(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078431
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】回転プレス機の加圧パンチの状態を評価する方法および回転プレス機
(51)【国際特許分類】
B30B 11/08 20060101AFI20240603BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240603BHJP
B30B 11/02 20060101ALI20240603BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B30B11/08 Z
G01M99/00 Z
B30B11/02 F
B30B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198157
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】10 2022 131 493.6
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513277289
【氏名又は名称】フェッテ コンパクティング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルプ スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ヤニス
(72)【発明者】
【氏名】ペトリー イナ
(72)【発明者】
【氏名】ティーツェン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲス ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
2G024
4E088
【Fターム(参考)】
2G024AD08
2G024BA21
2G024BA27
2G024CA11
2G024DA09
2G024EA11
2G024FA02
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
4E088JJ10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、回転プレス機の加圧パンチの状態を評価する方法に関する。
【解決手段】この回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイドと、パンチ・ガイド間に配置されているダイプレートとを備える。さらに充填装置を備え、粉体材料がダイプレートのキャビティに充填される。回転プレス機は上部圧力ローラと下部圧力ローラとを有する圧力装置を備え、これらはダイプレートのキャビティに粉体材料を圧入するために、上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと相互作用する。この方法は粉体材料を加圧する間に、圧力装置に配置された圧力センサによって上部および/または下部の加圧パンチの圧力推移を測定し、評価装置が測定された圧力の推移の状態解析を行い、それに基づいて上部および/または下部の加圧パンチの状態を個別に評価することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転プレス機の加圧パンチ(14,16)の状態を評価する方法であって前記回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、前記ロータは上部加圧パンチ(14)用の上部パンチ・ガイド(18)と、下部加圧パンチ(16)用の下部パンチ・ガイド(20)と、前記パンチ・ガイド(18,20)間に配置されているダイプレート(10)とを備え、前記加圧パンチ(14,16)は前記ダイプレート(10)のキャビティ(12)と相互作用し、前記回転プレス機はさらに、充填装置(26)を備え、これを用いて加圧される予定の粉体材料が前記ダイプレート(10)の前記キャビティ(12)に充填され、前記回転プレス機は圧力装置(34)を備え、前記圧力装置(34)は上部圧力ローラ(40)と下部圧力ローラ(42)とを有し、これらは前記ダイプレート(10)の前記キャビティ(12)に前記粉体材料を圧入するために、動作中に前記上部加圧パンチ(14)および前記下部加圧パンチ(16)と相互作用するものであって、前記方法は、
?前記粉体材料を加圧する間に、前記圧力装置(34)に配置された圧力センサ(56,60)によって前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)の圧力推移(62,64,66)を測定することと、
?評価装置(52)が、測定された圧力推移(62,64,66)の状態解析を行い、その状態解析に基づいて前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)の状態を個別に評価することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記状態解析が、前記測定された圧力推移(62,64,66)と少なくとも1つの基準圧力推移(62)との比較を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移(62,64,66)の幅を考慮することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移(62,64,66)の最大値の大きさを考慮することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移(62,64,66)の複数の最大値の存在および/または複数の最大値間の距離を考慮することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移(62,64,66)の上昇時点および/または下降時点を考慮することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移(62,64,66)の上昇および/または下降の勾配を考慮することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
