(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078355
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】輪仕様手織り生地を作る技術
(51)【国際特許分類】
D03D 3/00 20060101AFI20240603BHJP
D03D 15/46 20210101ALI20240603BHJP
【FI】
D03D3/00
D03D15/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022199810
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】322012354
【氏名又は名称】株式会社ポンド商会
(72)【発明者】
【氏名】田口 珠子
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AB27
4L048BB00
4L048BB06
4L048CA00
4L048DA00
4L048EA00
(57)【要約】
【課題】初心者でも簡単に輪仕様生地が織れる技術の発明。
【解決手段】折りたためる箱を抜き型として利用し、箱を畳んで次の面を出しながら巻き付けたテープに交差するテープを組み合わせてゆくことで、輪仕様の生地を仕上げる手工芸の技術。織物の平面反物ではなく、または組紐のように素材を事前にカットして本数を用意したり、長さを計算したりすることなく、縦糸、横糸各1本ずつだけで最後まで織り進めることができる方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸と横糸が交差して形成される織物生地に於いて、
折り畳み式の箱を抜き型として、箱の横方面に紐状のものを整列して巻き付けた横糸に、縦糸とする紐状のものを互い違いに交差させて織り進めるとき、箱をたたみながら面をすすめることにより、複数本のテープを用意することなく縦・横各1本のテープだけで輪仕様の織り生地を作る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
手工芸
【背景技術】
【0002】
平たいテープ又は糸などの紐状の素材を用いた手工芸でカゴやバックを作るとき。
反物を織るように素材を織り、できた反物をから袋状に縫い上げる。あるいは、非特許文献3に見られるように、「結ぶ」とか「「組む」方法で作る、伝統手工芸技術の組紐で作る方法がある。これは同書にあるように事前に長さを計算した40本や60本といった本数の糸をカットして用意してから取りかかる必要があり、六つ目組み紐、ノット織り。メッシュ織り、などに見られるように、複雑な技術から初心者には作り方を読み取るのが非常に難しい。
【0003】
難易度だけでなく、紐の数も多ければ仕上げるにも手数が多くなり、膨大な時間が係るという難点もある。
【0004】
一方、冒頭の織り技術で作る反物を利用してバッグを作るのであれば、縦糸に対して横糸を交互に交差させて生地を作るだけなので、前段のようにな複雑な準備や工程は必要はない。
【0005】
“織り“とは、縦糸に直角に横糸を、あるいは横糸に縦糸を、上下交互に交差させて組み合わせ1枚の反物を作る技術。素材を交差させるとき針を利用して通してゆくとなると、使用する素材全量を通さないといけないため(=不可能)、あとから交差させる素材はシャトルと呼ばれる糸巻きに事前に撒いておいて、縦糸にくぐらせてゆくという特徴がある。
概念として縦糸も横糸も1本ずつでなりたっており、前段の組紐で作るより簡単にバッグの生地を作ることができる。
【0006】
しかし、出来上がった織物生地は平面の反物である。この生地からマチのあるバッグを作るには、最初から立体的に創造してゆく組紐とは違い、平面生地(反物)を立体的に縫い上げる必要がある。
【0007】
予めバッグのボディになる部分が輪になるように仕上げられれば、生地を縫い合わせる必要がなく、また、組紐のように複雑な技術も必要とせず簡単に高級感ある手工芸のカゴバッグ、もしくはバッグが出来ると考えられる。
【0008】
そこで、立体的に、輪が簡単にできる方法として、非特許文献1で示すとおり、段ボール箱を利用して抜き型として、バックやポーチを作るものがある。
【0009】
この方法だと、織り勧めていくうちに次の面に変わるとき、スペースが狭くなってしまって面の最後までシャトルを通していくことが困難になる。
小物ならば針ですべて作業し、狭い部分を通してゆくこともできるが、大きなバッグでは、針ですすめると残りのテープが長いため絡んでしまう。なので、面をかえるためにその都度テープを切って短くしなければなければいけないという不具合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】蔭山はるみ著、「はる・なつ・あき・ふゆ いつでも作れる、使える ダンボール織り機でおしゃれこもの」、2013年8月17日発行、日本ヴォーグ社、p44-p45
