(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078317
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】回転検出装置、および回転検出システム
(51)【国際特許分類】
A01K 73/06 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A01K73/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190798
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】521487133
【氏名又は名称】太田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】太田 淳一
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AD02
2B105CA15
2B105CG07
2B105CS06
2B105CS10
2B105PA05
2B105PA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イカ釣り機を使用したイカ釣り漁操業における海中でのテグス絡みの早期検知・早期復旧にも応用可能な、回転検出技術を提供する。
【解決手段】回転検出装置10は、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体Rの回転rを検出するための装置であって、従動側回転体の回転軸に取り付ける仕様を備えた基体2と、基体に設けられた回転検出手段すなわちセンサ3A、3Bと、センサにより得られる従動側回転体の回転に係る情報を外部に対して無線方式により送信する信号処理部4とを備えてなる構成とする。センサとしては角速度センサを用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側回転体の回転により回転する従動側回転体の回転を検出するための回転検出装置であって、
該従動側回転体に取り付ける仕様を備えた基体と、
該基体に設けられた回転検出手段すなわちセンサと、
該センサにより得られる従動側回転体の回転に係る情報を外部に対して無線方式により送信する信号処理部と
を備えてなることを特徴とする、回転検出装置。
【請求項2】
前記センサにより回転数情報および回転方向情報を得ることを特徴とする、請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記センサにより得られた検知信号に所定の演算処理を施して前記回転数情報および回転方向情報を生成する演算処理部を備えていることを特徴とする、請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記信号処理部は前記センサにより得られた検知信号を外部に送信し、前記回転数情報および回転方向情報は本装置外部において生成されることを特徴とする、請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項5】
複数の従動側回転体それぞれに取り付けられて、各従動側回転体間の回転状態監視に用いられることを特徴とする、請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項6】
イカ釣り機を構成する前ローラーの回転検出用であることを特徴とする、請求項5に記載の回転検出装置。
【請求項7】
前記センサが角速度センサであることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の回転検出装置。
【請求項8】
駆動側回転体の回転により回転する一または複数の従動側回転体それぞれに取り付けられた請求項2に記載の回転検出装置と、
該回転検出装置の信号処理部から送信される情報を受信する受信装置を備えてなり、
検知回転数情報および回転方向情報による各従動側回転体間または各従動回転体の回転状態監視に用いられる
ことを特徴とする、回転検出システム。
【請求項9】
前記受信装置における通信接続用の設定、その他の設定用の情報を無線方式により該受信装置に対し送信する設定指令装置を備えていることを特徴とする、請求項8に記載の回転検出システム。
【請求項10】
前記各従動側回転体間または各従動回転体の回転状態監視に基づき、所定状態の場合には前記駆動側回転体の回転を非常停止させる非常停止手段を備えていることを特徴とする、請求項8、9のいずれかに記載の回転検出システム。
【請求項11】
前記駆動側回転体の稼働を検知する駆動側稼働検知手段を備えていることを特徴とする、請求項10に記載の回転検出システム。
【請求項12】
イカ釣り機を構成する前ローラーの回転検出用であることを特徴とする、請求項8、9のいずれかに記載の回転検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転検出装置、および回転検出システムに係り、たとえば一本釣りイカ釣り漁のテグス絡みトラブルの早期発見方式などとしても優れた効果を発揮できる、産業分野において有用性が高い回転検出装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は、イカ釣り機を使用した一本釣り漁法においてテグス絡みトラブル等が発生した状況を示す説明図である。図示するようにイカ釣り機SCを使用した一本釣り漁法は、船上に設置された複数のイカ釣り機SC、SC、・・・を一斉に運転することにより行われる。イカ釣り針ND(仕掛け、以下では単に「イカ針」とする)の取り付けられたテグスBDは、各イカ釣り機SCがドラムDMを回転することによって海中へ繰り出されて下降し、イカ針NDにかかったイカはテグスBDをドラムDMで巻き上げることによって船上へと揚げられる。上記トラブルは、操業中に、海中の潮流の変化や鮫など他の生物がイカ針NDを巻き込むことによって、イカ針NDが他のイカ釣り機SCで動作しているイカ針NDに絡んでしまい、正常な操業ができなくなってしまうトラブルである。また、テグスBDが切れて錘(分銅)WTが外れることによるトラブルもある。
【0003】
図14は、従来のテグス絡み発見方法を示す説明図である。また、
図15は、
図14に示す前ローラーの実例を示す写真図である。これらに図示するように従来のテグス絡みの発見は、前ローラーMR近傍にテグスBDの引っ掛かりを検知するためのフックHKを設けることによって行われている。すなわち、テグス絡みが発生すると、その状態でテグスBD・イカ針NDはドラムDMによって巻き上げられ、前ローラーMR位置まで来ると、前ローラーMR周辺装置に付属しているフックHKに引っ掛かり、フックHKが作動することによってこれに連結しているイカ釣り機背面の非常停止スイッチ(非常停止手段)ESが作動し、イカ釣り機SCを自動的に停止させる。停止後、テグス絡みを確認し、その復旧や必要な安全対策が行われる。なお、
図16は、従来の非常停止作動機構を示す説明図であり、本願発明に係る
図12との対比については後述する。