評価された加圧パンチ(14,16)の摩耗の増大が検出されると、前記評価装置(52)が警告メッセージを出力することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記警告メッセージが、より摩耗した前記加圧パンチ(14,16)を洗浄および/または再処理するための提案、および/またはより摩耗した前記加圧パンチ(14,16)を新しい加圧パンチ(14,16)に交換するための提案、および/または前記回転プレス機の前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)の組全体を新しい上部および/または下部加圧パンチ(14,16)の組に交換するための提案を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記警告メッセージが、前記より摩耗した加圧パンチ(14,16)と前記回転プレス機の別の加圧パンチ(14,16)との交換を含むことを特徴とする、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記状態解析が多変量データ解析を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記多変量データ解析が主成分分析を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記主成分分析の範囲内において、多数の圧力推移(62,64,66)に対して、前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)の摩耗に関して最大分散を示す少なくとも1つの主成分を特定することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多変量データ解析が多変量回帰法を含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記評価装置(52)が、前記状態解析に基づいて、鏡面の状態および/またはそれぞれ評価された加圧パンチ(14,16)の前記パンチチップの状態、および/またはそれぞれ評価された加圧パンチ(14,16)によって加えられる圧力を評価することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記評価装置(52)が、前記状態解析、特に正規化、平滑化、および/または1次以上の導出の前に、前記測定された圧力推移(62,64,66)のデータ前処理を行うことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記状態解析が機械学習アルゴリズムによって実行されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記評価装置(52)が、前記状態解析の結果を操作者に表示することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記評価装置(52)が、操作者が前記状態解析用のパラメータを設定可能な入力装置を備えることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記上部圧力ローラ(40)に圧力センサ(56)を配置し、前記圧力装置(34)の前記下部圧力ローラ(42)に圧力センサ(60)を配置し、かつ前記圧力センサが前記上部および下部の圧力ローラ(40,42)を通過するときに前記上部および下部の加圧パンチ(14,16)の圧力推移(62,64,66)を測定することを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記圧力装置(34)が、さらに、上部予圧ローラ(36)と下部予圧ローラ(38)を有する予圧装置(34)を備え、前記圧力装置(34)の前記上部予圧ローラ(36)には圧力センサが、前記下部予圧ローラ(38)には圧力センサが配置されており、かつ前記圧力センサが前記上部および下部の予圧ローラ(36,38)を通過するときに前記上部および下部の加圧パンチ(14,16)の圧力推移を測定することを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
回転プレス機であって、前記回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、前記ロータは上部加圧パンチ(14)用の上部パンチ・ガイド(18)と、下部加圧パンチ(16)用の下部パンチ・ガイド(20)と、前記パンチ・ガイド間に配置されているダイプレート(10)とを備え、前記加圧パンチ(14,16)は前記ダイプレート(10)のキャビティ(12)と相互作用し、前記回転プレス機はさらに、充填装置(26)を備え、これを用いて加圧される予定の粉体材料が前記ダイプレート(10)の前記キャビティに充填、前記回転プレス機は圧力装置(34)を備え、前記圧力装置(34)は上部圧力ローラ(40)と下部圧力ローラ(42)とを有し、これらは前記ダイプレート(10)の前記キャビティ(12)に粉体材料を圧入するために、動作中に前記上部加圧パンチ(14)および前記下部加圧パンチ(16)と相互作用する、回転プレス機であって、前記圧力装置(34)に配置されている圧力センサ(56,60)が、前記粉体材料を加圧する間に前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)で圧力推移(62,64,66)を測定するために設けられており、評価装置(52)が、測定された圧力推移(62,64,66)の状態解析を行い、前記状態解析に基づいて前記上部および/または下部の加圧パンチ(14,16)の状態を個別に評価するよう設計されて設けられていることをことを特徴とする、回転プレス機。
【請求項23】
