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特開2024-78367誘電体スラリー組成物及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078367
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】誘電体スラリー組成物及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240603BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 311
H01B3/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060259
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0162708
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テ ギュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウン ソク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5G303
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE05
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG04
5E082FG26
5G303AA01
5G303AB05
5G303BA12
5G303CA01
5G303CB03
5G303CB06
5G303CB35
5G303CB39
5G303CD01
5G303CD04
5G303CD07
5G303DA05
(57)【要約】
【課題】水系溶媒の誘電体スラリーを用いてシートアタック現象を防止し、誘電体粉末の分散性を向上させて凝集現象を防止する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による誘電体スラリー組成物30,30'は、疎水性溶媒11及び誘電体粒子12を含む第1溶液10,10'と、親水性溶媒21、親水性分散剤22及び親水性バインダー23を含む第2溶液20と、を含み、上記第1溶液の少なくとも一部は、上記第2溶液中にエマルジョン構造を有することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性溶媒及び誘電体粒子を含む第1溶液と、
親水性溶媒、親水性分散剤及び親水性バインダーを含む第2溶液と、を含み、
前記第1溶液の少なくとも一部は、前記第2溶液中にエマルジョン構造を有する、誘電体スラリー組成物。
【請求項2】
前記エマルジョン構造は、前記第2溶液中に水滴(droplet)構造を有して分散している形状を含む、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項3】
前記エマルジョン構造の内表面には、前記誘電体粒子が配置される、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項4】
前記エマルジョン構造の内部には、前記誘電体粒子が配置される、請求項3に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項5】
前記第1溶液の体積比率は1.0vol%以上50.0vol%以下であり、前記第2溶液の体積比率は50.0vol%以上99.0vol%以下である、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項6】
前記第2溶液は、0.1vol%以上10.0vol%以下の親水性分散剤、5.0vol%以上50.0vol%以下の親水性バインダー及び40.0vol%以上94.9vol%以下の親水性溶媒を含む、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項7】
前記第2溶液の親水性溶媒は単一溶媒である、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項8】
前記第1溶液は、1.0vol%以上80.0vol%以下の誘電体粒子及び20.0vol%以上99.0vol%以下の疎水性溶媒を含む、請求項1に記載の誘電体スラリー組成物。
【請求項9】
内部電極パターンを形成する段階と、
前記内部電極パターン上に誘電体スラリー組成物をインクジェットプリンティングする段階と、を含み、
前記誘電体スラリー組成物は、疎水性溶媒と誘電体粒子を含む第1溶液及び親水性溶媒、親水性分散剤と親水性バインダーを含む第2溶液を含み、
前記第1溶液の少なくとも一部は、前記第2溶液中にエマルジョン構造を有する、積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記エマルジョン構造は、前記第2溶液中に水滴(droplet)構造を有して分散している形状を含む、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記エマルジョン構造の内表面には、前記誘電体粒子が配置される、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記エマルジョン構造の内部には、前記誘電体粒子が配置される、請求項11に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記第1溶液の体積比率は1.0vol%以上50.0vol%以下であり、前記第2溶液の体積比率は50.0vol%以上99.0vol%以下である、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記第2溶