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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078271
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/213 20210101AFI20240603BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/278 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240603BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240603BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/342 101
H01M50/505
H01M50/284
H01M50/227
H01M50/35 201
H01M50/367
H01M50/503
H01M50/278
H01M50/291
H01M50/548 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190709
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 大輔
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012AA01
5H012BB02
5H012CC03
5H012CC10
5H040AA01
5H040AA03
5H040AA37
5H040AT01
5H040AY08
5H040CC05
5H040DD03
5H040DD08
5H040LL06
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA05
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA21
5H043DA08
5H043FA04
5H043JA01F
5H043JA09F
5H043JA13F
5H043KA06F
5H043KA07F
5H043KA09F
5H043LA21F
5H043LA23F
(57)【要約】
【課題】電池セルの排出弁から排出される高温の噴出物から外装ケースを保護する。
【解決手段】電池パックは、電池ブロック10と、リード板3と、回路基板6と、外装ケース2とを備え、電池ブロック10は、各々の電池セル1の第1端面15を排出端面に配置してなり、外装ケース2は、第1のケースプレート21と、電池ブロック10との間に排出ダクト42を設けてなる第2のケースプレート22とを有し、回路基板6は排出端面との間に分離隙間4を設けてなり、リード板3は、第1の電極リード板30を備え、第1の電極リード板30は、電極固定部31と、基板固定部32と、連結部33とを備え、連結部33は分離隙間4を中央スペース40と反転ダクト41を区画してなり、反転ダクト41は排出ダクト42に連通されて、排出弁12の開口部12aから流入される噴出物を方向転換して排出ダクト42に案内して外装ケース2から排出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出弁の開口部と電極を第1端面に配置してなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの前記電池セルを接続しているリード板と、
前記電池ブロックに接続してなる回路基板と、
前記電池ブロックと前記回路基板を内蔵してなるプラスチック製の外装ケースとを備え、
前記電池ブロックは、
各々の前記電池セルの前記第1端面を噴出物の排出端面に配置してなり、
前記外装ケースは、
前記電池ブロックの前記排出端面を内側に配置してなる第1のケースプレートと、
前記電池ブロックとの間に排出ダクトを設けてなる第2のケースプレートとを有し、
前記回路基板は前記第1のケースプレートの内側に配設されて、
前記電池ブロックの前記排出端面から分離して配置されて、
前記排出端面との間に分離隙間を設けてなり、
前記リード板は、
前記電池セルの前記第1端面の前記電極に接続している第1の電極リード板を備え、
前記第1の電極リード板は、
前記電池セルの前記第1端面の前記電極に向かって突出して前記電極に固定されてなる電極固定部と、
前記回路基板の内面に固定されてなる基板固定部と、
前記電極固定部と前記基板固定部とを連結してなる連結部とを備え、
前記電極固定部は前記回路基板との間に中央スペースを設けており、
前記基板固定部は前記電池セルの前記第1端面との間に反転ダクトを設けてなり、
前記連結部は前記分離隙間を前記中央スペースと前記反転ダクトを区画してなり、
前記反転ダクトは前記排出ダクトに連通されて、
前記排出弁の前記開口部から流入される噴出物を方向転換して前記排出ダクトに案内して前記外装ケースから排出する電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記第1の電極リード板が、
前記排出ダクトと前記外装ケースの内面との間に配置される側壁プレート部を備える電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載する電池パックであって、
さらに、前記回路基板に固定されて、
前記第1の電極リード板の前記側壁プレート部に接続されてなる基板固定リード板を備え、
前記基板固定リード板が、
前記第1の電極リード板の前記側壁プレート部に接続してなる垂直プレートを備える電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載する電池パックであって、
前記基板固定リード板の前記垂直プレートが、
前記第1の電極リード板の前記側壁プレート部に積層状態で固定されて、
前記外装ケースの内面に配置されてなる電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載する電池パックであって、
前記基板固定リード板が、
前記回路基板に固定されてなる固定プレートを備え、
前記固定プレートと前記第1の電極リード板の前記基板固定部が積層構造に固定されて、
前記回路基板の内面の前記反転ダクトを形成してなる領域において、
積層構造の前記固定プレートと前記基板固定部が配置されてなる電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載する電池パックであって、
前記基板固定リード板の内側に前記第1の電極リード板が積層構造に固定されてなる電池パック。
