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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078435
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】膝関節エンドプロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199301
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 212 768.4
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリー ケンプ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC13
4C097DD01
4C097DD09
4C097SC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膝関節置換術で使用される、改善された膝関節エンドプロテーゼを提供する。
【解決手段】脛骨近位部に取り付けられるように構成された遠位取付部および近位接続部を有する脛骨コンポーネントと、大腿関節コンポーネントと関節嵌合するように構成された近位摺動面および脛骨コンポーネントの近位接続部と接合接続を形成するように構成された遠位嵌合接続部を有する半月板コンポーネントとを有する膝関節エンドプロテーゼにおいて、接合接続を追加的に固定するように構成された螺合接続が存在し、螺合接続は、半月板コンポーネントの長手方向孔に挿入される少なくとも1つのねじ要素と、脛骨コンポーネントに割り当てられ、螺合接続を形成するようにねじ要素をねじ込み可能な少なくとも1つの嵌合ねじ要素とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)であって、
脛骨近位部に取り付けられるように構成された遠位取付部(101、101a、101b)と、近位接続部(102、102a、102b)とを有する脛骨コンポーネント(100、100a、100b)と、
大腿関節コンポーネントと関節嵌合するように構成された近位摺動面(201、201a、201b)と、前記脛骨コンポーネント(100、100a、100b)の前記近位接続部(102、102a、102b)と接合接続を形成するように構成された遠位嵌合接続部(202、202a、202b)とを有する半月板コンポーネント(200、200a、200b)と、を備え、
螺合接続が、前記接合接続を追加的に固定するために設けられて、構成され、
前記螺合接続は、前記半月板コンポーネント(200、200a、200b)の長手方向孔(205、205a、205b)に挿入される少なくとも1つのねじ要素(300、300a、300b)と、前記脛骨コンポーネント(100、100a、100b)に割り当てられ、前記螺合接続を形成するように前記ねじ要素(300、300a、300b)をねじ込み可能な少なくとも1つの嵌合ねじ要素(103、103a、103b)とを備えることを特徴とする、膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項2】
前記長手方向孔(205、205a、205b)が、近位側で前記半月板コンポーネント(200、200a、200b)の近遠位長手方向軸(207、207a、207b)に対して前方に傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項3】
前記長手方向孔(205、205a、205b)が、前記ねじ要素(300、300a、300b)を挿入するため、および/または前記ねじ要素(300、300a、300b)を駆動するツールシャンク(W)を挿入するための挿入開口(206、206a、206b)を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項4】
前記挿入開口(206)は、前記半月板コンポーネント(200)の前方端面(209)に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1)。
【請求項5】
