特開 2024-78286 ミシン

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024078286

(43)【公開日】2024-06-10

(54)【発明の名称】ミシン

(51)【国際特許分類】

   D05B 19/12 20060101AFI20240603BHJP

   D05B 73/12 20060101ALI20240603BHJP

【ＦＩ】

D05B19/12

D05B73/12

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022190732

(22)【出願日】2022-11-29

(71)【出願人】

【識別番号】000003399

【氏名又は名称】ＪＵＫＩ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002147

【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】佐藤 邦彰

(72)【発明者】

【氏名】小川 達矢

(72)【発明者】

【氏名】能本 幸代

(72)【発明者】

【氏名】中山 元

(72)【発明者】

【氏名】比嘉 隆裕

【テーマコード（参考）】

3B150

【Ｆターム（参考）】

3B150AA01

3B150CE01

3B150CE23

3B150DE06

3B150EA01

3B150GA06

3B150JA03

3B150LA01

3B150LA12

3B150NA01

3B150NA11

3B150QA06

(57)【要約】

【課題】縫製不良の発生を抑制する。
【解決手段】針棒に保持され、上糸を保持して往復移動する縫い針と、ボビンケースに収容され下糸が巻かれたボビンを保持し、縫い針と協働して縫い目を形成する釜と、縫い針の直下の縫製位置に配置される縫製対象物を押さえる押さえ部材と、縫製位置に配置される縫製対象物を縫製位置から第１方向に送る送り機構と、ベルト駆動部とは別個に設けられ、縫い針と押さえ部材とを同期させて第１方向に移動させる針駆動部と、ベルト駆動部と、針駆動部とが独立して動作するように制御する制御部とを備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

針棒に保持され、上糸を保持して往復移動する縫い針と、
ボビンケースに収容され下糸が巻かれたボビンを保持し、前記縫い針と協働して縫い目を形成する釜と、
前記縫い針の直下の縫製位置に配置される縫製対象物を押さえる押さえ部材と、
前記縫製対象物を前記縫製位置から第１方向に送る送り機構と、
前記縫い針の直下に配置され前記縫製対象物の下面を支持し前記縫い針を上下方向に貫通させる針孔を有し上下方向に移動可能な針孔ガイド部材と、前記針孔ガイド部材を単独で上下方向に駆動するガイド駆動部とを有する針孔ガイド機構と、
前記縫い針の往復移動とは独立して前記針孔ガイド部材が上下に移動するように前記ガイド駆動部を制御する制御部と
を備えるミシン。

【請求項2】

前記針孔ガイド部材の周囲に配置され前記縫製対象物の下面を支持する針板を更に備え、
前記制御部は、前記縫い針が前記縫製対象物に初回に刺さる際に、前記針孔ガイド部材が前記針板と上面が揃う上昇位置に位置するように前記ガイド駆動部を制御する
請求項１に記載のミシン。

【請求項3】

前記制御部は、前記縫い針が前記縫製対象物に２回目以降に刺さる際に、前記針孔ガイド部材が前記針板の上面よりも下方の下降位置に位置するように前記ガイド駆動部を制御する
請求項２に記載のミシン。

【請求項4】

前記制御部は、前記縫い針が前記縫製対象物に２回目以降に刺さる際に前記針孔ガイド部材が前記針板と上面が揃う上昇位置に位置し、当該縫い針が前記縫製対象物から抜ける際に前記針孔ガイド部材が前記針板の上面よりも下方の下降位置に位置するように前記ガイド駆動部を制御する
請求項２に記載のミシン。

【請求項5】

前記送り機構は、
前記縫製位置に対して前記第１方向に直交する第２方向の両側に配置される無端状の送りベルトと、
前記縫製位置に対して前記第２方向の一方側の前記送りベルトと他方側の前記送りベルトとを独立して駆動するベルト駆動部と、を有する
請求項１に記載のミシン。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、ミシンに関する。

【背景技術】

【0002】

ミシンに係る技術分野において、特許文献１に開示されているような、いわゆる本縫いミシンと呼ばれるミシンが知られている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１９－２１２１９４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上記のミシンでは、縫い針の直下に針孔を有する針板が設けられ、針板と押さえ部材との間で縫製対象物を保持した状態で縫い針を往復させる。この構成では、縫い針を往復させる際、針孔と縫製対象物との間で糸に抵抗が掛かり、縫製不良が発生する場合がある。

