(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078394
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】気泡含有水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/16 20060101AFI20240603BHJP
C04B 28/14 20060101ALI20240603BHJP
C04B 38/10 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C04B24/16
C04B28/14
C04B38/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140749
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022189786
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】谷本 理勇
(72)【発明者】
【氏名】玉川 旺士郎
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB22
4G112PB36
4G112PC01
(57)【要約】
【課題】気泡含有水硬性組成物硬化体の比重が低く、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きい、気泡含有水硬性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水硬性粉体、水、及び(A)アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A)成分という)を含有する、気泡含有水硬性組成物であり、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、気泡含有水硬性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性粉体、水、及び(A)アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A)成分という)を含有する、気泡含有水硬性組成物であり、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、気泡含有水硬性組成物。
【請求項2】
気泡含有水硬性組成物の硬化体の平均気泡径が220μm以上800μm以下である、請求項1に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項3】
炭素数14以上のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有しない、請求項1又は2に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項4】
(A)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、0.0005質量部以上0.01質量部以下含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項5】
ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して0.001質量部以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項6】
水硬性粉体が石膏である、請求項1~5の何れか1項に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項7】
(A1)成分が、炭素数10の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩であり、(A2)成分が、炭素数12の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩である、請求項1~6の何れか1項に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項8】
(A)成分中の(A1)成分の含有量が20質量%以上75質量%以下であり、(A)成分中の(A2)成分の含有量が25質量%以上80質量%以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の気泡含有水硬性組成物。
【請求項9】
次の工程1及び工程2を含む、気泡含有水硬性組成物の製造方法。
<工程1>
下記水硬性組成物用起泡剤と水とを含有する液体組成物を起泡させて泡沫を得る工程。
水硬性組成物用起泡剤:(A)アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A)成分という)を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤。
<工程2>
水硬性粉体と、水と、工程1で得られた泡沫とを混合する工程。
【請求項10】
気泡含有水硬性組成物の硬化体の平均気泡径が220μm以上800μm以下である、請求項9に記載の気泡含有水硬性組成物の製造方法。
【請求項11】
水硬性粉体が石膏である、請求項9又は10に記載の気泡含有水硬性組成物の製造方法。
【請求項12】
(A)アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A)成分という)を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤。
【請求項13】
炭素数14以上のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有しない、請求項12に記載の水硬性組成物用起泡剤。
【請求項14】
(A)成分を、2質量%以上40質量%以下含有する、請求項12又13に記載の水硬性組成物用起泡剤。
【請求項15】
ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩の含有量が10質量%以下である、請求項12~14の何れか1項に記載の水硬性組成物用起泡剤。
【請求項16】
石膏スラリー用である、請求項12~15の何れか1項に記載の水硬性組成物用起泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有水硬性組成物及びその製造方法、並びに水硬性組成物用起泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントや石膏を硬化剤とする水硬性組成物に気泡を導入して軽量化することが行われている。通常は、起泡剤と水とを含有する液体組成物を起泡させて得た泡沫と水硬性組成物、あるいは、細骨材や各種の混和材料とを混合することで軽量化された気泡含有水硬性組成物が製造される。
【0003】
特許文献1には、石膏ウォールボードが依然として建築材料としての機能を果たすことを可能にしながら、石膏ウォールボードの重量を減少させることを目的として、8~12個の炭素原子を有する分岐アルキル硫酸塩;任意で、8~12個の炭素原子を有する直鎖アルキル硫酸塩;および任意で、8~13個の炭素原子を有するアルキルエーテル硫酸塩を含む、石膏ボード用の界面活性剤組成物が開示されている。そして、実施例では、炭素数10のアルキル硫酸塩が75%、炭素数12のアルキル硫酸塩が25%からなる界面活性剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、市販製品から容易に製造でき、かつ強力な起泡力を示す費用のかからない界面活性剤を提供することを課題として、セッコウおよび水と組合わせて、式H(CH2)nOSO3
-M+のアルキルサルフェートを含んでなる界面活性剤組成物を含有するセッコウ組成物であって、前記式中、nは6~16であり、アルキルサルフェート組成物中の炭素原子の平均数nmは10~11であり、Mは1価のカチオンである組成物が開示されている。そして、実施例では、84.2重量%のC10アルキルサルフェートと、15.8重量%のC12アルキルサルフェートとを含む界面活性剤を用いたこと、界面活性剤組成物の評価として、水と混合しミキサーで攪拌後に形成された起泡量を測定したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-527163号公報
【特許文献2】特表2004-529050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セメントや石膏を硬化剤とする気泡含有水硬性組成物の硬化体には、製造、輸送、原料調達による環境(CO2)低減効果やコストの観点から、更なる軽量化が求められている。
気泡含有水硬性組成物は、気泡を含有することにより水硬性組成物の硬化体の比重を低下させ軽量化できる。しかしながら、水硬性組成物の硬化体を更に軽量化するために気泡の体積(割合)を多くすると、水硬性組成物の割合が少なくなるため硬化体の強度は低下傾向にある。一方、特開平10-330174号公報の段落0004に記載の通り、同じ比重の気泡含有水硬性組成物において、気泡含有水硬性組成物中の気泡径を大きくすることで、気泡含有水硬性組成物の硬化体の強度を高めることができる。また気泡含有水硬性組成物中の気泡径を大きくした場合、気泡含有水硬性組成物の硬化体を得る際の乾燥が早くなり、乾燥にかかる燃料費削減、CO2排出量低減などのメリットがある。また気泡含有水硬性組成物中の気泡径を大きくした場合、気泡間距離が増加し、気泡の連通が生じにくく、断熱性や遮音性を向上することができる。
そのため、気泡含有水硬性組成物の比重を低下させ、且つ気泡含有水硬性組成物中の気泡径を大きくする技術が求められる。
【0007】
本発明は、気泡含有水硬性組成物硬化体の比重が低く、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きい、気泡含有水硬性組成物及びその製造方法、並びに気泡含有水硬性組成物硬化体の比重を低下させ、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きくすることができる、水硬性組成物用起泡剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水硬性粉体、水、及び(A)アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A)成分という)を含有する、気泡含有水硬性組成物であり、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、気泡含有水硬性組成物に関する。
【0009】
また本発明は、次の工程1及び工程2を含む、気泡含有水硬性組成物の製造方法に関する。
<工程1>
下記水硬性組成物用起泡剤と水とを含有する液体組成物を起泡させて泡沫を得る工程。
水硬性組成物用起泡剤:(A)成分を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤。
<工程2>
水硬性粉体と、水と、工程1で得られた泡沫とを混合する工程。
【0010】
また本発明は、(A)成分を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気泡含有水硬性組成物硬化体の比重が低く、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きい、気泡含有水硬性組成物及びその製造方法、並びに気泡含有水硬性組成物硬化体の比重を低下させ、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きくすることができる、水硬性組成物用起泡剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の気泡含有水硬性組成物及びその製造方法が、気泡含有水硬性組成物硬化体の比重が低く、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きくすることができ、また本発明の水硬性組成物用起泡剤が、気泡含有水硬性組成物硬化体の比重を低下させ、且つ気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径を大きくすることができる理由は必ずしも定かではないが、以下のように推定される。水硬性組成物用起泡剤において、流動性が高く、気泡が合一しやすい泡膜を形成する(A1)成分に、気泡が割れにくく合一しにくい泡膜を形成する(A2)成分を所定量配合することで、柔軟性と硬さを両立した泡膜を形成することができ、気泡含有水硬性組成物を製造する過程での気泡の消失を抑制すると同時に、気泡の合一により、気泡含有水硬性組成物硬化体の軽量化と気泡の大径化を両立することができたものと推定される。一方、(A1)成分と(A2)成分の含有割合について、(A1)成分の割合が多すぎる場合は気泡が割れやすくなり、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡の大径化は達成できるが該硬化体の軽量化は困難になると推定される。
