(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078288
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ミシン外付けユニット
(51)【国際特許分類】
D05B 35/00 20060101AFI20240603BHJP
D05B 23/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
D05B35/00 Z
D05B23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190734
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝見 健
(72)【発明者】
【氏名】安部 好晃
(72)【発明者】
【氏名】山田 優
(72)【発明者】
【氏名】柄沢 栄一
(72)【発明者】
【氏名】榮田 敏亮
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 駿志
(72)【発明者】
【氏名】飯村 ほのか
(72)【発明者】
【氏名】福場 尚文
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA24
3B150CB03
3B150CE01
3B150CE02
3B150GD02
3B150LA02
3B150LA21
3B150QA06
(57)【要約】
【課題】ミシンを用いた縫製において縫い目の品質を向上させる。
【解決手段】生地を保持する保持部と、ミシンのベッドに着脱可能であり、保持部をベッドの上面に沿って駆動する駆動部と、ミシンの縫い針の上下方向への移動に対応して上下方向に移動し、縫い針が生地に刺さっている期間に生地を押さえ、縫い針が生地から抜けて上昇する場合に縫い針と一体で上昇する押さえ部材と、押さえ部材の上下方向の位置を検出する位置検出部と、ミシンに信号を出力する信号出力部と、縫い針を駆動する針駆動信号を信号出力部からミシンに出力可能であり、位置検出部の検出結果に基づいて、保持部及び縫い針の少なくとも一方の駆動を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を保持する保持部と、
ミシンのベッドに着脱可能であり、前記保持部を前記ベッドの上面に沿って駆動する駆動部と、
前記ミシンの縫い針の上下方向への移動に対応して上下方向に移動し、前記縫い針が前記生地に刺さっている期間に前記生地を押さえ、前記縫い針が前記生地から抜けて上昇する場合に前記縫い針と一体で上昇する押さえ部材と、
前記押さえ部材の上下方向の位置を検出する位置検出部と、
前記ミシンに信号を出力する信号出力部と、
前記縫い針を駆動する針駆動信号を前記信号出力部から前記ミシンに出力可能であり、前記位置検出部の検出結果に基づいて、前記保持部及び前記縫い針の少なくとも一方の駆動を制御する制御部と
を備えるミシン外付けユニット。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置検出部の検出結果に基づいて前記押さえ部材が前記生地から離れているか否かを検出し、前記押さえ部材が前記生地から離れている期間に前記保持部の駆動を行うように前記駆動部を制御する
請求項1に記載のミシン外付けユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記押さえ部材が前記生地から離れている期間内に前記駆動部を制御する際、前記生地の厚さに応じて前記縫い針の移動速度を調整する
請求項2に記載のミシン外付けユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記押さえ部材が前記生地から離れている期間内に前記駆動部を制御する際、当該期間における前記保持部の駆動量に応じて前記縫い針の移動速度を調整する
請求項2に記載のミシン外付けユニット。
【請求項5】
前記位置検出部は、前記押さえ部材の上下方向の移動量を検出可能であり、
前記制御部は、前記移動量に基づいて前記生地の厚さを算出する
請求項1に記載のミシン外付けユニット。
【請求項6】
前記位置検出部は、
前記縫い針が前記生地から抜けて上昇する場合に前記縫い針及び前記押さえ部材と一体となって上昇するように前記ミシンに支持され、上下方向に沿ってパターンが形成された移動体と、
上下方向への移動が規制された状態で前記ミシンに支持され、前記パターンの移動を検出することで前記移動体の移動を検出するセンサと、を有する