前記挿入開口(206)は、前記近位摺動面(201)の前方縁(210)に対して遠位方向に下方にオフセットして配置されていることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1)。
【請求項6】
前記半月板コンポーネント(200、200a、200b)が前記脛骨コンポーネント(100、100a、100b)から分離した状態において、前記ねじ要素(300、300a、300b)が前記長手方向孔(205、205a、205b)内で係留的に保持されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項7】
前記長手方向孔(205b)が、前記ねじ要素(300b)が係留的に保持される第1の孔部(2051b)と、一端に前記挿入開口(206b)を有し、他端で前記第1の孔部(2051b)に通じる第2の孔部(2052b)とを有することを特徴とする、請求項6に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1b)。
【請求項8】
前記挿入開口(206b)の直径は、前記第1の孔部(2051b)の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項7に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1b)。
【請求項9】
前記挿入開口(206b)の前記直径は、前記第1の孔部(2051b)の前記直径の80%未満、好ましくは60%未満、特に好ましくは50%未満であることを特徴とする、請求項8に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1b)。
【請求項10】
前記第1の孔部(2051b)に、特に前記半月板コンポーネント(200b)に鋳込まれ、かつ/または金属製の挿入スリーブ(600b)が設けられており、その中に前記ねじ要素(300b)が半径方向および軸方向の形状嵌合で保持されることを特徴とする、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1b)。
【請求項11】
前記嵌合ねじ要素(103、103a、103b)がねじ孔(G、Ga、Gb)であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項12】
前記ねじ孔(G、Gb)が、前記脛骨コンポーネント(100、100b)の前記遠位取付部(101、101b)に設けられており、かつ/または、前記脛骨コンポーネント(100b)の近遠位長手方向軸(104b)と同軸に延びることを特徴とする、請求項11に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【請求項13】
前記ねじ孔(Ga)が、前記脛骨コンポーネント(100a)、特に前記遠位取付部(101a)に挿入されたねじ付きスリーブ(500a)内に設けられており、かつ/または、前記脛骨コンポーネント(100、100a)の近遠位長手方向軸(104、104a)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項11に記載の膝関節エンドプロテーゼ(1、1a、1b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨近位部に取り付けられるように構成された遠位取付部および近位接続部を有する脛骨コンポーネントと、大腿関節コンポーネントと関節嵌合するように構成された近位摺動面および脛骨コンポーネントの近位接続部と接合接続を形成するように構成された遠位嵌合接続部を有する半月板コンポーネントと、を有する膝関節エンドプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節エンドプロテーゼは、整形外科の分野でよく知られており、自然な膝関節の人工的代替物として働く。従来の膝関節エンドプロテーゼは、脛骨コンポーネントと半月板コンポーネントとを有する。脛骨コンポーネントは、患者の脛骨近位部に取り付けられるように構成されており、この目的のために、例えば髄内取付シャフトの形態をとり得る遠位取付部を有する。半月板コンポーネントは、大腿関節コンポーネントと摺動的に関節嵌合するための近位摺動面を有する。