前記回転プレス機、特に前記評価装置を、請求項1から21のいずれか一項による方法を実行するように設計されていることを特徴とする、請求項22に記載の回転プレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転プレス機の加圧パンチの状態を評価する方法に関する。この回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、このロータは上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイドと、このパンチ・ガイド間に配置されているダイプレートとを備える。加圧パンチはダイプレートのキャビティと相互作用する。回転プレス機はさらに、充填装置を備え、これを用いて加圧される予定の粉体材料がダイプレートのキャビティに充填される。回転プレス機は圧力装置を備え、圧力装置は上部圧力ローラと下部圧力ローラとを有し、これらはダイプレートのキャビティに粉体材料を圧入するために、動作中に上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと相互作用する。
【0002】
本発明はまた、回転プレス機に関する。回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、このロータは上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイド、ならびにこのパンチ・ガイド間に配置されているダイプレートとを備える。加圧パンチはダイプレートのキャビティと相互作用する。回転プレス機はさらに、充填装置を備え、これを用いて加圧される予定の粉体材料がダイプレートのキャビティに充填される。回転プレス機は圧力装置を備え、圧力装置は上部圧力ローラと下部圧力ローラとを有し、これらはダイプレートのキャビティに粉体材料を圧入するために、動作中に上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと相互作用する。
【0003】
回転プレス機には、多数の上部および下部の加圧パンチが全体的に設けられており、これらはいずれも1つのダイプレートの1つのキャビティに対になって割り当てられている。回転プレス機の動作中、上部および下部の加圧パンチはダイプレートと共に回転し、これらの軸方向の運動は制御カムによって制御され、上部および下部のパンチ・ガイドによって案内される。回転している間、ダイプレートは回転プレス機のさまざまな装置、すなわち充填装置や圧力装置を通過する。充填装置では、加圧される粉体材料がダイプレートのキャビティに充填され、圧力装置では、粉体材料をたとえば錠剤などのペレットに圧入するために、上部および下部の加圧パンチが上部および下部の圧力ローラによってキャビティに圧入される。圧力装置の後、上部加圧パンチがキャビティから上方に案内され、キャビティ内で製造されたペレットは下部加圧パンチによってダイプレートの上面に押される。たとえばスクレーパによって、ついでペレットはダイプレートから回転プレス機の出力部に掻出され、そこからペレットがさらに処理されるために供給される。
【0004】
回転プレス機は高回転速度で、それに応じて高製造速度で動作する。多数の加圧プロセス の間、加圧パンチは摩耗してくる。特に、パンチヘッドと圧力ローラとの相互作用によって、パンチヘッドの鏡面領域が平坦となる可能性がある。このことは、加圧パンチの機能上の長さに影響するが、また製造プロセスやしたがってペレットの品質にも影響する。
【0005】
加圧パンチの状態は、たいてい目視検査によって評価される。しかし、このような加圧パンチの状態の評価方法は、不正確であり、加圧パンチを評価する操作者に依存する。加圧パンチの状態を評価し、該当する場合にはそれを交換するための適切な客観的基準を定義することは困難である。手作業による検査方法は、多大な時間を費やすことに結びつく。実際のところ、摩耗の増大などによる加圧パンチの不十分な状態は、製造上の問題が発生した場合や製造されたペレットの品質が不十分な場合にのみ、たいてい認識される。また、加圧パンチの圧力から加圧パンチの状態について結論を導くこともすでに提案されている。この目的のために、圧力装置に配置されているロードセルを用いて圧力を計測することが可能である。したがって、すべての加圧パンチの状態をリアルタイムに解析することは今のところ不可能である。
【0006】
国際特許公開第2021/058516号では、それぞれの加圧パンチに一体化されている計測装置を使用した加圧計測装置が提案されており、この計測装置はエネルギ的に自律して機能することを目的としている。これは、回転プレス機のロータの回転全体にわたって物理的性質または化学的性質を連続的に記録することができることを目的としている。というのは、計測装置は回転する加圧パンチに一体化しているため、回転プレス機の一箇所に定置式に配置されていないからである。国際特許公開第2021/058516号に不利として記載されているこの配置もまた、このような方法で避けることを意図しており、この配置では、圧力は圧力装置の圧力ローラで測定され、センサと加圧パンチの間にさらに要素が存在することを意味する。国際特許公開第2021/058516号が説明するのは、これらの中間要素は、強度と剛性が異なるために力の測定の品質に影響することである。
【0007】
しかし、国際特許公開第2021/058516号に記載されているように、個々の加圧パンチを計測装置に装備することは、多大な労力がかかりコストが高くなる。回転プレス機の加圧パンチは、金属、特にステンレス鋼から製造される。これにより、加圧パンチの安定性の望ましくない損失が伴わずに計測装置を加圧パンチに組み込むことは、非常に煩雑になる。同時に、加圧パンチの材質のために、計測装置から測定値を受信する装置への信号の伝達が著しく損なわれる。
【0008】
したがって、説明した先行技術により、本発明の目的は、冒頭に述べたタイプの方法および回転プレス機を提供することであり、これらを用いて、加圧パンチごとに高信頼性の方法で、客観的な基準に従って、特にリアルタイムに、ほとんど設計の手間とコストをかけずに、加圧パンチの状態解析を行うことができる。
【0009】