請求項1に記載のミシン外付けユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミシン外付けユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、いわゆる本縫いミシンと呼ばれるミシンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のミシンにおいて、ボタンホールを縫製する際には、例えば生地を保持する枠と、縫い針の上下動の動力を枠の水平方向への駆動力に変換するラチェット機構と、動作が刻まれたコマと用いることで、枠をボタンホールの形状に動かすようにしていた。ミシンを用いてボタンホール等のパターンを縫製する際、縫い目の品質を向上させることが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ミシンを用いた縫製において縫い目の品質を向上させることが可能なミシン外付けユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、生地を保持する保持部と、ミシンのベッドに着脱可能であり、前記保持部を前記ベッドの上面に沿って駆動する駆動部と、前記ミシンの縫い針の上下方向への移動に対応して上下方向に移動し、前記縫い針が前記生地に刺さっている期間に前記生地を押さえ、前記縫い針が前記生地から抜けて上昇する場合に前記縫い針と一体で上昇する押さえ部材と、前記押さえ部材の上下方向の位置を検出する位置検出部と、前記ミシンに信号を出力する信号出力部と、前記縫い針を駆動する針駆動信号を前記信号出力部から前記ミシンに出力可能であり、前記位置検出部の検出結果に基づいて、前記保持部及び前記縫い針の少なくとも一方の駆動を制御する制御部とを備えるミシン外付けユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ミシンを用いた縫製において縫い目の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミシン外付けユニットを装着した状態のミシンを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ミシンとミシン外付けユニットとを分解した分解斜視図である。
【
図3】
図3は、保持部及び筐体の外観の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、保持部を上方から見た状態の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、保持部の動作の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、位置検出部の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、位置検出部の動作の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、第1光センサ及び第2光センサから出力される電気信号の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、制御部の一例を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、生地の厚さを検出する原理を模式的に示している。
【
図11】
図11は、生地の厚さが異なる場合の第1光センサからの出力を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、駆動部による駆動の一例を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、縫い針の移動速度を調整する場合の例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るミシン外付けユニットの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
実施形態においては、ミシン1に規定されたミシン座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。ミシン座標系は、3次元直交座標系により規定される。ミシン座標系は、X軸、Y軸、及びZ軸により規定される。X軸は、所定面に規定される。Y軸は、所定面においてX軸と直交するように規定される。Z軸は、所定面と直交するように規定される。実施形態において、所定面は水平面と平行であり、Z軸と平行な方向は上下方向であることとする。また、実施形態において、所定面を適宜、XY平面、と称する。
【0011】
図1は、実施形態に係るミシン外付けユニット10を装着した状態のミシン1を模式的に示す斜視図である。
