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  • 特開-車両用制動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078312
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20240603BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190781
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲一郎
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB25
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH50
3D048HH53
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR35
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA07
3D246GB37
3D246HA02A
3D246JB11
3D246JB12
3D246LA04Z
3D246LA15Z
3D246LA33Z
3D246LA57Z
3D246LA61Z
3D246LA63Z
3D246LA73Z
(57)【要約】
【課題】初期位置設定制御を含む特定制御を行う実用的な車両用制動装置を提供する。
【解決手段】実施形態の車両用制動装置は、ブレーキ操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、車両の車輪に制動力を付与するホイルシリンダと、前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとを接続する主管路を開閉する開閉弁と、前記主管路のうち前記開閉弁と前記ホイルシリンダとの間の部分に接続されているシリンダ装置と、前記シリンダ装置のピストンを駆動する電気モータとを備えている車両用制動装置において、前記主管路が前記開閉弁により開放されている状態で前記ピストンを前記電気モータにより駆動させる特定制御中に、前記ブレーキ操作の有無を判定する判定部と、前記判定部により前記特定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、前記主管路を前記開閉弁により開放させる制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、車両の車輪に制動力を付与するホイルシリンダと、前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとを接続する主管路を開閉する開閉弁と、前記主管路のうち前記開閉弁と前記ホイルシリンダとの間の部分に接続されているシリンダ装置と、前記シリンダ装置のピストンを駆動する電気モータとを備えている車両用制動装置において、
前記主管路が前記開閉弁により開放されている状態で前記ピストンを前記電気モータにより駆動させる特定制御中に、前記ブレーキ操作の有無を判定する判定部と、
前記判定部により前記特定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、前記主管路を前記開閉弁により開放させる制御部と、
を備えていることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
前記特定制御には、前記主管路が前記開閉弁により開放されている状態で、前記ピストンの前記電気モータの駆動により前記ピストンをその初期位置に向けて移動させて、前記ピストンの前記初期位置を設定する初期位置設定制御が少なくとも含まれ、
前記制御部は、前記初期位置設定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが前記判定部により判定されている場合に、当該初期位置設定制御を継続する、
請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記初期位置設定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが前記判定部により判定された場合、当該ブレーキ操作が終了し、かつ、当該初期位置設定制御により前記ピストンの前記初期位置が設定された後に、前記開閉弁により前記主管路を閉鎖させて、当該初期位置に基づいて前記シリンダ装置を制御する、請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記初期位置設定制御において、前記ブレーキ操作がなされている場合の前記ピストンの移動速度を、前記ブレーキ操作がなされていない場合の前記ピストンの移動速度よりも遅くする、請求項2又は3に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記判定部により前記特定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、前記ピストンの前記電気モータによる