本発明は、独立請求項1および22によってこの目的を達成する。有利な実施形態は、独立請求項、明細書、および図面に見られる。
【0010】
冒頭に述べたタイプの方法について、本発明は以下のステップによってこの目的を達成する。すなわち、
?粉体材料を加圧する間に、圧力装置に配置された圧力センサによって上部および/または下部の加圧パンチの圧力推移を測定し、
?評価装置が、測定された圧力推移の状態解析を行い、その状態解析に基づいて上部および/または下部の加圧パンチの状態を個別に評価する。
【0011】
冒頭に述べたタイプの回転プレス機に関して、本発明が達成する目的は、圧力装置に配置されている圧力センサが、粉体材料を加圧する間に上部および/または下部の加圧パンチで圧力推移を測定するために設けられており、評価装置が、測定された圧力推移の状態解析を行い、その状態解析に基づいて上部および/または下部の加圧パンチの状態を個別に評価するよう設計されて設けられていることである。
【0012】
本発明に従って設けられているように、かつ/または本発明による方法に使用されているように、回転プレス機の基本的設計は冒頭に述べている。本発明によると、圧力センサが圧力装置に配置されている。圧力センサは、たとえば圧力装置の上部および/または下部の圧力ローラに、または代替として、もし存在するのであれば圧力装置の予圧装置の上部および/または下部の予圧ローラに配置されてもよい。特に、圧力センサは、上部および/または下部の圧力ローラのホルダに、または代替として、上部および/または下部の予力ローラに、特に、圧力(予圧)ローラの調整機構の受容部に配置されてもよい。圧力センサは、たとえば、加圧の間に弾性変形するロードセルとして設計されていてもよく、ついでロードセルは圧力に比例し、かつ測定信号として評価可能な電圧値を生成する。少なくとも1つの圧力センサを用いて、圧力推移が、上部および/または下部の加圧パンチについて、特にすべての上部および/または下部の加圧パンチついて、粉体材料の加圧中に、すなわち加圧パンチが上部および/または下部の圧力ローラ、または代替として上部および/または下部の予圧ローラと接触する間に、測定される。したがって、時間や移動距離にわたって圧力推移が測定される。測定結果は、加圧プロセス中の、特に、加圧パンチが最初に圧力ローラやその代替として予圧ローラに接触してから、この接触が終了するまで、時間や移動距離に対する圧力曲線となる。プロセス中、高頻度で圧力推移が測定され、高頻度で評価装置に送信される。評価装置は、受信した測定結果に基づいて、測定された圧力推移の状態解析を行い、その状態解析に基づいて、上部および/または下部の加圧パンチ、特に上部および/または下部の加圧パンチすべての状態を個別に評価する。したがって、記録された圧力推移は、状態解析の間に評価装置によって個々に分析され、分析された圧力推移に個々に割り当てられた加圧パンチの状態は、これに基づいてそれぞれ評価装置によって個別に評価される。回転プレス機の加圧パンチの状態は、すなわち、回転プレス機の全製造期間を通じてそれぞれ評価可能である。したがって、上部加圧パンチおよび/または下部加圧パンチすべての圧力推移を、特にロータが回転している間繰り返し測定し、加圧パンチの状態を継続的に分析し評価する。圧力推移、評価装置への測定値の転送、および/または状態解析ならびに加圧パンチの評価を、評価装置によってリアルタイムに行うことができる。同時に、加圧パンチの状態を干渉されることなく評価することが可能となる。状態の評価は、いつでも検証可能な客観的評価基準に基づいて再現可能な方法で行われる。したがって、評価は操作者に依存しない。評価は完全に自動的に行うことが可能である。同時に、いずれの場合も加圧パンチに一体化されている計測装置により、冒頭に説明した先行技術に対して、状態評価に関わる設計とコストとの両面での労力を大幅に削減することができる。圧力センサの信号品質は、圧力装置に固定的に配置することによって常に高信頼性で保証される。本発明は、リアルタイムでの加圧パンチの摩耗度を正確に予測することができる。既存のシステムに実装することは簡単であるため、さまざまな製品や回転プレス機に対して簡単な方法で使用することができる。個々の加圧パンチの状態を正確に評価することにより、製造されるペレットの品質特性が持続可能な形で最適化される。プロセスの安定性を高め、回転プレス機の想定外の停止を最小限に抑える。同時に、加圧パンチは、その状態が正確にわかるため、より長期に高信頼性を持って使用可能である。すべての加圧パンチの状態の評価と、評価された加圧パンチの明確な識別とに基づいて、ペレットの品質低下や回転プレス機の想定外の停止を防ぐために、加圧パンチの再ペアリングや洗浄、さらには交換を行うことができる。
【0013】
圧力センサの測定結果は、たとえばマイクロコントローラや高周波入力端子を介して評価装置に転送することができる。評価装置は、回転プレス機の機械コントローラに一体化することが可能である。しかし、評価装置は、たとえば、回転スペースと同じ製造スペース内や、製造スペースから離れた場所など、回転プレス機から独立して配置することもまた可能である。この目的のために、圧力センサの測定データをクラウドに送信し、そこからこのデータを提供してさらに評価することも可能である。また、評価装置をクラウドに統合してもよい。特に、評価装置は、状態解析を実行し、その状態解析に基づいて加圧パンチの状態を評価するためのソフトウェアを含んでいてもよい。
【0014】
一実施形態によると、状態解析が、測定された圧力推移と少なくとも1つの基準圧力推移との比較を含んでいてもよい。その少なくとも1つの基準圧力推移は、たとえば、製造プロセスの開始時またはより早い時点で記録され、良好なペレット品質をもたらすことになった過去の圧力推移であってもよい。 基準圧力推移は、評価装置がその加圧パンチの状態を評価するためにアクセスするデータベースに保存することができる。評価装置は、基準圧力推移に対するそれぞれ測定された圧力推移の偏差、たとえば、以下でより詳細に説明するように、定義された推移の基準の偏差を測定する。評価装置は、偏差度に基づいて、関連する加圧パンチの状態について結論を導き出すことができる。たとえば、基準圧力推移からの測定された圧力推移の信頼性のある偏差の限界値を、評価装置に保存することができる。 限界値を超えると、評価装置は、この加圧パンチの状態を、たとえばより摩耗した加圧パンチとして評価することができる。摩耗は、加圧パンチの材料の摩耗と、加圧パンチに付着した製品の両方によって発生し得る。限界値は、手動で測定することも、経験的に測定することもできる。装着されている加圧パンチの該当するタイプや、回転プレス機で加圧された粉体材料、およびその他の回転プレス機の特性に応じて、個々の限界値を評価装置に保存することができる。
