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特開2024-78441細胞アッセイの改善または細胞アッセイに関連する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078441
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】細胞アッセイの改善または細胞アッセイに関連する改善
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240603BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240603BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199747
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】2217896.6
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】523446859
【氏名又は名称】スリーブレイン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】3Brain AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ, マッチョーネ
(72)【発明者】
【氏名】マウロ, ガンドルフォ
(72)【発明者】
【氏名】キリアン, イムフェルト
(72)【発明者】
【氏名】レアル, イシャー
(72)【発明者】
【氏名】ディアヌ, ルドロワ
(72)【発明者】
【氏名】サラ, フーブ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029GA08
4B029GB01
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善した、細胞培養保持インサート、細胞培養保持インサートアセンブリ、細胞培養配置インサート、及び細胞培養配置インサートアセンブリを提供する。
【解決手段】三次元生物サンプルを細胞培養容器中に保持することを目的とした細胞培養保持インサート10は、剛性のインサート本体12を含み、当該インサート本体は、使用時に細胞培養保持インサート10を細胞培養容器に取り外し可能に固定するための係合形成部14を少なくとも1つ有する。細胞培養保持インサート10は、インサート本体12と連結される保持要素18も含む。保持要素18は、使用時に、細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能な遠位端28を有する。遠位端28の全体は弾力的に変形可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器内に三次元生物サンプルを保持するための細胞培養保持インサートであって:
使用時に前記細胞培養保持インサートを細胞培養容器に取り外し可能に固定するための係合形成部を少なくとも1つ有する剛性のインサート本体;および
前記インサート本体に連結された保持要素であって、使用時に細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能な遠位端を有し、前記遠位端の全体が弾力的に変形可能である、保持要素、を備える、細胞培養保持インサート。
【請求項2】
前記保持要素の前記遠位端は、自身に従属する1つ以上の保持壁を有する平面保持面であり、または平面保持面を含む、請求項1に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項3】
前記平面保持面が、自身を通過する複数の導管を含む、請求項2に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項4】
少なくとも1つの保持壁が、自身を通る流体導管を1つ以上含む、請求項2または請求項3に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項5】
少なくとも1つの保持壁が、テーパー部分を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項6】
少なくとも1つの保持壁が、断面の厚さが減少した領域を1つ以上含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項7】
前記平面保持面が、実質的に平坦である、請求項2~6のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項8】