【0005】

本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、縫製不良の発生を抑制することが可能なミシンを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示に従えば、針棒に保持され、上糸を保持して往復移動する縫い針と、ボビンケースに収容され下糸が巻かれたボビンを保持し、前記縫い針と協働して縫い目を形成する釜と、前記縫い針の直下の縫製位置に配置される縫製対象物を押さえる押さえ部材と、前記縫製対象物を前記縫製位置から第１方向に送る送り機構と、前記縫い針の直下に配置され前記縫製対象物の下面を支持し前記縫い針を上下方向に貫通させる針孔を有し上下方向に移動可能な針孔ガイド部材と、前記針孔ガイド部材を単独で上下方向に駆動するガイド駆動部とを有する針孔ガイド機構と、前記縫い針の往復移動とは独立して前記針孔ガイド部材が上下に移動するように前記ガイド駆動部を制御する制御部とを備えるミシンが提供される。

【発明の効果】

【0007】

本開示によれば、縫製不良の発生を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】図１は、本実施形態に係るミシンを模式的に示す斜視図である。

【図2】図２は、送り機構の一例を示す図である。

【図3】図３は、縫い針が縫製対象物に初回に刺さる場合の動作の一例を示す図である。

【図4】図４は、縫い針が縫製対象物に２回目以降に刺さる場合の動作の一例を示す図である。

【図5】図５は、縫い針が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる場合の動作の他の例を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、本開示に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。

【0010】

本実施形態に係るミシン１について説明する。本実施形態においては、ミシン１に規定されたローカル座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。ローカル座標系は、ＸＹＺ直交座標系により規定される。所定面内のＸ軸と平行な方向をＸ軸方向（第２方向）とする。Ｘ軸と直交する所定面内のＹ軸と平行な方向をＹ軸方向（第１方向）とする。所定面と直交するＺ軸と平行な方向をＺ軸方向とする。Ｘ軸を中心とする回転方向をθＸ方向とする。

【0011】

図１は、本実施形態に係るミシン１を模式的に示す斜視図である。図１に示すように、ミシン１は、ミシンヘッド２と、針棒４と、天秤５と、糸調子器６と、針板７と、押さえ部材８と、釜９と、モータ１０と、送り機構１１と、針孔ガイド機構１２と、制御部３０とを備える。

【0012】

針棒４は、縫い針３を保持してＺ軸方向に往復移動する。針棒４は、縫い針３とＺ軸とが平行となるように縫い針３を保持する。針棒４は、ミシンヘッド２に支持される。針棒４は、針板７の上方に配置され、縫製対象物Ｓの表面と対向可能である。縫い針３に上糸ＵＴが掛けられる。縫い針３は、上糸ＵＴが通過する糸通し孔を有する。縫い針３は、糸通し孔の内面で上糸ＵＴを保持する。針棒４がＺ軸方向に往復移動することにより、縫い針３は、上糸ＵＴを保持した状態でＺ軸方向に往復移動する。

【0013】

天秤５は、縫い針３に上糸ＵＴを供給する。天秤５は、ミシンヘッド２に支持される。天秤５は、上糸ＵＴが通過する天秤孔を有する。天秤５は、天秤孔の内面で上糸ＵＴを保持する。天秤５は、上糸ＵＴを保持した状態でＺ軸方向に往復移動する。天秤５は、針棒４に連動して往復移動する。天秤５は、Ｚ軸方向に往復移動することによって、上糸ＵＴを繰り出したり引き上げたりする。

【0014】

糸調子器（上糸張力調整機構）６は、上糸ＵＴに張力を付与する。糸供給源から糸調子器６に上糸ＵＴが供給される。上糸ＵＴが通過する経路において、天秤５は、縫い針３と糸調子器６との間に配置される。糸調子器６は、天秤５を介して縫い針３に供給される上糸ＵＴの張力を調整する。

【0015】

針板７は、縫製対象物Ｓを支持する。針棒４に保持されている縫い針３と針板７とは対向する。針板７は、後述する針孔ガイド機構１２の周囲に配置される。

【0016】

押さえ部材８は、縫製対象物Ｓを上方から押さえる。押さえ部材８は、ミシンヘッド２に支持される。押さえ部材８は、針板７の上方に配置され、針板７との間で縫製対象物Ｓを保持する。

