(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078311
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】積層体及び電気化学素子
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240603BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240603BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20240603BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G01N27/409 100
H01B1/06 A
H01B1/08
C04B35/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190776
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 洋二
(72)【発明者】
【氏名】大山 旬春
(72)【発明者】
【氏名】井手 慎吾
【テーマコード(参考)】
2G004
5G301
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BE10
2G004BE22
2G004BM07
2G004ZA04
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA18
5G301CA23
5G301CA25
5G301CA27
5G301CA28
5G301CD01
(57)【要約】
【課題】検出精度に優れたCO
2センサを提供する。
【解決手段】第1電極層、固体電解質層及び第2電極層をこの順に有する積層体であって、前記固体電解質がイオン伝導体であり、前記第1電極層が第1族元素及び希土類元素(Ceを除く)の酸化物と、白金族元素又は金(Au)元素との複合体である、積層体を提供する。当該積層体の断面において、前記白金族元素又は前記金(Au)元素が粒状に分布していることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、固体電解質層及び第2電極層をこの順に有する積層体であって、
前記固体電解質がイオン伝導体であり、
前記第1電極層が第1族元素及び希土類元素(Ceを除く)の酸化物と、白金族元素又は金(Au)元素との複合体である、積層体。
【請求項2】
前記積層体の断面において、前記白金族元素又は前記金(Au)元素が粒状に分布している、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1族元素がリチウム(Li)であり、前記希土類元素がイットリウム(Y)である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記希土類元素の酸化物がLiYO2である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記固体電解質が酸化物イオン伝導体である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記固体電解質層が、一種以上の希土類の酸化物を含む請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記固体電解質層が、シリコン又はホウ素を含有する酸化物を含む請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
前記固体電解質が、ランタン族元素と、イットリウム及びスカンジウムの少なくとも一種以上とを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項9】
前記固体電解質が、式(1):A9.3+x-aYa[Si6.0-yMy]O26.0+z(式中、Aは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、少なくともLaを含む。Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Ge、Zr、Ta、Nb、B、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。xは-1.4以上1.5以下の数である。yは0.0以上3.0以下の数である。zは-5.0以上5.2以下の数である。aは0.1以上10.4以下の数である。Siのモル数に対するAのモル数の比率は1.4以上3.7以下である。)で表される、請求項4に記載の積層体。
【請求項10】
前記固体電解質層の厚さが、50nm以上50μm以下である請求項4に記載の積層体。
【請求項11】
前記固体電解質層と、前記第1電極層又は前記第2電極層の少なくともいずれか一方との間に、希土類を含有する酸化物を含む中間層を有する請求項4に記載の積層体。
【請求項12】
請求項4又は5に記載の積層体が基板上に形成されている、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2センサとして機能する固体電解質と電極の積層体、及び当該積層体を有する電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2センサとしては、固体電解質の一方の面にLi2CO3やAuを含む検知極、他方の面に多孔質体のPtなどを含む基準極を設け、ヒータにより固体電解質をそのイオン伝導に適した温度に保持しながら、この2つの電極間の電位差を測定することにより、CO2濃度を測定するものが、これまでに提案されている。
