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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078410
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】水質浄化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/36 20230101AFI20240603BHJP
   C02F 3/06 20230101ALI20240603BHJP
【FI】
C02F1/36
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185092
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2022190748
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大土井 順司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
【テーマコード(参考)】
4D003
4D037
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003BA07
4D003EA06
4D003EA14
4D003EA19
4D003EA22
4D037AA05
4D037AB02
4D037BA26
4D037CA07
(57)【要約】
【課題】アオコが繁殖している水域の水質を改善可能な水質浄化システムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、水域上に浮かべられたフロート島と、前記フロート島に連結されたアオコ粉砕機を備える、水質浄化システムであって、前記アオコ粉砕機は、前記水域内の処理対象水中のアオコに対して外力を加えて粉砕可能に構成される、水質浄化システムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域上に浮かべられたフロート島と、前記フロート島に連結されたアオコ粉砕機を備える、水質浄化システムであって、
前記アオコ粉砕機は、前記水域内の処理対象水中のアオコに対して外力を加えて粉砕可能に構成される、水質浄化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水質浄化システムであって、
前記アオコ粉砕機は、前記フロート島に載置されたソーラパネルによって生成された電力によって動作するように構成される、水質浄化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の水質浄化システムであって、
前記水域中の水と接触可能に配置された発泡ガラスを備える、水質浄化システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の水質浄化システムであって、
前記外力は、前記処理対象水が狭窄部を通過する際に前記アオコに加えられるせん断力を含む、水質浄化システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水質浄化システムであって、
前記外力は、前記狭窄部を通過する際に加速された前記処理対象水が衝突壁に衝突する際に前記アオコに加えられる衝撃力と、前記処理対象水が前記狭窄部を通過する際に発生するキャビテーションによって前記アオコに加えられる衝撃力をさらに含む、水質浄化システム。
【請求項6】
請求項1に記載の水質浄化システムであって、
前記アオコ粉砕機は、前記フロート島から吊り下げられる、水質浄化システム。
【請求項7】
請求項1に記載の水質浄化システムであって、
前記アオコ粉砕機は、前記フロート島の周縁部に配置される、水質浄化システム。
【請求項8】
請求項3に記載の水質浄化システムであって、
前記発泡ガラスは、網袋内に収容された状態で前記水域に沈められる、水質浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロートに設けたプロペラを回転させて水面を叩くことによって水域内に酸素を溶存させて微生物を活性化させ、これによって水質の自然浄化能力を向上させる点を特徴とする水質浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-128990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、アオコが繁殖している水域においては、水質浄化効果が不十分である場合があり、このような水域の水質をより効果的に浄化可能なシステムが求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アオコが繁殖している水域の水質を改善可能な水質浄化システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]水域上に浮かべられたフロート島と、前記フロート島に連結されたアオコ粉砕機を備える、水質浄化システムであって、前記アオコ粉砕機は、前記水域内の処理対象水中のアオコに対して外力を加えて粉砕可能に構成される、水質浄化システム。