図2は、ミシン1とミシン外付けユニット10とを分解した分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、ミシン1は、ミシンヘッド2と、縫い針3を保持してZ軸方向に往復移動する針棒4と、縫製対象物である生地Sを支持する針板5と、ボタンホールを形成するためのミシン外付けユニット10とを備える。
【0012】
ミシンヘッド2は、針棒4をZ軸方向に往復移動可能に支持する。針棒4は、針板5の上方に配置され、生地Sの表面と対向可能である。針棒4は、縫い針3がZ軸方向に延伸するように、縫い針3の上端部を保持する。縫い針3に上糸が掛けられる。
【0013】
針板5は、生地Sの裏面を支持する。針板5の上面は、XY平面と平行である。針板5は、生地Sを下方から支持する。針板5は、縫い針3が通過可能な針孔6を有する。針板5の下方に釜(不図示)が配置される。釜は、ボビンケースに収容されたボビンを保持する。ボビンに下糸が巻かれる。釜は、針棒4の往復移動と同期して回転する。釜から下糸が供給される。
【0014】
ミシン外付けユニット10は、生地Sにボタンホールを形成する際に用いられる。ミシン外付けユニット10は、生地Sに対してボタンホールを形成するためのユニットである。ミシン外付けユニット10は、保持部11と、駆動部12と、位置検出部13と、操作パネル14と、信号出力部15と、制御部16とを備える。ミシン外付けユニット10において、駆動部12、操作パネル14、信号出力部15及び制御部16は、筐体10Aに収容される。保持部11は、筐体10Aから突出した状態で筐体10Aの内部の駆動部12に支持される。
【0015】
図3は、保持部11及び筐体10Aの外観の一例を示す斜視図である。保持部11は、生地Sを保持する。保持部11は、下板21と、上板22と、クランプ機構23とを有する。
【0016】
下板21は、ベッド7の上面7a及び針板5に対して+Z方向に離れた位置で支持される。上板22は、下板21に対してZ方向に移動可能である。上板22を下板21に対して+Z方向に移動させることで、下板21と上板22との間に隙間が形成される。この隙間に生地Sを配置することができる。
【0017】
図4は、保持部11を上方から見た状態の一例を示す図である。
図4では、クランプ機構23を省略している。
図4に示すように、下板21及び上板22は、同一形状及び同一寸法に形成される。下板21及び上板22は、縫い針3を通過させる開口部21a、22aを有する。開口部21a、22aは、例えば上方から見て重なる位置及び寸法に形成される。開口部21a、22aは、上方から見てX方向に延びる第1部分21b、22bとY方向に延びる第2部分21c、22cとを有するL字状に形成される。開口部21a、22aは、縫い針3の直下の位置に配置される。保持部11は、縫い針3の位置と開口部21a、22aの位置とに応じた3つの原点位置R1~R3に配置可能である。原点位置R1では、開口部21a、22aのL字の角部21d、22dに縫い針3が配置される。原点位置R2では、開口部21a、22aのうち第1部分21b、22bの先端に縫い針3が配置される。原点位置R3では、開口部21a、22aのうち第2部分21c、22cの先端に縫い針3が配置される。原点位置については、上記の場合に限定されない。
【0018】
クランプ機構23は、上板22を下板21側に押し付ける。
図5は、保持部11の動作の一例を模式的に示す図である。
図5に示すように、下板21と上板22との間の隙間に生地Sを配置した状態で、クランプ機構23により上板22を下板21に押し付けることで、生地Sが下板21と上板22とで挟持された状態となる。下板21と上板22とで生地Sを挟持することで、保持部11が生地Sを保持した状態となる。
【0019】
駆動部12は、ミシン1のベッド7に着脱可能である。駆動部12は、保持部11をベッド7の上面7aに沿ってX方向及びY方向に移動させる。
【0020】
駆動部12は、下板21がZ方向に移動しないように保持部11を支持する。駆動部12は、保持部11を支持した状態で、当該保持部11をX方向に移動させるX駆動系と、保持部11をY方向に移動させるY駆動系とを有する。X駆動系及びY駆動系は、駆動源として例えばステッピングモータが用いられる。
【0021】
位置検出部13は、ミシン1の縫い針3及び後述する押さえ部材33の上下方向の位置を検出する。位置検出部13は、ミシンヘッド2に本来設けられる押さえ板を取り外し、当該押さえ板に代えてミシンヘッド2に装着される。位置検出部13は、検出結果を制御部16に出力する。
【0022】
位置検出部13は、移動体31と、支持部32と、押さえ部材33と、第1光センサ34と、第2光センサ35とを有する。
図6は、位置検出部13の一例を示す斜視図である。
図6では、内部が見えるように外郭部分の一部の構成を省略している。
図7は、位置検出部13の動作の一例を模式的に示す図である。