前記平面保持面が、凸状または凹状の断面外形を有する、請求項2~6のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項9】
前記平面保持面が、断面の厚さが減少した領域を1つ以上含む、請求項7または請求項8に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項10】
前記保持要素が、弾力的に変形可能な材料から形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項11】
前記インサート本体が、前記保持要素の前記遠位端と連結した流体導管を少なくとも1つ含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサート。
【請求項12】
互いにしっかりと固定された、請求項1~11のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサートを複数含む、細胞培養保持インサートアセンブリ。
【請求項13】
前記複数の細胞培養保持インサートがそれぞれ、互いに一体化して形成されたインサート本体を有する、請求項12に記載の細胞培養保持インサートアセンブリ。
【請求項14】
細胞培養容器内に三次元生物サンプルを配置するための細胞培養配置インサートであって、前記細胞培養配置インサートが剛性のインサート本体を備え、前記インサート本体が、
使用時に前記細胞培養配置インサートを細胞培養容器に取り外し可能に固定するための少なくとも1つの係合形成部、
使用時に細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能な、前記インサート本体の遠位端まで前記インサート本体を通り延在するテーパー配置導管であって、前記テーパー配置導管は、使用時に、細胞培養容器内に配置された三次元生物サンプルを、前記細胞培養容器の前記ウェル底部の所望の位置に向けて勢いを付けて移動させる、テーパー配置導管、および
前記配置導管を前記インサート本体の外部と流体連結させるために、前記インサート本体を通って延在する、少なくとも1つの流体導管を有する、細胞培養配置インサート。
【請求項15】
互いにしっかりと固定された、請求項14に記載の細胞培養配置インサートを複数含む、細胞培養配置インサートアセンブリ。
【請求項16】
前記複数の細胞培養配置インサートがそれぞれ、互いに一体化して形成されたインサート本体を有する、請求項15に記載の細胞培養配置インサートアセンブリ。
【請求項17】
少なくとも1つのウェルを有する細胞培養容器を含む細胞アッセイであって、前記ウェルまたは各ウェルは、請求項1~11のいずれか1項に記載の細胞培養保持インサートに関連付けられ、前記細胞培養保持インサートまたはそれぞれの各細胞培養保持インサートは、前記細胞培養容器に取り外し可能に固定される、細胞アッセイ。
【請求項18】
複数のウェルを有する細胞培養容器を含み、前記複数のウェルは、請求項12または請求項13に記載の細胞培養保持インサートアセンブリと関連付けられる、請求項17に記載の細胞アッセイ。
【請求項19】
前記ウェルまたは各ウェルと対応する細胞培養保持インサートとの間に挟まる、請求項14に記載の細胞培養配置インサートをさらに含む、請求項17または請求項18に記載の細胞アッセイ。
【請求項20】
複数のウェルを有する細胞培養容器を含み、前記細胞アッセイは、前記複数のウェルとそれぞれの細胞培養保持インサートとの間に挟まる請求項15に記載の細胞培養配置インサートアセンブリを有する、請求項19に記載の細胞アッセイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養保持インサート、細胞培養保持インサートアセンブリ、細胞培養配置インサートおよび細胞培養配置インサートアセンブリ、ならびにそれらインサートおよびインサートアセンブリを含む細胞アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞をベースとしたアッセイ、すなわち細胞アッセイは、ライフサイエンス研究やバイオ製品の製造において、重要な実験ツールである。それらアッセイは細胞培養法に基づいており、生きた細胞をインビトロで増殖させ、健康な細胞と罹患細胞の両方の生化学的および生理学的な評価を行うためのモデルシステムとして使用される。そのような三次元的な生物サンプルは1つ以上の死んだ細胞を含む場合があり、または微小組織、スフェロイド、オルガノイド、腫瘍様組織、アセンブロイド、生検であることもあれば、それらを含むこともある。また、その中に単一細胞または複数種細胞を含むゲルビーズを含む場合もある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第一の態様によれば、細胞培養容器内に三次元生物サンプルを保持するための細胞培養保持インサートが提供され、当該細胞培養保持インサートは、以下を備える:
使用時に細胞培養保持インサートを細胞培養容器に取り外し可能に固定するための係合形成部を少なくとも1つ有する剛性インサート本体;および
インサート本体に連結された保持要素であって、使用時に細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能な遠位端を有し、当該遠位端の全体が弾力的に変形可能である、保持要素。
【0004】
弾力的に変形可能な遠位端を有することにより、保持要素は、1つ以上の三次元生物サンプルの様々な形状に対応しながら、サンプルまたは各サンプルを細胞培養容器内のウェル底部に勢いを付けて接触させることができ、それにより、各サンプルを損なうことなく、細胞培養容器の関連するウェル内にサンプルまたは各サンプルを所望のように保持することができる。このようにサンプルまたは各サンプルを保持することで、ウェル内にサンプルまたは各サンプルが良好に固定され、サンプルが逸脱することなく細胞培養容器を安全に移動させることができる。
【0005】
加えて、全体が弾力的に変形可能な遠位端を有することによって、遠位端のどの部分にもサンプルまたは各サンプルを良好に対応させることが可能となり、ウェル底部のどの位置にサンプルが配置されているかに関係なく、サンプルを容易に、および確実に保持することが可能となる。すなわち、当該サンプルはウェル底部の完全に中心に配置される必要はなく、本発明の細胞培養保持インサートによって容易に、および確実に保持される。
【0006】
全体が弾力的に変形可能な遠位端を有することによる、さらなる利点は、細胞培養容器の対応するウェルのウェル底部のいずれかの場所に配置された1つ以上の様々な形状の三次元生物サンプルに対応できることだけではなく、当該遠位端は、微細な構造の底部を有する細胞と合わせて、例えば平坦な底部を有するウェル、または丸底のウェルなどの様々な形状のウェルに対応することができる。すなわち、別手段により均一な表面から延在する形状、または均一な表面内へと窪む形状を1つ以上含むウェル底部にも対応できることである。
【0007】
好ましくは、保持要素の遠位端は、自身に従属する1つ以上の保持壁を有する、平面保持面であり、または平面保持面を含む。
【0008】
そのような保持面と、1つ以上の保持壁の組み合わせは、所与のサンプルに対応するために必要な程度の柔軟性を提供することが望ましく、しかし一方で、サンプルをウェル底部に向けて勢いを付けて移動させ、それによってサンプルを関連ウェル内の所定の位置に確実に保持し続けるために必要な程度の構造的完全性を有することが望ましい。
【0009】
任意選択的に、平面保持面は、自身を通る複数の導管を含む。
【0010】
平面保持面に複数の導管を含むことで、細胞培養容器のウェル内の所定の位置にサンプルを確実に保持したまま、例えば水性緩衝液、細胞培養培地、またはハイドロゲルなどの液体を選択的に導入および除去して、安全に所与のサンプルと接触させる/接触させないことが容易になる。
【0011】
またそのような複数の導管は、当該生物サンプルを所定の位置に同様に保持したまま、本発明の保持インサートの使用者、例えば実験技術者または他の科学者が、肉眼または顕微鏡下で当該サンプルを目視する、または観察することを可能にすることが望ましい。
【0012】
少なくとも1つの保持壁は、自身を通る1つ以上の流体導管を含んでもよい。
【0013】
少なくとも1つの保持壁に、1つ以上の流体導管を含めることで、細胞培養容器のウェル内の所定の位置にサンプルを確実に保持したまま、液体を選択的に導入および除去して、サンプルと接触させる/させないことが容易になる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの保持壁が、テーパー部分を含む。
【0015】
保持要素内にそのようなテーパー保持壁部分を1つ以上含めることで、様々な保持要素を提供することができ、各テーパー保持壁部分によって異なるサイズの保持面が提供され、しかし、テーパー保持壁部分はすべて同じ様式でインサート本体と連結することができる。従って、例えば、保持されるサンプルの性質および/もしくはサイズ、細胞培養容器の対応するウェルの配置もしくは他の空間的特徴、ならびに/または実施されるサンプル調査の性質に従い、インサート本体を改変することなく、異なるサイズの遠位端を提供することができる。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの保持壁は、断面の厚さが減少した1つ以上の領域を含む。
【0017】
