(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078302
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】熱交換器、製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240603BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 102Z
F28D15/04 E
F28D15/02 106G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190761
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】592128788
【氏名又は名称】ポーライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀志
(72)【発明者】
【氏名】田邊 重之
(72)【発明者】
【氏名】麻生 忍
(72)【発明者】
【氏名】貞方 和紀
(57)【要約】
【課題】厚み方向の寸法が抑制された熱交換器などを製造する。
【解決手段】本発明の熱交換器は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として蒸発器に環流させる熱交換器であって、蒸発器は、蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、本体に設けられた蒸発体および流路を覆う蓋体と、流路の底に設けられ流路内で本体および蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、を有し、案内部の流れ方向の長さは、流路の幅方向の長さより短い。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、
前記蒸発器は、
前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、
前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、
前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、
を有し、
前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短い、
熱交換器。
【請求項2】
前記案内部は、前記流れ方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記所定の間隔は、前記案内部の前記流れ方向の長さよりも長い、
請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記案内部は、前記幅方向における位置が互いに異なる前記案内部の組が前記流れ方向に複数並べて設けられる、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項5】
前記案内部の前記幅方向の長さは、前記本体の厚みよりも長い、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項6】
前記案内部は、前記本体の厚み方向において前記本体および前記蓋体を接続する、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項7】
前記案内部は、前記本体および前記蓋体の外側において前記流れ方向に沿って移動し前記案内部を加熱する加熱部によって加熱されることで前記本体および前記蓋体を接続する、
請求項6記載の熱交換器。
【請求項8】
前記案内部は、前記蒸発体が設けられた前記蒸発器の内部に設けられる、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項9】
前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器を有し、
前記案内部は、前記凝縮器の内部に設けられる、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項10】
前記蒸発体に形成された空孔の実効空孔径は、3.5μm乃至49μmである、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項11】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、
前記蒸発器は、
前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、
前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、
前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、
を有し、
前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短く、
前記案内部の前記幅方向の長さは、前記本体の厚みよりも長く、
前記案内部は、前記流路内で前記流れ方向に沿って所定の間隔で複数設けられるとともに、前記流れ方向の位置に応じて前記幅方向において互いに異なる位置に設けられ、
前記所定の間隔は、前記案内部の前記流れ方向の長さよりも長い、
熱交換器。
【請求項12】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器を製造する製造方法であって、
前記蒸発器は、
前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、
前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、
前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、
を有し、
前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短く、
前記本体に前記流路および前記案内部を形成する工程と、
前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を前記蓋体で覆う工程と、
前記本体および前記蓋体の外側において前記流れ方向に沿って移動し前記案内部を加熱する加熱部によって、前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持する前記案内部を加熱し、前記本体の厚み方向において前記本体および前記蓋体を接続する工程と、
を含む、
製造方法。
【請求項13】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器と、
を備える装置であって、
前記蒸発器は、
前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、
前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、
前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、
を有し、
前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短い、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設置角度の如何に関わらず効率的に発熱部品を冷却するべく、蒸発部、凝縮部、及び液戻り管の内部にそれぞれ設けられるとともに、毛細管力を生じさせるウィックを有するループ型ヒートパイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電子機器などの装置が小型化および高性能化することにともない、装置に設けられる発熱体の発熱密度が増大している。そして、例えば、装置の薄型化にともない、厚み方向の寸法を抑制しつつ、発熱体からの熱流束を除去する熱交換器などが求められている。
そこで、本発明は、厚み方向の寸法が抑制された熱交換器などを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、前記蒸発器は、前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、を有し、前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短い、熱交換器である。
ここで、前記案内部は、前記流れ方向に沿って所定の間隔で複数設けられているとよい。
また、前記所定の間隔は、前記案内部の前記流れ方向の長さよりも長いとよい。
また、前記案内部は、前記幅方向における位置が互いに異なる前記案内部の組が前記流れ方向に複数並べて設けられるとよい。
また、前記案内部の前記幅方向の長さは、前記本体の厚みよりも長いとよい。
また、前記案内部は、前記本体の厚み方向において前記本体および前記蓋体を接続するとよい。
また、前記案内部は、前記本体および前記蓋体の外側において前記流れ方向に沿って移動し前記案内部を加熱する加熱部によって加熱されることで前記本体および前記蓋体を接続するとよい。
また、前記案内部は、前記蒸発体が設けられた前記蒸発器の内部に設けられるとよい。
また、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器を有し、前記案内部は、前記凝縮器の内部に設けられるとよい。
また、前記蒸発体に形成された空孔の実効空孔径は、3.5μm乃至49μmであるとよい。
【0006】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、前記蒸発器は、前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、を有し、前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短く、前記案内部の前記幅方向の長さは、前記本体の厚みよりも長く、前記案内部は、前記流路内で前記流れ方向に沿って所定の間隔で複数設けられるとともに、前記流れ方向の位置に応じて前記幅方向において互いに異なる位置に設けられ、前記所定の間隔は、前記案内部の前記流れ方向の長さよりも長い、熱交換器である。
【0007】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器を製造する製造方法であって、前記蒸発器は、前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、を有し、前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短く、前記本体に前記流路および前記案内部を形成する工程と、前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を前記蓋体で覆う工程と、前記本体および前記蓋体の外側において前記流れ方向に沿って移動し前記案内部を加熱する加熱部によって、前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持する前記案内部を加熱し、前記本体の厚み方向において前記本体および前記蓋体を接続する工程と、を含む、製造方法である。
