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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007827
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109171
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆一朗
(72)【発明者】
【氏名】國森 敬介
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB17
(57)【要約】
【課題】ビア導体と回路パターンとの接続信頼性を改善できる電子部品を提供する。
【解決手段】回路パターンと、前記回路パターンを被覆する絶縁性樹脂層4と、前記絶縁性樹脂層4の内部に設けられ、前記回路パターンに接続されたビア導体6と、前記ビア導体6を介して前記回路パターンに接続される配線部材と、を備え、前記ビア導体6と前記配線部材とは一体に形成されており、前記ビア導体6は、前記回路パターンに近い側の端部の径D1が、前記配線部材に近い側の端部の径D2よりも大きい電子部品。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンと、
前記回路パターンを被覆する絶縁性樹脂層と、
前記絶縁性樹脂層の内部に設けられ、前記回路パターンに接続されたビア導体と、
前記ビア導体を介して前記回路パターンに接続される配線部材と、
を備え、
前記ビア導体と前記配線部材とは一体に形成されており、
前記ビア導体は、
前記回路パターンに近い側の端部の径が、前記配線部材に近い側の端部の径よりも大きい
ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記ビア導体の径は、前記回路パターンに近い側の端部で最も大きくなる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記回路パターンは、
前記ビア導体が接続される面が前記ビア導体の側に凸となる曲率を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記曲率は、
半径rの円周の曲率と仮定した場合、1/rの値によって表され、当該rの値が6000m以上8000m以下である
ことを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタと、当該インダクタを被覆する樹脂層と、当該樹脂層の上に形成されたパッドと、樹脂層に設けられたビア導体と、を備え、ビア導体によってインダクタとパッドとが接続された構造のコイル部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-32978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコイル部品は、リフロー方式で部品実装が行われる等して外部から熱が加わった場合、樹脂層の熱膨張収縮による応力がビア導体とインダクタとの接続部に集中して破断する場合があり、ビア導体とインダクタとの接続信頼性の点で問題があった。
この問題は、コイル部品に限らず、インダクタ以外の回路パターンが樹脂層に被覆された電子部品に共通するものである。
【0005】
本発明は、ビア導体と回路パターンとの接続信頼性を改善できる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、回路パターンと、前記回路パターンを被覆する絶縁性樹脂層と、前記絶縁性樹脂層の内部に設けられ、前記回路パターンに接続されたビア導体と、前記ビア導体を介して前記回路パターンに接続される配線部材と、を備え、前記ビア導体と前記配線部材とは一体に形成されており、前記ビア導体は、前記回路パターンに近い側の端部の径が、前記配線部材に近い側の端部の径よりも大きいことを特徴とする電子部品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビア導体と回路パターンとの接続信頼性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るコイル部品の内部構造を示す模式図である。
図2図1において矢印Aが指し示す部分の拡大図である。