[2][1]に記載の水質浄化システムであって、前記アオコ粉砕機は、前記フロート島に載置されたソーラパネルによって生成された電力によって動作するように構成される、水質浄化システム。
[3][1]又は[2]に記載の水質浄化システムであって、前記水域中の水と接触可能に配置された発泡ガラスを備える、水質浄化システム。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の水質浄化システムであって、前記外力は、前記処理対象水が狭窄部を通過する際に前記アオコに加えられるせん断力を含む、水質浄化システム。
[5][4]に記載の水質浄化システムであって、前記外力は、前記狭窄部を通過する際に加速された前記処理対象水が衝突壁に衝突する際に前記アオコに加えられる衝撃力と、前記処理対象水が前記狭窄部を通過する際に発生するキャビテーションによって前記アオコに加えられる衝撃力をさらに含む、水質浄化システム。
[6][1]~[5]の何れか1つに記載の水質浄化システムであって、前記アオコ粉砕機は、前記フロート島から吊り下げられる、水質浄化システム。
[7][1]~[6]の何れか1つに記載の水質浄化システムであって、前記アオコ粉砕機は、前記フロート島の周縁部に配置される、水質浄化システム。
[8][3]に記載の水質浄化システムであって、前記発泡ガラスは、網袋内に収容された状態で前記水域に沈められる、水質浄化システム。
【0007】
本発明によれば、処理対象水内のアオコがアオコ粉砕機で粉砕されるので、アオコが繁殖している水域であっても、水質を改善することができる。また、フロート島を水域上に浮かべることによって、フロート島の下が影になって、アオコの生育が抑制される。このため、フロート島と、アオコ粉砕機の組み合わせによって、水質の改善を一層促進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、本発明の第1実施形態の水質浄化システム10を水域Rに設置した状態の斜視図である。図1Bは、図1A中の領域Bの拡大図である。
図2図1Aの領域B近傍を、南側から見た図である。
図3図2中のアオコ粉砕機6の断面図である。
図4図3中の粉砕部6dの拡大図である。
図5】粉砕部6dの第2の構成例を示す。
図6図6Aは、本発明の第2実施形態の水質浄化システム10から取り出した1つのフロートにアオコ粉砕機6が装着されている状態を示す斜視図である。図6Bは、図6Aの、ロック部材12を通る断面図である。図6Aでは、係合部6hを図示省略している。
図7】粉砕部6dの第3の構成例を示す。
図8図8は、本発明の第3実施形態の水質浄化システム10から取り出した1つのフロート2に、アオコ粉砕機6を構成する第1部材6i及び第2部材6j等が装着されている状態を示す。図8Aは、平面図(一部断面図)であり、図8Bは、正面図(一部断面図)である。
図9図9Aは、図8B中の第2部材6jとその周辺の部位を、第2筐体6lの接地面に垂直な方向から見た図である。図9Bは、図9A中のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.第1実施形態
図1図5に示すように、本発明の第1実施形態の水質浄化システム10は、水域R上に浮かべられたフロート島1と、フロート島1に連結されたアオコ粉砕機6を備える。水質浄化システム10は、水域Rに沈められた発泡ガラス8(図2に図示)を備えることが好ましい。
【0011】
<水域R>
水域Rとは、水質を浄化したい処理対象水Wが含まれる領域であり、例えば、ダム貯水池、ため池、調整池などの貯水池や、湖や沼などの湖沼が挙げられる。水域Rとしては、アオコがすでに発生しているか、アオコが発生することが予想されているものが好ましい。このような場合に、本実施形態の水質浄化システム10を適用する技術的意義が顕著であるからである。アオコは、浮遊性藍藻の総称であり、浮遊性藍藻としては、ミクロキスティス、アファニゾメノン、アナベナなどが挙げられる。水域Rの面積は、例えば100~300000mであり、500~100000mが好ましい。この面積は、具体的には例えば、100、500、1000、2000、3000、5000、10000、50000、100000、300000mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。水域Rの平均深さは、例えば、0.5~100mであり、1~10mが好ましい。この平均深さは、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、50、100mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0012】
<フロート島1>
フロート島1は、好ましくは、複数のフロート2を連結して構成される。以下の説明において、東(E)・西(W)・南(S)・北(N)は、図1Aに示す定義に従う。
【0013】
複数のフロート2は、直接又はジョイント3を介して連結されている。より具体的には、南北方向に隣接する2つのフロート2は、直接連結されており、東西方向に隣接する2つのフロート2は、ジョイント3を介して連結されている。
【0014】