【0017】

釜９は、ボビンケースに収容されたボビンを保持する。釜９は、針板７の下方に配置される。釜９は、θＸ方向に回転する。釜９は、針棒４に連動して回転する。釜９は、下糸ＬＴを供給する。釜９は、針板７に支持されている縫製対象物Ｓを貫通し、針板７の針孔を通過した縫い針３から上糸ＵＴをすくい取る。

【0018】

モータ１０は、動力を発生する。モータ１０は、ミシンヘッド２に支持されるステータと、ステータに回転可能に支持されるロータとを有する。ロータが回転することにより、モータ１０は動力を発生する。モータ１０で発生した動力は、動力伝達機構（不図示）を介して、針棒４、天秤５、及び釜９のそれぞれに伝達される。針棒４と天秤５と釜９とは連動する。モータ１０で発生した動力が針棒４に伝達されることにより、針棒４及び針棒４に保持されている縫い針３は、Ｚ軸方向に往復移動する。モータ１０で発生した動力が天秤５に伝達されることにより、天秤５は、針棒４に連動してＺ軸方向に往復移動する。モータ１０で発生した動力が釜９に伝達されることにより、釜９は、針棒４及び天秤５に連動してθＸ方向に回転する。ミシン１は、針棒４に保持されている縫い針３と釜９との協働により縫製対象物Ｓを縫製する。

【0019】

送り機構１１は、縫製対象物Ｓを縫製位置ＰＳからＹ軸方向へ移送する。本実施形態において、送り機構１１は、縫製位置ＰＳに配置された縫製対象物Ｓよりも下方に配置される。なお、縫製位置ＰＳに配置された縫製対象物Ｓよりも上方に配置された送り機構が別途設けられてもよい。送り機構１１は、送りベルト２１と、ベルト駆動部２２とを有する。

【0020】

図２は、送り機構１１の一例を示す図である。図２に示すように、送りベルト２１は、縫製対象物Ｓの下面Ｓｂに接触する。送りベルト２１は、環状（無端状）である。送りベルト２１は、縫製位置ＰＳに対してＸ軸方向の両側に配置される。送りベルト２１は、縫製位置ＰＳに対してＸ軸方向の両側にそれぞれ２本ずつ、合計で４本配置される。以下、縫製位置ＰＳに対してＸ軸方向の一方側（－Ｘ側）に配置される２本の送りベルト２１を送りベルト２１Ａと表記し、縫製位置ＰＳに対してＸ軸方向の他方側（＋Ｘ側）に配置される２本の送りベルト２１を送りベルト２１Ｂと表記する。

【0021】

ベルト駆動部２２は、縫製位置ＰＳに対して－Ｘ側の送りベルト２１Ａと＋Ｘ側の送りベルト２１Ｂとを独立して駆動する。ベルト駆動部２２は、縫製位置ＰＳの－Ｘ側の送りベルト２１Ａを駆動する駆動系２２Ａと、縫製位置ＰＳの＋Ｘ側の送りベルト２１Ｂを駆動する駆動系２２Ｂとを有する。駆動系２２Ａは、モータ２３Ａ及びプーリ２４Ａを有する。駆動系２２Ｂは、モータ２３Ｂ及びプーリ２４Ｂを有する。

【0022】

モータ２３Ａ、２３Ｂが作動すると、プーリ２４Ａに支持されるベルト２１Ａと、プーリ２４Ｂに支持されるベルト２１ＢとがＹ軸方向に回転する。ベルト２１Ａ、２１Ｂの回転により、縫製対象物ＳがＹ軸方向に移送される。

【0023】

また、図２に示すように、針孔ガイド機構１２は、針孔ガイド部材２５と、ガイド駆動部２６とを有する。針孔ガイド部材２５は、棒状であり、縫い針３の直下の位置に配置される。針孔ガイド部材２５は、Ｙ軸方向に沿って配置される。本実施形態では、針孔ガイド部材２５は、縫製位置ＰＳに対して－Ｘ側の送りベルト２１Ａと、＋Ｘ側の送りベルト２１Ｂとの間に配置される。針孔ガイド部材２５は、縫製対象物Ｓの下面Ｓｂを支持する。針孔ガイド部材２５は、縫い針３をＺ軸方向に貫通させる針孔２５ａを有する。

