(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007837
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ラコサミドを含む医薬組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20240112BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240112BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240112BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K9/48
A61K47/32
A61P25/08
A61K9/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109189
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】服部 雅輝
(72)【発明者】
【氏名】林田 一希
(72)【発明者】
【氏名】三宅 克紀
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076EE12H
4C076FF37
4C076FF53
4C206AA01
4C206AA10
4C206GA37
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA06
(57)【要約】
【課題】ラコサミドの新たな処方を提供することを課題とする。
【解決手段】有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアと、コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層とを有する医薬組成物によって課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアと、前記コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層とを有する医薬組成物。
【請求項2】
前記共重合体が、前記医薬組成物100質量部中0.1~10質量部含まれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記共重合体が、前記コーティング層100質量部中30~90質量部含まれる、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記コーティング層が、薬学的に許容される着色剤を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む医薬組成物。
【請求項6】
有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及び薬学的に許容される着色剤を含むコーティング層を形成する、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む医薬組成物の退色抑制方法。
【請求項7】
有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層を形成する、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む医薬組成物の防湿方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラコサミドを含む医薬組成物に関する。本発明は、ラコサミドを含む医薬組成物の退色抑制方法に関する。本発明は、ラコサミドを含む医薬組成物の防湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラコサミドは、下記の式(I)で示される化合物であり、その化学名は、(2R)-2-アセタミド-N-ベンジル-3-メトキシプロパンアミドである。ラコサミドは電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進し、過興奮状態にある神経細胞を安定化させることによって抗けいれん作用を示すと考えられている化合物であり、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)の治療や他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法等に用いられている。ラコサミドを含む医薬組成物は、例えば特表2013-545762(特許文献1)に記載されているような、錠剤の形態で市販されている。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新たな成分によってコーティングされたラコサミドを含む医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアと、コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層とを有する医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及び薬学的に許容される着色剤を含むコーティング層を形成する、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む医薬組成物の退色抑制方法を提供する。
【0009】