各フロート2は、例えば、溶融状態の筒状のパリソンを複数の分割金型で挟んで膨らますブロー成形によって製造され、成形材料には、各種の熱可塑性樹脂を使用することができるが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。フロート2は、全体の外形が矩形状(長方形状)をしており、内部に気体(空気等)を収容する中空部を有する構造になっている。ジョイント3も同様にブロー成形によって形成され、中空部を有する構造になっている。
【0015】
フロート2には、ソーラパネル4、ケーブル、パワコン、接続箱などの積載物が搭載される(ソーラパネル4以外の積載物は不図示)。多くのフロート2には、ソーラパネル4が搭載されており、ソーラパネル4で発電が可能になっている。ソーラパネル4は、発電効率が高くなるように、受光面が南向きになるように傾斜した状態で搭載されている。ソーラパネル4で発生した電力は、ケーブルを通じて伝送される。複数のソーラパネル4からの直流電力は、ケーブルを通じて接続箱に集められ、接続箱からの直流電力がパワコンで交流電力に変換される。接続箱やパワコンは、フロート2上に設置せずに、地上に設置してもよい。
【0016】
フロート島1の周縁部に配置されるフロート2には、通常、ソーラパネル4などの積載物が搭載されず、通路として利用される。以下、このようなフロート2を「外周フロート」と称し、残りのフロート2を「内部フロート」と称する。
【0017】
外周フロート2Aは、内部フロートを取り囲むように配置される。図2に示すように、外周フロート2Aの一部又は全部には、アンカーロープ等の係留部材5の一端が固定される。係留部材5の他端は、池や湖の底Gに沈められたアンカーに接続されたり、池や湖の周囲の陸上に固定されたりする。これによって、フロート2が浮き上がったり、フロート島1が流されたりすることが抑制される。
【0018】
水域Rの面積に対するフロート島1の面積の割合は、例えば、1~100%であり、具体的には例えば、1、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0019】
フロート島1は、固定されていてもよく、移動可能に構成されていてもよい。フロート島1を移動させて水域Rの水を撹拌することによって、水質浄化効率を高めることができる。例えば、フロート島1を、不動フロート島と、その周りに配置した可動フロート島で構成し、不動フロート島を中心に可動フロート島を回転させることができる。
【0020】
<アオコ粉砕機6>
アオコ粉砕機6は、フロート島1に連結され、かつ水域R内の処理対象水W中のアオコに対して外力を加えて粉砕可能に構成される。アオコ粉砕機6をフロート島1に連結させる効果としては、アオコ粉砕機6を陸上や水底に設置する場合とは異なり、アオコ粉砕機6と水面との位置関係を一定に保てることが挙げられる。水面から80~100cmの位置においてアオコの濃度が高くなる傾向があるので、アオコ粉砕機6と水面との位置関係を一定に保つことによって、アオコの粉砕効率を高めやすいという効果が奏される。
【0021】
連結の態様は、特に限定されず、アオコ粉砕機6がフロート島1に対して相対移動不可になるような係合構造によってアオコ粉砕機6をフロート島1に連結してもよく、例えばロープ7を用いて、フロート島1から吊り下げることによってフロート島1に連結してもよい。アオコ粉砕機6は、フロート島1の周縁部に配置されることが好ましい。フロート島1の直下では、フロート島1によって日光が遮られるので、アオコが発生しにくい。このため、フロート島1の直下よりもフロート島1の周囲の水域Rの方がアオコの濃度が高くなりやすく、アオコ粉砕機6をフロート島1の周縁部に配置することによって、アオコの効率的な粉砕が可能になる。この場合、アオコ粉砕機6は、外周フロート2Aに連結することが好ましい。
【0022】
粉砕前のアオコのメジアン径をM1とし、粉砕後のアオコのメジアン径をM2とする。M1は、例えば、30μm以上であり、50μm以上が好ましい。M1は、例えば、30μm~500μmであり、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。M2は、例えば、25μm以下であり、20μm以下が好ましい。M2は、例えば、1~25μmであり、具体的には例えば、1、5、10、15、20、25μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。M2/M1は、例えば、0.5以下であり、0.3以下が好ましい。この値は、例えば、0.001~0.5であり、具体的には例えば、0.001、0.01、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。アオコのメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布(粒度分布)測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、型式LA-960)を用いて測定することができる。
【0023】
アオコの粉砕によって、好ましくはアオコの細胞壁(ペプチドグリカン壁)が破壊される。これによって、アオコが微生物(好ましくは好気性微生物)によって捕食されやすくなり、水質浄化が促進される。
【0024】
アオコ粉砕機6は、フロート島1に載置されたソーラパネル4によって生成された電力によって動作するように構成されることが好ましい。この場合、外部からの電力供給が不要となり、COの排出削減に寄与することができる。
【0025】