【0013】
[水硬性組成物用起泡剤]
<(A)成分>
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、(A)成分として、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有する。
また本発明の水硬性組成物用起泡剤は、(A)成分として、(A1)炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A1)成分という)、及び(A2)炭素数12のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩(以下、(A2)成分という)を含有する。
(A1)成分は、炭素数10の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩が好ましい。
(A1)成分としては、具体的には、デシル硫酸エステル、2-プロピルへプチル硫酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはデシル硫酸エステル又はその塩である。
(A2)成分は、炭素数12の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩が好ましい。
(A2)成分としては、具体的には、ラウリル硫酸エステル又はその塩が好ましい。
(A)成分、(A1)成分、及び(A2)成分の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び有機アンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
<組成等>
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、(A)成分を、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、組成物中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
本発明において、(A)成分、並びに(A)成分に含まれる(A1)成分、(A2)成分の質量に関する規定は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0015】
本発明の水硬性組成物用起泡剤において、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、そして、100質量%以下であり、好ましくは100質量%である。
【0016】
本発明の水硬性組成物用起泡剤において、(A)成分中の(A1)成分の含有量は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは53質量%以下であり、(A)成分中の(A2)成分の含有量は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
【0017】
本発明の水硬性組成物用起泡剤中、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.9以上、そして、2.4以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.3以下である。また本発明の水硬性組成物用起泡剤中、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)は、本発明の気泡含有水硬性組成物の製造に用いる水硬性組成物用起泡剤の凍結融解後の濃度ムラを小さくする観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下である。
【0018】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、本発明の効果を享受する観点から、(A)成分として、炭素数14以上のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有しないことが好ましい。
炭素数14以上のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩としては、ミリスチル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩を含有してよいが、本発明の効果を享受する観点から、その含有量は制限される。
ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
本発明の水硬性組成物用起泡剤中、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩の含有量は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である。本発明において、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩の質量は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。本発明の水硬性組成物用起泡剤は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化の観点から、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩を含有しないことが好ましい。