【0024】

ガイド駆動部２６は、針孔ガイド部材２５をＺ軸方向に移動させる。ガイド駆動部２６は、駆動源となるモータ２７と、モータ２７の駆動力を伝達する伝達機構２８とを有する。ガイド駆動部２６は、針孔ガイド部材２５を他の構成要素とは独立して、すなわち単独でＺ軸方向に移動させることが可能である。

【0025】

針孔ガイド部材２５は、例えば上昇位置Ｐ１と、下降位置Ｐ２との間を移動可能である。上昇位置Ｐ１は、針孔ガイド部材２５の上面２５ｂが針板７の上面２５ｂと揃う位置である。下降位置Ｐ２は、針孔ガイド部材２５の上面が針板７の上面の下方に配置される位置である。縫製対象物Ｓが縫製位置ＰＳに配置された状態で針孔ガイド部材２５が下降位置Ｐ２に配置される場合、縫製対象物Ｓと針孔ガイド部材２５の上面との間に隙間が形成される。

【0026】

制御部３０は、ミシン１の動作を統括的に制御する。制御部３０は、処理部３１及び記憶部３２を有する。処理部３１は、各種の情報処理を行う。処理部３１は、ＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）等のプロセッサと、ＲＯＭ（Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＲＡＭ（Ｒａｎｄｏｍ Ａｃｃｅｓｓ Ｍｅｍｏｒｙ）等のメモリとを含む。

【0027】

処理部３１は、昇降駆動制御部３３と、判断部３５と、ベルト駆動制御部３４と、ガイド駆動制御部３６とを有する。

【0028】

昇降駆動制御部３３は、モータ１０の回転を制御することで、縫い針３のＺ軸方向の移動を制御する。

【0029】

判断部３５は、縫製対象物Ｓに刺さる縫い針３が初回か、２回目以降かを判断する。判断部３５は、例えばモータ１０の回転数をカウントし、カウント値に基づいて縫い針３が縫製対象物Ｓに刺さる回数を算出することができる。

【0030】

ベルト駆動制御部３４は、ベルト駆動部２２のモータ２３Ａ、２３Ｂの回転を制御することで、送りベルト２１Ａ、２１ＢのＹ軸方向への移動を制御する。

【0031】

ガイド駆動制御部３６は、ガイド駆動部２６のモータ２７の回転を制御することで、針孔ガイド部材２５のＺ軸方向への移動を制御する。ガイド駆動制御部３６は、縫い針３の往復移動とは独立して針孔ガイド部材２５がＺ軸方向に移動するようにガイド駆動部２６を制御する。

【0032】

ガイド駆動制御部３６は、縫製動作において、縫い針３が縫製対象物Ｓに初回に刺さる際に、針孔ガイド部材２５が上昇位置Ｐ１に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。

【0033】

ガイド駆動制御部３６は、縫製動作において、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる際に、針孔ガイド部材２５が下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。

【0034】

ガイド駆動制御部３６は、縫製動作において、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる際には針孔ガイド部材２５が上昇位置Ｐ１に位置し、当該縫い針３が縫製対象物Ｓから抜ける際には針孔ガイド部材２５が下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。

【0035】

記憶部３２は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部３２は、ＨＤＤ（Ｈａｒｄ Ｄｉｓｋ Ｄｒｉｖｅ）、ＳＳＤ（Ｓｏｌｉｄ Ｓｔａｔｅ Ｄｒｉｖｅ）等のストレージを含む。

【0036】

制御部３０では、処理部３１においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、記憶部３２に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御部３０は、各種の情報処理を実行する情報処理装置（コンピュータ）として機能する。なお、制御部１３とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御部３０と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。

【0037】

次に、上記のように構成されたミシン１の動作を説明する。作業者は、縫製対象物Ｓを縫製位置ＰＳに配置し、縫製対象物Ｓを押さえ部材８により押さえた状態とする。この状態において、作業者により縫製開始の操作が行われると、制御部３０の昇降駆動制御部３３は、縫い針３がＺ軸方向に往復移動するようにモータ１０の回転を制御する。また、ベルト駆動制御部３４は、ベルト駆動部２２のモータ２３Ａ、２３Ｂの回転を制御することで、送りベルト２１Ａ、２１Ｂの送り量を制御する。また、ガイド駆動制御部３６は、ガイド駆動部２６のモータ２７の回転を制御することで、針孔ガイド部材２５のＺ軸方向への移動を制御する。