【0008】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体が設けられた蒸発器を有し、前記蒸発器から導かれた気相の作動流体を凝縮させ液相の作動流体として前記蒸発器に環流させる熱交換器と、を備える装置であって、前記蒸発器は、前記蒸発体が設けられるとともに作動流体の流路が板面に形成された板状の部材である本体と、前記本体に設けられた前記蒸発体および前記流路を覆う蓋体と、前記流路の底に設けられ前記流路内で前記本体および前記蓋体を支持するとともに、長手方向が作動流体の流れる流れ方向に沿って形成され作動流体を案内する案内部と、を有し、前記案内部の前記流れ方向の長さは、前記流路の幅方向の長さより短い、装置である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される技術によれば、厚み方向の寸法が抑制された熱交換器などを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るループ型ヒートパイプを示す概略構成図である。
【
図3】第1側板および第2側板の詳細構成図である。
【
図5】第1支持体および第2支持体の構成を示す図である。
【
図7】第1側板にウィックを形成する工程を示す図である。
【
図8】第2側板に接合材を形成する工程を示す図である。
【
図9】ウィックおよび接合材を接合する工程を示す図である。
【
図14】ループ型ヒートパイプを備える装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<ループ型ヒートパイプ1の概略構成>
図1は、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ1を示す概略構成図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1の構成を説明する。本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1は、熱交換器であり、例えば電子機器等に備えられる中央演算処理装置(CPU)などの発熱体10を、外部から動力を供給することなく冷却するため、作動流体を循環させるよう構成されている。
【0012】
詳細に説明すると、ループ型ヒートパイプ1は、作動流体が気化する際の潜熱を利用して発熱体10を冷却するため作動流体を蒸発させる蒸発器(Evaporator)101と、この蒸発器101で気化された作動流体を放熱して液化する凝縮器(Condenser)107とを有する。
【0013】
また、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器101で気化された作動流体を凝縮器107まで送る蒸気管(Vapor Line)105と、凝縮器107で液化された作動流体を蒸発器101まで送る液管(Liquid Line)109とを備えている。ループ型ヒートパイプ1内には液相および気相の間で相変化する作動流体が充填されている。なお、作動流体は、例えば、水、アルコール(例えばエタノール)、アンモニア、アセトン等が用いられる。
【0014】
<ループ型ヒートパイプ1の動作>
次に、
図1を参照して、ループ型ヒートパイプ1内の動作を説明する。
発熱体10において発生する熱は、蒸発器101に伝達される(矢印H1参照)。蒸発器101において熱を吸収した作動流体は気化し、蒸気管105を経て(矢印A1参照)凝縮器107へ送られる(矢印A2参照)。凝縮器107へ送られた作動流体は、熱を放出して(矢印H2参照)液化する。そして、液化した作動流体は、液管109を経て(矢印A3参照)再び蒸発器101へと送られる(矢印A4参照)。このようにループ型ヒートパイプ1は無電力流体デバイスとして機能する。付言すると、ループ型ヒートパイプ1は、流体の毛細管力を駆動源とした二相熱輸送デバイスである。
【0015】
<ループ型ヒートパイプ1の詳細構成>
図2は、ループ型ヒートパイプ1の分解斜視図である。
図3は、第1側板111および第2側板121の詳細構成図である。
次に、
図2および
図3を参照して、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1の詳細構成を説明する。
【0016】
本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ1は、概形が平板状である。
図2に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、概形が平板状の筐体100の内部にウィック130および接合材150を備える構成である。ここで、筐体100は、各々の概形が平板状である第1側板111および第2側板121を備える。また、ウィック130および接合材150は、各々の概形が平板状である。これらのウィック130および接合材150は、第1側板111および第2側板121に挟まれて設けられる。
【0017】
ここで、第1側板111は、各々正面視略長方形状の第1内面113および第1外面115を有する。また、第1側板111は、板面を貫通して形成された第1貫通孔1129を有する。この第1貫通孔1129は、第1側板111の板面略中央に形成された平面視略長方形状の孔である。
【0018】
また、第2側板121は、各々正面視略長方形状の第2内面123および第2外面125を有する。また、第2側板121は、板面を貫通して形成された第2貫通孔1229を有する。この第2貫通孔1229は、第2側板121の板面略中央に形成された平面視略長方形状の孔である。第2貫通孔1229は、第1側板111および第2側板121を重ねて配置したときに、第1貫通孔1129と互いに対向する位置に設けられる。さらに説明をすると、第1貫通孔1129および第2貫通孔1229が対向して貫通孔218を形成する。
【0019】
第1側板111および第2側板121は、例えば銅および銅合金、ステンレス、チタンおよびチタン合金などの金属材料により形成されるが、これらに限らない。また、第1側板111の第1内面113および第2側板121の第2内面123の間に、ウィック130および接合材150が積層して配置される。
【0020】
ここで、ループ型ヒートパイプ1においては、第1側板111および第2側板121を用いた熱拡散を可能とする。また、ループ型ヒートパイプ1は、例えば厚さ1mm以下などの厚みで概略が平板状に形成されている。また、ループ型ヒートパイプ1は、例えばスマートフォンなどの携帯端末や、クレジットカードなどの所謂プラスチックカードに設けることが可能な寸法で形成される。具体的には、ループ型ヒートパイプ1は、携帯端末に設ける態様においては、例えば全体で長さが100mm、幅が60mm、厚みが0.3mm以下の寸法で所謂薄板状に形成される。また、ループ型ヒートパイプ1は、プラスチックカードに設ける態様においては、例えば全体で長さが79mm、幅が52mm、厚みが0.3mm以下の寸法で所謂薄板状に形成される。さらに説明をすると、ループ型ヒートパイプ1は、例えば面方向における寸法(例えば、長さあるいは幅)の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.3%以下の厚みで形成される。
【0021】
なお、以下の説明においては、ループ型ヒートパイプ1の厚み方向、すなわち
図2における上下方向を、単に厚み方向ということがある。また、
図2における上下方向の下側を第1面側といい、
図2における上側を第2面側ということがある。また、ウィック130の蒸発器101において作動流体が移送される方向(流れる方向)、すなわち
図2における左下と右上との間で伸びる方向を、移送方向(流れ方向)ということがある。また、
図2における左下側を上流側といい、右上側を下流側ということがある。また、上下方向および位相方向と交差する方向、すなわち
図2における左上と右下の間で伸びる方向を、幅方向ということがある。また、
図2における左上側を一方側といい、右下側を他方側ということがある。
【0022】
さて、
図3(A)に示すように、第1側板111の第1内面113には第1凹部110が形成されている。第1凹部110は、第1内面113における第1貫通孔1129の外周に形成された環状の領域である。さらに説明をすると、第1凹部110は、第1側板111の第1内面113において環状に連続して設けられた、第1蒸発器領域112と、第1蒸気管領域116と、第1凝縮器領域117と、第1液管領域118と、第1開口領域119とを有する。
【0023】
また、
図3(B)に示すように、第2側板121の第2内面123には第2凹部120が形成されている。この第2凹部120は、第2内面123における第2貫通孔1229の外周に形成された環状の領域である。また、第2凹部120は、第1凹部110と鏡合わせ形状である。言い替えると、第1凹部110および第2凹部120は、鏡像対称の関係である。さらに説明をすると、第2凹部120は、第2側板121の第2内面123において環状に連続して設けられた、第2蒸発器領域122と、第2蒸気管領域126と、第2凝縮器領域127と、第2液管領域128と、第2開口領域129とを有する。
【0024】
ここで、第1側板111の第1内面113と、第2側板121の第2内面123とを合わせると、第1凹部110および第2凹部120とが対向する配置となる。この配置において、第1蒸発器領域112および第2蒸発器領域122が蒸発器101を形成する。同様に、第1蒸気管領域116および第2蒸気管領域126が、蒸気管105を形成する。第1凝縮器領域117および第2凝縮器領域127が、凝縮器107を形成する。第1液管領域118および第2液管領域128が、液管109を形成する。
【0025】
また、第1凹部110の第1底面114には、複数の第1支柱部211が形成されている。図示の例における第1支柱部211は、第1蒸発器領域112、第1蒸気管領域116、第1凝縮器領域117および第1液管領域118の各々に形成されている。また、第2凹部120の第2底面124には、複数の第2支柱部221が形成されている。図示の例における第2支柱部221は、第2蒸発器領域122、第2蒸気管領域126、第2凝縮器領域127および第2液管領域128の各々に形成されている。
【0026】