大腿関節コンポーネントは、自然の大腿骨遠位部、より具体的にはその顆表面であってもよいし、または人工大腿骨コンポーネントであってもよい。膝関節エンドプロテーゼを埋め込む際、半月板コンポーネントは、通常は既に脛骨近位部に取り付けられた状態の脛骨コンポーネントに接続される。この目的のために、脛骨コンポーネントは近位接続部を有し、半月板コンポーネントは相補的な遠位嵌合接続部を有する。接続部と嵌合接続部は、通常はプラグイン接続、ラッチ接続および/またはスナップフィット接続である接合接続を形成するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、先行技術に対して改善された特性を有する、冒頭で述べたタイプの膝関節エンドプロテーゼを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、接合接続を付加的に固定するために螺合接続が設けられて構成されており、螺合接続が、半月板コンポーネントの長手方向孔内に挿入される少なくとも1つのねじ要素と、脛骨コンポーネントに割り当てられ、螺合接続を形成するようにねじ要素が螺合可能な少なくとも1つの嵌合ねじ要素とを有するという点で達成される。本発明による解決策には、接合接続を追加的に固定する効果がある。これにより、接合接続が意図せず外れてしまうことが防止される。膝関節エンドプロテーゼが埋め込まれた状態で接合接続が意図せず外れてしまうと、その機能に悪影響が及んで、患者にかなりの損傷をもたらしてしまい、通常、再手術が必要となる。これらの欠点は、本発明による半月板コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間の追加的な螺合接続によって克服される。螺合接続は、少なくとも1つのねじ要素と少なくとも1つの嵌合ねじ要素とを有する。ねじ要素と嵌合ねじ要素は互いに補完し合う。ねじ要素は半月板コンポーネントに割り当てられている。嵌合ねじ要素は脛骨コンポーネントに割り当てられている。一実施形態では、ねじ要素はねじであり、嵌合ねじ要素は相補的なねじ孔である。「螺合接続」、「ねじ要素」、「嵌合ねじ要素」および「ねじ込み」という用語は、この点で限定的に解釈されるものではない。さらなる実施形態では、螺合接続は、バヨネットロック接続の形態であり、ねじ要素および嵌合ねじ要素は、互いに相補的なバヨネットロック要素の形態をしている。半月板コンポーネントに設けられた長手方向孔は、ねじ要素を受け入れるように構成されている。長手方向孔は、少なくとも1つの近遠位方向成分を有する孔軸に沿って軸方向に延びている。一実施形態では、孔軸は前後方向成分をさらに有する。さらなる実施形態では、孔軸は、代替的にまたは追加的に、内外側方向成分を有する。別の表現をすると、長手方向孔は、最も広い意味で、半月板コンポーネントを上から下へ、すなわち、半月板コンポーネントの近位上面と遠位下面との間を延び、長手方向の伸長は、必ずしも半月板コンポーネントの近遠位長手方向軸と平行に延びる必要はない、あるいは同軸に延びる必要はない。長手方向孔は貫通孔であることが好ましい。脛骨コンポーネントは金属材料でできていることが好ましい。半月板コンポーネントはポリマー材料でできていることが好ましい。ねじ要素は金属材料でできていることが好ましい。一実施形態では、嵌合ねじ要素は、脛骨コンポーネントに直接設けられる、かつ/または脛骨コンポーネントの一部によって形成される。さらなる実施形態では、嵌合ねじ要素は、別体のコンポーネントであり、かつ/または、別体のコンポーネントの一部によって形成され、別体のコンポーネントは、少なくとも埋め込まれた状態で脛骨コンポーネントに接続される。
【0005】
本明細書で使用される位置および方向の呼称は、患者の身体に関するものであり、この点で、従来の解剖学的意味に従って理解されるべきである。したがって、「前方」は前部または前方側を意味し、「後方」は後部または後方側を意味し、「内側」は内側または内方側を意味し、「外側」は外側または外方側を意味し、「近位」は身体の中心に向かうことを意味し、「遠位」は身体の中心から離れることを意味する。さらに、「近遠位」は、近位-遠位軸に沿うこと、好ましくは、近位-遠位軸に平行であることを意味し、「前後方」は、前方-後方軸に沿うこと、好ましくは、前方-後方軸に平行であることを意味し、「内外側」は、内側-外側軸に沿うこと、好ましくは、内側-外側軸に平行であることを意味する。前記軸は、互いに対して直交するように配置されており、もちろん、患者の解剖学的構造に関係ないX軸、Y軸およびZ軸に関連して理解されてもよい。例えば、近遠位軸は、代替的にZ軸と表記されることもある。内外側軸はY軸と表記されることもある。前後方軸はX軸と表記されることもある。呼称をより明瞭かつ簡単にするために、以下の文章では主に解剖学的位置および方向の呼称を使用する。