図3に示すように、アオコ粉砕機6は、好ましくは、筐体6aと、吸水口6bと、ポンプ6cと、粉砕部6dと、吐出口6eを備える。吸水口6bと吐出口6eは、筐体6aに設けられ、ポンプ6cと粉砕部6dは、筐体6a内に配置される。吸水口6bと粉砕部6dの間にはフィルタ6fを配置してもよい。ポンプ6cの作用によって水域Rに含まれる処理対象水Wを吸引し、フィルタ6fを通じて粉砕部6dに供給し、粉砕部6dにおいてアオコに外力を加えてアオコを粉砕して得られた処理済み水を、吐出口6eを通じて吐出する。筐体6aには、ロープ7を接続するためのリング状の接続部6gが設けられている。フィルタ6fは、狭窄部6d2を通過不能な異物が狭窄部6d2に入らないように設けられている。筐体6a内に入る異物の量を低減すべく、吸水口6bにもフィルタを設けてもよい。アオコ粉砕機6に設けられる粉砕部6dの数は、1つであっても複数であってもよい。本実施形態のように、アオコ粉砕機6に複数の粉砕部6dを設けることによって、アオコの粉砕効率を高めることができる。ポンプ6c及び吐出口6eは、各粉砕部6dに対応しても設けてもよく、複数の粉砕部6dでポンプ6c及び/又は吐出口6eを共用してもよい。
【0026】
吸水口6bは、水面からの深さが0~2.0mであることが好ましく、0.4~1.4mがさらに好ましく、0.6~1.2mがさらに好ましい。この深さは、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。水面付近は、アオコの濃度が高くなりやすいので、水面から近い位置に吸水口6bを配置することによって、アオコの粉砕を効率的に行うことができる。図3では、吸水口6bを吐出口6eの下側に配置しているが、吸水口6bを吐出口6eの上側に配置してもよい。
【0027】
吐出口6eから吐出される処理済み水は、ソーラパネル4の冷却に用いることができる。ソーラパネル4は、一般に、温度が低いほど、発電効率が高いので、ソーラパネル4を冷却することによって、発電効率を高めることができる。一例では、一端を吐出口6eに接続したホースをソーラパネル4の下側に配置し、ホースの側面に設けた孔からソーラパネル4の裏面に向けて処理済み水を噴霧させることによってソーラパネル4を冷却することができる。また、複数のソーラパネル4のそれぞれの下部において処理済み水を噴霧させることによって、1本のホースで複数のソーラパネル4を冷却することができる。
【0028】
粉砕部6dは、第1の構成例では、図4に示すように、流入部6d1と、狭窄部6d2と、衝突壁6d3と、流出部6d4と、第1及び第2容積部6d51,6d52を備える。ポンプ6cの作用によって、処理対象水Wは、流入部6d1から流入し、第1容積部6d51、狭窄部6d2、第2容積部6d52をこの順で通って、流出部6d4から流出する。狭窄部6d2の流通面積S1は、狭窄部6d2の上流側の容積部(第1容積部6d51)の流通面積S2及び狭窄部6d2の下流側の容積部(第2容積部6d52)の流通面積S3よりも小さくなっている。S1/S2及び/又はS1/S3の値は、0.5以下が好ましく、0.2以下がさらに好ましい。この値は、例えば、0.001~0.5であり、具体的には例えば、0.001,0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。狭窄部6d2は環状であることが好ましい。狭窄部6d2の幅W1は、例えば、10mm以下であり、5mm以下が好ましく、3mm以下がさらに好ましい。W1は、例えば、0.0001~10mmであり、具体的には例えば、0.0001、0.001、0.01、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。粉砕前のアオコのメジアン径をM1とすると、W1/M1の値は、例えば、100以下であり、50以下が好ましい。この値は、例えば、0.1~100であり、具体的には例えば、0.1、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい
【0029】
処理対象水Wが狭窄部6d2を通過する際に処理対象水Wが加速される。この際に、処理対象水Wに含まれるアオコAにせん断力が加えられ、アオコAが粉砕される。また、衝突壁6d3は、狭窄部6d2を通過した処理対象水Wの進行方向上に配置されており、狭窄部6d2を通過する際に加速された処理対象水Wが、衝突壁6d3に勢いよく衝突しやすくなっている。そして、処理対象水Wが衝突壁6d3に衝突することによって、処理対象水Wに含まれるアオコAに衝撃力が加えられ、アオコAがさらに粉砕される。さらに、処理対象水Wが前記狭窄部を通過する際に発生するキャビテーションによってアオコAに衝撃力が加えられ、アオコAがさらに粉砕される。キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、圧力低下によって水が沸騰するか及び/又は溶存気体の遊離によって直径100μm以下の微細な気泡(マイクロバブル及び/又はナノバブル)が発生し、これらの気泡が破裂する際に発生する衝撃波によってアオコAに衝撃力が加えられる。
【0030】
