(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078315
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】タービンロータ、カートリッジ、及び、医療用切削器械
(51)【国際特許分類】
A61C 3/02 20060101AFI20240603BHJP
A61C 1/05 20060101ALI20240603BHJP
A61C 1/12 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
A61C3/02 Z
A61C1/05 A
A61C1/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190794
(22)【出願日】2022-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大和
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052BB03
4C052CC02
4C052CC12
4C052CC17
(57)【要約】
【課題】タービンロータの回転速度が急上昇することを低減でき、且つ、タービンロータの回転時に切削負荷が入力された場合に失速して切削力が低下することを抑制できる、回転切削器械のタービンロータ、及び、タービンロータを備える回転切削器械を提供する。
【解決手段】エアタービンハンドピース1のタービンロータ42であって、タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用切削器械のタービンロータであって、
密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンロータであって、
ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上である、タービンロータ。
【請求項3】
医療用切削器械のタービンロータであって、
タービンロータは、
略円筒形状の回転シャフト部と、前記回転シャフト部の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部と、を有し、
前記回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のタービンロータであって、
前記回転シャフト部は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上である、タービンロータ。
【請求項5】
医療用切削器械のタービンロータであって、
前記タービンロータには、カウンタウエイトが取り付けられており、
前記カウンタウエイトは、前記タービンロータの材料よりも密度の高い材料で形成されている、タービンロータ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタービンロータであって、
前記金属は、ステンレス鋼である、タービンロータ。
【請求項7】
請求項6に記載のタービンロータであって、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼である、タービンロータ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載のタービンロータと、
前記タービンロータを制動するクイックストップ機構と、を備え、
医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具が挿入されるスピンドルと、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、カートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のカートリッジであって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、カートリッジ。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載のタービンロータを備える医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【請求項12】
請求項11に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具が挿入されるスピンドルと、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、医療用切削器械。
【請求項13】
請求項12に記載の医療用切削器械であって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、医療用切削器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科や外科診療に用いる医療用切削器械のタービンロータ、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジ、及び、タービンロータを備える医療用切削器械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアタービンハンドピース等の医療用切削器械が知られている。例えば、歯科の診療においては、ヘッドにダイヤモンドポイントバーやカーバイドバー、ファイル、リーマ等の切削工具を取り付けたエアタービンハンドピースやマイクロモータハンドピース等の各種の医療用切削器械が使用されている。例えば、特許文献1には、医療用切削器械であるエアタービンハンドピースが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のエアタービンハンドピースは、ヘッド部にスピンドルとタービンロータが収容されている。スピンドルは、中空の略円筒形状を有し、軸受を介してヘッド部に軸支されている。そして、タービンロータはスピンドルの外周面に固定され、スピンドルの中空内部には切削工具が挿入される。
【0004】
この種のエアタービンハンドピースでは、成型時における加工の容易さの観点から、タービンロータは、従来からアルミニウムで形成されることが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミニウムで形成されたタービンロータは、複雑な形状を容易に成型できる一方、回転時の慣性モーメントが小さいため、回転速度が急上昇しやすい。タービンロータの回転速度が急上昇すると、スピンドルを軸支する軸受にかかる負荷が大きくなるという課題があった。また、アルミニウムで形成されたタービンロータは、回転時の慣性モーメントが小さいため、回転時に切削負荷が入力された場合に失速しやすく、切削力が低下してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、タービンロータの回転速度が急上昇することを低減でき、且つ、タービンロータの回転時に切削負荷が入力された場合に失速して切削力が低下することを抑制できる、回転切削器械のタービンロータ、タービンロータを備えるカートリッジ、及び、タービンロータを備える回転切削器械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、
医療用切削器械のタービンロータであって、
密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータである。
【0009】
本発明の第2態様は、
医療用切削器械のタービンロータであって、
タービンロータは、
略円筒形状の回転シャフト部と、前記回転シャフト部の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部と、を有し、
前記回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている。
【0010】
本発明の第3態様は、
医療用切削器械のタービンロータであって、
前記タービンロータには、カウンタウエイトが取り付けられており、
前記カウンタウエイトは、前記タービンロータの材料よりも密度の高い材料で形成されている。
【0011】
本発明の第4態様は、
上記したいずれかのタービンロータと、
前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備え、
医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジである。
【0012】
本発明の第5態様は、