【0004】
イカ釣り機に係る技術については従来、特許出願等も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、イカ釣針に引っ掛かって釣り上げられたイカが案内ローラーを通過する際にイカ釣針から脱れて海中に落下するのを防止し、魚釣り効率を高めることを目的として、イカ釣針を多数連結した釣糸を案内ローラーを介して捲揚機で船内に誘導するに際して、前記案内ローラーの胴部の周面に針杆を略垂直に突設してイカ釣針に引掛かったイカを針杆で刺突しその海中落下を防止しながら案内ローラーを移送誘導するという技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、船体のピッチング現象およびローリング現象の双方による揺動が漁具のしゃくり巻上げ動作に影響することを低減できる漁労用巻上げ装置として、船体に装着されていて漁具の巻上げ・巻下げを行う回転ドラム、回転ドラムを駆動する駆動手段、船体のピッチング現象に基づく上下方向の揺動速度および船体のローリング現象に基づく船体の前後方向に伸長する軸の回りの揺動角速度を検出する検出手段、および検出手段からの信号に応じて駆動手段を制御する制御手段とからなる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-245318号公報「イカ釣り機の釣糸案内ローラー」
【特許文献2】特開2013-34397号公報「漁労用巻上げ装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13等により上述した従来技術の問題点を明確化するために、さらに説明を加える。
図17は、イカ釣り機を使用した通常の操業状況を示す説明図である。従来技術では、イカ針ND同士の絡み合い等によって絡んだテグスBDが
図14に示したフックHKの位置にまで巻き上げられてこれを作動させるまでは、既に発生しているテグス絡みを知ることができず、フックHKによる検出機構が作動した時点では既に、複雑に絡んでしまっている場合が多い。そうなると、テグスBDをほどく復旧作業にも相当の時間がかかってしまう。海中における絡みが発生した時点で、早期にこれを検知し、イカ釣り機SCを停止させることの可能な方式が望まれる。なお、本図中のA、B、C、D、E、FはドラムDMであり、1号機、2号機、3号機はイカ釣り機SCである。後出
図18でも同様である。
【0008】
また、テグスBDの老朽や過負荷等によるテグス切れなどによって、イカ針NDの先端に吊り下げられている錘(分銅)WTが操業中に外れた場合、その状態のままイカ釣り機SCがドラムDMを巻き上げるとイカ針NDが飛んできて、人に引っ掛かるなど危害を与える可能性がある。しかし従来技術では、この危険を感知してイカ釣り機SCを停止させることができない。より安全性の高い方式が求められる。
【0009】
図17に示すようにイカ釣り機SCは、ドラムDMの下降上昇を繰り返して運転される。ドラムDM上昇により巻き上げられたイカ針NDは、状況によっては同ドラムDM内でテグスBDに引っ掛かってしまい、ドラムDMが再度下降運転する時に、イカ針NDが下降せずに巻き上がることがある。これは逆巻き(逆巻き現象)と言われる。逆巻きが発生したまま運転を続けていると、イカ針NDが前ローラーMRから外れて絡まり、その場に溜まってしまう。こうなると、復旧にはかなりの時間を要することになる。このような状況が発生した場合に、現行の装置ではこれを感知してイカ釣り機SCを停止させることができない。
【0010】
図18は、イカ釣り機を使用し、ドラムの一方のみにテグスを取り付けての操業状況を示す説明図である。図示するように、イカ針NDの種類を変えた時などにはイカ釣り機SCのドラムDMの片方だけにイカ針NDをつけて操業することがある。この場合にも、上述した各問題が発生し得るが、現行の装置ではこれを感知してイカ釣り機SCを停止させることができない。より実用性の高い安全対策技術が求められている。
【0011】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、イカ釣り機を使用したイカ釣り漁操業における海中でのテグス絡みをできる限り早期に発見・検知し、早期復旧の可能な技術を提供することである。また、本発明の課題は、ドラム下降時にイカ針が下降せず巻き上がる逆巻き現象をも有効に防止することのできる技術を提供することである。また、これらのテグス絡みトラブルではテグス切れ等によりイカ針が飛んでくる危険があるが、本発明の課題を解決することはかかる危険の有効な防止策ともなる。
【0012】
さらにまた本発明の課題は、イカ釣り機使用時におけるトラブル早期発見技術に限定されず、このような駆動側回転体の回転により回転する従動側回転体の回転を直接検出することが有用な全ての産業分野において、従動側回転体の回転を直接検出することのできる回転検出装置および回転検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、海中でテグスが絡んだ場合には必ず、前ローラーの回転に異変があるという事実に着目した。つまり海中でのテグス絡みの発生は、イカ釣り機動作中における前ローラーの回転異変を即時に察知・検知することによって早期に把握することができる。実際、上述のフック方式による検出よりも先にイカ釣り船の乗組員が前ローラーの回転異常を察知できた場合には、イカ釣り機の運転を即時停止させ、手動でドラムを巻上げて絡んだイカ針を簡単に復旧できることがある。発見が早いほど復旧する時間も短縮できる。
【0014】
しかし、箱詰めなど他の仕事をしている時や、複数台あるうちの監視していないイカ釣り機にトラブルが発生した時には、迅速な対応はできず、かかる乗組員による前ローラーの監視には限界があり、到底これに頼れるものではない。一定の新規な検出方式を編み出す必要がある。発明者はかかる前ローラーの回転異変という現象に着目した。一方、回転を検知する方式としては従来、光センサや磁気センサを用いた方式などがあるが、海水やイカの墨などが普通に存在するために使用環境が厳し過ぎ、適した方式は見当たらない。
【0015】
発明者は、前ローラーの軸に加速度センサを2個保有した回転検出装置を取り付け、二つの前ローラーの回転状況に係る情報をイカ釣り機内部に設置した受信部へ無線方式で送り、イカ釣り機の運転状況すなわち駆動側回転体の回転と二つの前ローラーすなわち従動側回転体の回転との関連を監視し、異常時にイカ釣り機を非常停止させる構成を想到した。さらには、加速度センサ2個に限定されず、広く、回転検出のための手段・センサを用いればよいこと、たとえば角速度センサを好適に使用できることに想到した。そしてこれらによって、イカ釣り分野には限定されない上記各課題を解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0016】
〔1〕 駆動側回転体の回転により回転する従動側回転体の回転を検出するための回転検出装置であって、
該従動側回転体に取り付ける仕様を備えた基体と、
該基体に設けられた回転検出手段すなわちセンサと、
該センサにより得られる従動側回転体の回転に係る情報を外部に対して無線方式により送信する信号処理部と