液は、0.1vol%以上10.0vol%以下の親水性分散剤、5.0vol%以上50.0vol%以下の親水性バインダー及び40.0vol%以上94.9vol%以下の親水性溶媒を含む、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記第2溶液の親水性溶媒は単一溶媒である、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記第1溶液は、1.0vol%以上80.0vol%以下の誘電体粒子及び20.0vol%以上99.0vol%以下の疎水性溶媒を含む、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記インクジェットプリンティングする段階の前に、前記第1溶液及び第2溶液を混合して超音波処理して前記第1溶液をエマルジョン化したエマルジョン構造を設ける段階と、を含む、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記インクジェットプリンティングする段階の後に、前記誘電体スラリー組成物を乾燥する段階と、をさらに含み、
前記乾燥した誘電体スラリー組成物内のエマルジョン構造の外表面の少なくとも一部は、前記第2溶液の親水性分散剤及び親水性バインダーの少なくとも一つ以上が配置される、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体スラリー組成物及びこれを用いた積層型電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
現在、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、セラミックグリーンシートと導電性ペーストを用いた内部電極パターンを交差積層して形成する。セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウム(BaTiO)などに代表されるセラミック粉末及び有機バインダーを主成分とする。
【0005】
従来には、疎水性を有する有機溶媒に有機バインダーを溶解させたビヒクルのうち、誘電体粉末が分散された形態の誘電体スラリーを用いた。従来の方法を用いて、導電性ペーストを形成し、乾燥した内部電極パターン上に誘電体スラリーを塗布して乾燥したセラミックグリーンシートを形成する場合、導電性ペースト中の有機溶媒がセラミックグリーンシート中の有機バインダーを膨潤または溶解させて不良を起こすシートアタック(sheet attack)現象が現れるという問題点があった。このようなシートアタック現象は、最終製品である積層セラミックキャパシタの誘電体層の絶縁性を低下させたり、ショート発生率を増加させるという問題点をもたらすおそれがある。
【0006】
このような問題点を解決するために、内部電極ペーストまたは誘電体スラリーの溶剤として水系を用いる試みがあったが、バインダー及び分散剤の種類や含量によって金属粉末または誘電体粉末の分散性の程度が異なるため、最適の設計組成に対する研究が必要な状況である。
【0007】
一方、従来の誘電体スラリーを塗布する方法として、テープキャスティング(tape casting)方式を多く利用するが、テープキャスティング方式の場合、内部電極ペーストを塗布してから、これを完全に乾燥した後に誘電体スラリーを塗布する必要があるため、時間が多くかかり、厚さの超薄膜化が難しいという問題点がある。一方、インクジェットプリンティング(inkjet printing)方式は、内部電極ペースト塗布後に完全乾燥をしなくても誘電体スラリーを塗布することができるという利点があるが、一般的に有機溶媒の誘電体スラリーを用いる場合、インクジェットの吐出入口が詰まるか、インクジェットの洗浄が容易ではないため、工程上の不便がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本公開特許公報第2002-284579号
【特許文献2】日本公開特許公報第2001-302342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、水系溶媒の誘電体スラリーを用いてシートアタック現象を防止することである。
【0010】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、誘電体粉末の分散性を向上させて凝集現象を防止することである。
【0011】
但し、本発明が解決しようとする様々な課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による誘電体スラリー組成物は、疎水性溶媒及び誘電体粒子を含む第1溶液と、親水性溶媒、親水性分散剤及び親水性バインダーを含む第2溶液と、を含み、上記第1溶液の少なくとも一部は、上記第2溶液中にエマルジョン構造を有することができる。
【0013】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、内部電極パターンを形成する段階と、上記内部電極パターン上に誘電体スラリー組成物をインクジェットプリンティングする段階と、を含み、上記誘電体スラリー組成物は、疎水性溶媒と誘電体粒子を含む第1溶液、及び親水性溶媒、親水性分散剤と親水性バインダーを含む第2溶液を含み、上記第1溶液の少なくとも一部は、上記第2溶液中にエマルジョン構造を有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、水系溶媒の誘電体スラリーを用いることでシートアタック現象を防止することができることである。
【0015】
本発明の様々な効果の一つは、誘電体粉末の分散性を向上させて凝集現象を防止することができることである。
【0016】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】積層型電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面である。