【0015】
別の実施形態によると、評価装置は、状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移の幅を考慮することができる。この点に関してそれぞれ評価された加圧パンチを参照する場合、これはそれぞれ記録された圧力推移を測定した加圧パンチに関するものである。圧力推移の幅は、時間または移動距離に対する記録された圧力の曲線の幅である。たとえば、特に基準圧力曲線に関連する圧力推移の幅の増加は、加圧パンチの摩耗の増大を示している可能性がある。たとえば、摩耗したパンチヘッドを備えた加圧パンチ、特に摩耗または拡大した鏡面は、その鏡面が関連する圧力ローラにより早く衝突するため、圧力曲線の上昇がより早くなる。
【0016】
別の実施形態によると、評価装置は、状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移の最大値の大きさを考慮することができる。この最大値は、結果として時間の経過とともに記録された圧力曲線の最大値である。圧力曲線はまた、たとえば複数のパンチヘッドが同じ圧力ローラに同時に接触していると、最大値が複数ある場合がある。この場合、1つまたは両方、またはすべての最大値を考慮することが可能である。圧力推移の最大値、たとえば基準圧力推移よりも低い最大値の変化は、加圧パンチの摩耗の増大も示しており、特に摩耗したパンチヘッドや摩耗したパンチチップを示す。したがって有効なパンチ長が短くなり、その結果、製造されるペレットの辺長は同じまま、加圧プロセス中の最大圧力が低減される。最大値の時間的位置、または該当する場合には、複数の最大値の時間的位置もまた、状態解析中に、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として考慮することができる。特に、状態評価の範囲内では、評価装置は、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移の複数の最大値の存在および/または複数の最大値間の距離を考慮することができる。隣接する加圧パンチの鏡面間の距離も、摩耗の程度によって異なる場合がある。このことは、たとえば、直接的に連続する加圧パンチの直接的に連続する圧力推移の最大値間の距離の変化につながる可能性がある。この点で、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、隣接する2つの加圧パンチの圧力推移の位置、むしろ最大値間の距離も考慮に入れることができる。
【0017】
別の実施形態によると、評価装置は、状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移の上昇時点および/または下降時点を考慮することができる。評価装置はまた、状態解析の範囲内で、それぞれ評価された加圧パンチの摩耗の基準として、それぞれ測定された圧力推移の上昇および/または下降の勾配を考慮することができる。圧力推移の急勾配または平坦な上昇または下降、および上昇および/または下降が圧力推移内において開始する変化時点は、たとえば、鏡面の拡大、摩耗によるパンチヘッドの半径の変化、パンチ長の短縮、不規則で特に荒いパンチヘッドの表面など、さまざまな摩耗特性を示唆する。
【0018】
評価された加圧パンチの摩耗の増大が検出されると、評価装置は警告メッセージを出力することができる。すでに説明したように、測定された圧力推移と基準圧力推移との間の偏差の限界値は、これを超えると摩耗の増大が検出されるものであるが、たとえば、測定された圧力推移と少なくとも1つの基準圧力推移とを比較するときに定義することができる。評価装置は、警告メッセージを出力する表示装置を備えることが可能である。また、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの別のデバイスに警告を出力することも考えられる。たとえば、操作者が摩耗した1つまたは複数のパンチを検査し、必要に応じてパンチを交換するなど、追加の手順を実行することが可能である。
【0019】
警告メッセージは、より摩耗した加圧パンチを洗浄および/または再処理するための提案、および/またはより摩耗した加圧パンチを新しい加圧パンチに交換するための提案、および/または回転プレス機の上部および/または下部の加圧パンチの組全体を新しい上部および/または下部加圧パンチの組に交換するための提案を含んでいてもよい。上部および/または下部の加圧パンチの組全体は、回転プレス機の動作中に装着されるすべての上部および/または下部の加圧パンチを含む。したがって、たとえば、1つ以上の上部加圧パンチに摩耗が検出された場合には、警告メッセージがすべての上部加圧パンチを交換する提案を含み、かつ/または、1つ以上の下部加圧パンチに摩耗が検出された場合には、警告メッセージが、すべての下部加圧パンチを交換する提案を含むことが可能となる。また、1つ以上の上部加圧パンチまたは1つ以上の下部加圧パンチに摩耗が検出された場合には、警告メッセージがすべての上部および下部の加圧パンチを交換する提案を含むことが可能となる。警告メッセージは、より摩耗した加圧パンチと回転プレス機の別の加圧パンチとの交換、すなわちより摩耗した加圧パンチの新しい組み合わせの提案も含んでいてもよい。これによって、たとえば好ましくない加圧パンチの組み合わせを防ぐことができる。異なる動作提案の基準は、たとえば、回転プレス機のさらなるパラメータ、たとえば製造されたペレットの品質パラメータ、測定圧力の平均値、製造されたペレットの辺長、またはこのようなパラメータの相対標準偏差などに関する圧力曲線の差異であってもよい。
【0020】
