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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078289
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ブース用構造体
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0314 20190101AFI20240603BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F24F1/0314
F24F5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190737
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】田中 太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 徹
(72)【発明者】
【氏名】前田 真孝
(57)【要約】
【課題】ブースの内部空間を簡易的に空調し、ブースを使用するユーザに涼しい快適感を与える。
【解決手段】一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間ISをそれ以外の外部空間OSから区画する壁体3と、前記内部空間ISに供給するべく、相対的に温度が低下した空気Cを流通させる第一ダクト91と、前記第一ダクト91を流れる空気と比較して相対的に温度が上昇した空気Hを流通させ、その空気Hを前記外部空間OSに排気する第二ダクト92と、前記第一ダクト91と前記第二ダクト92との間に介在し、第一ダクト91側から吸熱し第二ダクト92側に排熱する冷却素子93とを具備し、前記第一ダクト91、前記第二ダクト92及び前記冷却素子93を前記壁体3に内蔵したブース用構造体を構成した。前記第二ダクト92は、前記壁体3における前記外部空間OSに面する外壁板31若しくはこれに接触する部材36に接触ないし極近接している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間をそれ以外の外部空間から区画する壁体を備える、ブースを構築するための構造体であって、その壁体に、
前記内部空間に供給するべく、相対的に温度が低下した空気を流通させる第一ダクトと、
前記第一ダクトを流れる空気と比較して相対的に温度が上昇した空気を流通させ、その空気を前記外部空間に排気する第二ダクトと、
前記第一ダクトと前記第二ダクトとの間に介在し、第一ダクト側から吸熱し第二ダクト側に排熱する冷却素子と
を内蔵しているブース用構造体。
【請求項2】
一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間をそれ以外の外部空間から区画する壁体を備える、ブースを構築するための構造体であって、
前記内部空間に供給するべく、相対的に温度が低下した空気を流通させる第一ダクトと、
前記第一ダクトを流れる空気と比較して相対的に温度が上昇した空気を流通させ、その空気を前記外部空間に排気する第二ダクトと、
前記第一ダクトと前記第二ダクトとの間に介在し、第一ダクト側から吸熱し第二ダクト側に排熱する冷却素子と
を具備し、前記第二ダクトが前記壁体における前記外部空間に面する外壁板若しくはこれに接触する部材に接触ないし極近接しているブース用構造体。
【請求項3】
前記冷却素子が、ペルチェ効果を用いる熱電素子である請求項1または2記載のブース用構造体。
【請求項4】
前記第二ダクトを流通する空気が、前記第一ダクトを流通して前記内部空間に流入する空気の吹出口よりも上方に流れた後、前記外部空間に排気される請求項1または2記載のブース用構造体。
【請求項5】
前記壁体が、前記外部空間に露出する外壁板と、外壁板と隙間を隔てて対向し前記内部空間に露出する内壁板とを有し、
前記第一ダクト及び前記第二ダクトがともに前記外壁板と前記内壁板との間にあって、前記第一ダクトが内壁板に近い内側に位置し、前記第二ダクトが外壁板に近い外側に位置している請求項1または2記載のブース用構造体。
【請求項6】
前記内部空間から空気を吸引しその空気を前記第一ダクトを流通させて再び内部空間に吹き出させるためのファンを設けた請求項1または2記載のブース用構造体。
【請求項7】
前記第一ダクトを流通した空気を前記内部空間に流入させるための吹出口を、その空気がブース内に滞在するユーザの身体に吹き当たるような位置に開設している請求項1または2記載のブース用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、執務や打ち合わせ等に使用されるブースを構築するための構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一人ないし少数人のユーザが入室できるブース(広辞苑第七版によれば、“小さく間仕切した小部屋。簡単につくった小部屋。”)を構成するべく用いられる什器として、移設可能な筐体や間仕切壁(パーティション)等の構造体が公知である(下記先行技術文献を参照)。とりわけ、筐体状の構造体は、外部の人声や騒音が内部空間に侵入することを抑制し、これを利用するユーザの作業への集中度を高め、能率の向上に寄与し得る。内部空間で発せられる音声が外部に漏洩することも防止できる。
【0003】