駆動を停止する、請求項1に記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動シリンダ装置のピストンを初期位置方向に駆動しつつ、ピストンを駆動する電気モータへの通電量の変化又は電気モータの位置の変化に基づいて、ピストンの初期位置を設定する制御(以下「初期位置設定制御」という)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許出願公開第1020180128534号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライバ踏力による液圧を遮断する弁(マスタカット弁)及び一つのリザーバタンクを有する車両用制動システムにおいては、電動シリンダ装置のピストンの初期位置決定時は電動シリンダ装置内の体積変化が生じるため、マスタカット弁を解放状態とすることが望まれる。
【0005】
一方、初期位置設定制御の実施中にブレーキ操作がなされた場合には、電動シリンダ装置のピストンの初期位置を確定することができない。
電動シリンダ装置のピストンの初期位置が確定されていない状態においては、液圧制御を行うわけにはいかない。
【0006】
このため、電動シリンダ装置のピストンの初期位置確定後に液圧制御を開始することとなるが、液圧制御開始時点でブレーキペダルが操作中である場合、マスタカット弁を閉じてしまうとマスタシリンダ内の圧力(マスタ圧)が急激に上昇し、ブレーキペダルを押し返す力が増大し、ペダルフィーリングが変化してしまう虞があった。このような課題については、特許文献1には何ら開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、初期位置設定制御を含む特定制御を行う実用的な車両用制動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の車両用制動装置は、ブレーキ操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダと、車両の車輪に制動力を付与するホイルシリンダと、前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとを接続する主管路を開閉する開閉弁と、前記主管路のうち前記開閉弁と前記ホイルシリンダとの間の部分に接続されているシリンダ装置と、前記シリンダ装置のピストンを駆動する電気モータとを備えている車両用制動装置において、前記主管路が前記開閉弁により開放されている状態で前記ピストンを前記電気モータにより駆動させる特定制御中に、前記ブレーキ操作の有無を判定する判定部と、前記判定部により前記特定制御中に前記ブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、前記主管路を前記開閉弁により開放させる制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の車両用制動装置の概要構成ブロック図である。
図2図2は、実施形態の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照して本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の車両用制動装置の概要構成ブロック図である。
車両用制動装置10は、ECU11と、マスタリザーバ12と、マスタシリンダ13と、ホイルシリンダ14A、14Bと、マスタカット弁(開閉弁)15と、電動シリンダ装置16A、16Bと、電気モータ17A、17Bと、ストロークシミュレータ18と、ストロークシミュレータ弁19と、主管路20と、ブレーキドラム21A、21Bと、系統分離弁22A、22Bと、を備えている。
【0011】
ECU11は、車両用制動装置10全体を制御する制御部として機能するともに、主管路20がマスタカット弁15により開放されている状態で電動シリンダ装置16A、16Bを構成しているピストンを電気モータ17A、17Bにより駆動させる特定制御中に、ドライバによるブレーキ操作の有無を判定する判定部として機能する。
【0012】
マスタリザーバ12は、作動液体(フルード)用のタンクであり、その内部に制動液が貯蔵されている。マスタリザーバ12は、マスタシリンダ13に接続されている。
マスタシリンダ13は、ブレーキ操作に応じて液圧を発生させる。
【0013】
ホイルシリンダ14A、14Bは、電動シリンダ装置16A、16Bのピストンの駆動により、ブレーキドラム21A、21Bを介して車両の対応する車輪に制動力を与える。
マスタカット弁15は、ECU11の制御下でマスタシリンダ13とホイルシリンダ14A、14Bとを接続する主管路20を開閉する。
【0014】
電動シリンダ装置16A、16Bは、主管路20のうちマスタカット弁15とホイルシリンダ14A、14Bとの間の部分に接続されている。
【0015】
電気モータ17A、17Bは、ECU11の制御下で、電動シリンダ装置16A、16Bのギヤ16A3、16B3およびねじ16A2、16B2を介して電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1を駆動する。電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の駆動によってフルードが押し出され、ホイルシリンダ14A、14Bに液圧が発生し、車輪に制動力が付与される。