別の実施形態によると、状態解析は、多変量データ解析を含んでいてもよい。多変量データ解析によって、圧力推移の複数のパラメータを同時に調べて評価することが可能となる。特に、圧力推移に基づいて、評価することになる加圧パンチの状態に必要な情報は、それに関連しない情報と区別することができる。関連性はないが圧力推移に影響を与える情報の例としては、製造されたペレットの辺長、すなわち製造された錠剤の高さがある。キャビティ内に圧入され配置される粉体材料の量は、当然、圧力曲線、たとえば、圧力曲線の最大値の大きさなどに影響を与える。多変量データ解析を使用することによって、加圧パンチの状態を評価するのに関連する圧力推移の情報のみを特定して使用するという点で、状態の評価を簡素化し、したがって迅速化することができる。
【0021】
具体的に実際的な実施形態によると、多変量データ解析が主成分分析を含んでいてもよい。主成分分析(PCA)は、特に高信頼性の方法で、当面の問題であって、この場合は加圧パンチの状態の評価に関連する測定された圧力推移のデータを特定し、加圧パンチの状態の評価に無関係の圧力推移の情報から当該データを分離するのに使用可能である。別の実施形態によると、主成分分析の範囲内において、多数の圧力推移に対して、上部および/または下部の加圧パンチの摩耗に関して最大分散を示す少なくとも1つの主成分を特定することが可能である。分散が最も大きい主成分には、加圧パンチの状態に関する情報が最も多く含まれ、したがって、特に目下の問題に関して意味をなす。圧力推移に関する情報を少なくとも1つの主成分、たとえば2つや3つの主成分に制限することによって、加圧パンチの摩耗などの加圧パンチの状態や、パンチヘッドやパンチチップなどの加圧パンチの個々の部品についても、データセット、ひいては評価を大幅に簡略化した場合には、高信頼性の方法で評価することが可能である。
【0022】
多変量データ解析はまた、加圧パンチの状態を予測するモデルを作成可能とするために、たとえば部分的最小二乗回帰(PLS/PLSR)法のような多変量回帰法を含んでいてもよい。
【0023】
本発明によると、評価装置は、状態解析に基づいて、特にここで説明されている多変量データ解析方法に基づいて、鏡面の状態および/またはそれぞれ評価された加圧パンチのパンチチップの状態、および/またはそれぞれ評価された加圧パンチによって加えられる圧力を評価することができる。鏡面は、加圧パンチのパンチヘッドの上側にある、一般的に平面であることが知られており、パンチチップとは、加圧パンチの反対側の下面に形成され、ダイプレートのキャビティに突入する部分である。
【0024】
別の実施形態によると、評価装置が、状態解析、特に正規化、平滑化、および/または1次以上の導出の前に、測定された圧力推移のデータ前処理を行うことが可能である。このことによって、状態解析の範囲内で後続のデータ処理を改善し簡素化することが可能となる。
【0025】
状態解析は、機械学習アルゴリズムによって実行可能である。特に、自己学習アルゴリズムを評価装置に格納し、製造からの訓練データおよび/または経験的データに基づいて、評価装置によって加圧パンチの状態の評価基準を継続的に最適化することが可能である。測定された圧力推移と基準圧力推移との偏差の限界値もまた、訓練データや経験的データに基づいて、このタイプの自己学習ソフトウェアによって動作中に最適化可能である。機械学習アルゴリズムは、たとえば、ニューラルネットワークで構成されてもよい。
【0026】
別の実施形態によると、評価装置が、加圧パンチの状態解析や評価の結果を操作者に表示することが可能である。評価装置はまた、操作者が状態解析用のパラメータを設定可能な入力装置を含んでいてもよい。このように、回転プレス機の使用者は、たとえば、少なくとも1つの基準圧力推移から測定された圧力推移の偏差の限界値を入力したり調整したりすることが可能である。表示と入力とを、たとえば評価装置で直接行うことができる。しかし、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどを介したウェブアプリケーションなど、対応するアプリケーションを介した表示や入力も想定できる。
【0027】
別の実施形態によると、圧力装置の上部圧力ローラに圧力センサを配置し、下部圧力ローラに圧力センサを配置し、かつ各圧力センサが上部および下部の圧力ローラを通過するときに上部および下部の加圧パンチの圧力推移を測定する。さらに、圧力装置は、さらに、上部予圧ローラと下部予圧ローラを有する予圧装置を備え、圧力装置の上部予圧ローラには圧力センサが、下部予圧ローラには圧力センサが配置されており、かつ圧力センサが上部および下部の予圧ローラを通過するときの上部および下部の加圧パンチの圧力推移を測定する。冒頭で説明したように、特に、圧力センサは、圧力ローラあるいは代替として予圧ローラのホルダに配置することが可能である。前述の実施形態によって、特に圧力推移を包括的に記録し、加圧パンチの評価を行うことができる。
【0028】
回転プレス機、特に評価装置を、本発明による方法を実行するように設計可能である。したがって、本発明による方法は、本発明による回転プレス機を使用することによって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の例示的実施形態を、図を参照しつつ、以下により詳細に説明する。
【0030】
【
図1】本発明による回転プレス機の、展開したロータの状態を示す模式図。
【
図2】粉体材料のプレス中に、本発明による回転プレス機を使用して記録されたさまざまな圧力推移を示す模式図。
【
図3】本発明により測定された2つの主成分の点値を備えたグラフの模式図。
【
図4】本発明により評価された、回転プレス機の加圧パンチの状態の模式図。
【0031】
特に明記されていない限り、同じ参照記号は図中の同じ対象物を指す。
【0032】