【0003】
非特許文献1は、CO2センサとしてLi2CO3及びLi2CeO3を電極に用いたCO2センサを提案している。また、非特許文献2は、CO2センサとしてLi2CO3及びLi2ZrO3を電極に用いたCO2センサを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Novel Solid Electrolyte CO2 Gas Sensors Based on c-Axis-Oriented Y-Doped La9.66Si5.3B0.7O26.14,Nan Ma et al., April 22, 2020, pages 21515-21502, volume 12, issue number 19, ACS Appl. Mater. and Interfaces
【非特許文献2】Solid State potentiometric CO2 sensors using anion conductor and metal carbonate, Norio Miura et al., Sensors and Actuators B 24-25(1995)260-265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載されたCO2センサは、CO2濃度の検出精度に改善の余地がある。
したがって本発明の課題は、CO2センサの検出精度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決すべく本発明者は鋭意検討したところ、固体電解質を挟んで対向配置される一方の電極を、所定の組成を有する酸化物と白金族元素又は金(Au)元素との複合体として構成することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
本発明は前記の知見に基づきなされたものであり、第1電極層、固体電解質層及び第2電極層をこの順に有する積層体であって、
前記固体電解質がイオン伝導体であり、
前記第1電極層が第1族元素及び希土類元素(Ceを除く)の酸化物と、白金族元素又は金(Au)元素との複合体である、積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出精度に優れたCO2センサに使用可能な積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す厚み方向に沿う断面の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の積層体の他の実施形態を示す厚み方向に沿う断面の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の積層体のさらに他の実施形態を示す厚み方向に沿う断面の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の積層体のCO
2センサとしての検出精度の評価のため、各CO
2ガス濃度に対して電極間に発生した電位差をプロットした片対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には本発明の(CO
2センサとして)積層体の一実施形態が示されている。同図に示す積層体10は第1電極層11、固体電解質層12及び第2電極層13をこの順に有する積層体である。
【0011】
図1においては、第1電極層11、固体電解質層12、及び第2電極層13が異なるサイズで示されているが、これらの大小関係はこれに限られない。例えば第1電極層11、固体電解質層12、及び第2電極層13は、いずれか二つ以上の層が同じサイズであってもよい。
【0012】
また
図2に示すように、他の実施形態として中間層14を、固体電解質層12と、第1電極層11又は第2電極層13と少なくとも一方との間に配置することが好ましく、固体電解質層12と第1電極層11の間に中間層14を設けることがより好ましい。
図2においては、固体電解質12のサイズと中間層14のサイズとが同じに示されているが、これらの大小関係はこれに限られず、例えば固体電解質層12と中間層14とが異なるサイズであってもよい。
【0013】
さらに
図3に示すように、他の実施形態として基板15を、第1電極層11の固体電解質層12に接する側と反対側に配置することが好ましい。
図3においては、第1電極層11のサイズと基板15のサイズとが同じに示されているが、これらの大小関係はこれに限られず、例えば第1電極層11と基板15とが異なるサイズであってもよい。
【0014】
次に、第1電極層11について説明する。
第1電極層11は、一種類又は二種類以上の第1族元素及び一種類又は二種類以上の希土類元素(Ceを除く)の酸化物と、白金族元素又は金のうち、少なくも一種と、を含む複合体からなる。白金族元素は一種類又は二種類以上を組み合わせて用い得るし、一種類又は二種類以上の白金族元素と金とを組み合わせて用い得る。原料である白金族元素又は金の形状は好ましくは粒子であり、第1電極層11において白金族元素又は金は上記酸化物中に粒子状に存在していることが好ましい。この酸化物の粒子の粒径は、300nm以上5000nm以下であることが好ましい。また、第1電極層11酸化物に対する白金族元素及び金の合計質量の割合は、2.3倍以上9.0倍以下であることが好ましく、4.0倍以上7.0倍以下であることがより好ましい。なお、この粒径はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができ、平均粒径とは累積体積50容量%における体積累積粒径をいう。
