(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078347
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】多連目打ち装置
(51)【国際特許分類】
B26F 1/16 20060101AFI20240603BHJP
B26F 1/04 20060101ALI20240603BHJP
B26D 5/08 20060101ALI20240603BHJP
B23B 47/16 20060101ALI20240603BHJP
B23B 39/20 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B26F1/16
B26F1/04 A
B26D5/08 A
B23B47/16
B23B39/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190853
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 英之
【テーマコード(参考)】
3C036
3C060
【Fターム(参考)】
3C036BB17
3C036BB30
3C036DD17
3C036JJ04
3C060AA03
3C060AA04
3C060BA05
3C060BC01
3C060BC30
3C060BD01
3C060BE08
3C060BH01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ターンテーブルに複数のドリルの全てを回転駆動するための駆動モーターを搭載しない、多連目打ちを提供する。
【解決手段】ターンテーブル3は、複数のドリル4a,4b,4c,4dを、回転可能に保持する。ターンテーブル3が角変位して、穿孔位置に移動したドリル4aは、昇降機構8で昇降駆動を受ける内側歯部材23aとの係合による連携で、穿孔のための下降と穿孔後の上昇が可能になる。穿孔位置で従動歯車7aは、ターンテーブル3の外部に設ける駆動歯車9と噛合し、回転駆動を受ける。駆動モーター10をターンテーブル3外に配置することができるので、駆動モーター10やターンテーブル3の大型化を避けることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動を受けるための従動歯車を上部に備える複数のドリルを回転可能に保持し、使用するために選択されるドリルを穿孔位置まで角変位で移動させることが可能なターンテーブルと、
穿孔位置のドリルを、ターンテーブルで保持する保持位置から下降させてシート材を穿孔し、ドリルを上昇させて保持位置まで戻す昇降機構と、
を含む多連目打ち装置において、
ターンテーブル外で、穿孔位置のドリルの従動歯車と噛合する位置に設けられ、昇降機構で従動歯車が上昇または下降しても、噛合状態を保つ駆動歯車と、
ターンテーブル外に配置され、駆動歯車を回転駆動する駆動モーターと、
をさらに含むことを特徴とする多連目打ち装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルを回転可能に支持するベースと、
ベースに備えられ、前記複数のドリルを外囲し、該複数の前記従動歯車と噛合し、ターンテーブルの角変位で各従動歯車)を回転させる内側歯とをさらに含み、
内側歯は、前記穿孔位置の近傍に歯部を設けない欠如部を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の多連目打ち装置。
【請求項3】
前記ターンテーブルが角変位して、前記選択されるドリルを前記穿孔位置まで移動させる際に、穿孔位置での前記従動歯車と前記駆動歯車との噛合が円滑に行われるように、駆動歯車の駆動軸まわりの角度を調整する制御器をさらに含む、
ことを特徴とする請求項2記載の多連目打ち装置。
【請求項4】
前記ターンテーブルは、前記各ドリルの前記各従動歯車を回転可能に保持し、前記穿孔位置では、従動歯車と噛合する前記駆動歯車を回転可能に保持する部材と係合して、連携して上昇または下降する保持部材をさらに含む、
ことを特徴とする請求項2または3記載の多連目打ち装置。
【請求項5】
前記保持部材が係合する前記部材は、前記内側歯の前記欠如部に続く歯部となる内側歯も、前記駆動歯車とともに上昇または下降するように前記昇降機構から昇降駆動を受ける内側歯部材である、