【0021】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、速泡性と泡安定性の観点から、(B)成分として、炭素数6以上10以下の一価アルコールを含有することができる。
(B)成分の炭素数は、速泡性と泡安定性の観点から、6以上、そして、10以下、好ましくは8である。
(B)成分は、速泡性と泡安定性の観点から、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基、より好ましくは直鎖のアルキル基を有する一価アルコールである。
【0022】
(B)成分は、具体的には、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、2-エチルヘキサノール、及び2-プロピルヘプタノールから選ばれる1種以上が挙げられ、発泡性の観点から、好ましくはオクタノール、及びデカノールから選ばれる1種以上、より好ましくはオクタノールを含有することが好ましい。
【0023】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び気泡含有水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、(C)成分として、ノニオン界面活性剤を含有することができる。
ノニオン界面活性剤としては、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、アルキルグリコシド又はアルキルポリグリコシド(グリコシド型ノニオン界面活性剤)、ソルビタン系ノニオン界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、及び蔗糖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、気泡含有水硬性組成物硬化体中の気泡大径化の観点から、グリコシド型ノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0024】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、水を含有してよい。本発明の水硬性組成物用起泡剤は、水を、好ましくは10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0025】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、任意に、増粘剤、キレート剤、重金属捕捉剤、防錆剤、防腐剤、着色剤、香料、消泡剤、溶剤、分散剤、凝集剤、水溶性ポリマーなどを含有することができる。但し、これらは、(A)成分、(A1)成分、(A2)成分、(B)成分、及び(C)成分に該当しないものが用いられる。
【0026】
本発明の水硬性組成物用起泡剤は、(A)成分として、(A1)成分、(A2)成分、及び任意成分を混合することで得られる。混合の際には溶液粘度を低減するために適宜加熱してもよい。
【0027】
本発明の水硬性組成物用起泡剤が対象とする用途としては、石膏スラリー、軽量ミルク(気泡ミルク、エアミルク)、軽量モルタル(気泡モルタル、エアーモルタル)、軽量コンクリート(気泡コンクリート、エアーコンクリート)、裏込め充填材、中込め充填材、建築用コンクリートブロック、ALC(軽量気泡コンクリート)、グラウト材、セラミックス多孔体、レンガ、耐火物、軽量盛土、ポンプ圧送用モルタルなどの気泡を含有する水硬性組成物が挙げられる。これらの気泡を含有する水硬性組成物において、気泡の混合による、軽量化、強度向上、流動性向上、断熱性、耐熱性、粘性付与、流動性制御、といった機能の付与が期待される。
これらの気泡を含有する水硬性組成物の中で、本発明の水硬性組成物用起泡剤は、石膏スラリー用として好適である。
【0028】
[気泡含有水硬性組成物、及びその製造方法]
気泡を含有する水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用起泡剤を発泡させ、泡沫として水硬性物質に配合して配合・軽量化する方法が均一な気泡が連行する事から好ましい。本発明の水硬性組成物用起泡剤又はそれを水で希釈した混合液として、直接セメントや石膏を水硬性物質としたペースト、スラリー、モルタル、コンクリートに練り込んでもよい。本発明の水硬性組成物用起泡剤を水硬性組成物に添加する方法については限定するものではなく、また本発明の水硬性組成物用起泡剤又はそれを水で希釈した混合液を泡沫化させる方法についても限定するものではない。
【0029】
本発明は、水硬性粉体、水、及び(A)成分を含有する、気泡含有水硬性組成物であり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、気泡含有水硬性組成物を提供する。
本発明の気泡含有水硬性組成物は、更に(B)成分を含有することができる。
本発明の気泡含有水硬性組成物は、更に(C)成分を含有することができる。
本発明の気泡含有水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用起泡剤で記載した事項を適宜適用することができる。
(A)成分、(A1)成分、(A2)成分、(B)成分、及び(C)成分は、本発明の水硬性組成物用起泡剤で記載した態様と同じである。
【0030】
水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられ、石膏が好ましい。
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等が挙げられ、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。これらは1種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、水/水硬性粉体比が、該水硬性組成物スラリー流動性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、そして、該水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比は、水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量に基づいて算出される。水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。水硬性粉体に関する、水硬性組成物の他の量的関係についても同様である。