図3】本発明の一実施形態である誘電体スラリー及びこれを製造する方法を概略的に示した図面である。
図4図3のP領域の拡大図を概略的に示した図面である。
図5】本発明の一実施形態である誘電体スラリーを概略的に示した図面である。
図6】本発明の一実施形態である誘電体スラリーを乾燥した状態を概略的に示した図面である。
図7】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態である誘電体スラリーをOMを用いてスキャンした画像イメージである。
図8】本発明の一実施形態である誘電体スラリーを乾燥した状態をSEMを用いてスキャンした画像イメージである。
図9】本発明の一実施形態である誘電体スラリーをインクジェットプリンティング方式で塗布する段階を概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0019】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(T)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0021】
誘電体スラリー組成物
図3は、本発明の一実施形態である誘電体スラリー及びこれを製造する方法を概略的に示した図面であり、図4は、図3のP領域の拡大図を概略的に示した図面であり、図5は、本発明の一実施形態である誘電体スラリーを概略的に示した図面であり、図6は、本発明の一実施形態である誘電体スラリーを乾燥した状態を概略的に示した図面である。
【0022】
以下、図3図6を参照して、本発明の一実施形態による誘電体スラリー組成物について詳細に説明する。
【0023】
本発明の一実施形態による誘電体スラリー組成物30は、疎水性溶媒11及び誘電体粒子12を含む第1溶液10と、親水性溶媒21、親水性分散剤22及び親水性バインダー23を含む第2溶液20と、を含み、上記第1溶液10の少なくとも一部は、上記第2溶液20中にエマルジョン構造10'を有することができる。
【0024】
エマルジョン(emulsion)とは、ある溶液が他の溶液にコロイド状に広がっている溶液を意味することができ、互いに混ざらない2つの溶液の間に発生することができ、互いに異なる溶媒を用いた溶液が混ざっていることを意味することができる。
【0025】
本発明において、エマルジョン構造10'は、第1溶液10が第2溶液20内で複数個の水滴(droplet)構造を有して分散されている形状を意味することができ、一つのdroplet構造をエマルジョン構造10'と説明することができる。
【0026】
一方、第1溶液10及び第2溶液20が混合された誘電体スラリー組成物30を超音波処理(sonification)することで、第1溶液10をエマルジョン化してエマルジョン構造10'を有するようにすることができる。誘電体スラリー組成物30を超音波処理によって撹拌することで、第1溶液10を第2溶液20内に均一に分散させることができる。これにより、誘電体スラリー組成物30は、第1溶液10が第2溶液20内に分散された油中水滴型( oil -in-water )エマルジョン構造10'を含むことができる。
【0027】
本発明の一実施形態である誘電体スラリー組成物30中の第1溶液10の体積比率は1.0vol%以上50.0vol%以下であり、第2溶液20の体積比率は50.0vol%以上99.0vol%以下であることができる。
【0028】
すなわち、第2溶液20の体積が第1溶液10よりも高いことで、第2溶液20が第1溶液10を囲むようになり、第1溶液10がエマルジョン構造10'を有するか、または第1溶液10が第2溶液20に散布された状態のエマルジョン構造10'をより容易に有することができる。
【0029】
第1溶液10は、疎水性溶媒11及び誘電体粒子12を含むことができる。
【0030】
疎水性溶媒11は、例えば、Dihydro terpineol acetate (DHTA)、トルエン(toluene)、ベンゼン(benzene)、クロロフォーム(chloroform)、ヘキシルアセテート(hexyl acetate)及びヘキサン酸アリル(allyl hexanoate)系疎水性溶媒の少なくとも一つ以上を含むことができるが、特にこれに制限されるものではなく、炭化水素鎖(hydrocarbon chain)を含む溶媒であればいずれも用いることができる。
【0031】
誘電体粒子12は、誘電容量を形成する物質であればいずれも用いることができ、一般的にペロブスカイト系物質(ABO)を用いることができ、添加剤が固溶または拡散した状態を含むことができる。より具体的な誘電体粒子12に対する説明は後述する。
【0032】
第1溶液10は、1.0vol%以上80.0vol%以下の誘電体粒子12及び20.0vol%以上99.0vol%以下の疎水性溶媒11を含むことができる。
【0033】
誘電体粒子12の体積比率が1.0vol%未満である場合、十分な誘電容量を確保することが困難であり、20.0vol%超過である場合、分散が難しくなって凝集現象により十分な誘電容量を確保することが困難であり、粉末または結晶粒の形状の制御が困難であることがある。
【0034】
疎水性溶媒11の体積比率が20.0vol%未満である場合、誘電体粒子12の分散が難しくなって凝集現象が発生する可能性があり、体積比率が99.0vol%超過である場合、十分な誘電容量を確保することが困難である場合がある。
【0035】
但し、第1溶液10の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、各種添加剤をさらに含むことができる。
【0036】
第2溶液20は親水性溶媒21、親水性分散剤22、及び親水性バインダー23を含むことができる。
【0037】