【0015】
第1電極層11の組成は、例えば下記式(1):MAReO2で表すことができる。ここで、MはRu、Rh、Pd、Os、Ir及びPtから選択される白金族元素又はAuであり、好ましくは、Rh、Pd及びPtから選択される白金族元素又はAuである。Aは、Li、Na、K、Rb及びCsから選択される第1族元素であり、Reは、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuから選択される希土類元素である。第1電極層11を、上述のような複合体として構成することにより、CO2の分圧が変動した際に、CO2との反応が速やかに平衡に達するために、反応性又は検出精度に優れたCO2センサとしての積層体を提供できる。
AはLiが好ましい。Reは、、Y、La、Sm及びYbから選択される希土類元素であることがより好ましく、Yであることが更に好ましい。第1電極層11を構成する酸化物はLiYO2、LiLaO2であることが好ましく、、LiYO2であることがより好ましい。このような構成とすることで、CO2との反応が速やかに進行し、CO2センサに用いた際にCO2に対する検出精度により優れた積層体となる。
【0016】
第2電極層13は、電極として使用が可能な程度の導電性を有し、かつCO2に対して不活性な材料で構成される必要がある。例えば金属材料あるいは固体電解質層12に含まれるイオンと同じイオン種をキャリアとしてイオン伝導性と電子伝導性とを有する混合伝導性を有する酸化物から構成することができる。第2電極層13が金属材料から構成されている場合、該金属材料としては、化学的に安定性が高い利点があることから、白金族元素又は金を含んで構成されることが好ましい。白金族元素としては、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtが挙げられる。これらの元素は一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
第1電極層11は、所定の厚みを有すれば、積層体10全体としてのイオン伝導性を一層効果的に高めることができ、積層体10を検出精度に優れたCO2センサとすることができる。具体的には、第1電極層11の厚みは100nm以上であることが好ましく、500nm以上であることが更に好ましく、1000nm以上であることが最も好ましい。また上限値は特にないが、50000nm以下であることが好ましい。第1電極層11の厚みは触針式段差計や電子顕微鏡による断面観察によって測定することができる。
【0018】
第2電極層13は、所定の厚みを有すれば、積層体10全体としての抵抗を低減することができ、積層体10をCO2検知精度に優れたCO2センサとすることができる。具体的には、第2電極層13の厚みは50nm以上500nmであることが好ましく、100nm以上300nm以下であることが更に好ましい。第2電極層13の厚みは触針式段差計や電子顕微鏡による断面観察によって測定することができる。
【0019】
中間層14は、積層体10における固体電解質層12と、第1電極層11又は第2電極層13との界面抵抗の低減、そして固体電解質層12と第1電極層11又は第2電極層12との過剰な反応生成物の発生を抑制する目的で設けられる。特にこれらの効果は、固体電解質層12と、第1電極層11との間で顕著なため、この中間層14は固体電解質層12と第1電極層11の間に設けられることが好ましい。
【0020】
上述の界面抵抗を低減する観点から、中間層14を構成する材料として、蛍石構造の結晶構造を有するものを用いることが好ましい。
また、中間層14を構成する材料は、前記の蛍石構造を有することに加えて、希土類元素を含むことが、界面抵抗の低減の観点から好ましい。特に中間層14を構成する材料は、ランタンと、希土類元素(ただしランタン及びセリウムを除く。以下「Ln」ともいう。)と、を含む酸化セリウム(以下「La-LnDC」ともいう。)から構成されていることが好ましい。
【0021】
La-LnDCにおいては、母材である酸化セリウム(CeO2)に、ランタン及びセリウム以外の希土類元素が固溶(ドープ)した形で含まれている。ドープ元素である希土類元素は、通常、酸化セリウムの結晶格子中において、セリウムが位置するサイトを置換した形で該サイトに存在している。セリウム以外の希土類元素に加えて、ランタンはこの酸化セリウムの固溶体の中に含まれる形で存在している。すなわちランタンは、酸化セリウムの結晶格子中において、セリウムが位置するサイトを置換した形で該サイトに存在するか、あるいは希土類元素がドープされた酸化セリウムの結晶粒界に存在している。
【0022】
La-LnDCにおいて、酸化セリウムにドープされる希土類元素としては、例えば、
Sm、Gd、Y、Er、Yb、Dyなどが挙げられる。これらの希土類元素は一種を単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に中間層14は、Laと、Sm又はGdと、を含む酸化セリウムを含んで構成されることが、積層体10全体の酸化物イオン伝導性を一層高め得る点から好ましい。