【請求項7】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記第1の電極リード板の前記連結部が前記電池セルの前記第1端面に対して傾斜姿勢に配置されてなり、
前記第1の電極リード板の前記連結部の傾斜角(α)が30度よりも大きく80度よりも小さい電池パック。
【請求項8】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記外装ケースは、前記排出ダクトに連通し、前記排出ダクトに流入される噴出物を前記外装ケースの外部に排出する排出開口を備え、
前記排出開口が、噴出物の前記排出端面よりも反対側の端面に近い位置に配設されてなる電池パック。
【請求項9】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記電池セルが円筒型電池である電池パック。
【請求項10】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記回路基板が無機繊維で補強された熱硬化性樹脂である電池パック。
【請求項11】
請求項1に記載する電池パックであって、
前記電池ブロックが、
複数の前記電池セルを平行姿勢であって前記第1端面を同一平面に配置してなり、
前記外装ケースが、
底プレートで一方を閉塞して他方を開口してなる筒状の本体ケースと、
前記本体ケースの開口部を閉塞してなる蓋ケースとからなり、
前記電池ブロックが、
各々の前記電池セルの前記第1端面を前記底プレートの内面に対向する姿勢で、
前記底プレートとの間に前記回路基板を配置して前記本体ケースに挿入されてなる電池パック。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載する電池パックであって、
前記電池ブロックが、
複数の前記電池セルを定位置に配置してなる電池ホルダを備え、
前記電池ホルダが、
前記電池セルの前記第1端面を同一平面として隣接する前記電池セルを平行姿勢に配置してなり、
前記第1の電極リード板が、
隣接して配置されてなる前記電池セルの境界領域に分離窓を有し、
前記電池ホルダが前記分離窓に案内されてなる嵌合突出部を有する電池パック。
【請求項13】
請求項12に記載する電池パックであって、
前記電池ブロックが、
前記第1の電極リード板で並列接続されてなる複数の並列ユニットを備える電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出弁を備える電池セルを外装ケースに収納している電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
排出弁を設けている電池セルは、異常時に排出弁が開弁して電池ケースの破裂を防止できる。排出弁は、電池の異常な使用状態で開弁するので、排出される噴出物は高温・高圧となり、種々の熱障害の要因となる。とくに、外装ケースをプラスチック製とする電池パックは、排出弁から噴出される高温・高圧の噴出物が外装ケースの一部を破損して、ケース外に噴出されるおそれがある。外装ケースから外部に噴出される噴出物は、外気に触れて発火すると安全性を阻害する原因となる。この欠点を解消するために、ケースの内面に金属板を配置している電池パックが開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-150082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池パック900は、図9の断面図に示すように、外装ケース902の内側であって、排出弁の開口部のある電池セル901の電極端面との対向位置には板状の耐熱プレート931を配置して、外装ケース902の隅部にはL字状の耐熱プレート932を配置している。この構造の電池パック900は、高温の噴出物による外装ケース902の熱損傷を防止するために、2枚の耐熱プレート931、932を設けるので部品コストが高くなり、さらに、各々の耐熱プレート931、932を外装ケース902内部の定位置に配置するために、構造や組み立てが複雑になって製造コストが高くなり、さらに2枚の耐熱プレート931、932を内蔵するスペースが外装ケース902の外形を大きくする欠点があった。
【0005】
本発明は、以上の電池パックの欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、高温の噴出物による外装ケースの熱損傷を防止して安全性を確保しながら、部品コストを低減できる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る電池パックは、排出弁の開口部と電極を第1端面に配置してなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、電池ブロックの電池セルを接続しているリード板と、電池ブロックに接続してなる回路基板と、電池ブロックと回路基板を内蔵してなるプラスチック製の外装ケースとを備え、電池ブロックは、各々の電池セルの第1端面を噴出物の排出端面に配置してなり、外装ケースは、電池ブロックの排出端面を内側に配置してなる第1のケースプレートと、電池ブロックとの間に排出ダクトを設けてなる第2のケースプレートとを有し、回路基板は第1のケースプレートの内側に配設されて、電池ブロックの前記排出端面から分離して配置されて、排出端面との間に分離隙間を設けてなり、リード板は、電池セルの第1端面の電極に接続している第1の電極リード板を備え、第1の電極リード板は、電池セルの第1端面の電極に向かって突出して電極に固定されてなる電極固定部と、回路基板の内面に固定されてなる基板固定部と、電極固定部と基板固定部とを連結してなる連結部とを備え、電極固定部は回路基板との間に中央スペースを設けており、基板固定部は電池セルの第1端面との間に反転ダクトを設けてなり、連結部は分離隙間を中央スペースと反転ダクトを区画してなり、反転ダクトは排出ダクトに連通されて、排出弁の開口部から流入される噴出物を方向転換して排出ダクトに案内して外装ケースから排出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池パックは、回路基板とリード板を外装ケースの熱障害を防止する部材に併用するので、外装ケースの熱障害を防止するためのコストを低減しながら、電池セルから排出される高温の噴出物による外装ケースの熱損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る電池パックを示す斜視図である。
図2図1の電池パックの分解斜視図である。
図3図1の電池パックのIII-III線断面斜視図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5図1の電池パックのV-V線断面斜視図である。