【0038】

作業者は、例えばミシン１に設けられる不図示の操作パネルを操作することにより、縫製対象物Ｓを送るモードをベルト送りモード又は針送りモードに設定することができる。また、作業者は、当該操作パネルにより設定を適宜切り替えることができる。制御部３０において、判断部３５は、縫製対象物Ｓに刺さる縫い針３が初回か、２回目以降かを判断する。

【0039】

図３は、縫い針３が縫製対象物Ｓに初回に刺さる場合の動作の一例を示す図である。判断部３５により縫製対象物Ｓに刺さる縫い針３が初回であると判断された場合、図３に示すように、ガイド駆動制御部３６は、針孔ガイド部材２５が上昇位置Ｐ１に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。この制御により、針孔ガイド部材２５は、上昇位置Ｐ１において上面２５ｂが針板７の上面７ｂと揃った状態で、縫製対象物Ｓの下面Ｓｂを支持する。この場合、糸絡みを安定させることができるため、縫い初めの目飛びと呼ばれる縫製不良の発生が抑制される。

【0040】

図４は、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる場合の動作の一例を示す図である。判断部３５により縫製対象物Ｓに刺さる縫い針３が２回目以降であると判断された場合、ガイド駆動制御部３６は、針孔ガイド部材２５が下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。この制御により、針孔ガイド部材２５は、下降位置Ｐ２において縫製対象物Ｓとの間に隙間Ｔが形成されるように配置される。縫製対象物Ｓと針孔ガイド部材２５との間に隙間Ｔが形成されることにより、縫製対象物Ｓに刺した縫い針３を抜く際に糸への抵抗が低減され、糸締まりが向上する。このため、縫い針３を抜く際に糸の張力を高くする必要が無く、糸切れが抑制される。

【0041】

図５は、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる場合の動作の他の例を示す図である。判断部３５により縫製対象物Ｓに刺さる縫い針３が２回目以降であると判断された場合、ガイド駆動制御部３６は、縫製対象物Ｓに縫い針３が刺さる際には針孔ガイド部材２５が上昇位置Ｐ１に位置し、当該縫い針３が縫製対象物Ｓから抜ける際には針孔ガイド部材２５が下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御してもよい。この制御により、縫い針３が縫製対象物Ｓに刺さる際、針孔２５ａが縫製対象物Ｓの下面Ｓｂに接触した状態となる（ＳＴ１）。このため、目飛びと呼ばれる縫製不良の発生が抑制される。また、当該縫い針３が縫製対象物Ｓから抜ける際、針孔ガイド部材２５を下降位置Ｐ２に配置させることで、針孔ガイド部材２５と縫製対象物Ｓとの間に隙間Ｔが形成された状態となる（ＳＴ２）。これにより、縫い針３を縫製対象物Ｓから抜く際の糸の抵抗が低減されるため、糸締まりが向上し、目飛び等の縫製不良が抑制される。

【0042】

以上のように、本実施形態に係るミシン１は、針棒４に保持され、上糸を保持して往復移動する縫い針３と、ボビンケースに収容され下糸が巻かれたボビンを保持し、縫い針３と協働して縫い目ＳＥを形成する釜９と、縫い針３の直下の縫製位置ＰＳに配置される縫製対象物Ｓを押さえる押さえ部材８と、縫製対象物Ｓを縫製位置ＰＳからＹ軸方向に送る送り機構１１と、縫い針３の直下に配置され縫製対象物Ｓの下面を支持し縫い針３をＺ軸方向に貫通させる針孔２５ａを有しＺ軸方向に移動可能な針孔ガイド部材２５と、針孔ガイド部材２５を単独でＺ軸方向に駆動するガイド駆動部２６とを有する針孔ガイド機構１２と、針孔ガイド部材２５の周囲に配置され縫製対象物Ｓの下面を支持する針板７と、縫い針３の往復移動とは独立して針孔ガイド部材２５がＺ軸方向に移動するようにガイド駆動部２６を制御する制御部３０とを備える。