【非特許文献2】荒関まゆみ著、「エコクラフトで作る まいにちのバッグとかご」、成美堂出版、ISBN978-4-415-31532-4、p30-p94
【非特許文献3】古木明美・松崎悦子著、「輝くビニルひもで作る 大人かわいいきらきらバッグ」、2014年8月30日発行 河出書房新社、ISBN978-4-309-28457-6、p29-p32、p42-p61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は箱を型として利用して、縦糸1本、横糸1本を使用するだけで、初心者でも簡単に輪仕様生地が織れる技術である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、目的達成するため本発明は以下に構成されている。
【0013】
用意する箱は、折り畳みが可能な、みかん箱式と呼ばれるA式ダンボール箱と同形式のものを使用する。
【0014】
前段の箱を型として“横糸“を巻き付け、巻き付けた”横糸“が実施作業中にずれないように、マスキングテープで仮止め固定する。マスキングテープは作業の進捗に従い外すものである。
【0015】
全量の縦糸を
図4で示すシャトル(糸巻き)に巻き取り事前に用意し、箱に張り巡らされた横糸に対して交互に縦糸を通して生地を織ってゆく。
【0016】
面の終わりに近づくとシャトルが通らなくなるため、箱を畳み隣の面と平面状に並べることで、隣の面にスムースに進めることができる。テープを切ることは無い。
【0017】
最後の4面目の終わり際には、縦糸に必要なテープもすくなくなるので、シャトルからテープを外し、このとき初めて長針に持ち替え最後まで縦糸を通し終えることができる。
【発明の効果】
【0018】
カゴを作る複雑な工程を必要としないで、簡単にバッグなどの袋物が作れる。
【0019】
織り進めた面を変えるときに、一旦糸をカットしたり、事前にカットしてて針で通してゆく必要がないので材料の準備が簡単である。縦横各1本ずつのテープで織り続けられる。
【0020】
本発明でできたバッグは、縦糸横糸とも解けばまた1本の糸に戻る。シンプルな美しさを持ち、再生性が非常に高い。
【0021】
簡単な材料を揃えるだけで、輪仕様の織り生地ができる。
【0022】
縦横1本ずつで出来ているため、何度も簡単に作り直すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】輪仕様に織り上がった生地をかたどる箱の斜視図である。
【
図7】横糸に縦糸を通していくルートを示す正面図である。
【
図8】縦糸を限界まで面の際まで通した正面図である。
【
図9】次の面に織り進める為の、平面遷移図と正面図である。
【
図11】最終面で残りスペースが狭くなった正面図である。
【
図12】最後の面でシャトルから針に代えており進める正面図である。
【
図13】最後まで縦糸を通し終わった正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施する形態の最良の実施例として、テープや毛糸など紐状の素材を「5mmテープ」を用いて実施。以降説明にテープや毛糸など紐状の素材を「テープ」と統一して説明するものとする。
【0025】
図1は、箱を型としてテープを横に巻き付け、縦にテープを交互に通して仕上げた輪仕様の織生地の最終状態を示す。
【0026】
図2は用意する箱の形状の説明である。
A式、別名みかん箱式とよばれる型で、12面からなる箱の展開図である。段ボール箱で実施が可能である。
【0027】
箱の大きさは、作りたいバッグの幅とA、C面が同じで、マチ幅とB、D面が同じサイズであることが重要であるが、深さは作りたいバッグより箱の方が深い必要がある。
【0028】
成型型となる箱は立体にして使用する。
図3は前段の展開図を箱として組み立てた斜視図(A)と、ガムテープを貼ってある底面図(B)である。
【0029】
図4は、縦糸を巻きとるシャトル(糸巻き)として代用する板の形状を示す図である。作りたい製品の大きさや素材の種類により大きさは変化するが、5mmテープを使用する最良の実施例として、21cm×9cm×0.5cmのスチレンボードを利用。
このままでもかまわないが、前方向が狭まっている方が作業がしやすくなる為、
図4のように、先端側になる辺のみ狭くして台形にしても構わない。
【0030】
板は前方向と後方向の辺において、4,5cm幅×1.5cm深 程度の溝が出来るように、a→b→c→dの順にカットして斜線部分を切り落とす。
【0031】
