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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078409
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240603BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240603BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240603BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240603BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240603BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240603BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240603BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C11/03 Z
B60C11/00 F
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/548
C08F236/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182572
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2022190439
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北郷 亮太
(72)【発明者】
【氏名】平尾 昌吾
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC51
3D131EA10U
3D131EB07U
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AE053
4J002BA013
4J002BB181
4J002BC023
4J002BK003
4J002BL022
4J002BP011
4J002CE003
4J002DA036
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EX037
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD023
4J002GN01
4J100AB02R
4J100AS02Q
4J100AS21P
4J100DA01
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、
前記分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であり、
A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるA、前記トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤに関する。
式(1)
0.25<A≦1.50
式(2)
A×S≦27.0
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、
前記分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であり、
A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるA、前記トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤ。
式(1)
0.25<A≦1.50
式(2)
A×S≦27.0
【請求項2】
前記トレッドの厚みが3.0mm以上である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項4】
前記分枝共役ジエンがファルネセンである請求項1記載のタイヤ。
【請求項5】
前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量が1000~20000である請求項1記載のタイヤ。
【請求項6】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
0.30≦A≦0.80
【請求項7】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
15%≦S≦45%
【請求項8】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
A×S≦22.0
【請求項9】
前記分岐共役ジエン系重合体100質量%中のブタジエン単位量(質量%)及びスチレン単位量(質量%)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
0.40≦0.013×ブタジエン単位量+0.071×スチレン単位量≦2.70
【請求項10】
前記ゴム組成物は、オイル、液状樹脂、及び液状ジエン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の液体可塑剤を含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ゴム組成物は、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、及びC5C9系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ゴム組成物は、シリカ及びカーボンブラックを含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ゴム組成物は、メルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには種々の性能が求められているが、近年、特に耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、耐ブリード性能をバランス良く向上することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、
前記分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であり、
A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるA、前記トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤに関する。
式(1)
0.25<A≦1.50
式(2)
A×S≦27.0
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、前記分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であり、前記式(1)、(2)を満たすタイヤであるので、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能に優れたタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ1の子午線方向に切った断面図である。
図2】タイヤ1のトレッド2のタイヤ軸を含む平面で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔タイヤ〕
本発明は、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、前記分岐共役ジエン系重合体が少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体で、かつ式(1)「0.25<A≦1.50」、式(2)「A×S≦27.0」を満たす。
【0008】
前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする分岐共役ジエン系重合体によりブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム成分との相溶性が向上し、特に、前記式(1)「0.25<A≦1.50」を満たすように調整し、該分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を所定範囲内に調整することで、単独ドメイン相が少なくなり、更に相溶性が向上する。単独ドメイン相が少なくなることで、分岐共役ジエン系重合体のブリードが抑制され、耐ブリード性能や耐摩耗性能が向上する。
スチレンを構成単位とする前記分岐共役ジエン系重合体により高Tgが図られ、ウェットグリップ性能が向上する。
A、溝面積比率S[%]が前記式(2)「A×S≦27.0」を満たすように調整し、前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を小さくしつつ、トレッドの接地面を大きくする(溝面積比率を小さくする)ことで、グリップ性能が確保されると共に、摩耗が抑制され、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能が向上する。
以上により、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0009】
このように、前記タイヤは、式(1)「0.25<A≦1.50」、式(2)「A×S≦27.0」を満たす構成にすることにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能を向上するという課題(目的)を解決できるものである。すなわち、これらの式は課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
【0010】
なお、式(1)、(2)は、使用する分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量、トレッドの接地面における溝面積比率を適宜選択することで、充足するように調整できる。