図3】コイル部品の製造工程を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るコイル部品の内部構造を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の応用例に係る多層型のコイル部品の内部構造を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の応用例に係るコイル部品の内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
以下の実施形態では、電子部品の一例としてコイル部品を説明する。なお、図面は、一部に模式図を含む場合がある。また、模式図における寸法や比率は実際の数値と異なる場合がある。断面図では、理解を容易にするために、構成要素の断面を示すハッチングを省略している場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るコイル部品1の内部構造を模式的に示す断面図である。図2は、図1において矢印Aが指し示す部分の拡大図である。
コイル部品1は、図1に示すように、インダクタ回路パターン2と、当該インダクタ回路パターン2を被覆する絶縁性樹脂層4と、当該絶縁性樹脂層4の内部に設けられたビア導体6と、絶縁性樹脂層4の表面に露出した外部端子8と、を備え、ビア導体6を介してインダクタ回路パターン2と外部端子8とが接続された構造の電子部品である。
【0011】
さらに、本実施形態のコイル部品1は、絶縁性樹脂層4とインダクタ回路パターン2との界面、及び、インダクタ回路パターン2とビア導体6との界面のそれぞれに、シード層10、12が形成されている。シード層10、12は、インダクタ回路パターン2、ビア導体6、および外部端子8をめっき成長により形成するための薄膜状の層であり、導電性材料によって形成されている。
【0012】
絶縁性樹脂層4は、絶縁性樹脂材料から形成され、コイル部品1の素体を構成する。本実施形態の絶縁性樹脂層4は、略直方体状に形成されており、いずれか1つの側面から上記外部端子8が露出している。
以下では、外部端子8が露出する側面を第1主面21と称し、当該第1主面21に対向する側面を第2主面22と称する。また、第1主面21及び第2主面22以外の側面を非主面24と称する。また、第1主面21に直交する方向をZ方向と称し、第1主面21を含む平面をXY平面と定義し、XY平面のX方向は、図面の左右方向に対応し、Y方向は図面の奥行き方向に対応する。
図1に示す断面図は、コイル部品1のZ方向を含む断面(以下、「Z方向断面」と言う)を視た図である。
【0013】
なお、本明細書において、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向について用いる「上」や「下」、「左」、「右」の各用語は、相対的方向の区別のために図面に基づいて便宜的に用いられており、絶対的な方向を示す鉛直方向、及び水平方向、並びに、電子部品の実装状態や使用状態における姿勢を基準とした方向に対応するものではない。
また、第1主面21及び第2主面22は、XY平面に対して平行である必要はなく、その面内に凹凸を含んでもよく、また、Z方向断面(X-Z断面、及びY-Z断面)の断面視において歪みを含んでもよい。
【0014】
また、絶縁性樹脂層4は、第1主面21を備える形状であれば、直方体状に限らず、円柱状や多角形状であってもよい。また、絶縁性樹脂層4は、シリカや硫酸バリウムなど非磁性体の粉末であるフィラーを含有していてもよい。
【0015】
インダクタ回路パターン2は、導電性材料から形成された回路パターンであり、第1主面21の平面視において螺旋状のパターンを含み、図1に示すように、Z方向断面視において、第1主面21に略平行な仮想的な平面30に沿って設けられており、また、螺旋状のパターンの略中心CはZ方向に略平行となっている。なお、図1は、Z方向に平行な当該中心Cを含む断面を示している。
本実施形態のインダクタ回路パターン2は、Z方向断面視において略矩形状を成しており、第1主面21に平行な一対の第1平面部41及び第2平面部42を有し、これら第1平面部41及び第2平面部42のうち、第1主面21に近い側の第1平面部41に、シード層12を介してビア導体6が接続されている。
なお、インダクタ回路パターン2は、第1平面部41及び第2平面部42を有する形状であれば、台形状などの適宜の形状でもよい。また、第1平面部41及び第2平面部42は完全な平面である必要はなく、凹凸や歪みを含んでもよい。同様に、インダクタ回路パターン2のうち、第1平面部41及び第2平面部42以外の側面も、完全な平面である必要はなく、凹凸や歪みを含んでもよい。