【0006】
一実施形態では、長手方向孔は、近位方向側で半月板コンポーネントの近遠位長手方向軸に対して前方に傾斜している。つまり、長手方向孔の孔軸が前傾して延びているとうことである。その結果、長手方向孔への術中のアクセスが改善される。前方傾斜していることによって、大腿関節コンポーネントが長手方向孔を隠してしまう事態が回避される。従って、例えば、ねじ要素を挿入したり、ねじ要素を駆動するツールシャンクを適用したりするために、外科医が良好に長手方向孔にアクセスすることができる。
【0007】
一実施形態では、長手方向孔は、ねじ要素を挿入するためおよび/またはねじ要素を駆動するツールシャンクを挿入するための挿入開口を有する。挿入開口は、長手方向孔の一端に配置されている。挿入開口は半月板コンポーネントの近位側および/または前方側に配置されることが好ましい。挿入開口によって、特に螺合接続をさらに容易に生じさせることが可能となる。
【0008】
一実施形態では、挿入開口は半月板コンポーネントの前方端面に配置されている。これにより、大腿関節コンポーネントが挿入開口を覆ってしまう事態が回避される。従って、人工膝関節置換術中でも、挿入開口が容易に見え、術者がアクセスしやすい。その結果、外科医は、ねじ要素および/またはツールシャンクを挿入開口に特に容易に挿入することができる。
【0009】
一実施形態では、挿入開口は、摺動面の前方縁に対して遠位下方にオフセットして配置されている。つまり、外科医が特に容易に挿入開口を見て、アクセスできるということである。摺動面の前方縁の下方に配置されることにより、挿入開口が大腿関節コンポーネントによって隠されてしまう事態が回避される。これにより、外科医は、ねじ要素を駆動するツールシャンクまたはねじ要素自体を挿入開口に特に容易に挿入することができる。
【0010】
一実施形態では、半月板コンポーネントが脛骨コンポーネントから分離した状態において、ねじ要素が長手方向孔内に係留的に保持される。係留的保持により、半月板コンポーネントが脛骨コンポーネントに取り付けられる間に、ねじ要素がうっかり長手方向孔から脱落してしまわない。これにより、特に簡単で安全な取り扱いが可能になる。さらに、患者の安全性が向上する。ねじ要素の少なくとも1つの頭部が、長手方向孔内に係留的に保持されることが好ましい。頭部は、ツールシャンクの相補的な駆動形状を受容する凹んだ駆動形状を有することが好ましい。係留的保持のために、ねじ要素は、好ましくは、長手方向孔内で半径方向および/または軸方向に保持される。ねじ要素の係留的保持は、膝関節エンドプロテーゼの製造中に予め確立されることが好ましい。したがって、ねじ要素は半月板コンポーネントに予め係留的に取り付けられていると言うこともできる。
【0011】
一実施形態では、長手方向孔は、ねじ要素が係留的に保持される第1の孔部と、一端に挿入開口を有し、他端で第1の孔部へ通じる第2の孔部とを有する。ねじ要素、好ましくはその頭部は、半径方向および/または軸方向の形状嵌合で第1の孔部に保持される。第1の孔部は、ねじ要素、好ましくはその頭部と寸法的に合っていることが好ましい。本発明のこの実施形態では、挿入開口は、好ましくは専ら、前述のツールシャンクの挿入のために設計されている。ねじ要素は、好ましくは膝関節エンドプロテーゼの製造中には既に、第1の孔部に導入されて予め係留的に取り付けられている。第1の孔部の一端は第2の孔部に通じていることが好ましい。第1の孔部は、他端において、取付開口を有することが好ましい。ねじ要素は、好ましくは取付開口を介して、係留的に取り付けられる。好ましくは、長手方向孔は、一端に挿入開口を有し、他端に取付開口を有する。
【0012】
一実施形態では、挿入開口の直径は、第1の孔部の直径よりも小さい。これは、本発明の特に好ましい実施形態である。挿入開口の直径が比較的小さいことにより、膝関節エンドプロテーゼの使用中に、患者への組織刺激や関連する損傷を回避することができる。挿入開口の直径は、第1の孔部の直径、ひいてはねじ要素の直径、特にその頭部の直径に対して小さい。したがって、挿入開口の直径が小さいことによって、ねじ要素、特に頭部が少なくともある部分において覆われるとも言える。この覆いによって、前述の組織刺激が防止される。