図6図1の電池パックのVI-VI線断面斜視図である。
図7】他の実施例を示す電池パックの分解斜視図である。
図8】他の実施例を示す電池パックの分解斜視図である。
図9】従来例を示す電池パックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施態様に係る電池パックは、排出弁の開口部と電極を第1端面に配置してなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、電池ブロックの電池セルを接続しているリード板と、電池ブロックに接続してなる回路基板と、電池ブロックと回路基板を内蔵してなるプラスチック製の外装ケースとを備え、電池ブロックは、各々の電池セルの第1端面を噴出物の排出端面に配置してなり、外装ケースは、電池ブロックの排出端面を内側に配置してなる第1のケースプレートと、電池ブロックとの間に排出ダクトを設けてなる第2のケースプレートとを有し、回路基板は第1のケースプレートの内側に配設されて、電池ブロックの前記排出端面から分離して配置されて、排出端面との間に分離隙間を設けてなり、リード板は、電池セルの第1端面の電極に接続している第1の電極リード板を備え、第1の電極リード板は、電池セルの第1端面の電極に向かって突出して電極に固定されてなる電極固定部と、回路基板の内面に固定されてなる基板固定部と、電極固定部と基板固定部とを連結してなる連結部とを備え、電極固定部は回路基板との間に中央スペースを設けており、基板固定部は電池セルの第1端面との間に反転ダクトを設けてなり、連結部は分離隙間を中央スペースと反転ダクトを区画してなり、反転ダクトは排出ダクトに連通されて、排出弁の開口部から流入される噴出物を方向転換して排出ダクトに案内して外装ケースから排出する。
【0010】
以上の電池パックは、外装ケースと電池ブロックとの間に、回路基板と第1のリード板を積層構造で配置して、積層構造の回路基板とリード板を外装ケースの熱障害を防止する耐熱材に併用している。とくに、以上の電池パックは、外装ケースの内面に回路基板を配置し、さらに電池セルが噴出物を排出する第1端面を回路基板から離して、第1端面と回路基板との間に分離隙間を設けており、この分離隙間を、電池セルに接続しているリード板でもって、噴出物を反転して排出ダクトに案内する反転ダクトを区画して、電池セルの噴出物を反転ダクトに案内してエネルギーを減衰させた後、排出ダクトに案内している。以上の構造の電池パックは、回路基板とリード板の二層構造で外装ケースの熱障害を防止し、さらに回路基板と第1端面との間に分離隙間を設けて外装ケースの熱障害を防止し、さらにまた、この分離隙間をリード板でもって噴出物の流動方向を反転して排出ダクトに案内する反転ダクトを設けて、反転ダクトで噴出物のエネルギーを減衰させて排出ダクトに案内して外装ケースの熱障害を防止する。とくにリード板で回路基板の内側に設けている反転ダクトは、電池セルからの噴出物を、リード板の内面に沿って流動させて熱エネルギーを放熱し、さらに回路基板に固定しているリード板の基板固定部の内面に衝突させて流動方向を反転することで運動のエネルギーも減衰して、反転ダクトに案内する。熱エネルギーと運動のエネルギーが減衰された噴出物は、反転ダクトから排出ダクトに案内されて、外装ケースの熱障害を防止してケース外に排出される。以上の電池パックは、外装ケースに必須部品として内蔵される回路基板とリード板を外装ケースの熱障害を防止する部材に併用するので、外装ケースの熱障害を防止するための価格上昇を抑制しながらに外装ケースの熱障害を有効に防止して安全に使用できる特長を実現する。また、必須部品の回路基板とリード板を外装ケースの熱障害を防止する部材に併用するため、別途に耐熱プレートを介在させる場合のように外装ケースの外形を大きくすることを回避できる。
【0011】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、第1の電極リード板が、排出ダクトと外装ケースの内面との間に配置される側壁プレート部を備えることができる。以上の電池パックは、第1の電極リード板に設けている側壁プレート部でもって、反転ダクトから排出ダクトに案内する噴出物による電池セルの熱障害を防止できる。とくに、以上の電池パックは、第1の電極リード板に側壁プレート部を設けて、電池セルを噴出物による熱障害を防止するので、第1の接続リードを電池セルの電極に固定して、側壁プレート部を最適位置に配置して、噴出物による電池セルの熱障害、とくに電池セル側面の熱障害を効果的に防止できる特長がある。
【0012】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、回路基板に固定されて、第1の電極リード板の側壁プレート部に接続されてなる基板固定リード板を備え、基板固定リード板が、第1の電極リード板の側壁プレート部に接続してなる垂直プレートを備えることができる。以上の電池パックは、第1の電極リード板を基板固定リード板に接続して、回路基板を電池ブロックの定位置に連結しながら、第1の電極リード板の側壁プレート部と、基板固定リード板の垂直プレートの両方で外装ケースの熱障害を防止できる特長がある。
【0013】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、基板固定リード板の垂直プレートが、第1の電極リード板の側壁プレート部に積層状態で固定されて、外装ケースの内面に配置できる。以上の電池パックは、積層構造の側壁プレート部と基板固定リード板とで外装ケースの内面、とくに排出ダクトを構成する外装ケースの熱障害を防止できる特長がある。
【0014】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、基板固定リード板が、回路基板に固定されてなる固定プレートを備え、固定プレートと第1の電極リード板の基板固定部が積層構造に固定されて、回路基板内面の反転ダクトを形成してなる領域において、積層構造の固定プレートと基板固定部が配置されてなる。以上の電池パックは、電池セルの排出弁の開口部から排出される高温、高圧の噴出物による回路基板の熱障害を効果的に防止できる特長がある。それは、電池セルから噴出される噴出物が衝突して反転する領域を、金属板からなる積層構造のリード板で保護できるからである。
【0015】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、基板固定リード板の内側に第1の電極リード板を積層構造に固定できる。以上の電池パックは、基板固定リード板を固定している回路基板に、電池セルに固定している第1の電極リード板を簡単かつ容易に、能率よく接続できる特長がある。