【0011】
前記タイヤにおいて、トレッドは、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物で構成される。
【0012】
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0013】
なお、本明細書において、ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0014】
ゴム成分としては特に限定されず、タイヤ分野で公知のものを使用できる。例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンスブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、BR、SBR、イソプレン系ゴムのいずれかを用いることが好ましく、BR、SBRのいずれかを用いることがより好ましく、BR及びSBRの両方のゴムを用いることが更に好ましい。
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムの少なくとも1種を用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、これらのゴムが持つ良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮されると共に、これらのゴムと分岐共役ジエン系重合体を併用することで、ブリードを防止する効果がより発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0015】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B、LG Chem社製のBR1280等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0016】
BRのシス量(シス含量)は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRのシス含量は、BRが1種である場合、当該BRのシス含量を意味し、複数種である場合、平均シス含量を意味する。
BRの平均シス含量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス含量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス含量:90質量%のBRが20質量%、シス含量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス含量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0017】
前記ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0018】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。
【0019】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは19.4質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
【0020】
特に、夏用タイヤの場合、SBRのスチレン量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0021】
特に、冬用タイヤの場合、SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0022】
SBRのビニル量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは24質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0023】
ここで、上述のSBRのスチレン量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン量を意味し、複数種である場合、平均スチレン量を意味する。
SBRの平均スチレン量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量:40質量%のSBRが85質量%、スチレン量:25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
【0024】
また、例えば、ゴム成分が、SBR(A)(スチレン量35質量%、Mw65万)70質量%、SBR(B)(スチレン量40質量%、Mw95万)10質量%、NR10質量%、BR10質量%からなる場合、先ず、SBR(A)、(B)の含有比率は、それぞれ0.875(=70/(70+10))、0.125(=10/(70+10))であり、SBRの平均分子量は、68.75万(=0.875×65万+0.125×95万)である。
そして、SBRのスチレン量は、35.86質量%(={70/(70+10)×35×65万+10/(70+10)×40×95万}/68.75万)である。
【0025】
SBRのビニル量はSBR中におけるブタジエン部の総質量を100とした時のビニル結合の割合であり(単位:質量%)、ビニル量[質量%]+シス量[質量%]+トランス量[質量%]=100[質量%]となる。SBRが1種である場合、当該SBRのビニル量を意味し、複数種である場合、平均ビニル量を意味する。
SBRの平均ビニル量は、Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])×各SBRのビニル量[質量%]}/Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])}で算出でき、例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン量:40質量%、ビニル量:30質量%のSBRが75質量部、スチレン量:25質量%、ビニル量:20質量%のSBRが15質量部、残り10質量部がSBR以外である場合、SBRの平均ビニル量は、28質量%(={75×(100[質量%]-40[質量%])×30[質量%]+15×(100[質量%]-25[質量%])×20[質量%]}/{75×(100[質量%]-40[質量%])+15×(100[質量%]-25[質量%])}である。
【0026】
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0027】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、BR及びSBRの合計含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0028】
特に、夏用タイヤの場合、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、BR及びSBRの合計含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
特に、冬用タイヤの場合、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、BR及びSBRの合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0031】
前記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、において、ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0032】
ゴム成分は、オイル、樹脂、液状ポリマーなどの可塑剤成分により伸展された伸展ゴムでもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。伸展ゴムに使用される可塑剤は、後述で説明するものと同様のものが挙げられる。また、伸展ゴム中の可塑剤分は特に限定されないが、通常、ゴム固形分100質量部に対して10~50質量部程度である。
【0033】
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填材と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、ケイ素含有基(-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基、アルコキシ基など)、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ケイ素含有基が好ましく、-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基(好ましくは炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基))又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基))であり、Rの少なくとも一つが水酸基)がより好ましい。
【0034】
上記官能基を導入する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
(分岐共役ジエン系重合体)
前記ゴム組成物は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする分岐共役ジエン系重合体を含む。分岐共役ジエン系重合体は、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0036】
本発明において、分岐共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられた共役したジエン構造を有する分岐構造を持つ化合物を指し、更に他の二重結合を有する化合物、有さない化合物のいずれでもよい。
【0037】