親水性溶媒21は、親水性分散剤22及び親水性バインダー23を溶解することができるが、swellingが可能なものであれば十分であり、特に制限されるものではないが、例えば、水またはジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0038】
一方、互いに異なる種類の親水性溶媒を混合して親水性溶媒21として用いることができるが、単一水系溶媒を用いる場合には、水系溶媒内の物質の分散性に優れ、大量生産が容易であるため、経済的にも利点があり、単一水系溶媒を用いて第2溶液20を製造することが好ましいことがある。
【0039】
親水性分散剤22は、両親媒性を有する物質であれば、その種類を大きく制限しない。例えば、Triton X-114、Triton X-100、Brij-58、オクチルグルコシド(octyl glucoside)、オクチルチオグルコシド(octylthio glucoside)、デカエチレングリコールモノデシルエーテル(decaethylene glycol monododecyl ether)、N-デカノイル-N-メチルグルカミン(N-decanoyl-N-methylglucamine)、デシルマルトピラノサイド(decyl maltopyranoside)、N-ドデシルマルトサイド(N-dodecyl maltoside)、ノナエチレングリコールモノデシルエーテル(nonaethylene glycol monododecyl ether)、N-ノナノイル-N-メチルグルカミン(N-nonanoyl-N-methylglucamine)、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(octaethylene glycol monododecyl ether)、スパン20(Span20)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)及びSynperonic F108(PEO-b-PPO-b-PEO)の少なくとも一つ以上を含むことができ、親水性溶媒21内で溶解及びswellingが可能な物質であれば、いずれも用いることができる。
【0040】
親水性分散剤22は、第1溶液10と第2溶液20の界面に吸着されることができる。この場合、親水性分散剤22の疎水性基は第1溶液10側に、親水性基は第2溶液20側に吸着されることができる。
【0041】
親水性分散剤22が第1溶液10及び第2溶液20の界面に吸着されると、第1溶液10の油中水滴型( oil -in-water )エマルジョン構造10'をさらに安定して維持することができる。
【0042】
親水性バインダー23は、例えば、HSP(Hansen solubility parameter)が10(cal/cm1/2以上の高分子を用いることができ、例えばPEG-8 stearateなどのPEG(polyethylene glycol)系列、PVP(polyvinyl pyrrolidone)系列、PVA(polyvinyl alcohol)系列の少なくとも一つ以上を含むことができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0043】
親水性バインダー23は、セラミックグリーンシートと内部電極導電性ペーストに含まれる粒子との間の結合性向上に寄与する成分である。
【0044】
親水性バインダー23が第1溶液10と混合された状態で誘電体スラリー組成物30の内部に存在する場合、第1溶液10内の誘電体粒子12などに影響を及ぼさず、第1溶液10の乾燥時に誘電体粒子12の集合体が分散され得るマトリックスの役割を果たすことができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、エマルジョン構造10'の内表面には誘電体粒子12が配置されることができる。
【0046】
ここで、内表面に誘電体粒子12が配置されたとは、第1溶液10のエマルジョン構造10'のうち、第2溶液20との界面に誘電体粒子12が配置された形態を意味することができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、エマルジョン構造10'の内部には誘電体粒子12が配置されることができる。
【0048】
すなわち、エマルジョン構造10'と第2溶液20の界面領域ではない界面領域よりも内部、例えばエマルジョン構造10'の中央領域に誘電体粒子12が配置されることができる。
【0049】
エマルジョン構造10'を有する形状に誘電体粒子12を含むことで、誘電体粒子12間の凝集現象が発生することを抑制することができ、エマルジョン構造10'の内部に誘電体粒子12をさらに含む場合には、同一体積に対する誘電特性がさらに向上することができる効果がある。
【0050】
図7の(a)及び(b)は、本発明の一実施形態を光学顕微鏡(OM:Optical Microscope)を介してスキャンした画像イメージである。誘電体スラリー組成物30において、第2溶液20内に第1溶液10がエマルジョン構造10'を有して分散されていることを確認することができる。各物質の種類及び含量に応じて、様々な大きさ及び形態のエマルジョン構造10'が形成されることができる。
【0051】
図7の(a)は、エマルジョン構造10'の内表面に誘電体粒子12が配置された形態をスキャンした画像イメージであり、(b)の場合、エマルジョン構造10'の内表面及び内部に誘電体粒子12が配置された形態をスキャンした画像イメージである。
【0052】
図面を参照すると分かるように、エマルジョン構造10'の内表面及び内部に誘電体粒子12が配置された図7の(b)の場合、内表面のみに誘電体粒子12が配置された図7の(a)に比べて体積または面積がさらに大きいことができる。
【0053】
一方、図6を参照すると、エマルジョン構造10'を含む誘電体スラリー組成物30を乾燥して、乾燥された誘電体スラリー組成物30'となる場合、エマルジョン構造10'の外表面の少なくとも一部は、第2溶液20の親水性分散剤22及び親水性バインダー23の少なくとも一つ以上が配置されることができる。