ことを特徴とする請求項4記載の多連目打ち装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方の台上に載置される対象物に、上方に備える複数のドリルから選択される1つのドリルを下降させて目打ち孔をあける、多連目打ち装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多連目打ち装置として、多数のドリルをターンテーブルの周囲に備え、ターンテーブルの回転移動で、穿孔に使用するドリルが所定の位置に達すると、ドリルを回転させながら下降させて対象物に目打ち孔をあけるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この装置は、ターンテーブルに複数のドリルとともに1つの駆動モーターを搭載する。駆動モーターの出力軸と全てのドリルの上部軸とにはプーリーを設け、回転駆動力をプーリー間に掛け渡したベルトで伝達するようにしている。各ドリルの上部軸は、上下方向のキー溝が設けられており、穿孔に使用するドリルのみが昇降し、プーリーは昇降しない。また、駆動モーターの出力軸で駆動する駆動歯車をターンテーブルの中心に配置し、駆動歯車と噛合する複数の従動歯車をその周囲に配置して、各従動歯車の軸の延長上にドリルを設けて、回転駆動力を歯車で伝達することもできると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許公開公報CN109967771A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などのように、ターンテーブルに搭載する駆動モーターのような1つの駆動源で複数のドリルの全てを回転させることは、穿孔に使用しないドリルまで回転させていることになる。したがって、駆動源となる駆動モーターの出力は大きくなり、大型化してしまい、ターンテーブルも大型化してしまう。また、駆動モーターを回転するターンテーブルに搭載すると、駆動モーターへの給電、またはターンテーブルの回転に制約を受ける。
【0005】
本発明の目的は、ターンテーブルに複数のドリルの全てを回転駆動するための駆動モーターを搭載しない、多連目打ちを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転駆動を受けるための従動歯車を上部に備える複数のドリルを回転可能に保持し、使用するために選択されるドリルを穿孔位置まで角変位で移動させることが可能なターンテーブルと、
穿孔位置のドリルを、ターンテーブルで保持する保持位置から下降させてシート材を穿孔し、ドリルを上昇させて保持位置まで戻す昇降機構と、
を含む多連目打ち装置において、
ターンテーブル外で、穿孔位置のドリルの従動歯車と噛合する位置に設けられ、昇降機構で従動歯車が上昇または下降しても、噛合状態を保つ駆動歯車と、
ターンテーブル外に配置され、駆動歯車を回転駆動するモーターと、
をさらに含むことを特徴とする多連目打ち装置である。
【0007】
また本発明は、前記ターンテーブルを回転可能に支持するベースと、
ベースに備えられ、前記複数のドリルを外囲し、該複数の前記従動歯車と噛合し、ターンテーブルの角変位で各従動歯車を回転させる内側歯とをさらに含み、
内側歯は、前記穿孔位置の近傍に歯部を設けない欠如部を有する、
ことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記ターンテーブルが角変位して、前記選択されるドリルを前記穿孔位置まで移動させる際に、穿孔位置での前記従動歯車と前記駆動歯車との噛合が円滑に行われるように、駆動歯車の駆動軸まわりの角度を調整する制御器をさらに含む、
ことを特徴とする。
【0009】
また本発明で、前記ターンテーブルは、前記各ドリルの前記各従動歯車を回転可能に保持し、前記穿孔位置では、従動歯車と噛合する前記駆動歯車を回転可能に保持する部材と係合して、連携して上昇または下降する保持部材をさらに含む、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記保持部材が係合する前記部材は、前記内側歯の前記欠如部に続く歯部となる内側歯も、前記駆動歯車とともに上昇または下降するように前記昇降機構から昇降駆動を受ける内側歯部材である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ターンテーブル外の駆動モーターで、ターンテーブルの角変位で穿孔位置まで移動したドリルのみを回転駆動するので、駆動モーターやターンテーブルの大型化や駆動モーター出力の増大を防ぐことができる。
【0012】
また本発明によれば、内側歯の欠如部は、穿孔位置の近傍に設けられ、歯部を設けないので、欠如部から駆動歯車の歯部を露出させることができる。ターンテーブルの角変位で穿孔位置まで移動するドリルの従動歯車は、欠如部まで内側歯と噛合して回転し、欠如部を飛び越して駆動歯車と噛合させることができる。穿孔位置で駆動歯車と噛合して回転していたドリルの従動歯車は、ターンテーブルを角変位させれば、欠如部を飛び越して、内側歯と噛合させることができる。