【0023】
図6及び
図7に示すように、移動体31は、Z方向に移動可能となるように支持部32に支持される。移動体31は、縫い針3が生地Sから抜けて上昇する場合に当該縫い針3と一体となって上昇するように支持部32に支持される。移動体31は、針当接部材36と、連結部材37と、第1遮光部材38と、第2遮光部材39とを有する。
【0024】
針当接部材36は、縫い針3が昇降する際の固定部材3aの移動経路上に配置される。針当接部材36は、Z方向について、第1位置P1と第2位置P2との間を移動可能である。第1位置P1は、縫い針3が上昇して生地Sから抜けた位置又は当該抜けた位置よりも所定距離だけ上方の位置に到達した際の固定部材3aに対応する位置である。第2位置P2は、縫い針3が上死点に到達した際の固定部材3aの高さ位置に対応する位置である。針当接部材36は、支持部32により第1位置P1よりも下方側への移動が規制された状態で支持される。
【0025】
連結部材37は、針当接部材36と、第1遮光部材38及び第2遮光部材39とを連結する。
【0026】
第1遮光部材38及び第2遮光部材39は、Z方向に延びた形状を有する。第1遮光部材38及び第2遮光部材39は、針当接部材36及び連結部材37と一体でZ方向に移動する。第1遮光部材38は、Z方向に凹凸部が交互に形成された波状の遮光パターン38aを有する。第2遮光部材39は、Z方向の下部の幅が上部の幅よりも小さい遮光パターン39aを有する。
【0027】
押さえ部材33は、ミシンヘッド2の押さえ板に代えて設けられる。押さえ部材33は、連結部材37に連結される。押さえ部材33は、連結部材37、すなわち針当接部材36、第1遮光部材38及び第2遮光部材39と一体でZ方向に移動する。押さえ部材33は、ばね部材40により下方に弾性力が付与される。ばね部材40は、上端が支持部32に支持され、下端が押さえ部材33に接触される。したがって、ばね部材40により、移動体31全体に対して下方に弾性力が付与された状態となっている。
【0028】
図7に示すように、縫い針3が生地Sに刺さった状態ST1から当該縫い針3が上昇して生地Sから抜ける際、固定部材3aが第1位置P1で針当接部材36に当接した状態ST2となる。縫い針3が更に上昇することにより、針当接部材36は、固定部材3aにより押し上げられる。縫い針3が上死点に到達することで、固定部材3aに押し上げられて針当接部材36が第2位置P2に到達した状態ST3となる。押さえ部材33は、縫い針3が生地から抜けて上昇する状態ST2から状態ST3の場合において、縫い針3と一体で上昇する。
【0029】
縫い針3が上死点から下降する場合、針当接部材36を押し上げる力が作用しなくなる。この場合、移動体31に対しては、移動体31自身の重力とばね部材40の弾性力とが作用する。この重力と弾性力により、移動体31が縫い針3に沿って下方に移動する。縫い針3が生地Sに刺さる際、針当接部材36が第1位置P1に到達し、押さえ部材33により生地Sが針板5側に押さえられる。このため、針当接部材36は、下方への移動が規制された状態で第1位置P1に配置される。縫い針3が更に下方に移動する場合、固定部材3aが針当接部材36から離れて下方に移動する。押さえ部材33は、縫い針3が上死点から下方に移動する場合において、縫い針3と一体で上昇する。
【0030】
第1光センサ34は、支持部32に支持される。第1光センサ34は、例えば発光部と受光部とを有する。発光部は、第1遮光部材38の遮光パターン38aに光を照射する。受光部は、遮光パターン38aを通過する光を検出して電気信号に変換する。第1光センサ34は、検出結果を電気信号として制御部16に出力する。
【0031】
第2光センサ35は、支持部32に支持される。第2光センサ35は、例えば発光部と受光部とを有する。発光部は、第2遮光部材39の遮光パターン39aに光を照射する。受光部は、遮光パターン39aを通過する光を検出して電気信号に変換する。第2遮光部材39の遮光パターン39aに光を照射し、遮光パターン39aを透過する光を検出する。第2光センサ35は、検出結果を電気信号として制御部16に出力する。
【0032】
図8は、第1光センサ34及び第2光センサ35から出力される電気信号の一例を示す図である。
図7及び
図8に示すように、縫い針3が生地Sに刺さっている状態では、針当接部材36が第1位置P1に支持されたまま移動しない。この場合、押さえ部材33は、生地Sを押さえた状態である。この状態では、第1遮光部材38の遮光パターンが移動せず、第1光センサ34からは一定の値の電気信号が出力される。一方、縫い針3が上昇して生地Sから抜けることで固定部材3aにより針当接部材36が押し上げられる。針当接部材36の移動により、押さえ部材33が針当接部材36と一体で上方に移動し、生地Sから離れた状態となる。また、針当接部材36の移動により、第1遮光部材38では波状の遮光パターンが上方に移動する。波状の遮光パターンが移動することにより、第1光センサ34では、受光部で光を受光する期間と光を受光しない期間とが交互に発生する。このため、押さえ部材33が生地Sから離れた状態においては、第1光センサ34からはパルス状の電気信号が出力される。