【0043】

この構成によれば、縫い針３の直下に配置され針孔２５ａを有する針孔ガイド部材２５が縫い針３の往復移動とは独立してＺ軸方向に移動するため、縫い針３を往復移動させる際に糸の張力を変更することなく、縫製不良を抑制することができる。

【0044】

本実施形態に係るミシン１において、制御部３０は、縫い針３が縫製対象物Ｓに最初に刺さる際に、針孔ガイド部材２５が針板７と上面（２５ｂ、７ｂ）が揃う上昇位置Ｐ１に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。この構成によれば、針孔ガイド部材２５が上昇位置Ｐ１において縫製対象物Ｓの下面Ｓｂを支持する。これにより、糸絡みを安定させることができるため、縫い初めの目飛びと呼ばれる縫製不良の発生が抑制される。

【0045】

本実施形態に係るミシン１において、制御部３０は、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる際に、針孔ガイド部材２５が針板７の上面７ｂよりも下方の下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。この構成によれば、縫製対象物Ｓと針孔ガイド部材２５との間に隙間が空くことにより、縫い針３を縫製対象物Ｓから抜く際に糸への抵抗が低減され、糸締まりが向上する。このため、縫い針３を抜く際に糸の張力を高くする必要が無く、糸切れが抑制される。

【0046】

本実施形態に係るミシン１において、制御部３０は、縫い針３が縫製対象物Ｓに２回目以降に刺さる際に針孔ガイド部材２５が針板７と上面（２５ｂ、７ｂ）が揃う上昇位置Ｐ１に位置し、縫い針３が縫製対象物Ｓから抜ける際に針孔ガイド部材２５が針板７の上面７ｂよりも下方の下降位置Ｐ２に位置するようにガイド駆動部２６を制御する。この構成によれば、縫い針３が縫製対象物Ｓに刺さる際には、針孔２５ａが縫製対象物Ｓの下面Ｓｂに接触した状態となる。このため、目飛びと呼ばれる縫製不良の発生が抑制される。また、当該縫い針３が縫製対象物Ｓから抜ける際には、針孔２５ａを下に退避させることで、縫い針３を縫製対象物Ｓから抜く際の糸の抵抗が低減される。このため、糸締まりが向上し、目飛び等の縫製不良が抑制される。

【0047】

本実施形態に係るミシン１において、送り機構１１は、縫製位置ＰＳに対してＹ軸方向に直交するＸ軸方向の両側に配置される無端状の送りベルト２１、縫製位置ＰＳに対してＸ軸方向の－Ｘ側の送りベルト２１と＋Ｘ側の送りベルト２１とを独立して駆動するベルト駆動部２２と、を有する。この構成によれば、縫製位置ＰＳに対して－Ｘ側と＋Ｘ側とで送りベルト２１の回転を同期させたり差動させたりすることで、多様な形態で縫製対象物Ｓを送ることができる。

【0048】

本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、送り機構１１として、無端状の送りベルト２１及びベルト駆動部２２が設けられた構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、送り機構として、縫い針３を貫通させる針孔を有する送り歯が設けられた構成であってもよい。

【符号の説明】

【0049】

ＬＴ…下糸、Ｐ１…上昇位置、Ｐ２…下降位置、ＰＳ…縫製位置、Ｓ…縫製対象物、Ｓｂ…裏面、ＳＥ…目、ＵＴ…上糸、１…ミシン、２…ミシンヘッド、３…針、４…針棒、５…天秤、６…糸調子器、７…針板、７ｂ，２５ｂ…上面、８…部材、９…釜、１０，２３Ａ，２３Ｂ，２７…モータ、１１…送り機構、１２…針孔ガイド機構、１３，３０…制御部、２１，２１Ａ，２１Ｂ…送りベルト、２１Ａ，２１Ｂ…ベルト、２２…ベルト駆動部、２２Ａ，２２Ｂ…駆動系、２４Ａ，２４Ｂ…プーリ、２５…針孔ガイド部材、２５ａ…針孔、２６…ガイド駆動部、２８…伝達機構、３１…処理部、３２…記憶部、３３…昇降駆動制御部、３４…ベルト駆動制御部、３５…判断部、３６…ガイド駆動制御部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】