板は使用中に折れ曲がってしまわないように、梱包用の透明ビニールテープを全面に貼り表面をコートして補強。これを本発明で使用する「シャトル」とする。
【0032】
ここから生地を織る作業の説明に入る。
【0033】
縦糸はシャトルに全量巻き取る。
巻き取ったテープが同じ所にまとまってかさばらないように、なるべくシャトル全体が平たくなるように板上に均等に巻き付ける。
【0034】
図5で示すように、下ぴったりの場所から横糸を箱に巻き付ける。
テープを巻き付ける段数(=高さ)は、実際に作りたいバッグの深さと同じであり、A,C面はバッグ幅、B、D面はバッグのマチになる。
隙間無く、綺麗に並べて希望の高さになるまで巻き付け、
足りなくなったら、接着剤や両面テープで留めるなどしてテープを補充し、最終的に1本で、希望の高さになるまで全て巻き付ける。
【0035】
図6で示すように、テープの巻き始めと巻き終わりがほどけてしまわないように、作業の邪魔にならない所にマスキングテープなどでとめる。また、箱に巻き付けたテープが実施作業中ずれたり外れてしまわないように、縦方面に各面で1、2本、マスキングテープを貼って仮止めをする。仮止めする場所はどこでもかまわない。作業中不都合になったら、簡単に剥がして別の場所に張り直せるようにマスキングテープを使用する。
【0036】
ここから縦糸を通す実施例に移る。
【0037】
横糸に、縦糸を互い違いに通してゆく。
図7は、その縦糸の経路を示す正面図である。横糸に対して常に交互に縦糸を通す。
すこしでもテープを拾いやすくするため、
図7のように、シャトルの通るルートに予め定規を差し込んでおき、定規を縦にして隙間を作ってやると、シャトルを通しやすくできる。最初は作業しやすい位置から縦糸を通して構わないが、通したテープは左側か右側、どちらかの端にピッタリ寄せて移動させる。次の列もまた、通したら、前の列にピッタリ並ぶように隙間なく寄せて移動させる。移動させるには千通しのように先の尖ったものや、フォーク等使うと端に寄せやすい。かならず隙間無いように寄せることが大事である。
【0038】
縦糸をきっちり引き締めて隙間無く、横糸に交互に通し進めてゆくと、
図8にように、残りの幅がせまくなって、シャトルが通らなくなってしまう。
【0039】
そこで、型の箱をつぶす。
図9は箱の上から見た平面図とそれを畳む経緯図。そして箱の正面図である。
箱をつぶし、A面B面を二面並べることにより、再び作業スペースがひろくなる。
広くなったスペースで、またシャトルを通すことが可能になり次の面に進んでゆける。
【0040】
仮止め用のマスキングテープは邪魔になってきたら外し、崩れてしまいそうな所があれば貼り増しながら、織り作業をすすめる。再び作業スペースが狭くなったら次の面を出してスペースを広め、次の面に進み作業を続ける。
【0041】
図10は、4面織り進める工程図である。箱を潰す経緯と平面図、そのステップをS100、S110、S120で表す。4面目までスムーズに進行し続けることができることがわかる。
【0042】
図11のように、4面目の最後に来ると進める面が無いためシャトルが通るスペースがとうとうなくなってしまう。D面の次のA面はすでに作業が終わっている面だからである。
【0043】
この段階になると、テープは残り僅かとなっているので、
図12のように、シャトルに撒かれた残りのテープを外し、今度はシャトルから布団針など長針に持ち代える。残りテープは針でも絡まずに充分通せる長さとなるので、僅かな残りのスペースでも最後まで通し終えることができる。
こうして
図13で示すとおり、テープを全くカットすること無く1本を綺麗に通してゆくことが可能となり、型から外せば輪状態の織り生地が出来上がっている。
【0044】
図1のように、畳んだ箱をまた四角に組み立て戻せば、続けて底部分の加工にも簡単に移ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって出来た輪仕様の生地を使用すれば、そのままバッグのボディ部分となり、続く底部分の加工にも簡単に引き継げるので、バッグ仕上げが大変容易になる。
【0046】
簡単な材料を揃えるだけで、1回から数回の講習で出来上がるバッグを作れるようになる為、講習会やキット販売の素材として利用しやすくなる。
【0047】
何度でも作り直すことが簡単にでき、用意する材料もリーズナブルで気軽に取り組めるため、子供の知育から年寄りのリハビリなど、広い用途で波及させる効果がある。
【符号の説明】
【0048】
aシャトルの切り込み点
b シャトルの切り込み点
c シャトルの切り込み点
d シャトルの切り込み点
A 箱面
B 箱面
C 箱面
D 箱面
E 箱面
F 箱面
G 箱面
H シャトル
J 縦糸
K 長針
M ガムテープ
N マスキングテープ
Q 横糸
Z 定規