粉砕部6dには、エアーが供給されることが好ましい。この場合、キャビテーションによる気泡の発生が促進される。エアーの供給は、エアチューブの一端を粉砕部6dに接続し、他端を大気開放することによって行うことができる。この場合、粉砕部6d内を処理対象水が流れることによってエアーが粉砕部6dに吸入される。エアチューブの一端は、狭窄部6d2、その上流側、又は下流側の何れに接続してもよいが、狭窄部6d2の上流側に接続することが好ましい。エアーが狭窄部6d2を通過することによってアオコの粉砕が促進されるからである。エアーの供給は、ポンプなどを用いて能動的に行ってもよい。キャビテーションによって発生する気泡の数は、例えば、1000万個/mL以上であり、例えば、1000万~10億個/mLであり、1~5億個/mLが好ましい。気泡の平均粒径は、例えば、1~500nmであり、10~100nmが好ましく、20~60nmがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態では、上記3種類の外力がアオコAに加えられて、アオコAが効果的に粉砕される。なお、3種類の外力をアオコAに加える代わりに、このうちの1種又は2種の外力をアオコAに加えるように構成してもよい。
【0032】
粉砕部6dは、第2の構成例では、図5に示すように、流入部6d1と、第1~第3狭窄部6d21~6d23と、第1及び第2衝突壁6d31,6d32と、流出部6d4と、第1~第4容積部6d51~6d54を備える。ポンプ6cの作用によって、処理対象水Wは、流入部6d1から流入し、第1容積部6d51、第1狭窄部6d21、第2容積部6d52,第2狭窄部6d22、第3容積部6d53、第3狭窄部6d23、第4容積部6d54をこの順で通って、流出部6d4から流出する。第1~第3狭窄部6d21~6d23のそれぞれの流通面積は、それぞれの上流側の容積部の流通面積及び下流側の容積部の流通面積よりも小さくなっている。第1及び第3狭窄部6d21,6d23は、板状の隔壁6d6に設けられた円形の孔で構成される。第1及び第3狭窄部6d21,6d23は、流入部6d1から流出部6d4に向かう流れ方向に対して傾斜するように設けられる。第1及び第3狭窄部6d21,6d23の傾斜角は、20~50度が好ましく、30~40度がさらに好ましい。第2狭窄部6d22は、ベンチュリ状の形状を有する。処理対象水Wは、第1~第3狭窄部6d21~6d23のそれぞれを通過する際に加速される。第1狭窄部6d21を通過した処理対象水Wは、第1衝突壁6d31に衝突し、第2狭窄部6d22を通過した処理対象水Wは、第2衝突壁6d32に衝突する。その他の点については、第1の構成例について述べた内容は、その趣旨に反しない限り、本構成例にも当てはまる。
【0033】
粉砕部6dは、第3の構成例では、図7に示すように、流入部6d1と、狭窄部6d2と、エア供給部6d7、流出部6d4と、第1及び第2容積部6d51,6d52を備える。ポンプ6cの作用によって、処理対象水Wは、流入部6d1から流入し、第1容積部6d51、狭窄部6d2、第2容積部6d52をこの順で通って、流出部6d4から流出する。狭窄部6d2の流通面積S1は、狭窄部6d2の上流側の容積部(第1容積部6d51)の流通面積S2及び狭窄部6d2の下流側の容積部(第2容積部6d52)の流通面積S3よりも小さくなっている。
【0034】
処理対象水Wが狭窄部6d2を通過する際に処理対象水Wが加速される。この際に、処理対象水Wに含まれるアオコにせん断力が加えられ、アオコが粉砕される。また、エア供給部6d7は、処理対象水Wにエアーを供給するように構成されたエアー流路6d8を備える。エアー流路6d8は、一端6d9が大気開放され、かつ他端6d10が処理対象水Wの流路に対向するように配置されている。処理対象水Wが粉砕部6dの流路内を移動すると、エアーが処理対象水Wに巻き込まれて処理対象水Wに供給される。エアーの供給によってアオコの粉砕や分解が促進される。他端6d10は、第2容積部6d52(好ましくは第2容積部6d52のうち狭窄部6d2に隣接した位置)に対向するように配置されることが好ましい。
【0035】
狭窄部6d2は、エアー供給部6d7の直前で最も狭くなっている。第2容積部6d52は、狭窄部6d2との境界において、狭窄部6d2に比べて拡径され、狭窄部6d2から離れるに連れて徐々に縮径されている。第2容積部6d52は、くびれ部6d16において最も縮径され、くびれ部6d16から流出部6d4に向かって徐々に拡径される。第1容積部6d51が狭窄部6d2に向かって縮径する部位を第1傾斜部6d17、第2容積部6d52がくびれ部6d16に向かって縮径する部位を第2傾斜部6d18、くびれ部6d16から流出部6d4に向かって拡径する部位を第3傾斜部位6d19とすると、傾斜角度の絶対値は、第1傾斜部6d17>第2傾斜部6d18>第3傾斜部6d19となっている。
【0036】
好ましくは、エアー流路6d8は、複数の他端6d10を有し、複数の他端6d10は、周方向に離間されて配置される。他端6d10の数は、例えば、2~12であり、4~8が好ましい(本実施形態では6)。複数の他端6d10は、周方向に均等に離間されて配置されることが好ましい。
【0037】
エアー流路6d8は、環状に構成された環状流路6d11と、環状流路6d11と一端6d9を連結する第1流路6d12と、環状流路6d11と他端6d10を連結する第2流路6d13を備える。第2流路6d13は、各他端6d10に対応して設けられるので、第2流路6d13の数が、他端6d10の数と等しい。第2流路6d13は、他端6d10に向かって先細りになっている。狭窄部6d2は、筒部6d14内に配置されており、筒部6d14の外側には環状の混合スペース6d15が設けられている。図7Bに示すように、第2流路6d13が向く方向Aは、狭窄部6d2の中心に向かう方向A1からずれていることが好ましく、筒部6d14の外周面の接線方向A2に一致していることがさらに好ましい。このような構成によれば、処理対象水Wとエアーが効率的に撹拌可能になる。