ところで、小部屋であるブースにユーザが滞在するとき、その内部空間の温度は、ビルのフロア等の大きく開けた外部空間に比して昇温する傾向にある。それは例えば、ユーザ自身の体温や、ユーザが持ち込んだ情報通信機器等の排熱に起因する。夏期等には、ブース内でユーザが不快感を覚える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2022-007393号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“WORKPOD(ワークポッド、登録商標)”,コクヨ総合カタログ2022年版ファニチャー編,コクヨ株式会社,令和3年12月,p.52-53
【非特許文献2】“fore(フォーレ、登録商標)”,コクヨ総合カタログ2022年版ファニチャー編,コクヨ株式会社,令和3年12月,p.54-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブースの内部空間を簡易的に空調し、ブースを使用するユーザに涼しい快適感を与えることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブース用構造体は、一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間をそれ以外の外部空間から区画する壁体を備える、ブースを構築するための構造体であって、その壁体に、前記内部空間に供給するべく、相対的に温度が低下した空気を流通させる第一ダクトと、前記第一ダクトを流れる空気と比較して相対的に温度が上昇した空気を流通させ、その空気を前記外部空間に排気する第二ダクトと、前記第一ダクトと前記第二ダクトとの間に介在し、第一ダクト側から吸熱し第二ダクト側に排熱する冷却素子とを内蔵したことを特徴とする。
【0008】
並びに、本発明に係るブース用構造体は、一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間をそれ以外の外部空間から区画する壁体を備える、ブースを構築するための構造体であって、前記内部空間に供給するべく、相対的に温度が低下した空気を流通させる第一ダクトと、前記第一ダクトを流れる空気と比較して相対的に温度が上昇した空気を流通させ、その空気を前記外部空間に排気する第二ダクトと、前記第一ダクトと前記第二ダクトとの間に介在し、第一ダクト側から吸熱し第二ダクト側に排熱する冷却素子とを具備し、前記第二ダクトが前記壁体における前記外部空間に面する外壁板若しくはこれに接触する部材に接触ないし極近接していることを特徴とする。
【0009】
前記冷却素子は、例えばペルチェ効果を用いる熱電素子である。
【0010】
望ましくは、前記第二ダクトを流通する空気が、前記第一ダクトを流通して前記内部空間に流入する空気の吹出口よりも上方に流れた後、前記外部空間に排気される構造とする。
【0011】
前記壁体が、前記外部空間に露出する外壁板と、外壁板と隙間を隔てて対向し前記内部空間に露出する内壁板とを有し、前記第一ダクト及び前記第二ダクトがともに前記外壁板と前記内壁板との間にあって、前記第一ダクトが内壁板に近い内側に位置し、前記第二ダクトが外壁板に近い外側に位置している構造とすれば、第二ダクトを流通する温風(即ち、第一ダクトを流通した後内部空間に吹き出す冷風と熱交換を行う空気)が有する熱が効率的にブースの外部空間に放たれるようになる。その帰結として、ブースの内部空間を冷房する性能、効率をより高めることができる。
【0012】
また、前記内部空間から空気を吸引しその空気を前記第一ダクトを流通させて再び内部空間に吹き出させるためのファンを付設することが望ましい。
【0013】
前記第一ダクトを流通した空気を前記内部空間に流入させるための吹出口を、その空気がブース内に滞在するユーザの身体(特に、顔や上半身)に吹き当たるような位置に開設しておけば、少ない消費エネルギ(消費電力)でユーザの体感温度を引き下げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブースの内部空間を簡易的に空調し、ブースを使用するユーザに涼しい快適感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のブース用構造体の斜視図。
図2】同実施形態のブース用構造体の斜視図。
図3】同実施形態のブース用構造体の正断面図。
図4】同実施形態のブース用構造体の底盤側の要部を拡大して示す正断面図。
図5】同実施形態のブース用構造体の天板側の要部を拡大して示す正断面図。
図6】同実施形態のブース用構造体の壁体側の要部を拡大して示す正断面図。
図7】同実施形態のブース用構造体の壁体に内蔵する第一ダクト、第二ダクト及び冷却素子を示す斜視図。
図8】同実施形態のブース用構造体の壁体に内蔵する第一ダクト、第二ダクト及び冷却素子を示す平端面図。
図9】本発明の変形例の一に係るブース用構造体の斜視図。
図10】本発明の変形例の一に係るブース用構造体の壁体側の要部を拡大して示す正断面図。
図11】同実施形態のブース用構造体の壁体に内蔵する第一ダクト、第二ダクト及び冷却素子を示す斜視図。
図12】同実施形態のブース用構造体の壁体に内蔵する第一ダクト、第二ダクト及び冷却素子を示す平端面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図8に示す本実施形態のブース用構造体は、基本的には一人、あるいは二人程度の少人数のユーザが入室して、執務その他の作業に使用することを想定したものである。本ブース用構造体は、底盤1、周壁2、3、4及び天井5がその内部空間ISを囲繞して外部空間OSから隔絶する、筐体状の外形をなしている。即ち、平面視略方形状をなす底盤1が内部空間ISの下面側を閉塞し、底盤1の外周縁部より起立する周壁2、3、4が内部空間ISの周囲を取り囲み、周壁2、3、4の上端部に覆い被さる天井5が内部空間ISの上面側を閉塞している。周壁2、3、4は、内部空間ISをそれ以外の外部空間OSから区画する壁体となる。