【0016】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、第1の電極リード板の連結部が電池セルの第1端面に対して傾斜姿勢に配置されてなり、第1の電極リード板の連結部の傾斜角(α)が30度よりも大きく80度よりも小さくできる。以上の電池パックは、電池セルから反転ダクト内に排出される噴出物が傾斜する連結部の内面に沿って流動して、回路基板の内面でスムーズに噴出物を反転させて排出ダクトに案内できる。反転ダクトの内面に沿ってスムーズに高速流動する噴出物は、熱エネルギーを効率よく第1の電極リード板に放熱して排出ダクトに案内されて、外装ケースの熱障害を効果的に防止できる。
【0017】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、外装ケースは、排出ダクトに連通し、排出ダクトに流入される噴出物を外装ケースの外部に排出する排出開口を備え、排出開口を、噴出物の排出端面よりも反対側の端面に近い位置に配設できる。以上の電池パックは、排出開口を、噴出物の排出端面よりも排出端面の反対側の端面(非排出端面)に近い位置の外装ケースの第2のケースプレートまたは蓋ケースに配設することで、排出端面から排出開口までの排出ダクトの距離を長く確保できる。この排出ダクトが通過する噴出物の熱エネルギーと運動のエネルギーを減衰してケースの外に排出でき、外装ケースの熱障害、発火を効果的に防止できる。また、排出端面付近に噴出物の熱が集中することを緩和し、排出弁の開口部から排出開口に至るまでの急激な温度上昇を抑制、減少することもできる。
【0018】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、電池セルを円筒型電池にできる。
【0019】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、回路基板を無機繊維で補強された熱硬化性樹脂にできる。以上の電池パックは、回路基板の耐熱特性を高くして、外装ケースの熱障害を安定して抑制できる特長がある。
【0020】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、電池ブロックが、複数の電池セルを平行姿勢であって第1端面を同一平面に配置してなり、外装ケースが、底プレートで一方を閉塞して他方を開口してなる筒状の本体ケースと、本体ケースの開口部を閉塞してなる蓋ケースとからなり、電池ブロックが、各々の電池セルの第1端面を底プレートの内面に対向する姿勢で、底プレートとの間に回路基板を配置して本体ケースに挿入されてなる。
【0021】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、電池ブロックが、複数の電池セルを定位置に配置してなる電池ホルダを備え、電池ホルダが、電池セルの第1端面を同一平面として隣接する電池セルを平行姿勢に配置してなり、第1の電極リード板が、隣接して配置されてなる電池セルの境界領域に分離窓を有し、電池ホルダが分離窓に案内されてなる嵌合突出部を有する。以上の電池パックは、第1の電極リードの分離窓に電池ホルダの嵌合突出部を案内する構造は、第1のリード板と嵌合突出部とで噴出物が隣の電池セルの第1端面に流入するのを阻止できるので、隣接する電池セルの熱暴走の誘発を防止できる特長がある。
【0022】
本発明の他の実施態様に係る電池パックは、電池ブロックが、第1の電極リード板で並列接続されてなる複数の並列ユニットを備えることができる。
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0024】
電池パックは、リチウムイオン電池セル等の非水系二次電池セルを使用して軽量化しながら高容量化できるが、この種の電池パックは、異常な状態で使用されると内圧が上昇して破裂するので、この弊害を防止するために排出弁を設けている。排出弁は開弁し開口部から外装ケース内に噴出物を排出して破裂を防止する。噴出物は極めて温度が高く、プラスチック製の外装ケースを損傷する問題がある。外装ケースが噴出物で破損されると、噴出物がケース外に噴射されて発火することがある。外装ケースを金属製として噴出物の破損防止できるが、金属製の外装ケースは相当に重く、軽量化しながら高容量化は難しい。外装ケースをプラスチック製とする電池パックは、軽量化して安価に多量生産できるが、噴出物による安全性の確保が難しい問題がある。
[実施形態1]
【0025】
本発明の実施形態に係る電池パック100を図1図6に示す。図1は電池パック100の斜視図を、図2図1の電池パック100の分解斜視図を、図3図1の電池パックのIII-III線断面斜視図、図4図3の要部拡大断面斜視図、図5図1のV-V線断面斜視図、図6図1のVI-VI線断面斜視図、をそれぞれ示している。これ等の図に示す電池パック100は、複数の電池セル1からなる電池ブロック10と、電池ブロック10の電池セル1を接続しているリード板3と、電池ブロック10に接続してなる回路基板6と、電池ブロック10と回路基板6を内蔵してなるプラスチック製の外装ケース2とを備えている。
【0026】
電池パック10は、複数の電池セル1からなる電池ブロック10と、この電池ブロック10に接続している回路基板6とを外装ケース2に内蔵している。電池ブロック10は、リード板3で電池セル1を連結している。電池パック100は、回路基板6とリード板3を独特の形状とし、特定の位置に配置して、外装ケース2の熱障害を防止する部材に併用している。回路基板6は、電池ブロック10を構成する電池セル1の過充電や過放電を防止するための保護回路などを実装する基板であって、電池パック10には必須の部品である。リード板3は各々の電池セル1を電気接続するために必須の部品である。
(電池ブロック10)
【0027】
電池ブロック10は、複数の電池セル1を電池ホルダ50で定位置に配置して、リード板3で連結している。電池セル1は、リチウムイオン電池が適している。リチウムイオン電池は、容量と重量に対する充放電容量が大きく、電池パック100の外形を小型化、また軽量化して充放電容量を大きくできる。ただし、本発明の電池パック100は、電池セル1をリチウムイオン電池に特定するものでもなく、他の2次電池、例えば他の非水電解液二次電池等の充電できる全ての電池を使用できる。
【0028】
電池セル1は、両端に正負の電極13を設けている。図2の電池セル1は、第1端面15に排出弁12の開口部12aを設けている円筒型電池1Aである。電池セル1は、第1端面15を排出端面とし、第1端面15の反対側の端面の第2端面16を非排出端面とする。図の電池ブロック10は、電池セル1を円筒型電池1Aとする。ただし、電池セルは、必ずしも円筒型電池1Aに特定するものでなく、第1端面に排出弁の開口部と電極を設けている電池、たとえば角形電池も使用できる。電池ブロック10は、複数の電池セル1の排出弁12の開口部12aと電極13を第1端面15に配置する。円筒型電池1Aは、金属板をプレス加工して制作している外装缶の開口部を、封口板で気密に密閉している。封口板は、排出弁12の開口部12aを設けて、電池セル1の第1端面15としている。円筒型電池や角形電池は、外装缶の底板に排出弁の開口部を設けてこの面を電極とすることもできるので、電池セルは、排出弁の開口部を設けている外装缶の底面を排出弁12の開口部12aと電極13を設けた第1端面15とすることもできる。