上記したいずれかのタービンロータを備える医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備える、医療用切削器械である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タービンロータの回転速度が急上昇することを低減でき、且つ、回転時に切削負荷が入力された場合に失速して切削力が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のタービンロータを備えるエアタービンハンドピースのヘッド部の断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のタービンロータを備えるエアタービンハンドピースのヘッド部の断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態のタービンロータを備えるエアタービンハンドピースのヘッド部の断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態のタービンロータを備えるエアタービンハンドピースのヘッド部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の医療用切削器械のタービンロータ、カートリッジ、及び医療用切削器械の一例としてのエアタービンハンドピースのタービンロータ、カートリッジ、及び、タービンロータを備えるエアタービンハンドピースの各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0016】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態としてのエアタービンハンドピース1について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のエアタービンハンドピース1は、エアタービンハンドピース1の本体部分であるハンドピース本体10と、ハンドピース本体10の先端部分に設けられたヘッド部20と、を備える。ヘッド部20には、切削工具30が挿抜可能に取り付けられる。ヘッド部20には、エアタービンハンドピース1を用いて切削する切削対象等に応じて、複数種類の切削工具30が取り付け可能であってもよい。
【0018】
ヘッド部20に取り付けられる切削工具30の一端部には、円筒形状を有するシャフト部31が形成されている。切削工具30は、シャフト部31がヘッド部20に挿入されることによって、ヘッド部20に取り付けられる。切削工具30の一端部(すなわち、シャフト部31の先端部)は、ヘッド部20に収容され、切削工具30の他端部は、ヘッド部20から外部に突出している。
【0019】
ここで、本明細書等では、説明を簡潔且つ明確にするために、ヘッド部20に切削工具30が取り付けられたエアタービンハンドピース1における切削工具30のシャフト部31の軸方向を便宜上、X方向と定義する。そして、切削工具30の一端部(すなわち、シャフト部31の先端部)側をX1側、切削工具30の他端部側をX2側と定義する。また、特に断りなく、軸方向、周方向、径方向というときは、シャフト部31の軸方向を基準とした方向をいう。
【0020】
したがって、切削工具30のX1側端部にシャフト部31が形成されている。そして、切削工具30は、X1側端部がヘッド部20に収容され、X2側端部がヘッド部20からX2方向に突出している。
【0021】
ヘッド部20は、X1側が開口した有底略円筒形状を有するメインハウジング21と、メインハウジング21のX1側に開口した開口部を閉塞するヘッドキャップ22と、を備える。ヘッド部20には、メインハウジング21とヘッドキャップ22とによって囲まれた内部収容空間200が形成される。
【0022】
ヘッド部20の内部収容空間200には、X方向に延在する中空の略円筒形状を有するスピンドル41と、スピンドル41の外周面に固定されたタービンロータ42と、スピンドル41の内周面に支持されたチャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材46と、がモジュール化されたカートリッジ40が収容されている。さらに、カートリッジ40は、スピンドル41と、タービンロータ42と、チャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材46と、を収容するカートリッジハウジング400を備える。カートリッジハウジング400は、X1側が開口した円筒形状を有するメインカートリッジハウジング401と、メインカートリッジハウジング401のX1側に開口した開口部に設けられるカートリッジキャップ402と、を備える。本実施形態では、カートリッジ40は、ヘッド部20に対して着脱可能となっている。したがって、ヘッド部20に取り付けるカートリッジ40を交換することによって、スピンドル41、タービンロータ42、チャック機構部44、第1軸受451、第2軸受452、及び、シール部材46を、交換可能となっている。また、ヘッド部20には、エアタービンハンドピース1を用いて切削する切削対象等に応じて、複数種類のカートリッジ40が取り付け可能であってもよい。
【0023】
ヘッドキャップ22のX1側には、メインハウジング21及びヘッドキャップ22に対してX方向に変位可能なプッシュボタン23が設けられている。プッシュボタン23は、カートリッジ40のチャック機構部44と接続する。また、プッシュボタン23とヘッドキャップ22との間には、コイルばね24が取り付けられており、プッシュボタン23は、コイルばね24によって、ヘッドキャップ22に対してX1側に付勢されている。
【0024】
スピンドル41のX1側端部は、第1軸受451に回動自在に軸支されている。スピンドル41のX2側端部は、第2軸受452に回動自在に軸支されている。第1軸受451は、Oリング491を介して、カートリッジキャップ402に固定されている。第1軸受451とカートリッジキャップ402との間は、Oリング491によってシールされている。第2軸受452は、Oリング492を介して、メインカートリッジハウジング401のX2側端部近傍に固定されている。第2軸受452とメインカートリッジハウジング401との間は、Oリング492によってシールされている。
【0025】
タービンロータ42は、スピンドル41の外周面に嵌合する略円筒形状の回転シャフト部421と、回転シャフト部421の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部422と、を有する。回転シャフト部421とタービンブレード部422とは、同一材料で一体に成型されていてもよいし、別材料で形成され接合により一体化されていてもよい。本実施形態では、回転シャフト部421とタービンブレード部422とは、同一材料で一体に成型されている。タービンロータ42が回転すると、スピンドル41もタービンロータ42と一体に回転する。
【0026】
チャック機構部44は、中空の略円筒形状を有し、スピンドル41の内周面に嵌合して支持されているチャック部441と、スピンドル41のX1側端部に設けられ、チャック部441を動作させるプッシャ442と、を備える。切削工具30は、スピンドル41に対して径方向に位置ずれしないようにチャック部441に支持される。
【0027】
プッシャ442は、スピンドル41の内周面に嵌合してX方向にスライド可能に支持されている。プッシャ442は、チャック部441を動作させて、切削工具30のシャフト部31のX1側端部がチャック部441に保持されている状態と、チャック部441に保持されていない状態とを切り替える。
【0028】
ユーザが、プッシュボタン23をX2側に押圧すると、プッシュボタン23と接続するプッシャ442が、X2側にスライドする。チャック部441は、開状態と閉状態とを切り替え可能であり、通常時は閉状態となっている。そして、チャック機構部44は、ユーザによるプッシュボタン23のX2側への押圧操作によってプッシャ442がX2側にスライドすると、チャック部441が開状態となる。
【0029】
切削工具30をヘッド部20に取り付ける場合、ユーザがプッシュボタン23をX2側に押すことで、プッシャ442がX2側にスライドしてチャック部441が開状態に維持され、切削工具30を受け入れ可能な状態となる。そして、チャック部441を開状態に維持した状態で、切削工具30のシャフト部31をX2側からスピンドル41の中空内部に挿入して、切削工具30のシャフト部31の先端をチャック機構部44に突き当てる。そして、切削工具30のシャフト部31の先端をチャック機構部44に突き当てた状態でユーザがプッシュボタン23を離すと、プッシャ442がX1側にスライドしてチャック部441は、切削工具30のシャフト部31を保持した状態で閉状態となり、切削工具30は、チャック機構部44に保持された状態が維持され、カートリッジ40を介してヘッド部20に取り付けられる。これにより、切削工具30は、スピンドル41及びタービンロータ42と一体に回転可能となる。