【0017】
ブース用構造体が包有する内部空間ISには、ユーザが机またはテーブルとして利用することのできる天板6と、ユーザが腰を下ろすことのできる座7とが据え付けられている。
【0018】
図2図3及び図4に示すように、底盤1は、十分に補強され剛性を有する金属製のベース本体11と、ベース本体11の上に敷設される床板12と、床板12の上に載置される敷物13とを要素とする。底盤1(のベース本体11)の下向面には、建築床Fに接地するキャスタ111及びアジャスタ112が設けられる。キャスタ111は、本ブース用構造体を建築床Fに沿って移送可能とする。アジャスタ112は、キャスタ111とともに底盤1の四隅にある。アジャスタ112は、既知のそれと同様、ねじ軸を螺合進退させるねじ送り操作によって伸縮し、底盤1の下向面と建築床Fとの高さ方向に沿った離間距離を調整可能とする。各アジャスタ112は、建築床Fの不陸に対応するために有用である。
【0019】
加えて、底盤1の下向面には、ブース用構造体を前方から見た正面視において略L字形をなす固定具113が固設されている。固定具113は、本ブース用構造体の底盤1をアンカーボルト等(図示せず)を介して建築床Fに固定するために存在する。
【0020】
本ブース用構造体の周壁は、内部空間ISの前面側を閉塞する前壁2と、内部空間ISの側面側を閉塞する左右の側壁3と、内部空間ISの背面側を閉塞する背壁4とを有する。前壁2は、開閉可能なドアとなっている。このドア2の面板は、内部空間ISを外部から見通せるように透明である。正面視ドア2はその左側縁が蝶番23を介して左側壁3に連結され、水平軸回りに回動可能に支持されている。ドア2の右側部には、レバーまたはノブ21や、錠22が設けられており、これらがドア2の右側縁を右側壁3に係留して不要なドア2の開閉を抑止する。
【0021】
図4及び図5に示すように、壁体3は、十分に補強され剛性を有し外部空間OSに露出する金属製の外壁板31と、外壁板31よりも内側にあって外壁板31と隙間を隔てて対向し内部空間ISに露出する内壁板32と、これら外壁板31と内壁板32との間に配される吸音材33とを要素とする。外壁板31は、ブース用構造体の側面全域を被覆して閉鎖している。吸音材33は、外壁板31の内面における、補強材36や後述する冷却機構9のダクト91、92等が固設されていない部位に貼着される。吸音材33は、例えばスラブウレタン等の発泡材(クッション材)を用いて作製され、外部空間OSの方を向く外面側が外壁板31に接合し、内部空間ISの方を向く内面側が内壁板32に接近している。吸音材33の内面は平板ではなく凸凹になっており、その内面と内壁板32の外面との間に空隙が形成される。
【0022】
内壁板32は、これ自体が吸音パネルとしても機能するもので、例えば木製の板材の内面にウレタン材やグラスウール材等が添え設けられ、さらにそのウレタン材等を抱持する難燃性の張地が内部空間ISに表出するように張り設けられてなる。
【0023】
吸音材33や内壁板32の吸音性能について補足すると、ウレタン材の密度が高いほど(発泡倍率が低いほど)その吸音性能が高くなる。また、独立気泡の発泡体の方が連続気泡の発泡体よりも吸音性能が高くなる。
【0024】
背壁4は、側壁3と同様、吸音材及び/または吸音パネルを内装した防音構造のものとすることができる。
【0025】
図1ないし図3及び図5に示すように、天井5は、十分に補強され剛性を有する金属製の天井本体51と、天井本体51の下に敷設される天井パネル52とを要素とする。この天井5の中央部には、スプリンクラ53が設置されている。スプリンクラ53は、万が一火災の発生が検知された場合に、内部空間ISに消火用水または消化剤を噴射する。
【0026】
内部空間ISに設置される天板6は、正面視右側(前壁たるドア2が蝶番23に支持されていない側、レバー21等が設けられている側)の側壁3に支持され、内側方即ち左方に向けて延出している。天板6は、座7の上面である座面71よりも高位置にある。
【0027】
内部空間ISに設置される座7は、背凭れ8とともに、内部空間ISに入室したユーザが着席可能なソファを構成する。座7は、正面視左側の側壁3から内側方即ち右方に迫り出しており、背凭れ8は、同じく左側の側壁3に沿って設けられている。このソファに着席したユーザは、天板6に正対することとなり、これを簡易なデスクとして使用したり、テーブルとして当該天板6上に所要の物品を載置したりすることができる。
【0028】
図1ないし図4に示すように、座7は、内部が中空のボックス状をなし、その上面がユーザの臀部を載せる座面71となる。座7及び背凭れ8は、奥行方向に沿ったブース用構造体の内寸、即ち前壁たるドア2と背壁4との内法に略匹敵する大きさに拡張している。
【0029】
本ブース用構造体では、外部空間OSの空気Aを底盤1側から内部空間ISに取り入れ、内部空間ISにおいて空気Aを下方から上方に流通させて天井5側から排出することで、ユーザが滞在する内部空間ISを換気する。
【0030】
ブース用構造体の底盤1は、建築床Fに接地したキャスタ111及び/またはアジャスタ112を介して建築床Fから浮上している。そして、そのベース本体11の正面視左側方、下方の外部空間OSに開口している部位に、ファン14が設置されている。このファン14は、下方から空気Aを吸引して上方に吐出する。また、床板12及び敷物13における、ファン14の直上に位置する箇所に、これらを上下に貫通する開口窓若しくは切欠15が開設されている。外部空間OSから(底盤1と建築床Fとの間隙を介して)吸入した空気Aは、その開口窓若しくは切欠15を通じて底盤1の上方、ひいてはブース用構造体1の内部空間ISへと供給する。