少なくとも1つの保持壁に、断面の厚さが減少した領域を1つ以上含めることで、そのような保持壁または各保持壁が従属する保持面によって最終的に加えられる保持力を調整するオプションが提供される。
【0018】
平面保持面は、実質的に平坦であることが好ましい。
【0019】
実質的に平坦な平面保持面があることで、実質的に均一な保持力を確実に大部分の保持面に加えるのに役立つ。
【0020】
平面保持面は、凸状または凹状の断面形状を有してもよい。
【0021】
平面保持面に凸状または凹状の断面外形を与えることによって、それに保持されるサンプルに加えられる保持力の外形は有益に変更され、凸状の断面外形は平面保持面の中心に向かって大きくなる保持力を加え、凹状の断面外形は平面保持面の中心に向かって小さくなる保持力を加える。このような様々な保持力の外形は、全体的に異なる硬さを有するサンプルを保持しようとする場合に有益であり得る。
【0022】
任意選択的に、平面保持面は、断面の厚さが減少した領域を1つ以上含む。
【0023】
断面の厚さが減少した領域を1つ以上含めることで、保持面全体に加えられる保持力の外形がさらに調整される。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態では、保持要素は、弾力的に変形可能な材料から形成される。
【0025】
弾力的に変形可能な材料から保持要素全体を形成することで、必然的にその遠位端全体が弾力的に変形可能であることが確保され、さらには、保持要素とインサート本体との連結が容易になり、そして単一の部品として保持要素を製造することが可能であることによって、保持要素の製造が単純化する。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態では、インサート本体は、保持要素の遠位端と連結して配置された流体導管を少なくとも1つ含む。
【0027】
インサート本体にそのような流体導管を1つ以上設けることによって、液体を選択的に導入および除去し、遠位端によって保持されたサンプルと接触させる/接触させないことが望ましく容易になる。
【0028】
本発明の第二の態様によれば、互いにしっかりと固定された、本明細書で上述される複数の細胞培養保持インサートを備えた細胞培養保持インサートアセンブリが提供される。
【0029】
そのような細胞培養保持インサートアセンブリは、細胞培養容器内の複数のウェルの各々において、各三次元生物サンプルを所望のように保持するのに特に良く適合される。
【0030】
任意選択的に、複数の細胞培養保持インサートはそれぞれインサート本体を有し、各インサート本体は互いに一体化して形成される。
【0031】
複数の細胞培養保持インサートのインサート本体を互いに一体化して、例えば単一の成形品として形成することにより、そのような細胞培養保持インサートの互いへの固定が望ましく単純化され、それに伴い、本発明の細胞培養保持インサートアセンブリの製造が容易になる。
【0032】
本発明の第三の態様によれば、細胞培養容器内に三次元生物サンプルを配置することを目的とした細胞培養配置インサートが提供され、当該細胞培養配置インサートは、以下を有する剛性のインサート本体を備える:
使用時に細胞培養配置インサートを細胞培養容器に取り外し可能に固定するための少なくとも1つの係合形成部、
使用時に細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能なインサート本体の遠位端までインサート本体を通り延在するテーパー配置導管であって、使用時に、細胞培養容器内に配置された三次元生物サンプルを、細胞培養容器のウェル底部の所望の位置に向けて勢いを付けて移動させる、テーパー配置導管、および
配置導管をインサート本体の外部と流体連結させるために、インサート本体を通り延在する、少なくとも1つの流体導管。
【0033】
配置導管をインサート本体の外部と流体連結させるための流体導管を少なくとも1つ含めることで、液体を選択的に導入および除去して、細胞培養容器のウェル内の細胞培養配置インサートによって望ましく配置されたサンプルと接触させる/させないことが容易になる。
【0034】
本発明の第四の態様によれば、互いにしっかりと固定された、本明細書で上述される複数の細胞培養配置インサートを備えた細胞培養配置インサートアセンブリが提供される。
【0035】
そのような細胞培養配置インサートアセンブリは、細胞培養容器内の複数のウェルの各々において、各三次元生物サンプルを所望のように配置するのに特に良く適合される。
【0036】
好ましくは、複数の細胞培養配置インサートは、それぞれインサート本体を有し、各インサート本体は互いに一体化して形成される。
【0037】
