(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078423
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】スカンジウムメタルの作製方法
(51)【国際特許分類】
C22B 59/00 20060101AFI20240603BHJP
C22B 5/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B5/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192441
(22)【出願日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】111145570
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】傅聖峻
(72)【発明者】
【氏名】黄揚升
(72)【発明者】
【氏名】張家銘
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA39
4K001BA04
4K001GA19
4K001HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スカンジウムメタルの作製方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム粉末およびフッ化スカンジウム粉末を混合して混合物を形成するステップと、混合物を真空環境中で加熱し、アルミニウム粉末をフッ化スカンジウム粉末と反応させてフッ化アルミニウムガスおよびスカンジウムメタルを形成するステップと、真空引きによりフッ化アルミニウムガスを除去して前記スカンジウムメタルを得るステップと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカンジウムメタルの作製方法であって、
アルミニウム粉末およびフッ化スカンジウム粉末を混合して混合物を形成するステップと、
前記混合物を真空環境中で加熱し、前記アルミニウム粉末を前記フッ化スカンジウム粉末と反応させてフッ化アルミニウムガスおよびスカンジウムメタルを形成するステップと、
真空引きにより前記フッ化アルミニウムガスを除去して前記スカンジウムメタルを得るステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記アルミニウム粉末と前記フッ化スカンジウム粉末の重量比が0.27から0.4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記真空環境の圧力が0.1Paよりも大きく、かつ1Paよりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物を加熱する前記ステップが第1の段階および第2の段階を含み、前記第1の段階が温度900℃から1500℃で行われ、前記第2の段階が温度1300℃から1800℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の段階が20分間から2時間行われ、前記第2の段階が20分間から2時間行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物を加熱する前記ステップが、温度1300℃から1500℃で40分から4時間行われる一段階プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スカンジウムメタルの純度が99wt%から100wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スカンジウムメタルからスカンジウムターゲットまたはスカンジウム合金ターゲットを形成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野はスカンジウムメタルの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スカンジウムメタルを作製するのに、2つの既存の方法がある。カルシウム熱還元法(calciothermic reduction)および溶融塩電解である。カルシウム熱還元法に要される原料(例えばカルシウム金属)は純度が低い。また、それらは保管が難しく、かつそれらの反応温度は劇的に変化し得るため、結果として生成物(例えばスカンジウムメタル)の純度が非常に低くなってしまい(99wt%より低い)、最終生成物の収率は低い。溶融塩電解に用いられる原料(例えばハロゲン化スカンジウム)は、電解槽および電極材料をひどく腐食させる可能性があり、つまりこの方法は大規模な工業的生産運転に有効に使用できないということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許出願公開第TW202212585A号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN104928507A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スカンジウムメタルを作製するための新規な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態はスカンジウムメタルの作製方法を提供する。当該方法は、アルミニウム粉末およびフッ化スカンジウム粉末を混合して混合物を形成するステップと、その混合物を真空環境中で加熱し、アルミニウム粉末をフッ化スカンジウム粉末と反応させてフッ化アルミニウムガスおよびスカンジウムメタルを形成するステップと、真空引きによりフッ化アルミニウムガスを除去してスカンジウムメタルを得るステップと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、アルミニウム粉末とフッ化スカンジウム粉末の重量比は0.27から0.4である。
【0007】
いくつかの実施形態において、真空環境の圧力は0.1Paよりも大きく、かつ1Paよりも小さい。
【0008】
いくつかの実施形態において、混合物を加熱するステップは第1の段階および第2の段階を含み、第1の段階は温度900℃から1500℃で行われ、第2の段階は温度1300℃から1800℃で行われる。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の段階は20分間から2時間行われ、第2の段階は20分間から2時間行われる。
【0010】
いくつかの実施形態において、混合物を加熱するステップは、温度1300℃から1500℃で40分間から4時間行われる一段階プロセスである。
【0011】
いくつかの実施形態において、スカンジウムメタルの純度は99wt%から100wt%である。
【0012】
いくつかの実施形態において、当該方法は、スカンジウムメタルからスカンジウムターゲットまたはスカンジウム合金ターゲットを形成するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
フッ化アルミニウムを真空引きにより除去することができ、真空を破壊して固体副生成物を除去する必要がない。記載された方法によれば、追加の精製ステップを行わずに、高純度(例えば99wt%から100wt%)のスカンジウムメタルを形成することができる。本開示の真空環境の真空度は極端に高くはなく、一般の真空ポンプによって達成することができる。また、本開示の方法はシンプルであり、かつ複雑でないため、量産およびコスト削減に有利である。
【0014】
詳細な説明を以下の実施形態において行う。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な記載では、開示される実施形態が充分に理解されるよう、説明の目的で、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、1つまたはそれ以上の実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施可能であるということは、明らかであろう。