【0054】
誘電体スラリー組成物30が乾燥過程を経て第2溶液20に含まれた第2溶媒21が除去されながら、親水性分散剤22及び親水性バインダー23がエマルジョン構造10'に吸着するにつれて、このような構造を有することができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0055】
乾燥温度に応じて異なることができ、乾燥過程を経て第1溶液10に含まれた第1溶媒11も除去されることができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0056】
図8は、乾燥された誘電体スラリー組成物30'はSEMを用いてスキャンした画像イメージであり、第1溶液10またはエマルジョン構造10'の乾燥された残余物がPETフィルム上に存在することを確認することができる。
【0057】
積層型電子部品
図1は、積層型電子部品の斜視図を概略的に示した図面であり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面である。
【0058】
以下、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法によって製造された積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0059】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0060】
より具体的には、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部を含むことができる。
【0061】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0062】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2に連結され、第2方向に互いに向かい合う第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4に連結され、第3方向に互いに向かい合う第5及び第6面5、6を有することができる。
【0063】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0064】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り制限されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO)系材料を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0065】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0066】
一方、誘電体層111を形成する方法は特に制限されないが、テープキャスティング(tape casting)方法を用いるか、インクジェットプリンティング(ink-jet printing)方法を用いることができる。
【0067】
本発明の一実施形態である誘電体スラリー組成物30を用いてインクジェットプリンティング方法を用いる場合、親水性溶媒21を用いるため、インクジェット吐出入口が詰まらないことができ、洗浄が容易であってインクジェットプリンタ200の長期間使用が可能であるという利点がある。
【0068】
誘電体層111の厚さは特に限定する必要はない。
【0069】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0070】
ここで、誘電体層111の厚さは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さを意味することができる。
【0071】
一方、誘電体層111の厚さは、誘電体層111の第1方向の大きさを意味することができる。なお、誘電体層111の厚さは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0072】
誘電体層111の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層111を第2方向に等間隔の30つの地点で第1方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30つの地点は容量形成部で指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの誘電体層111に拡張して平均値を測定すれば、誘電体層111の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0073】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0074】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0075】
より具体的には、第1内部電極121は第4面4から離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121に連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122に連結されることができる。
【0076】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131に連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132に連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0077】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0078】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0079】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