【0031】
座7は、下面が開口しその他の五面が閉塞した箱状体であり、平面視ファン14や開口窓若しくは切欠15を含む領域に上方から覆い被さるように配置される。この座配置領域にあるファン14並びに開口窓若しくは切欠15は、座7により隠蔽され、内部空間ISに入室したユーザがこれを視認することはない。
【0032】
その上で、座7の下端部にある四方枠状のベース72の側面、より具体的には本ブース用構造体の正面視における右側面に、当該ベース72を貫通する複数の孔若しくはスリット73が穿たれている。孔若しくはスリット73は、内部空間ISに設置される座7の内外を連通させる。上記のファン14は、座7の内と外部空間OSとを連通させる。総じて、座7の内に、ファン14から孔若しくはスリット73へと至る空気通路が形成されることになる。
【0033】
図4に示しているように、座7の内には、これを左右に区画するように設立された中間板74が存在する。座7の内向面及び中間板74の外表面には、吸音材75が貼着等して添え設けられる。吸音材75は、例えばスラブウレタン等の発泡材を用いて作製され、座7の内に臨む面が凸凹になっている。中間板74の上端は、座7の上部までは達しておらず、中間板74の上端と座面71との間に通気路76が存在している。
【0034】
図4中に矢印Aで表しているように、ファン14が外部空間OSから吸引した空気Aは、開口窓若しくは切欠15から座7内に流入し、中間板74を乗り越えるように上方に流れて通気路76を経由し、しかる後下方に流れて孔若しくはスリット73を通過して、ブース用構造体に入室したユーザが滞在する内部空間ISに流れ込む。
【0035】
追加的な案として、座7の内に、空気Aを清浄化する機能を発揮するオプション機器77を配置することもあり得る。オプション機器77の例として、空気A中の微小な塵、病原体等を捕捉するフィルタまたは空気清浄機、オゾンを発生させる消臭装置または滅菌装置、空気Aに紫外線を照射する滅菌灯等が挙げられる。このようなオプション機器77を座7内に配置する場合に、座7外(ブース用構造体に入室したユーザが所在する内部空間IS)から座7内に空気Aを再吸入する吸込口(図示せず)を、背凭れ8及び/または座7の目立ちにくい箇所に開設しておくことも好ましい。さすれば、座7の内と外との間で(ブース用構造体の内部空間ISで)空気Aを循環させながら、オプション機器77によりその空気Aを清浄化することが可能になる。
【0036】
図5に示すように、本ブース用構造体の天井5は、天井本体51と天井パネル52とによる二重壁構造をなしている。そして、その天井本体51の頂壁に、これを上下に貫通する複数の孔若しくはスリット54が穿たれている。孔若しくはスリット54は、頂壁の下方即ち天井5の二重壁構造の内と、頂壁の上方即ち天井5の上方の外部空間OSとを連通させる。
【0037】
天井パネル52に近接している、側壁3の内壁板32の上端部には、当該内壁板32を内外に貫通する開口窓若しくは切欠34が開設されている。しかして、天井5の内に、開口窓若しくは切欠34から、孔若しくはスリット54へと至る空気通路が形成される。天井5内には、空気を吸引して吐出する換気扇は設置されていない。
【0038】
ファン14が稼働している際には、外部空間OSからブース用構造体の内部空間ISに空気Aが供給される。このとき同時に、図5中に矢印Aで表しているように、内部空間ISの空気Aが開口窓若しくは切欠34から天井5内に流入し、孔若しくはスリット54を通過して外部空間OSに排気されて、内部空間ISの換気が行われる。従って、内部空間ISには、下方から上方に向かう安定した空気の流れAが生じることとなる。因みに、開口窓若しくは切欠34から、孔若しくはスリット54に至る空気通路は、万が一の火災発生時に排煙するための排煙口の役割を兼ねる。
【0039】
以降、本ブース用構造体が包有する内部空間ISの温度を調節するための空調機構9に関して述べる。本ブース用構造体では、周壁2、3、4により、内部空間ISと外部空間OSとを隔絶し、または内部空間ISを囲繞している。内部空間ISは比較的狭小であり、その内部空間ISの温度が、ビルのフロア等の大きく開けた外部空間ISに比して昇温する傾向にある。本ブース用構造体には、内部空間ISの温度を低下させ、また内部空間ISに滞在するユーザに向けて冷風を吹き出させてユーザの体感温度を下げる仕組みを実装している。
【0040】
図2図6ないし図8に示すように、空調機構9は、内部空間ISに供給するべき、相対的に温度が低下した空気Cが流通する第一ダクト91と、第一ダクト91を流れる空気Cと比較して相対的に温度が上昇した空気Hが流通する第二ダクト92と、第一ダクト91と第二ダクト92との間に介在し一方の空気Cと他方の空気Hとの間で熱交換を行う冷却素子93と、第一ダクト91を流通する空気Cを吸引し吐出して内部空間ISに吹き出させるためのファン94と、第二ダクト92を流通する空気Hを吸引し吐出して外部空間OSに排気するためのファン95とを具備する。
【0041】
空調機構9の構成要素のうちの少なくとも第一ダクト91、第二ダクト92及び冷却素子93は、本ブース用構造体の壁体3、より具体的には正面視右側の側壁3に内蔵している。図6ないし図8に示しているように、壁体3は、外壁板31と内壁板32とによる二重壁構造をなしており、その両者の間に少なくとも第一ダクト91、第二ダクト92及び冷却素子93を配置している。
【0042】