を備えてなることを特徴とする、回転検出装置。
〔2〕 前記センサにより回転数情報および回転方向情報を得ることを特徴とする、〔1〕に記載の回転検出装置。
〔3〕 前記信号処理部は、前記センサにより得られた検知信号に所定の演算処理を施して前記回転数情報および回転方向情報を生成する演算処理部を備えていることを特徴とする、〔2〕に記載の回転検出装置。
〔4〕 前記信号処理部は前記センサにより得られた検知信号を外部に送信し、前記回転数情報および回転方向情報は本装置外部において生成されることを特徴とする、〔2〕に記載の回転検出装置。
〔5〕 複数の従動側回転体それぞれに取り付けられて、各従動側回転体間の回転状態監視に用いられることを特徴とする、〔2〕に記載の回転検出装置。
〔6〕 イカ釣り機を構成する前ローラーの回転検出用であることを特徴とする、〔5〕に記載の回転検出装置。
【0017】
〔7〕 前記センサが角速度センサであることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の回転検出装置。
〔8〕 駆動側回転体の回転により回転する一または複数の従動側回転体それぞれに取り付けられた〔2〕に記載の回転検出装置と、
該回転検出装置の信号処理部から送信される情報を受信する受信装置を備えてなり、
検知回転数情報および回転方向情報による各従動側回転体間または各従動回転体の回転状態監視に用いられる
ことを特徴とする、回転検出システム。
〔9〕 前記受信装置における通信接続用の設定、その他の設定用の情報を無線方式により該受信装置に対し送信する設定指令装置を備えていることを特徴とする、〔8〕に記載の回転検出システム。
〔10〕 前記各従動側回転体間または各従動回転体の回転状態監視に基づき、所定状態の場合には前記駆動側回転体の回転を非常停止させる非常停止手段を備えていることを特徴とする、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の回転検出システム。
〔11〕 前記駆動側回転体の稼働を検知する駆動側稼働検知手段を備えていることを特徴とする、〔10〕に記載の回転検出システム。
〔12〕 イカ釣り機を構成する前ローラーの回転検出用であることを特徴とする、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の回転検出システム。
【0018】
なお、本願で少なくとも開示される発明には下記各発明も含まれる。
回転検出装置において;
〔P01-5〕 前記基体はその長軸/短軸比が1を超える形態であることを特徴とする、上記いずれかに記載の回転検出装置。
回転検出システムにおいて;
〔P01-13〕 前記駆動側回転体はモーターにより駆動され、前記駆動側稼働検知手段は該モーターの駆動に係る電流を検知する電流センサであることを特徴とする、上記いずれかに記載の回転検出システム。
〔P01-14〕 前記駆動側稼働検知手段による検知情報は前記受信装置に伝達されることを特徴とする、上記いずれかに記載の回転検出システム。
〔P01-15〕 前記各従動側回転体間または各従動回転体の回転状態監視に基づき、所定状態の場合には前記駆動側回転体の回転を非常停止させる非常停止手段を備えており、前記駆動側稼働検知手段による検知がなされない場合には該非常停止手段を作動させないよう形成されていることを特徴とする、上記いずれかに記載の回転検出システム。
イカ釣りシステムとして:
〔P01-17〕 上記いずれかに記載の回転検出システムを備えていることを特徴とする、イカ釣りシステム。
〔P01-18〕 前記受信装置が受信する情報がモーター駆動制御に用いられることを特徴とする、上記いずれかに記載のイカ釣りシステム。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転検出装置、および回転検出システムは上述のように構成されるため、これらによれば、イカ釣り機を使用したイカ釣り漁操業における海中でのテグス絡み等のトラブルをできる限り早期に発見・検知し、早期にテグストラブルをほどいて復旧し、早期に操業再開することができる。また、ドラム下降時にイカ針が下降せず巻き上がる逆巻き現象をも有効に防止することができる。また、テグス絡みトラブルではテグス切れ等によりイカ針が飛んでくる危険があるが、本発明によればかかる危険を有効に未然防止することができる。さらに、より深く海底付近までテグスが下降しテグス絡みが発生した場合、これを早期に発見し、対処することができる。すなわち本発明によれば、早期にテグス絡みを発見できることにより、イカ針を復旧させる時間・労力を削減でき、また乗組員にとって安全な操業を行うことができる。
【0020】
なおまた、本発明の回転検出装置、および回転検出システムによれば、検出される従動側回転体の回転数などに基づいて、当該駆動側回転体―従動側回転体連結機構総体における運動状態や当該総体が置かれる環境における運動状態の情報を得たり、それを当該総体の運動状態制御に利用することも可能である。たとえばイカ釣りシステムにおいては、イカ釣り機が下降運転中に船がローリングピッチングで重心が下がれば前ローラーの回転数が遅くなり、上昇運転中はその逆となることにより、前ローラーの回転数に基づいて操業時における波のローリング振幅を知ることができる。その情報を共有することによって、波・うねりに応じた運転速度などを制御することも可能となる。
【0021】
さらにまた本発明の回転検出装置および回転検出システムによれば、イカ釣り機使用時におけるトラブル早期発見技術に限定されず、このような駆動側回転体の回転により回転する従動側回転体の回転を、直接、検出することができる。したがって、従動側回転体の回転を、直接的に検出することが有用な全ての装置・システム、およびそれらが関係する産業分野において、本発明を用いて、かかる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図p1】本発明回転検出装置の基本構成を示す概念的説明図である。
【
図1】本発明回転検出装置の基本構成を示す概念的説明図である(一対の加速度センサを使用する構成)。
【
図2】本発明回転検出装置を複数の従動側回転体に用いる場合を示す概念的説明図である。
【
図2-2】本発明回転検出装置を複数の従動側回転体に並列的に用いる場合を示す概念的説明図である。
【
図3】本発明回転検出装置の構成例を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す回転検出装置の角度センサにおける回転検知パターンをもぎ的に示すグラフである。
【
図5】本発明回転検出システムの基本構成を示す概念的説明図である。
【
図6】本発明回転検出システムの別の構成を示す概念的説明図である。
【
図7】設定指令装置を備えている本発明回転検出システムの構成を示す概念的説明図である。
【
図8】駆動側回転体の非常停止手段を備えている本発明回転検出システムの構成例として、イカ釣り機での使用例を示す概念的説明図である。
【
図9】
図8に例示した本発明回転検出システムのブロック図である。
【