分岐共役ジエン系重合体を構成する分岐共役ジエンとしては、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、ファルネセン、ミルセンなどが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、ファルネセン、ミルセンが好ましく、ファルネセンがより好ましい。分岐共役ジエンは、1種または2種以上のものを使用できる。
ファルネセンを用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムとの相溶性がより向上することで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮されると共に、ブリードも抑制され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0038】
ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、なかでも、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)が好ましい。
【化1】
【0039】
ミルセンには、α-ミルセン(2-メチル-6-メチレンオクタ-1,7-ジエン)とβ-ミルセンのいずれをも含まれるが、なかでも、以下の構造を有するβ-ミルセン(7-メチル-3-メチレンオクタ-1,6-ジエン)が好ましい。
【化2】
【0040】
分岐共役ジエン系重合体を構成するブタジエンとしては、1,3-ブタジエンが望ましい。
【0041】
なお、分岐共役ジエン系重合体は、従来配合されているオイルなどの可塑剤に置き換えて配合することが可能である。
【0042】
分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であれば特に限定されないが、なかでも、より効果が得られる観点から、少なくともファルネセン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体、少なくともミルセン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体が好ましく、ファルネセン、ブタジエン及びスチレンの共重合体、ミルセン、ブタジエン及びスチレンの共重合体がより好ましい。
【0043】
分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは4000以上、更に好ましくは5000以上、より更に好ましくは9000以上、特に好ましくは10000以上であり、また、好ましくは100000以下、より好ましくは30000以下、更に好ましくは25000以下、より更に好ましくは20000以下、より更に好ましくは15000以下、より更に好ましくは12000以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
Mwを所定範囲に調整することで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムとの相溶性を確保して、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能を確保すると共に、所定範囲のMwによりブリードが十分に抑制され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
なお、本明細書において、分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー株式会社製のGPC装置「HLC-8320」、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー株式会社製のカラム「TSKgelSuperHZM-M」)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0044】
分岐共役ジエン系重合体において、モノマー成分100質量%中の分岐共役ジエンの含有量(分岐共役ジエン系重合体100質量%中の分岐共役ジエン単位量)は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0045】
分岐共役ジエン系重合体において、モノマー成分100質量%中のブタジエンの含有量(分岐共役ジエン系重合体100質量%中のブタジエン単位量)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
分岐共役ジエン系重合体において、モノマー成分100質量%中のスチレンの含有量(分岐共役ジエン系重合体100質量%中のスチレン単位量)は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0047】
分岐共役ジエン系重合体において、モノマー成分100質量%中のブタジエンの含有量(分岐共役ジエン系重合体100質量%中のブタジエン単位量(質量%))及びスチレンの含有量(分岐共役ジエン系重合体100質量%中のスチレン単位量(質量%))が下記式を満たすことが望ましい。
0.40≦0.013×ブタジエン単位量+0.071×スチレン単位量≦2.70
下限は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、更に好ましくは0.90以上、特に好ましくは0.97以上であり、また、上限は、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.30以下、更に好ましくは2.23以下、より更に好ましくは2.20以下、より更に好ましくは1.68以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
0.013×ブタジエン単位量+0.071×スチレン単位量を所定範囲にすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴム成分との相溶性が向上し、耐摩耗性能が向上し、また、単独ドメイン相が少なくなることで、耐ブリード性能が向上し、更にスチレンにより高Tgが図られ、ウェットグリップ性能が向上することで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0048】
分岐共役ジエン系重合体の合成は公知の手法により行うことができる。例えば、アニオン重合による合成の場合、充分に窒素置換した耐圧容器に、ヘキサンと、分岐共役ジエンと、ブタジエンと、スチレンと、sec-ブチルリチウムと、必要に応じて他のビニルモノマーとを仕込んだ後、昇温させ、数時間撹拌することで行い、得られた重合溶液をクエンチ処理後、真空乾燥させることで、分岐共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0049】
分岐共役ジエン系重合体を調製する際の重合において、重合手順は特に限定されず、例えば、すべてのモノマーを一度にランダム共重合させてもよいし、予め特定のモノマー(例えば、分岐共役ジエンモノマーのみ、ブタジエンモノマーのみ、スチレンモノマーのみなど)を重合させた後に、残りのモノマーを加えて共重合させてもよいし、特定のモノマー毎に予め重合させたものをブロック共重合させてもよい。
【0050】
前記ゴム組成物において、分岐共役ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
(充填材)
前記ゴム組成物は、より効果が得られる観点から、充填材を含むことが望ましい。
前記ゴム組成物において、充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、特に好ましくは120質量部以上であり、また、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
充填材量を所定範囲にすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムへの補強性が十分に発揮されることで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0052】
充填材としては、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR)、再生カーボンブラックなどが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、カーボンブラック、シリカが好ましい。
シリカ及びカーボンブラックを用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、これらを併用しゴムへの補強性が十分に発揮されることで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0053】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。また、上記の鉱油等を原料としたカーボンブラック以外にリグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、35m/g以上がより好ましく、40m/g以上が更に好ましく、また、200m/g以下が好ましく、170m/g以下がより好ましく、150m/g以下が更に好ましく、148m/g以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0055】
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。また、シリカとして、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたものも使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上、特に好ましくは170m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、シリカを複数種用いる場合には、用いるシリカのトータルでのNSAが上述の範囲であることが望ましい。また、複数種配合するシリカの各シリカのNSAが上述の範囲であることも望ましい。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