第一ダクト91及び第二ダクト92は何れも、熱伝導率の高い素材を用いて作製される。例えば、金属製(熱伝導率の高いアルミ合金等)の鋳造品や板金材の折曲成形品である。第一ダクト91及び第二ダクト92はそれぞれ、上下方向に伸長し、空気C、Hを流通させる一または複数の筒状の流通路を内包する。ダクト91、92は何れも、上下方向即ち空気C、Hの流通方向に沿って延伸し空気C、Hが通過可能な溝孔が開設または穿設されているものである。ダクト91、92は、互いに平行に延出する多数のフィンを備えたヒートシンクのようなものであることがある。図8に示す例では、フィンが壁体3の厚み方向、つまりは外壁板31と内壁板32とが対向する方向(外壁板31及び内壁板32が拡張する方向と交差ないし直交する方向)に沿って延出している。それらフィンの間が、空気C、Hの流通路となる。ダクト91、92内を流通する空気C、Hは、当該ダクト91、92内の溝孔の内周(フィン等)に触れつつ流れ、(冷却素子93の作用もあって)ダクト91に吸熱されて冷却されたり、ダクト92から受熱して昇温したりする。
【0043】
第一ダクト91及び第二ダクト92は、壁体3内で、当該壁体3の厚み方向に沿って隣接するように並設する。第一ダクト91は内壁板32に近い内側に、第二ダクト92は外壁板31に近い外側に配置する。第一ダクト91と第二ダクト92とは、直に接触していない。それら第一ダクト91と第二ダクト92との間には、薄板状をなす冷却素子93を挟み込むように配設している。両ダクト91、92間に介在する冷却素子93は、これに通電することにより、第一ダクト91に接触する面から吸熱し(当該面は冷却される)、第二ダクト92に接触する面から排熱する(当該面が発熱する)。冷却素子93は、第一ダクト91内を流通する空気Cを冷やし、その代わりに第二ダクト92を流通する空気Hを温めるという熱交換作用を営む。
【0044】
冷却素子93は、典型的にはいわゆるペルチェ素子(ペルチェ効果を用いた熱電素子)である。尤も、ペルチェ素子以外にも、例えば“半導体ヘテロ構造を用いた新しい原理の高効率冷却デバイス”( HYPERLINK "https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3164/" https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3164/ 国立大学法人東京大学生産技術研究所のプレスリリース。発表者は平川一彦氏(東京大学生産技術研究所光物質ナノ科学研究センター教授)及びベスコン・マーク氏(LIMMS/CNRS-IIS(UMI2820)国際連携研究センター国際研究員)他が現在研究開発されており、それらを冷却素子93として採用することも考えられる。
【0045】
図8に示しているように、第二ダクト92は、壁体3の外壁板31、及び/または、外壁板31の内面に接触した部材である補強材36等に接触ないし極近接している。補強材36は、外壁板31の内面に溶接等により接合し上下または前後に伸びるチャネル状をなす。外壁板31及び/または補強材36は、金属製(熱伝導率の高い鋼板やステンレススチール合金等)の鋳造品や板金材の折曲成形品である。以上は、(第一ダクト91を流通する空気Cと熱交換する)第二ダクト92内の空気Hを効率よく放熱せしめる、要するにブースの内部空間ISの熱を外部空間OSに効率よく逃がすための構造である。第二ダクト92内の空気Hが持つ熱を、外壁板31を介して外部空間OSに発散させるのである。
【0046】
翻って、第一ダクト91は、第二ダクト92と比較して、外壁板31から離反している。これは、折角冷却素子93により冷却した第一ダクト内の空気Cが受熱して昇温することを避け、エネルギ効率の悪化を抑制する意図である。なお、第一ダクト91と、外壁板31及び/または補強材36との間に、ガラス繊維、フェルト、樹脂発泡材等を素材とする断熱材を挟み込んでも構わない。そのような断熱材は当然、ダクト91、92自体や外壁板31、補強材36等よりも熱伝導率が十分に低い。但し、第一ダクト31と外壁板31及び/または補強材36とを接触させることを禁ずるわけではない。
【0047】
既に述べた通り、第一ダクト91、第二ダクト92及び冷却素子93は壁体3に内蔵、即ち内壁板32と外壁板31との間に配する。これらダクト91、92及び冷却素子93は、内壁板32に遮蔽(隠蔽)されるので、ブースの内部空間ISに滞在するユーザから(冷風Cの吹出口37や吸入口38に設けたファン94からわざわざ覗き込むようなことをしない限り)視認困難である。
【0048】
第一ダクト91を流通する空気Cは、内壁板32に開設した吸入口38に付設しているファン94により、内部空間ISから壁体3内に吸引する。吸入口38の形状は、開口窓、複数の孔若しくはスリットである。吸入口38及びファン94は、第一ダクト91の上端近傍またはそれよりも高い位置にあって、ブース用構造体の内部空間ISと壁体3内とを連通し、内部空間ISの空気Cを内壁板32と外壁板31との間、さらには第一ダクト91内へと導く。ファン94は、例えば、その羽の回転軸の方向即ち壁体3の厚み方向に沿って内部空間ISから空気Cを吸込み、同回転軸と交差ないし直交する方向に沿って空気Cを吐出するブロワファン(または、シロッコファン)や遠心ファンである。ファン94は、空気Cを第一ダクト91の上端側から第一ダクト91内に送り込む。吸入口38及びファン94は、内部空間ISに滞在するユーザが容易に視認できるように露出している。尤も、ファン94を壁体3に内蔵、即ち内壁板32と外壁板31との間に配置し、ファン94が内壁板32に遮蔽(隠蔽)されてユーザから視認困難となるようにしても構わない。
【0049】