【0038】
<発泡ガラス8>
発泡ガラス8は、ガラスの発泡体であり、ガラスを粉砕し発泡剤を加え、焼成炉で溶融発泡させて製造することができる。原料となるガラスは、環境保護の観点で廃ガラスであることが好ましい。発泡ガラス8は、多孔質体であり、表面積が大きいので、微生物の住み家になりやすい。このため、発泡ガラス8を水域Rに沈めて置くことによって微生物を増やすことができ、粉砕されたアオコAの微生物による捕食を促進することができる。発泡ガラス8は、粒子状であることが好ましい。発泡ガラス8は、平均粒子径が3~8mmであることが好ましく、4~7mmが好ましく、5~6mmがさらに好ましい。平均粒子径は、球相当径が1mm以上である粒子の中からランダムに選びだした100個の粒子の球相当径の平均値を意味する。
【0039】
また、発泡ガラス8にはエアーを供給することが好ましい。この場合、発泡ガラス8を住み家とする好気性微生物を増大させることができる。発泡ガラス8の比重は、例えば0.3~1.6であり、0.3~0.6が好ましく、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。発泡ガラス8の発泡倍率は、例えば1.5~10倍であり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0040】
発泡ガラス8は、連続気泡を有することが好ましい。この場合、発泡ガラス8の比重が1未満の場合であっても、連続気泡内に水が浸透することによって、発泡ガラス8を水中に沈めることが可能になる。水域Rの水1mに対する発泡ガラス8の使用量は、0.0001~0.2mであることが好ましく、0.0005~0.1mがさらに好ましく、0.001~0.02mがさらに好ましい。水域Rの水1mに対する発泡ガラス8の使用量は、例えば、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0041】
発泡ガラス8は、水域R中の水と接触可能に配置されればよく、水域Rに沈めてもよく、水域Rに沈めずに水域Rの水をポンプなどで吸い上げて発泡ガラス8に接触させるようにしてもよい。発泡ガラス8を水域Rに沈める場合、そのまま水域Rに散布して水域Rに沈めてもよいが、発泡ガラス8を網袋9内に収容された状態で水域Rに沈めることが好ましい。後者の場合、発泡ガラス8の回収や交換が容易になるという利点がある。また、発泡ガラス8を収容した網袋9は、水域Rの底に設けたアンカー11に固定することが好ましい。この場合、発泡ガラス8を収容した網袋が別の場所に流されてしまうことが抑制される。アンカー11には、ブイを接続することが好ましい。ブイを水面に浮かべることによって、発泡ガラス8を沈めた位置の特定が容易になる。
【0042】
発泡ガラス8は、一例では、容器内に収容することができる。この場合、ポンプなどを用いて水域R中の水を吸い上げて容器内に供給することによって水域R中の水を発泡ガラス8に接触させることができる。容器内の水は、ポンプを用いて排出してもよく、容器の底壁又は側壁に設けた開口部を通じて排出してもよい。一例では、アオコ粉砕機6から排出される処理済み水を容器内に直接供給してもよい。この場合、アオコ粉砕機6で粉砕されたアオコの分解が促進されやすくなる。発泡ガラス8が入った容器は、陸上に設置してもよく、フロート島1に設置してもよく、水域Rに浮かべてもよい。
【0043】
2.第2実施形態
図6を用いて、本発明の第2実施形態の水質浄化システム10について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、第1実施形態で述べた内容は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。
【0044】
本実施形態では、アオコ粉砕機6は、フロート2に設けられた開口部2a内に配置されている。アオコ粉砕機6は、フロート2に対して、上下方向に移動可能に固定されていることが好ましい。この場合、アオコ粉砕機6を上下方向に移動させることによって、図3に図示する吸水口6bの位置を調整することによって浄化効率を向上させたり、アオコ粉砕機6の設置やメンテナンスの作業性を向上させたりすることができる。また、アオコ粉砕機6は、開口部2aの下方に沈めるようにフロート2に吊り下げてもよい。この場合、フロート2の外側からアオコ粉砕機6を吊り下げる場合に比べて、アオコ粉砕機6による重力によってフロート2が傾くことが抑制される。また、開口部がないフロート2の下面からアオコ粉砕機6を吊り下げる場合に比べて、アオコ粉砕機6を引き上げるのが容易になる。
【0045】
一例では、図6Bに示すように、フロート2にロック部材12が設けられる。ロック部材12は、アオコ粉砕機6に設けた係合部6hと係合している状態と、係合が解除された状態を切替可能に構成されている。例えば、ロック部材12をスライドさせることによって、上記切替を可能にすることができる。これによって、ロック部材12による係合を解除することによって、アオコ粉砕機6を上下方向に移動可能にすることができる。また、アオコ粉砕機6の、上下方向に離間された複数の高さ位置に係合部6hを設けることができる。この場合、ロック部材12と係合させる係合部6hを変えることによって、アオコ粉砕機6を固定する位置を上下方向にずらすことができる。ロック部材12と係合部6hの組み合わせとしては、例えば、ピンと、このピンを挿入可能な孔のようなものであってもよい。