【0016】
ビア導体6は、導電性材料から形成された導電性領域であり、螺旋状のインダクタ回路パターン2の内周側及び外周側の端部のそれぞれに設けられている。各ビア導体6は、図1に示すように、Z方向断面視において、インダクタ回路パターン2の第1平面部41から第1主面21に向かって、外部端子8まで延びている。本実施形態のビア導体6は、図2に示すように、中心軸CvがZ方向に略平行であり、かつ、第1主面21よりもインダクタ回路パターン2の側で拡がる円錐台状(切頭円錐体状とも呼ばれる)を成し、Z方向断面視においては略台形状を成している。
以下では、ビア導体6において、インダクタ回路パターン2の側のシード層12に接する面をビア底50と呼ぶ。なお、ビア導体6は、円錐台状に限らず、多角錐台状などの他の錐台状でもよい。
【0017】
外部端子8は、実装基板へはんだ付けされる配線部材の一例であり、導電性材料から形成されている。本実施形態の外部端子8は、図1に示すように、Z方向断面視において、ビア導体6のそれぞれから第1主面21までZ方向に延びており、当該ビア導体6と一体に形成されている。「外部端子8とビア導体6とが一体に形成」とは、ビア導体6と外部端子8とが製造時にZ方向に連続的に形成されることで、両者の間に明瞭な界面が無いことを言う。
【0018】
絶縁性樹脂層4を形成する絶縁性樹脂材には、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂といった樹脂材料を主材とした材料、又は、これらの中の幾つかの樹脂材料の混合材料を主材とする材料を用いることができる。
【0019】
また、インダクタ回路パターン2を形成する導電性材料には、例えば、金(Au)や、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、鉄(Fe)、錫(Sn)、インジウム(In)といった元素を主成分とする材料、又は、これらの中の幾つかの元素の化合物を主成分とする材料を用いることができる。
【0020】
また、ビア導体6、及び外部端子8を形成する導電性材料には、例えば、銅(Cu)や、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)といった元素を主成分とする材料、又は、これらの中の幾つかの元素の化合物を主成分とする材料を用いることができる。ただし、本実施形態において、ビア導体6、及び、外部端子8は同一の導電性材料から形成される。
【0021】
また、シード層10、12を形成する導電性材料には、例えば、金(Au)や、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、鉄(Fe)、錫(Sn)、インジウム(In)といった元素を主成分とする材料、又は、これらの中の幾つかの元素の化合物を主成分とする材料を用いることができる。なお、シード層10とシード層12とは互いに異なる導電性材料から形成されてもよい。
【0022】
ここで、本実施形態のコイル部品1は、図2に示すように、Z方向断面視において、インダクタ回路パターン2の配線における第1平面部41の配線幅Wc、及び、外部端子8におけるビア導体6との接続部の電極幅Wbのそれぞれの範囲に収まる寸法でビア導体6が形成されている。
【0023】
詳細には、ビア導体6は、上述の通り、第1主面21よりもインダクタ回路パターン2の側で拡がる円錐台状であることから、Z方向断面視におけるビア導体6の最大径(中心軸Cvを含む断面の径)はビア底50の径D1となり、この径D1が上記配線幅Wc、及び電極幅Wbよりも小さくなっている。かかる寸法のビア導体6がインダクタ回路パターン2と外部端子8を接続する構造においては、Z方向断面視において、インダクタ回路パターン2の配線幅Wc及び外部端子8の電極幅Wbの範囲内に絶縁性樹脂層4の絶縁性材料が入り込んだ状態となる。
この状態において、リフロー等を用いたコイル部品1の実装の際に外部から絶縁性樹脂層4に熱が加わった場合、インダクタ回路パターン2、及び外部端子8とビア導体6とのそれぞれの接続箇所P1、P2の近傍で、絶縁性樹脂層4の絶縁性材料と、インダクタ回路パターン2、ビア導体6及び外部端子8の導体材料と、の間での、温度に対する膨張率の差異に起因して、それぞれの接続箇所P1、P2に応力が加わる。
本実施形態において、ビア導体6と外部端子8とは、上述の通り、一体に形成されているため、接続箇所P2に応力が加わったとしても、当該接続箇所P2に破断は生じ難くなっている。
【0024】