【0023】
中間層14の厚みは、一定以上の厚みがあれば、固体電解質層12と第1電極層11との間の界面抵抗の低減、及び過剰な反応生成物の発生の抑制に有効であることが本発明者の検討の結果判明した。このため、中間層14の厚みは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることが更に好ましい。この中間層14の厚みは、触針式段差計や電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0024】
固体電解質層12はイオン伝導性を有する材料であればよく、より適用に好ましいイオン種としては酸化物イオン、Liイオン、水素イオン、Naイオンが挙げられる。この中でも化学的な安定性の観点から、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質を固体電解質層12に用いることが好ましい。
【0025】
固体電解質層12は、前述のように酸化物イオン伝導性を有することが好ましいが、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質の中でも、少なくとも二種以上の希土類元素と、シリコン又はホウ素とを含む酸化物材料から構成されることがより好ましい。このような材料は一般に希土類シリケートと呼ばれる物質である。
【0026】
前記の希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er等のランタン族元素と、Y及びScとからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素が挙げられる。また、固体電解質層12を構成する酸化物は、少なくとも二種以上の希土類元素と、シリコン又はホウ素のほかに、例えばBe、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素を含んでいてもよい。
【0027】
特に、固体電解質層12は、アパタイト型の結晶構造を有することが好ましく、配向性アパタイト型の結晶構造を有することがより好ましい。「配向性」とは、結晶が配向軸を有しているという意味である。固体電解質層12はc軸配向性を有していることが特に好ましい。
【0028】
前述の好ましい固体電解質層12をX線回折(以下「XRD」ともいう。)装置によって測定すると、(002)面、(004)面、(006)面などに特徴的な回折ピークが観察される。特に固体電解質層12は、これまで知られているランタンシリケートと比べて、(004)面に由来する回折ピークが観察されることが特徴的である。詳細には、CuKα1線を用いた粉末XRD装置により測定されるXRDパターンにおいて、固体電解質層12には、(004)面に由来する回折ピーク(以下、「004回折ピーク」という。同様に(002)面に由来する回折ピーク及び(006)面に由来する回折ピークをそれぞれ「002回折ピーク」及び「006回折ピーク」という。)が好ましくは2θ=51.9°±0.9°の位置に観察され、特に004回折ピークが2θ=51.9°±0.7°の位置に観察されることが好ましく、51.9°±0.6°の位置に観察されることが更に好ましい。51.9°±0.9°内に複数のピークが観察される場合であっても、X線回折パターンから004回折ピークを特定することができる。固体電解質層12に、2θ=51.9°±0.9°の位置に004回折ピークが観察されることで、固体電解質層12は結晶化していると言えるので、固体電解質層12は高いイオン伝導度を有するものとなる。
【0029】
さらに、前述の好ましい固体電解質層12には、004回折ピーク以外に、002回折ピークや006回折ピークなどの(00l)面(lは正整数を表す。)に由来するピークも観察される。それらの回折ピークの位置は、これまで知られているランタンシリケートと異なり、高角度側にシフトしている。固体電解質層12を構成する酸化物がc軸配向性を有していない場合であっても、X線回折パターンから(00l)面を特定することができる。
【0030】
固体電解質層12が、上述した位置に004回折ピークを示すようにするためには、固体電解質層12の組成を調整することが有効であることが本発明者の検討の結果判明した。固体電解質層12は、少なくとも二種以上の希土類元素、シリコン(Si)元素、又はホウ素(B)元素を含むことが好ましいところ、希土類元素としてランタン族元素と、イットリウム及びスカンジウムの少なくとも一種以上とを含むことが更に好ましい。また、固体電解質層12を構成する酸化物は、少なくともランタン(La)元素及びイットリウム(Y)元素を含むことがとりわけ好ましい。
【0031】
本発明において特に好ましく用いられる固体電解質層12の組成は、式(1):A9.3+x-aYa[Si6.0-yMy]O26.0+zで表される。
式(1)中、Aは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、少なくともLaを含む。
Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Ge、Zr、Ta、Nb、B、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。
xは-1.4以上1.5以下の数である。
yは0.0以上3.0以下の数である。