図10】片ドラム操業の場合に本発明回転検出システムを使用する際の措置を示す説明図である。
【
図11】駆動側稼働検知手段を備えている本発明回転検出システムの構成を示す概念的説明図である。
【
図11-2】駆動側稼働検知手段を備えている本発明回転検出システムの構成として、複数の従動側回転体に並列的に用いる場合を示す概念的説明図である。
【
図12】本発明イカ釣りシステムの構成例を示す概念的説明図である。
【
図12-2】海底付近でのイカ釣り漁法におけるトラブル発生状況を示す説明図である。(以下の各図は、従来技術に関するものである。)
【
図13】イカ釣り機を使用した一本釣り漁法においてテグス絡みトラブル等が発生した状況を示す説明図である。
【
図14】従来のテグス絡み発見方法を示す説明図である。
【
図16】従来の非常停止作動機構を示す説明図である。
【
図17】イカ釣り機を使用した通常の操業状況を示す説明図である。
【
図18】イカ釣り機を使用し、ドラムの一方のみにテグスを取り付けての操業状況を示す説明図である。
【
図19】加速度センサの取り付け例を示す説明図である。
【
図20】角速度センサの取り付け例を示す説明図であり
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図p1は、本発明回転検出装置の基本構成を示す概念的説明図である。
図中の(a)は本回転検出装置が用いられる態様を、また(b)は本回転検出装置の構成を、それぞれ示す。これらに図示するように本回転検出装置p10は、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体Rの回転rを検出するための回転検出装置p10であって、従動側回転体Rに取り付ける仕様を備えた基体p2と、基体p2に設けられた回転検出手段すなわちセンサp3と、センサp3により得られる従動側回転体Rの回転rに係る情報を外部に対してBluetooth(登録商標)等の無線方式により送信する信号処理部p4とを備えてなることを、主たる構成とする。本回転検出装置p10の取り付け位置は、好適には従動側回転体Rの回転軸とすることができる。
【0024】
かかる構成の本発明回転検出装置p10は、その基体p2によって従動側回転体Rに取り付けられて用いられるが、基体p2に設けられたセンサp3が従動側回転体Rと一緒に回転することによって従動側回転体Rの回転rに係る情報が得られ、この回転rに係る情報は信号処理部p4によって外部に対して無線方式で送信される。このようにして、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体Rの回転rが、本回転検出装置p10の外部において検知される。センサp3により、回転数検知および正転逆転の判別がなされ、回転数情報および回転方向情報を得ることができる。
なお、センサp3としては角速度センサを好適に用いることができるが、これについては追って説明する。
【0025】
図1は、本発明回転検出装置の基本構成を示す概念的説明図であるが、これは一対の加速度センサを使用する構成である。以下、
図12-2による説明までは、図p1にて示したセンサp3の例として一対の加速度センサを使用する構成例を前提とした説明とする。しかしながら、本発明のセンサp3としては上述の角速度センサなど、回転検出手段として機能する限りそれ以外のセンサも使用可能であり、
図1~12-2により説明される全ての発明等は、特に「一対の加速度センサ」についてのものとして記載される説明を除き、角速度センサを初めとする全ての回転検出手段たり得るセンサを用いた場合にも該当する。
【0026】
図1中の(a)は本回転検出装置が用いられる態様を、また(b)は本回転検出装置の構成を、それぞれ示す。これらに図示するように本回転検出装置10は、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体Rの回転rを検出するための回転検出装置10であって、従動側回転体Rに取り付ける仕様を備えた基体2と、基体2に一体に設けられた一対の加速度センサ3A、3Bと、加速度センサ3A、3Bにより得られる従動側回転体Rの回転rに係る情報を外部に対してBluetooth(登録商標)等の無線方式により送信する信号処理部4とを備えてなることを、主たる構成とする。本回転検出装置10の取り付け位置は、好適には従動側回転体Rの回転軸とすることができる。
【0027】
かかる構成の本発明回転検出装置10は、その基体2によって従動側回転体Rに取り付けられて用いられるが、基体2に設けられた一対の加速度センサ3A、3Bが従動側回転体Rと一緒に回転することによって従動側回転体Rの回転rに係る情報が得られ、この回転rに係る情報は信号処理部4によって外部に対して無線方式で送信される。このようにして、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体Rの回転rが、本回転検出装置10の外部において検知される。加速度センサを2個(3A、3B)用いることにより、回転数検知および正転逆転の判別が可能となるが、このことについては追って
図3、4を用いて述べる。
【0028】
図2は、本発明回転検出装置を複数の従動側回転体に用いる場合を示す概念的説明図である。図では、従動側回転体は2基であるが、これに限定されず、3基以上であってもよい。図示するように本回転検出装置10は、複数の従動側回転体R1、R2、・・・それぞれに取り付けられて、各従動側回転体R1-R2間等の回転状態監視に用いるものとすることができる。
【0029】
すなわち本発明回転検出装置10は、これを複数の従動側回転体R1、R2、・・・それぞれに基体2によって取り付けられ、それぞれが備えている一対の加速度センサ3A、3Bによって、従動側回転体R1の回転r1に係る情報、従動側回転体R2の回転r2に係る情報、・・・が得られる。これらの回転r1に係る情報、回転r2に係る情報、・・・は信号処理部4によって外部に対して無線方式で送信される。加速度センサを2個(3A、3B)用いることにより、各従動側回転体R1、R2、・・・における回転数検知および正転逆転の判別が可能となる。
【0030】
このようにして、駆動側回転体Qの回転qにより回転する従動側回転体R1の回転r1、従動側回転体R2の回転r2、・・・が、本回転検出装置10の外部において検知される。単一、共通の駆動側回転体Qの回転qによって、従動側回転体R1、R2、・・・それぞれにおいて回転r1、r2、・・・が生じるのだが、各従動側回転体の各回転に係る情報が外部において得られることによって、各従動側回転体R1、R2、・・・間における回転状態の異同の如何も知ることができる。つまり、各従動側回転体R1-R2間等の回転状態監視に用いることができ、イカ釣り機を構成する前ローラーの回転検出に有用である。
【0031】
すなわち前出
図14、15で示した通り、イカ釣り機の運転・駆動によってその従動側回転体であるところの二つの前ローラーが連動して回転するが、各前ローラーに本回転検出装置10を取り付けることにより、それぞれの回転を検知し、その回転差や回転方向を監視することができる。テグス絡みが発生していない正常な操業状態の場合、二つの前ローラーは正常に回転しており、この時、両前ローラーの回転差は少なく、回転方向は等しく正転方向である。したがって、両者にある程度の回転差があったり、回転方向が異なっている場合には、両前ローラー間における回転状態の異常が発生しており、すなわちテグス絡みの発生が判断されるのである。