一方、上述の応力は、Z方向断面において、ビア導体6の細い部分に集中する傾向がある、ということが、発明者の実験等により検証されている。すなわち、ビア導体6とインダクタ回路パターン2の接続箇所P1が例えば最細部であると、当該接続箇所P1に応力が集中することで、接続箇所P1に破断が生じたり、ビア底50がインダクタ回路パターン2の第1平面部41から剥がれたりして接続不良を生じる虞がある。
そこで、本実施形態のビア導体6は、第1主面21よりもインダクタ回路パターン2の側で拡がる円錐台状となることで、ビア底50の径D1が、外部端子8の側の端部の径D2(すなわち、接続箇所P2の径)よりも大きく形成されており、応力が接続箇所P1に比べ、破断が生じ難い接続箇所P2に集中するようになっている。これにより、接続箇所P1の応力が緩和されるため、破断や剥がれが抑制され、ビア導体6とインダクタ回路パターン2との接続信頼性の改善が図られることとなる。
【0025】
発明者はビア導体6の寸法形状を変えて実験を行い、ビア導体6とインダクタ回路パターン2との接続信頼性に関して次のような知見を得た。
すなわち、ビア導体6のZ方向の長さT(すなわち、インダクタ回路パターン2の側の端部と外部端子8の側の端部との間の距離)と、ビア底50の径D1との割合(=T/D1)が0.1以上0.2以下の範囲において、D2/D1が0.9以下である場合に、接続信頼性がより高くなる。また、同じ範囲において、D2/D1が0.7以上である場合、次に説明する製造工程において、ビア導体6に不良が生じ難くなり、歩留まりを向上させることができる。かかる不良には、例えば、ビア開口66へのシード層12の形成の際の当該シード層12の未着や(図3:ステップS7)や、ビア開口66にめっき成長させた際のボイドの発生(図3:ステップS8)などが挙げられる。
【0026】
次に、かかる構造のコイル部品1の製造方法について説明する。
【0027】
図3は、コイル部品1の製造工程を示す図である。
本製造工程では、インダクタ回路パターン2、ビア導体6及び外部端子8がSAP(Semi Additive Process;セミアディティブ工法)を用いて形成される。
【0028】
図3に示すように、コイル部品1の製造に際し、まず、支持層60上に、絶縁性樹脂層4の第2主面22となる樹脂層(以下、「下部絶縁樹脂層61」という)を印刷等によって形成する(ステップS1)。次に、下部絶縁樹脂層61の上に、スパッタ又は無電解めっきを用いてシード層10を形成する(ステップS2)。
【0029】
シード層10の厚みは、電荷の共有が可能であり、インダクタ回路パターン2を形成するための電解めっきのシード層として十分に機能する厚みであれば特に限定されないが、例えば2μm以下が望ましい。後述するステップS7におけるシード層12についても同様である。
また、絶縁性樹脂層4とシード層10の密着向上等のために、下部絶縁樹脂層61とシード層10との間に密着層を形成して多層としてもよい。この場合、密着層の材料は、インダクタ回路パターン2の形成に影響を与えない材料であれば、密着層を形成する目的に応じて選択可能であり、例えばチタン(Ti)が望ましい。
【0030】
次に、シード層10にレジスト62を塗布し、フォトリソグラフィを用いたパターンニングにより、インダクタ回路パターン2を形成するためのトレンチ63を形成した後、トレンチ63に、電解めっきにより導電性材料64をめっき成長させる(ステップS3)。そして、レジスト62を除去し、またシード層10をエッチングによって除去する(ステップS4)。これにより、インダクタ回路パターン2が形成される。
なお、インダクタ回路パターン2は、電解めっきに限らず、無電解めっき工法や、スパッタリング工法、蒸着法、塗布法などを用いて形成されてもよい。
【0031】
次いで、インダクタ回路パターン2を覆うように、感光性の絶縁性樹脂材料から成る樹脂層(以下、「中間部絶縁樹脂層65」という)をラミネートなどにより下部絶縁樹脂層61の上に形成する(ステップS5)。
【0032】
次に、中間部絶縁樹脂層65の上面に、ビア導体6を形成するためのビア開口66を、フォトリソグラフィを用いて形成する(ステップS6)。
このステップS6において、ビア開口66が円錐台状に形成される。