本発明は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層を形成する、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む医薬組成物の防湿方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新たな成分によってコーティングされたラコサミドを含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】光照射試験前の実施例2の錠剤の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を示す図である。
【
図1B】光照射試験後の実施例2の錠剤の表面を、SEMを用いて観察した結果を示す図である。
【
図2A】光照射試験前の比較例2の錠剤の表面を、SEMを用いて観察した結果を示す図である。
【
図2B】光照射試験後の比較例2の錠剤の表面を、SEMを用いて観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「α~β」(α,βは具体的値)は、特に断らない限りα以上β以下(即ち、両端の値を含む)を意味する。
【0013】
(医薬組成物)
本実施形態の医薬組成物は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む。ラコサミドの薬学的に許容される塩とは、上記の式(I)で表される化合物と有機又は無機の酸とから形成される、ヒトを含む哺乳動物への投与が許容される塩をいう。そのような薬学的に許容される塩としては、例えばリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩又は炭酸塩等が挙げられる。ラコサミド又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物とは、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、ヒトを含む哺乳動物への投与が許容される溶媒とから形成される固体分子をいう。そのような溶媒としては、例えば水、酢酸、エタノール等が挙げられる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、有効成分として、塩及び溶媒和物を形成していないラコサミド、すなわち上記の式(I)で表される化合物を含む。
【0014】
以下、「ラコサミド」との用語には、特に言及しない限り、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を包含する。ラコサミドの形状は、特に限定されず、例えば粉末等であってもよい。
【0015】
コアとは、コーティングされる前のラコサミドを含む医薬組成物である。例えば、医薬組成物が錠剤の形態であれば、コアはラコサミドを含む素錠であり、医薬組成物が顆粒の形態であれば、コアはラコサミドを含む造粒物や整粒末である。コア中のラコサミドの含有量は、特に限定されない。例えば、コア100質量部中45~80質量部とすることができ、50~70質量部としてもよい。コア中のラコサミドの含有量の下限はコア100質量部中45質量部、50質量部、55質量部である。コア中のラコサミドの含有量の上限はコア100質量部中80質量部、75質量部、70質量部である。
【0016】
コアは軽質無水ケイ酸を含んでいても含んでいなくてもよいが、コアが軽質無水ケイ酸を含んでいることが好ましい。コア中の軽質無水ケイ酸の含有量は、例えばコア100質量部中0~10質量部とすることができ、1~5質量部としてもよい。コアが軽質無水ケイ酸を含むことで、コアを製造する際のラコサミドを含む造粒物や整粒末が静電気によって製造装置へ付着することを軽減することができる。
【0017】
コアは、ラコサミドや軽質無水ケイ酸以外に、必要に応じて医薬品添加物が含まれていてもよい。そのような医薬品添加物としては、例えば、賦形剤、安定剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、崩壊剤等が挙げられる。以下に、コアに含まれていてもよい医薬品添加物を例示する。
【0018】
賦形剤としては、例えば、デンプン類、セルロース類、糖類、糖アルコール類、ステアリン酸マグネシウム、クロスポビドン、リン酸塩、グルテン、キトサン、ペクチン、アルブミン、カゼイン、グリシン等が挙げられる。デンプン類としては、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。糖類としては、乳糖水和物、白糖、トレハロース、スクロース、マルトースまたはこれらの異性体等が挙げられる。糖アルコール類としては、D-ソルビトール、D-マンニトール等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム等が挙げられる。賦形剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
安定剤としては、例えば、塩化カルシウム、塩化カルシウム水和物、塩化カルシウム二水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、アラニン、塩化ナトリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。安定剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0020】
滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等が挙げられる。滑沢剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0021】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。結合剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0022】
酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、トコフェロール類、ベンゾトリアゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸塩、没食子酸エステル、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。酸化防止剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0023】
崩壊剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、白糖、デキストラン、乳糖等が挙げられる。崩壊剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
コアに含まれる医薬品添加物の含有量は、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12.5質量%以下、10質量%以下であり得る。
【0025】
本実施形態の医薬組成物においては、ラコサミドを含むコアが、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(以下、「PVA・AA・MMA共重合体」とも呼ぶ)を含むコーティング層により被覆されている。コーティング層がPVA・AA・MMA共重合体を含むことで、医薬組成物の退色を抑えたり、防湿性を向上させたりすることができる。PVA・AA・MMA共重合体としては、例えば大同化成工業社のPOVACOAT(登録商標) Type F(平均分子量約40000)等が挙げられる。
【0026】
PVA・AA・MMA共重合体のポリビニルアルコールは、部分けん化物であることが好ましい。すなわち、PVA・AA・MMA共重合体は、ポリビニルアルコール(部分けん化物)・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体であることが好ましい。ポリビニルアルコール(部分けん化物)は例えば以下の式(II)で表すことができる。ポリビニルアルコール(部分けん化物)のけん化度は特に限定されず、任意の値のものを使用できる。
【0027】
【0028】
PVA・AA・MMA共重合体は、例えば以下の式(III)で表すことができる。下記式(III)中のw、x、y及びzの比は特に限定されないが、w+x>y+zであることが好ましい。
【0029】
【0030】
PVA・AA・MMA共重合体の平均分子量は特に限定されず、任意の値のものを使用できる。
【0031】
PVA・AA・MMA共重合体の粘度は特に限定されないが、3~10mPa・sであることが好ましく、5~6 mPa・sであることがより好ましい。ここでの粘度とは、日本薬局方に記載の回転粘度計法に基づいて測定した粘度である。
【0032】
医薬組成物中のPVA・AA・MMA共重合体の量は特に限定されない。例えば、医薬組成物100質量部中0.1~10質量部とすることができ、0.5~5質量部であることが好ましく、1~4質量部であることがより好ましく、1.5~3.5質量部であることがより好ましく、2~3質量部であることがより好ましい。医薬組成物中のPVA・AA・MMA共重合体の含有量の下限は、医薬組成物100質量部中0.1質量部、0.2質量部、0.3質量部、0.5質量部、0.75質量部、1質量部、1.25質量部、1.5質量部、1.6質量部、1.7質量部、1.8質量部、1.9質量部、2.0質量部、2.1質量部、2.2質量部である。医薬組成物中のPVA・AA・MMA共重合体の含有量の上限は、医薬組成物100質量部中10質量部、9質量部、8質量部、7質量部、6質量部、5質量部、4質量部、3.5質量部、3.4質量部、3.3質量部、3.2質量部、3.1質量部、3.0質量部、2.9質量部、2.8質量部である。
【0033】
コーティング層中のPVA・AA・MMA共重合体の含有量は特に限定されない。例えば、コーティング層100質量部中30~90質量部とすることができ、40~90質量部としてもよいし、50~90質量部としてもよいし、50~80質量部としてもよいし、50~70質量部としてもよい。コーティング層中のPVA・AA・MMA共重合体の含有量の下限は、コーティング層100質量部中30質量部、40質量部、50質量部、55質量部、60質量部である。コーティング層中のPVA・AA・MMA共重合体の含有量の上限は、コーティング層100質量部中90質量部、80質量部、70質量部である。
【0034】
コーティング層は、薬学的に許容される着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黒酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。着色剤は、一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。コーティング層に着色剤が含まれることで、本実施形態の医薬組成物を識別しやすくなる。また、ラコサミドの含有量に応じて、色の異なる着色剤を用いてもよい。
【0035】
コーティング層は、PVA・AA・MMA共重合体や着色剤以外に、必要に応じてその他の医薬品添加物が含まれていてもよい。そのような添加物としては、例えば、従来のコーティング剤、安定剤、酸化防止剤、甘味剤、香料等が挙げられる。安定剤、酸化防止剤については上述したものを用いることができる。
【0036】