【0013】
一実施形態では、挿入開口の直径は、第1の孔部の直径の80%未満、好ましくは60%未満、特に好ましくは50%未満である。上記の値が有利であることが証明されている。
【0014】
一実施形態では、第1の孔部には、特に半月板コンポーネントに鋳込まれた、かつ/または金属製の挿入スリーブが設けられており、その中にねじ要素が半径方向および軸方向の形状嵌合で保持される。ねじ要素、好ましくはその頭部は、挿入スリーブの長手方向軸の少なくとも一方向、好ましくは両方向において、長手方向軸に沿って挿入スリーブ内に力嵌合で保持される。挿入スリーブによって、ねじ要素を容易に半月板コンポーネントへ係留的に取り付けることができる。挿入スリーブが金属製である場合、ねじ要素から半月板コンポーネントへ螺合接続の力を特に確実に伝達することができる。これは、特に、半月板コンポーネントがポリマー材料でできている場合に有利である。
【0015】
一実施形態では、嵌合ねじ要素はねじ孔である。ねじ孔は、脛骨コンポーネントに直接設けられていてよい。あるいは、ねじ孔は、脛骨コンポーネントに固定的に接続される別体のコンポーネントに設けられていてもよい。ねじ孔は、長手方向孔と同軸に延びる。
【0016】
一実施形態では、ねじ孔は、脛骨コンポーネントの取付部に設けられており、かつ/または、脛骨コンポーネントの近遠位長手方向軸と同軸に延びる。これにより、特に容易で費用効果の高い製造が可能になる。
【0017】
一実施形態では、ねじ孔は、脛骨コンポーネント、特に取付部に挿入されたねじ付きスリーブに設けられており、かつ/または脛骨コンポーネントの近遠位長手方向軸に対して傾斜している。この実施形態は、特に、長手方向孔が、半月板コンポーネントおよび/または脛骨コンポーネントの近遠位長手方向軸に対して前方に傾斜している場合、より容易な製造を可能にする。これと同軸の傾斜を有する細長いねじ孔は、比較的高い製造費で取付部に直接設けることしかできない。ねじ付きスリーブは、この点での簡略化を可能にする。取付部は、ねじ付きスリーブが固定的に挿入される中央孔を有する。中央孔は、脛骨コンポーネントの近遠位長手方向軸に平行であることが好ましい。
【0018】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲および図面によって例示される本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明から理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による膝関節エンドプロテーゼの一実施形態の斜視分解図を示す。
図2図1の膝関節エンドプロテーゼの長手方向断面の概略図および若干の斜視図を示す。
図3】本発明による膝関節エンドプロテーゼのさらなる実施形態の長手方向断面の概略図を示す。
図4】本発明による膝関節エンドプロテーゼのさらなる実施形態の概略斜視図を示す。
図5図4の膝関節エンドプロテーゼの長手方向断面の概略図および若干の斜視図を示し、膝関節エンドプロテーゼの個々の部品はまだ完全に互いに接合されていない。
図6】概略的に示されたツールシャンクとともに、図4および図5の膝関節エンドプロテーゼの長手方向断面の概略図および若干の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および図2によれば、膝関節エンドプロテーゼ1は、膝関節置換術で使用されるために提供され、脛骨コンポーネント100および半月板コンポーネント200を有する。
【0021】
脛骨コンポーネント100は、遠位取付部101と近位接続部102とを有する。遠位取付部101は、脛骨近位部に取り付けられるように構成されている。遠位取付部101は、当業者に公知の方法で、脛骨近位部の所定の位置にねじ込み可能または固定可能である。図示の実施形態では、遠位取付部は近遠位方向に延びる取付シャフトの形態をしている。近位接続部は、半月板コンポーネント200と接続するためのものである。脛骨コンポーネント100は、脛骨プラトーとも呼ばれることがある。
【0022】