複数の細胞培養配置インサートのインサート本体を互いに一体化して、例えば単一の成形品として形成することにより、そのような細胞培養配置インサートの互いへの固定が再度望ましく単純化され、それに伴い、本発明の細胞培養配置インサートアセンブリの製造が容易になる。
【0038】
本発明の第五の態様によれば、少なくとも1つのウェルを有する細胞培養容器を含む細胞アッセイが提供され、当該ウェルまたは各ウェルは、本明細書で上述される細胞培養保持インサートに関連付けられ、当該細胞培養保持インサートまたはそれぞれの各細胞培養保持インサートは、細胞培養容器に取り外し可能に固定される。
【0039】
好ましくは、複数のウェルを有する細胞培養容器を含む細胞アッセイにおいて、当該複数のウェルは、本明細書で上述される細胞培養保持インサートアセンブリと関連付けられる。
【0040】
任意選択的に、細胞アッセイは、ウェルまたは各ウェルと対応する細胞培養保持インサートとの間に挟まる、本明細書に上述される細胞培養配置インサートをさらに含む。
【0041】
複数のウェルを有する細胞培養容器を含む細胞アッセイは、複数のウェルとそれぞれの細胞培養保持インサートとの間に挟まる、本明細書に上述される細胞培養配置インサートアセンブリを有してもよい。
【0042】
そのような細胞アッセイを提供することにより、本発明の細胞培養保持インサート、細胞培養配置インサート、および関連するインサートアセンブリに関連する利点が、より一般的な細胞アッセイにまで拡大される。
【0043】
本特許明細書において、「第一」および「第二」などの用語の使用は、単に類似の特徴を区別することが意図されており、別段の指定がない限り、ある特徴が他の特徴を超えて相対的に重要であることを示しているとは意図されないことが理解されよう。
【0044】
本出願の範囲内において、前の段落、特許請求の範囲、ならびに/または以下の説明および図面に記載された様々な態様、実施形態、実施例および代替、ならびに特にその個々の特徴は、独立して、または任意の組み合わせで採用され得ることが明示的に意図されている。すなわち、すべての実施形態、および任意の実施形態のすべての特徴は、そのような特徴が適合不可能でない限り、任意の様式および/または組み合わせで組み合わされ得る。出願人は、当初提出された請求の範囲を変更する権利、またはそれに応じて新たな請求の範囲を提出する権利を留保する。当該権利には、当初提出された請求の範囲を修正し、当初はそのように請求されていなかったものの、いずれか他の請求の範囲の任意の特徴に従属させる、および/またはそのような特徴を組み込む権利が含まれる。
【0045】
次に、非限定的な例として、本発明の好ましい実施形態について、以下の図面を参照して簡単に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の第一の実施形態による細胞培養保持インサートの透視図を示す。
図2図1に示された細胞培養保持インサートの断面図を示す。
図3】本発明の第二の実施形態による細胞培養保持インサートの透視図を示す。
図4図3に示される細胞培養保持インサートの一部を形成し得る、第一の保持要素の遠位端の拡大透視図を示す。
図5】第一の使用モードにおける、図4の遠位端の断面図を示す。
図6】第二の使用モードにおける、図3に示される細胞培養保持インサートの一部を形成し得る第二の保持要素の遠位端の拡大断面図を示す。
図7図3に示される細胞培養保持インサートの一部を形成し得る、第三の保持要素の遠位端の拡大透視図を示す。
図8図8(a)は、本発明の第三の実施形態による細胞培養保持インサートの透視断面図を示す。図8(b)は、図8(a)に示される細胞培養保持インサートの一部を形成する、保持要素の拡大透視図を示す。
図9】本発明の第四の実施形態による細胞培養配置インサートの透視図を示す。
図10】本発明の第五の実施形態による細胞培養配置インサートアセンブリの透視図を示す。
図11】本発明の第六の実施形態による細胞アッセイの一部の透視図を示す。
図12図12(a)~(c)は、本発明のさらなる実施形態による細胞アッセイの概略透視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の第一の実施形態による細胞培養保持インサートは、図1に示されるように、全体として参照数字10で指定される。
【0048】
第一の細胞培養保持インサート10は、剛性のインサート本体12を含み、当該インサート本体は、4個の係合形成部14を有し、当該係合形成部は、使用時に、第一の保持インサート10を、例えばアッセイトレイなどの細胞培養容器(図示せず)に取り外し可能に固定する。本発明の他の実施形態では、4つより少ない、または多い係合形成部を含み得る。
【0049】