一方、内部電極121、122の厚さは特に限定する必要はない。
【0081】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0082】
ここで、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0083】
内部電極121、122の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔の30つの地点で第1方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30つの地点は、容量形成部で指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0084】
一方、本体110は、容量形成部の第1方向の両端面(end-surface)上に配置されたカバー部112、113を含むことができる。
【0085】
より具体的には、容量形成部の第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部の第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0086】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0087】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0088】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。
【0089】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0090】
ここで、カバー部112、113の厚さは、カバー部112、113の第1方向の大きさを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さは、カバー部112、113の平均厚さを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0091】
カバー部112、113の第1方向の平均大きさは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて一つのカバー部を第2方向に等間隔の30つの地点で厚さを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30つの地点は、上部カバー部112で指定されることができる。
【0092】
一方、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上にはサイドマージン部が配置されることができる。
【0093】
より具体的には、サイドマージン部は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部及び第6面6に配置された第2サイドマージン部を含むことができる。すなわち、サイドマージン部は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)に配置されることができる。
【0094】
サイドマージン部は、本体110の第2及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0095】
サイドマージン部は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0096】
サイドマージン部は、セラミックグリーンシート上にサイドマージン部が形成されるところを除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111を容量形成部の第3方向の両端面(end-surface)に第3方向に積層して形成することもできる。
【0097】
一方、第1及び第2サイドマージン部の幅は特に限定する必要はない。
【0098】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1及び第2サイドマージン部の幅は100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0099】
ここで、サイドマージン部の幅は、サイドマージン部の第3方向の大きさを意味することができる。また、サイドマージン部の幅は、サイドマージン部の平均幅を意味することができ、サイドマージン部の第3方向の平均大きさを意味することができる。
【0100】
サイドマージン部の第3方向の平均大きさは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて、一つのサイドマージン部を第1方向に等間隔の30つの地点で第3方向の大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30つの地点は、第1サイドマージン部で指定されることができる。また、このような平均値測定を第2サイドマージン部に拡張して平均値を測定すると、サイドマージン部の第3方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0101】
本発明の一実施形態においては、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0102】
外部電極131、132は本体110上に配置されて内部電極121、122に連結されることができる。
【0103】