【0030】
切削工具30をヘッド部20から取り外す場合、切削工具30がチャック部441に保持された状態でユーザがプッシュボタン23をX2側に押すことで、プッシャ442がX2側にスライドしてチャック部441が開状態となり、切削工具30を取り外し可能な状態となる。そして、ユーザがプッシュボタン23をX2側に押したまま切削工具30をX2側に引き出すことで、切削工具30は、チャック機構部44から抜脱し、ヘッド部20から取り外される。
【0031】
ハンドピース本体10は、タービンロータ42の作動気体である高圧エア(圧縮空気)をヘッド部20に供給する不図示の供給ダクトと、ヘッド部20に供給された高圧エアを外部に排出する不図示の排出ダクトと、を備える。なお、ヘッド部20に供給された高圧エアは、排出ダクトからだけではなく、後述するシール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との間に生じる隙間からも、外部に排出される。
【0032】
供給ダクトから供給される高圧エアは、カートリッジ40のカートリッジハウジング400の内部に供給されて、タービンロータ42のタービンブレード部422に噴射される。タービンロータ42のタービンブレード部422が高圧エアを受けることで、タービンロータ42が回転する。これにより、タービンロータ42と一体に、スピンドル41と切削工具30とが回転する。
【0033】
シール部材46は、略円筒形状を有するメインカートリッジハウジング401のX2側端部近傍に固定される。
【0034】
図2に示すように、第2軸受452は、互いに向かい合う内輪452a及び外輪452bと、内輪452a及び外輪452bの向かい合った隙間に位置するボール452cと、を有する。
【0035】
内輪452aの内側には、内輪開口452a1が開口している。この内輪開口452a1は、スピンドル41の外周面に固定される。したがって、内輪452aは、スピンドル41と共に回転する。
【0036】
シール部材46は、カートリッジハウジング400の内部に唾液や血液等の異物が侵入することを防止する部材である。本実施形態のシール部材46は、第2軸受452の隙間からタービンロータ42に異物が侵入することを防止する。
【0037】
シール部材46は、弾性材料で形成されている。シール部材46は、例えば、シリコンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。なお、シール部材46は、シリコンゴム及びフッ素ゴム以外の弾性材料で形成されていてもよい。シール部材46は、スピンドル41の外周面を取り囲み、中心部分が開口したリング形状を有している。シール部材46は、もっとも厚さがある外周部461と、この外周部461の内縁部からリングの中心方向へと延びる接触片462と、を備える。接触片462は、外周部461よりも弾性率が低く弾性変形しやすい部分となっている。シール部材46において、接触片462よりさらにリングの中心部分は、リング開口463が開口している。
【0038】
第2軸受452の外輪452bのX2側には、シール保持部材47が取り付けられている。シール保持部材47は、メインカートリッジハウジング401に固定されるベース部材471と、ベース部材471とともにシール部材46の外周部461を挟持する挟持部材472と、を有する。
【0039】
ベース部材471は、中空の略円筒形状を有する円筒部471aと、円筒部471aのX1側端部から円筒部471aの径方向外側に延出する外フランジ部471bと、円筒部471aのX1側端部から円筒部471aの径方向内側に延出する内フランジ部471cと、を有する。
【0040】
円筒部471aは、円筒部471aの外周面に設けられたOリング493を介して、メインカートリッジハウジング401に嵌合して固定される。
【0041】
外フランジ部471bは、X1側の面が第2軸受452の外輪452bのX2側端面と当接しており、X2側の面がメインカートリッジハウジング401と当接する。そして、外フランジ部471bは、第2軸受452の外輪452bとメインカートリッジハウジング401とによってX方向に挟持される。
【0042】
ベース部材471は、シール部材46の外周部461が内フランジ部471cのX2側の面と対向するように配置されている。
【0043】
挟持部材472は、ベース部材471に固定され、X2側からシール部材46の外周部461に当接している。そして、シール保持部材47は、ベース部材471の内フランジ部471cと挟持部材472とによって、シール部材46の外周部461を挟持している。
【0044】
そして、シール部材46の接触片462は、シール保持部材47の円筒部471aの内周面とスピンドル41の外周面とに囲まれた空間に配置されている。そして、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、接触片462は、スピンドル41の外周面に接触した状態となる。
【0045】
また、シール部材46のリング開口463の口径は、スピンドル41の外周面の直径より小さく構成されている。したがって、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、シール部材46の接触片462は、X2側に湾曲し、弾性力による接触圧で、スピンドル41の外周面と接触する。なお、接触片462がスピンドル41の外周面と接触する位置は、リング開口463の開口縁である。
【0046】
このように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されておらず、タービンロータ42が回転していないときは、スピンドル41の外周面にシール部材46の接触片462が当接して、メインカートリッジハウジング401とスピンドル41との間の隙間を塞いだ状態(シールした状態)となる。
【0047】
これにより、カートリッジ40の内部に、唾液や血液等の異物の侵入を防止することができる。
【0048】
ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されると、カートリッジハウジング400の内部の気圧が高くなり、タービンロータ42が所定速度以上で回転すると、カートリッジハウジング400からエアが第2軸受452を通ってシール部材46の接触片462が配置されている空間に漏れ出す。すると、シール部材46の接触片462は、シール部材46の接触片462が配置されている空間に漏れ出したエアによって、スピンドル41の径方向外側に押し広げられ、シール部材46の接触片462がスピンドル41の外周面から離隔し、シール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との間に隙間が生じる。
【0049】
前述したように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、タービンロータ42のタービンブレード部422が高圧エアを受けることで、タービンロータ42が回転し、タービンロータ42と一体にスピンドル41と切削工具30とが回転する。そして、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、シール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との間に隙間が生じるので、スピンドル41は、シール部材46の接触片462との接触抵抗がなく、回転しやすい状態となる。
【0050】
一方、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されて、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30が一体回転している状態から、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止すると、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転速度が減速するとともに、シール部材46の接触片462が配置されている空間に漏れ出すエアが減少し、タービンロータ42の回転速度が所定速度以下になると、スピンドル41の径方向外側に押し広げられていたシール部材46の接触片462が、スピンドル41の外周面と接触した状態に戻る。そして、シール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との接触抵抗によって、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転が制動される。このようにして、シール部材46は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する、クイックストップ機構としても機能する。これにより、シール部材46は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したあと、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を短時間で停止することができる。