第一ダクト91を流通する空気Cは、相対的に温度が低下する冷たい(と言っても、極端には冷やされない)空気であり、第一ダクト91を上方から下方に向かって流通する。この空気Cは、内部空間ISの空気に由来し、第一ダクト91の上端側から第一ダクト91内に流入し、下端側に向かって流れる過程で冷却素子93により冷却される。その後、空気Cは、第一ダクト91の下端側と連通し壁体3の内壁板32を貫通する吹出口37を通じて、ブースの内部空間ISに吹き出す。吹出口37は、壁体3における天板6の上方、第一ダクト91の下端近傍の箇所に開設している。この吹出口37から吹き出す冷風Cは、内部空間ISに滞在し、天板6や座7を使用しながら作業を行うユーザの身体、特に顔や上半身等に吹き当たる。
【0050】
図6に示しているように、壁体3内における、第一ダクト91を流れた後吹出口37から内部空間ISに吹き出そうとする空気Cの通り道の直下の箇所には、水受け39を設けてある。水受け39は、冷やされた空気C中に含まれる水分が凝結して生じる凝縮水を受け止めて貯留し、凝縮水が下方に滴下して漏出することを防ぐ役割を担う。
【0051】
本ブース用構造体によれば、壁体3の内と外との間で、並びにブースの内部空間ISにおいて、空気Cを循環させながら、空調機構9によりその空気Cを冷却することが可能になる。空気Cを内部空間ISから吸込み再び内部空間ISに向けて吐出するファン94は、ユーザに向けて冷風Cをある程度以上の強さ、風量で吹き当て、ユーザの体感温度を効果的に低下させる。
【0052】
第二ダクト92の下端は、第一ダクト91の下端よりも下方に位置している。第二ダクト92の下端を、本ブース用構造体の底盤1近傍まで伸長させることも好ましい。図2及び図3に示すように、本実施形態では、底盤1のベース本体11の正面視右側方に、ベース本体11を貫通し下方の外部空間OSに開口する窓、複数の孔若しくはスリット16を穿ってある。窓、孔若しくはスリット16は、外部空間OS、換言すれば底盤1と建築床Fとの間隙を、正面視右側の壁体3の内部に連通させるもので、底盤1下の外部空間OSの空気Hを第二ダクト92内に導入するために機能する。
【0053】
第二ダクト92を流通する空気Hは、壁体3に内蔵している、即ち内壁板32と外壁板31との間に配置したファン95により、第二ダクト92内へと導く。但し、ファン95は必須ではない。ファン95は、第一ダクト92の下端近傍またはそれよりも低い位置にある。ファン95は、例えば、その羽の回転軸の方向即ち壁体3の厚み方向に沿って壁体3内の空気Hを吸込み、同回転軸と交差ないし直交する方向に沿って空気Hを吐出するブロアファンや遠心ファンである。ファン95は、外部空間OSから(底盤1と建築床Fとの間隙を介して)壁体3内に吸入した空気Hを、第二ダクト92の下端側から第二ダクト92内に送り込む。ファン95は、内壁板32に遮蔽(隠蔽)され、内部空間ISに滞在するユーザから視認困難である。
【0054】
第二ダクト92の上端は、第一ダクト91の上端よりも上方に位置している。第二ダクト92の上端を、本ブース用構造体の天井5近傍まで伸長させることも好ましい。冷却素子93による熱交換を経て冷却した空気Cの流通経路と、昇温した空気Hの流通経路とは、隔絶している。ファン94が後者の空気Hを直接吸引することもなければ、ファン95が前者の空気Cを直接吸引することもなく、後者の空気Hが前者の空気Cに混交することは抑制される。
【0055】
第二ダクト92を流通する空気Hは、相対的に温度が上昇する温かい(と言っても、極端には温められない)空気であり、第二ダクト92を下方から上方に向かって流通する。この空気Hは、壁体3内の、即ち外壁板31と内壁板32との間に存在する空気に由来し、第二ダクト92の下端側から第二ダクト92内に流入し、上端側に向かって流れる過程で冷却素子93により昇温される。その後、空気Hは、空気Aとともに、第二ダクト92の上端側と連通し天井本体51の頂壁を貫通する孔若しくはスリット54を通じて、ブース用構造体外の空間OSに排出される。
【0056】
ファン95は、ブースの外部空間OSより空気Hを壁体3内に吸込み、第二ダクト92を流れて昇温した空気Hを内部空間ISに流入させることなく、天井5から外部空間OSに向けて吐出する。第二ダクト92から流出した空気Hは、壁体3内を外壁板31及び/または補強材36に触れながら上昇し、その際にも放熱がなされる。ファン95の存在により、昇温した空気Hを冷却した空気Cに混交させることなく外部空間OSに排気することがより容易になる。
【0057】
本実施形態では、一人ないし複数人のユーザが滞在する内部空間ISをそれ以外の外部空間OSから区画する壁体3と、前記内部空間ISに供給するべく、相対的に温度が低下した空気Cを流通させる第一ダクト91と、前記第一ダクト91を流れる空気Cと比較して相対的に温度が上昇した空気Hを流通させ、その空気Hを前記内部空間ISを経由させずに前記外部空間OSに排気する第二ダクト92と、前記第一ダクト91と前記第二ダクト92との間に介在し、第一ダクト91側から吸熱し第二ダクト92側に排熱する冷却素子93とを具備し、前記第一ダクト91、前記第二ダクト92及び前記冷却素子93を前記壁体3に内蔵したブース用構造体を構成した。
【0058】
本実施形態によれば、ブースの内部空間ISの温度を2℃ないし3℃程度引き下げることができ、さらに冷たい空気Cをユーザの身体に当たるように送風して、内部空間ISに滞在するユーザの体感温度を引き下げることができる。つまり、ユーザに涼やかな快適さを提供できる。
【0059】
第一ダクト91、第二ダクト92及び冷却素子93を壁体3に内蔵しているので、ブースの内部空間IS側にこれらが突出せず、ユーザに圧迫感を与えず、ブースとしての利便性も確保される。
【0060】