ここで、第1側板111の第1内面113と、第2側板121の第2内面123とを合わせると、第1支柱部211および第2支柱部221が対向する配置である。さらに説明をすると、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とが突き合わされた状態となる。このように第1支柱部211および第2支柱部221が突き合わされることにより、第1側板111の第1凹部110の第1底面114と、第2側板121の第2凹部120の第2底面124とが接触することが抑制される。すなわち、第1支柱部211および第2支柱部221が蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109の内部を支持する状態となる。言い替えると、第1支柱部211および第2支柱部221が、蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109の変形を抑制する。さらに説明をすると、第1支柱部211および第2支柱部221は、蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109の内部が負圧となることにより、蒸発器101などの内部に形成される作動流体の流路の閉塞や狭窄を防ぐ機能を有する。また、図示の例においては、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とが接合される。このことにより、第1側板111の第1内面113と、第2側板121の第2内面123とが離間(剥離)することが抑制される。なお、以下の説明においては、第1支柱部211および第2支柱部221の組み合わせを支柱210と呼ぶことがある。
【0027】
さて、図示の例における第1開口領域119および第2開口領域129は、第1側板111の第1内面113と、第2側板121の第2内面123とを接合した後、外部から第1凹部110および第2凹部120内への作動流体の注入を可能にする開口を形成する。付言すると、第1開口領域119および第2開口領域129により形成される開口は、作動流体の注入後に封止される。さらに説明をすると、説明の都合上、
図2などにおいては第1開口領域119および第2開口領域129が形成されているが、完成したループ型ヒートパイプ1においては、第1開口領域119および第2開口領域129は封止されている(
図1参照)。
【0028】
次に、第1蒸発器領域112および第2蒸発器領域122が形成する蒸発器101について説明をする。
まず、第1蒸発器領域112および第2蒸発器領域122の各々は、平面視略長方形である。したがって、第1蒸発器領域112および第2蒸発器領域122によって形成される蒸発器101の内部は、略長方体状の空間である。また、蒸発器101の内部には、ウィック130が配置される。このウィック130を配置することにより、蒸発器101の内部はウィック130を挟んで液管109側と蒸気管105側とに区画される。ここで、蒸発器101の内部においてウィック130よりも液管109側の空間は、液相の作動流体が収容される液溜め部160として機能する。また、蒸発器101の内部においてウィック130よりも蒸気管105側の空間は、気相の作動流体が通過する蒸気空間140として機能する。
【0029】
<蒸発器101の構成>
<ウィック130周辺の構成>
図4は、ウィック130周辺の構成を示す図である。
次に、
図3および
図4を参照しながら、ウィック130およびウィック130周辺の構成について説明をする。
【0030】
まず、ウィック130は、銅などにより形成された多孔質金属(ポーラスメタル)などの多孔質体により形成される。このウィック130は、作動流体に毛細管力を発生させ、作動流体を移動させる。ウィック130の実効空孔径は、0.1~50μmである。好ましくは、ウィック130の実効空孔径は、3.5~49μmである。より好ましくは、ウィック130の実効空孔径は、5μm~45μmである。さらに好ましくは、ウィック130の実効空孔径は、20μm~40μmである。また、ウィック130の空孔率は、20~90%である。好ましくは、ウィック130の空孔率は、25~80%である。なお、実効空孔径および空孔率の測定法は特に限定されない。例えば、水中含侵法による見かけ密度測定、水銀圧入法による気孔径分布測定、あるいはX線CTによる気孔観察などにより測定してもよい。
【0031】
図4に示すように、ウィック130は、概形が熊手形状(フォーク形状)である。具体的には、ウィック130は、長手方向が幅方向に沿う略長方形状のウィック基部131と、ウィック基部131から移送方向下流側に突出するウィック爪部133と、ウィック基部131から移送方向上流側に突出する部分であるウィック凸部137とを有する。図示の例においては、ウィック爪部133が幅方向において予め定めた間隔で複数設けられている。言い替えると、ウィック130は、移送方向下流側において、移送方向に沿って形成された複数のスリット135を備える。なお、スリット135における移送方向上流側の端部は、スリット底部136と呼ぶことがある。また、図示の例においては、ウィック凸部137が、ウィック基部131の幅方向中央部に形成されている。
【0032】
ここで、図示のウィック130におけるウィック基部131およびウィック爪部133は、概形が櫛形状である。この櫛形状に形成されたウィック130においては、スリット135が、ウィック130で気化した作動流体が蒸気管105に向かう流れを促進する蒸気溝、所謂グルーブとして機能する。さらに説明をすると、図示の例においては、ウィック爪部133とスリット135とが同一平面に交互に配置されることにより、例えば厚み方向にウィック爪部133およびスリット135を並べる構成と比較して、ウィック130、第1側板111および第2側板121を薄くしつつ機械的強度を維持することができる。また、ウィック爪部133とスリット135とが同一平面に設けられることにより、ウィック爪部133が第1側板111および第2側板121の両者と接触している状態であるとなおよい。このことにより、熱源である発熱体10(
図1)を配置する自由度が向上する。すなわち、ウィック爪部133が第1側板111および第2側板121のいずれからも熱を受けることができる構成であるため、発熱体10が第1側板111の第1外面115および第2側板121の第2外面125のいずれの面あるいは両面に設けられてもよい。
【0033】
付言すると、図示のウィック爪部133の先端およびスリット底部136は、丸みをつけた(湾曲させた)形状である。詳細は後述するが、ウィック130は金属ペーストを塗布することにより形成される。ウィック爪部133の先端およびスリット底部136を湾曲形状とすることにより、湾曲形状でなく例えば角形状である場合と比較して、金属ペーストを塗布することが容易となる。
【0034】
さて、液溜め部160内に蓄えられている作動流体が少ない場合などにおいて、作動流体が液溜め部160内で偏って分布することがある。そして、この作動流体の偏りにより、ウィック130に作動流体が供給され難くなり、ウィック130の動作性能が低下することがある。そこで、図示のウィック130においては、ウィック凸部137が形成されている。液溜め部160内に向けて突出するウィック凸部137を形成することにより、作動流体が液溜め部160内で偏って分布する場合においても、ウィック凸部137を介して、ウィック基部131およびウィック爪部133に安定して作動流体が供給され得る。
【0035】
なお、ウィック凸部137は、ウィック基部131などに作動流体を供給するための他のウィック、すなわちセカンダリウィックとして捉えることができる。また、ウィック凸部137は、所定の毛細管力が働く構造であれば、材質、形状(例えば、ピラー構造やメッシュ構造)などは特に限定されない。なお、ウィック凸部137の寸法は、流動圧損が所定の値よりも大きくならないように定めるとよい。
【0036】
付言すると、ウィック130は、厚み0.01mm乃至1mm、より好ましくは厚み0.1mm乃至0.2mmの寸法で構成される。ここで、ウィック130のウィック基部131は、例えば、幅方向の長さ10mm乃至300mmであり、移送方向の長さ1mm乃至100mmである。ウィック基部131における移送方向の長さに対する厚みの割合が、例えば0.01乃至100%、より好ましくは0.1%乃至10%の寸法で構成される。なお、図示の例におけるウィック130は、厚みが0.2mmである。また、幅方向の長さが21mm、移送方向の長さが2mmである。
【0037】
ウィック爪部133は、幅方向長さが0.5mm乃至2.0mmであり、移送方向長さが10mm乃至20mmである。また、スリット135は、例えば幅方向長さが0.5mm乃至2.0mmである。さらに説明をすると、スリット135は、ウィック爪部133と幅方向長さが略同じ長さである。また、図示の例においては、発熱体10(
図1参照)は、例えば幅10mmであり、長さ10mmである。したがって、ウィック130におけるウィック基部131および複数のウィック爪部133が設けられる領域は、発熱体10よりも幅および長さが大きい寸法である。
【0038】
また、ウィック凸部137は、幅方向長さが1mm乃至30mmであり、移送方向長さが10mm乃至100mmである。図示の例のウィック凸部137は、幅方向においてウィック爪部133よりも大きい。また、ウィック凸部137は、移送方向においてウィック爪部133よりも大きい。
【0039】
さて、ウィック130は、上述のように筐体100の内部に配置される。このウィック130は、厚み方向において第1側板111および第2側板121に挟まれて配置される。また、ウィック130は、筐体100の内部、すなわち第1側板111および第2側板121の間において、蒸気空間140および液溜め部160を区画する。ここで、仮に、筐体100の内周面とウィック130との間に隙間(間隙)、さらに説明をすると、第1側板111とウィック130との間、あるいは第2側板121とウィック130との間に隙間が形成されると、液相の作動流体が蒸気空間140に流入する(漏れる)ことや、気相の作動流体が液溜め部160に流入する(逆流する)ことがある。そして、これらの流入は、ループ型ヒートパイプ1の熱交換率を低下させる。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、第1側板111の第1内面113にウィック130となる材料を塗布して、第1側板111上でウィック130を形成する(詳細は後述)。このことにより、ウィック130と第1側板111の第1内面113との間において隙間が形成されることを抑制する。
【0041】
また、本実施の形態においては、ウィック130に接合材150を重ねて配置する。このことにより、ウィック130と第2側板121の第2内面123との間において間隙が形成されることを抑制する。
【0042】
また、本実施の形態においては、第1側板111に設けられた第1凹部110の第1底面114に第1支持体1123および第2支持体1124を形成する。また、第2側板121に設けられた第2凹部120の第2底面124に第3支持体1223および第4支持体1224を形成する(
図3(B)参照)。これらの第1支持体1123、第2支持体1124、第3支持体1223および第4支持体1224により、ウィック130の幅方向両端において間隙が形成されることを抑制する。
【0043】
さて、
図4に示すように、接合材150は、長手方向が幅方向に沿う略長方形状の板状部材である。図示の例においては、接合材150の移送方向の長さは2mmであり、幅方向の長さは19mmである。この接合材150は、銅や青銅など金属により形成される。