前記ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは90質量部以上、特に好ましくは110質量部以上であり、また、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは160質量部以下、特に好ましくは140質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0059】
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。なかでも、スルフィド系、メルカプト系が好ましく、メルカプト系がより好ましい。なお、市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メルカプト系シランカップリング剤を用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、シリカ配合のゴム組成物の補強効果が十分に発揮されることで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0060】
メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も使用可能である。
【0061】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
【化3】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003は-[O(R1009O)]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化4】
【化5】
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R11とR12とで環構造を形成してもよい。)
【0062】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0063】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0064】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0065】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0066】
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
【0067】
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
【0068】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
【0069】
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。なお、メルカプト系シランカップリング剤の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0070】
(可塑剤)
前記ゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。
ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)、エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0071】
なお、本発明において、前述の「分岐共役ジエン系重合体」は、ゴム成分に可塑性を付与する材料であれば、「可塑剤」に含まれるものとする。この場合、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、分岐共役ジエン系重合体(可塑性有)と、それ以外の可塑剤との合計含有量である。
【0072】
前記ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは47質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、伸展ゴムに用いられた可塑剤成分量も、これらの可塑剤の含有量に含まれる。
【0073】
液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマーなど)などが挙げられる。なかでも、効果がより得られる観点から、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマーが望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマーを用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、これらの可塑剤により良好なグリップ性能が発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0074】
前記ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。
前記分岐共役ジエン系重合体が常温(25℃)で液体状態の可塑剤に該当する場合、液体可塑剤の含有量は、該分岐共役ジエン系重合体と、それ以外の液体可塑剤との合計含有量である。
【0075】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。なお、これらのプロセスオイル及び植物油は、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用ミキサーやエンジンなどの潤滑油として用いられた後のオイルや廃食油などを適宜用いても良い。
【0076】
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0077】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0078】
前記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
前記ゴム組成物において、前記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは9質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
樹脂量を所定範囲にすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムとの相溶性が向上することで、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が発揮されると共に、ブリードも抑制され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0080】
前記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、85℃以上がより更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、前記樹脂の軟化点は、通常、樹脂成分のガラス転移温度の50℃±5℃程度の値である。
【0081】
前記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーであり、例えば、スチレン系樹脂などが挙げられる。スチレン系樹脂としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0082】
前記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0083】
前記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0084】
前記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0085】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0086】
前記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0087】
前記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0088】
前記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり、例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
【0089】
前記p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる固体樹脂が挙げられる。
【0090】
前記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0091】
前述の樹脂のなかでも、より効果が得られる観点から、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、及びC5C9系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが望ましい。
これらの樹脂を用いることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、これらの樹脂により良好なグリップ性能が発揮され、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0092】
エステル系可塑剤としては、常温(25℃)で液体状態のエステル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フタル酸誘導体、長鎖脂肪酸誘導体、リン酸誘導体、セバシン酸誘導体、アジピン酸誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、リン酸誘導体、セバシン酸誘導体、アジピン酸誘導体が好ましく、セバシン酸誘導体がより好ましい。
【0093】