【0029】
電池ブロック10は、図2に示すように、複数の電池セル1を電池ホルダ50で定位置に配置して、各々の電池セル1を位置ずれなく定位置に配置している。電池ホルダ50は熱可塑性のプラスチック製で、各々の電池セル1を平行姿勢として、第1端面15を同一平面に配置している。図2の電池ブロック10は、電池セル1の第1端面15を同一平面に配置して平行姿勢に配置している。さらに、電池ブロック10は、複数の電池セル1は横並びで同一平面に配置している。電池ブロック10は、各々の電池セル1の第1端面15を同一平面に配置して、電池セル1が噴出物を排出する噴出物の排出端面としている。電池ブロック10は、排出端面の反対側の端面には排出弁12の開口部12aが配置されず、噴出物を排出しない非排出端面としている。図2の分解斜視図に示す電池ブロック10は、左側(左下側)の第1端面15を排出端面として、右側(右上側)の第2端面16を非排出端面としている。
【0030】
電池ホルダ50の熱可塑性プラスチックは、強度と耐熱特性に優れポリカーボネートが適している。ただ、電池ホルダ50は、強度と耐熱特性に優れた他の熱可塑性プラスチックも使用できる。電池ホルダ50は、各々の電池セル1を定位置に配置する位置決穴51を設けている。電池ホルダ50は、電池セル1の両端に設けている電極13を露出させる電極開口52を設けている。電極開口52に露出する電極13に第1の電極リード板30を溶着して、隣接する電池セル1を電気接続して電池ブロック10としている。
【0031】
図2の電池ホルダ50は、第1の電極リード30の分離窓38に案内される嵌合突出部を有する。第1の電極リード30の分離窓38に電池ホルダ50の嵌合突出部55を案内する構造は、第1のリード板30と嵌合突出部55とで噴出物が隣の電池セル1の第1端面15に流入するのを阻止できるので、隣接する電池セル1の熱暴走の誘発を防止できる。また、この構造は、第1の電極リード30の位置決めを容易にできる。
【0032】
電池パック100は、電池ブロック10と外装ケース2の内面との間に排出ダクト42を設ける。図2の分解斜視図に示す電池ブロック10は、外装ケース2の第2のケースプレート22の内面に対向して配置される面に噴出物の排出ダクト42を設けている。図2及び図5図6の電池ブロック10は、電池ホルダ50の上下両面にダクト溝53を設けて、ダクト溝53の間には凸条54を設けている。電池ブロック10は、複数列に設けている各々のダクト溝53を、各々の電池セル1の上下両側に配置している。凸条54は隣接する電池セル1の間に配置される。この電池ブロック10が外装ケース2に挿入されて、本体ケース2Aの第2のケースプレート22の内側に排出ダクト42を形成する。この構造の電池ホルダ50は、各々の電池セル1の上下両側に、凸条54で区画された排出ダクト42を配置するので、特定に電池セル1から排出される噴出物の熱エネルギーが隣の電池セル1を加熱する弊害を防止できる。それは、特定の電池セル1が熱暴走して排出する噴出物を、熱暴走した電池セル1側面のダクト溝53に案内して、凸条54で区画された隣のダクト溝53には流動させないからである。このことは、熱暴走した電池セル1の熱エネルギーで、隣の電池セル1も熱暴走させる熱暴走の誘発をより効果的に防止できる特長がある。
【0033】
図2ないし図6は排出ダクト42、ダクト溝53、凸条54の一例を示す。図のダクト溝53は、電池ホルダ50の上下両面に電池セル1に平行に設けられる。この電池ホルダ50は、ダクト溝53の間に凸条54を配置して隣接する電池セル1への噴出物への流動を防止できる。また、電池セル1の軸芯と平行方向にダクト溝53を設けることで、排出ダクト42の長さを確保できる。図のダクト溝53は、排出端面側の側面付近が最も深く、スロープを経て浅くなる形状とする。図3及び図4に示すように、排出端面から排出された噴出物は、反転ダクト41で方向転換されて排出ダクト42に案内される。噴出物は、まず排出ダクト42の入口付近(排出端面側の側面付近)の電池セル1の側面が露出する断面開口が最も広い領域(図6)を通過し、スロープで溝が徐々に浅く断面開口が小さくなる領域を経て、溝の深さが一定の領域(図5)に入り、排出開口23から外装ケース2の外に排出される。排出ダクト42の入口側の断面開口を広くすることで、噴出反転直後の勢いのある高温高圧の噴出物をよりスムーズに排出ダクト42に導くことができる。排出ダクト42は、その断面形状、サイズ、長さ、周りを覆う素材などで通過する噴出物の熱エネルギーまたは運動エネルギーを低減できる。ただし、排出ダクト42、ダクト溝53は、図で示す形状に特定されるものではなく、排出ダクト、ダクト溝を通過する噴出物の熱エネルギーまたは運動エネルギーの少なくとも一方を減少させる形状であれば足りる。例えば、排出ダクト、ダクト溝を同じまたは異なる深さまたは幅にでき、深さまたは幅が逓増または逓減す形状にできる。ダクト溝などの深さを変更する部分はスロープの角度を変更する他に、スロープ以外の形状、例えば、段差や凹凸などを設けることもできる。電池セルの側面が露出する部分の長さを変更でき、また、かかる部分を設けないこともできる。さらに、噴出物の直進性を妨げる形状にでき、噴出物の進行方向を案内するガイド壁などを設けることもできる。また、高温の噴出物で一定範囲が溶融して熱エネルギー、運動エネルギーを吸収、減少する形状にすることもできる。同様に、凸条54も図示する形状に特定されない。凸条54は、ダクト溝の間に配置されて隣接する電池セルへの噴出物への流動を防止できる形状であれば足りる。
【0034】
ダクト溝53は排出側を外装ケース2の排出開口23を連通して、噴出物を外装ケース2の外部に排出する。表面にダクト溝53を設けている電池ホルダ50は、外形を外装ケース2の内形にほぼ等しく、正確には外装ケース2にスムーズに挿入でき、かつ凸条54を外装ケース2内面に実質的に隙間のない状態で接触させながら摺動して挿入できる形状として、外装ケース2内面との間に排出ダクト42を設けることができる。
(外装ケース2)
【0035】
外装ケース2は、プラスチックを成形して制作される。外装ケース2のプラスチックは、耐熱温度が高くて強度のある熱可塑性プラスチック、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート等が使用できる。外装ケース2は、本体ケース2Aの開口部25を蓋ケース2Bで閉塞している。本体ケース2Aは、底プレート27で一端を閉塞して、他方を開口している筒状にプラスチックを成形している。蓋ケース2Bは、本体ケース2Aの開口部25に固定されて開口部25を閉塞している。