【0032】
一回転検出装置10当たり一対設けられている加速度センサ3A、3Bによって検知された各前ローラーの回転は、信号処理部4によってBluetooth(登録商標)等の無線方式にて外部へと送信され、外部において受信される。加速度センサ3A等によって検知された回転に基づいて、最終的には回転数、回転方向等といった情報が得られ、異変の有無が判断されて、その後の措置すなわちイカ釣り機の自動的な非常停止作動がなされることとなる。
なお、
図2-2は本発明回転検出装置を複数の従動側回転体に並列的に用いる場合を示す概念的説明図である。かかる使用も本発明の範囲内である。
【0033】
図3は、本発明回転検出装置の構成例を示す説明図である。また、
図4は
図3に示す回転検出装置の角度センサにおける回転検知パターンをもぎ的に示すグラフであり、図中(a)は正転時、(b)は逆転時を示す。
図3に示すように本回転検出装置110は、その基体12の長軸/短軸比が1を超える形態とすることができる。図の構成例では長楕円型であり、その両極付近にそれぞれ加速度センサ13A、13Bを設けた形態である。また、従動側回転体に取り付けるための取り付け用穴15が中心部に設けられている。なお、たとえばイカ釣り機の前ローラー取り付け用等の場合には防水仕様とするなど、用途に応じた仕様の設計は適宜自由である。
【0034】
図3に示す正転方向Fwに従動側回転体が回転するとこれに取り付けられている回転検出装置110も正転方向Fwに回転するが、この時の回転検出パターンを、
図4中の(a)とする。なお、グラフは(a)、(b)ともに、横軸を時間t、縦軸を加速度(加速値k)としている。(a)に示される通り、正転方向Fwに回転検出装置110および従動側回転体が回転している場合には、加速度センサ13Aによる検出、加速度センサ13Bによる検出、加速度センサ13Aによる検出、・・・という経時変化が生じる。
【0035】
一方、逆転方向Bwに回転検出装置110および従動側回転体が回転している場合には、加速度センサ13Bによる検出、加速度センサ13Aによる検出、加速度センサ13Bによる検出、・・・という経時変化が生じる。かかる経時変化のパターンの相違により、正転逆転の判別が可能となる。また、加速度(加速値k)の出力に基づき、回転を検知できる。このように、本装置110の使用により、各加速度センサ13A、13Bにおける検知回転情報、および検知信号の比較による回転方向情報を得ることができる。
【0036】
図1に基本構成を、および
図3構成例を示したように、本回転検出装置10、110の信号処理部4、14には、加速度センサ3A等、13A等により得られた検知信号に所定の演算処理を施して、上述の検知回転数情報および回転方向情報を生成する演算処理部が備えられている構成とすることができる。かかる構成の本回転検出装置10等では、信号処理部4等内の演算処理部によって、加速度センサ3A等により得られた検知信号に所定の演算処理が施されて検知回転数情報および回転方向情報が生成され、これが外部に対して送信される。つまりこの場合、信号処理部4は、加速度センサ3A等から得られる信号を計算して回転数、正転逆転の情報とし、Bluetooth(登録商標)等の無線通信手段で外部へと送信するのである。
【0037】
一方、本回転検出装置10等の信号処理部4等は、加速度センサ3A等により得られた検知信号に対して特段の演算処理等を施すことなく、検知信号をそのまま外部に送信し、上述の検知回転数情報および回転方向情報は本装置10等の外部において生成される構成とすることもできる。かかる構成を採る場合の本回転検出装置10等では、信号処理部4等は加速度センサ3A等により得られた検知信号はそのまま外部に送信され、上述の検知回転数情報および回転方向情報は本装置10等の外部において、所定の演算処理を施されて生成されることになる。
【0038】
図5は、本発明回転検出システムの基本構成を示す概念的説明図である。図示するように本回転検出システム300は、駆動側回転体の回転により回転する一または複数の従動側回転体それぞれに取り付けられた、上述のいずれかの構成を備えた回転検出装置10、10、・・・と、回転検出装置10、10、・・・の信号処理部4、4、・・・から送信される情報を受信する受信装置20とを備えてなり、検知回転数情報および回転方向情報による各従動側回転体間、または各従動回転体の回転状態監視に用いられるシステムであることを、主たる構成とする。なお、本発明回転検出システムの構成に係る従動側回転体およびそれに取り付けられる回転検出装置の数は一個であっても該当するが、本発明が主として想定するのは複数の場合である。したがって以下では、これらは複数として説明する。
【0039】
かかる構成の本回転検出システム300によれば、駆動側回転体に対して回転検出装置10の取り付けられた従動側回転体が複数接続されている機構において、駆動側回転体の回転によりこれら複数の従動側回転体が回転すると、各従動側回転体に取り付けられた回転検出装置10、10、・・・の角度センサ3A等、3A等、・・・によって検出された各回転の情報は、それぞれの信号処理部4、4、・・・から本装置10、10、・・・の外部にありかつ本システム300を構成する受信装置20に対して、無線方式によって送信される。これにより最終的には、検知回転数情報および回転方向情報が得られ、各従動側回転体間、または各従動回転体の回転状態の監視に、本回転検出システム300を用いることができる。
【0040】
本図に示す回転検出システム300では、その回転検出装置10、10、・・・の信号処理部4、4、・・・に、加速度センサ3A等、3A等、・・・により得られた検知信号に所定の演算処理を施して検知回転数情報および回転方向情報を生成する演算処理部が備えられている構成とすることができる。かかる構成の場合の本システム300では、加速度センサ3A等が取得した検知信号に対して信号処理部4等内の演算処理部において所定の演算処理を施され、検知回転数情報および回転方向情報が生成され、これが受信装置20に対して送信される。一方、
図6を用いて後述するように、本発明回転検出システムはかかる構成・作用効果に限定されない。
【0041】
なお、受信装置20では、各回転検出装置10、10、・・・により検出・送信された各従動側回転体の回転が受信されるが、受信機能に留まらず、受信した各回転情報を比較して従動側回転体の回転状態の正常・異常を判別する機能を実行する部位(構成要素)、さらにはこれに加えて、回転状態の判断結果に基づく駆動側回転体の駆動制御を実行する部位(構成要素)を備えた構成とすることもできる。
【0042】
たとえば、イカ釣り機の前ローラー回転状態検知に本システム300を用いる場合、受信装置20では各回転検出装置10、10、・・・により検出・送信された各前ローラーの回転が受信されるが、受信機能に留まらず、受信した各前ローラーの回転情報を比較してその回転状態の正常・異常を判別する機能を実行する部位、さらにはこれに加えて、回転状態の判断結果に基づきイカ釣り機の非常停止駆動制御を実行する部位を備えた構成とすることができる。早期にイカ釣り機を止めることにより、イカ針の復旧時間の短縮や乗組員への安全対策が可能となる。