上記フタル酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)などのフタル酸エステルが挙げられ、上記長鎖脂肪酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、長鎖脂肪酸グリセリンエステルが挙げられ、上記リン酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリブチルホスフェート(TBP)などのリン酸エステルが挙げられ、上記セバシン酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS)、ジイソオクチルセバケート(DIOS)などのセバシン酸エステルが挙げられ、上記アジピン酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソオクチルアジペート(DIOA)などのアジピン酸エステルが挙げられる。
なかでも、リン酸エステル、セバシン酸エステル、アジピン酸エステルが好ましく、セバシン酸エステルがより好ましい。また、具体的な化合物としては、TOP、DOS、DOAが好ましく、DOSがより好ましい。
【0094】
エステル系可塑剤のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-110℃以上、より好ましくは-100℃以上、更に好ましくは-80℃以上であり、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、更に好ましくは-55℃以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ガラス転移温度は、JIS-K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0095】
エステル系可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましい。
【0096】
可塑剤としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、大八化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0097】
前記ゴム組成物は、加工助剤を含有してもよい。
加工助剤としては、金属塩(酸の水素原子が金属イオンで置換された化合物)、脂肪酸アミド、アミドエステル、脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、金属塩、脂肪酸アミドが好ましく、金属塩がより好ましい。
【0098】
金属塩に使用される金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属や、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。また、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、モリブデン等も使用可能である。なかでも、アルカリ金属が好ましい。
【0099】
金属塩に使用される酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸等が挙げられる。また、ホウ酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸等も使用可能である。
【0100】
加工助剤の市販品としては、キシダ化学(株)、健栄製薬(株)、ストラクトール社、Performance Additives社等の製品を使用できる。
【0101】
前記ゴム組成物において、加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは9質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0102】
(他の成分)
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0104】
前記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0106】
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは4.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0108】
前記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0110】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは5.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0112】
前記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0113】
前記ゴム組成物は、公知の方法を用いて製造でき、例えば、前述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0114】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0115】
前記ゴム組成物は、タイヤのトレッドとして使用される。
本発明に適用できるタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、低温路面向けタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤとして好適に使用できる。なかでも、夏用タイヤ、冬用タイヤとして好適に使用できる。また、タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤとして用いることが望ましい。
【0116】
タイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0117】
本発明のタイヤは、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含む前記ゴム組成物で構成されたトレッドを備え、A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるAが、式(1)を満たす。
式(1)
0.25<A≦1.50
Aの下限は、好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.39以上、より更に好ましくは0.40以上、より更に好ましくは0.44以上、より更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは0.53以上、より更に好ましくは0.57以上、より更に好ましくは0.59以上であり、また、上限は、好ましくは1.20以下、より好ましくは0.82以下、更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.75以下、より更に好ましくは0.70以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
Aを所定範囲、特に0.30≦A≦0.80とすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ゴムとの相溶性が向上することで、単独ドメイン相が少なくなり、耐摩耗性能が向上するとともに、単独ドメイン相が少なくなることで、分岐共役ジエン系重合体のブリードが抑制され、耐ブリード性能が向上し、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0118】
前記タイヤは、前記ゴム組成物で構成されたトレッドを備え、A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるA、トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が、下記式(2)を満たす。
式(2)
A×S≦27.0
A×Sの上限は、好ましくは26.6以下、より好ましくは26.1以下、更に好ましくは25.5以下、より更に好ましくは25.0以下、より更に好ましくは23.1以下、より更に好ましくは23.0以下、より更に好ましくは22.2以下、特に好ましくは22.0以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは10.0以上、より好ましくは10.8以上、更に好ましくは15.0以上、より更に好ましくは15.1以上、より更に好ましくは17.3以上、より更に好ましくは17.8以上、より更に好ましくは18.0以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
A×Sを所定以下、特にA×S≦22.0とすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、十分なグリップ性能が確保されると共に、摩耗が抑制され、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能が向上し、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0119】
前記タイヤは、トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が50%以下であることが好ましい。
Sは、好ましくは45%以下、より好ましくは44%以下、更に好ましくは43%以下、より更に好ましくは41%以下、より更に好ましくは39%以下である。該溝面積比率の下限は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、より更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは33%以上、より更に好ましくは35%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
Sを所定範囲、特に15%≦S≦45%とすることで、このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、十分なグリップ性能が確保されると共に、摩耗が抑制され、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能が向上し、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0120】