具体的には、中間部絶縁樹脂層65がネガタイプの感光性材料である場合、フォトリソグラフィに用いる投影露光機のフォーカス位置を、中間部絶縁樹脂層65の表面よりも上方向にずらして設定する。これにより、現像後において、中間部絶縁樹脂層65に形成されるビア開口66は、Z方向断面視において、当該中間部絶縁樹脂層65の表面から支持層60に向かって幅が減少する逆テーパ形状(すなわち、台形状)となる。また、中間部絶縁樹脂層65がポジタイプの感光性材料である場合には、投影露光機のフォーカス位置を、中間部絶縁樹脂層65の表面よりも下方向にずらすことで、断面が逆テーパ形状のビア開口66を同様に形成することができる。
【0033】
次いで、ビア開口66が開口した中間部絶縁樹脂層65の上面にシード層12をスパッタ又は無電解めっきを用いて形成し、その後、当該シード層12にレジスト67を塗布し、フォトリソグラフィを用いたパターンニングにより、外部端子8を形成するためのトレンチ68を形成する(ステップS7)。このステップS7において、ビア開口66の内部の側面、及び、ビア開口66から露出したインダクタ回路パターン2(第1平面部41:図2)にもシード層12が形成される。
【0034】
次に、レジスト67のトレンチ68に、電解めっきにより導電性材料69をめっき成長させる(ステップS8)。そして、レジスト67を除去し、シード層12をエッチングで除去し、その後、ソルダーレジスト70を中間部絶縁樹脂層65の表面(外部端子8の箇所を除く)に塗布して、絶縁性樹脂層4の第1主面21となる上部絶縁樹脂層71を形成し、また、外部端子8の露出箇所にめっき72を塗布するめっき処理を施す(ステップS9)。このステップS9において、ビア導体6と外部端子8とが一体形成される。
その後、研削などにより支持層60を剥離した後、個片化し(ステップS10)、これにより、コイル部品1が得られる。
【0035】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0036】
本実施形態のコイル部品1は、インダクタ回路パターン2と、当該インダクタ回路パターン2を被覆する絶縁性樹脂層4と、当該絶縁性樹脂層4の内部に設けられ、上記インダクタ回路パターン2に接続されたビア導体6と、上記絶縁性樹脂層4の内部でビア導体6を介してインダクタ回路パターン2に接続される外部端子8と、を備えている。
そして、ビア導体6と外部端子8とは一体に形成されており、ビア導体6は、インダクタ回路パターン2に近い側の端部の径D1が、外部端子8に近い側の端部の径D2よりも大きくなっている。
【0037】
この構成によれば、実装時などにコイル部品1に加わる熱によって絶縁性樹脂材料が熱膨張収縮することでインダクタ回路パターン2とビア導体6との接続箇所P1に応力が作用したとしても、当該接続箇所P1に作用する応力が緩和される。これにより、接続箇所P1における破断や剥がれが抑制され、ビア導体6とインダクタ回路パターン2との接続信頼性を改善することができる。
【0038】
本実施形態のコイル部品1は、上記ビア導体6の径は、インダクタ回路パターン2に近い側の端部(すなわち、ビア底50)で最も大きくなっている。
この構成によれば、ビア導体6において、ビア底50の径D1が最大径となるため、接続箇所P1への応力の集中を更に緩和できる。
【0039】
[第2実施形態]
図4は、本実施形態に係るコイル部品100の内部構造を模式的に示す断面図である。なお、同図において、第1実施形態で説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態のコイル部品100は、図4に示すように、インダクタ回路パターン2とビア導体6との接続箇所P1の界面(インダクタ回路パターン2の第1平面部41やシード層10,ビア底50)が、Z方向断面視において、第1主面21の側に凸となる曲率を有する形状となっている点で、第1実施形態のコイル部品1と相違する。
【0040】
具体的には、前掲図3におけるステップS3からステップS4の製造工程において、インダクタ回路パターン2の第1平面部41がビア導体6の側に凸となる曲率を有するように形成される。そして、この第1平面部41の上にシード層10やビア導体6が形成されることで、インダクタ回路パターン2とビア導体6との接続箇所P1の界面が第1主面21の側に凸となる曲率を有した形状となる。
【0041】
接続箇所P1の界面が曲率を有した形状となることで、Z方向断面視において、ビア導体6の側面6Sと第1平面部41とが成す角αが、当該第1平面部41が略平坦な場合に比べて大きくなり、当該接続箇所P1に集中する応力が更に緩和され、接続信頼性をより改善することができる。
【0042】
また、第1平面部41の曲率は、半径rの円周の曲率と仮定した場合、1/rの値によって表される。そして発明者は、実験により、当該rの値が6000m以上8000m以下である場合に、接続信頼性がより改善される、との知見を得ている。