【0043】
各回転検出装置10の信号処理部4、およびこれに対応する受信装置20間に用いられる無線方式は、Bluetooth(登録商標)など適宜の方式を用いることができる。なお、共通・単一の駆動側回転体に対して複数の従動側回転体を無線接続する場合に、マルチペアリングを適用する等の具体的な使い方・仕様は、適宜設計可能である。
【0044】
図6は、本発明回転検出システムの別の構成を示す概念的説明図である。図示するように本回転検出システム2300は、駆動側回転体の回転により回転する一または複数の従動側回転体それぞれに取り付けられた、上述のいずれかの構成を備えた回転検出装置210、210、・・・と、回転検出装置210、210、・・・の信号処理部24、24、・・・から送信される情報を受信する受信装置220とを備えてなるが、受信装置220にはさらに受信した検知信号に基づき検知回転数情報および回転方向情報を生成する受信側演算処理部226が設けられている構成である。なお、本発明回転検出システムの構成に係る従動側回転体およびそれに取り付けられる回転検出装置の数は一個であっても該当するが、本発明が主として想定するのは複数の場合である。したがって以下では、これらは複数として説明する。
【0045】
かかる構成の本回転検出システム2300によれば、駆動側回転体に対して回転検出装置210の取り付けられた従動側回転体が複数接続されている機構において、駆動側回転体の回転によりこれら複数の従動側回転体が回転すると、各従動側回転体に取り付けられた回転検出装置210、210、・・・の加速度センサ23A等、23A等、・・・によって検出された各回転の情報(検知信号)は、それぞれの信号処理部4、4、・・・から本装置210、210、・・・の外部にありかつ本システム2300を構成する受信装置220に対して、無線方式によって送信される。
【0046】
受信装置220が信号処理部24、24、・・・から送信される検知信号を受信すると、それらに基づき、受信側演算処理部226において検知回転数情報および回転方向情報が生成される。このようにして検知回転数情報および回転方向情報が得られ、各従動側回転体間、または各従動回転体の回転状態の監視に本回転検出システム2300を用いることができる。
【0047】
図7は、設定指令装置を備えている本発明回転検出システムの構成を示す概念的説明図である。図示するように本回転検出システム3300は、
図5、6により説明したいずれかの構成に加えて、受信装置320における通信接続用の設定、その他の設定用の情報を無線方式により該受信装置320に対し送信する設定指令装置370を備えた構成とすることができる。設定指令装置としては、スマートフォンその他の通信可能な情報端末機器を好適に用いることができる。
【0048】
かかる構成の本回転検出システム3300では、設定指令装置370において受信装置320の通信接続用の設定を初めとする本システム3300の使用に必要な設定用の各種情報を入力し、これを無線方式によって受信装置320に対し送信することで、パラメーター値の変更など必要な設定を行うことができる。
【0049】
図8は、駆動側回転体の非常停止手段を備えている本発明回転検出システムの構成例として、イカ釣り機での使用例を示す概念的説明図である。なお、イカ釣り機に係る従動側回転体である前ローラーは2基設けられているが、図では省略し、1基のみを示す。図示するように本回転検出システム4300は、既に説明したいずれかの構成に加え、各従動側回転体(前ローラー)MR、MR間、または各従動回転体(前ローラー)MRの回転状態監視に基づき、所定状態の場合には駆動側回転体(イカ釣り機SCのドラム)DMの回転を非常停止させる非常停止手段ESを備えている構成とすることができる。なお、回転検出装置410および設定指令装置470について、それぞれからの送信は、Bluetooth(登録商標)などの無線通信手段WLによりなされる。
【0050】
かかる構成の本回転検出システム4300では、各従動側回転体(前ローラー)MR、MR間の回転状態監視、または各従動回転体(前ローラー)MR単独の回転状態監視に基づき、非常停止すべき所定状態の場合には、非常停止手段ESによって駆動側回転体(イカ釣り機SCのドラム)DMの回転が非常停止させられる。つまり、回転検出装置410により検出される従動側回転体(前ローラー)MRの回転状態が回転異常と判断された場合には、非常停止手段ESによる制御がなされる。イカ釣り機に本システム4300を用いる場合では、内部の非常停止回路へ停止のアクションがなされ、イカ釣り機の動作を止めることができる。このようにして、早期にテグスの絡みを発見でき、イカ針の復旧する時間削減と不具合による乗組員への安全対策が促進される。
【0051】
図9は、
図8に例示した本発明回転検出システムのブロック図である。
図8で示した非常停止手段ESは本発明回転検出システム4300を構成する一要素の位置付けであるが、本
図9で示すように本発明はそれに限定されない。すなわち、非常停止手段ESは本発明回転検出システム5300を構成する一要素ではなく、あくまでも本回転検出システム5300が有する従動側回転体の回転状態監視作用がなされることによって最終的に生じ得る、駆動側回転体における駆動制御のための要素である――と把握することも可能である。
【0052】
以上、各図を用いて説明した通り、本発明回転検出装置10等および回転検出システム300等は、イカ釣り機SCを構成する前ローラーMRの回転検出用として好適に用いることができ、かかる回転検出システム300等を備えているイカ釣りシステム(図示せず)もまた、本発明の範囲内である。そして本発明イカ釣りシステムにおいては、受信装置320等が受信する情報がモーター駆動制御に用いられる構成とすることができる。
【0053】
以下、本発明をイカ釣り機に応用した場合の作用について詳述する(前出
図17参照)。イカ釣り機駆動によるイカ一本釣り操業において、従来技術を踏まえての「発明が解決しようとする課題」として上述、列挙した種々のテグス絡み不具合が発生しない限りは、左右の前ローラーは同じ方向、回転数により回転する。
【0054】
しかし、左右どちらかの前ローラーに掛かるテグスのイカ針が、隣のイカ釣り機に掛かるテグスのイカ針と絡んだ場合、絡んだ側のイカ針は引っ張られることにより、これが掛かっている方の前ローラーの回転は、回転数の変化などによって他方の前ローラーの回転とは異なる状態となる。かかる両前ローラー間における回転状態の相違が、本発明回転検出装置または回転検出システムによって検知される。それにより、迅速にイカ釣り機の非常停止を作動させることができる。
【0055】
また、テグスが切れるトラブルが発生した場合には、テグスが切れたことにより分銅が海底へと落下してしまい、当該テグスの掛かっている前ローラーに対する負荷が無くなる。そうすると、他方の前ローラーとは回転数が異なることとなる。かかる両前ローラー間における回転状態の相違が、本発明回転検出装置または回転検出システムによって検知される。それにより、迅速にイカ釣り機の非常停止を作動させることができる。