zは-5.0以上5.2以下の数である。
aは0.1以上10.4以下の数である。
Siのモル数に対するAのモル数の比率は1.4以上3.7以下である。
【0032】
式(1)において、Aとして挙げられた元素のうち、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaは、正の電荷を有するイオンとなり、アパタイト型六方晶構造を構成し得るランタノイド又は第2族元素であるという共通点を有する元素である。これらの中でも、固体電解質層12のイオン伝導度を一層高め得る観点から、AはLa、Nd、Ba、Sr、Ca及びCeからなる群より選ばれる一種、又は二種以上の組み合わせであり且つ少なくともLaを含むことが好ましい。
【0033】
式(1)におけるM元素は、特にB、Ge、Zn、W、Sn及びMoからなる群より選ばれた一種又は二種以上であることが好ましい。中でも、固体電解質層12の高配向度や高生産性の点で、B、Ge及びZnからなる群より選ばれた一種又は二種以上であることが一層好ましい。
【0034】
式(1)においてxは、固体電解質層12を構成する酸化物の配向度及びイオン伝導性を高め一層得る観点から、-1.0以上1.0以下であることが好ましく、中でも0.0以上0.7以下、その中でも0.4以上0.7以下であることが好ましい。
【0035】
式(1)中のyは、アパタイト型結晶格子におけるSi元素の位置を埋めるという観点から、0.4以上1.0未満であることが好ましく、中でも0.4以上0.9以下であることが好ましく、その中でも0.8以下、特に0.7以下、とりわけ0.5以上0.7以下であることが好ましい。
【0036】
式(1)中のzは、アパタイト型結晶格子内での電気的中性を保つという観点から、-5.0以上3.7以下であることが好ましく、-3.0以上2.0以下であることが好ましく、中でも-2.0以上1.5以下、その中でも-1.0以上1.0以下であることが好ましい。
【0037】
式(1)中、Siのモル数に対するAのモル数の比率、言い換えれば式(1)における(9.3+x-a)/(6.0-y)は、アパタイト型結晶格子における空間的な占有率を保つ観点から、1.4以上3.0以下であることが好ましく、1.5以上2.0以下であることが更に好ましい。
【0038】
式(1)で表される固体電解質層12の具体例としては、La8.6Y1.1(Si5.3B0.7)O26.7、La8.0Y1.7(Si5.3B0.7)O26.7、La7.5Y2.2(Si5.3B0.7)O26.7などを挙げることができるが、これらに限られない。
【0039】
固体電解質層12は、その好ましい態様において、ロットゲーリング法で測定した配向度、すなわちロットゲーリング配向度を0.6以上とすることができ、中でも0.8以上、その中でも特に0.9以上とすることができる。ロットゲーリング配向度を0.6以上とするためには、例えば国際公開第2017/018149号に記載の方法に従い製造することができる。
【0040】
固体電解質層12は、その好ましい態様において、イオン伝導率が600℃において10-9S/cm以上であり、中でも10-8S/cm以上、その中でも特に10-7S/cm以上である。酸化物イオン伝導率を600℃において10-7S/cm以上とするためには、上述したロットゲーリング配向度を0.6以上とすることが好ましい。尤も、かかる方法に限定されない。
【0041】
また、固体電解質層12を構成する材料の更に別の例として、イットリウム安定化ジルコニア(以下「YSZ」という。)、サマリウムドープセリア(以下「SDC」という。)、ガドリニウムドープセリア(以下「GDC」という。)、ランタンガレート、イットリウムドープ酸化ビスマス(以下「YBO」という。)及びイットリウムドープランタンからなる群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0042】
YSZとしては、ジルコニウム(Zr)とイットリウム(Y)の合計モル数に対するイットリウムのモル数の割合(Y/(Zr+Y))が0.05以上0.15以下であるものを用いることが好ましい。SDCとしては、セリウム(Ce)とサマリウム(Sm)の合計モル数に対する、サマリウムのモル数の割合(Sm/(Ce+Sm))が0.10以上0.25以下であるものを用いることが好ましい。GDCとしては、セリウム(Ce)とガドリニウム(Gd)の合計モル数に対するガドリニウムのモル数の割合(Gd/(Ce+Gd))が0.10以上0.25以下であるものを用いることが好ましい。YBOとしては、ビスマス(Bi)とイットリウム(Y)の合計モル数に対するイットリウムのモル数の割合(Y/(Bi+Y))が0.10以上0.30以下であるものを用いることが好ましい。
【0043】
固体電解質層12の厚みは、積層体10の電気抵抗を効果的に低下させる観点及び量産性の観点から、50nm以上50μm以下であることが好ましく、80nm以上1μm以下であることがより好ましく、100nm以上500nm以下であることが更に好ましく、200nm以上400nm以下であることが最も好ましい。固体電解質層12の厚みは、例えば触針式段差計や電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0044】