前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする分岐共役ジエン系重合体によりブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴム成分との相溶性が向上し、特に、前記式(1)「0.25<A≦1.50」を満たすように調整し、該分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を所定範囲内に調整することで、単独ドメイン相が少なくなり、耐摩耗性能が向上する。また、単独ドメイン相が少なくなることで、分岐共役ジエン系重合体のブリードが抑制され、耐ブリード性能が向上する。
スチレンを構成単位とする前記分岐共役ジエン系重合体により高Tgが図られ、ウェットグリップ性能が向上する。
A、溝面積比率S[%]が前記式(2)「A×S≦27.0」を満たすように調整し、前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を小さくしつつ、トレッドの接地面を大きくする(溝面積比率を小さくする)ことで、グリップ性能が確保されると共に、摩耗が抑制され、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能が向上する。
以上により、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0121】
なお、トレッドの接地面における溝面積比率S(ネガティブ率)は、接地面の全面積に対する、接地面内の全溝面積の割合であり、以下の方法で測定される。
本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、溝面積比率Sは、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim”、或いはETRTOであれば”Measuring Rim”を意味する。
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”を指す。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”を意味する。
接地形状は、正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることで得られる。
タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。
5つの接地形状について、該輪郭を滑らかにつないだ図形の面積を総面積とし、転写された全体の面積が接地面積となる。これらの5か所の結果について平均値を求め、溝面積比率S(%)は、[1-{厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/厚紙の転写された5つの総面積(該輪郭により得られる図形)の平均面積}]×100(%)で計算される。
ここで、長さや面積の平均値は、5つの値の単純平均である。
【0122】
前記タイヤは、トレッドの厚みG(mm)が、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上が更に好ましく、6.0mm以上がより更に好ましい。上限は特に限定されないが、15.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.0mm以下が更に好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、トレッドの厚みが所定範囲とすることで、剛性の向上により、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が向上すると共に、厚みにより耐ブリード性能も向上し、それにより、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能が向上すると推察される。
【0123】
なお、本発明において、トレッドの厚みGとは、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さであり、具体的には、タイヤの回転軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド表面からベルト補強層、ベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ最表面側の界面までの距離である。なお、タイヤ赤道面上に溝を有する場合は、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線と、赤道面の交点からの直線距離である。
【0124】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ1の一部を示す、子午線方向に切った断面図である。なお、本発明のタイヤは、以下の形態に限定されるものではない。
【0125】
図1において、上下方向がタイヤ半径方向(以下、単に半径方向ともいう)であり、左右方向がタイヤ軸方向(以下、単に軸方向ともいう)であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向(以下、単に周方向ともいう)である。このタイヤ1は、図1中の中心線CLに関してほぼ左右対称の形状を呈する。この中心線CLは、トレッドセンターラインとも呼び、タイヤ1の赤道面EQを表す。
【0126】
このタイヤ1は、トレッド2、サイドウォール3、ビード4、カーカス5及びベルト6を備えている。このタイヤ1は、チューブレスタイプである。
【0127】
トレッド部2はトレッド面7を備えている。トレッド面7は、タイヤ1の子午線方向に切った断面において、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド面7は路面と接地する。トレッド面7には、周方向に延びる複数本の溝8が刻まれている。この溝8により、トレッドパターンが形成されている。トレッド2のタイヤ軸方向(タイヤ幅方向)外方部分はショルダー部15と呼ばれる。サイドウォール3は、トレッド2の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール3は架橋ゴムなどからなる。
【0128】
図1に示されるように、ビード4は、サイドウォール3よりも半径方向略内側に位置している。ビード4は、コア10と、このコア10から半径方向外向きに延びるエイペックス11とを備えている。コア10は、タイヤの周方向に沿ってリング状を呈している。コア10は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア10にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス11は半径方向外向きに先細りである。エイペックス11は高硬度な架橋ゴムなどからなる。
【0129】
本実施形態では、カーカス5はカーカスプライ12からなる。カーカスプライ12は、両側のビード4の間に架け渡されており、トレッド2及びサイドウォール3の内側に沿っている。カーカスプライ12は、コア10の周りを、タイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返されている。図示されていないが、カーカスプライ12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面EQ(CL)に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス5はラジアル構造を有する。
【0130】
本実施形態では、ベルト6はカーカス5の半径方向外側に位置している。ベルト6はカーカス5に積層されている。ベルト6はカーカス5を補強する。ベルト6は、内層ベルト13及び外層ベルト14からなるものが挙げられる。本実施形態では、両ベルト13、14の幅が異なっている。
【0131】
図示されていないが、内層ベルト13及び外層ベルト14のそれぞれは、通常、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面EQに対して傾斜することが望ましい。内層ベルト13のコードの傾斜方向は、外層ベルト14のコードの傾斜方向と逆であることが望ましい。
【0132】
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側にバンドが積層されている形態でもよい。このバンドの幅はベルト6の幅よりも大きい。このバンドは、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。コードは、螺旋状に巻かれている。このコードによりベルトが拘束されるので、ベルト6のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなることが望ましい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0133】
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側であって、かつベルト6の幅方向端部(エッジ部)近傍に、エッジバンドが配設されている形態でもよい。このエッジバンドも、上記バンドと同様、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。上記エッジバンドの一例としては、幅広の内層ベルト13のステップ20部の上面に積層されるものが挙げられる。このエッジバンドのコードは、幅狭の外層ベルト14のコードの方向と同一方向に傾斜し、幅広の内層ベルト13のコードとバイアスする形態が挙げられる。
【0134】
図示されていないが、ベルト6の幅方向端部近傍において、クッションゴム層がカーカス5と積層されている形態でもよい。クッション層は、軟質な架橋ゴムからなる形態が挙げられる。クッション層は、ベルトの端の応力を吸収する。
【0135】