従来のコーティング剤としては、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ポリソルベート80、ポリビニルピロリドン、カルナウバロウ、ミツロウ、石膏、セラック、ベントナイト、アラビアゴム、オリーブ油、タルク、結晶セルロース、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。コーティング剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
甘味剤としては、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、マルチトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、水アメ、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、蜂蜜等が挙げられる。甘味剤は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0038】
香料としては、例えば、ストロベリーミクロン、ペパーミントミクロン、ピーチミクロン、ライチミクロン及びパイナップルミクロン等が挙げられる。香料は一種でもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
コーティング層に含まれるその他の医薬品添加物の含有量は、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12.5質量%以下、10質量%以下であり得る。
【0040】
本実施形態の医薬組成物は、PVA・AA・MMA共重合体を含むコーティング層を有していることで、光を長時間受けても退色を抑えることができる。医薬組成物は、D65光源によって総照射光量120万lx・hrの光を浴びた際の光の照射前と照射後の色差ΔEが2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。色差は、以下の式IVに基づいて計算することができる。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 (IV)
ΔL*、Δa*、Δb*はそれぞれ、L*a*b*表色系における二つの物体色の明度L*の差及び色座標Δa*、Δb*の差である。
【0041】
コーティング層の厚みは特に限定されず、医薬組成物の形状、用途にあわせて適宜調整し得る。必要であれば、本発明の医薬組成物は、PVA・AA・MMA共重合体を含むコーティング層以外のコーティング層を有していてもよい。PVA・AA・MMA共重合体を含むコーティング層以外のコーティング層を有している場合とは、例えばコアにPVA・AA・MMA共重合体を含むコーティング層を形成した後、別のコーティング剤による新たな層が形成される場合等が挙げられる。別のコーティング剤としては、例えば上述した従来のコーティング剤を用いることができる。
【0042】
本実施形態の医薬組成物の水分値は特に限定されないが、例えば、製造時の水分値が10質量%以下とすることができる。この水分値は、カールフィッシャー法を用いて測定される値である。本実施形態の医薬組成物は、製造後、室温25℃、相対湿度75%の空間に三ヶ月置かれた際の水分値が6%以下であることが好ましい。
【0043】
本実施形態の医薬組成物の形態(剤形)は特に限定されず、例えば、錠剤、顆粒剤等が挙げられる。このうち、錠剤であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の医薬組成物が錠剤の形態であったとき、錠剤の形状は特に限定されず、円形であっても楕円形であってもよいが、円形であることが好ましい。円形であることで錠剤の生産性を向上できる。錠径や錠厚も含有されるラコサミド量に応じて適宜設定し得る。錠径は、例えば錠剤が円形の場合は錠径が5~10mmの範囲にあることが好ましく、6mm~8mmの範囲にあることがより好ましい。錠厚は、例えば2mm~4mmの範囲にあることが好ましい。
【0045】
本実施形態の医薬組成物が錠剤の形態であったとき、錠剤の質量は特に限定されないが、例えば1錠当たり80mg~200mgの範囲とすることができる。このうち、ラコサミドを1錠当たり40~60mgの範囲で含む錠剤の場合、錠剤の質量は1錠当たり80mg~100mgの範囲であることが好ましく、85~95mgであることがより好ましい。ラコサミドを1錠当たり80~120mgの範囲で含む錠剤の場合、錠剤の質量は1錠当たり150mg~200mgの範囲であることが好ましく、150~170mgであることがより好ましい。
【0046】
本実施形態の医薬組成物が錠剤の形態であったとき、錠剤は割線を有していても有していなくてもよいが、割線を有している場合、分割後の質量の偏りが小さいことが好ましい。具体的には、分割後の質量偏差が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態の医薬組成物が錠剤の形態であったとき、錠剤の硬度は特に限定されないが、例えば、100N~140Nの範囲にあることが好ましい。本明細書において、硬度とは、錠剤硬度計を用い測定した値である。
【0048】
本実施形態の医薬組成物が錠剤の形態であったとき、錠剤の崩壊時間は3分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。ここで崩壊時間とは、第十七改正日本薬局方に記載の崩壊試験法に従って測定した時間を指す。
【0049】