一方で、固体電解質層12を上述の厚みとした場合、Li2CO3のような反応性の高い第1族元素を含む材料を第1電極層11に用いると、固体電解質層12との化学的な反応により生成する反応層が、固体電解質層12の厚み方向全体に広がるため、固体電解質層12の機能が損なわれる。このため、積層体10をCO2センサとして作動させる場合に、実用的な検出精度を得ることができない。そこで本発明者が鋭意検討した結果、第1族元素及び希土類元素(Ceを除く)の酸化物、白金族元素又は金(Au)元素との複合体を第1電極層11に用いることで、反応生成物の発生量を抑え、固体電解質層12の厚みが薄い場合でも、良好な検出精度のCO2センサを提供することができることを見出した。希土類元素(Ceを除く)の酸化物の中でも、特にYを含む電極を使用することで更に良好な検出精度を得ることができる。
【0045】
本発明の積層体を上記のCO
2センサや電気化学素子として用いる場合には、剛性を高め、より使いやすい形態とするために、
図3に示すように積層体を基板上に形成することが好ましい。基板15は、例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、サファイア、酸化シリコン(SiO
2)、窒シリコン(Si
3N
4)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の汎用の基板材料から構成することができる。入手のしやすさ、形成のしやすさ、及び化学的に安定であることからシリコンからなるもので構成することが好ましい。なお、基板15の厚さは特に限定されるものではないが、基板の強度の観点から、100μm以上10mm以下であることが好ましく、100μm以上3000μm以下であることがより好ましく、100μm以上1000μm以下であることが最も好ましい。
【0046】
図1に示す実施形態の積層体10は、例えば以下に述べる方法で好適に製造することができる。まず、公知の方法で固体電解質層12を製造する。製造には、例えば特開2013-51101号公報や国際公開WO2016/111110に記載の方法を採用することができる。
【0047】
次いで必要に応じて、
図2に示すように固体電解質層12の一面に、中間層14を形成する。この形成には、例えばスパッタリングを用いることができる。スパッタリングに用いられるターゲットは例えば次の方法で製造することができる。希土類元素(ただしランタン及びセリウムを除く)の酸化物の粉末及び酸化セリウムの粉末を、乳鉢や、ボールミル等の攪拌機を使用して混合し、酸素含有雰囲気下で焼成し原料粉を得る。この原料粉をターゲットの形状に成形し、ホットプレス焼結する。焼結条件は、温度1000℃以上1400℃以下、圧力20MPa以上35MPa以下、時間60分以上180分以下とすることができる。雰囲気は、窒素ガスや希ガス等の不活性ガス雰囲気とすることができる。なお、スパッタリングターゲットの製造方法は、この製造方法に限定されるものではなく、例えばターゲット形状の成形体を大気中又は酸素含有雰囲気下で焼成してもよい。
【0048】
このようにして得られたターゲットを用い、例えば高周波スパッタリング法によって固体電解質層12の一面にスパッタリング層を形成する。このとき、固体電解質層12の温度を予め300℃以上500℃以下の範囲内に昇温し、該温度を保持しながらスパッタリングしてもよい。焼成条件は、焼成温度は900℃以上1500℃以下、焼成時間は30分以上120分以下とすることができる。焼成雰囲気は、大気等の酸素含有雰囲気とすることができる。この焼成温度に応じ、固体電解質層12に含まれるLaが中間層14へ拡散し、La-LnDCを形成できる。
次いで第1電極層11及び第2電極層13をそれぞれ形成する。
【0049】
第1電極層11は酸化物と金属の複合体であり、該酸化物の粉末と金属ペーストを含むスラリーを固体電解質層12の一面上に直接、又は固体電解質層12上の中間層14の一面に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を焼成することで多孔質体からなる第1電極層11が形成される。焼成条件は、焼成温度は500℃以上900℃以下、焼成時間は30分以上120分以下とすることができる。焼成雰囲気は、大気等の酸素含有雰囲気とすることができる。
前記のスラリーは、例えばα-テルピネオールにエチルセルロースを溶解させたバインダーに、前記酸化物の粉末と金属ペーストを加え濃度を調整することで得られる。スラリーにおける酸化物の粉末及び金属ペーストの濃度は例えば10質量%以上40質量%以下とすることができる。
【0050】
第2電極層13は、第1電極層を形成する面とは反対の固体電解質層12の一面上、又は固体電解質層12上の中間層14の一面上に形成される。第2電極層13の形成には各種の薄膜形成手段を用いることができる。具体的には蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法により第2電極層13を形成することができる。これらの各種方法のうち、固体電解質層12との十分な密着性を確保する観点から、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0051】
スパッタリング法によって第2電極層13を形成する場合には、白金等のターゲット及びイオン伝導性金属酸化物のターゲットを用いることで、白金等及びイオン伝導性金属酸化物を含む第2電極層13を形成することができる。また、スパッタリング時のガス圧を調整することにより、形成される第2電極13の多孔性を制御することができ、例えばガス圧を高圧にすることで第2電極層13の多孔性を向上することができる。第2電極層13における白金等及びイオン伝導性金属酸化物のそれぞれの割合は、スパッタリング法を行うときのターゲットへの供給電力を適切に設定することで調整が可能である。第2電極層13を形成後に焼成工程を行ってもよい。焼成条件は、焼成温度は500℃以上900℃以下、焼成時間は30分以上120分以下とすることができる。焼成雰囲気は、大気等の酸素含有雰囲気とすることができる。