【0056】
また、逆巻き現象が発生した場合には、左右前ローラーの回転方向が逆になる。かかる両前ローラー間における回転状態の相違が、本発明回転検出装置または回転検出システムによって検知される。それにより、迅速にイカ釣り機の非常停止を作動させることができる。
【0057】
図10は、片ドラム操業の場合に本発明回転検出システムを使用する際の措置を示す説明図である。前出
図18で示した片ドラム操業の場合には、本
図12に示すようにイカ針を外しているドラムと前ローラーを、テグスまたはゴム等の連結手段CJで連結して、前ローラーを従動回転せしめ、左右の両前ローラーが同様に従動回転するように措置する。これにより、片ドラム操業の際にテグス絡み等の各不具合が発生した場合であっても、両前ローラー間における回転状態の相違が、本発明回転検出装置または回転検出システムによって検知され、それにより、迅速にイカ釣り機の非常停止を作動させることができる。
【0058】
図11は、駆動側稼働検知手段を備えている本発明回転検出システムの構成を示す概念的説明図である。なお、本図で例示される従動側回転体の数は、限定されない。図示するように本回転検出システム6300は、各図により説明したいずれかの構成に加えて、駆動側回転体Qの稼働を検知する駆動側稼働検知手段68を備えている構成とすることができる。駆動側回転体Qはモーターにより駆動される構成とすることができるが、この場合、駆動側稼働検知手段68としては、モーターの駆動に係る電流を検知する電流センサを好適に用いることができる。なお、駆動側稼働検知手段68による検知情報は受信装置620に伝達される構成とすればよい。
(なお、
図11-2は駆動側稼働検知手段を備えている本発明回転検出システムの構成として、複数の従動側回転体に並列的に用いる場合を示す概念的説明図である。かかる構成も本発明の範囲内であるが、以下は、
図11に示した構成について説明する。)
【0059】
回転検出システム6300に駆動側稼働検知手段68が設けられていることにより、駆動側回転体Qの回転状態、つまり回転の有無などの情報を得ることができる。駆動側回転体の回転状態に関する情報は、図示するように受信装置620に伝えられる構成とすることができ、受信装置620が所定構成の演算処理機能や駆動制御機能を備えている場合には、駆動側回転体の稼働状態検知に基づく事後の駆動制御を行わしめることができる。駆動側稼働検知手段を設けることの利点について、次の図を用いつつ説明する。
【0060】
図12は、本発明イカ釣りシステムの構成例を示す概念的説明図である。図示するように本イカ釣りシステム7500は、回転検出システム7300およびイカ釣り機SCとから構成される。回転検出システム7300を構成する受信装置(図では「受信部」)720、および駆動側稼働検知手段(図では「電流検知センサ)78は、イカ釣り機SC内に備えられる。
【0061】
イカ釣り機SCは、モーターMTによって駆動部ACを駆動し、これがドラム(図示せず)を回転駆動する。また、制御パネルCPはモーターMTの駆動制御を出力する装置であるが、前ローラーMRの回転状態異常の発生が検知された場合には非常停止手段ESの作動を受けて、モーターMTを強制的に駆動停止させるための制御もなす。かかる非常停止制御が制御パネルCPを介して行われる点は前出
図16にて説明した従来の非常停止作動方式と共通するのだが、前ローラーMRの回転状態異常の発生検知方式が、従来技術と本発明とでは相違する。
【0062】
すなわち、従来技術では、フックの作動という、テグス絡み発生から相当遅れた時点での検知方式であったが、本発明は海中におけるテグス絡み発生が即時に引き起こす前ローラーMRの回転状態異常を、前ローラーMRに取り付けた回転検出装置によって検知し、これが受信装置720に伝達される方式である。受信装置720における当該回転状態異常情報受信が、非常停止手段ESの作動を引き起こす。結局、かかる検知方式の相違が本発明イカ釣りシステム7500の基礎と言える。
【0063】
図示するように本イカ釣りシステム7500を構成する要素のうちの回転検出システム7300は、前ローラーMRに取り付けられた回転検出装置710、受信装置720、および設定指令装置(図ではその例として「スマートフォン」)770から構成される。回転検出装置710、設定指令装置770と受信装置720との間は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信手段WLにより接続される。なお、駆動側稼働検知手段(図では「電流検知センサ」)78は、回転検出システム7300の一要素と把握してもよいし、イカ釣り機SCの一要素と把握してもよい。
【0064】
かかる構成の本イカ釣りシステム7500が、特に駆動側稼働検知手段78を具備することによる利点を述べる。制御パネルCPとモーターMTとを接続する動力ケーブル上に電流センサ78を設置することにより、駆動側における回転の有無の情報が得られ、以下の状況判断が可能となる。
【0065】
まず、電流センサ78によってモーターMT(あるいは駆動部AC)の稼働が検知されているにも関わらず、二つの前ローラーMR、MRの回転が検知されていない場合には、両前ローラーMR、MRに掛かっているはずのイカ針が前ローラーMR、MRから外れている状態となっていることを検知することがができる。この場合、即刻非常停止手段ESを作動させ、復旧を期すことができる。
【0066】
次に、片方のドラムのみによって操業を行う場合、他方のドラムを前出
図10に示したような連結手段によって前ローラーMRと連結して動かすようにしなくても、前ローラーMRの回転状態異常を検知することができる。設定指令装置770から、パラメーターとして必要な仕様の設定をできるようにしておけばよい。
【0067】
そして、非常停止手段ESの作動制御に関する利点である。イカ釣り機SCを用いたイカ釣り操業においては、モーターMT(あるいは駆動部AC)が稼働していない状態でイカ針の取り付けられたテグスBDを動かす必要の生じる場合がある。たとえば、イカ針の絡みを復旧する作業を行う場合である。この場合、復旧作業中に非常停止手段ESが作動すると、かなり不便となる。
【0068】
しかし、駆動側稼働検知手段78を具備することにより、これによってモーターMT(あるいは駆動部AC)が稼働していないことが検知された場合には、前ローラーMRの回転検知による非常停止手段ESを作動させない設定とすることによって、かかる不便を回避することができる。
これら、駆動側稼働検知手段を設けることによる利点は、例示したイカ釣りシステムでの応用に限らずに得ることができる。
【0069】
なお、前掲
図11により説明した駆動側稼働検知手段を備えている本発明回転検出システムによるさらなる効用について、
図12-2を用いつつ説明する。