【0044】
ここで、接合材150は、ウィック130のウィック基部131を覆う位置に設けられる。さらに説明をすると、接合材150の接合材上流側端面155は、移送方向においてウィック基部131の上流側端面132と揃えて設けられる。また、接合材150の接合材下流側端面157の位置は、移送方向において、上流側端面132よりも下流側であり、スリット底部136に沿う仮想線L11よりも上流側である。ここで、接合材下流側端面157が上流側端面132よりも移送方向上流側となると、作動流体の漏れが生じ得る。また、接合材下流側端面157が仮想線L11よりも移送方向下流側となると、スリット135の機能が低下し得る。
【0045】
<第1支持体1123および第2支持体1124>
図5は、第1支持体1123および第2支持体1124の構成を示す図である。
次に、
図5を参照しながら、第1支持体1123および第2支持体1124の構成について説明をする。より詳細には、
図5(A)は第1支持体1123および第2支持体1124周辺の平面図であり、
図5(B)は
図5(A)のVB-VBにおける断面図であり、
図5(C)は第2支持体1124周辺の斜視図である。
【0046】
図5(A)に示すように、第1支持体1123および第2支持体1124は、各々略直方体状の形状であり、第1凹部110の第1底面114に形成される。第1支持体1123および第2支持体1124は、長手方向が移送方向に沿う向きに形成される。また、第1支持体1123および第2支持体1124は、幅方向において互いに離間して形成されている。第1支持体1123および第2支持体1124が形成される領域は、ウィック130の幅方向における端部と対向する位置である。
【0047】
第1支持体1123は、第1凹部110の内側面である第1対向面1131から幅方向に突出する部分であり、厚み方向上側を向く第1支持上面1133および幅方向一方側を向く第1支持側面1135を有する。
【0048】
第2支持体1124は、第1凹部110の内側面である第2対向面1132から幅方向に突出する部分であり、厚み方向上側を向く第2支持上面1134および幅方向他方側を向く第2支持側面1136を有する。
【0049】
ここで、第1支持上面1133および第2支持上面1134は、略長方形状の平面である。そして、この第1支持上面1133および第2支持上面1134の各々の上側には、略直方体状の空間が形成されている。これらの空間は、第1側板111に形成された切り欠き1128(
図5(B)参照)として捉えることができる。詳細は後述するが、この切り欠き1128に、ウィック130の幅方向における端部が配置される。
【0050】
<第1テーパ1125および第2テーパ1126>
次に、
図5を参照しながら、第1テーパ1125および第2テーパ1126の構成について説明をする。
【0051】
上記においては説明を省略したが、
図5に示すように、第1凹部110における第1支持体1123の移送方向上流側で、第1支持体1123と隣接する位置に第1テーパ1125が形成される。また、第1凹部110における第2支持体1124の移送方向上流側で、第2支持体1124と隣接する位置に第2テーパ1126が形成される。また、第2凹部120の第3支持体1223および第4支持体1224の各々の移送方向上流側に、第3テーパ1225および第4テーパ1226が形成される(
図3(B)参照)。第3テーパ1225および第4テーパ1226は、第1テーパ1125および第2テーパ1126と鏡合わせ形状である。これらの第1テーパ1125、第2テーパ1126、第3テーパ1225および第4テーパ1226は、作動流体を案内する構成である。
【0052】
以下、第1テーパ1125および第2テーパ1126を例にさらに説明をする。まず、
図5(A)に示すように、第1テーパ1125は移送方向下流側に進むに従い第1側面1121から突出する向きに傾斜する。また、第2テーパ1126は移送方向下流側に進むに従い第2側面1122から突出する向きに傾斜する。この第1テーパ1125および第2テーパ1126は、作動流体の流れを案内する。さらに説明をすると、第1テーパ1125および第2テーパ1126により、作動流体の流路が移送方向下流側に進むに従い、幅方向において狭くなる。そして、第1凹部110内を移送方向下流側に進む作動流体は、第1テーパ1125および第2テーパ1126によって、流路の幅方向中央側に向けて案内される(
図5(A)の矢印C9参照)。
【0053】
<蒸発器101の動作>
次に、
図5(A)を参照しながら、蒸発器101内の動作について説明する。
まず、液溜め部160に収容された液相の作動流体は、ウィック基部131に向けて流れ(矢印C1参照)、ウィック基部131に浸透する。また、液溜め部160に収容された液相の作動流体の一部は、ウィック凸部137に浸透(矢印C3参照)し、毛細管力によりウィック凸部137内を移動しながら、ウィック基部131に向かう(矢印C5参照)。さらに、液溜め部160に収容された液相の作動流体の一部は、第1テーパ1125、第2テーパ1126、第3テーパ1225および第4テーパ1226に案内されながら、ウィック基部131に向かう(矢印C9参照)。
【0054】
そして、液相の作動流体は、ウィック基部131の毛細管力によりウィック基部131内を移動しながら、発熱体10の熱により加熱され気化する。この気化した作動流体は、スリット135などを通り蒸気管105側へと移動した後(矢印C7参照)、蒸気管105から流出し、凝縮器107(
図1参照)へと送られる。そして、凝縮器107(
図1参照)で液化した作動流体は、蒸発器101内へと流入し、液溜め部160を経て再びウィック130に浸透する。このように、ウィック130において作動流体の流れが途切れることなく、上記のサイクルが繰り返される。そして、発熱体10において発生した熱が、蒸発器101から凝縮器107(
図1参照)へと輸送される。
【0055】
<第1側板111および第2側板121の形成工程>
次に、
図5を参照しながら、第1側板111および第2側板121の形成工程の概略を説明する。
【0056】
まず、上述のように第1側板111およびに第2側板121は、例えば銅などの金属材料より形成された平板状の部材に加工処理を施し、第1凹部110および第2凹部120を形成する。図示の例においては、厚さ0.15mmの銅平板(
図5(B)の厚さT1参照)にエッチング処理を施し、第1凹部110および第2凹部120を形成する。ここで、第1凹部110および第2凹部120の深さは、0.1mmである(
図5(B)の深さG1参照)。すなわち、第1側板111およびに第2側板121における第1凹部110および第2凹部120が形成された領域は、底の厚さが0.05mmとなる(
図5(B)の厚さT3参照)。さらに説明をすると、エッチングにより、第1側板111およびに第2側板121の厚みの50%以上を凹ませる。
【0057】
ここで、詳細は後述するが、第1凹部110および第2凹部120を形成するエッチング処理とは別工程のエッチング処理をすることにより、第1支持体1123、第2支持体1124、第3支持体1223および第4支持体1224が形成される。ここで、第1支持体1123の第1支持上面1133までの深さは0.05mmである(
図5(B)の深さG3参照)。すなわち、第1側板111およびに第2側板121における第1支持体1123、第2支持体1124、第3支持体1223および第4支持体1224が形成された領域は、底の厚さが0.1mmとなる(
図5(B)の厚さT5参照)。このことにより、第1凹部110および第2凹部120における他の領域と比べて、第1支持体1123、第2支持体1124、第3支持体1223および第4支持体1224が形成された領域は、底の厚さが厚い構成となる。付言すると、第1支持体1123、第2支持体1124、第3支持体1223および第4支持体1224は、第1凹部110および第2凹部120の底上げをする構成として捉えることができる。
【0058】
また、上記エッチング処理においては、第1支持体1123および第2支持体1124を形成する領域にマスキングをすることで、第1凹部110および第2凹部120に第1支持体1123および第2支持体1124を形成する。また、第1側板111およびに第2側板121の外形状の周りは、第1側板111およびに第2側板121が取出し可能となるように、貫通エッチング、すなわち外郭銅板エッチングが施される。また、図示の例においては、貫通エッチングにより、第1側板111に第1貫通孔1129が形成され、第2側板121に第2貫通孔1229が形成される。
【0059】
<ウィック130および接合材150の形成工程>
次に、
図4および
図5を参照しながら、ウィック130および接合材150の形成工程の概略を説明する。
【0060】
まず、本実施の形態においては、予め形成されたウィック130および接合材150を第1側板111および第2側板121に配置するのではなく、第1側板111および第2側板121においてウィック130および接合材150を形成する。そして、ウィック130が形成された第1側板111と、接合材150が形成された第2側板121とを重ね合わせて、ウィック130および接合材150が互いに固定される。
【0061】
ここで、図示のウィック130は、第1側板111にウィック130の材料を塗布して第1側板111上で形成される。さらに説明をすると、ウィック130は、第1側板111における予め定めた領域に、純銅粉を含む金属ペーストを塗布することで形成される。なお、ウィック130を塗布する際には、マスク180(後述する
図6参照)が用いられる。
【0062】
また、図示の接合材150は、第2側板121に接合材150の材料を塗布して第2側板121上で形成される。さらに説明をすると、接合材150は、第2側板121の予め定めた領域に、銅や青銅粉を含む金属ペーストを塗布することで形成される。ここで、接合材150を形成する領域の周囲を、所謂マスキングテープである第5マスキング部材M23(後述する
図8(F)参照)で覆うなど、周知技術によるマスキングをして金属ペーストを塗布することで接合材150を形成する。
【0063】
<マスク180>
図6は、マスク180の概略構成図である。
マスク180は、例えば板厚0.15mmの平板状部の金属部材である。マスク180には、貫通孔であるウィック型開口190が形成されている。このウィック型開口190は、ウィック基部131を形成する領域であるウィック基部領域191と、ウィック爪部133を形成する領域であるウィック爪部領域193と、ウィック凸部137を形成するウィック凸部領域197とを有する。ここで、ウィック基部領域191は、長手方向が幅方向に沿う略長方形状の部分である。ウィック爪部領域193は、ウィック基部領域191から移送方向下流側に突出する部分である。また、ウィック凸部領域197は、ウィック基部領域191から移送方向上流側に突出する部分である。
【0064】
マスク180は、第1凹部110が形成された第1側板111に位置合わせして配置される。そして、マスク180の上から純銅粉を含む金属ペーストをウィック型開口190に案内し、ゴム製のブレード(所謂スキージ)などを用いて余分な金属ペーストを掻きとるなどして塗布する。このことにより、第1凹部110にウィック130の材料が所定の厚み(例えば、0.25mm)で配置される。この塗布されたウィック130の材料を焼結などで固めることで、第1凹部110にウィック130が形成される。なお、マスク180を用いることにより、ウィック130を形成する工程が簡略化され得る。