【0052】
本発明の積層体をCO2センサとして用いる場合、第1電極層11側でCO2と反応することで、第2電極層13側との電位差が発生する。電位差は第1電極層11側の二酸化炭素ガス濃度に依存するので、電位差を測定することで、第1電極層11側の二酸化炭素ガス濃度を測定することができる。なお、固体電解質の種類を変更することで他のセンサに用いることもできる。
【0053】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の積層体を開示する。
〔1〕第1電極層、固体電解質層及び第2電極層をこの順に有する積層体であって、
前記固体電解質がイオン伝導体であり、
前記第1電極層が第1族元素及び希土類元素(Ceを除く)の酸化物と、白金族元素又は金(Au)元素との複合体である、積層体。
〔2〕前記積層体の断面において、前記白金族元素又は前記金(Au)元素が粒状に分布している、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕前記第1族元素がリチウム(Li)であり、前記希土類元素がイットリウム(Y)である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕前記希土類元素の酸化物がLiYO2である、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕前記固体電解質が酸化物イオン伝導体である、〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔6〕前記固体電解質層が、一種以上の希土類の酸化物を含む〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔7〕前記固体電解質層が、シリコン又はホウ素を含有する酸化物を含む〔1〕ないし〔6〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔8〕前記固体電解質が、ランタン族元素と、イットリウム及びスカンジウムの少なくとも一種以上とを含む、〔1〕ないし〔7〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔9〕前記固体電解質が、式(1):A9.3+x-aYa[Si6.0-yMy]O26.0+z(式中、Aは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、少なくともLaを含む。Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Ge、Zr、Ta、Nb、B、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。xは-1.4以上1.5以下の数である。yは0.0以上3.0以下の数である。zは-5.0以上5.2以下の数である。aは0.1以上10.4以下の数である。Siのモル数に対するAのモル数の比率は1.4以上3.7以下である。)で表される、〔6〕又は〔7〕に記載の積層体。
〔10〕前記固体電解質層の厚さが、50nm以上50μm以下である〔1〕ないし〔9〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔11〕前記固体電解質層と、前記第1電極層又は前記第2電極層の少なくともいずれか一方との間に、希土類を含有する酸化物を含む中間層を有する〔1〕ないし〔10〕のいずれか一つに記載の積層体。
〔12〕〔1〕ないし〔11〕のいずれか一つに記載の積層体が基板上に形成されている、電気化学素子。
【0054】
本発明の積層体を例えば二酸化炭素センサとして用いる場合には、
図1に示す積層体10を、二酸化炭素を含有する気相(例えば大気や内燃機関の排気ガス等)中に置くと、二酸化炭素の濃度に応じて、気相と第1電極層11とが接する三相界面で反応(以下の式(A)参照)が生じて平衡状態となる。一方、第2電極層側では、式(A)の反応に応じ、以下の式(B)の反応が進行する。つまり、以上の機序によって第1電極層11と第2電極層との間に起電力が生じる。この起電力は、気相中の二酸化炭素濃度に応じて変化するので、この起電力により、二酸化炭素を検知したり、その濃度を測定したりすることができる。
【0055】
【0056】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0058】
〔実施例1〕
本実施例では、以下の(1)-(5)の工程に従い
図1に示す積層体10を製造した。
(1)固体電解質層12形成用のスパッタリングターゲットの製造
組成式がLa
7.33Y
2Si
6O
26(YLSO)になるようにLa
2O
3、Y
2O
3とSiO
2を秤量混合し、エタノールを加えてボールミルで混合した。この混合物を乾燥させ、乳鉢で粉砕し、白金るつぼを使用して大気雰囲気下1650℃で3時間焼成した。この焼成物にエタノールを加えて再度遊星ボールミルで粉砕し粉末を得た。この粉末を得た。エタノールに分散させてスラリーを調製した。このスラリーを型に流し込み、エタノールを除去した後に、120℃で4時間乾燥させて成形体を得た。この成形体を800℃で3時間加熱した後、1620℃で5時間焼成して焼成体を得た。この焼成体を直径100mm、厚さ6mmの円盤状に切り出し、表面を研磨した。このターゲット材の組成は、La