【0016】
ストロークシミュレータ18は、マスタシリンダ13と液圧回路の間に配置されており、ばねで支持されたプランジャを内蔵している。そして、ストロークシミュレータ18は、マスタカット弁15が閉状態である場合に、プランジャの移動により、作動液体(フルード)の移動を吸収すると同時に、ブレーキペダルBPを踏んだときの反力を発生させる。
【0017】
ストロークシミュレータ弁19は、マスタカット弁15が閉状態である場合に、開状態となって、マスタシリンダ13とストロークシミュレータ18との間の主管路20を接続してストロークシミュレータ18に上述の動作を行わせる。
【0018】
主管路20は、マスタシリンダ13とホイルシリンダ14A、14Bとを接続して、作動液体(フルード)を移動可能とする。
ホイルシリンダ14A、14Bに液圧が発生することにより、ホイルシリンダ14A、14B内のピストンと連動する摩擦材が駆動され、摩擦材がブレーキドラム21A、21Bに押し当てられることで車両の対応する車輪に制動力を与える。
【0019】
上記構成において、電動シリンダ装置16Aは、左前輪とともに回転駆動されるブレーキドラム21Aを介して車両の左前輪に制動力を付与する。
電気モータ17Aは、ブレーキドラム21Aを介して車両の左前輪に制動力を付与するに際して、電動シリンダ装置16Aのピストン16A1を駆動する。
【0020】
一方、電動シリンダ装置16Bは、右前輪ととともに回転駆動されされるブレーキドラム21Bを介して車両の右前輪に制動力を付与する。
電気モータ17Bは、ブレーキドラム21Bを介して車両の右前輪に制動力を付与するに際して、電動シリンダ装置16Bのピストン16B1を駆動する。
【0021】
また、ECU11は、主管路20がマスタカット弁15により開放されている状態で電動シリンダ装置16Aのピストン16A1あるいは電動シリンダ装置16Bのピストン16B1を電気モータ17Aあるいは電気モータ17Bにより駆動させる特定制御中に、判定部として機能し、ブレーキ操作の有無を判定する。
【0022】
さらにECU11は、判定部として、特定制御中にブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、主管路20を開閉弁としてのマスタカット弁15により開放させる制御部として機能する。
【0023】
次に実施形態の動作を説明する。
この場合において、マスタカット弁15は、常開(Normally Open)弁であるため初期のECU起動処理の完了時には開状態にあるものとする。
【0024】
図2は、実施形態の処理フローチャートである。
まず、ECU11は、ECU起動処理が完了すると(ステップS11)、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置未取得状態か否かを判断する(ステップS12)。
【0025】
ステップS12の判断において、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置未取得状態ではない、すなわち、既に電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置を取得している場合には(ステップS12;No)、ECU11は、処理をステップS16に移行する。
【0026】
ステップS12の判断において、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置未取得状態である場合には(ステップS12;Yes)、ECU11は、初期位置を取得すべく初期位置取得駆動を行う(ステップS13)。
続いてECU11は、初期位置の取得が完了したか否かを判断する(ステップS14)。
【0027】
ステップS14の判断において未だ初期位置取得が完了していない場合には(ステップS14;No)、ECU11は、ステップS13の初期位置取得駆動を継続する。
ステップS14の判断において、初期位置取得が完了した場合には(ステップS14;Yes)、ECU11は、ブレーキ操作がなされたか否かを判断する(ステップS15)。
【0028】
ステップS15の判断において、ブレーキ操作がなされている場合には(ステップS15;No)、ECU11は、待機状態となる。
ステップS15の判断において、未だブレーキ操作がなされていない場合には(ステップS15;Yes)、ECU11は、制御開始許可状態に移行する(ステップS16)。
【0029】
制御開始許可状態に移行すると、ECU11は、マスタカット弁15を遮断状態とする(ステップS17)。
これと並行して、ECU11は、、マスタカット弁15が閉状態であるので、ストロークシミュレータ弁19を開状態とする。
【0030】
これにより、マスタシリンダ13とストロークシミュレータ18との間の主管路20は接続されるので、ストロークシミュレータ18は、プランジャの移動により、作動液体(フルード)の移動を吸収すると同時に、ブレーキペダルBPを踏んだときの反力を発生させる。
【0031】