【0065】
<ループ型ヒートパイプ1の製造工程>
図7は、第1側板111にウィック130を形成する工程を示す図である。
図8は、第2側板121に接合材150を形成する工程を示す図である。
図9は、ウィック130および接合材150を接合する工程を示す図である。
なお、特に
図7乃至
図9においては、各構成における上下方向の寸法を強調(拡大)して記載している。
【0066】
次に、
図7乃至
図9を参照して、本実施の形態におけるループ型ヒートパイプ1の製造工程の例を説明する。本実施の形態におけるループ型ヒートパイプ1の製造工程は、第1側板111および第2側板121により構成される筐体100を形成する形成工程と、筐体100内に作動流体を充填する充填工程とを含む。
【0067】
また、形成工程は、さらに3つの工程を含む。この3つの工程は、第1側板111にウィック130を形成する工程と、第2側板121に接合材150を形成する工程と、第1側板111に形成されたウィック130および第2側板121に形成された接合材150を接合する工程である。以下では、これらの3つの工程について説明をする。
【0068】
<ウィック130形成工程>
まず、
図7を参照しながら、第1側板111にウィック130を形成する工程を説明する。以下の工程においては、第1側板111に第1凹部110、第1支持体1123および第2支持体1124を形成し、その後に第1凹部110にウィック130を形成する。
【0069】
まず、第1側板111に第1凹部110、第1支持体1123および第2支持体1124を形成する工程を説明する。具体的には、
図7(A)に示すように、第1側板111を支持台TBに載せる。なお、図示は省略するが、以下の工程は支持台TBに載せた状態で実行される。
【0070】
次に、
図7(B)に示すように、第1内面113における第1支持体1123および第2支持体1124を形成する領域以外の領域を第1マスキング部材M11で覆う。そして、
図7(C)に示すように、第1側板111にエッチングを施した後、第1マスキング部材M11を除去する。この工程でエッチングされた領域は、第1支持上面1133および第2支持上面1134を形成する。
【0071】
次に、
図7(D)に示すように、第1内面113における第1凹部110の第1底面114を形成する領域以外の領域を第2マスキング部材M12で覆う。そして、
図7(E)に示すように、第1側板111にエッチングを施した後、第2マスキング部材M12を除去する。この工程でエッチングされた領域は、第1底面114を形成する。また、この工程により、第1側板111に第1凹部110、第1支持体1123および第2支持体1124が形成された状態となる。
【0072】
次に、第1凹部110、第1支持体1123および第2支持体1124にウィック130を形成する。具体的には、
図7(F)に示すように、第1内面113にマスク180が配置される。そして、
図7(G)に示すように、ウィック130となる第1金属ペースト149が塗布される。このとき、第1金属ペースト149の一部は第1支持体1123および第2支持体1124にも載る状態となる。
【0073】
次に、
図7(H)に示すように、不図示の焼結炉内において所定の条件(詳細は後述)で加熱され第1金属ペースト149が焼結しウィック130が形成される。このウィック130は第1底面114、第1支持体1123および第2支持体1124に固定された状態である。
【0074】
<接合材150形成工程>
次に、
図8を参照しながら、第2側板121に接合材150を形成する工程を説明する。以下の工程においては、第2側板121に第2凹部120、第3支持体1223および第4支持体1224を形成し、その後に第2凹部120に接合材150を形成する。
【0075】
まず、第2側板121に第2凹部120、第3支持体1223および第4支持体1224を形成する工程を説明する。具体的には、
図8(A)に示すように、第2側板121を支持台TBに載せる。なお、図示は省略するが、以下の工程は支持台TBに載せた状態で実行される。
【0076】
次に、
図8(B)に示すように、第2内面123における第3支持体1223および第4支持体1224を形成する領域以外の領域を第3マスキング部材M21で覆う。そして、
図8(C)に示すように、第2側板121にエッチングを施した後、第3マスキング部材M21を除去する。この工程でエッチングされた領域は、第3支持上面1233および第4支持上面1234を形成する。
【0077】
次に、
図8(D)に示すように、第2内面123における第2凹部120の第2底面124を形成する領域以外の領域を第4マスキング部材M22で覆う。そして、
図8(E)に示すように、第2側板121にエッチングを施した後、第4マスキング部材M22を除去する。この工程でエッチングされた領域は、第2底面124を形成する。また、この工程において、第2側板121に第2凹部120、第3支持体1223および第4支持体1224が形成された状態となる。
【0078】
次に、第2凹部120に接合材150を形成する。具体的には、
図8(F)に示すように、第1内面113に第5マスキング部材M23が配置される。そして、
図8(G)に示すように、接合材150となる第2金属ペースト159が塗布される。
【0079】
次に、
図8(H)に示すように、不図示の焼結炉内において所定の条件(詳細は後述)で加熱され第2金属ペースト159が焼結し接合材150が形成される。この接合材150は第2底面124、第3支持体1223および第4支持体1224に固定された状態である。
【0080】
<ウィック130および接合材150の接合工程>
次に、
図9を参照しながら、ウィック130および接合材150を接合する工程を説明する。
【0081】
まず、
図9(A)に示すように、第1側板111および第2側板121を重ねる。このことにより、ウィック130および接合材150が対向し、互いに突き当たる配置となる。そして、
図9(B)に示すように、第1側板111および第2側板121を加圧(図中F11参照)し、ウィック130の厚さを減少させた後、不図示の焼結炉内において第1側板111および第2側板121を加熱する。このことことにより、ウィック130および接合材150が接合される。
【0082】
次に、
図9(C)に示すように、出炉後、密閉性を向上させる処理を施す。具体的には、第1側板111および第2側板121にレーザLAを照射する。このことにより、第1側板111および第2側板121が互いに接合し、密閉性がより高まる。図示の例においては、第1支持体1123および第3支持体1223が対向する領域に、ウィック130との間で空隙GAが形成される。同様に、第2支持体1124および第4支持体1224が対向する領域に空隙GAが形成される。
【0083】
次に、
図9(D)に示すように、第1側板111および第2側板121の一部(特定領域)を押圧する。具体的には、第1側板111および第2側板121における第1支持体1123および第3支持体1223が対向する領域と、第2支持体1124および第4支持体1224とが対向する領域とをプレス機(不図示)で加圧する(図中F13)。このことにより、
図9(E)に示すように、第1支持体1123および第3支持体1223が対向する領域が押しつぶされ、空隙GAが減少する(図示の例では空隙GAが無い状態となる)。このことにより、第1支持体1123および第3支持体1223が対向する領域がウィック130で充填された状態となる。同様に、第2支持体1124および第4支持体1224が対向する領域においても空隙GAが減少し、ウィック130で充填された状態となる。なお、上記の説明においては説明を省略したが、加圧された特定領域においては、凹部(加圧痕)である第1溝1127および第2溝1128が形成される。この第1溝1127および第2溝1128により、ウィック130への伝熱が促進される。さらに説明をすると、例えばウィック130および接合材150の接合工程における加熱にともない、接合材150の成分が第2側板121に拡散し、筐体100の強度が低下することがあるが、第1側板111および第2側板121における特定領域を加圧し第1溝1127および第2溝1128を形成することで筐体100の強度低下が抑制され得る。
【0084】
なお、図示の例においては、
図7(H)および
図8(H)に示すように、第1金属ペースト149および第2金属ペースト159を焼結する際に、第1側板111および第2側板121が平坦な面である支持台TBに支持された状態で加熱される。このことにより、支持台TBによって第1側板111および第2側板121が支持されていない場合と比較して、加熱にともなう第1側板111および第2側板121の変形が抑制され得る。
【0085】
さて、図示の例においては、上記
図7(H)に示すように、第1側板111はウィック130を形成するために加熱が施される。また、
図8(H)に示すように、第2側板121は接合材150を形成するために加熱が施される。ここで、第1側板111および第2側板121の少なくとも一方が熱処理を施されることにより、第1側板111および第2側板121各々のレーザLAの反射率が低下(吸収率が増加)する。この反射率の変化により、レーザLAによる第1側板111および第2側板121の接合がより確実になる。なお、上記
図7(H)あるいは
図8(H)に示す熱処理工程は、レーザ溶接の前処理を実行する工程として捉えることができる。言い替えると、上記
図7(H)あるいは
図8(H)に示す熱処理工程は、ウィック130あるいは接合材150の焼結工程とともに、銅板の前処理工程を実行するものとして捉えることができる。
【0086】
また、上記のように
図9(D)に示すように、ウィック130の幅方向両端を押圧することで、ウィック130および第1凹部110(第2凹部120)の接触がより確実になる。すなわち、ウィック130の幅方向両端において、間隙が形成されることが抑制される。ここで、
図7(G)に示すように上記のように焼結されることでウィック130となる第1金属ペースト149は、マスク180を介して第1側板111に塗布される。この塗布において、第1金属ペースト149の幅方向両端は、所謂だれなどの現象により、第1凹部110から離間することがある。
【0087】
本実施の形態においては、第1金属ペースト149の幅方向両端における間隙を抑制するため、第1支持体1123および第2支持体1124を形成する。すなわち、底上げ部である第1支持体1123および第2支持体1124に第1金属ペースト149の一部を載せる。このことにより、例えば上記ゴム製のブレードによる塗りが不十分な場合であっても、幅方向両端にまで第1金属ペースト149を到達させることが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態においては、
図7(H)に示すように第1金属ペースト149を焼結し接合材150と接合した後、