前記第二ダクト92は、前記壁体3における前記外部空間OSに面する外壁板31に接触ないし極近接している。対して、前記第一ダクト91は、第二ダクト92に比して当該外壁板31から離反している。より具体的には、前記第一ダクト91及び前記第二ダクト92がともに前記外壁板31と前記内壁板32との間にあって、前記第一ダクト91が内壁板32に近い内側に位置し、前記第二ダクト92が外壁板31に近い外側に位置している。この構造により、冷却素子93が折角冷却した第一ダクト91内の空気Cが受熱して昇温することが回避される。一方で、第二ダクト92内の空気Hは外壁板31若しくはこれに接触する部材36により放熱される。総じて、エネルギ効率の向上に寄与し得る。
【0061】
前記冷却素子93として、ペルチェ効果を用いる熱電素子を採用している。周知のヒートポンプ式(冷媒圧縮型)の空調機構では、ポンプ及びこれを駆動するモータの振動や騒音が大きくなるが、ペルチェ素子のような冷却素子93であれば、そのような振動、騒音を発生させない、
前記第二ダクト92内の相対的に昇温した空気Hは浮上する。その対流を利用して、この空気Hを天井5経由で外部空間OSに排出する。冷風Cが温風Hにより再び温められることを自然に抑制し、エネルギ効率をより一層高める。
【0062】
前記内部空間ISから空気Cを吸引しその空気Cを前記第一ダクト91を流通させて再び内部空間ISに吹き出させるためのファン94を設けている。また、前記第一ダクト91を流通した空気Cを前記内部空間ISに流入させるための吹出口37を、天板6のやや上、空気Cがブース内に滞在するユーザ(の顔や上半身)に吹き当たるような位置に開設している。これにより、ユーザの体感温度を効果的に引き下げることができる。
【0063】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、ダクト92を流通する温風H、即ちダクト91を流通しブースの内部空間ISに供給される冷風Cと熱交換するべき空気Hを、ブースの外部空間OS(特に、底盤1と建築床Fとの間)から取り込んでいた。これに対し、空気Hを外部空間OSから取り込まず、内部空間ISから取り込んでもよい。その場合にも、ダクト92を通過して昇温した空気Hを、内部空間ISを経由させずに外部空間OS(特に、天井5の上方)に排出することに変わりはない。
【0064】
上記実施形態のブース用構造体は筐体状のものであったが、図9に例示するように、内部空間ISの上方が閉塞されておらず、及び/または、内部空間ISの前方や左右の側方の何れか少なくとも一方が周壁により閉塞されていない、いわゆるパーティション形のブース用構造体を作製することも考えられる。この場合、内部空間ISと外部空間OSとを区画する壁体の一部をなす側壁30に、内部空間ISの温度を調節するための空調機構9を内蔵することもできる。上記実施形態と同様、ダクト91、92及び冷却素子93は、側壁30における外部空間OSに面する外壁板(図示せず)と、内部空間ISに面する内壁板302との間に内装する。冷風Cと熱交換し温風となる空気Hは、外部空間OS(特に、側壁30の下端と建築床Fとの間)から取り込み、内部空間ISを経由させずに外部空間OS(特に、側壁30の上端部または外壁板の上方の部位)から排出することが好ましい。
【0065】
上記実施形態では、第一ダクト91及び第二ダクト92を、壁体(側壁)3の厚み方向に沿って隣接して並設する構造としていたが、図10ないし図12に例示するように、第一ダクト91及び第二ダクト92を、壁体3内で外壁板31及び内壁板32の拡張する方向に沿って隣接して並設してもよい。この場合にも、第一ダクト91と第二ダクト92との間に、ペルチェ素子等の冷却素子93を挟み込むことに変わりはない。第一ダクト91と第二ダクト92とが、外壁板31及び内壁板92の拡張する方向に沿って隣接して並んでいれば、ブース用構造体の壁体3の厚みを徒に肥大化させず、より薄くすることが可能となる。
【0066】
図10ないし図12に示す変形例に関して補記する。第一ダクト91と第二ダクト92とは、壁体3の外壁板31及び内壁板32が拡張する奥行方向に沿って隣接している。だが、第一ダクト91と第二ダクト92とは、直に接触しておらず、それら第一ダクト91と第二ダクト92との間に、薄板状をなす冷却素子93を挟み込むように配設している。
【0067】
図12に示しているように、第二ダクト92は、壁体3の外壁板31、及び/または、外壁板31の内面に接触した部材である補強材36等に接触ないし極近接している。
【0068】
翻って、第一ダクト91は、第二ダクト92と比較して、外壁板31からも、外壁材31に隣接する部材である補強材36からも、若干ながら離反している。図12に示しているように、第一ダクト91と外壁板31との間には、僅少ながら空隙を設けている。これは、折角冷却素子93により冷却した第一ダクト内の空気Cが受熱して昇温することを避け、エネルギ効率の悪化を抑制する意図である。この空隙に、ガラス繊維、フェルト、樹脂発泡材等を素材とする断熱材を挟み込んでも構わない。
【0069】
第一ダクト91、第二ダクト92及び冷却素子93は壁体3に内蔵、即ち内壁板32と外壁板31との間に配設する。これらダクト91、92及び冷却素子93は、内壁板32に遮蔽(隠蔽)されるので、ユーザから(吹出口37や吸入口38からわざわざ覗き込むようなことをしない限り)視認困難である。
【0070】
第一ダクト91を流通する冷風Cは、壁体3内の空気、即ち外壁板31と内壁板32との間に存在する空気に由来し、第一ダクト91の上端側から第一ダクト91内に流入し、下端側に向かって流れる過程で冷却素子93により冷却される。そして、第一ダクト91の下端側と連通し壁体3の内壁板32を貫通する吹出口37を通じて、ブース用構造体の内部空間ISに吹き出す。吹出口37は、右側の壁体3における天板6の上方、第一ダクト91の下端近傍の箇所に開設されている。