【0051】
タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている。そして、タービンロータ42が直径10[mm]×軸方向長さ3.2[mm]で8枚のブレードを備える場合、タービンロータ42の慣性モーメントは、ステンレス鋼で形成されている場合、10.8[g・mm2]となる。参考として、同形状のタービンロータがアルミニウムで形成されている場合、タービンロータの慣性モーメントは、3.7[g・mm2]となる。
【0052】
このように、タービンロータ42は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されていることによって、タービンロータ42の慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エア供給開始時に、タービンロータ42の回転速度が急上昇することを低減でき、第2軸受452にかかる負荷を低減できる。また、タービンロータ42の回転時に、切削工具30を介してタービンロータ42に切削負荷が入力された場合に、タービンロータ42が失速して切削工具30の切削力が低下することを抑制できる。
【0053】
さらに、エアタービンハンドピース1において、重心位置をヘッド部20に近づけることができるので、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されてタービンロータ42が回転しているときに、タービンロータ42の固有振動数が高くなる。これにより、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されてタービンロータ42が回転しているときに、タービンロータ42から生じる不快音を低減できる。
【0054】
本実施形態では、タービンロータ42は、ステンレス鋼で形成されている。より詳細には、本実施形態では、タービンロータ42は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303で形成されている。
【0055】
このように、タービンロータ42は、加工が容易な材料であるステンレス鋼で形成されているので、タービンロータ42を容易に成型することができる。
【0056】
また、タービンロータ42は、熱水洗浄しても腐食しにくい材料であるオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているので、耐食性に優れる。そのため、アルマイトを皮膜する等、タービンロータ42に耐食性を向上させる表面処理を行うことが不要となる。
【0057】
さらに、タービンロータ42は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が、20以上となっている。一般に、ヤング率が異なる同一形状のものに同一の力が働く場合、ヤング率が大きいものほど変形が少ない。そして、密度が異なる同一形状のものに同一の回転を与えた場合、密度が大きいものほど物体に働く力が大きい。したがって、ヤング率が大きく密度が低いものほど回転による変形量が小さい。本実施形態では、タービンロータ42は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上となっているので、タービンロータ42を高速回転してもタービンロータ42の変形量を小さくすることができる。そのため、タービンロータ42を高速回転しても、回転シャフト部421の内径が拡大することを抑制でき、タービンロータ42とスピンドル41との固定が緩むことを防止できる。
【0058】
また、エアタービンハンドピース1は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動するクイックストップ機構としても機能するシール部材46を備えるので、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したあと、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を短時間で停止することができる。
【0059】
また、シール部材46が、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動するクイックストップ機構として機能するので、部品点数を増やすことなくクイックストップ機構を設けることができる。
【0060】
このとき、シール部材46と接触するスピンドル41の外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下となっている。このように、スピンドル41の外周面の周方向の線粗さRzを小さくすることによって、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、シール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との接触抵抗を十分に確保できるので、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動するのに十分な制動力を確保できる。
【0061】
また、エアタービンハンドピース1は、使用前にヘッド部20に潤滑剤を注入してから使用する。したがって、エアタービンハンドピース1は、ヘッド部20の内部の各部品に潤滑剤が皮膜した状態で使用される。例えば、まず、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に潤滑剤を十分に注入して、ヘッド部20の内部の各部品に付着した汚れを除去するとともに、ヘッド部20の内部の各部品に潤滑剤が皮膜している状態とし、その後、余分な潤滑剤を除去してからエアタービンハンドピース1を使用する。
【0062】
これにより、汚れの付着によるヘッド部20の内部の各部品の不良を防止することができるとともに、第1軸受451及び第2軸受452の摩耗を防止できる。また、エアタービンハンドピース1の使用時は、スピンドル41の外周面、及び、シール部材46も潤滑剤が皮膜しているので、エアタービンハンドピース1の使用時において、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30が一体回転している状態から、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止し、シール部材46の接触片462とスピンドル41の外周面との接触抵抗によって、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する際に、シール部材46の接触片462が摩耗することを抑制できる。
【0063】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態としてのエアタービンハンドピース1Aについて、
図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。以下、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と第2実施形態のエアタービンハンドピース1Aとの相違点について詳細に説明する。
【0064】
図3に示すように、本実施形態のエアタービンハンドピース1Aにおいて、タービンロータ42は、回転シャフト部421とタービンブレード部422とが別材料で形成されている。
【0065】
本実施形態では、回転シャフト部421は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されており、タービンブレード部422は、アルミニウムや樹脂等で形成されている。具体的には、回転シャフト部421は、ステンレス鋼で形成されている。より詳細には、回転シャフト部421は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303で形成されている。