【0046】
アオコ粉砕機6を開口部2aに装着したフロート2には、図2に図示する係留部材5を装着することが好ましい。開口部2aを有するフロート2に係留部材5を装着すると、係留部材5によってフロート2に水平方向の大きな荷重が加わったときに変形しやすいが、開口部2aにアオコ粉砕機6を装着することによって、フロート2の変形を抑制することができる。これによって、フロート島1の係留強度を高めることができる。
【0047】
3.第3実施形態
図8図9を用いて、本発明の第3実施形態の水質浄化システム10について説明する。本実施形態は、第1~第2実施形態に類似しており、第1~第2実施形態で述べた内容は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。以下、相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態では、アオコ粉砕機6は、第1部材6iと第2部材6jに分かれて構成されている。第1部材6iは、第1筐体6kと、ポンプ6cを備える。ポンプ6cは、第1筐体6k内に配置されている。第2部材6jは、第2筐体6lと、粉砕部6dを備える。粉砕部6dは、第2筐体6l内に配置されている。第2筐体6lは、筐体本体6l1と、その開口部を覆う蓋体6l2を備える。第1部材6iと第2部材6jは、配管6rによって連結されている。第1及び第2実施形態のアオコ粉砕機6は、重すぎて運搬が容易ではない場合があるが、本実施形態では、アオコ粉砕機6の中でも特に重量が大きいポンプ6c及び粉砕部6dが別々の部材内に配置されており、第1部材6iと第2部材6jのそれぞれは、第1及び第2実施形態のアオコ粉砕機6よりも軽くなる。本実施形態によれば、第1部材6iと第2部材6jをそれぞれ運搬してフロート2に設置した後に第1部材6iと第2部材6jを配管6rで連結することによって、重量が大きい一体型のアオコ粉砕機6を運搬することなく、アオコ粉砕機6をフロート2に設置することができる。粉砕部6dは、上述の第1~第3構成例の何れのものであってもよいが、第3構成例のものが好ましい。
【0049】
アオコ粉砕機6は、複数の第2部材6jを備えており、これらの第2部材6jは、それぞれ、配管6rを介して第1部材6iに連結されている。このような構成によれば、1つの第1部材6iで吸引された処理対象水Wを複数の第2部材6jで処理することができるので、アオコの粉砕効率が高められる。第1部材6i内には、複数のポンプ6cを設けてもよく、単一のポンプ6cを設けてもよい。前者の場合、各ポンプ6cを各第2部材6jに連結することができる。後者の場合、単一のポンプ6cで吸引した処理対象水Wを分岐させて複数の第2部材6jに供給することができる。前者の場合、アオコの粉砕効率を高めることができ、後者の場合、設備コストを低減することができる。
【0050】
配管6rは、一端側が第1部材6i内のポンプ6cに連結されており、他端側が第2部材6j内の粉砕部6dに連結されているので、ポンプ6cで吸引した処理対象水Wを粉砕部6dに送ることが可能になっている。第2部材6j内には、複数の(本実施形態では2つの)粉砕部6dが設けられており、これらの粉砕部6dと配管6rは、分岐管6mを介して連結されている。分岐管6mの根本は、第2筐体6lの側壁6l3に設けられて開口に挿入されていることが好ましい。この場合、分岐管6mの根本が側壁6l3で支持されるからである。このような構成によれば、1つの配管6r内を流れる処理対象水Wを複数の粉砕部6dで処理することができるので、アオコの粉砕効率が高められる。粉砕部6dは、固定板6qを用いて第2筐体6lに固定することができる。固定板6qは、粉砕部6dの上側に配置される部位6q1と、第2筐体6lに固定される部位6q2を備えることが好ましい。固定板6qは、例えば、ビス6tを用いて第2筐体6lに固定することができる。
【0051】
第1部材6iは、フロート2の開口部2aに設置することが好ましい。本実施形態では、第1部材6iの第1筐体6kにブラケット6n,6oを固定し、第1筐体6kを開口部2a内に挿入して、ブラケット6n,6oをフロート2に当接させて第1筐体6kが落下しないようにすることによって、第1部材6iを設置することができる。このような構成によれば、フロート2への第1部材6iの着脱が容易である。フロート2は、フロート本体2bと、立設部2cを備える。立設部2cは、フロート本体2bの開口部2aに隣接した位置に設けられたヒンジ部2dを介してフロート本体2bに連結されている。フロート2は、立設部2cが横倒しになった状態でフロート本体2bと立設部2cがそれぞれ中空状に一体成形された成形体を形成し、この成形体において立設部2cの周囲の三辺を切断し、残りの一辺をヒンジ部2dとして立設部2cを立ち上げることによって製造することができる。成形体において横倒しになった立設部2cが設けられていた部位が、立設部2cを立ち上げた後に開口部2aとなる。開口部2a及び立設部2cは、フロート本体2bに設けられた凹部2e内に配置される。ブラケット6nは、立設部2c上に載置される。ブラケット6oは、第1部材6iを挟んでブラケット6nの反対側に配置される。ブラケット6oは、凹部2eの底面に載置される。