【0013】
また本発明によれば、制御器は、駆動歯車の駆動軸まわりの角度を、ターンテーブルの角変位で欠如部を飛び越す従動歯車の回転角度のずれに合わせるように調整するので、駆動歯車と内側歯との間での従動歯車に対する噛合の移行を円滑に行わせることができる。
【0014】
また本発明によれば、駆動歯車と従動歯車とが噛合して、歯車同士が上下方向にずれないで回転駆動する状態を保ちながら、従動歯車および駆動歯車をそれぞれ回転可能に保持する部材間の係合による連携で、ドリルを確実に下降または上昇させることができる。
【0015】
さらに本発明によれば、保持部材と係合する内側歯部材は、内側歯の欠如部に続く歯部となる内側歯も含めて下降または上昇するので、内側歯を下降または上昇させない場合よりも、広い範囲の係合で確実に連携して下降または上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例である多連目打ち装置1の構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の多連目打ち装置1で、穿孔位置のドリル4aを下降させて、シート材21に穿孔している状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、穿孔位置での内歯部材23aと保持部材26aとの係合関係を説明する部分的な斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の多連目打ち装置1での歯車の軸を保持する部材の配置を示す平面図である。
【
図10】
図10は、穿孔位置での駆動歯車9と従動歯車7aとの噛合状態を示す図である。
【
図11】
図11は、内側歯24の欠如部25を飛び越す従動歯車7aが円滑に噛合するように、駆動歯車9の回転角度を調整する構成を示す図である。
【
図12】
図12は、駆動歯車9に噛合している従動歯車7aが内側歯24の欠如部25を飛び越して内側歯24に円滑に噛合するように、駆動歯車9の回転角度を調整する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図12は、本発明の一実施例である多連目打ち装置1の構成と動作とを示す。各図で対応する部分は,同一の参照符を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また説明の便宜上、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。また、隠れている対象を、破線の引出し線に参照符を付して言及する場合がある。
【実施例0018】
図1は、本発明の一実施例である多連目打ち装置1の構成を示す。多連目打ち装置1は、ベース2を介して、たとえば裁断機のヘッドに取付けられる。ヘッドは、水平な二次元平面に沿って移動可能で、ヘッドに取付けられる多連目打ち装置1はカバーで覆われるけれども、カバーの図示は省略する。多連目打ち装置1には、ターンテーブル3が備えられる。ターンテーブル3は、複数、たとえば4本のドリル4a,4b,4c,4dを、回転可能に保持する。以下の各図は、ドリル4aが穿孔位置にある状態を示す。他のドリル4b,4c,4dも、ターンテーブル3の角変位で穿孔位置に移動させることができる。穿孔位置のドリル4aは、上部軸6aに従動歯車7aが設けられる。昇降機構8は、穿孔位置のターンテーブル3の外部に設けられ、昇降ベース8aおよび駆動シリンダー8bを含み、穿孔位置のドリル4aを、ターンテーブル3で保持する保持位置から下降させてシート材21を穿孔し、ドリル4aを上昇させて保持位置まで戻す。穿孔位置の従動歯車7aは、駆動歯車9と噛合して回転駆動されながら、穿孔のための下降と穿孔後の上昇が可能になる。この昇降は、昇降ベース8aで支持され、駆動シリンダー8bの出力軸8cの伸縮で駆動される。駆動歯車9は、ターンテーブル3の外部に設置されて駆動源となる駆動モーター10の出力軸に設ける出力プーリー11から駆動ベルト12を介する駆動を受ける。駆動ベルト12は、入力プーリー13を駆動する。入力プーリー13は、駆動歯車9とともに駆動軸14に設けられ、駆動軸14の回転で駆動歯車9も回転する。
【0019】