【0066】
このように、回転シャフト部421は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されているので、タービンロータ42の慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、タービンブレード部422が複雑な形状を有する場合でも、タービンブレード部422を容易に成型することができるとともに、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エア供給開始時に、タービンロータ42の回転速度が急上昇することを低減でき、第2軸受452にかかる負荷を低減できる。また、タービンロータ42の回転時に、切削工具30を介してタービンロータ42に切削負荷が入力された場合に、タービンロータ42が失速して切削工具30の切削力が低下することを抑制できる。
【0067】
また、タービンブレード部422をより加工が容易な材料であるアルミニウムや樹脂等で形成することができるので、タービンブレード部422が複雑な形状を有する場合でも、タービンブレード部422を容易に成型することができる。
【0068】
また、回転シャフト部421は、略円筒形状であるので、ステンレス鋼で形成されていても容易に成型することができる。
【0069】
また、回転シャフト部421は、熱水洗浄しても腐食しにくい材料であるオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているので、耐食性に優れる。そのため、アルマイトを皮膜する等、回転シャフト部421に耐食性を向上させる表面処理を行うことが不要となる。
【0070】
さらに、回転シャフト部421は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が、20以上となっている。一般に、ヤング率が異なる同一形状のものに同一の力が働く場合、ヤング率が大きいものほど変形が少ない。そして、密度が異なる同一形状のものに同一の回転を与えた場合、密度が大きいものほど物体に働く力が大きい。したがって、ヤング率が大きく密度が低いものほど回転による変形量が小さい。本実施形態では、回転シャフト部421は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上となっているので、タービンロータ42を高速回転しても回転シャフト部421の変形量を小さくすることができる。そのため、タービンロータ42を高速回転しても、回転シャフト部421の内径が拡大することを抑制でき、タービンロータ42とスピンドル41との固定が緩むことを防止できる。
【0071】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態としてのエアタービンハンドピース1Bについて、
図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。以下、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と第3実施形態のエアタービンハンドピース1Bとの相違点について詳細に説明する。
【0072】
図4に示すように、本実施形態のエアタービンハンドピース1Bにおいて、タービンロータ42には、カウンタウエイト48が取り付けられている。カウンタウエイト48は、タービンロータ42と一体に回転する。
【0073】
本実施形態では、タービンロータ42は、回転シャフト部421とタービンブレード部422とが、同一材料で一体に成型されている。本実施形態では、タービンロータ42は、アルミニウムで形成されている。
【0074】
カウンタウエイト48は、タービンロータ42のX1側の面と、X2側の面とに、X方向に一対設けられている。一対のカウンタウエイト48は、いずれも、タービンロータ42の回転軸心を中心とするリング形状となっている。本実施形態では、一対のカウンタウエイト48は、スピンドル41の外周面に嵌合するように形成されている。
【0075】
カウンタウエイト48は、タービンロータ42の材料であるアルミニウムよりも密度の高い材料で形成されている。カウンタウエイト48は、例えば、ステンレス鋼、チタン、真鍮、洋白、りん青銅、等の材料で形成されている。
【0076】
このように、タービンロータ42には、タービンロータ42の材料よりも密度の高い材料で形成されたカウンタウエイト48が取り付けられているので、カウンタウエイト48が取り付けられたタービンロータ42の慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エア供給開始時に、タービンロータ42の回転速度が急上昇することを低減でき、第2軸受452にかかる負荷を低減できる。また、タービンロータ42の回転時に、切削工具30を介してタービンロータ42に切削負荷が入力された場合に、タービンロータ42が失速して切削工具30の切削力が低下することを抑制できる。
【0077】
また、カウンタウエイト48は、タービンロータ42に後付けすることができるので、従来のタービンロータ42にカウンタウエイト48を取り付けることで実現可能であり、従来のタービンロータ42から容易に設計変更することができる。
【0078】
また、タービンロータ42を高速回転して、カウンタウエイト48が変形しても、タービンロータ42とスピンドル41との固定が緩むことがないので、カウンタウエイト48に用いる材料の選択自由度が向上する。例えば、カウンタウエイト48は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が低い材料で形成されていてもよい。
【0079】
[第4実施形態]
続いて、本発明の第4実施形態としてのエアタービンハンドピース1Cについて、
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。以下、第1実施形態のエアタービンハンドピース1と第4実施形態のエアタービンハンドピース1Cとの相違点について詳細に説明する。
【0080】
図5に示すように、本実施形態のエアタービンハンドピース1Cでは、第2軸受452のX2側にシール部材512が設けられているのに加えて、第1軸受451のX1側にシール部材511が設けられている。
【0081】
また、本実施形態のエアタービンハンドピース1Cは、カートリッジハウジング400を有していない。そして、シール部材511は第1軸受451に設けられており、シール部材512は第2軸受452に設けられている。
【0082】
また、本実施形態では、ヘッドキャップ22は、メインハウジング21に内嵌合して固定される略環状の外側部材221と、外側部材221の内周面に固定される略環状の内側部材222と、を有する。
【0083】
第1軸受451は、Oリング491を介してヘッドキャップ22の内側部材222の内周面に固定されており、第2軸受452は、Oリング492を介してメインハウジング21の内周面に固定されている。
【0084】
第1軸受451は、互いに向かい合う内輪451a及び外輪451bと、内輪451a及び外輪451bの向かい合った隙間に位置するボール451cと、を有する。
【0085】
第1軸受451の外輪451bのX1側端部には、径方向内側に延出してシール部材511をX2側から支持する挟持部451dが形成されている。
【0086】
第1軸受451の外輪451bのX2側端部には、径方向外側に延出してOリング491をX2側から支持する延出部451eが形成されている。
【0087】
第1軸受451の内輪451aの内側には、内輪開口451a1が開口している。この内輪開口451a1は、スピンドル41の外周面に固定される。したがって、内輪451aは、スピンドル41と共に回転する。
【0088】
第1軸受451の外輪451bのX1側には、シール保持部材521が取り付けられている。シール保持部材521は、第1軸受451の外輪451bの外周面に係止される。シール保持部材521は、第1軸受451の外輪451bのX1側の面と対向するベース部521aと、ベース部521aからX1側に延出してシール部材511をX1側から支持する挟持部521bと、ベース部521aからX2側に延出してOリング491をX1側から支持し、第1軸受451の外輪451bの外周面に係止する係止部521cと、が形成されている。
【0089】