【0032】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、(A)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、該水硬性組成物硬化体の低比重化と気泡大径化の観点から、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.002質量部以上、更に好ましくは0.004質量部以上、より更に好ましくは0.008質量部以上、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以下、より更に好ましくは0.01質量部以下含有する。
【0033】
本発明の気泡含有水硬性組成物において、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量は、該水硬性組成物硬化体の低比重化と気泡大径化の観点から、99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、そして、100質量%以下であり、好ましくは100質量%である。
【0034】
本発明の気泡含有水硬性組成物において、(A)成分中の(A1)成分の含有量は、該水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び該水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは53質量%以下であり、(A)成分中の(A2)成分の含有量は、該水硬性組成物硬化体中の気泡径の大径化、及び該水硬性組成物硬化体の低比重化の観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
【0035】
本発明の気泡含有水硬性組成物中、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)は、該水硬性組成物硬化体の低比重化と気泡大径化の観点から、0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.9以上、そして、2.4以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.3以下である。また本発明の気泡含有水硬性組成物中、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)は、本発明の気泡含有水硬性組成物の製造に用いる水硬性組成物用起泡剤の凍結融解後の濃度ムラを小さくする観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下である。
【0036】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、本発明の効果を享受する観点から、(A)成分として、炭素数14以上のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有しないことが好ましい。
【0037】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩を含有してよいが、本発明の効果を享受する観点から、その含有量は制限される。
本発明の気泡含有水硬性組成物中、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩の含有量は、水硬性粉体100質量部に対して、該水硬性組成物硬化体の気泡大径化の観点から、好ましくは0.001質量部以下、より好ましくは0.0008質量部以下、更に好ましくは0.0006質量部以下、より更に好ましくは0.0001質量部以下である。
本発明の気泡含有水硬性組成物は、該水硬性組成物硬化体の気泡大径化の観点から、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩を含有しないことが好ましい。
【0038】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、細骨材及び/又は粗骨材を含有することができる。また本発明の気泡含有水硬性組成物は、当業界で公知の混和剤や混和材を含有することができる。
【0039】
本発明の気泡含有水硬性組成物は、乾燥及び養生することで硬化体が得られる。
本発明の気泡含有水硬性組成物の硬化体の比重は、強度の観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、そして、取り扱い性の観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。
【0040】
本発明の気泡含有水硬性組成物は気泡を含有する。本発明の気泡含有水硬性組成物の硬化体の平均気泡径は、硬化体強度向上の観点から、好ましくは230μm以上、より好ましくは250μm以上、更に好ましくは300μm以上、そして、断面美観の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは700μm以下、更に好ましくは600μm以下、より更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは400μm以下である。
平均気泡径は、気泡含有水硬性組成物の硬化体を作製し、その硬化体を任意に切り出して断面を作成し、その断面をデジタルマイクロスコープで観察して、任意に100個の気泡断面の直径を測定し、それらの値の平均値(算術平均)から算出する。なお気泡断面の直径の測定は、気泡断面が円の場合は直径を、気泡断面が楕円の場合は、長軸を、気泡断面が不定形の場合は、最長部分を直径とする。