【0052】
第2部材6jは、フロート2上に設置することが好ましい。フロート2上には、フロート2同士を連結するのに用いるナット(不図示)が埋め込まれており、このナットに金具6pを固定し、金具6pを第2筐体6lに固定することによって、第2部材6jをフロート2上に設置することができる。
【0053】
粉砕部6dの流出部6d4側の部位は、第2筐体6lの側壁6l4に設けられた開口に挿入されていることが好ましい。側壁6l4は、側壁6l3と対向することが好ましい。流出部6d4が水面よりも高い位置にあると、アオコを粉砕して得られた処理済み水が水面に衝突して音を発生させてしまうので、このような音の発生を低減すべく、流出部6d4に配管6uを接続し、配管6uの先端が水面よりも低い位置になるようにすることが好ましい。また、配管6uは、フロート2(特に給水口6b)から離れるように傾斜していることが好ましい。この場合、処理済み水がフロート2から遠ざかるように放出されるので、給水口6bから吸引される処理対象水Wに含まれる未処理のアオコの割合が高められる。また、フロート2から遠ざかるように処理済み水を放出することによって、フロート2を浮かべる水域Rに含まれる水が撹拌され、この観点からも、給水口6bから吸引される処理対象水Wに含まれる未処理のアオコの割合が高められる。また、第1筐体6kには、配管6uが設けられた側とは、反対側(図8Bの右側)に給水口6bが設けられている。この給水口6bは、配管6uの先端から離れた位置に配置されているので、この給水口6bから処理対象水Wを吸引することによって、処理対象水Wに含まれる未処理のアオコの割合が高められる。
【0054】
4.その他実施形態
・アオコの濃度が極めて高い場所や、浄化効率を高く保ちたい場合には、ナノバブル等の形態で空気を供与する装置を併設しても良い。これによって、水質の浄化効率を一層高めることができる。
・第1~第3実施形態において、アオコ粉砕機6の筐体は不要な場合には省略可能である。例えば、第1実施形態において筐体6aを省略し、ロープ7でポンプ6cを吊り下げるようにしてもよい。この場合、フィルタ6fは、例えばポンプ6cの取水口に装着してもよい。
【実施例0055】
図1図4に示す水質浄化システム10を用いて、面積が1319.585mで満水時の深さが6.8mの貯水池の水質浄化を行った。貯水池の面積の5.4%を覆うように貯水池の中央にフロート島1を配置し、フロート島1の北側の端近傍にアオコ粉砕機6を配置した。フロート島1には、ソーラパネル4を6枚設置した。アオコ粉砕機6は、吸水口6bの位置が水面から80cmとなるように設置した。ガラス発泡資材(発泡ガラス8)は、フロート島1の直下を除く領域に散布した。ガラス発泡資材としては、比重が0.3~0.6であり、連続気泡を有するものを用いた。ガラス発泡資材の散布量は、12m(3.6t)とした。アオコ粉砕機6の狭窄部6d2の幅は、3mmとした。各アオコ粉砕機6の処理能力は、50L/分であった。アオコ粉砕機6は、ソーラパネル4によって生成された電力によって動作させた。
【0056】
水質浄化システム10を6ヶ月間稼働させ、稼働前後でのアオコのメジアン径、酸化還元電位、透明度を測定した。アオコのメジアン径は、稼働前後で81μmから11μmに変化した。酸化還元電位は、稼働前後で202mVから126mVに変化した。透明度は、稼働前後で80cmから4.5mに変化した。
【0057】
これらの結果から、水質浄化システム10によって貯水池の水質が大幅に改善したことが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 :フロート島
2 :フロート
2A :外周フロート
2a :開口部
2b :フロート本体
2c :立設部
2d :ヒンジ部
2e :凹部
3 :ジョイント
4 :ソーラパネル
5 :係留部材
6 :アオコ粉砕機
6a :筐体
6b :吸水口
6c :ポンプ
6d :粉砕部
6d1 :流入部
6d2 :狭窄部
6d21 :第1狭窄部
6d22 :第2狭窄部
6d23 :第3狭窄部
6d3 :衝突壁
6d31 :第1衝突壁
6d32 :第2衝突壁
6d4 :流出部
6d51 :第1容積部
6d52 :第2容積部
6d53 :第3容積部
6d54 :第4容積部
6d6 :隔壁
6d7 :エア供給部
6d8 :エアー流路
6d9 :一端
6d10 :他端
6d11 :環状流路
6d12 :第1流路
6d13 :第2流路
6d14 :筒部
6d15 :混合スペース
6d16 :くびれ部
6d17 :第1傾斜部
6d18 :第2傾斜部
6d19 :第3傾斜部
6e :吐出口
6f :フィルタ
6g :接続部
6h :係合部
6i :第1部材
6j :第2部材
6k :第1筐体
6l :第2筐体
6l1 :筐体本体
6l2 :蓋体
6l3 :側壁
6l4 :側壁
6m :分岐管
6n :ブラケット
6o :ブラケット
6p :金具
6q :固定板
6q1 :部位
6q2 :部位
6r :配管
6t :ビス
6u :配管
7 :ロープ
8 :発泡ガラス
9 :網袋
10 :水質浄化システム
11 :アンカー
12 :ロック部材
A :アオコ
G :底
R :水域
W :処理対象水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9