シール部材511は、弾性材料で形成されている。シール部材511は、例えば、シリコンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。なお、シール部材511は、シリコンゴム及びフッ素ゴム以外の弾性材料で形成されていてもよい。シール部材511は、スピンドル41の外周面を取り囲み、中心部分が開口したリング形状を有している。シール部材511は、もっとも厚さがある外周部511aと、この外周部511aの内縁部からリングの中心方向へと延びる接触片511bと、を備える。接触片511bは、外周部511aよりも弾性率が低く弾性変形しやすい部分となっている。シール部材511において、接触片511bよりさらにリングの中心部分は、リング開口511cが開口している。
【0090】
シール部材511の外周部511aは、X1側がシール保持部材521の挟持部521bに支持され、X2側が第1軸受451の挟持部451dに支持され、シール保持部材521の挟持部521bと、第1軸受451の挟持部451dとによって挟持されている。
【0091】
シール部材511の接触片511bは、シール保持部材521の挟持部521bの内周面とスピンドル41の外周面とに囲まれた空間に配置されている。そして、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、接触片511bは、スピンドル41の外周面に接触した状態となる。
【0092】
また、シール部材511のリング開口511cの口径は、スピンドル41の外周面の直径より小さく構成されている。したがって、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、シール部材511の接触片511bは、X1側に湾曲し、弾性力による接触圧で、スピンドル41の外周面と接触する。なお、接触片511bがスピンドル41の外周面と接触する位置は、リング開口511cの開口縁である。
【0093】
このように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されておらず、タービンロータ42が回転していないときは、スピンドル41の外周面にシール部材511の接触片511bが当接して、ヘッドキャップ22とスピンドル41との間の隙間を塞いだ状態(シールした状態)となる。
【0094】
これにより、カートリッジ40の内部に、唾液や血液等の異物の侵入を防止することができる。
【0095】
第2軸受452は、互いに向かい合う内輪452a及び外輪452bと、内輪452a及び外輪452bの向かい合った隙間に位置するボール452cと、を有する。
【0096】
第2軸受452の外輪452bのX2側端部には、径方向内側に延出してシール部材512をX1側から支持する挟持部452dが形成されている。
【0097】
第2軸受452の外輪452bのX1側端部には、径方向外側に延出してOリング492をX1側から支持する延出部452eが形成されている。
【0098】
第2軸受452の内輪452aの内側には、内輪開口452a1が開口している。この内輪開口452a1は、スピンドル41の外周面に固定される。したがって、内輪452aは、スピンドル41と共に回転する。
【0099】
第2軸受452の外輪452bのX2側には、シール保持部材522が取り付けられている。シール保持部材522は、第2軸受452の外輪452bの外周面に係止される。シール保持部材522は、第2軸受452の外輪452bのX2側の面と対向するベース部522aと、ベース部522aからX2側に延出してシール部材512をX2側から支持する挟持部522bと、ベース部522aからX1側に延出してOリング492をX2側から支持し、第2軸受452の外輪452bの外周面に係止する係止部522cと、が形成されている。
【0100】
シール部材512は、弾性材料で形成されている。シール部材512は、例えば、シリコンゴム又はフッ素ゴムで形成されている。なお、シール部材512は、シリコンゴム及びフッ素ゴム以外の弾性材料で形成されていてもよい。シール部材512は、スピンドル41の外周面を取り囲み、中心部分が開口したリング形状を有している。シール部材512は、もっとも厚さがある外周部512aと、この外周部512aの内縁部からリングの中心方向へと延びる接触片512bと、を備える。接触片512bは、外周部512aよりも弾性率が低く弾性変形しやすい部分となっている。シール部材512において、接触片512bよりさらにリングの中心部分は、リング開口512cが開口している。
【0101】
シール部材512の外周部512aは、X1側が第2軸受452の挟持部452dに支持され、X2側がシール保持部材522の挟持部522bに支持され、第2軸受452の挟持部452dと、シール保持部材522の挟持部522bとによって挟持されている。
【0102】
シール部材512の接触片512bは、シール保持部材522の挟持部522bの内周面とスピンドル41の外周面とに囲まれた空間に配置されている。そして、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、接触片512bは、スピンドル41の外周面に接触した状態となる。
【0103】
また、シール部材512のリング開口512cの口径は、スピンドル41の外周面の直径より小さく構成されている。したがって、エアタービンハンドピース1のタービンロータ42が動作していない状態、すなわち、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されていない状態において、シール部材512の接触片512bは、X2側に湾曲し、弾性力による接触圧で、スピンドル41の外周面と接触する。なお、接触片512bがスピンドル41の外周面と接触する位置は、リング開口512cの開口縁である。
【0104】
このように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されておらず、タービンロータ42が回転していないときは、スピンドル41の外周面にシール部材512の接触片512bが当接して、メインハウジング21とスピンドル41との間の隙間を塞いだ状態(シールした状態)となる。
【0105】
これにより、カートリッジ40の内部に、唾液や血液等の異物の侵入を防止することができる。
【0106】
ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されると、カートリッジハウジング400の内部の気圧が高くなり、タービンロータ42が所定速度以上で回転すると、カートリッジハウジング400からエアが、第1軸受451を通ってシール部材511の接触片511bが配置されている空間に漏れ出し、第2軸受452を通ってシール部材512の接触片512bが配置されている空間に漏れ出す。
【0107】
すると、シール部材511の接触片511bは、シール部材511の接触片511bが配置されている空間に漏れ出したエアによって、スピンドル41の径方向外側に押し広げられ、シール部材511の接触片511bがスピンドル41の外周面から離隔し、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との間に隙間が生じる。
【0108】
同様に、シール部材512の接触片512bは、シール部材512の接触片512bが配置されている空間に漏れ出したエアによって、スピンドル41の径方向外側に押し広げられ、シール部材512の接触片512bがスピンドル41の外周面から離隔し、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との間に隙間が生じる。
【0109】
前述したように、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、タービンロータ42のタービンブレード部422が高圧エアを受けることで、タービンロータ42が回転し、タービンロータ42と一体にスピンドル41と切削工具30とが回転する。そして、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されているときは、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との間、及び、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との間、に隙間が生じるので、スピンドル41は、シール部材511の接触片511b、及び、シール部材512の接触片512bとの接触抵抗がなく、回転しやすい状態となる。
【0110】