本実施形態の医薬組成物は、ラコサミドの類縁物質量が、ラコサミド100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.03質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態の医薬組成物は、必要に応じてPTP包装、ビン充填、アルミ包装等により包装されていてもよい。PTP包装の素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン又はポリカーボネート等の樹脂や、アルミニウム等の金属が挙げられる。これらの素材は、一種類で用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよい。組み合わせの例としては、例えば、ポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンとを積層することや、ポリ塩化ビニルとポリクロロトリフルオロエチレンとを積層すること等が挙げられる。上記の樹脂を公知の方法で成形した樹脂シートの成形したポケットに錠剤を入れ、アルミニウム箔を用いて蓋をすることで、包装することができる。
【0051】
PTP包装は、更にアルミピローによって包装されていてもよい。このアルミピローには、更に乾燥剤や脱酸素剤が収容されていてもよい。乾燥剤としては、例えば、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカゲル又はゼオライト等が挙げられる。脱酸素剤としては、例えば、鉄粉のような鉄系の脱酸素剤、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、ヒドロキノン又はカテコールのような有機系の脱酸素剤等が挙げられる。これらの乾燥剤や脱酸素剤は一種類で用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよいし、乾燥剤と脱酸素剤とを組み合わせて用いてもよい。乾燥剤と脱酸素剤とを組み合わせた製品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社の「ファーマキープ(登録商標)」等が挙げられる。
【0052】
医薬組成物は、必要に応じてガラスビンやプラスチック製ボトルに充填されていてもよく、アルミ包装により1回分毎に分包されていてもよい。プラスチック製ボトルの素材としては、上述したPTP包装用の樹脂が挙げられる。アルミ包装は、更にアルミピローによって包装されていてもよい。このアルミピローには、更に上述した乾燥剤や脱酸素剤が収容されていてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びステアリン酸マグネシウムを含むコアと、コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酸化チタン、タルク及び薬学的に許容される着色剤を含むコーティング層とを有する錠剤の形態である医薬組成物である。
【0054】
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びステアリン酸マグネシウムを含むコアと、コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黒酸化鉄及び青色2号アルミニウムレーキを含むコーティング層とを有する錠剤の形態である医薬組成物である。この医薬組成物の一例として、後述の実施例1の錠剤が挙げられる。
【0055】
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン及びステアリン酸マグネシウムを含むコアと、コアを被覆する、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酸化チタン、タルク、黄色三二酸化鉄を含むコーティング層とを有する錠剤の形態である医薬組成物である。この医薬組成物の一例として、後述の実施例2の錠剤が挙げられる。
【0056】
これらの医薬組成物のラコサミド、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、コア、コーティング層については上述したとおりである。
【0057】
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む医薬組成物である。医薬組成物に含まれるラコサミド、PVA・AA・MMA共重合体、医薬組成物に含まれるこれらの含有量、や医薬品添加物については上述したとおりである。
【0058】
(ラコサミドを有効成分とする錠剤の製造方法)
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む造粒物を得る工程と、造粒物を圧縮成型して素錠を得る工程と、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング液を用いて前記素錠をコーティングする工程とを含む、錠剤の製造方法を提供する。この製造方法の一例について、以下に説明する。
【0059】
ラコサミドを衝撃式粉砕機等に供して粉砕する。衝撃式粉砕機としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の装置を用いることができる。そのような装置としては、例えばピンミルやハンマーミル等が挙げられる。