【0036】
本体ケース2Aは、電池ブロック10をスムーズに挿入して定位置に配置できる内形の筒状に成形している。本体ケース2Aは、互いに対向位置に配置している平面状の第2のケースプレート22の両側を湾曲形状の側面プレート26で連結して筒状としている。本体ケース2Aは、一対の第2のケースプレート22とその両側に設けている一対の側面プレート26と底プレート27をプラスチックで一体的に成形して、一端を底プレート27で閉塞している筒状に成形している。第2のケースプレート22の両側に位置する側面プレート26は、円筒型電池1Aの電池セル1の外周面に沿う湾曲形状としている。図2の本体ケース2Aは、底プレート27に出力端子を露出する端子窓28を開口している。出力端子は回路基板6に固定されて、端子窓28を介して表面に露出する位置に配置される。図2の電池パック100は、電池セル1の排出端面を、蓋ケース2Bの内側ではなく、本体ケース2Aの底プレート27の内側に配置し、さらに、第1の電極リード板30及び基板固定リード板35、回路基板6で外装ケース2を強固に保護する。
【0037】
以上の本体ケース2Aは、底プレート27を第1のケースプレート21として、その内側に回路基板6を配置している。回路基板6は第1のケースプレート21である底プレート27の内面に接触して、あるいは接近して配置されて、電池ブロック10からは離して配置されて、電池ブロック10との間に分離隙間4を設けている。分離隙間4は、後述する第1の電極リード板30が配置されて、中央スペース40と反転ダクト41に区画される。分離隙間4に設けている反転ダクト41は、排出ダクト42に連通されて、反転ダクト41から噴出物を排出ダクト42に流入する。
【0038】
外装ケース2は、電池セル1の噴出物を外部に排出する排出開口23を排出ダクト42に連通して設けている。図3の外装ケース2は、排出開口23を本体ケース2Aの第2のケースプレート22に設けている。本体ケース2Aは、上下両面の第2のケースプレート22に各々排出開口23を設けている。排出開口23は、第2のケースプレート22に設けている複数の小孔23aとしている。この排出開口23は、噴出物を無数の小孔23aに分散して外部に排気するので、噴出物を分散して外部に排気できる。外装ケース2は、第2のケースプレート22の表面に、排出開口23を閉塞する位置にラベルを付着している。ラベルは噴出物の熱エネルギーで剥離されて、噴出物を外装ケース2の外部に排出する。本体ケース2Aの第2のケースプレート22に排出開口23を設ける外装ケース2は、広い面積に分散して複数の排出開口23を設けることができるので、噴出物を分散して排出できる。ただ、外装ケース2は、排出開口23を必ずしも本体ケース2Aに設けることなく、図示しないが、電池ブロックの非排出端面と対向する第1のケースプレートである蓋ケースに排出開口を設けることもできる。図2図3の外装ケース2は、排出開口23を排出端面から離れた位置の第2のケースプレート22または蓋ケース2Bに設けることで、排出ダクト42の距離を長くして、通過する噴出物の熱エネルギーと運動のエネルギーを減衰させて外装ケース2の外に排出できる。
【0039】
以上の外装ケース2は、本体ケース2Aに蓋ケース2Bを連結している。本体ケース2Aと蓋ケース2Bは、熱可塑性プラスチックの外装ケース2を溶着して連結できる。溶着による連結は、ホットワイヤで接合部を加熱して溶融し、あるいは超音波振動で接合部を溶融して連結する超音波溶着などの方法で連結できる。さらに、本体ケース2Aと蓋ケース2Bは、接着材を介して連結でき、また、図示しないが、ネジ止めして連結することもできる。さらに、本体ケース2Aおよび蓋ケース2Bは、それぞれ爪および当該爪が嵌合される被嵌合部、あるいは被嵌合部および爪を設けることにより爪嵌合により連結できる。
(回路基板6)
【0040】
本発明は回路基板6に実装する回路を特定するものでないが、例えば、好ましくは電池セル1の充放電を制御する回路を実装している。この電池パック100は、充放電を制御する回路で電池セル1の過放電や過充電を防止して電池の劣化を抑制でき、また電池の熱暴走も防止できる。したがって、回路基板6に電池セル1の過充電や過放電を防止する保護回路を実装して、電池パックの寿命を長くして、かつ安全性を向上できる。図示しないが、保護回路は、電池セルの電圧や電流を検出する回路と、検出する電圧と電流を演算して充放電電流を制御する制御回路とを備えている。制御回路は、充電している電池セルの電圧が予め設定している閾値を超えると充電電流を遮断して過充電を防止し、放電している電池セルの電圧が閾値よりも低くなると放電電流を遮断して過放電を防止できる。さらに、電池セルの温度が閾値よりも高くあるいは低い状態で、充放電の電流を制限し、あるいは遮断して電池セルを保護できる。さらに、制御回路は、各々の電池セルの電圧差を検出して、高電圧の電池セルを放電し、低電圧の電池セルを充電して、電圧のアンバランスを解消して、特定の電池セルの劣化を抑制すこともできる。
【0041】
回路基板6は、基板の表面に保護回路などを実現する電子回路を実装している。この回路基板6は、無機繊維を埋設して補強している熱硬化性樹脂からなる基板が適している。この基板は、好ましくは無機繊維にガラス繊維を使用して、熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂を使用する。回路基板6は第1のケースプレート21の内側に配設される。図4の断面斜視図に示す回路基板6は、電池ブロック10の排出端面との対向面である内側面に、保護回路などを実現する電子回路を表面実装している。回路基板6の内面には、電池セル1の第1端面15に接続している第1の電極リード板30を配置しているが、この第1の電極リード板30は、中央部において、回路基板6との間に分離隙間4を設けることができ、配線隙間として利用できる。回路基板6は、表面実装する電子部品を配線隙間に配置して、スペースを効率よく利用して電子部品を表面実装できる。回路基板6に表面実装される電子部品は、第1の電極リード板30を介して高温の噴出物に加熱されるが、いずれかの電池セル1が噴出物を排出した電池パック10は、その後使用できないので、噴出物の排出後において電子部品を動作状態に保持する必要はない。内側表面に電子部品を表面実装する回路基板6は、外側表面を外装ケース2の底プレート27の内面に密着して配置できる。この構造は、回路基板6の表面に固定している出力端子を底プレート27の内面に密着して配置できる。ただ図示しないが、回路基板の外側面に電子回路を表面実装することもできる。
【0042】