一方、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20に高圧エアが供給されて、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30が一体回転している状態から、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止すると、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転速度が減速するとともに、シール部材511の接触片511bが配置されている空間、及び、シール部材512の接触片512bが配置されている空間、に漏れ出すエアが減少し、タービンロータ42の回転速度が所定速度以下になると、スピンドル41の径方向外側に押し広げられていたシール部材511の接触片511b、及び、シール部材512の接触片512bが、スピンドル41の外周面と接触した状態に戻る。そして、シール部材511の接触片511bとスピンドル41の外周面との接触抵抗と、シール部材512の接触片512bとスピンドル41の外周面との接触抵抗とによって、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転が制動される。このようにして、シール部材511及びシール部材512は、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する、クイックストップ機構としても機能する。
【0111】
特に、本実施形態では、第2軸受452のX2側、及び、第1軸受451のX1側の双方にシール部材511、512が設けられているので、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する制動力をより大きくすることができる。
【0112】
以上、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0113】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態のタービンロータ42において、ステンレス鋼に代えて、例えば、チタン等の金属を用いてもよい。
【0114】
また、例えば、第1実施形態から第3実施形態において、シール部材46は、第2軸受452のX2側に設けられているものとしたが、シール部材46は、第2軸受452のX2側に複数個設けられていてもよいし、第2軸受452のX2側に複数個、及び、第1軸受451のX1側に複数個設けられていてもよい。シール部材46の数を増やすことで、タービンロータ42に慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、ハンドピース本体10の供給ダクトからヘッド部20への高圧エアの供給が停止したときに、タービンロータ42、スピンドル41、及び、切削工具30の回転を制動する制動力をより大きくすることができる。
【0115】
また、例えば、第1実施形態から第3実施形態において、スピンドル41と、タービンロータ42と、チャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材46とは、ヘッド部20に対して着脱可能なカートリッジ40としてモジュール化されているものとしたが、スピンドル41と、タービンロータ42と、チャック機構部44と、第1軸受451及び第2軸受452と、シール部材46とは、モジュール化されていなくてもよい。
【0116】
また、例えば、第1実施形態から第3実施形態において、シール部材46は、カートリッジ40のメインカートリッジハウジング401に固定されているものとしたが、シール部材46は、第1軸受451及び/又は第2軸受452に設けられていてもよい。
【0117】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0118】
(1) 医療用切削器械(エアタービンハンドピース1)のタービンロータ(タービンロータ42)であって、
密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータ。
【0119】
(1)によれば、タービンロータが密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されていることによって、タービンロータの慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、タービンロータの回転速度が急上昇することを低減できる。また、タービンロータの回転時において、タービンロータに切削負荷が入力された場合に、タービンロータが失速して切削力が低下することを抑制できる。
【0120】
(2) (1)に記載のタービンロータであって、
ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上である、タービンロータ。
【0121】
(2)によれば、タービンロータは、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上となっているので、タービンロータを高速回転してもタービンロータの変形量を小さくすることができる。
【0122】
(3) 医療用切削器械(エアタービンハンドピース1A)のタービンロータ(タービンロータ42)であって、
前記タービンロータは、
略円筒形状の回転シャフト部(回転シャフト部421)と、
前記回転シャフト部の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部(タービンブレード部422)と、を有し、
前記回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータ。
【0123】
(3)によれば、回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されているので、タービンロータの慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、タービンロータの回転速度が急上昇することを低減できる。また、タービンロータの回転時において、タービンロータに切削負荷が入力された場合に、タービンロータが失速して切削力が低下することを抑制できる。加えて、タービンブレード部をより加工が容易な材料で形成することができるので、タービンブレード部が複雑な形状を有する場合でも、タービンブレード部を容易に成型することができる。
【0124】
(4) (3)に記載のタービンロータであって、
前記回転シャフト部は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上である、タービンロータ。
【0125】
(4)によれば、回転シャフト部は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上となっているので、タービンロータを高速回転しても回転シャフト部の変形量を小さくすることができる。
【0126】
(5) 医療用切削器械(エアタービンハンドピース1B)のタービンロータ(タービンロータ42)であって、
前記タービンロータには、カウンタウエイト(カウンタウエイト48)が取り付けられており、
前記カウンタウエイトは、前記タービンロータの材料よりも密度の高い材料で形成されている、タービンロータ。
【0127】
(5)によれば、タービンロータには、タービンロータの材料よりも密度の高い材料で形成されたカウンタウエイトが取り付けられているので、カウンタウエイトが取り付けられたタービンロータの慣性モーメントを大きくすることができる。これにより、タービンロータの回転速度が急上昇することを低減できる。また、タービンロータの回転時において、タービンロータに切削負荷が入力された場合に、タービンロータが失速して切削力が低下することを抑制できる。
【0128】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載のタービンロータであって、
前記金属は、ステンレス鋼である、タービンロータ。
【0129】
(6)によれば、タービンロータは、加工が容易な材料であるステンレス鋼で形成されているので、タービンロータを容易に成型することができる。
【0130】
(7) (6)に記載のタービンロータであって、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼である、タービンロータ。
【0131】
(7)によれば、タービンロータは、熱水洗浄しても腐食しにくい材料であるオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているので、耐食性に優れる。そのため、アルマイトを皮膜する等、タービンロータに耐食性を向上させる表面処理を行うことが不要となる。
【0132】
(8) (1)から(5)のいずれかに記載のタービンロータと、
前記タービンロータを制動するクイックストップ機構(シール部材46、511、512)と、を備え、