図9(D)に示すように、第1支持体1123および第2支持体1124の領域を加圧する。この加圧により、ウィック130の幅方向両端における間隙が抑制される。ここで、図示の例においては、第1支持体1123および第2支持体1124が形成された領域、すなわち第1底面114が形成された領域よりも厚みが厚い領域を加圧する。このように厚みが厚い領域を加圧することで、厚みが薄い領域を加圧することにともなう破断などの発生を抑制する。付言すると、図示の例においては、ウィック130の幅方向両端が形成される部分の銅板を段差形状として底の厚さを増すことで、潰し加工が可能な構造としている。付言すると、第1支持体1123および第2支持体1124は、補強部として捉えることができる。
【0089】
<第1金属ペースト149および第2金属ペースト159>
第1金属ペースト149および第2金属ペースト159は、例えば以下のようにして形成される。ウィック130となる第1金属ペースト149は、粒径45μm以下の純銅粉を、バインダー溶液に混合させて形成できる。また、接合材150となる第2金属ペースト159は、粒径45μm以下の青銅粉を、バインダー溶液に混合させて形成できる。ただし、ウィック130となる第1金属ペースト149および、接合材150となる第2金属ペースト159に使用する前記金属粉末の粒径や材質は一例であり、この限りではない。バインダー溶液は、バインダー成分と有機溶剤から成り、バインダー成分は、アクリル系、ブチラール系、セルロース系などが選択でき、有機溶剤は、アセトン、ベンゼン、イソプロパノール、メタノール、エタノール、トルエン、n-ブタノール、キシレン、エチレングリコール、酢酸エチル、テレピネオール、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン(THF)、四塩化炭素、メチルエチルケトン(MEK)、クロロホルム、メチルイソブチルケトン(MIBK)、n-ヘキサン、メタノール、シクロヘキサンなどが選択できるが、この限りではない。
【0090】
第1金属ペースト149および第2金属ペースト159は、メッシュベルト式焼結炉において、脱バインダーおよび焼結が実施される。ここで、第1側板111および第2側板121に配置(塗布)された第1金属ペースト149および第2金属ペースト159は、例えば以下のような条件で各々焼結される。第1金属ペースト149は、脱バインダー温度が400℃~600℃、焼結が700℃~1050℃、保持時間が10分~40分、雰囲気ガスが窒素10%~95%および水素5%~90%である。また、第2金属ペースト159は、脱バインダー温度が400℃~600℃、焼結が500℃~700℃で、保持時間が10分~60分、雰囲気ガスが窒素10%~95%および水素5%~90%である。また、脱脂および焼結の雰囲気は窒素水素混合に限らず、純水素、アルゴン、アルゴン水素混合、あるいは真空などでもよい。ただし、前記脱バインダーおよび焼結条件は、ウィック130となる第1金属ペースト149に粒径45μm以下の純銅粉を、接合材150となる第2金属ペースト159に粒径45μm以下の青銅粉を使用した場合の一例であり、使用する金属粉末材料、バインダー成分によって適宜選択する。
【0091】
<第1側板111および第2側板121の固定>
図9(B)に示すように、第1側板111および第2側板121の固定は、例えば以下のような条件で施される。まず、第1側板111および第2側板121を重ね合せた状態で、ウィック130および接合材150が形成されている部分を外側から加圧し(図中矢印F11参照)、ウィック130と接合材150とを合わせた厚さが流路高さと等しくなるよう調整する。
【0092】
次に、メッシュベルト式焼結炉にてウィック130および接合材150の接合を実施する。この接合は、例えば以下のような熱処理条件で実行される。すなわち、温度が500℃~700℃、保持時間が10分~40分、雰囲気ガスが窒素10%~95%および水素5%~90%である。雰囲気は窒素水素混合に限らず、純水素、アルゴン、アルゴン水素混合、あるいは真空などでもよい。また、第1側板111および第2側板121をセラミック板で挟み込み、錘を載せて荷重1kgとして熱処理を行う。
その後、ウィック130および接合材150が接合された状態で、第1側板111もしくは第2側板121の外面、特に外周縁と内周縁および必要に応じて支柱210をレーザ溶接し、第1側板111と第2側板121とを接合する。この際、溶接性を向上するため、第1側板111と第2側板121とが密接する治具(不図示)を用いてレーザ溶接する。
なお、前例ではウィック130および接合材150をメッシュベルト式焼結炉にて接合した後に、第1側板111と第2側板121とをレーザ溶接することを説明したが、第1側板111と第2側板121とをレーザ溶接した後に、ウィック130および接合材150をメッシュベルト式焼結炉にて接合しても構わない。
【0093】
なお、上記の条件で形成されたループ型ヒートパイプ1のリーク試験を行い、脱気に問題がないことを確認した。また、製造されたループ型ヒートパイプ1の熱負荷試験を行い、4.5W乃至10Wでの動作が確認できた。
【0094】
<接合材150による接合>
上記のように、ウィック130および第2側板121は、接合材150を介して互いに固定される。この接合材150による固定について説明をする。
まず、
図7(H)に示すように、第1金属ペースト149を焼結して形成されたウィック130の厚み方向第1面側(図中下側)は、第1側板111に対して接合された状態となる。また、ウィック130の厚み方向第2面側(図中上側)は、第2側板121に接合(シーリング)することが求められる。ここで、本実施の形態とは異なり、接合材150に替えて半田(例えば、500℃)を用いてウィック130を第2側板121へ接合する場合、半田がウィック130に吸収され、ウィック130の機能を低下させ得る。また、本実施の形態とは異なり、ロウ付け(例えば、800℃)や拡散接合(例えば、1000℃)を用いてウィック130を第2側板121へ接合する場合、第1側板111および第2側板121のたわみなどの変形により、作動流体の流路が閉塞し得る。
【0095】
そこで、図示の例においては、接合材150を用いて接合をする。この接合材150の材質として、ウィック130の材質(例えば、純銅)と同じか、それよりも融点が低い材質(例えば、青銅)が用いられる。この接合材150の材質は、ウィック130および第2側板121と合金化しやすい、あるいはなじみやすいものであれば特に限定されない。例えば、ウィック130が純銅で形成される場合、接合材150として黄銅など他の材質を用いてもよい。なお、接合材150の材質は、ウィック130および第2側板121と同一の組成物(例えば、銅)をもつ材質として捉えることができる。また、接合材150の材質は、第2側板121の合金よりも融点が同じかもしくはより低い材質として捉えることができる。なお、上記の例においては、第1金属ペースト149の焼結、すなわち1回目の加熱温度は700℃~1050℃である。また、ウィック130および接合材150の接合、すなわち2回目の加熱温度は、1回目より低温である500℃~700℃である。このことにより、2回目の加熱にともなうウィック130の構造変化が低減される。
【0096】
このように、ウィック130および接合材150が接合されることで、ウィック130が第1側板111および第2側板121に対して固定される。この固定されたウィック130および接合材150は、蒸気空間140および液溜め部160間の圧力隔壁として機能する。
【0097】
<ウィック130の詳細構成>
図10は、ウィック130の構成を示す図である。
次に、
図10を参照しながら、ウィック130の構成を説明する。
【0098】
図10に示すように、ウィック130は、幅方向における中央部1311と、中央部1311の幅方向における両端に位置する端部1313とを有する構成として捉えられる。ここで、端部1313は、上記
図9(D)を参照しながら説明をしたようにウィック130において加圧処理が施された部分である。この端部1313においては、中央部1311と比較して空隙率が低い。また、端部1313においては、中央部1311と比較して実行空孔径が小さい。
【0099】
この端部1313においては、ウィック130に形成された空隙が小さいことで、例えば第1側板111との接触面積が大きくなる。すなわち、ウィック130が発熱体からの受熱面積を大きくすることが可能となる。付言すると、ウィック130は、多孔質の金属であるため、多孔質の金属でない場合と比較して、加圧により形状を変化させることが容易である。
【0100】
また、上記のように端部1313は加圧により圧縮された結果、中央部1311と比較して空隙率が小さい。したがって、端部1313における作動流体の挙動が、中央部1311とは異なり得る。そこで、図示の例においては、圧縮される端部1313の面積(寸法)を抑制している。具体的には、ウィック130に設けられた複数のウィック爪部133のうち、幅方向両端に位置する各1つのウィック爪部133を加圧する。このことにより、ウィック130において加圧されない領域が大きく確保され得る。
【0101】
<支柱210の構成>
図11は、支柱210の構成を示す図である。
次に、
図11を参照しながら、支柱210の構成を説明する。なお、以下の説明においては、凝縮器107に形成された支柱210について説明をする。
【0102】
支柱210は、凝縮器107の内部を支持する構造(所謂ピラー)である。図示の例においては、支柱210は、断面が略楕円形の柱状体である。また、図示の例における支柱210は、所定の配置で設けられている。さらに説明をすると、図示の例においては、移送方向に沿う第1間隔L2ごとに、2つの支柱210および1つの支柱210の組み合わせが配置されている。より具体的には、凝縮器107の幅方向中央に1つの支柱210(第1支柱2101)が形成される配置と、幅方向中央を挟んだ2つの支柱210(第2支柱2102および第3支柱2103)が形成される配置とが、移送方向に沿って繰り返される。ここで、第2支柱2102および第3支柱2103は、幅方向中央の支柱210から所定間隔である第2間隔D2離れた位置に形成される。また、第2支柱2102および第3支柱2103は、各々凝縮器107の内壁1071、1073から凝縮器107の幅方向長さD4の1/4の距離D3離れた位置に形成されている。
【0103】
ここで、支柱210の構成についてさらに説明をすると、支柱210の幅方向長さD1は、例えば0.25mmである。なお、この幅方向長さD1は、第1側板111および第2側板121の板厚0.15mmよりも幅が広い。このように支柱210の幅方向長さD1を第1側板111および第2側板121の板厚よりも長くすることにより、支柱210の強度が確保される。
【0104】
また、支柱210の移送方向長さL1は、1.1mmである。支柱210の移送方向長さL1は、幅方向長さD1よりも長い。このことにより、支柱210が作動流体を案内することが可能となる。ここで、支柱210の移送方向長さL1は、所定の長さよりも長い方が、レーザ溶接した後の接合強度が増す。例えば上記