ベース2は、ヘッドに取付ける縦ベース2aと、上下二段の横ベース2b,2cとを含む。上下二段の横ベース2b,2cは、ターンテーブル3の上テーブル3aおよび下テーブル3bを、それぞれ角変位可能に支持する。ターンテーブル3が保持するドリル4a,4b,4c,4cには、それぞれ、チャック5a,5b,5c,5d、上部軸6a,6b,6c,6d、従動歯車7a,7b,7c,7dが設けられるけれども、一部のみ図示する。各ドリル4a,4b,4c,4dには、たとえば特開2019-141917号公報に開示されているような抜き屑処理の構成を設けることもできる。上テーブル3aは、ターンテーブル3の外部で横ベース2bに取付けられる角変位モーター15から角変位ベルト16を介して角変位するように駆動される。横ベース2cの下方には、生地押え17が設けられる。生地押え17は、ターンテーブル3の角変位に伴って角変位し、ブロック18の底部で押し下げられて下降する。圧縮ばね19は、生地押え17の下降で圧縮されるように設けられている。ブロック18は、横ベース2cに取付けられる昇降シリンダー18aで下降するように押下げられる。生地押え17の上昇は、昇降シリンダー18aによるブロック18の押下げの終了後に、押下げに伴う圧縮を受けた圧縮ばね19が戻ることで行われる。ターンテーブル3の上テーブル3aと下テーブル3bとの間は、各ドリル4a,4b,4c,4dを挟むように2本ずつ配置されるガイド軸20で連結される。
【0020】
図2は、
図1の多連目打ち装置1で、穿孔位置のドリル4aとともに生地押え17を下降させて、シート材21に穿孔している状態を示す。シート材21は、たとえば布帛や皮革、樹脂などの穿孔対象であり、穿孔台22の表面に積層して載置される。穿孔台22は、多連目打ち装置1が裁断機のヘッドに取付けられる場合は、裁断機の裁断テーブルとなる。駆動シリンダー8bは、出力軸8cを伸張させて、噛合している駆動歯車9と従動歯車7aとをそれぞれ内蔵する内側歯部材23aおよび保持部材26aを下降させる。駆動軸14は、ボールスプライン軸であり、駆動歯車9を回転させる状態で、駆動歯車9を軸方向に移動させることができる。従動歯車7aは、ドリル4aとともに下降して、シート材21に穿孔することができる。シート材21の積層厚に応じて、多連目打ち装置1の穿孔台22の表面からの高さを変更可能にするリフト機構を設けるようにしても良い。そのようなリフト機構は、たとえば特開平7-60686号公報に開示されている。
【0021】
図3および
図4は、
図1の多連目打ち装置1の平面図および斜視図をそれぞれ示す。ターンテーブル3の上テーブル3aおよび下テーブル3bは、外周を上下二段の横ベース2b,2cで角変位可能に支持され、角変位して、各ドリル4a,4b,4c,4dを穿孔位置に移動させることができる。上テーブル3aおよび下テーブル3b間は、ガイド軸20および中心板材3cで連結される。なお、ドリル4a,4b,4c,4dの本数は、4本に限らず、より多くすることもできる。ガイド軸20による連結の強度を高めて、中心板材3cを省略することもできる。
【0022】
図5(a)は、穿孔位置での内側歯部材23aと保持部材26aとの係合状態を示し、
図5(b)は、内側歯部材23aと保持部材26aとの係合を、仮に引き離した状態を示す。本実施例の穿孔位置での係合は、内側歯部材23aと保持部材26aとの間だけではなく、穿孔位置に移動した他の保持部材26b,26c,26dと内側歯部材23aとの間でも同様に行われる。保持部材26aは、"U"字を横にした形状であり、上係合片27aと下係合片28aとを有する。ターンテーブル3の角変位の途中では、四つの保持部材26a,26b,26c,26dのうち、いずれか一つまたは隣接する二つが内側歯部材23aと係合する。内側歯部材23aと保持部材26aとの間の係合では、保持部材26aの上係合片27aと下係合片28aとで内側歯部材23aを、ターンテーブル3の内方の上下から挟む。昇降機構8が内側歯部材23aを昇降させると、保持部材26aも係合を介して昇降する。内側歯部材23a,23b,23c,23dと保持部材26a,26b,26c,26dとの係合は、ターンテーブル3の外方の内側歯部材23a,23b,23c,23dのそれぞれ上下から、保持部材26a,26b,26c,26dを挟むようにしても良い。
【0023】
図6は、
図1の多連目打ち装置1での歯車の軸を保持する部材の配置を示す。内側歯部材23aの内周側には、内側歯24aが設けられる。他の位置の上部軸6b,6c,6dは、保持部材26b,26c,26dでそれぞれ回転可能に保持される。図示の各保持部材26b,26c,26dの位置では、内側歯部材23b,23c,23dがそれぞれ対向するように配置され、横ベース2bで支持される。内側歯部材23b,23c,23dの内周側には、内側歯24b,24c,24dがそれぞれ設けられる。保持部材26a,26b,26c,26dは、ターンテーブル3の角変位で移動する。切断面線B-Bおよび切断面線C-Cから見た断面は、
図8および
図9でそれぞれ示す。
【0024】
図7は、