粉砕したラコサミドに任意で上述した医薬品添加物を混合してもよい。混合は、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。混合を用手法で行う場合は、例えば、ラコサミドと医薬品添加物とを適当な袋に入れて撹拌する袋混合を行ってもよい。混合を機械で行う場合は、当該技術分野で公知の混合機を用いてもよい。混合機は、回転型混合機及び固定型混合機のいずれであってもよい。回転型混合機は、容器自体を回転させることで、該容器に収容した粉体を混合する機械である。固定型混合機は、容器内に備えられた撹拌羽根、スクリュー等を回転させることで、該容器に収容した粉体を混合する機械である。混合機としては、例えばV型混合機、二重円錐型混合機、リボン型混合機、円錐スクリュー型混合機等が挙げられる。あるいは、撹拌造粒機のような、後述の造粒も行える装置に導入して混合してもよい。混合するラコサミドや医薬品添加物の量は、用いる混合機に応じて適宜設定することができる。粉砕したラコサミドの代わりに、市販のラコサミドの粉末を用いてもよい。医薬品添加物は特に限定されず、用途に応じて適宜設定し得るが、軽質無水ケイ酸が含まれるのが好ましい。軽質無水ケイ酸を含むことで、乾燥後の造粒物や整粒末が静電気によって製造装置へ付着することを軽減することができる。
【0060】
粉砕したラコサミド、又はラコサミドと医薬品添加物との混合物を造粒機に入れて造粒し、有効成分としてラコサミドを含む造粒物を得る。造粒機としては、例えば、撹拌造粒機、流動層造粒機、乾式造粒機等を用いることができる。また、流動層造粒乾燥機のように装置が乾燥機能を有していてもよい。
【0061】
得られた造粒物を打錠機によって圧縮成型することにより、錠剤(素錠)を得ることができる。「素錠」とは、コーティング処理を行っていない錠剤のことを指す。圧縮成型に用いる打錠機は公知のものを用いることができる。公知の打錠機としては、例えば、単発式打錠機やロータリー式打錠機等を用いることができる。錠剤を製造する際の打錠圧力は、特に限定されず、錠剤の組成や重量等に応じて適宜設定し得る。打錠圧力は、例えば、錠剤が50mg錠であれば3~7kNの範囲で設定してもよく、錠剤が100mg錠であれば5~9kNの範囲で設定してもよい。圧縮成型前に、造粒物に任意で医薬品添加物を混合してから圧縮成形してもよい。医薬品添加物は上述したものを用いることができる。造粒物と医薬品添加物との混合は、上述した粉砕したラコサミドと医薬品添加物の混合に用いる方法により行うことができる。
【0062】
打錠機によって圧縮成型する前に、得られた造粒物を乾燥・整粒することで、整粒末を得て、整粒末を打錠機に供して圧縮成型することにより、錠剤(素錠)を得てもよい。乾燥方法は特に限定されず、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。例えば、造粒物を恒温機に入れて乾燥させてもよいし、流動層造粒乾燥機によって乾燥させてもよい。整粒方法は特に限定されず、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。例えば、整粒機に供して整粒することが挙げられる。特定の網目を有する篩に供して整粒してもよい。圧縮成型前に、整粒末に任意で医薬品添加物を混合してから圧縮成形してもよい。医薬品添加物は上述したものを用いることができる。整粒末と医薬品添加物との混合は、上述した粉砕したラコサミドと医薬品添加物の混合に用いる方法により行うことができる。
【0063】
得られた素錠に対してポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング液を用いてコーティングすることによって、ラコサミドを有効成分とするコーティング錠剤を得ることができる。コーティング方法としては、公知のコーティング方法を用いることができる。例えば、パンコーティング法、流動層コーティング法等を用いることができる。
【0064】
(ラコサミドを有効成分とする顆粒の製造方法)
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む造粒物を得る工程と、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング液を用いて前記造粒物をコーティングする工程とを含む、顆粒の製造方法を提供する。この製造方法の一例について、以下に説明する。
【0065】
まず、ラコサミドの造粒物を得る。ラコサミドの造粒物の製造方法は上述した錠剤の製造方法と同じである。
得られた造粒物に対してポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング液を用いてコーティングすることによって、ラコサミドを有効成分とする顆粒を得ることができる。コーティング方法としては、公知のコーティング方法を用いることができる。例えば、パンコーティング法、流動層コーティング法等を用いることができる。造粒物は、コーティングの前に、造粒物を乾燥・整粒して整粒末にしてからコーティングしてもよい。ラコサミドの造粒物の整粒については上述したとおりである。
【0066】
(コーティング液の製造方法)
上述した顆粒及び錠剤の製造方法は、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング液を製造する工程を含んでいてもよい。コーティング液は、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を溶媒に分散することにより製造できる。溶媒としては、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を分散することができれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。コーティング液には、必要に応じて上述の医薬品添加物を加えてもよい。また、医薬品添加物として、上述した従来のコーティング剤を更に加えてもよい。分散後の溶液は、篩に通して濾過してもよい。
【0067】
(退色抑制方法)