図9(C)の例のように、第1側板111および第2側板121の外側においてレーザLAを照射して加熱することで支柱210を接合する場合、レーザLAの照射位置を移送方向に沿って移動させながら加熱が行われる(詳細は後述)。このレーザLAによる加熱工程において、レーザLAの照射を開始するタイミングおよびレーザLAの照射を終了するタイミングは、レーザLAの出力が不安定になり得る。そこで、支柱210の移送方向長さL1を所定の長さ以上とすることにより、移送方向に沿ってレーザLAの照射位置を移動させた場合であっても、支柱210の接合をより確実にし得る。
【0105】
一方で、支柱210の移送方向長さL1が長くなると、レーザLAの照射時間が長くなり、第1側板111および第2側板121の熱変形が大きくなる。図示の例においては、第1側板111および第2側板121が薄板であるため、レーザLAの照射による第1側板111および第2側板121の変形がより発生しやすい。図示の例においては、移送方向長さL1を第2間隔D2よりも小さくすることにより、レーザLAによる加熱の熱量が低減される。
【0106】
また、支柱210の移送方向長さL1が長くなると、幅方向において作動流体の流路が複数に区分けされた状態となる。このように複数の流路が形成されると、流路内の圧力が流路ごとに異なる状態となり、一部の流路で作動流体の逆流が発生するなどして作動流体の流れが妨げられることがある。図示の例においては、支柱210の移送方向長さL1を第2間隔D2よりも小さくすることにより、作動流体の流れが妨げられることを抑制する。
【0107】
なお、幅方向において、第1支柱2101と第2支柱2102(第3支柱2103)との第2間隔D2は、1.4mmである。また、移送方向において、第1支柱2101と第2支柱2102(第3支柱2103)との第1間隔L2は、3.9mmである。この第1間隔L2は、凝縮器107の幅方向長さD4である6mmよりも短い。このことにより、作動流体が移送方向に沿って自由に移動可能な距離のほうが、幅方向の距離よりも短くなる。また、図示の例においては、第1間隔L2が支柱210の移送方向長さL1よりも長い。このことにより、作動流体が幅方向において移動することが許容される。
【0108】
また、筐体100の内部に占める支柱210の体積が増加すると、作動流体の流路が減少する。また、支柱210の存在は、作動流体の流路抵抗となる。そのため、支柱210の寸法および支柱210の数を抑制することが好ましい。一方で、支柱210の配置としては、支柱210を分散して配置する、すなわち支柱210の偏りを抑制することで、筐体100の内部がより確実に支持される。図示の例においては、移送方向において2つ、1つの繰り返しで支柱210が配置される。このように規則的に支柱210を配置することで、筐体100の強度が保たれる。また、規則的に支柱210を配置することで、支柱210の加工工程を簡略化し、筐体100内部の体積が確保される。なお、支柱210(第1支柱部211および第2支柱部221)を第1側板111および第2側板121に形成する工程は、特に限定されない。例えば、上記
図7(B)および
図8(B)などに示すように、第1支柱部211を形成する領域を第1マスキング部材M11で覆うことで、第1支持体1123および第2支持体1124とともに第1支柱部211などをエッチングにより形成してもよい。また、第1支持体1123および第2支持体1124とは別工程のエッチングや第1支柱部211などを形成してもよいし、レーザ加工などにより第1支柱部211などを形成してもよい。
【0109】
<支柱210の形成工程>
図12は、支柱210を形成する工程を示す図である。
なお、
図12においては、各構成における上下方向の寸法を特に強調(拡大)して記載している。また、
図12(A)は、
図9(A)に示す工程における第1支柱部211および第2支柱部221周辺の構造を示す。すなわち、
図12(A)は、
図9(A)に示す工程に対応する。同様に、
図12(B)は
図9(B)に示す工程に対応し、
図12(C)は
図9(C)に示す工程に対応し、
図12(D)は
図9(E)に示す工程に対応する。
【0110】
次に、
図12を参照して、本実施の形態における支柱210を形成する工程を説明する。
まず、
図12(A)に示すように、第1側板111および第2側板121を重ねる。このことにより、第1側板111および第2側板121の各々に形成された第1支柱部211および第2支柱部221が互いに対向する配置になる。そして、
図12(B)に示すように、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とが突き合わされた状態となる。
【0111】
次に、
図12(C)に示すように、第1側板111および第2側板121の外側からレーザLAが照射され、第1支柱部211および第2支柱部221が加熱される。この工程において、レーザLAの照射位置は、移送方向に沿って移動する(矢印M1参照)。このレーザLAの照射位置の移動により、移送方向に長い第1支柱部211および第2支柱部221の長さ方向全体を加熱し得る。そして、
図12(D)に示すように、第1支柱部211および第2支柱部221の一部が溶解し接合部231が形成されることで、第1支柱部211および第2支柱部221が接続された状態となる。すなわち、支柱210が形成される。
【0112】
<羽部310>
図13は、羽部310の構成を示す図である。
次に、
図13を参照しながら、羽部310の構成を説明する。
【0113】
まず、羽部310は、ループ型ヒートパイプ1の封止構造である。この羽部310は、略長方形状の板状部材である羽本体311と、羽本体311の根元に形成された切り欠き313とを有する。
【0114】
上記のように、ループ型ヒートパイプ1の製造工程は、筐体100(第1側板111および第2側板121)内に作動流体を充填する工程である充填工程を含む。この充填工程の後に、羽部310は一部が封止され切断される。
【0115】
まず、充填工程について説明をすると、第1開口領域119に作動流体の流路となる金属管(不図示)を接続する。具体的には、第1開口領域119に金属管を接続した状態においては、2枚の羽本体311の間に金属管が挿入された配置となる。このとき羽本体311が金属管を抑えることで、金属管が第1開口領域119から外れることが抑制される。
【0116】
次に、羽部310を封止し切り落とす工程は以下の通りである。まず、羽本体311の根元を通る仮想線A1で羽本体311の一部を押圧する(潰す)。すなわち、羽本体311の根元において所謂かしめを施す。そして、第1開口領域119の周辺領域A2をレーザにより溶接する。すなわち、かしめた領域をさらにレーザ溶接する。このことにより封止がより確実となる。そして、仮想線A1に沿う位置で羽本体311をプレス加工やレーザ加工など周知の切断技術により切断する。なお、作動流体の充填後に羽本体311が切り落とされることにより、ループ型ヒートパイプ1の形状が簡素化される。
【0117】
<電子機器>
図14は、ループ型ヒートパイプ1を備える装置を示す図である。
次に、
図14を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1を備える装置について説明をする。
【0118】
図14(A)に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、携帯電話800などの電子機器に設けられる。図示の携帯電話800は、所謂スマートフォンである。この携帯電話800は、発熱体の一例である中央演算処理装置(CPU)801と、このCPU801を冷却するループ型ヒートパイプ1とを備える。そして、CPU801が発生させる熱が、ループ型ヒートパイプ1によって制御される。この携帯電話800は、CPU801をループ型ヒートパイプ1に設けることで製造される。
【0119】
ここで、ループ型ヒートパイプ1は、上記のように外部からの電力供給が不要である。すなわち、ループ型ヒートパイプ1は、無電力での動作が可能である。また、ループ型ヒートパイプ1は、長距離熱輸送(例えば、100mm~1mなど)、潜熱利用による高効率熱輸送を可能とし得る。また、ループ型ヒートパイプ1は、厚みが薄く、レイアウト性にも優れている。
【0120】
なお、近年、所謂第5世代移動通信システム(5G)の導入などにより、高周波通信(3.7、4.5、28GHz)の要求が高まっている。そして、携帯電話800のようなスマートフォンやタブレット端末においては、例えば、部品増設による緻密化、CPUやGPUの処理能力要求値の向上、発熱密度の増大、熱輸送の増大などが求められている。上記で説明したループ型ヒートパイプ1は、これらの要求性能を満たし得る装置である。
【0121】
ここでは電子機器の一例として、携帯電話800を用いて説明をしたが、上記ループ型ヒートパイプ1は、パーソナルコンピュータやタブレット型端末、プロジェクタなどに設けてもよい。また、ループ型ヒートパイプ1は、自動車などに搭載されるElectronic Control Unit(ECU)およびバッテリー、あるいは人工衛星などの種々の装置にも設け得る。
【0122】
ここで、
図14(B)に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、装置の一例であるカード900に設けられてもよい。なお、図示のカード900は、所謂スマートカードと呼ばれ、国際規格(ISO/IEC7810)によって仕様が定められている。
【0123】
スマートカードは、主に、接触式と非接触式に分類され、カード内部には、厚さが0.4mm以下の機器、例えば、ICチップ、近距離無線通信アンテナ(NFC)、Bluetooth(登録商標)通信、指紋認証センサー、ディスプレイ、電源IC、DC/DCコンバータ、バッテリー、キャパシタなどが、必要に応じて組み込まれている。また、今後、ICチップや各機器の高性能化が進むことにより、スマートカードのPC化が予想される。PC用の駆動電力は、接触式の場合にはカードリーダ950を通じて、非接触の場合にはNFCアンテナ通じて受電する。そして、PC用CPU901は、演算速度が向上するにつれて発熱量が増加するため、カード900内に冷却機構を設ける必要がある。
【0124】
ループ型ヒートパイプ1は、例えば厚さが0.3mmであるため,カード900内に組込むことが可能である。また、ループ型ヒートパイプ1は、凝縮器107の一部の面(凝縮面など)を、カード900の外側に出すことにより排熱を行ってもよい。さらに説明をすると、カード900が接触式でPC用CPU901をカードリーダ950内に配置せざるを得ない場合の設計において、ループ型ヒートパイプ1が有効となり得る。なお、図示の例におけるループ型ヒートパイプ1の貫通孔218には、スマートカードに必要な素子などを配置してもよい。この素子は、例えばバッテリーや、CPU、RAM、ROM、コプロセッサ(コプロ)、EEPROM(不揮発性メモリ)、インターフェース(I/F)などである。この貫通孔の寸法は、例えば幅方向の長さが38mmであり、移送方向の長さが27mmである。
【0125】
<変形例>
図15は、本実施の形態の変形例を示す図である。
次に、