【0041】
本発明は、次の工程1及び工程2を含む、気泡含有水硬性組成物の製造方法を提供する。
下記水硬性組成物用起泡剤は、本発明の水硬性組成物用起泡剤と同じであり、本発明の水硬性組成物用起泡剤で記載した態様を適宜適用することができる。
<工程1>
下記水硬性組成物用起泡剤と水とを含有する液体組成物を起泡させて泡沫を得る工程。
水硬性組成物用起泡剤:(A)成分を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤。
<工程2>
水硬性粉体と、水と、工程1で得られた泡沫とを混合する工程。
なお、工程2において、水硬性粉体と水とを含有する水硬性組成物を調製し、水硬性組成物と、工程1で得られた泡沫とを混合してもよい。
【0042】
この製造方法により本発明の気泡含有水硬性組成物を調製できる。
本発明の気泡含有水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用起泡剤、及び本発明の気泡含有水硬性組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の気泡含有水硬性組成物の製造方法において、本発明の気泡含有水硬性組成物で述べた各成分の含有量及びそれらの質量比は、各成分の含有量を混合量に置き換えて適宜適用することができる。
【0043】
工程1では、前記液体組成物の発泡倍率は、水硬性組成物の用途などにもよるが、経済性の観点から、好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、更に好ましくは10倍以上、そして、混錬性の観点から、好ましくは30倍以下、より好ましくは25倍以下、更に好ましくは20倍以下である。
【0044】
工程2では、水硬性組成物の用途などにもよるが、泡沫を、水硬性組成物に対して、気泡含有水硬性組成物硬化体の軽量化の観点から、好ましくは50体積%以上、より好ましくは100体積%以上、更に好ましくは150体積%以上、そして、気泡含有水硬性組成物硬化体の強度の観点から、好ましくは400体積%以下、より好ましくは300体積%以下、更に好ましくは200体積%以下、混合する。この製造方法では、工程1及び/又は工程2で、当業界で公知の混和剤や混和材を混合することができる。
【0045】
[気泡含有石膏スラリー、及びその製造方法]
本発明の気泡含有水硬性組成物において、水硬性粉体は石膏が好ましい。本発明では、水硬性粉体が石膏である気泡含有水硬性組成物を、気泡含有石膏スラリーともいう。
すなわち本発明は、石膏、水、及び(A)成分を含有する、気泡含有石膏スラリーであり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、気泡含有石膏スラリーを提供する。本発明の気泡含有石膏スラリーは、石膏ボード用として好適である。
【0046】
本発明の気泡含有石膏スラリーは、本発明の水硬性組成物用起泡剤、本発明の気泡含有水硬性組成物、及び本発明の気泡含有水硬性組成物の製造方法で記載した事項を適宜適用することができる。
本発明の気泡含有石膏スラリーは、更に(B)成分を含有することができる。
本発明の気泡含有石膏スラリーは、更に(C)成分を含有することができる。
(A)成分、(A1)成分、(A2)成分、(B)成分、及び(C)成分は、本発明の水硬性組成物用起泡剤で記載した態様と同じである。
本発明の気泡含有石膏スラリーにおいて、本発明の気泡含有水硬性組成物で述べた各成分の含有量及びそれらの質量比は、水硬性粉体を石膏に置き換えて適宜適用することができる。
本発明の気泡含有石膏スラリーの硬化体において、比重、及び平均気泡径の範囲は、本発明の気泡含有水硬性組成物で記載した範囲と同じである。
【0047】
石膏は、高品質の中和石膏、リン酸の副産物であるリン酸石膏、火力発電で発生する排煙脱硫石膏、さまざまな不純物や粘土を含む天然石膏、それらの混合物などのいずれの石膏も用いることが出来る。
石膏が含む粘土は、層状構造をもった含水珪酸塩鉱物(以降、粘土鉱物と呼ぶ)を主体としたものであり、この粘土中に微粒の鉱物として含まれる粘土鉱物としては、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト及びナクライト)、蛇紋石(リザーダイト、アンチゴライト、クリソタイル)、雲母粘土鉱物(イライト、セリサイト、海緑石、セラドナイト)、クロライト、バーミキュライト、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト)が挙げられる。
【0048】
石膏は、無水石膏、半水石膏、二水石膏などがある。原料石膏としては、天然石膏または中和石膏もしくは副産石膏などの化学石膏を単独で、あるいはそれらの二種以上を混合したものが使用できる。主な化学石膏としてはリン酸石膏、フッ酸石膏、チタン石膏または排煙脱硫石膏などが例示される。また、原料石膏には、リサイクル石膏を含んでもよい。リサイクル石膏は、石膏ボードメーカーで自家発生する廃石膏ボード、新築時及び解体時に発生する廃石膏ボード等から回収されるリサイクル石膏であればいずれでも良い。本発明はこれらのいずれの原料石膏1種以上に対しても好適に用いることができ、また種々の割合でブレンドされたものに対しても優れた効果が得られる。
【0049】
本発明の気泡含有石膏スラリーは、石膏ボード用等に使用される添加剤を含有することができる。そのような添加剤としては汎用減水剤、消泡剤、整泡剤、硬化調整剤、撥水剤、接着剤、遅延剤などがあり、更に強化繊維としてガラス繊維、炭素繊維、古紙、バージンパルプ等を添加する、或いは、軽量骨材であるパーライト、発泡スチール等とともに石膏ボードを作製することも行なわれる。
【0050】
本発明は、次の工程1及び工程2を含む、気泡含有石膏スラリーの製造方法を提供する。
下記水硬性組成物用起泡剤は、本発明の水硬性組成物用起泡剤と同じであり、本発明の水硬性組成物用起泡剤で記載した態様を適宜適用することができる。
<工程1>
下記水硬性組成物用起泡剤と水とを含有する液体組成物を起泡させて泡沫を得る工程。