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及び薬学的に許容される着色剤を含むコーティング層を形成する、医薬組成物の退色抑制方法である。着色剤を含む医薬組成物は、長時間光を受けると退色して色褪せを生じることがある。本発明のように、ラコサミドを含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層を形成することで、医薬組成物の光に対する耐性が向上することで退色を防ぐことを可能にする。この方法における医薬組成物等については、上述の本実施形態の医薬組成物にて述べたことと同じである。
【0068】
(防湿方法)
本発明の一実施形態は、有効成分としてラコサミド、ラコサミドの薬学的に許容される塩又はラコサミド若しくはラコサミドの薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層を形成する、医薬組成物の防湿方法である。本発明のように、ラコサミドを含むコアに、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティング層を形成することで、医薬組成物の防湿性を向上することができる。この方法における医薬組成物等については、上述の本実施形態の医薬組成物にて述べたことと同じである。
【0069】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【実施例0070】
ラコサミドを含むフィルムコーティング錠剤を新たに製造して、その性質を測定した。用いたラコサミドは、購入したラコサミドをピンミルで粉砕して粉末にしたものを用いた。
【0071】
[実施例1のコーティング錠剤(1錠あたりのラコサミド量50mg)]
(整粒末の製造)
ラコサミドの粉末と、結晶セルロースと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと、軽質無水ケイ酸とを攪拌混合造粒機(パウレック社製VG-200)に入れ、混合した。この混合物に、さらにヒドロキシプロピルセルロースと精製水とを加えて造粒した。この造粒物を整粒機(パウレック社製QC-194S)に加えて解砕した。この解砕物を流動層造粒乾燥機(フロイント産業社製NFLO-120)に加えて乾燥後、軽質無水ケイ酸を更に加えて混合した。混合後、混合物を整粒機に加えて整粒することでラコサミド整粒末を得た。
【0072】
(打錠末の製造)
ラコサミド整粒末と、クロスポビドンと、結晶セルロースとをタンブラーミキサー(エイシン社製TMSH-100S)に加え混合した。この混合末の一部を取り、ステアリン酸マグネシウムと混ぜて倍散した。この倍散末と、混合末の残りとを再度混合してラコサミド打錠末(50mg用)を得た。
【0073】
(素錠の製造)
得られたラコサミド打錠末(50mg用)を打錠機(菊水製作所製LIBRA)に加え、打錠圧3~7kN(平均打錠圧5kN)で打錠してラコサミド素錠(50mg)を得た。打錠時には、割線が入るように打錠した。
【0074】
(コーティング液の製造)
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(大同化成工業社製:Type F:平均分子量40000)を精製水に加え溶解した。これにタルクを加え分散した(分散液I)。
精製水に酸化チタン、三二酸化鉄、黒酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキを加え分散した(分散液II)。
上述した分散液Iと分散液IIとを混ぜ合わせてコーティング液(50mg用)とした。
【0075】
(コーティング錠剤の製造)
55℃まで加熱したラコサミド素錠(50mg)を、パンコーティング装置(フロイント産業社製ハイコーターFZ-80)に加え、上記コーティング液(50mg用)を用いて素錠をコーティングした。コーティング後の錠剤を乾燥することで実施例1のコーティング錠剤を得た。得られた錠剤は錠径6.5mm、錠厚2.9mm、円形の錠剤であり、ピンク色の錠剤となった。なお、錠径、錠厚はダイヤルシックネスゲージを用いて測定した値である。
【0076】
[実施例2のフィルムコーティング錠剤(1錠あたりのラコサミド量100mg)]
(整粒末の製造)
整粒末としては実施例1で用いたものと同じものを用いた。
(打錠末の製造)
ラコサミド整粒末と、クロスポビドンとをドラムミキサー(エイシン社製DM-200)に加え混合した。この混合末の一部を取り、ステアリン酸マグネシウムと混ぜて倍散した。この倍散末と、混合末の残りとを再度混合してラコサミド打錠末(100mg用)を得た。
【0077】
(素錠の製造)
得られたラコサミド打錠末(100mg用)を打錠機(菊水製作所製LIBRA)に加え、打錠圧5~9kN(平均打錠圧7kN)で打錠してラコサミド素錠(100mg)を得た。打錠時には、割線が入るように打錠した。
【0078】
(コーティング液の製造)
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(大同化成工業社製:Type F)を精製水に加え溶解した。これにタルクを加え分散した(分散液III)。
精製水に酸化チタンと黄色三二酸化鉄とを加え分散した(分散液IV)。
上述した分散液IIIと分散液IVとを混ぜ合わせてコーティング液(100mg用)とした。
【0079】
(コーティング錠剤の製造)
55℃まで加熱したラコサミド素錠(100mg)を、パンコーティング装置(フロイント産業社製ハイコーターFZ-100)に加え、上記コーティング液(100mg用)を用いて素錠をコーティングした。コーティング後の錠剤を乾燥することで実施例2のコーティング錠剤を得た。得られた錠剤は錠径8.0mm、錠厚3.5mm、円形の錠剤であり、淡い黄色の錠剤となった。
【0080】
[比較例1のコーティング錠剤]
比較として、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を用いない2種のコーティング錠剤を製造した。
