、罫書線を引く際の工程数を低減することができる。
【0057】
第2の局面における罫書用治具では、第1の局面の罫書用治具において、前記可動部材は、互いに交差する第1方向及び第2方向の各々の方向に前記定規部材を相対変位させる第1可動部を含む。
【0058】
上記局面に従えば、第1可動部が、第1方向及び第2方向の各々の方向に定規部材を相対変位させる。それ故、固定部材を対象物に固定した後に第1可動部によって第1載置部及び第2載置部の位置を調整することができる。これにより、第1載置部及び第2載置部を所望の位置に配置することができるので、所望の位置に罫書線を引くことが容易である。
【0059】
第3の局面における罫書用治具では、第2の局面の罫書用治具において、前記可動部材は、第2可動部を更に含み、前記第2可動部は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向に延びる回動軸線まわりに前記定規部材を相対角変位させる。
【0060】
上記局面に従えば、回動軸線まわりに定規部材を第2可動部が相対角変位させる。それ故、固定部材を対象物に固定した後に第2可動部によって第1載置部及び第2載置部の位置を調整することができる。これにより、第1載置部及び第2載置部を所望の位置に配置することができるので、所望の位置に罫書線を引くことが容易である。
【0061】
第4の局面における罫書用治具では、第3の局面の罫書用治具において、前記第1載置部は、回動軸線上に配置されている。
【0062】
上記局面に従えば、第1載置部が回動軸線上に配置されている。それ故、第2可動部によって定規部材を角変位させても第1載置部の位置が変わらない。従って、第1可動部によって第1載置部の位置を合わせた後、第2可動部によって第2載置部の位置合わせを行うことができる。このように第1載置部及び第2載置部を順に位置合わせできるので、2つの載置部の位置合わせを容易に行うことができる。
【0063】
第5の局面における罫書用治具では、第4の局面の罫書用治具において、前記第2可動部は、回動軸線から55mm以上離れている。
【0064】
上記局面に従えば、第2可動部が回動軸線から55mm以上離れている。それ故、第1載置部に載置されるリフレクタに対して発射される三次元計測装置のレーザ光が可動部材によって遮られることを抑制することができる。これにより、罫書用治具の利便性を向上させることができる。
【0065】
第6の局面における罫書用治具では、第1乃至5の何れか1つの局面の罫書用治具において、前記固定部材は、前記対象物に当接させて固定される固定面を有し、前記定規部材は、前記固定面から浮かせて配置されている。
【0066】
上記局面に従えば、定規部材が固定面から浮かせて配置されている。それ故、定規部材と対象物Wとの接触面積を小さくすることができる。従って、可動部材によって定規部材を動かす際に生じる摩擦力を低減することができる。これにより、定規部材を動かそうとする際に、定規部材が摩擦力によって動かなかったり撓んだりすることを抑制することができる。それ故、罫書線が所望の形状、例えば真っすぐ引くことができる。
【0067】
第7の局面における罫書用治具では、第3乃至5の何れか1つの局面の罫書用治具において、前記可動部材は、第3可動部を更に含み、前記第3可動部は、第3方向に前記定規部材を揺動させる
【0068】
上記局面に従えば、第3可動部が第3方向に定規部材を揺動させる。それ故、対象物の表面が平坦でない、例えば湾曲している場合、固定部材を対象物に固定した後に表面に沿うように第3可動部によって定規部材を揺動させることができる。そうすると、第1載置部及び第2載置部をより表面に近づけることができる。これにより、第1載置部及び第2載置部が表面に対して大きく浮くことを抑制できるので、所望の位置に罫書線を引くことができる。
【0069】
第8の局面における罫書用治具では、第1乃至7の何れか1つの局面の罫書用治具において、前記定規部材は、前記定規部である第1定規部と異なる第2定規部と、第3載置部とを更に含み、前記第1定規部及び前記第2定規部は、前記第1載置部から互いに異なる方向に延在し、前記第3載置部は、前記リフレクタを載置することができ、前記第2定規部は、前記第1載置部と前記第3載置部との間に配置されている。
【0070】
上記局面に従えば、第2定規部が第1定規部と異なる方向に延在し且つ第1載置部と第3載置部との間に配置されている。それ故、第1定規部の延在する方向と異なる方向に罫書線を引くことができる。
【0071】
第9の局面における罫書用治具では、第8の局面の罫書用治具において、前記定規部材は、第3定規部と、第4載置部とを更に含み、前記第1乃至第3定規部は、前記第1載置部から互いに異なる方向に延在し、前記第4載置部は、前記リフレクタを載置することができ、前記第3定規部は、前記第1載置部と前記第4載置部との間に配置されている。
【0072】
上記局面に従えば、第3定規部が第1定規部及び第2定規部と異なる方向に延在し且つ第1載置部と第4載置部との間に配置されている。それ故、第1定規部及び第2定規部の延在する方向と異なる方向に罫書線を引くことができる。
【0073】
第10の局面における罫書用治具では、第1乃至9の何れか1つの局面の罫書用治具において、前記可動部材は、金属から成り、前記定規部材は、合成樹脂から成る。
【0074】
上記局面に従えば、可動部材が金属から成り、且つ定規部材が合成樹脂から成る。それ故、可動部材に関して高い剛性で保つことができるので、移動時において定規部材を所望の位置まで移動させることができる。他方、定規部材に柔軟性をもたせることができる。それ故、対象物の表面に沿わせて配置することができる。これにより、所望の位置に罫書線を引くことができる。
【0075】
第11の局面における罫書用治具では、第1乃至10の何れか1つの局面の罫書用治具において、前記定規部材は、板状に形成され、前記定規部材の厚みは、1.5mm以上4.2mm以下となっている。
【0076】
上記局面に従えば、定規部材の厚みは、1.5mm以上4.2mm以下となっている。それ故、リフレクタを対象物に磁力吸着させる際、リフレクタを適度な吸着力で対象物に吸着させることができる。これにより、吸着力によって載置部が相対変位しなくなることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B 罫書用治具
2 三次元計測装置
3 リフレクタ
11 固定部材
11a 固定面
12 可動部材
13,13A,13B 定規部材
21 スライド部(第1可動部)
22 揺動部(第3可動部)
23 回動部(第2可動部)
31 第1載置部
32 第2載置部
33 第3載置部
34 第4載置部
35 第1定規部
36 第2定規部
37 第3定規部
L レーザ光
L1 回動軸線
W 対象物