さらにECU11は、ブレーキペダルBPの踏み込み量をブレーキペダルセンサにより検出し、踏み込み量に対応して電気モータ17Aを駆動する。
この結果、電気モータ17Aは、電動シリンダ装置16Aのピストン16A1を駆動し、ブレーキドラム21Aを介して車両の左前輪に制動力を付与する。
【0032】
同様にECU11は、ブレーキペダルBPの踏み込み量をブレーキペダルセンサにより検出し、踏み込み量に対応して電気モータ17Bを駆動する。
この結果、電気モータ17Bは、電動シリンダ装置16Bのピストン16BA1を駆動し、ブレーキドラム21Aを介して車両の右前輪に制動力を付与する。
【0033】
これらの結果、ブレーキペダルBPの踏み込み量に応じた制動力がブレーキドラム21A及びブレーキドラム21Bを介して車両の左前輪及び右前輪に付与される。
したがって、ペダルフィーリングを一定に保ちつつ、最適な制動がなされることとなる。
【0034】
初期位置取得駆動(ステップS13)において、ブレーキ操作がなされている場合の電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の移動速度は、ブレーキ操作がなされていない場合のピストン16A1、16B1の移動速度よりも遅くされる。
【0035】
次に実施形態の効果について説明する。
上記実施形態においては、車両用制動装置10は、ブレーキ操作に応じた液圧を発生させるマスタシリンダ13と、車両の車輪に制動力を付与するホイルシリンダ14A、14Bと、マスタシリンダ13とホイルシリンダ14A、14Bとを接続する主管路20を開閉するマスタカット弁15と、主管路20のうちマスタカット弁15とホイルシリンダ14A、14Bとの間の部分に接続されている電動シリンダ装置16A、16Bと、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1を駆動する電気モータ17A、17Bと、を備えている。
【0036】
そして、ECU11は、主管路20がマスタカット弁15により開放されている状態でピストン16A1、16B1を電気モータ17A、17Bにより駆動させる特定制御中に、前記ブレーキ操作の有無を判定する判定部として機能する。
【0037】
さらにECU11は、判定部として特定制御中にブレーキ操作がなされていることが判定されている場合に、主管路20をマスタカット弁15により開放させる制御部と、して機能する。
【0038】
上述したように、実施形態によれば、特定制御中は主管路20が開放されている。
したがって、この状態でブレーキ操作がなされている場合には、電動シリンダ装置16A、16Bによりホイルシリンダ14A、14B内の液圧を制御すべく、主管路20を閉鎖して電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1を電気モータ17A、17Bにより駆動することが考えられる。
【0039】
しかしながら、この場合、主管路20の開閉に起因してマスタシリンダ13内のフルードの液圧が急変して、ブレーキ操作のフィーリングが悪化することが懸念される。
【0040】
そこで、本実施形態では、電動シリンダ装置16A、16Bによりホイルシリンダ14A、14B内の液圧を制御すべく、主管路20を閉鎖して電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1を電気モータ17A、17Bにより駆動する場合に主管路20を開閉弁としてのマスタカット弁15により開放するようにしている。
【0041】
この結果、ブレーキ操作に応じたフルードがホイルシリンダ14A、14Bに供給されるため、ブレーキ操作に応じた液圧をホイルシリンダに発生させることができる。
また、ブレーキ操作中に主管路20が開閉されないため、その開閉に起因する操作フィーリングの悪化を防止するこができる。
【0042】
さらに、上記特定制御には、主管路20が開閉弁としてのマスタカット弁15により開放されている状態で、ピストン16A1、16B1の電気モータ17A、17Bの駆動により、ピストン16A1、16B1をその初期位置に向けて移動させて、ピストン16A1、16B1の初期位置を設定する初期位置設定制御が少なくとも含まれている。
【0043】
この場合において、制御部としてのECU11は、初期位置設定制御中にブレーキ操作がなされていることが判定部としてのECU11により判定されている場合に、当該初期位置設定制御を継続するようにしている。
【0044】
さらに、初期位置設定制御では、主管路20がマスタカット弁15により開放される。
このため、初期位置設定制御中にブレーキ操作がなされたとしても、その初期位置設定制御を継続することができるので、操作フィーリングの悪化を抑制しつつ、ピストン16A1、16B1の初期位置を速やかに設定することができる。
【0045】
また、制御部として機能するECU11は、初期位置設定制御中にブレーキ操作がなされていると判定した場合、当該ブレーキ操作が終了し、かつ、当該初期位置設定制御によりピストン16A1、16B1の初期位置が設定された後に、開閉弁としてのマスタカット弁15により主管路20を閉鎖させて、当該初期位置に基づいて電動シリンダ装置16A、16Bを制御する。
【0046】