図12-2は、海底付近でのイカ釣り漁法におけるトラブル発生状況を示す説明図である。前記駆動側稼働検知手段(電流センサ)により検知される情報によれば駆動側回転体(モーター)には特に変化が無く稼働が継続されているのに、二つの前ローラーの回転が減速した場合には、イカ針が海底に到達した状態が発生したことが判断できる。それにより、迅速にイカ釣り機を非常停止させることができ、復旧にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0070】
昼イカ漁などの海底付近でのイカ釣り漁法では、釣り機を動作させる水深の設定を間違えるときがある。設定操作ミスや、魚群探知機と連動した水深自動設定時における設定誤差が原因である。このような時は
図12-2に示すように、全てのイカ釣り機SCの分銅WTやイカ針NDが海底ZBに着地して絡んでしまい、復旧にはかなりの時間を要することとなる。そうすると、ドラムA・Bの回転はほぼ同時に減速する。ドラムC・D、ドラムE・Fにおいても同様である。
【0071】
したがって上述の通り、駆動側回転体のモーター稼働状態を検知する電流センサの検出結果に変化が無いのに二つの前ローラーMR、MRが同時に減速した場合には、仕掛けNDが海底ZBに着いたと判断することができる。また、電流センサからの情報に基づいてイカ釣り機SCを停止させるにあたり前ローラーMRを動かす作業が必要な場合には、非常停止を作動させず、作業を円滑に行うことができる。
【0072】
また、以上述べたこととは逆に、駆動側回転体が稼働していないのに従動側回転体が稼働している等の不具合が生じた場合も、電流センサ(駆動側稼働検知手段)を用いることによって検知、判断することができる。そして、その場合にも非常停止手段を作動させない構成とすることができる。
以上述べた効用は、イカ釣りシステム以外でも得ることができる。
【実施例0073】
以下、本発明の実施例として、角速度センサを角度検出手段に用いる構成例を中心に説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明は、イカ釣りシステム用の回転検出装置(回転検出システム)開発研究経過および成果の概要に基づく説明である。
= = = = = = = = = =
【0074】
いか釣機前ローラー制御ユニット開発調査
1)目的
一本釣りイカ釣り漁のテグス絡みトラブルの早期発見装置を実現するために、要素開発として回転体にセンサを取り付け、以下の2点の確認を実施した。
・回転体の回転情報をセンサで取得可能であることの確認
・回転体に取り付けたユニットから回転情報をBluetooth(登録商標)で外部機器に転送することができるか。
本実験にあたり、Bluetooth(登録商標)を搭載したArduino基板「ESPr Developer 32」に本基板拡張用9軸センサ基板を取り付けたユニット(以下、ESP32ユニット)を用いた。
拡張用9軸センサ基板は加速度センサ3軸、角速度センサ3軸、磁気センサ3軸の計9軸のセンサを搭載している。本実験では、加速度センサ3軸と角速度センサ3軸のデータをサンプリングして波形を作成し、各センサの情報から速度と回転方向の検出機能を試験した。
【0075】
2)ESP32ユニットを使用した検証
ESP32ユニットを使用して以下の検証を行った。
検証1:Cuty3を使用した速度、回転方向の確認
Cuty3のモーターに取り付けたフライホイールにESP32ユニットを固定し、回転以外の外乱のない条件下で加速度/角速度センサの生データを確認し、速度/回転方向の検出機能を確認する。
検証2:前ローラーに取り付けた状態での速度、回転方向の確認
いか釣機、負荷試験器を用いて前ローラーの中にESP32ユニットを埋め込み、実際のイカ釣り機により近い条件下で、角速度センサの生データを確認し、速度/回転方向の検出機能を確認する。
検証3:Bluetooth(登録商標)通信の確認
検証1、検証2において、回転体にESP32ユニットを取り付け、回転している状況下でBluetooth(登録商標)通信が接続維持できるかを確認する。
【0076】
3)検証結果
検証1:Cuty3を使用した速度、回転方向の確認
・角速度センサ
0~400rpmでの回転時の角速度波形を観測した結果、1軸のセンサのみで速度/回転方向を検知できることが確認できた。取得した角速度情報の値が速度、符号が回転方向となる。角速度データから容易に速度/回転情報を算出可能であった。センサ構成の簡素さ、算出の容易さなどが、後記加速度センサとの比較において確認できた。
【0077】
・加速度センサ
0~400rpmでの回転時の加速度波形を観測した結果、速度/回転方向を検知できることが確認できた。なお、センサ構成として2軸以上要しない点、周波数から速度算出する必要がなく算出が容易な点、および加速度データのサンプリング周期の影響がない点では、角速度センサに優位性があると考えられる。
【0078】
検証2:前ローラーに取り付けた状態での速度、回転方向の確認
本検証による角速度センサ試験では、シャクリ時などによる加減速時にも、前ローラーの速度に追従できることが確認された。波形より簡易的に確認できた。また、0~400rpmでの回転時の角速度波形を観測した結果、1軸のセンサで速度/回転方向を検知できることが確認できた。さらに、振動成分等の影響を受けにくいこと、取付向きによっては、角速度データを加工せずそのまま活用することも可能であることが確認できた。
【0079】
検証3:Bluetooth(登録商標)通信の確認
以上の検証1、2において、Bluetooth(登録商標)通信が途中で切断されることなく、通信を維持することが確認できた。
【0080】
4)まとめ
イカ釣りシステムによる前ローラーの挙動検知においては、、速度/回転速度検出が容易な角速度センサが好適な角度検出手段の一つであることが確認できた。また、前ローラーのように回転しているものにBluetooth(登録商標)機器を取り付けた場合でもBluetooth(登録商標)通信が途切れることはなかった。
【0081】
5)補足
加速度センサで速度/回転方法を検知する方法について、さらに考察した。
図19は、加速度センサの取り付け例を示す説明図である。回転方向に取り付けられた加速度センサより取得した加速度データから周波数を算出して速度を求めるが、回転方向の検出には2軸分のデータが必要である。図に例示するように、回転中心を基準として90°ずらして2軸の加速度センサを取り付け、両者の加速度データの比較により回転方向の検出が可能である。なお、遠心方向に2軸を配置した場合には、遠心加速度のオフセットが発生するが、オフセット量は速度とセンサ取り付け位置によって算出可能である。
(
図20は、角速度センサの取り付け例を示す説明図であり、上記加速度センサの取り付け例との対比として示した。)
本発明の回転検出装置、および回転検出システムによれば、イカ釣り機を使用したイカ釣り漁操業における海中でのテグス絡みを早期に発見でき、イカ針を復旧させる時間・労力を削減でき、また乗組員にとって安全な操業を行うことができる。また、イカ釣り機使用時におけるトラブル早期発見技術に限定されず、従動側回転体の回転を直接検出することが有用な全ての装置・システム、およびそれらが関係する産業分野において本発明は有用であり、産業上利用性が高い発明である。本発明回転検出システム等は殊に、ケーブルを使用し各センサを取り付けることが不向きな全ての環境下・状況において、大いにその有用性を発揮する。