図2には、本タイヤ1のトレッド2のタイヤ軸を含む平面で切った断面が示されている。図1、2において、赤道EQの位置であるクラウンセンター17が「トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面」に相当する。
【0136】
タイヤ1において、トレッド2の厚さG(トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG)は、タイヤの軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド面7(タイヤ1がタイヤ赤道面上に溝を有するので、溝8のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線)から外層ベルト14のタイヤ最表面側の界面までの距離である。
【0137】
そして、タイヤ1では、トレッド2を構成するトレッド用ゴム組成物がゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含み、かつ該分岐共役ジエン系重合体が少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体で、A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるAが式(1)「0.25<A≦1.50」を満たしている。また、A、トレッド2の接地面における溝面積比率S[%]が式(2)「A×S≦27.0」を満たしている。
【実施例0138】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0139】
以下に示す各種薬品を用いて表1に従って配合を変化させて得られるタイヤを検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を表1に示す。
【0140】
(ゴム成分)
SBR1:旭化成(株)製のタフデン3830(スチレン量:36質量%、ブタジエン量:64質量%、Mw:42万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR2:JSR(株)製のJSR1723(スチレン量:24質量%、ブタジエン量:76質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR3:JSR(株)製のJSR1502(スチレン量:25質量%、ブタジエン量:75質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量95質量%以上)
【0141】
(ゴム成分以外の薬品)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32(ミネラルオイル)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN134(NSA:148m/g)
シリカ1:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シリカ2:ソルベイ社製のZEOSIL 1115MP(NSA:115m/g)
シリカ3:デグッサ社製の9100Gr(NSA:235m/g)
シランカップリング剤:Momentive社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点:85℃)
ポリイソプレン:クラレ(株)製のLIR50(Mw:54000)
スチレンブタジエン共重合体:クレイバレイ社製のRICON100(スチレン量23質量%、ブタジエン量77質量%、Mw:4500)
スチレンファルネセン共重合体:クラレ(株)製セプトン1020(スチレン量36質量%、ファルネセン64質量%、Mw:1000)
共重合体1:下記製造例1のブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体2:下記製造例2のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体3:下記製造例3のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体4:下記製造例4のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体5:下記製造例5のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体6:下記製造例6のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体7:下記製造例7のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体8:下記製造例8のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体9:下記製造例9のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体10:下記製造例10のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体11:下記製造例11のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体12:下記製造例12のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
共重合体13:下記製造例13のスチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0142】
下記製造例に用いる材料は、以下のとおりである。
ブタジエン:東京化成工業株式会社製の1,3-ブタジエン
スチレン:東京化成工業株式会社製のスチレン
シクロヘキサン:東京化成工業株式会社製のシクロヘキサン
テトラヒドロフラン:東京化成工業株式会社製のテトラヒドロフラン
β-ファルネセン:東京化成工業株式会社製のtrans-βファルネセン
メタノール:東京化成工業株式会社製のメタノール
sec-ブチルリチウム:東京化成工業株式会社製のブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液,約2.3mol/L)
【0143】
<重量平均分子量の測定方法>
重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求める。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZM-M」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40°C
【0144】
<共重合体の製造>
(製造例1:ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
乾燥させ窒素置換した耐圧容器に溶媒としてシクロヘキサン1140g、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)156gを仕込み、50℃に昇温し、その後、テトラヒドロフラン3.5gを添加し、予め調製したブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物(ブタジエン720gとβ-ファルネセン1080gとをボンベ内で混合)1800gを10ml/分で加えて1時間重合する。
作製される重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄する。
洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表1に示す物性を有する共重合体1を得る。
【0145】
(製造例2:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
乾燥させ窒素置換した耐圧容器に溶媒としてシクロヘキサン1140g、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)12gを仕込み、50℃に昇温し、その後、テトラヒドロフラン3.5gを添加し、予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物(スチレン180g、ブタジエン360gとβ-ファルネセン1260gとをボンベ内で混合)1800gを10ml/分で加えて2時間重合する。
作製される重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄する。
洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表1に示す物性を有する共重合体2を得る。
【0146】
(製造例3:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
乾燥させ窒素置換した耐圧容器に溶媒としてシクロヘキサン1140g、開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)156gを仕込み、50℃に昇温し、その後、テトラヒドロフラン3.5gを添加し、予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物(スチレン180g、ブタジエン360gとβ-ファルネセン1260gとをボンベ内で混合)1800gを10ml/分で加えて1時間重合する。
作製される重合反応液をメタノールで処理し、水を用いて重合反応液を洗浄する。
洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、表1に示す物性を有する共重合体3を得る。
【0147】
(製造例4:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を74gに変更する以外は、製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体4を得る。
【0148】
(製造例5:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を52gに変更する以外は、製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体5を得る。