回路基板6は、例えば電池セル1の充放電を制御して電池セル1を保護して、安全性を向上させる目的で使用されるが、本発明の電池パック100は、この回路基板6を外装ケース2の噴出物による熱障害を防止するための基板にも併用する。回路基板6は、電池セル1が噴射する高温の噴出物から外装ケース2を保護するために、外装ケース2の底プレート27の内側であって、電池セル1の第1端面15、すなわち電池ブロック10の排出端面との間に配置される。図4の回路基板6は、外装ケース2の底プレート27の内面に配置されて、電池ブロック10から噴射される噴出物が外装ケース2の底プレート27が熱破損するのを防止する。さらに、回路基板6は、底プレート27との対向面となる外側面に複数の出力端子を固定して、各々の出力端子を底プレート27に開口している端子窓28から外装ケース2の表面に露出させることができる。図の回路基板6は、底プレート27の内面全体をカバーする外形で、電池ブロック10の排出端面の外形よりも大きく、底プレート27内面の全体を噴出物の熱障害から保護している。
(リード板3)
【0043】
リード板3は、複数の電池セル1を並列及び/または直列に接続している。リード板3は、外装ケース2よりもよりも高い耐熱特性のある金属製の板材とし、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金などを使用できる。さらに、リード板3は回路基板6を電池ブロック10の電池セル1に接続することもできる。リード板3は、電池セル1の第1端面15の電極13に接続している第1の電極リード板30を備える。第1の電極リード板30は、電池セル1の第1端面15の電極13に向かって突出して電極13に接続固定されてなる電極固定部31と、回路基板6の内面に固定されて回路基板6を電極固定部31に接続していると共に、電極固定部31より電池セル1の電極13より離間する方向に突出している基板固定部32と、電極固定部31と基板固定部32とを連結してなる連結部33とを備える。なお、図面は説明を明確にするための概略図、模式図であり、例えば図示されるリード板の厚み、リード板と他の部材との厚み比などは実際とは異なる。
【0044】
さらに、電池セル1を直列に接続する電池ブロック10は、図2に示すように、電池セル1の側面に配置されて、電池セル1を直列に接続する直列接続リード板39を備える。図の電池パック100は、電池ブロック10を構成する電池セル1を直列に接続しているので、直列接続リード板39を設けているが、接続により直列接続リード板39を設けないこともできる。電池ブロック10の電池セル1は、図2とは異なる接続にできる。他の実施例として、例えば、図7に示すように、全ての電池セル1を並列に接続する電池パック200は、直列接続リード板を使用することなく、電池セル1の第1端面15を並列接続している第1の電極リード板230と、電池セル1の反対側の第2端面16を並列接続している第2の電極リード板(図示せず)とを備え、電池ブロック10から電力を出力する。また、図8に示すように、全ての電池セル1を直列に接続する電池パック300は、各々の電池セル1の第1端面15の電極13に接続する第1の電極リード板330と、各々の電池セル1を直列に接続する直列接続リード板39と、第2端面16の電極13に接続する第2の電極リード板(図示せず)を備え、電池ブロック10から電力を出力する。
【0045】
図2の分解斜視図に示す電池ブロック10は8本の電池セル1を電池ホルダ50で定位置に配置している。この電池ブロック10は、一対のリード板3で隣接する2本の電池セル1を並列に接続して4組の並列ユニットとしている。一対のリード板3は、電池セル1の第1端面15の電極13(排出弁12の開口部12aのある封口板の電極13)に接続している第1の電極リード板30と、第1端面15の反対側の第2端面16の電極13(外装ケース2の蓋ケース2B側の電極13)に接続している第2の電極リード板60を備える。直列接続リード板39は、電池ブロック10の側面に配置されて、隣接する並列ユニットを直列に接続している。直列接続リード板39は、隣接する並列ユニットの第1の電極リード板30と第2の電極リード板60を連結して、4組の並列ユニットを直列に接続している。この電池ブロック10は、第1及び第2の電極リード板30、60と直列接続リード板39で、8個の電池セル1を2並、4直に接続している。基板固定リード板35は、電池ブロック10を回路基板6に接続してなる。
【0046】
第1の電極リード板30は、回路基板6と電池セル1の第1端面15の分離隙間4に配置されて、分離隙間4を、噴出物を反転する反転ダクト41と、回路基板6の電子部品を配置する中央スペース40に区画している。反転ダクト41は、排出弁12の開口部12aに連絡されて噴出物を反転して排出ダクト42に案内する。中央スペース40は回路基板6の内側面に電子部品を配置するスペースを形成する。第1の電極リード板30は、中央部を電池セル1の第1端面15に連結して、両側を回路基板6に連結して中央スペース40を形成する。この第1の電極リード板30は、電池セル1の第1端面15の中央部に向かって突出して、電池セル1の電極13の表面に固定される電極固定部31と、回路基板6の内面に連結されて、回路基板6と電池セル1の第1端面15との間に反転ダクト41を設ける基板固定部32と、電極固定部31と基板固定部32とに連結されて、中央スペース40と反転ダクト41を区画する連結部33とを備える。第1の電極リード板30は、電極固定部31を電池セル1の第1端面15の中央部に連結して、回路基板6と電極固定部31との間を中央スペース40とし、連結部33は回路基板6に連結されて、連結部33と第1端面15との間を反転ダクト41とし、連結部33は電極固定部31と基板固定部32に連結されて、中央スペース40と反転ダクト41に区画して、反転ダクト41に噴射される噴出物が中央スペース40に流入するのを防止する。反転ダクト41は、排出弁12の開口部12aから勢いよく噴出される高温の噴出物を基板固定部32の内面に衝突させて流動方向を反転し、噴出物の運動のエネルギーを減衰し、さらに第1の電極リード板30に放熱して熱エネルギーを減衰して排出ダクト42に案内する。
【0047】
第1の電極リード板30は、高温の噴出物を連結部33の表面に高速流動させて噴出物の熱エネルギーを効率よく吸収し、基板固定部32においては噴出物を勢いよく衝突させてこの領域においても噴出物の熱エネルギーを効率よく吸収し、さらに、基板固定部32に噴出物を衝突させて流動方向を反転して、噴出物の運動エネルギーを効率よく減衰し、熱エネルギーと運動エネルギーの両方が減衰された噴出物を排出ダクト42に案内して、外装ケース2の外部に排出する。基板固定部32が電極固定部31より電池セル1の電極13より離間する方向に突出して配置されることで、基板固定部32に噴出物を垂直に近い角度で衝突させることができ、また基板固定部32に衝突した噴出物を逆方向に大きく方向転換でき、噴出物の運動エネルギーと熱エネルギーの減衰、吸収を効率よく実施できる。また、第1の電極リード板30は、排出弁12の開口部12aから噴出される噴出物を反転ダクト41で反転させた噴出物に、噴出される噴出物を衝突させて直進する運動エネルギーを減衰できる。