【0033】
また、縫い針3が上昇位置よりも下方に配置される場合、第2光センサ35からの光が第2遮光部材39で遮光されるため、第2光センサ35からは光を検出しない状態を示す低い値VLの信号が出力される。縫い針3が上昇して上昇位置に配置されると、針当接部材36が第2位置P2に押し上げられ、第2光センサ35からの光が第2遮光部材39を通過する。この場合、第2光センサ35からは光を検出した状態を示す高い値VHの信号が出力される。このように、縫い針3が上昇位置に配置される場合と、上昇位置の下方に配置される場合とで、第2光センサ35から出力される電気信号のレベルが異なる。
【0034】
図3に戻り、操作パネル14は、制御部16に対して所定の操作信号を入力する入力部17と、情報を表示する表示部18とを有する。入力部17は、例えばボタン等が挙げられる。入力部17は、ボタンホールのパターン及び寸法、縫い目の長さ及びピッチ等、各種の設定事項を入力することができる。また、入力部17は、ボタンホールの動作の開始、一時停止等の操作を入力可能である。表示部18は、各種情報を表示する。表示部18としては、液晶パネル等が用いられる。
【0035】
信号出力部15は、ミシン1に信号を出力する。信号出力部15は、例えばミシン1においてフットペダルからの信号が供給されるコネクタに接続される。信号出力部15は、ミシン1に対して縫い針3を駆動する針駆動信号を出力することができる。
【0036】
制御部16は、ミシン外付けユニット10を統括的に制御する。制御部16は、駆動部12による保持部11の駆動を制御する。制御部16は、信号出力部15による信号の出力動作を制御する。制御部16は、表示部18の表示動作を制御する。
【0037】
図9は、制御部16の一例を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、制御部16は、ミシン外付けユニット10の動作及びミシン1の一部の動作を制御する。制御部16は、処理部19及び記憶部20を有する。
【0038】
処理部19は、各種の情報処理を行う。処理部19は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。
【0039】
処理部19は、解析部41と、保持部駆動制御部42と、針駆動制御部43とを有する。
【0040】
解析部41は、位置検出部13の検出結果を解析する。解析部41は、位置検出部13の検出結果に基づいて、生地Sの厚さ、縫い針3が生地Sから抜けているか否か、又は押さえ部材33が生地Sから離れているか否かを判断する。解析部41は、位置検出部13の検出結果に基づいて、縫い針3が上死点又はその近傍の上昇位置に到達したか否かを判断する。
【0041】
生地Sの厚さを検出する場合、解析部41は、第1光センサ34により出力されるパルス信号の数に基づいて算出することができる。
図10は、生地Sの厚さを検出する原理を模式的に示している。
図10の左側が生地Sの厚さが薄い場合、
図10の右側が生地Sの厚さが厚い場合を示している。
図10に示すように、生地Sの厚さが厚い場合には、生地Sの厚さが薄い場合に比べて、縫い針3が生地Sに刺さった状態における押さえ部材33の高さ位置が高くなる。この場合、生地Sの厚さが薄い場合に比べて、第1遮光部材38及び第2遮光部材39が第1光センサ34及び第2光センサ35により深く入り込んだ状態となる。一方、縫い針3の上死点の高さは生地Sの厚さによらず一定である。したがって、この状態から縫い針3が上昇して固定部材3aが針当接部材36を押し上げる場合、縫い針3が上死点に到達するまでに針当接部材36を押し上げる高さは、生地Sの厚さが薄い場合に比べて短くなる。
図11は、生地Sの厚さが異なる場合の第1光センサ34からの出力を模式的に示す図である。
図11の左側が生地Sの厚さが薄い場合の出力、
図11の右側が生地Sの厚さが厚い場合の出力を示している。
図11に示すように、生地Sの厚さが厚い場合、第1光センサ34により出力されるパルス信号の数は、生地Sの厚さが薄い場合に比べて少なくなる。
【0042】
この原理に基づいて、例えば生地Sを配置しない場合のパルス信号の数を予め計測しておき、計測結果を記憶部20に記憶させる。解析部41は、生地Sが配置される場合において発生するパルス信号の数を、記憶部20に記憶されるパルス信号の数と比較することで、生地Sの厚さを算出することができる。