7.46Y
1.87Si
6O
26であった。このターゲット材をCuからなるバッキングプレートにボンデングしてスパッタリングターゲットを得た。
【0059】
(2)第2電極層13の形成
シリコンからなる結晶方位<100>、厚み300μmの基板15を用意した。この基板の一面にスパッタリング法によって厚さ300nmの第2電極層13を形成した。
スパッタ法のターゲットとしては、2インチサイズの白金のターゲット及び4インチサイズのLa7.46Y1.87Si6O26のターゲットを用いた。二つのターゲットに同時に電力を供給する共スパッタリング法を用いて成膜を行った。白金についてはDCスパッタリング法を用い、YLSOについてはRFスパッタリング法を用いた。アルゴンガスの流量は50sccmとし、アルゴンの圧力は4Paとした。電力はそれぞれ90W、200Wとし、室温でスパッタリングした。第2電極層13はYLSOを15体積%含み、白金を85体積%含むものであった。
【0060】
(3)固体電解質層12の形成
前記(1)で得られたスパッタリングターゲットを用い、前記の(2)で得られた第2電極層13の表面に、RFスパッタリング法によって厚み150nmの固体電解質層12を形成した。アルゴンガスの流量は50sccmとし、アルゴンの圧力は0.5Paとした。電力は200Wとし、室温でスパッタリングした。
【0061】
(4)中間層14の製造
Sm0.2Ce1.8O2の粉体を、50mmφの成形器に入れて一方向から加圧して一軸成形し、引き続きホットプレス焼結を行った。焼結の条件は、窒素ガス雰囲気、圧力30MPa、温度1200℃、3時間とした。このようにしてスパッタリング用のターゲットを得た。このターゲットを用いて高周波スパッタリング法によって、YLSOからなる固体電解質層12の一面側にスパッタリングを行い、サマリウムがドープされた酸化セリウム(以下「SDC」ともいう。)のスパッタリング層を形成した。スパッタリングの条件は、RF出力が200W、アルゴンガスの圧力が0.5Paであった。このようにして中間層14を製造した。中間層14の厚みは20nmであった。このようにして形成された積層体を、大気雰囲気下、900℃で1時間焼成した。
【0062】
(5)第1電極層11の製造
Li2O3粉及びY2O3粉を準備し、これらをメノウ乳鉢で30分間手混合した後、大気雰囲気下に800℃で12時間焼成してLiYO2粉を得た。次いで、LiYO2粉(平均粒径 1.0μm)とAuペーストとの混合粉をα-テルピネオールにエチルセルロースを溶解させたバインダーと混合して作製したスラリーを、前記(4)で得られた中間層14上に塗布した。その後、600℃で1時間焼成することにより、厚さ30μmのAuとLiYO2の混合体からなる第1電極層11を得た。このようにして積層体10を製造した。
【0063】
〔実施例2〕
中間層14を設けない以外は、実施例1と同様にして積層体10を得た。
ようにして製造した。
【0064】
〔比較例1〕
第1電極層11として、AuとLiYO2の複合体の代わりに、Auと炭酸リチウム(Li2CO3)及びリチウム・セリウム酸化物(Li2CeO3)の複合酸化物を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体10を得た。
なお、上記のドープ複合酸化物は、以下の手順により作製した。Li2CO3粉とCeO2粉と、を重量%でCeO2粉が50%となるようにメノウ乳鉢で90分間手混合した後、大気雰囲気下、800℃で4時間焼成してLi2CeO3粉を得た。次いで、Li2CeO3粉、Li2CO3粉及びAu粉の混合粉をα-テルピネオールにエチルセルロースを溶解させたバインダー中に入れ、600℃で乾燥させた。以上の手順により、厚さ30μmのAuとLi-2CO3及びLi2CeO3の複合酸化物からなる第1電極11を得た。このようにして積層体10を製造した。
【0065】
〔評価1〕
実施例1ないし2並びに比較例1で得られた積層体について、CO
2センサとしての検出精度の評価を行った。
評価方法は、所定の濃度のCO
2ガスを積層体に流しながら第1電極層と第2電極層の間に発生する電位差を測定した。なお、この測定は積層体をヒータで450℃に加熱しながら実施した。
各CO
2ガス濃度に対して電極間に発生した電位差をプロットした片対数グラフを
図4に示す。それぞれのプロットに対して最小二乗法による対数近似を行い、近似式及び決定係数(R2)を導出した。近似式の傾きの比較から、実施例1及び2の方が比較例1に比べてCO
2濃度に対する電位差の傾きが明らかに大きい。この傾きが大きいほど、微小なCO
2濃度変化をより大きな電位差として検出することが可能なため、検出精度に優れたセンサである。
【0066】
また、
図4に示すように実施例1と2の比較から実施例1の方が近似直線の決定係数(R
2)が0.9969と、実施例2の0.8525に対して1により近い値であることを確認できる。この結果から、実施例1すなわち中間層を導入した積層体の方がより精度の高いセンサ検出精度が得られることがわかった。
【0067】
【0068】
上記の結果から明らかなとおり、実施例で得た積層体はCO2センサとして検出精度に優れることが分かる。