より具体的には、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122にそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置され、第1内部電極121に連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置され、第2内部電極122に連結されることができる。
【0104】
外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0105】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0106】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0107】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。
【0108】
また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0109】
電極層131a、132aに用いられる導電性金属は、静電容量形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後に焼成することで形成されることができる。
【0110】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。
【0111】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであることができ、複数の層で形成されることができる。
【0112】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0113】
積層型電子部品の製造方法
本発明の一実施形態によって製造された誘電体スラリー組成物は、積層型電子部品の誘電体グリーンシートを製造するための用途で用いられることができる。
【0114】
誘電体スラリー組成物に対する説明のうち、上述したものと重複する説明は省略することができ、積層型電子部品の製造方法において誘電体スラリー組成物に対するより詳細な説明が必要な場合、付加して詳細に説明する。
【0115】
図9は、本発明の一実施形態である誘電体スラリーをインクジェットプリンティング方式で塗布する段階を概略的に示した図面である。
【0116】
以下、図9を参照して、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品の製造方法について詳細に説明する。
【0117】
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、内部電極パターンを形成する段階と、上記内部電極パターン40上に誘電体スラリー組成物をインクジェットプリンティングする段階と、を含み、上記誘電体スラリー組成物30は、疎水性溶媒11と誘電体粒子12を含む第1溶液10及び親水性溶媒21、親水性分散剤22と親水性バインダー23を含む第2溶液20を含み、上記第1溶液10の少なくとも一部は上記第2溶液20中にエマルジョン構造10'を有することができる。
【0118】
内部電極パターン40を形成する段階は、セラミックグリーンシートまたはインクジェットプリンティング方式によって形成されたセラミック上にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いて形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0119】
内部電極パターン40は、ストライプ状を有することができ、導電性金属を含む内部電極ペーストによって形成されることができる。
【0120】
導電性金属の種類は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0121】
導電性金属は特に制限されるものではないが、電気導電性に優れた材料を用いることができる。
【0122】
次に、内部電極パターン40上の誘電体スラリー組成物30をインクジェットプリンティングする段階を行うことができる。
【0123】
ここで、誘電体スラリー組成物30に対する説明のうち、上述の内容と同じ内容は省略する。
【0124】
図9は、インクジェットプリンタ200を用いてインクジェット方式によって誘電体スラリー組成物30を塗布することを示した図面である。
【0125】
インクジェットプリンタ200は、予め設定されたパターンに応じて誘電体スラリー組成物30をキャリア(carrier)フィルム上に塗布するか、内部電極パターン40上に塗布することができる。
【0126】
インクジェットプリンタ200は、キャリアフィルムまたは内部電極パターン40上に移動しながら誘電体スラリー組成物30を印刷することができ、インクジェットの吐出入口を介して噴射することができる。
【0127】
インクジェットプリンタ200は、これを支えている台、予め設定されたパターンに応じて誘電体スラリー組成物30を噴射するインクジェットプリンタヘッド、インクジェットプリンタヘッドをキャリアフィルムまたは内部電極パターン上で移動させる移動装置、インクジェットプリンタヘッドが予め設定されたパターンに応じて誘電体スラリー組成物30を噴射するように制御するプログラムを行う回路部などを含むことができる。
【0128】
インクジェットプリンタヘッドは、予め設定されたパターンに応じた経路上で移動しながら誘電体を印刷することができ、誘電体スラリー組成物30の噴射時間、噴射される量などを調節することで、予め設定されたパターンに応じて誘電体を形成することができ、誘電体層の厚さを制御することができる。
【0129】