前記医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジ(カートリッジ40)。
【0133】
(8)によれば、医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジは、タービンロータを制動するクイックストップ機構を備えるので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、タービンロータの回転を短時間で停止することができる。
【0134】
(9) (8)に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具が挿入されるスピンドル(スピンドル41)と、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材(シール部材46、511、512)と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、カートリッジ。
【0135】
(9)によれば、シール部材が、タービンロータの回転を制動するクイックストップ機構として機能するので、部品点数を増やすことなくクイックストップ機構を設けることができる。
【0136】
(10) (9)に記載のカートリッジであって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、カートリッジ。
【0137】
(10)によれば、シール部材と接触するスピンドルの外周面の周方向の線粗さRzが12.5[μm]以下であることによって、シール部材とスピンドルの外周面との接触抵抗を十分に確保できるので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、タービンロータの回転を制動するのに十分な制動力を確保できる。
【0138】
(11) (1)から(5)のいずれかに記載のタービンロータを備える医療用切削器械(エアタービンハンドピース1、1A、1B、1C)であって、
前記医療用切削器械は、前記タービンロータを制動するクイックストップ機構(シール部材46、511、512)を備える、医療用切削器械。
【0139】
(11)によれば、医療用切削器械は、タービンロータを制動するクイックストップ機構を備えるので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、タービンロータの回転を短時間で停止することができる。
【0140】
(12) (11)に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具(切削工具30)が挿入されるスピンドル(スピンドル41)と、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材(シール部材46、511、512)と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、医療用切削器械。
【0141】
(12)によれば、シール部材が、タービンロータの回転を制動するクイックストップ機構として機能するので、部品点数を増やすことなくクイックストップ機構を設けることができる。
【0142】
(13) (12)に記載の医療用切削器械であって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、医療用切削器械。
【0143】
(13)によれば、シール部材と接触するスピンドルの外周面の周方向の線粗さRzが12.5[μm]以下であることによって、シール部材とスピンドルの外周面との接触抵抗を十分に確保できるので、タービンロータに慣性モーメントが大きい材料を用いた場合でも、タービンロータの回転を制動するのに十分な制動力を確保できる。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B、1C エアタービンハンドピース(医療用切削器械)
30 切削工具
40 カートリッジ
41 スピンドル
42 タービンロータ
421 回転シャフト部
422 タービンブレード部
46、511、512 シール部材(クイックストップ機構)
48 カウンタウエイト
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用切削器械のタービンロータであって、
タービンロータは、
略円筒形状の回転シャフト部と、前記回転シャフト部の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部と、を有し、
前記回転シャフト部と前記タービンブレード部とが別材料で形成されており、
前記回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている、タービンロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンロータであって、
前記回転シャフト部は、ヤング率[GPa]/密度[g/cm3]の値が20以上である、タービンロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタービンロータであって、
前記金属は、ステンレス鋼である、タービンロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のタービンロータであって、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼である、タービンロータ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のタービンロータと、
前記タービンロータを制動するクイックストップ機構と、を備え、
医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジ。
【請求項6】
請求項5に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具が挿入されるスピンドルと、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジであって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、カートリッジ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のタービンロータを備える医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備える、医療用切削器械。
【請求項9】
請求項8に記載の医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、
中空の略円筒形状を有し、外周面に前記タービンロータが固定され、中空内部に切削工具が挿入されるスピンドルと、
前記スピンドルの外周面を取り囲み、前記タービンロータが回転していないときに前記スピンドルの外周面に当接し、前記タービンロータが所定速度以上で回転すると前記スピンドルの外周面から離隔する、シール部材と、を備え、
前記シール部材が、前記クイックストップ機構である、医療用切削器械。
【請求項10】
請求項9に記載の医療用切削器械であって、
前記シール部材と接触する前記スピンドルの外周面の周方向の線粗さRzは、12.5[μm]以下である、医療用切削器械。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の第1態様は、
医療用切削器械のタービンロータであって、
タービンロータは、
略円筒形状の回転シャフト部と、前記回転シャフト部の軸方向に対して径方向外側に延出して翼形状を有する複数のタービンブレード部と、を有し、
前記回転シャフト部と前記タービンブレード部とが別材料で形成されており、
前記回転シャフト部は、密度4.0[g/cm3]以上の金属で形成されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の第2態様は、
上記したタービンロータと、
前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備え、
医療用切削器械に着脱可能に取り付けられるカートリッジである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の第3態様は、
上記したタービンロータを備える医療用切削器械であって、
前記医療用切削器械は、前記タービンロータを制動するクイックストップ機構を備える、医療用切削器械である。