【0043】
上述した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0044】
(変形例)
上述した各実施形態において、電子部品の一例としてコイル部品1、100を例示したが、電子部品は、コイル部品1、100に限らない。この場合、インダクタ回路パターン2は、電子部品の機能や用途等に応じた回路パターンが用いられる。
【0045】
(応用例)
本発明は、多層型のコイル部品や、パワーインダクタに適したコイル部品にも応用することができる。
【0046】
図5は、本発明の応用例に係る多層型のコイル部品200の内部構造を模式的に示す断面図である。なお、同図において、各実施形態で説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
コイル部品200は、複数(図示例では2つ)のインダクタ回路パターン2がZ方向に積層形成されており、各層のインダクタ回路パターン2がビア導体6によって接続された構造を有する点で第1実施形態のコイル部品1と相違する。
この構造においても、各層のインダクタ回路パターン2を接続するビア導体6の寸法、及び形状が第1実施形態、又は第2実施形態と同様に構成されることで、ビア導体6とインダクタ回路パターン2との接続信頼性を改善することができる。
【0047】
また、本応用例から明らかなように、ビア導体6の第1主面21の側の端部が接続される部材は、外部端子8の他にも他の層のインダクタ回路パターン2といった適宜の配線部材であってもよい。
【0048】
図6は、本発明の応用例に係るコイル部品300の内部構造を模式的に示す断面図である。なお、同図において、各実施形態で説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
コイル部品300は、インダクタ回路パターン2と、当該インダクタ回路パターン2を被覆する絶縁性樹脂層4と、当該絶縁性樹脂層4の内部に形成されたビア導体6と、当該ビア導体を介して回路パターンに接続される外部端子8と、を備える点で第1実施形態のコイル部品1、及び第2実施形態のコイル部品100と一致している。また、ビア導体6の寸法及び形状についても、第1実施形態又は第2実施形態(図示例は第1実施形態)と一致している。
一方、本応用例のコイル部品300は、絶縁性樹脂層4の第1主面21及び第2主面22のそれぞれに積層形成された磁性層305、306を備え、外部端子8が第1主面21の側の磁性層305から露出する点で第1実施形態及び第2実施形態のコイル部品1、100と相違している。この構成においては、絶縁性樹脂層4と、当該絶縁性樹脂層4を挟む磁性層305,306によって素体が構成されている。
【0049】
磁性層305、306は、金属磁性粉を含む有機材料から形成されている。金属磁性粉には、Fe-Si系の合金又はアモルファスを主成分とし、平均粒子径が5μm以下の粉体が用いられている。なお、金属磁性粉はフェライトでもよい。また、有機材料には、エポキシ樹脂や、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の混合材料、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びその他の材料の混合材料などが用いられる。
【0050】
コイル部品300のインダクタ回路パターン2を内包した絶縁性樹脂層4が磁性層305、306に挟み込まれることで、電源回路等に搭載されるパワーインダクタの用途に適したものとなる。
【0051】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【0052】
[その他の実施形態]
インダクタ回路パターン2の平面形状は、上述した実施形態では、螺旋状(ターン数が2以上の、いわゆるスパイラル状)であるものとしたが、これには限られない。インダクタ回路パターン2の平面形状は、例えば、ヘリカル状(1ターン未満の周回形状)、ミアンダ状(蛇行形状)、又は直線状であってもよい。
【0053】
また、インダクタ回路パターン2のZ方向断面視の形状は、上述した実施形態では、ほぼ直角の角部を有する略矩形状であるものとしたが、これには限られない。インダクタ回路パターン2の断面視形状は、例えば、図2において、角部が曲線状に形成された矩形形状であって、第1平面部41と、隣接する左右の側面部と、の境界が明確でない形状であってもよい。あるいは、インダクタ回路パターン2の断面視形状は、例えば、図4において、曲率を有する第1平面部41が左右の側面部と曲線でつながった、逆U字状の断面を有していてもよい。