一方、誘電体スラリー組成物30は水系型に該当し、第1溶液10が第2溶液20内に均一に分散されたエマルジョン構造10'として存在することができる。これにより、誘電体スラリー組成物30を内部電極パターン40上に塗布しても、親水性溶媒21が下層の疎水性内部電極パターン40と混ざらず、疎水性第1溶液10が内部電極パターン40と直接的に接触しないようになるため、内部電極パターン40に含まれた有機バインダーを膨潤または溶解させないことができる。また、親水性の第2溶液20が内部電極パターン40と直接的に接触しても、親水性を有する第2溶媒21は、内部電極パターン40に含まれた有機バインダーと非相溶性を有することで、シートアタック現象を防止することができる。
【0130】
誘電体スラリー組成物30に含まれる誘電体粒子12は、ペロブスカイト(ABO)系材料を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0131】
誘電体粒子12の直径は特に制限されないが、150nm以下の直径大きさを有することが好ましいことができる。ここで、直径は誘電体粒子12の中心点を通る最小直径大きさ及び最大直径大きさの平均値を意味することができる。
【0132】
従来、誘電体スラリー組成物30をインクジェットプリンティング方法を用いて誘電体グリーンシートを製作する場合、有機性溶媒を用いることでインクジェットプリンティングの吐出入口を塞いで工程上の故障を引き起こす場合が多く、インクジェットプリンティングの吐出入口には、有機物が残留物として残っているため、洗浄が容易でないという問題点がある。
【0133】
しかしながら、本発明の一実施形態である誘電体スラリー組成物30をインクジェットプリンティング方法に用いる場合、主要溶媒が第2溶液20の親水性溶媒21であるため、上記のような問題点を解決することができるという利点がある。
【0134】
本発明の一実施形態において、インクジェットプリンティングする段階の前に、第1溶液10及び第2溶液20を混合して超音波処理(sonification)して第1溶液10をエマルジョン化したエマルジョン構造10'を設ける段階を含むことができる。
【0135】
第1溶液10を第2溶液20内にエマルジョン構造10'を有するように製造することで、誘電体粒子12の凝集現象を抑制することができる。これに対するより詳細な説明は上述と同じであるため、省略する。
【0136】
次に、インクジェットプリンティングする段階の後に、誘電体スラリー組成物を乾燥する段階をさらに含むことができ、このとき、乾燥された誘電体スラリー組成物内のエマルジョン構造の外表面の少なくとも一部は、第2溶液20の親水性分散剤22及び親水性バインダー23の少なくとも一つ以上が配置されることができる。
【0137】
乾燥する過程を経る間、第1溶液10と第2溶液20との間の境界面に存在する親水性分散剤22または親水性バインダー23によって、第1溶液10はエマルジョン構造10'を維持することができる。これにより、第1溶媒11または第2溶媒21が乾燥及び除去される過程でも誘電体粒子12、親水性分散剤22及び親水性バインダー23は、内部電極パターン40と相(phase)が分離されたまま存在することができる。結果的に、誘電体スラリー組成物の乾燥塗膜30' は複数個の誘電体粒子12の集合体と誘電体粒子12の集合体の外表面に存在する親水性分散剤22及び親水性バインダー23が均一に覆われた形態を有することができる。
【0138】
乾燥温度及び時間は、特に制限されるものではないが、親水性溶媒21が蒸発することができる温度である100℃以上の条件で、1分以上熱を加えて乾燥を行うことができる。
【0139】
より具体的には、乾燥段階を経て残留した誘電体スラリー組成物の乾燥塗膜30'は、乾燥前にエマルジョン構造10'を有する形態の複数個の誘電体粒子12を含むことができ、上述したように誘電体粒子12がエマルジョン構造10'の内表面に配置された形態を有するか、または内部に誘電体粒子12を含む形態で存在することができる。
【0140】
このとき、乾燥後のエマルジョン構造10'の外表面の少なくとも一部は親水性分散剤22及び親水性バインダー23の少なくとも一つ以上が配置されることができ、より好ましくは親水性分散剤22及び親水性バインダー23の少なくとも一つ以上が誘電体粒子12を均等に囲んでいる形態を有することができる。
【0141】
本発明の一実施形態によって積層型電子部品を製造する場合、内部電極ペースト上に誘電体スラリー組成物を形成する段階でシートアタックなどの損傷を受けない水系誘電体スラリー組成物を提供することができる。
【0142】
インクジェットプリンティング方式による誘電体グリーンシートの形成時に、速い乾燥過程が伴わなくても安定した誘電体スラリー組成物の塗膜の形成が可能であり、有機溶媒の使用量が非常に少ないにも関わらず、誘電体粒子がエマルジョン構造内に閉じ込められて誘電体粒子間に凝集現象が発生しないという効果がある。
【0143】
また、誘電体スラリー組成物が水系に該当するため、初期状態が維持される期間が非常に長く、誘電体スラリー組成物の保管安定性が容易である。また、誘電体スラリー組成物の大部分が水系で構成されているため、インクジェットプリンタに用いる場合、吐出入口の洗浄が非常に容易であるという利点がある。
【0144】
本明細書で用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくても、他の一実施形態でその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明であると理解することができる。
【0145】
本明細書で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0146】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
10、10' 第1溶液(エマルジョン構造)
11 疎水性溶媒
12 誘電体粒子
20 第2溶液
21 親水性溶媒
22 親水性分散剤
23 親水性バインダー
30、30' 誘電体スラリー組成物
40 内部電極パターン
200 インクジェットプリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9