図1に示す回転プレス機は、錠剤を製造するための回転プレス機であり、その中で粉体材料が圧入されて錠剤になる。回転プレス機は、ロータリ・ドライブによって回転式に駆動するロータを備え、ダイプレート10が複数のキャビティ12を有する。キャビティ12は、たとえばダイプレート10にある孔によって形成されてもよい。ロータはさらに、複数の上部加圧パンチ14と下部加圧パンチ16とを備え、これらはダイプレート10と同期して回転する。上部加圧パンチ14は上部パンチ・ガイド18内で軸方向に案内され、下部加圧パンチ16は下部パンチ・ガイド20内で軸方向に案内される。ロータが回転する間の上部加圧パンチ14および下部加圧パンチ16の軸方向運動は、上部制御カム要素22および下部制御カム要素24によって制御される。回転プレス機はさらに、充填装置26を備え、この充填装置26は充填リザーバ28と充填チャンバ30とを含み、これらは充填パイプ32を介して接続されている。このように、本実施例では、粉体材料が重力によって充填チューブ32を介して充填リザーバ28から充填チャンバ30内へ達し、そこから、充填チャンバ30の下面に設けられている充填開口部を介してダイプレート10のキャビティ12内に達する。
【0033】
回転プレス機はさらに、圧力装置34を備える。圧力装置34は、上部予圧ローラ36と下部予圧ローラ38を有する予圧装置、ならびに上部圧力ローラ40および下部圧力ローラ42を有する主圧力装置を備える。さらに、回転プレス機は、排出装置44および掻取装置46を備え、掻取装置46は回転プレス機で製造された錠剤48を回転プレス機から吐出するための吐出装置50まで供給する掻取要素を有する。掻取装置46は、たとえば、下部加圧パンチ16によって搬送された錠剤48を、ダイプレート10から、排出装置44の領域にあるダイプレート10の上面に掻出し、それらを吐出装置50に供給する、好ましくは三日月形の掻取要素を含んでもよい。
【0034】
以下により詳細に説明するように、回転プレス機はさらに、回転プレス機の操作を制御し、かつ本発明による方法を実施するための評価装置52を備える。
【0035】
上部圧力センサ56が、上部圧力ローラ40のホルダ54に配置されている。下部圧力センサ60が、下部圧力ローラ42のホルダ58に配置されている。なお、上部圧力ローラ40の領域または下部圧力ローラ42の領域には、1つの圧力センサのみを配置することも可能である。追加的に、あるいは代替的に、上部予圧ローラ36の領域および/または下部予圧ローラ38の領域に、対応する圧力センサを配置することも可能である。下部および上部の圧力センサ56,60は、たとえば、粉体材料の圧入時に弾性変形するロードセルであってもよく、弾性変形によって圧力に比例した電圧値が出力される。上部および下部の圧力センサ56,60の測定値は、評価装置52に与えられる。この場合、ダイプレート10のキャビティ12に粉体材料を圧入する間、特に加圧パンチ14,16のパンチヘッドが上部および下部の圧力ローラ40,42のそれぞれに当接し始めてから当接し終るまで、上部および下部の加圧パンチ14,16のそれぞれについて上部および下部の圧力センサ56,60を用いて圧力推移が測定される。
【0036】
評価装置52は、測定された圧力推移の状態解析を行い、その状態解析に基づいて上部および下部の加圧パンチ14,16の状態を個別に評価する。このことを、一実施例に基づいて、以下により詳細に説明する。
【0037】
図2は、たとえば上部圧力センサ56によって上部加圧パンチ14で時間の経過とともに記録されたさまざまな圧力推移を示す。ここでは、圧力は時間に対して3つの推移に区分される。第1の圧力推移62は、摩耗していない、特に新しい上部および下部の加圧パンチ14,16を使用して記録されたものである。さらなる圧力推移64は、1対の上部および下部の加圧パンチ14,16が上部および下部の圧力ローラ40,42を通過しながら記録されたものであり、図示の例では、上部加圧パンチ14が摩耗の増大を示しており、特にパンチヘッドの鏡面が摩耗している。
図2の第3の圧力推移66は、1対の上部および下部の加圧パンチ14,16が圧力ローラ40,42を通過したときに記録されたものであり、このようなパンチの対の例では、上部加圧パンチ14と下部加圧パンチ16の両方が摩耗の増大を示しており、特にパンチヘッドの鏡面が摩耗している。
【0038】
圧力推移62,64,66を比較すると、加圧パンチ14,16の摩耗が増大すれば圧力推移の最大値の大きさがより小さくなり、同時に圧力推移の幅が増大することがわかる。特に、圧力推移は、加圧パンチ14,16の摩耗の程度が増大するほど早くに上昇し遅くに下降する。この理由は、たとえば、摩耗したパンチヘッドの場合に鏡面がより早い時点で該当する圧力ローラと接触し、それに応じて、より遅い時点で該当する圧力ローラと接触しなくなるためである。同時に、たとえばパンチヘッドが摩耗しているなどの理由によって、該当する加圧パンチ14,16の有効長が短くなり、したがって圧力の最大値、すなわち圧力曲線の最大は辺長が同じままで減少する。
図2に示す圧力推移62,64,66は例にすぎない。加圧パンチ14,16の摩耗特性に応じて、新たな加圧パンチ14,16の圧力推移から測定された圧力推移の偏差につながるようなさらなる効果が生じ得る。たとえば、圧力推移に複数の最大値が存在することや、圧力推移がより急峻にまたは平坦に上昇および/または下降することは、パンチヘッドの半径の変化、パンチヘッドの不規則な表面、鏡面形状の変化、該当する加圧パンチ14,16の有効長の短縮などの、さらなる摩耗特性を示す場合がある。
【0039】
第1の実施形態によると、評価装置52が記録された圧力推移62,64,66と基準圧力推移とを比較することが可能である。この場合、
図2の圧力推移62は、新規の摩耗していないパンチの対について記録されたものであるが、この基準圧力推移としてたとえば記録可能である。ついで、基準圧力推移62からの記録された圧力推移64,66の特定の偏差の限界値を、たとえば評価装置52に保存可能である。たとえば、基準圧力推移62に対する圧力推移64,66の許容範囲の拡大の限界値を定義することができ、かつ/または基準圧力推移62に対する圧力推移64,66の許容最大減少量の限界値を定義することができる。この限界値は、操作者によってたとえば経験値に基づいて入力可能である。限界値は、該当する回転プレス機と、使用中のパンチと、加圧される錠剤、特に粉体材料と、たとえば辺長について個別に保存可能である。ニューラルネットワークなどを含む機械学習アルゴリズムを使用する評価装置52にソフトウェアを格納し、格納した限界値を継続的にチェックして最適化することも可能である。