【0054】
また、ビア導体6の断面形状は、上述した円錐台や多角錘台などの錘台状には限られない。ビア導体6とインダクタ回路パターン2との間の接続信頼性を向上する観点から、ビア導体6の断面形状は、ビア底50の径がビア導体6の最小径となっていない限り、任意の形状とすることができる。例えば、ビア導体6は、その断面形状において、側面が曲線で構成されてZ方向に幅が変化する形状であってもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、外部端子8は、絶縁性樹脂層4の第1主面21まで露出するように形成されるものとしたが、外部端子の構成は、これには限られない。例えば、外部端子は、図1において第1主面21上の導体として形成され、当該外部端子とビア導体6との間の引き出し配線として図1に示す外部端子8が用いられるものとしてもよい。そのような、第1主面21上の導体として形成される外部端子は、Cu、Ni、Sn、及び又はAuなどの金属を含む導体材料の塗布、印刷、又はめっきで形成され得る。
【0056】
また、図3のステップS2において、下部絶縁樹脂層61の形成方法は、印刷には限られない。下部絶縁樹脂層61は、スピンコート、ドライフィルムレジスト貼付など、樹脂層の形成に用いられ得る任意の手法を用いて形成されるものとすることができる。
【0057】
また、図3において、絶縁性樹脂層4を構成する下部絶縁樹脂層61、中間部絶縁樹脂層65、および上部絶縁樹脂層71は、それらの全部または一部に異なる樹脂材料が用いられてもよいし、全てに同じ樹脂材料が用いられてもよい。例えば、投影露光機によるパターンニングを行う中間部絶縁樹脂層65には感光性樹脂を用い、パターンニングを行わない下部絶縁樹脂層61には、感光性を有さない樹脂を用いることができる。また、上部絶縁樹脂層71には、パターンニングをフォトリソグラフィにより行う場合には感光性樹脂を用いることができ、パターンニングをレーザやブラストなどの物理的な加工手法により行う場合には感光性のない樹脂を用いることができる。
【0058】
[上記実施形態等によりサポートされる構成]
上述した実施形態、変形例、および応用例は、以下の構成をサポートする。
【0059】
(構成1)回路パターンと、前記回路パターンを被覆する絶縁性樹脂層と、前記絶縁性樹脂層の内部に設けられ、前記回路パターンに接続されたビア導体と、前記ビア導体を介して前記回路パターンに接続される配線部材と、を備え、前記ビア導体と前記配線部材とは一体に形成されており、前記ビア導体は、前記回路パターンに近い側の端部の径が、前記配線部材に近い側の端部の径よりも大きいことを特徴とする電子部品。
構成1の電子部品によれば、実装時などに加わる熱に起因して回路パターンとビア導体との接続箇所に作用する応力が緩和される。このため、構成1の電子部品では、上記接続箇所における破断や剥がれが抑制され、ビア導体と回路パターンとの接続信頼性が改善される。
【0060】
(構成2)前記ビア導体の径は、前記回路パターンに近い側の端部で最も大きくなることを特徴とする構成1に記載の電子部品。
構成2の電子部品によれば、ビア導体と回路パターンとの接続箇所への応力の集中を更に緩和することができる。
【0061】
(構成3)前記回路パターンは、前記ビア導体が接続される面が前記ビア導体の側に凸となる曲率を有する、ことを特徴とする構成1または2に記載の電子部品。
構成3の電子部品によれば、ビア導体との接続箇所における回路パターンの面が略平坦である場合に比べて、上記接続箇所に集中する応力を更に緩和して、接続信頼性をより改善することができる。
【0062】
(構成4)前記曲率は、半径rの円周の曲率と仮定した場合、1/rの値によって表され、当該rの値が6000m以上8000m以下であることを特徴とする構成3に記載の電子部品。
構成4の電子部品によれば、回路パターンとビア導体との接続信頼性を更に改善することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、100、200、300 コイル部品(電子部品)
2 インダクタ回路パターン(回路パターン)
4 絶縁性樹脂層
6 ビア導体
8 外部端子(配線部材)
10、12 シード層
41 第1平面部(ビア導体が接続される面を含む部位)
50 ビア底(回路パターンに近い側の端部)
66 ビア開口
305、306 磁性層
D1、D2 径
図1
図2
図3
図4
図5
図6