半月板コンポーネント200は、近位摺動面201を有する。近位摺動面201は、大腿関節コンポーネントと関節嵌合するように構成されている。大腿関節コンポーネントは、膝関節エンドプロテーゼ1の構成部品であり得る人工大腿骨コンポーネントであってよい。代わりに、膝関節エンドプロテーゼ1が自然の膝関節を部分的にのみ置換する場合には、大腿関節コンポーネントは自然の大腿骨遠位部であってもよい。本実施例の近位摺動面201は、2つの摺動面部203、204を有する。摺動面部203、204は、内外側方向で互いに離間しており、外側摺動面部203および内側摺動面部204とも呼ばれ得る。半月板コンポーネント200は、遠位嵌合接続部202をさらに有する。遠位嵌合接続部202と近位接続部102とは、互いに補完し合い、接合接続を形成するように構成されている。本実施形態では、嵌合接続部202を接続部102に係止することができ、したがって、前述の接合接続はラッチ接続である。図示されていない実施形態では、接合接続は、プラグイン接続および/またはクランプ接続である。接合接続の形態および機能に関するさらなる詳細は、本発明に関して必須ではない。したがって、この点に関するさらなる説明は省略する。
【0023】
接続部102と嵌合接続部202との間の接合接続を追加的に固定するために、螺合接続が設けられる。
【0024】
螺合接続は、ねじ要素300と嵌合ねじ要素103とを有する。ねじ要素300は、半月板コンポーネント200に割り当てられている。嵌合ねじ要素103は、脛骨コンポーネント100に割り当てられており、図示の実施形態では、以下で説明される脛骨コンポーネント100の一部で形成されている。さらなる実施形態では、嵌合ねじ要素は、別体の部品で形成されてもよい。ねじ要素300を受け入れるために、半月板コンポーネント200は、図示の実施形態では挿入開口206を有する長手方向孔205を備える。図示の実施形態では、挿入開口206は、ねじ要素300の挿入に役立つ。
【0025】
半月板コンポーネント200を脛骨コンポーネント100に取り付けるには、まず、嵌合接続部202を接続部102に係止する。これにより、前述の接合接続が形成される。接合接続を追加的に固定するために、半月板コンポーネント200の長手方向孔205に挿入されたねじ要素300が、嵌合ねじ要素103にねじ込まれる。
【0026】
図示の実施形態では、ねじ要素300はねじSであり、嵌合ねじ要素103はねじ孔Gである。しかしながら、このような設計は必須ではない。代わりに、螺合接続がバヨネットロックのように形成されてもよい。
【0027】
半月板コンポーネント200は通常、術中に、脛骨に既に取り付けられた状態の脛骨コンポーネント100に取り付けられる。手術中でも螺合接続に容易にアクセスできるように、長手方向孔205は、近位側で半月板コンポーネント200の近遠位長手方向軸207に対し前方に傾斜している。別の表現をすると、長手方向孔205の孔軸208は、挿入開口206が半月板コンポーネント200の前方端面209に配置されるように、近遠位長手方向軸207に対して斜めに配向されている。
【0028】
図2によって示される取付状態では、近遠位長手方向軸207は、脛骨コンポーネント100の近遠位長手方向軸104と同軸に配置されている。
【0029】
摺動面201は前方縁210を有する。挿入開口206は、前方縁210に対して遠位方向にオフセットして配置されている。挿入開口206が前方端面209上および/または前方縁210の下側に配置されていることによって、螺合接続へのアクセスが特に容易であるという効果がある。
【0030】
図示の実施形態では、長手方向孔205および/またはその孔軸208は、膝関節エンドプロテーゼ1の近遠位方向および前後方方向の広がりを有する中央長手方向平面に配置されている。本例では、長手方向孔205および/または孔軸208は、近遠位長手方向軸207から前方に、本例では約60°傾斜している。さらなる実施形態では、傾斜角度は、例えば10°から80°の間である。
【0031】
図示の実施形態では、ねじ孔Gの形態である嵌合ねじ要素103は、脛骨コンポーネント100に直接設けられている。ねじ孔Gは、長手方向孔205と同軸に配置されることが理解されよう。図2を参照すると、孔軸208が、長手方向孔205の長手方向軸とねじ孔Gの長手方向軸の両方を示している。この点で、長手方向孔205の傾斜に関する記述は、ねじ孔Gの傾斜およびねじ要素300の傾斜にも準用される。図示の実施形態では、ねじ孔Gは貫通孔であり、近位接続部102から遠位方向かつ後方方向に脛骨コンポーネント100、特にその取付部101を通って延びている。