水硬性組成物用起泡剤:(A)成分を含有する、水硬性組成物用起泡剤であり、(A)成分として、(A1)成分、及び(A2)成分を含有し、(A)成分中の(A1)成分と(A2)成分の合計含有量が99質量%以上であり、(A1)成分の含有量と(A2)成分の含有量との質量比(A1)/(A2)が0.2以上2.4以下である、水硬性組成物用起泡剤。
<工程2>
石膏と、水と、工程1で得られた泡沫とを混合する工程。
なお、工程2において、石膏と水とを含有する石膏スラリーを調製し、石膏スラリーと、工程1で得られた泡沫とを混合してもよい。
【0051】
この製造方法により本発明の気泡含有石膏スラリーを調製できる。
本発明の気泡含有石膏スラリーの製造方法は、本発明の水硬性組成物用起泡剤、本発明の気泡含有水硬性組成物及びその製造方法、並びに本発明の気泡含有石膏スラリーで記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の気泡含有水硬性組成物の製造方法において、本発明の気泡含有水硬性組成物で述べた各成分の含有量及びそれらの質量比は、水硬性粉体を石膏に置き換え、更に各成分の含有量を混合量に置き換えて適宜適用することができる。混合に用いる泡沫及び石膏スラリーの温度は、それぞれ15℃以上40℃以下が好ましい。
工程1、工程2は、本発明の気泡含有水硬性組成物の製造方法に準じて行うことができる。
【実施例0052】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
(A)成分
・C10AS:デシル硫酸エステルナトリウム、(A1)成分
・C12AS:ラウリル硫酸エステルナトリウム、(A2)成分
・C14AS:ミリスチル硫酸エステルナトリウム
【0053】
(1)水硬性組成物用起泡剤の調製
表1、2に示す水硬性組成物用起泡剤を以下の方法により調製した。
50mLスクリュー管に合計30gとなるよう各原料を所定の割合で加え、撹拌子を用いて1000rpmで3時間撹拌した。溶液粘度が高く撹拌効率が悪い場合は、適宜40℃の加温を行った。
【0054】
(2)石膏スラリーの調製
調製した表1、2の水硬性組成物用起泡剤と水とを0.3対99.7の質量比で混合し、水硬性組成物用起泡剤の濃度(有姿)が0.3質量%の水溶液を調製した、調製した水溶液19gを1Lディスポカップ中に加え、フラット6枚パドル翼(FP-50、アズワン(株)製)を用いて、2000rpm(EUROSTAR200control、IKAジャパン(株)製)で15秒間手で容器を回しながら撹拌し、容器を置いて更に45秒間撹拌することで、泡沫を得た。
500mLディスポカップに焼き石膏200g、二水石膏4g、硫酸カリウムが1.5g溶解した水道水127g、減水剤(マイテイ150、花王(株)製)0.36gを加え、ハンドミキサー(MK-H4、パナソニック(株)製)を用いてメモリ3で5秒間撹拌し、泡沫投入前の石膏スラリーを調製した。1Lディスポカップ中で調製した泡沫19gに、調製した前記石膏スラリーを全量投入し、1Lディスポカップ中で前記フラット6枚パドル翼を用いて、1150rpmで10秒間混錬し、気泡を含有する石膏スラリーを得た
。混練に用いた泡沫と石膏スラリーの温度はいずれも20℃で行った。
【0055】
(3)石膏供試体の比重測定
得られた気泡を含有する石膏スラリーを、直径5cm、高さ10cmの円柱供試体用の型枠(プラモールド、(株)ニフコ製)に流し込み、1時間以上室温で静置した。円柱供試体用の型枠から硬化した石膏スラリーを脱型し、80℃の恒温槽で17時間静置して乾燥した後、得られた供試体の重量を測定した。得られた供試体の重量を型枠の容積で除することで石膏供試体の比重を算出した。結果を表1、2に示す。
【0056】
(4)石膏供試体中の平均気泡径の測定
(3)で得られた石膏供試体の高さ5cmの部分に切れ込みを入れて、石膏供試体の断面を作成した。その断面をデジタルマイクロスコープ(42倍)で観察し、視認可能な小さな気泡から順番に100個の気泡断面の直径を測定し、それらの値の算術平均から平均気泡径を算出した。なお気泡断面の直径の測定は、気泡断面が円の場合は直径を、気泡断面が楕円の場合は、長軸を、気泡断面が不定形の場合は、最長部分を直径とする。結果を表1、2に示す。
【0057】
(5)貫入抵抗試験
(3)で得られた石膏供試体の側面に直径12.5mmの針で6cm押し込んだ時の貫入抵抗値を測定した。測定は、石膏供試体の側面において、底面から2.5cm、5cm、7.5cmの箇所に計3回測定し、その平均値を石膏供試体の貫入抵抗値とした。実施例1-1、比較例1-2、1-3について評価した。結果を表2に示す。貫入抵抗値が高い程、石膏供試体の強度が高いことを示している。
【0058】
【0059】
【0060】
表1中、実施例1-1~1-6の水硬性組成物用起泡剤は、比較例1-1、1-4、1-5の水硬性組成物用起泡剤と比較して、石膏供試体の平均気泡径を250μm以上としつつ、比重を低下させることができる。なお比較例1-4、1-5は、実施例1-1~1-6と比較して比重が大きく、また石膏供試体中に正確に測定可能な量の気泡が入っていなかったため平均気泡径を測定しなかった。
また表2中、実施例1-1の水硬性組成物用起泡剤は、比較例1-2、1-3の水硬性組成物用起泡剤と比較して、石膏供試体の比重は同じであるが、石膏中の平均気泡径を大きくすることができ、表2の結果の通り、石膏供試体の強度を高めることができる。
【0061】
(6)凍結融解後の性能評価
マルエムスクリュー管瓶No.8(高さ12cm、容量110mL)に実施例1-3の水硬性組成物用起泡剤を85mL入れ、0℃で3日間保管し、凍結させた。固化又は沈殿したサンプルを20℃で2時間静置し、融解させ、液面高さ1cmから2mLの水硬性組成物用起泡剤を回収し、これを上層とした。一方、マルエムスクリュー管瓶の底面より高さ0.5cmから2mLの水硬性組成物用起泡剤を回収し、これを下層とした。これら回収した水硬性組成物用起泡剤を用いて、上記(2)と同様に石膏スラリーを調製し、上記(4)と同様に石膏供試体中の平均気泡径を求めた。結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
表3中、実施例1-3の水硬性組成物用起泡剤は凍結融解後の上層と下層のものを用いて調製した石膏供試体中の平均気泡径の差が小さく、水硬性組成物用起泡剤を固化して再溶解した後の濃度ムラが小さいことが分かる。