【0071】
加えて、空気Cを吸引し内部空間ISに向けて吐出するためのファン94を設置してある。ファン94により、内部空間ISに滞在するユーザに冷風Cをある程度以上の強さ、風量で吹き当て、ユーザの体感温度をより効果的に低下させることができる。ファン94は、内壁板32に開設した吹出口37に付設され、ブース用構造体の内部空間ISに(内部空間ISに滞在するユーザが容易に視認できるように)露出している。空気Cの吹出口37の近傍にファン94を設けていれば、低消費エネルギ(低消費電力)で内部空間ISに滞在するユーザ(の顔や上半身)に効率よく冷風Cを送り届け、または吹き当てることができる。吹出口37またはファン94の高さや冷風Cの向きもその辺り、天板6のやや上にある尤も、ファン94を壁体3に内蔵、即ち内壁板32と外壁板31との間に配置し、ファン94が内壁板32に遮蔽(隠蔽)されてユーザから視認困難となるようにしても構わない。
【0072】
また、内壁板32における、第一ダクト91の上端近傍の箇所に、当該内壁板32を貫通する吸入口38を開設してもよい。吸入口38の形状は、開口窓、複数の孔若しくはスリットである。吸入口38は、ブース用構造体の内部空間ISと壁体3内とを連通し、内部空間ISの空気を内壁板32と外壁板31との間、さらには第一ダクト91内へと導く。これにより、壁体3の内と外との間で(ブース用構造体の内部空間ISで)空気Cを循環させながら、空調機構9によりその空気Cを冷却することが可能になる。但し、吸入口38は必須ではない。
【0073】
第二ダクト92を流通する温風Hは、第二ダクト92を下方から上方に向かって流通する。この空気Hもまた、壁体3内の空気、即ち外壁板31と内壁板32との間に存在する空気に由来し、第二ダクト92の下端側から第二ダクト92内に流入し、上端側に向かって流れる過程で冷却素子93により昇温される。その後、空気Hは、空気Aとともに、第二ダクト92の上端側と連通し天井本体51の頂壁を貫通する孔若しくはスリット54を通じて、ブース用構造体外の空間OSに排出される。
【0074】
第二ダクト92の下端は、第一ダクト91の下端よりも下方に位置している。特に、第二ダクト92の下端は、ブース用構造体の底盤1近傍まで伸長していることが好ましい。温風となる空気Hは、底盤1のベース本体11を貫通し下方の外部空間OSに開口する窓、複数の孔若しくはスリットから壁体3内に取り入れる。また、第二ダクト92の上端は、第一ダクト91の上端よりも上方に位置している。特に、第二ダクト92の上端は、ブース用構造体の天井5近傍まで伸長していることが好ましい。上記の構造は、冷却素子93による熱交換を経て昇温した空気Hが第一ダクト91に吸引されることを抑制するためである。
【0075】
空気Hを吸引し天井5経由で外部空間OSに向けて吐出するためのファン95を設置することも好適である。ファン95により、昇温した空気Hを冷却した空気Cに混交させることなく外部空間OSに排気することが容易になる。ファン95は、壁体3に内蔵、即ち内壁板32と外壁板31との間に配置し、内壁板32に遮蔽(隠蔽)されてユーザから視認困難となるようにすることが好ましい。但し、ファン95は必須ではない。
【0076】
図1ないし図9に示した実施形態や図10ないし図12に示した変形例では、何れも、壁体3の内壁板32に吸入口38を開設し、内部空間ISからその吸入口38を通じて冷風となる空気Cを取り入れ第一ダクト91に流入させるようにしていた。だが、内壁板32に明示的な(または、比較的大きな)吸入口38を穿つことは必須ではない。
【0077】
例えば、壁体3が仕切るブースの内部空間ISと、壁体3内(即ち、外壁板31と内壁板32との隙間)との間の気密は、必ずしも完璧ではない。内壁板32が複数枚のパネル材から構成される場合におけるパネル材間の空隙や、パネル材とこれを支持する構造材(フレーム)との空隙を通じて、内部空間ISから壁体3内に冷風となる空気Cの一部または全部を取り入れ、第一ダクト91に流入させることがあり得る。冷風となる空気Cの一部または全部を、内壁板32と天井5との間に介在する開口窓若しくは切欠34を通じて取り入れることもあり得よう。
【0078】
ブースの外部空間OSと、壁体3内との間の気密もまた、必ずしも完璧ではない。空隙を通じて外部空間OSから壁体3内に冷風となる空気Cの一部または全部を取り入れ、第一ダクト91に流入させることもあり得る。
【0079】
何れにせよ、壁体3内の空気を第一ダクト91に流入させ、これを冷却素子93により冷却して得た冷風Cをブースの内部空間ISに吹き出させることに変わりはない。明示的な吸入口38を開設しないことの利点として、空気C、Hを吸込み吐出するファン94、95が発する騒音が吸入口38を通じて内部空間ISに伝わるのを抑制できることが挙げられる。
【0080】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0081】
3、30…壁体(周壁)
31…外壁板
32、302…内壁板
36…外壁板に接触する部材(補強材)
37…相対的に温度が低下した空気の吹出口
9…空調機構
91…第一ダクト
92…第二ダクト
93…冷却素子(ペルチェ素子)
94…空気の吸入口、及び相対的に温度が低下した空気を内部空間に向けて吐出するファン
C…相対的に温度が低下した空気の流れ
H…相対的に温度が上昇した空気の流れ
IS…ブースの内部空間
OS…外部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12