素錠としては、上記ラコサミド素錠(100mg)を用いた。コーティング液としては、タルクと、ヒプロメロースと、トリアセチンと、酸化チタンと、三二酸化鉄とを精製水に加え分散したものを用いた。このコーティング液を実施例2と同様にしてラコサミド素錠(100mg)をコーティングして比較例1のコーティング錠剤を得た。
【0081】
[比較例2のコーティング錠剤]
素錠としては、上記ラコサミド素錠(100mg)を用いた。コーティング液としては、マクロゴール(ポリエチレングリコール)6000と、タルクと、酸化チタンと、三二酸化鉄とを精製水に加え分散したものを用いた。このコーティング液を実施例2と同様にしてラコサミド素錠(100mg)をコーティングして比較例2のコーティング錠剤を得た。
【0082】
実施例1、2及び比較例1、2の錠剤の1錠当たりの組成について以下の表1、2にまとめた。表1には素錠の組成を、表2にはコーティング液の組成についてまとめている。
【0083】
【0084】
【0085】
(光照射試験)
実施例1、2及び比較例1、2の各錠剤に対して光を照射し、光による退色を測定した。実験は、各錠剤をそれぞれシャーレに置き、光源としてD65光源を用い、120万lx・hrの光を照射し、照射前後の錠剤を用いて光の照射前と照射後の色差を、分光光度計を用いて測定した。色差は、以下の式Vに基づいて計算することができる。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 (V)
ΔL*、Δa*、Δb*はそれぞれ、L*a*b*表色系における二つの物体色の明度L*の差及び色座標Δa*、Δb*の差である。色差の測定結果を以下の表3に示す。実施例2の錠剤については2度試験を行っている。
【0086】
【0087】
錠剤の色差において、2を越えると大きく退色が発生していると判断される。表3より、実施例1、2のコーティング錠剤は色差が2以下であり比較例1、2の錠剤は色差が2以上であることが分かる。このことから、本発明のようにポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸共重合体を用いた錠剤は退色が抑えられていることが分かる。
【0088】
(顕微鏡による観察)
実施例2及び比較例2の錠剤について、上述した光照射試験前及び試験後の錠剤の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。観察した結果を
図1A~
図2Bにそれぞれ示す。
図1Aは実施例2の試験前の錠剤表面の結果を、
図1Bは実施例2の試験後の錠剤表面の結果を、
図2Aは比較例2の試験前の錠剤表面の結果を、
図2Bは比較例2の試験後の錠剤表面の結果をそれぞれ示す。
図2Bより、比較例2の錠剤には光照射試験後に錠剤の表面に試験前にはない細孔が多数発生することが確認された。実施例2の錠剤には光照射試験後にもそのような細孔の発生は確認されなかった。この細孔により退色が発生していると発明者らは考えており、本発明のポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸共重合体を用いた錠剤は退色が抑えられることが分かる。
【0089】
(錠剤の形状)
実施例1及び2の錠剤の形状について以下の表4に示す。
【0090】
【0091】
(包装後の安定性)
実施例2の錠剤を様々な形態で包装し、40℃、75%RH(相対湿度)の条件で最大六ヶ月保存した。その結果を以下の表5~8にそれぞれ示す。表5、6はPTP包装した場合の結果を示し、表7、8は錠剤をそのまま瓶に入れた場合の結果を示す。「+アルミピロー」はPTP包装にさらにアルミピローによる包装を施している。なお、硬度は、錠剤硬度計を用い測定した値である。崩壊時間は、第十七改正日本薬局方に記載の崩壊試験法に基づいて測定した。各平均値は、それぞれ類縁物質量は5個、含量は10個、水分値は3個、錠厚は5個、硬度は5個、崩壊時間は6個の錠剤に対して測定した結果の平均値である。「+ゼオライト」はピローや瓶に更にゼオライトを加えている。なお、表5、7、後述する表9の主薬含量(%)の値は開始時の主薬含量に対する相対量(%)である。表5~8より、保存条件によって類縁物質量、含量、水分値、硬度、崩壊時間に大きな変化はないことが分かる。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
(苛酷条件での安定性試験)
実施例2の錠剤を蓋のないシャーレ上に置き25℃、75%RH(相対湿度)の条件で三ヶ月置いた結果、70℃の高温条件下に9日置いた結果、上記光照射試験を行った結果を表9に示す。表9より、実施例2の錠剤は70℃の高温条件下に9日置いても、総類縁物質の増加が少ない。このことから、本発明の錠剤は70℃のような高温条件下でもラコサミドが安定性を有していることがわかる。また、25℃75%RHの条件の開放形で三ヶ月置いても、水分値の上昇は2%から5.5%にとどまっており、本発明の錠剤は水分値の上昇が低いことが分かる。このことから、本発明のポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸共重合体を用いた錠剤は防湿性を有していることも示された。
【0097】
【0098】
(溶出試験)
実施例2の錠剤を様々な形態で包装し、40℃、75%RH(相対湿度)の条件で三ヶ月保存した(表10のシャーレ 開放のみ25℃)。保存後の各錠剤の溶出試験を行った。溶出試験は、第十七改正日本薬局方に記載の溶出試験法(第2法)に従い、パドルの回転数を50 rpmとし、試験液として水(900 mL)を用いて行った。試験は保存条件毎に3回行った。結果を表10に示す。表10より、保存によって溶出性に大きな変化がないことが分かる。
【0099】