【0043】
保持部駆動制御部42は、解析部41の解析結果等に基づいて、保持部11の駆動を制御する。保持部駆動制御部42は、保持部11の駆動開始のタイミング、駆動量、駆動方向、駆動速度等を制御する。保持部駆動制御部42は、記憶部20に記憶される縫製プログラム等に基づいて保持部11の駆動を制御してもよい。駆動部12は、保持部駆動制御部42の制御に基づいて保持部11を駆動する。
【0044】
針駆動制御部43は、信号出力部15から信号を出力する動作を制御する。針駆動制御部43は、位置検出部13の検出結果に基づいて、押さえ部材33が生地Sから離れている期間内において、生地Sの厚さ、前期間における保持部11の駆動量に応じて縫い針3の移動速度を調整することができる。
【0045】
記憶部20は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部20は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。
【0046】
制御部16では、処理部19においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば記憶部20に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御部16は、各種の情報処理を実行する情報処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、制御部16とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御部16と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0047】
次に、上記のように構成されたミシン1及びミシン外付けユニット10を用いたボタンホールの形成方法の一例を説明する。まず、作業者は、プーリ8を回転させて縫い針3を上昇位置に配置させ、ミシン外付けユニット10を装着する。この場合、作業者は、ミシン1のベッド7に筐体10Aを装着する。作業者は、ベッド7において予め設定された位置にネジ等で固定することにより筐体10Aを装着することができる。筐体10Aを装着することにより、筐体10Aから突出した保持部11の下板21及び上板22の開口部21a、22aが縫い針3の直下に配置される。
【0048】
また、作業者は、ミシン1のうちフットペダルを接続するコネクタに信号出力部15を接続する。これにより、縫い針3を駆動する針駆動信号が信号出力部15からミシン1に供給される。
【0049】
また、作業者は、ミシン1に装着される押さえ板を取り外し、押さえ板が装着されていた箇所に位置検出部13を装着する。なお、位置検出部13を装着することにより、押さえ板に代えて押さえ部材33が配置される。
【0050】
上記のようにミシン外付けユニット10を装着した後、操作パネル14の入力部17によりボタンホールのパターン等の設定事項を入力する。作業者は、設定事項を入力した後、動作開始の操作を入力する。この入力があった場合、制御部16において、保持部駆動制御部42は、ボタンホールのパターン等の設定事項に基づいて、最適な初期位置に保持部11を移動させる。当該初期位置については、ボタンホールの設定事項に対応付けて記憶部20に記憶させておくことができる。保持部駆動制御部42は、記憶部20に記憶された情報に基づいて保持部11を移動させることができる。
【0051】
保持部11が初期位置に移動した後、作業者は、保持部11に縫製対象物である生地Sを保持させる。作業者は、クランプ機構23を操作して上板22を下板21から上方に離した状態とする。この状態で、作業者は、生地Sのうちボタンホールを形成するための縫い初めの位置が縫い針3の直下に配置されるように生地Sの位置を調整する。生地Sに予め縫い初めの位置をマークしておくことで、生地Sの位置合わせが容易となる。作業者は、プーリ8を回転させて縫い針3を下降させて、縫い初めの位置と縫い針3の位置とを確認してもよい。生地Sの位置を合わせた後、作業者は、クランプ機構23を操作して上板22を下板21に押し付けた状態とする。これにより、生地Sが下板21と上板22とで保持される。
【0052】
生地Sを保持した後、作業者は、再度動作開始の操作を入力する。この入力があった場合、制御部16において、針駆動制御部43は、縫い針3を昇降移動させる針駆動信号を信号出力部15からミシン1に出力するように制御する。ミシン1は、信号出力部15から出力される針駆動信号が供給される。ミシン1は、当該針駆動信号に基づいて縫い針3を昇降させる。縫い針3の昇降に対応して押さえ部材33が昇降する。押さえ部材33は、縫い針3が生地Sに刺さっている期間には生地Sを押さえ、縫い針3が生地Sから抜けて上昇する場合に縫い針3と一体で上昇する。このため、生地Sの位置ズレが抑制される。