【0032】
その他の点では、ねじSは、頭部301と、シャフト部302と、駆動形状303とを有する原理的に当業者に知られている形状を有する。駆動形状303は、頭部301において凹んでおり、ツール面とも呼ぶことができる。駆動形状303は、ツールおよび/またはツールシャンクの相補的な駆動形状と相互作用するように構成されている。より詳細には示されていないが、シャフト部302には、ねじ孔Gと相補的な設計を有し、ねじ孔Gにねじ込まれるねじ山が設けられている。図2を参照すると、挿入開口206を介して頭部301にアクセスすることができる。
【0033】
図1および図2による実施形態では、膝関節エンドプロテーゼ1は、半月板コンポーネント200、より具体的にはその長手方向孔205に挿入される圧縮スリーブ400をさらに有する。圧縮スリーブ400は、特に長手方向孔205を機械的に補強する役割を果たし、ねじ要素300と直接相互作用する。本実施例の半月板コンポーネント200はポリマー材料から製造されている。圧縮スリーブ400は金属材料で作られている。圧縮スリーブ400は必須ではないことが理解されるであろう。したがって、さらなる実施形態では、このような圧縮スリーブは備えられていない。
【0034】
図3図6は、本発明のさらなる実施形態である膝関節エンドプロテーゼ1a、1bを示す。繰り返しを避けるために、図1図2による膝関節エンドプロテーゼ1に対する膝関節エンドプロテーゼ1a、1bの本質的な相違点のみを以下に詳細に説明する。図1および図2による膝関節エンドプロテーゼ1に関する開示は、特に記載がない限り、膝関節エンドプロテーゼ1a、1bにも準用される。
【0035】
図3による膝関節エンドプロテーゼ1aは、ねじ孔Gaが脛骨コンポーネント100aに直接設けられていない点で、図1および図2による膝関節エンドプロテーゼ1と本質的に異なる。代わりに、ねじ孔Gaはねじ付きスリーブ500aに形成されている。ねじ付きスリーブ500aは、嵌合ねじ要素103aとして機能する。ねじ付きスリーブ500aは、脛骨コンポーネント100aに固定的に接続されている。本実施例のねじ付きスリーブ500aは、取付部101aの中央孔Zaに導入され、固定的に接続されている。中央孔Zaは、脛骨コンポーネント100aの近遠位長手方向軸104aと同軸に配向されている。対照的に、ねじ孔Gaは、近遠位長手方向軸104aに対して斜めに配置されている。より具体的には、ねじ孔Gaは、図1および図2による膝関節エンドプロテーゼ1に関して既に説明したように、前方へ傾斜している。ねじ付きスリーブ500aは、特に、より容易な製造を可能にする。具体的には、脛骨コンポーネント100aに傾斜した孔を直接設けることを省略することが可能である。
【0036】
図1および図2による膝関節エンドプロテーゼ1に対する別の相違点は、膝関節エンドプロテーゼ1aが圧縮スリーブ400を有さないことである。
【0037】
さらに、長手方向孔205aおよび/または孔軸208aは傾斜角度が小さい。傾斜角度は約10°である。前方への傾斜が小さいので、図1および図2による実施形態とは対照的に、挿入開口206aは、摺動面201aの前方縁210aの下には配置されない。
【0038】
図4図6による膝関節エンドプロテーゼ1bは、半月板コンポーネント200bが脛骨コンポーネント100bから分離した状態において、ねじ要素300bが長手方向孔205b内で係留的に保持されるという点で本質的に異なる。これにより、ねじ要素300bがうっかり長手方向孔205bから脱落してしまうことを防止することができる。これにより、脛骨コンポーネント100bへの取り付け前および取り付け中に、半月板コンポーネント200を容易かつ安全に取り扱うことができる。
【0039】
係留的保持のために、ねじ要素300bは、半径方向および軸方向の形状嵌合で長手方向孔205bに保持される。本実施例では、軸方向の形状嵌合によって、ねじ要素300aの可動性を制限することができる。
【0040】