【0149】
(製造例6:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を346gに変更する以外は、製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体6を得る。
【0150】
(製造例7:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物の混合量をスチレン36g、ブタジエン324gとβ-ファルネセン1440gに変更する以外は製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体7を得る。
【0151】
(製造例8:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物の混合量をスチレン360g、ブタジエン360gとβ-ファルネセン1080gに変更する以外は製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体8を得る。
【0152】
(製造例9:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物の混合量をスチレン450g、ブタジエン630gとβ-ファルネセン720gに変更する以外は製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体9を得る。
【0153】
(製造例10:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
予め調製したスチレン、ブタジエンとβ-ファルネセンとの混合物の混合量をスチレン630g、ブタジエン450gとβ-ファルネセン720gに変更する以外は製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体10を得る。
【0154】
(製造例11:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を15gに変更する以外は、製造例2と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体11を得る。
【0155】
(製造例12:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を434gに変更する以外は、製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体12を得る。
【0156】
(製造例13:スチレン/ブタジエン/ファルネセン共重合体の製造)
sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を124gに変更する以外は、製造例3と同様の製造条件で表1に示す物性を有する共重合体13を得る。
【0157】
【表1】
【0158】
<試験用タイヤの製造>
表2及び表3に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の16Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得る。
次に、当該混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ポリマー組成物を得る。
当該未加硫ポリマー組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、次いで、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、仕様:表2及び表3)を製造する。
【0159】
<耐摩耗性能>
上記試験用タイヤを車両に装着して、10,000km走行後のトレッド部の溝深さを測定する。測定値から、トレッド部の摩耗量を算出し、比較例1を100として指数表示する。指数が大きいほど、摩耗量が少なく、耐摩耗性能が良好であることを示す。
【0160】
<ウェットグリップ性能>
各試験用タイヤを車両に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例1を100とした時の指数で表示する。指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0161】
<アセトン抽出量(AE量)>
上記試験用タイヤのトレッドから切り出したゴム試験片について、JIS K 6229に準拠したアセトン抽出量の測定方法に準拠し、該試験片中に含まれるアセトンにより抽出される物質の量を測定する。比較例1を基準として、各ゴム試験片のアセトン抽出量を指数表示する。指数が大きいほど、アセトン抽出量が少なく、耐ブリード性能が良好であることを示す。
アセトン抽出量(質量%)=(抽出前のサンプルの質量-抽出後のサンプルの質量)/抽出前のサンプルの質量×100
【0162】
<総合性能>
耐摩耗性能、ウェットグリップ性能及び耐ブリード性能の総合性能について、耐摩耗性能(指数)、ウェットグリップ性能(指数)及びアセトン抽出量(指数)の平均をこれらの総合性能として評価する。指数が大きいほど、総合性能が良好である。
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
本発明(1)は、ゴム成分と分岐共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物からなるトレッドを備えるタイヤであって、
前記分岐共役ジエン系重合体は、少なくとも分岐共役ジエン、ブタジエン及びスチレンを構成単位とする共重合体であり、
A=42.9/√α+0.14(式中、αは前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量を表す。)で定義されるA、前記トレッドの接地面における溝面積比率S[%]が、下記式(1)、(2)を満たすタイヤである。
式(1)
0.25<A≦1.50
式(2)
A×S≦27.0
【0166】
本発明(2)は、前記トレッドの厚みが3.0mm以上である本発明(1)記載のタイヤである。
【0167】
本発明(3)は、前記ゴム成分が、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
【0168】
本発明(4)は、前記分枝共役ジエンがファルネセンである本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0169】
本発明(5)は、前記分岐共役ジエン系重合体の重量平均分子量が1000~20000である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0170】
本発明(6)は、下記式を満たす本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
0.30≦A≦0.80
【0171】
本発明(7)は、下記式を満たす本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
15%≦S≦45%
【0172】
本発明(8)は、下記式を満たす本発明(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
A×S≦22.0
【0173】
本発明(9)は、前記分岐共役ジエン系重合体100質量%中のブタジエン単位量(質量%)及びスチレン単位量(質量%)が下記式を満たす本発明(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
0.40≦0.013×ブタジエン単位量+0.071×スチレン単位量≦2.70
【0174】
本発明(10)は、前記ゴム組成物が、オイル、液状樹脂、及び液状ジエン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の液体可塑剤を含む本発明(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0175】
本発明(11)は、前記ゴム組成物が、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、及びC5C9系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む本発明(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0176】
本発明(12)は、前記ゴム組成物が、シリカ及びカーボンブラックを含む本発明(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0177】
本発明(13)は、前記ゴム組成物が、メルカプト系シランカップリング剤を含む本発明(1)~(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0178】
本発明(14)は、前記ゴム成分が、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含む本発明(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0179】
本発明(15)は、前記ゴム組成物が、オイルを含む本発明(1)~(14)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0180】
本発明(16)は、前記ゴム組成物が、スチレン系樹脂を含む本発明(1)~(15)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【符号の説明】
【0181】
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス
6 ベルト
7 トレッド面
8 溝
10 コア
11 エイペックス
12 カーカスプライ
13 内層ベルト
14 外層ベルト
15 ショルダー部
17 クラウンセンター(トレッドセンターラインCL、タイヤ1の赤道面EQ)
20 ステップ
G トレッド部のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さ
図1
図2