【0016】
本開示の一実施形態はスカンジウムメタルの作製方法を提供する。当該方法は、アルミニウム粉末およびフッ化スカンジウム粉末を混合して混合物を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、アルミニウム粉末とフッ化スカンジウム粉末の重量比は0.27から0.4である。アルミニウム粉末の量が少なすぎると、スカンジウムメタルの純度が不充分となってしまう。アルミニウム粉末の量が多すぎると、スカンジウムメタルの純度が不充分となってしまう。
【0017】
当該方法では、次いで、その混合物を真空環境中で加熱してアルミニウム粉末をフッ化スカンジウム粉末と反応させ、フッ化アルミニウムガスおよびスカンジウムメタルを形成する。例えば、アルミニウム粉末とフッ化スカンジウム粉末との反応は以下に示されるものである。
Al+ScF3→AlF3+Sc
【0018】
フッ化アルミニウムは次のようにアルミニウムとさらに反応し得る。
AlF3+2Al→3AlF
【0019】
いくつかの実施形態において、真空環境の圧力は0.1Paよりも大きく、かつ1Paよりも小さい。真空環境の圧力が高すぎる(つまり、真空度が不充分である)と、スカンジウムメタルの一部が酸素と反応して酸化スカンジウムが形成されやすくなり、これにより化学還元が妨げられ、結果、スカンジウムメタル生成物の純度が不充分となり得る。
【0020】
当該方法では、次いで、真空引きによりフッ化アルミニウムガス(例えば、AlF3およびAlF)を除去してスカンジウムメタルを得る。いくつかの実施形態において、スカンジウムメタルの純度は99wt%から100wt%であり、これはスカンジウムターゲットまたはスカンジウム合金ターゲット(例えば、アルミニウムスカンジウム合金ターゲット)を作製するのに用いることができるものである。
【0021】
いくつかの実施形態において、混合物を加熱するステップは第1の段階および第2の段階を含み、第1の段階は温度900℃から1500℃で行われ、第2の段階は温度1300℃から1800℃で行われる。いくつかの実施形態において、第1の段階は20分間から2時間行われ、第2の段階は20分間から2時間行われる。第1の段階の温度が低すぎる、または第1の段階の時間が短すぎると、アルミニウムとフッ素との反応が不完全となり、これによりスカンジウムメタルの純度が不充分となってしまう。第1の段階の温度が高すぎる、または第1の段階の時間が長すぎると、大量のアルミニウム蒸気が発生してスプラッシュを起こしてしまい、かつアルミニウム蒸気はフッ素と反応できないためフッ化アルミニウムが形成され得ない。第2の段階の温度が低すぎる、または第2の段階の時間が短すぎると、フッ化アルミニウムガスが有効に除去され得ず、これによりスカンジウムメタルの純度が不充分となってしまう。第2の段階の温度が高すぎる、または第2の段階の時間が長すぎると、スカンジウムメタルの純度が不充分となってしまう。
【0022】
いくつかの実施形態において、混合物を加熱するステップは、温度1300℃から1500℃で40分間から4時間行われる一段階プロセスである。この一段階プロセスでもスカンジウムメタルを作製することができる。
【0023】
既存のスカンジウムメタルの作製方法と比較して、本開示の方法は次のような利点を有する。フッ化アルミニウムを真空引きにより除去することができるため、真空を破壊して固体副生成物を除去する必要がない。記載された方法によれば、追加の精製ステップを行わずに、高純度(例えば99wt%から100wt%)のスカンジウムメタルを形成することができる。本開示の真空環境の真空度(例えば0.1Paから1Pa)は極端に高くはなく、一般の真空ポンプによって達成することができる。また、本開示の方法はシンプルであり、かつ複雑でないため、量産およびコスト削減に有利である。
【0024】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、例示的な実施例を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化することができる。明確とするために周知の部分についての説明は省き、全体を通し類似する参照数字は類似する構成要素を示すものとする。
【実施例0025】
比較例1(アルミニウム粉末が過少)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)26gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1400℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル45gを純度85.2wt%(EDXにより測定)で得た。アルミニウム粉末とフッ化スカンジウム粉末の重量比が低すぎた(0.26)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0026】
比較例2(アルミニウム粉末が過多)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)45gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1400℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル53gを純度62.0wt%(EDXにより測定)で得た。アルミニウム粉末とフッ化スカンジウム粉末の重量比が0.40より高いため、過剰なアルミニウム粉末が完全に反応できず、このためにスカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0027】
比較例3(第1の段階の反応温度が過度に低い)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を850℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1300℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル48gを純度57.0wt%(EDXにより測定)で得た。第1の段階の反応温度が低すぎた(850℃)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0028】
比較例4(第2の段階の反応温度が過度に低い)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)120gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)44gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を1200℃に保つと共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル60gを純度65wt%(EDXにより測定)で得た。第2の段階の反応温度が低すぎた(1200℃)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0029】
比較例5(第1の段階の反応温度が過度に高い)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1600℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を1600℃に保つと共に、反応チャンバー内の圧力を1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル35gを純度86wt%(EDXにより測定)で得た。第1の段階の反応温度が高すぎた(1600℃)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。加えて、第1の段階の反応温度が高すぎることにより、大量のアルミニウム蒸気が形成されてスプラッシュが引き起こされ、かつアルミニウム蒸気はフッ素と反応できず、フッ化アルミニウムが形成されなかった。