半月板コンポーネント200bを脛骨コンポーネント100bに取り付けるには、まず、図1および図2による実施形態に関して既に説明した接合接続を接続部102bと嵌合接続部202bとの間に形成する。その後、ねじ要素300bが嵌合ねじ要素103bにねじ込まれる。そのために、図6に概略的に示されているツールシャンクWが、挿入開口206bを介して長手方向孔205b内へ挿入され、駆動形状303bと係合させられる。ツールシャンクWを回転させることにより、回転運動とトルクとがねじ要素300bに伝達され、ねじ要素300bが嵌合ねじ要素103bにねじ込まれる。
【0041】
図示の実施形態では、長手方向孔205bは、第1の孔部2051bおよび第2の孔部2052bを有する(図6)。ねじ要素300bは、第1の孔部2051b内で係留的に保持される。第2の孔部2052bは、一端に挿入開口206bを有し、他端で第1の孔部2051bに通じている。本実施例では、2つの孔部2051b、2052bは、異なる直径を有する。第2の孔部2052bの直径(参照符号なし)は、第1の孔部2051bの直径(参照符号なし)よりも小さい。したがって、第2の孔部2052bの一端に配置されている挿入開口206bも、第1の孔部2051bよりも小さい直径を有する。第1の孔部2051bの直径は、受容するねじ要素300bと寸法的に合っており、ねじ要素300bの頭部301bの外径(参照符号なし)よりもわずかに大きい。ねじ要素300bの直径に対して挿入開口が小さくなっていることにより、周囲の身体組織への刺激、ひいては患者への関連する損傷が回避される。
【0042】
図示の実施形態では、挿入開口206bおよび/または第2の孔部2052bの直径は、第1の孔部2051bの直径の約50%である。
【0043】
ねじ要素300bを長手方向孔205b内に係留的に保持するために、本例では、挿入スリーブ600bが存在する。挿入スリーブ600bは、第1の孔部2051bを形成する。別の表現をすれば、第1の孔部2051bに挿入スリーブ600bが設けられていると言うこともできる。挿入スリーブ600bは、金属材料でできており、半月板コンポーネント200bに固定的に挿入されている。本例では、挿入スリーブ600bはポリマー製の半月板コンポーネント200bに鋳込まれている。しかし、このような形態は必須ではない。例えば、挿入スリーブ600bは、当業者に公知の別の方法で、半月板コンポーネント200bに固定的に接続されてもよい。
【0044】
ねじ要素300bは、限られた範囲で軸方向に動けるように、挿入スリーブ600bに半径方向に形状嵌合して保持される。このため、挿入スリーブ600bは、ねじ要素300bの頭部301bを遠位にてストップさせるように機能する半径方向カラー601bを有する。半径方向カラー601bは、挿入スリーブ600bの遠位側に配置されている。より詳細には示されないが、シャフト部302bの長さは、半径方向カラー601bによって形状嵌合で制限されるねじ要素300bの端部位置において、そのねじ山が嵌合ねじ要素103bと軸方向に十分に重なって螺合することができるように寸法決めされている。
【0045】
図4図6による実施形態では、嵌合ねじ要素103bは、ねじ孔Gbの形態をしている。ねじ孔Gbは、脛骨コンポーネント100bに直接、かつその中央孔Zbと同軸に設けられている。中央孔Zbは、取付部101bを通って延び、貫通孔の形態をしており、一端(近位端)にねじ孔Gbを有する。ねじ孔Gb、したがってねじ要素300bは、近遠位長手方向軸104bと同軸である。したがって、孔軸208bも同様に同軸である。これは、少なくとも第1の孔部2051bの領域において当てはまる。本例の第2の孔部2052bは、前方傾斜がわずかに小さい(図6参照)。この前方傾斜により、挿入開口206bへのアクセスが改善され、ねじ要素300bを駆動するツールシャンクWの挿入が容易になる。図示されていない実施形態では、長手方向孔は、前方傾斜していない、かつ/または、半月板コンポーネントの近遠位長手方向軸に平行ではない。
【0046】
膝関節エンドプロテーゼ1、1a、1bの個々の特徴を互いに組み合わせて、さらなる実施形態を作り出してもよいことが理解されるであろう。例えば、図1図2および図3による膝関節エンドプロテーゼ1、1aの各々に、ねじ要素の係留的保持を設けてもよい。逆に、膝関節エンドプロテーゼ1bに、(特定の部分だけでなく完全に)前方傾斜した長手方向孔を設けてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】