上記構成において、初期位置設定制御中にブレーキ操作がなされた場合に初期位置設定制御を継続して、ピストン16A1、16B1の初期位置を速やかに設定し、ブレーキ操作が終了してから開閉弁により主管路を閉鎖させるため、ブレーキ操作中に開閉弁を閉鎖することによる操作フィーリング悪化を抑制することができる。
【0047】
また、制御部として機能するECU11は、初期位置決定制御において、ブレーキ操作がなされている場合のピストン16A1、16B1の移動速度を、ブレーキ操作がなされていない場合のピストン16A1、16B1の移動速度よりも遅くしている。
【0048】
ブレーキ操作が行われると、その操作に応じたフルードがマスタシリンダ13から主管路20に送出される。その際、ピストンが初期位置に向けて移動していると、マスタシリンダから送出されているフルードの一部が、ホイルシリンダ14A、14Bに供給されることなくシリンダ装置16A、16Bに供給されてしまう。
【0049】
これにより、ブレーキ操作の操作フィーリングが悪化することが懸念されるが、本実施形態によれば、初期位置決定制御において、ブレーキ操作がなされている場合のピストン16A1、16B1の移動速度を、ブレーキ操作がなされていない場合のピストン16A1、16B1の移動速度よりも遅くしている。
【0050】
このため、電動シリンダ装置16A、16Bに供給されるフルードを低減することができ、操作フィーリングの悪化を一層抑制することができる。
【0051】
また、制御部として機能するECU11は、判定部として特定制御中にブレーキ操作がなされていることが判定している場合に、ピストン16A1、16B1の電気モータ17A、17Bによる駆動を停止するように構成することもできる。
【0052】
上記構成において、特定制御中にブレーキ操作がなされている場合には、ピストン16A1、16B1の電気モータ17A、17Bによる駆動を停止するため、フルードが電動シリンダ装置16A、16Bに供給されてしまうことを防止することができ、上記操作フィーリングの悪化を一層抑制することができる。
【0053】
また、図1に示したように、実施形態の車両用制動装置10においては、マスタリザーバ12と電動シリンダ装置16A、16Bとを接続する管路であって、マスタリザーバからシリンダ装置の液圧室にフルードを供給するための管路である、リフィル管路が設けられていない。
【0054】
したがって、リフィル管路によりマスタリザーバ12から電動シリンダ装置16A、16Bにフルードが供給されることがない。
リフィル管路が設けられない液路構成では、主管路20が開閉弁により閉鎖された状態でシリンダ装置のピストンを初期位置に向けて移動させると、電動シリンダ装置16A、16B内の圧力が負圧になるおそれがある。
【0055】
電動シリンダ装置16A、16B内の圧力が負圧になると、フルードの中に気泡が発生してしまい、気泡を潰すためにピストンのストローク量が余分に必要となり、ピストンストローク量と発生する制動力との関係がずれることとなる。
【0056】
さらに、負圧となっているピストン位置を初期位置とした場合には、ピストンストローク量と発生する制動力との関係がずれてしまうという不具合が生じることとなる。本実施形態によれば、初期位置設定制御中に主管路20がマスタカット弁15により開放されていることから、シリンダ装置のピストンを初期位置に向けて移動させても電動シリンダ装置16A、16B内の圧力が負圧になることがないので、上記各不具合が生じることがない。
【0057】
以上の説明のように、本実施形態によれば、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置の決定中にブレーキ操作を行っても初期位置決定処理を継続し、マスタカット弁15もその間開放している。そして、ブレーキ操作がある場合はピストン16A1、16B1の初期位置が決定してもマスタカット弁は閉めず、モータ駆動を行わない。このため、本実施形態においては、ピストン16A1、16B1の初期位置の決定中の間は踏力によって発生した液圧で制動力を発生させている。
【0058】
また、ピストン16A1、16B1の初期位置決定が完了し、ブレーキ操作がオフされることで制御開始を許可し、マスタカット弁を閉じてモータ駆動を行うので、。ブレーキ操作の操作フィーリングが悪化することなく、確実に最適な制動制御を行うことができる。
【0059】
また、電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置を決定する処理は、ECU11を起動して、ECU起動処理を行った直後になされるのが望ましく、一度電動シリンダ装置16A、16Bのピストン16A1、16B1の初期位置を決定できれば、その後再び処理を実施する必要はない。
【0060】
以上の説明においては、マスタカット弁を制御開始許可以降は常時遮断としていたが、制御開始許可以降はブレーキ操作などによって開け閉めしても問題はない。
【符号の説明】
【0061】
10…車両用制動装置、11…ECU、12…マスタリザーバ、13…マスタシリンダ、14A、14B…ホイルシリンダ、15…マスタカット弁(開閉弁)、16A、16B…電動シリンダ装置、17A、17B…電気モータ、18…ストロークシミュレータ、19…ストロークシミュレータ弁、20…主管路、21A、21B…ブレーキドラム、22A、22B…系統分離弁。
図1
図2