図15を参照しながら、本実施の形態の変形例について説明をする。なお、以下の説明においては、上記の実施の形態の構成と同一の部分には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略することがある。
【0126】
上記の
図5(B)などの説明においては、第1側板111に形成された第1凹部110の外側である第2支持体1124などの厚みが、第1凹部110の中央側よも厚いことを説明したが、これに限定されない。例えば、
図15(A)に示すように、第1側板1120の厚みが第1凹部1110の外側と中央側とで一致する構成であってもよい。なお、図示の例においては、第2側板1220の厚みも第1凹部1110の外側と中央側とで一致する構成である。そして、第1凹部1110内にウィック1130が配置される。
【0127】
また、上記の
図5(B)などの説明においては、第1側板111に形成された第1凹部110の外側に第2支持体1124などの段差形状を形成することを説明したが、これに限定されない。例えば、
図15(B)に示すように、第1側板2120に形成された第1凹部2110の底面2111が湾曲して構成されてもよい。なお、図示の例においては、第2側板2220に形成された第1凹部2110の底面2221も湾曲した構成である。そして、第1凹部2110内にウィック2130が配置される。
【0128】
また、上記の
図9(E)などの説明においては、第1側板111および第2側板121における第1支持体1123および第3支持体1223が対向する領域と、第2支持体1124および第4支持体1224とが対向する領域とを加圧することを説明した。ここで、第1凹部1110の外側を加圧する構成であれば、第1支持体1123乃至第4支持体1224を設けない構成であってもよい。例えば、
図15(C)に示すように、第1側板3120に形成された第1凹部3110の底面3111は平坦に構成されてもよい。なお、図示の例においては、第2側板3220に形成された第1凹部3110の底面3221も平坦な構成である。そして、第1凹部3110内にウィック3130が配置され、ウィック3130の端部を第1側板3120および第2側板3220とともに加圧することにより、第1溝1127および第2溝1128が形成される。
【0129】
なお、上記では、第1側板3120および第2側板3220を両側から挟み込んで、第1側板3120および第2側板3220の両者に第1溝1127あるいは第2溝1128が形成される構成であることを説明したが、これに限定されない。例えば、第1側板3120および第2側板3220のいずれか一方を平坦面に押し当て、他方における第1凹部1110の外側を加圧する態様でもよい。この態様においては、第1側板3120および第2側板3220の一方に第1溝1127と1227あるいは第2溝1128と1228が形成される。
【0130】
<他の変形例>
上記
図9(D)を用いた説明においては、第1側板111および第2側板121の一部(特定領域)を押圧することを説明した。ここで、空隙GAが減少する、すなわち隙間を狭小化することが可能であれば、第1側板111および第2側板121の全面を押圧する構成でもよい。また、空隙GAが所定の寸法以下であれば、第1側板111および第2側板121を押圧する工程がなくてもよい。
【0131】
また、上記の説明においては、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とをレーザ溶接などにより加熱して支柱210を形成することを説明したが、これに限定されない。例えば、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とを接着剤等の他の部材を用いて接合する構成でもよい。また、第1支柱部211の先端と第2支柱部221の先端とを突き合わせるのみで、接合しない構成でもよい。
【0132】
また、上記の説明においては、支柱210の断面が略楕円形の柱状体であることを説明したが、第1側板111および第2側板121の間の空間を支持可能な突起であれば、形状は特に限定されない。例えば、支柱210の断面が、略直方体などの多角形であってもよいし、円形であってもよい。
【0133】
また、上記の説明においては、支柱210が、蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109内に設けられることを説明したが、これに限定されない。例えば、蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109のうちのいずれかに支柱210を設ける構成であってもよい。また、蒸発器101、蒸気管105、凝縮器107および液管109のいずれにも支柱210を設けない構成であってもよい。
【0134】
また、上記
図4などの説明においては、ウィック130が、ウィック基部131の幅方向中央部にウィック凸部137を備えることを説明したが、これに限定されない。ウィック凸部137は、幅方向におけるウィック基部131の端部側に寄せて設けられる構成でもよい。またウィック130が、ウィック凸部137を備えない構成でもよい。また、上記
図4などに示すウィック凸部137は、平面視略長方形状であるが、ウィック基部131への作動流体の供給を促進するものであればこれに限定されない。例えば、ウィック凸部137の幅が、移送方向下流側に進むに従い大きくなる構成でもよい。また、ウィック凸部137が湾曲する構成であってもよい。また、ウィック凸部137を複数有する構成でもよい。
【0135】
また、上記の説明においては、ウィック130の実効空孔径が0.1~50μmなどであることを説明したが、これに限定されない。例えば、ウィック130が互いに異なる特性細孔径を有するバイポーラスウィックの場合、実効空孔径が小さい側のピークの値が、3.5~49μmであってもよい。また、ウィック基部131、ウィック爪部133およびウィック凸部137の実効空孔径が互いに異なる構成であってもよい。例えば、ウィック130は、第1開口径であるウィック基部131およびウィック爪部133と、第1開口径とは異なる(第1開口径よりも大きい)第2平均開口径であるウィック凸部137とを有する構成であってもよい。
【0136】
また、上記の説明においては、マスク180を用いながらウィック130を塗布することを説明したが、これに限定されない。例えば、マスク180に替えて、スクリーン印刷に用いられるスクリーン、ディスペンサー、あるいはマスキングテープ280など周知の技術を用いて、ウィック130を予め定め領域に塗布するような態様としてもよい。また、コーターによってシート状(薄板状)のウィック材を形成後、所定の形状に切り出すことでウィック130を形成してもよい。同様に、接合材150も塗布形成の方法は限定されない。
【0137】
また、上記の説明においては、ウィック130を塗布により形成することを説明したが、ウィック130の形成方法はこれに限定されない。例えば、ウィック130の材料を粉末の状態で第1側板111に配置し、焼結させることでウィック130を形成してもよい。例えば、第1側板111におけるウィック130を形成する位置に、0.3mm程度の厚みで粉末の材料を敷き詰める態様であってもよい。また、板状の部材をエッチング加工により細孔を形成し、ウィック130を形成してもよい。なお、上記の実施形態のように、粉末の材料とバインダーをあわせてペーストとすることにより、ウィック130の材料を薄く均一に塗布することが可能となり得る。
【0138】
また、ウィック130となる材料は、上述の金属製の多孔質体に限定されるものではない。粉体に加工可能であり、加熱により互いの位置が固定することを可能とするものであれば、セラミック多孔質体、ガラス多孔質体、多孔質繊維など他の材料であってもよい。
【0139】
また、上記の説明においては、第1凹部110および第2凹部120などの構成をエッチングにより形成することを説明したがこれに限定されない。例えば、第1側板111およびに第2側板121に切削やプレス等の周知の加工を施すことで、第1凹部110および第2凹部120を形成してもよい。また、第1側板111および第2側板121の間にウィック130および接合材150を配置する空間を形成することが可能であれば、第1凹部110および第2凹部120のいずれか一方のみを形成する構成であってもい。なお、上記説明のように第1凹部110をエッチングにより形成することで、第1底面114を粗面化し、第1側板111に対してウィック130をより確実に固定し得る。また、第2凹部120をエッチングにより形成することで、第2底面124を粗面化し、第2側板121に対して接合材150をより確実に固定し得る。
【0140】
また、第1側板111および第2側板121は、厚み方向の寸法を抑制することが可能な構成であれば、概形が板状であるものに限定されるものではない。例えば、第1側板111および第2側板121は、板面に凹凸が形成されている構成や、板面に他の部材が固定された構成であってもよい。付言すると、第1側板111および第2側板121は、それぞれ本体と本体を覆う蓋体として捉えることができる。また、ループ型ヒートパイプ1は、第1側板111および第2側板121とは別体の枠体を第1側板111および第2側板121によって挟み込むことによって形成してもよい。
【0141】
また、上記の説明においては、接合材150を、接合材150の材料を塗布した後に焼結させることで形成することを説明したが、これに限定されない。例えば、接合材150は、予め板状部材として形成し、第2側板121およびウィック130の間に板状の接合材150を挟み込んだ状態で加熱することで、第2側板121およびウィック130に対して固定する構成であってもよい。また、図示の例とは異なり、接合材150を設けない構成であってもい。
【0142】
また、上記の説明においては、第1側板111および第2側板121をレーザで接合することを説明したが、これに限定されない。例えば、第1凹部110および第2凹部120への半田やロウ材の流入を抑制することができれば半田付けやロウ付けにより第1側板111および第2側板121の接合を行ってもよい。また、流路の閉塞を防ぐことができれば、拡散接合を用いてもよい。また、接着剤による接着、超音波接合、摩擦撹拌接合などにより接合を行ってもよい。
【0143】
また、上記の説明においては、熱交換器としてループ型ヒートパイプ1について説明をしたが、二相熱輸送デバイスであれば、特にこれに限定されない。例えば、ベーパーチャンバなど他の熱交換器において、ウィック130および第1側板111などの上記構成を採用してもよい。
【0144】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0145】
ループ型ヒートパイプ1は、熱交換器の一例である。ウィック130は、蒸発体の一例である。第1側板111は、本体の一例である。第2側板121は、蓋体の一例である。第1凹部110は、流路の一例である。支柱210は、案内部の一例である。レーザLAは、加熱部の一例である。携帯電話800は、装置の一例である。発熱体10は、発熱体の一例である。
【符号の説明】
【0146】
100…ループ型ヒートパイプ、110…第1凹部、111…第1側板、121…第2側板、130…ウィック、210…支柱