図6に対応する歯車の配置を示す。内側歯24は、内側歯24a,24b,24c,24dで形成され、内側歯24aに歯が欠けている欠如部25を有するけれども、各従動歯車7a,7b,7c,7cと噛合して、ターンテーブル3の角変位に合わせて回転する。従動歯車7a,7b,7c,7c、駆動歯車9および内側歯24は、同一モジュールの平歯を有する。欠如部25は、穿孔位置の近傍に設けられ、穿孔位置で従動歯車7aと噛合する駆動歯車9の歯部を露出させる。ターンテーブル3の角変位で穿孔位置まで移動するドリル4aの従動歯車7aは、欠如部25まで内側歯24aと噛合して回転する。従動歯車7aは、欠如部25に達する位置での回転角度が定まり、欠如部25を飛び越して駆動歯車9と噛合する。欠如部25を小さくすれば、従動歯車7aについて、欠如部25を飛び越して駆動歯車9との噛合を行わせる際の回転角度と、欠如部25無しで内側歯24が続き、しかも穿孔位置では駆動歯車9と噛合すると仮定した場合の回転角度との違いを小さくすることができる。同様に、穿孔位置で駆動歯車9と噛合している従動歯車7aが欠如部25を飛び越して内側歯24aと噛合する際の回転角度の違いも、欠如部25を小さくすることで小さくすることができる。
【0025】
図8および
図9は、
図6の切断面線B-Bおよび切断面線C-Cから見た断面図をそれぞれ示す。
図8では、駆動軸14を昇降する駆動歯車9が昇降するドリル4aの上部軸6aに設けられる従動歯車7aと噛合している状態が示されている。なお、従動歯車7cと噛合する内側歯24cは、上下方向の歯の長さが従動歯車7cよりも短くなっている。他の内側歯24a,24b,24dも含めて、上下方向の歯の長さは、従動歯車7a,7b,7c,7dおよび駆動歯車9の歯の長さよりも短い。
図9では、保持部材26a,26cが上係合片27a,27cと下係合片28a,28cとで、内側歯部材23a,23cにそれぞれ係合して、連携可能になっている状態が示されている。穿孔位置で、内側歯部材23aと係合するいずれか一つの保持部材26a,26b,26c,26cは、ガイド軸20の案内を受け、駆動歯車9とそれぞれの従動歯車7a,7b,7c,7dとが噛合して、それぞれのドリル4a,4b,4c,4dを回転駆動する状態を保ちながら、ドリル4a,4b,4c,4dをそれぞれ確実に下降または上昇させることができる。
【0026】
また、穿孔位置での内側歯部材23aと保持部材26aとの昇降は、欠如部25とともに、内側歯24で欠如部25に続く歯部としての内側歯24aの昇降も伴う。内側歯24aを伴う昇降を行わない場合は、従動歯車7aを回転可能に保持する保持部材26aと駆動歯車9のみを回転可能に保持する部材とを係合させて昇降させる必要がある。この係合には、昇降しない内側歯24aを避けるために、狭い欠如部25しか利用することができない。本実施例では、保持部材26aと係合する内側歯部材23aは、内側歯24の欠如部25に続く歯部となる内側歯24aも含めて下降または上昇するので、内側歯24aを昇降させない場合よりも、保持部材26aと内側歯部材23aとの係合に広い範囲を利用し、確実に連携して下降または上昇させることができる。
【0027】
図10、
図11および
図12は、穿孔位置で駆動歯車9と従動歯車7aとが噛合する状態と、ターンテーブル3が時計回りする場合に穿孔位置の近傍で駆動歯車9の回転角度を調整して円滑な噛合の移行を可能にする状態とを、それぞれ示す。
図10の穿孔位置では、たとえば駆動歯車9の各歯の間の谷と、従動歯車7aの各歯の山とが噛合するよう調整する。欠如部25を設けると、欠如部25で従動歯車7aはターンテーブル3の角変位に合わせた駆動を受けなくなる。このため、内側歯24から欠如部25を飛び越して駆動歯車9と噛合させる場合は
図11に示すように、制御器30による制御で、駆動歯車9の回転角度をたとえば2~3度の角度θだけ反時計回り方向に進めておく。また、穿孔終了後には
図12に示すように、駆動歯車9の回転角度をθだけ時計回り方向に遅れさせておいてから、欠如部25を飛び越して内側歯24aに噛合させる。欠如部25を飛び越す円滑な噛合を可能にする角度θは、計算や実験で求めることができる。
【0028】
なお、内側歯24を設けないで、たとえばターンテーブル3で従動歯車7a,7b,7c,7dを穿孔位置で駆動歯車9と噛合する角度で保持し、穿孔位置で、駆動歯車9を接離するように、水平面内で、または上下に移動させて噛合および噛合の解除を行わせるようにしてもよい。本実施例と同様に、ターンテーブル3外の駆動モーター10で、ターンテーブル3の角変位で穿孔位置まで移動したドリル4a,4b,4c,4dを回転駆動するので、駆動モーター10やターンテーブル3の大型化やモーター出力の増大を防ぐことができる。また、穿孔での従動歯車7a,7b,7c,7dの昇降ストローク分の歯の長さを有する駆動歯車を用いれば、駆動歯車を昇降させないでも噛合状態を保つことができる。