【0053】
縫い針3が昇降することにより、位置検出部13の第1光センサ34及び第2光センサ35により縫い針3及び押さえ部材33の移動が検出される。位置検出部13は、押さえ部材33が生地Sを押さえている状態では、第1光センサ34からは一定の値の電気信号が出力される。一方、縫い針3が上昇して生地Sから抜けることで固定部材3aにより針当接部材36が押し上げられ、押さえ部材33が生地Sから離れた状態では、第1光センサ34からはパルス状の電気信号が出力される。したがって、解析部41は、第1光センサ34の検出結果がパルス状の電気信号である場合、押さえ部材33が生地Sから反れた状態であると判断する。
【0054】
保持部駆動制御部42は、生地Sに予め設定されたボタンホールのパターンが形成されるように、縫い針3の昇降に伴って駆動部12に保持部11の駆動を行わせる。
図12は、駆動部12による駆動の一例を模式的に示す図である。
図12に示すように、保持部駆動制御部42は、解析部41の解析結果に基づいて、押さえ部材33が生地Sを押さえている期間には保持部11の駆動を行わせない。また、保持部駆動制御部42は、解析部41の解析結果に基づいて、押さえ部材33が生地Sから離れている期間に保持部11の駆動を行わせる。この制御により、押さえ部材33と保持部11との干渉を避けることができる。
【0055】
また、保持部駆動制御部42は、保持部11の駆動を開始するタイミングを変更可能である。当該タイミングの変更は、例えば作業者による設定に基づいて行ってもよいし、タイミングを変更する場合のトリガーとなる情報を記憶部20に記憶させておき、当該情報に基づいてタイミングを自動的に変更してもよい。
【0056】
また、針駆動制御部43は、押さえ部材33が生地Sから抜けている期間内において、縫い針3の移動速度を調整することができる。
図13は、縫い針3の移動速度を調整する場合の例を模式的に示している。
図12に示すように、針駆動制御部43は、縫い針3の移動速度を低速V1と高速V2との間で段階的に調整することができる。
図13では2段階に調整する例を挙げているが、3段階以上に調整可能であってもよい。
【0057】
針駆動制御部43は、例えば生地Sの厚さに応じて、縫い針3の移動速度を調整してもよい。生地Sの厚さが厚い場合、押さえ部材33が生地Sから離れてから戻るまでの距離が短くなる。したがって、保持部11を押さえ部材33と干渉しないように移動させるには、生地Sの厚さが薄い場合に比べて高速で移動させる必要がある。これに対して、針駆動制御部43により縫い針3の移動速度を低速V1に設定することで、保持部11の移動速度を変更することなく、保持部11と押さえ部材33との干渉を回避できる。
【0058】
また、針駆動制御部43は、保持部11の駆動量に応じて縫い針3の移動速度を調整してもよい。保持部11の駆動量が大きい場合、移動距離が長くなるため、保持部11を押さえ部材33と干渉しないように移動させるには、保持部11の駆動量が小さい場合に比べて高速で移動させる必要がある。これに対して、針駆動制御部43により縫い針3の移動速度を低速V1に設定することで、保持部11の移動速度を変更することなく、保持部11と押さえ部材33との干渉を回避できる。
【0059】
保持部駆動制御部42は、生地SにX方向に沿った縫い目を形成する場合には、保持部11の開口部21a、22aのうちX方向に延びる部分を縫い針3の下方に配置して保持部11をX方向に移動させる。また、保持部駆動制御部42は、生地SにY方向に沿った縫い目を形成する場合には、保持部11の開口部21a、22aのうちY方向に延びる部分を縫い針3の下方に配置して保持部11をY方向に移動させる。例えば、作業者が最初に動作開始の操作を入力した場合や、保持部11の移動方向をX方向とY方向とで切り替える場合等において、保持部駆動制御部42は、保持部11を所定の原点位置に移動させる動作を行う。
【0060】
保持部11の原点位置の切り替え動作を行う場合、保持部駆動制御部42は、縫い針3が上昇して上昇位置に配置された場合に保持部11の移動を開始させる。縫い針3が上昇位置よりも下方に配置される場合、第2光センサ35からは光を検出しない状態を示す低い値の信号が出力される。縫い針3が上昇して上昇位置に配置されると、第2光センサ35からは光を検出した状態を示す高い値の信号が出力される。したがって、解析部41は、第2光センサ35の検出結果が高い値の電気信号である場合、縫い針3が上昇位置に到達したと判断する。
【0061】