【0030】
比較例6(第2の段階の反応温度が過度に高い)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を1820℃に昇温すると共に、反応チャンバー内の圧力を1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル40gを純度97.5wt%(EDXにより測定)で得た。第2の段階の反応温度が高すぎた(1820℃)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0031】
比較例7(反応チャンバーの圧力が過度に高い)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co. から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を5Paまで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を1400℃に昇温すると共に、反応チャンバー内の圧力を5Paに保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル44gを純度72wt%(EDXにより測定)で得た。反応チャンバーの圧力が高すぎた(5Pa)ため、スカンジウムメタルの純度が不充分となった。
【0032】
比較例8(カルシウムおよびフッ化スカンジウム)
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびカルシウム粉末(Ca、Uni-Onward Co.から市販されている)65gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を0.01Paまで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1650℃まで加熱して、約60分間反応を行った。反応が完了した後、フッ化カルシウム固体とスカンジウム液体とがはっきりと分層した。フッ化カルシウム固体を除去してから、スカンジウム液体を冷却し、スカンジウムメタル38gを純度96.3wt%(EDXにより測定)で得た。このように、アルミニウムをカルシウムに置き換えて、所謂カルシウム熱還元法を行うと、副生成物のフッ化カルシウムは固体となるため抽気により除去することができなくなり、かつスカンジウムメタル生成物の純度が不充分となってしまう。
【0033】
実施例1
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co. から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1400℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル43gを純度99.3wt%(EDXにより測定)で得た。
【0034】
実施例2
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)120gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)44gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1250℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1500℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約25分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル50gを純度99.5wt%(EDXにより測定)で得た。
【0035】
実施例3
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)150gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)52gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1400℃まで加熱して第1の段階の反応を約25分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1500℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約30分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル62gを純度99.2wt%(EDXにより測定)で得た。
【0036】
実施例4
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)150gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)52gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1400℃まで加熱して第1の段階の反応を約25分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を1400℃に保つと共に、反応チャンバー内の圧力を1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約30分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル55gを純度99.1wt%(EDXにより測定)で得た。
【0037】
実施例5
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を900℃まで加熱して第1の段階の反応を約80分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1400℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル41gを純度99.2wt%(EDXにより測定)で得た。
【0038】
実施例6
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1200℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーを昇温して1800℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル39gを純度99.4wt%(EDXにより測定)で得た。
【0039】
実施例7
フッ化スカンジウム(ScF3、Uni-Onward Co.から市販されている)100gおよびアルミニウム粉末(Al、Uni-Onward Co.から市販されている)29gを充分に混合し、るつぼ中に入れた。次いで、そのるつぼを反応チャンバー内に置いた。抽気装置により反応チャンバー内の圧力を1Pa未満まで下げ、加熱装置をオンにして、るつぼ中の原料を1450℃まで加熱して第1の段階の反応を約20分間行った。第1の段階の反応が完了した後、反応チャンバーの温度を下げて1350℃にすると共に、反応チャンバー内の圧力は1Pa未満に保って、第2の段階の反応を約20分間行った。第2の段階の反応が完了した後、加熱装置をオフにし、抽気装置はオンとして動作させ続け、フッ化アルミニウムガスを除去した。次いで、反応チャンバーを室温まで冷却し、スカンジウムメタル40gを純度99.2wt%(EDXにより測定)で得た。
【0040】
開示された方法と物質に各種変更および変化を加えられるということは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示としてみなされるように意図されており、本開示の真の範囲は以下のクレームおよびそれらの均等物によって示される。