【0048】
さらに、図4に示す第1の電極リード板30の連結部33は、電池セル1の第1端面15に対して傾斜姿勢としている。連結部33の傾斜角(α)は、30度よりも大きく80度よりも小さくしている。この形状の第1の電極リード板30は、排出弁12の開口部12aから噴出される噴出物をよりスムーズに連結部33の表面に沿って高速流動できる。したがって、連結部33がより効率よく噴出物の熱エネルギーを吸収できる。さらに、連結部33に沿って流動して反転ダクト41に流入される噴出物は、基板固定部32の表面に傾斜姿勢で衝突することで、スムーズに反転して排出ダクト42に案内される。反転ダクト41でスムーズに反転させる噴出物は、反転ダクト41を形成するリード板3や回路基板6の熱障害を抑制しながら、噴出物を排出ダクト42に流入して外装ケース2の外部に排出できる。連結部33の傾斜角が30度よりも小さいと、分離隙間4(反転ダクト41)の高さを確保できず、または十分活用できない。また、反転ダクト41による方向転換が略垂直に近くなり、図4に示すような大きな方向転換が実現できず、基板固定部32に噴出物を衝突させて流動方向を反転して噴出物の運動エネルギーを効率よく減衰し難くなるからである。また、連結部33の傾斜角が80度よりも大きいと、連結部33が傾斜板として十分に機能せず連結部33の表面に沿った高速流動、スムーズな反転を促し難くなるからである。
【0049】
さらに、図4に示す第1の電極リード板30は、両側の基板固定部32の外側(電池セル1の側面側)に排出ダクト42の一部を形成する側壁プレート部34を設けている。側壁プレート部34は、反転ダクト41で反転された高温高圧の噴出物が遠心力で表面に高速流動され、また接触衝突されて噴出物の熱エネルギー、運動エネルギーを吸収、減衰できる。この第1の電極リード板30は、1枚の金属板を曲げ加工して、電極固定部31と連結部33と基板固定部32と側壁プレート部34を設けているので、排出ダクト42に噴射される噴出物を、連結部33と基板固定部32と側面プレート34とで排出ダクト42に案内できる。
【0050】
図4に示すように、電池パック100は、回路基板6に固定されて、第1の電極リード板30の側壁プレート部34に接続されてなる基板固定リード板35を備える。図の基板固定リード板35は、第1の電極リード板30の側壁プレート部34に接続してなる垂直プレート36と、回路基板6に固定されてなる固定プレート37とを有する。図の基板固定リード板35は、垂直プレート36と固定プレート37とを互いに垂直に連結するL字状板材とする。垂直プレート36は、側壁プレート部34に積層状態で固定され、固定プレート37は、基板固定部32に積層状態で固定される。垂直プレート36と側壁プレート部34とが積層される部分は、外装ケース2の内面に配置され、高温高圧の噴出物が反転された直後に流入される排出ダクト42の入口の一部を形成し、2枚の積層した金属板で保護して、外装ケース2の内側の熱障害を防止する。
【0051】
固定プレート37と基板固定部32との積層される部分は、回路基板6の内面の反転ダクト42の一部を形成し、噴出物が勢いよく衝突し流動方向が反転されて熱エネルギーを吸収し運動エネルギーを減衰する。この部分は、2枚の積層した金属板に、さらに回路基板6が耐熱部材として積層されて、噴出物による外装ケース2の熱障害を確実に防止する。反転ダクト42は、排出弁12から排出された高温高圧の噴出物が連結部33に案内されて直接衝突する部分、反転する部分を含み、排出ダクト42の入口は、高温高圧の噴出物が反転された直後に流入される部分であり、これらの耐熱強度の向上することで外装ケース2の熱障害を効率的に防止できる。電池セル1から噴出される噴出物が衝突して反転する領域の反転ダクト41と排出ダクト42の入口を、垂直プレート36と固定プレート37とを互いに垂直に連結するL字状板材の基板固定リード板35と、基板固定部32と側壁プレート部34とを互いに垂直に連結するL字状板材部分を備える第1の電極リード板30とを積層して外装ケース2の熱障害を防止できる。図4において、噴出物が直接衝突して反転する平面部は、固定プレート37と基板固定部32、さらに回路基板6が積層される。反転された噴出物が遠心力で接触・衝突・高速流動する外装ケース2の内面の平面部は、垂直プレート36と側壁プレート部34が積層される。これらの連結部である外装ケース2の角部は、固定プレート37と垂直プレート36のL字状板材に、基板固定部32と側壁プレート部34のL字状板材が積層される。これらの積層構造で形成し、噴出物による外装ケース2の熱障害を防止できる。
【0052】
図2の第1の電極リード板30は、隣接して配置されてなる電池セル1の境界領域に分離窓38を有する。第1の電極リード30の分離窓38に電池ホルダ50の嵌合突出部55が案内される。この構造は、分離窓38の形状を嵌合突出部55の外形に合わせることで、第1のリード板30と嵌合突出部55とで噴出物が隣の電池セル1の第1端面15に流入するのを阻止できるので、隣接する電池セル1の熱暴走の誘発を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、電池セルの排出弁から排出される高温の噴出物から外装ケースを保護する電池パックとして有効に使用できる。
【符号の説明】
【0054】
100、200、300、900…電池パック
1…電池セル
1A…円筒型電池
2…外装ケース
2A…本体ケース
2B…蓋ケース
3…リード板
4…分離隙間
6…回路基板
10…電池ブロック
12…排出弁
12a…開口部
13…電極
15…第1端面
16…第2端面
21…第1のケースプレート
22…第2のケースプレート
23…排出開口
23a…小孔
25…(本体ケースの)開口部
26…側面プレート
27…底プレート
28…端子窓
30、230、330…第1の電極リード板
31…電極固定部
32…基板固定部
33…連結部
34…側壁プレート部
35…基板固定リード板
36…垂直プレート
37…固定プレート
38…分離窓
39…直列接続リード板
40…中央スペース
41…反転ダクト
42…排出ダクト
50…電池ホルダ
51…位置決穴
52…電極開口
53…ダクト溝
54…凸条
55…嵌合突出部
60…第2の電極リード板
901…電池セル
902…外装ケース
931…耐熱プレート
932…耐熱プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9