保持部駆動制御部42は、解析部41の解析結果に基づいて、縫い針3が上昇位置に配置された場合に保持部11の原点位置を切り替えるように駆動部12を制御する。この制御により、保持部11の原点位置を切り替える際に、縫い針3と保持部11との干渉を確実に避けることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るミシン外付けユニット10は、生地Sを保持する保持部11と、ミシン1のベッド7に着脱可能であり、保持部11をベッド7の上面7aに沿って駆動する駆動部12と、ミシン1の縫い針3の上下方向への移動に対応して上下方向に移動し、縫い針3が生地Sに刺さっている期間に生地Sを押さえ、縫い針3が生地Sから抜けて上昇する場合に縫い針3と一体で上昇する押さえ部材33と、押さえ部材33の上下方向の位置を検出する位置検出部13と、ミシン1に信号を出力する信号出力部15と、縫い針3を駆動する針駆動信号を信号出力部15からミシン1に出力可能であり、位置検出部13の検出結果に基づいて、保持部11及び縫い針3の少なくとも一方の駆動を制御する制御部16とを備える。
【0063】
この構成によれば、位置検出部13により押さえ部材33の上下方向の位置を検出し、検出結果に基づいて駆動部12による保持部11及び縫い針3の少なくとも一方の駆動の駆動を制御するため、押さえ部材33の上下移動と生地Sの水平移動とを適切なタイミングで制御することができる。これにより、縫製の品質向上を図ることができる。
【0064】
本実施形態に係るミシン外付けユニット10において、制御部16は、位置検出部13の検出結果に基づいて押さえ部材33が生地Sから離れているか否かを検出し、押さえ部材33が生地Sから離れている期間に保持部11の駆動を行うように駆動部12を制御する。この構成によれば、押さえ部材33と保持部11との干渉をより確実に回避することができる。
【0065】
本実施形態に係るミシン外付けユニット10において、制御部16は、押さえ部材33が生地Sから離れている期間内に駆動部12を制御する際、生地Sの厚さに応じて縫い針3の移動速度を調整する。この構成によれば、生地Sの厚さに応じて縫い針3の移動速度を調整することで、押さえ部材33と保持部11との干渉をより確実に回避することができる。
【0066】
本実施形態に係るミシン外付けユニット10において、制御部16は、押さえ部材33が生地Sから離れている期間内に駆動部12を制御する際、当該期間における保持部11の駆動量に応じて縫い針3の移動速度を調整する。この構成によれば、保持部11の駆動量に応じて縫い針3の移動速度を調整することで、押さえ部材33と保持部11との干渉をより確実に回避することができる。
【0067】
本実施形態に係るミシン外付けユニット10において、位置検出部13は、押さえ部材33の上下方向の移動量を検出可能であり、制御部16は、移動量に基づいて生地Sの厚さを算出する。この構成によれば、生地Sの厚さを精度よく算出できる。
【0068】
本実施形態に係るミシン外付けユニット10において、位置検出部13は、縫い針3が生地Sから抜けて上昇する場合に縫い針3及び押さえ部材33と一体となって上昇するようにミシン1に支持され、上下方向に沿ってパターンが形成された移動体31と、上下方向への移動が規制された状態でミシン1に支持され、パターンの移動を検出することで移動体31の移動を検出する第1光センサ34及び第2光センサ35と、を有する。この構成によれば、移動体31と第1光センサ34及び第2光センサ35とを用いることで、縫い針3の位置を高精度に検出することができる。
【0069】
本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、ミシン外付けユニット10は、ボタンホールを形成する際に使用される場合を例に挙げて説明したが、この用途に限定されない。ボタンホール以外の他のパターンを形成する際にミシン外付けユニット10が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0070】
S…生地、P1…第1位置、P2…第2位置、R1,R2,R3,R1~R3…原点位置、ST1,ST2,ST3…状態、1…ミシン、2…ミシンヘッド、3…針、3a…固定部材、4…針棒、5…針板、6…針孔、7…ベッド、7a…上面、8…プーリ、10…ミシン外付けユニット、10A…筐体、11…保持部、12…駆動部、13…位置検出部、14…操作パネル、15…信号出力部、16…制御部、17…入力部、18…表示部、19…処理部、20…記憶部、21…下板、21a,22a…開口部、21b,22b…第1部分、21c,22c…第2部分、22…上板、23…クランプ機構、31…移動体、32…支持部、33…部材、34…第1光センサ、35…第2光センサ、36…針当接部材、37…連結部材、38…第1遮光部材、38a,39a…遮光パターン、39…第2遮光部材、40…ばね部材、41…解析部、42…保持部駆動制御部、43…針駆動制御部