【0040】
いずれかの限界値を超えた場合、評価装置52は、たとえば表示装置上や、ソフトウェアを介してコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどに、警告メッセージを出力することが可能である。警告メッセージは、たとえば特定の加圧パンチ14,16の摩耗が増大していることを表示し、たとえば摩耗した加圧パンチ14,16または上部および/または下部の加圧パンチ14,16の組全体を交換するための動作提案を表示することが可能である。回転プレス機の加圧パンチ14,16を相互に交換するための提案として、すなわち好ましくない組み合わせを防ぐために上部および下部の加圧パンチ14,16の新規の組み合わせを見つけるなど、摩耗した加圧パンチ14,16を洗浄または再処理するための動作提案もまた考え得る。
【0041】
記録された圧力推移62,64,66を評価する別の可能性を、
図3に基づいて説明する。この場合、評価装置52は、特に主成分分析を含む多変量データ解析を行う。主成分分析の目的は、記録された多数の圧力推移62,64,66対して、加圧パンチ14,16の摩耗に関する有意な分散を示す主成分を特定すること、すなわち摩耗を決定的にする基準に関して良好に区別することである。
【0042】
図3は、主成分分析の過程で決定された2つの主成分PC-1,PC-2の空間における
図2に示す圧力曲線62,64,66をグラフで表す、いわゆるスコアプロットである。圧力推移62,64,66は点として示されており、いずれもたとえば回転プレス機のロータの複数回転する過程で、対応するパンチの対を複数測定することが基準として行われ、それぞれの場合、複数点が圧力推移62,64,66に従って示されている。この種のスコアプロットでの表現は、2つの点が軸に沿って密に配置されているほどこれらはより類似しているというものである。
【0043】
図3が明示しているのは、摩耗していない新規の上部および下部の加圧パンチ14,16の圧力推移群62と、上部加圧パンチ14の摩耗が増大した上部および下部の加圧パンチ14,16の対の圧力推移点64と、上部および下部の加圧パンチ14,16の両方が摩耗の増大を示すパンチの対の圧力推移点66とが、特に主成分PC-1において著しく異なることである。しかし、主成分PC-2では、このような差異は存在し得ない。
【0044】
したがって、この場合、主成分PC-1は加圧パンチ14,16、特にパンチヘッドの摩耗状態に関する差異を示しており、図示された例ではサンプルの全分散の60.17%を占めていると結論付けることが可能である。このように、主成分PC-2は、加圧パンチ14,16の摩耗状態に直接割り当てることのできない、圧力推移62,64,66の別の差異を示す。たとえば、主成分PC-2は、製造された錠剤の異なるように設定された辺長を説明する可能性がある。このように、多変量データ解析は、たとえば加圧パンチ14,16、特にそのパンチヘッドの摩耗状態を評価するために、圧力推移62,64,66を評価するのに非常に有用となる。したがって、評価装置52は、これを利用して加圧パンチ14,16の状態を評価することも可能である。
【0045】
図4は、それぞれ評価装置52で評価した上部加圧パンチの状態の可能な表示の例を示し、図示する例では、回転プレス機の38個の上部加圧パンチ14が評価され表示されている。パンチの位置ごとに、上部加圧パンチ14の異なるパラメータの状態の評価が表示されている。それぞれのパンチの位置に対する3つのバーは、説明のために
図4の左下に拡大表示されている。いずれも上側バー76はパンチヘッド、特に鏡面の摩耗状態を示している。中央バー78はいずれも、測定された最大圧力の目標値からの偏差を示し、下側バー80はいずれも、たとえば有効長の減少など、加圧パンチ14の異なる幾何学的逸脱を示している。これらの異なる評価パラメータは、たとえば、記録された圧力推移64,66と基準圧力推移62との比較に基づいて決定可能である。したがって、前述のように主成分分析を用いた評価も可能である。
【0046】
図示する例では、バー76および78の拡大表示にて明確に示されているように、第1の限界値68および70と、第2の限界値72および74とがそれぞれ上側バー76と中央バー78に引かれている。該当する摩耗状態が第1の限界値68または70に達すると、評価装置52によって第1の警告が出力される。図示する例では、これは中央バー78の16の位置にある上部加圧パンチ14の場合である。第2の限界値72,74に達すると、評価装置52により、該当する加圧パンチ14の交換、または上部および/または下部の加圧パンチ14,16の組全体の交換を行うようリクエストが出力される。いずれも下側バー80で評価される幾何学的偏差については、いずれの場合もバーの端部に達するとすぐに、評価装置52によって対応する警告メッセージが出力される。
【0047】
図4の表現は、たとえば、評価装置52の表示装置において、あるいはコンピュータ、タブレット、スマートフォンの対応アプリを介して、操作者に対して表示可能である。これは、回転プレス機の動作中に継続的に更新することができるので、操作者は加圧パンチ14,16の摩耗状態の概要を常に把握し、それに応じて対応することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…ダイプレート
12…キャビティ
14…上部加圧パンチ
16…下部加圧パンチ
18…上部パンチ・ガイド
20…下部パンチ・ガイド
22…上部制御カム要素
24…下部制御カム要素
26…充填装置
28…充填リザーバ
30…充填チャンバ
32…充填チューブ
34…加圧装置
36…上部予圧ローラ
38…下部予圧ローラ
40…上部圧力ローラ
42…下部圧力ローラ
44…吐出装置
46…掻取装置
48…錠剤
50…排出装置
52…評価装置
54…ホルダ
56…上部圧力センサ
58…ホルダ
60…下部圧力センサ
62…第1の圧力推移
64…第2の圧力推移
66…第3の圧力推移
68…第1の限界値
70…第1の限界値
72…第2の限界値
74…第2の限界値
76…上側バー
78…中央バー
80…下側バー