示される実施形態において、各係合形成部14は、4つの可動脚部16を含み、当該可動脚部は、関連する細胞培養容器内の相補的な受容形成部と協働して、必要とされる当該細胞培養容器への第一の保持インサート10の選択的固定を行う。繰り返しになるが、本発明の他の実施形態において、係合形成部のうちの1つ以上が、4つより少ない、または多い脚部を含む場合があり、実際には、異なる構成の係合形成部を1つ以上含む場合があり、そのような1つ以上の異なる係合形成部は、対応する細胞培養容器内に配置された同様に異なる受容形成部と協働するように構成される。
【0050】
示された第一の細胞培養保持インサート10に戻ると、当該細胞培養保持インサートは、インサート本体12と連結された保持要素18も含む。
【0051】
図2に示されるように、例えばインサート本体12上のリング形成部24や保持要素18上の相補的グリップ形成部26など、相互に協働可能な連結形成部20、24を介して、保持要素18はインサート本体12と連結され得る。しかし、その他の相互に協働可能な連結形成部もまた可能である。
【0052】
一方で保持要素18は遠位端28、すなわち最遠部分を有し、当該遠位端は使用時に細胞培養容器のウェル底部に近接して配置可能である。
【0053】
示される実施形態において、遠位端28は、平面保持面30、すなわち保持面30または平面保持部分から形成され、当該保持面は、全体にわたって実質的に均一な厚さを有し、自身に従属する4個の保持壁32を有する。他の実施形態(図示せず)は、4個より少ない、または多い保持壁を含む場合があり、さらなる実施形態は、相互連結壁により相互連結された保持壁を含む場合があり、相互連結壁は、湾曲した相互連結壁であってもなくてもよい。
【0054】
遠位端28の全体が弾力的に変形可能である。すなわち、使用時に、平面保持面30の全体がウェル底部に提示され、そして保持壁32のそれぞれがすべて弾力的に変形可能であるが、一部の実施形態においては、平面保持面の全体のみ、すなわち平面保持部分の全体のみが弾力的に変形可能であればよい。より詳細には、示される実施形態において、保持要素18の全体が弾力的に変形可能な材料から形成され、それによって、遠位端28の全体に望ましい弾力的変形性が与えられる。そのような弾力的に変形可能な材料の一例は、シリコーンやシリコーンゴムなどのエラストマーであるが、他の適切な材料を使用してもよい。
【0055】
上記に加えて、保持面30は、複数の導管34を含む。より詳細には、示される実施形態においては9個の導管34を含んでいるが、他の実施形態では違う場合がある。そのような導管34によって、流体の通過が可能となるだけでなく、使用者、例えば実験技術者または他の科学者が、保持面30を通して生物サンプルを目視または観察することが可能になる。
【0056】
また、インサート本体12は、複数の流体導管36を含み、当該流体導管は、保持要素18の遠位端28と連結して配置され、より詳細には、平面保持面30およびそれを通って延在する導管34と流体連結して配置される。そのような導管34、36の組み合わせによって、液体を選択的に導入および除去して、遠位端28によって保持されたサンプルと接触させる/接触させないことが容易に可能となる。
【0057】
さらに、保持壁32の各々がテーパー部分38を含み、当該テーパー部分によって、保持面30は、保持要素18の全体的な直径(または他の実施形態では、他の断面形状)よりも小さくなることが可能になる。
【0058】
平面保持面30、すなわち平面保持部分も、実質的に平坦である。本発明の他の実施形態(図示せず)においては、平面保持面は、断面の厚さが減少した領域を1つ以上含んでもよい。
【0059】
本発明の第二の実施形態による細胞培養保持インサート50のインサート本体12を図3に示す。
【0060】
第二の細胞培養保持インサート50は、第一の細胞培養保持インサート10に類似しており、上に示されるように、同じ参照数字は類似の特徴で共通している。しかし、第二の保持インサート50のインサート本体12は、係合形成部14を2つのみ含んでおり、第一の保持インサート10とは異なる構成となっている。
【0061】
さらに、図4に示されるように、第二の保持インサート50の保持要素18は、第一の保持インサート10の保持要素18とは異なっている。
【0062】
より詳細には、第二の保持インサート50の保持要素18は、自身を通過する実質的に六角形の形状をした導管34を複数有する平面保持面30、すなわち平面保持部分を有する(他の形状の導管を使用する場合もある)。また、連結形成部22、すなわちグリップ形成部26は、保持壁32にすぐ隣接して形成される(すなわち、第一の保持インサート10のように保持壁32から間隔をあけて配置されるのではない)。それら保持壁32は、湾曲した相互連結壁52によって相互連結され、保持壁32および相互連結壁52はすべて、自身を通過するさらなる流体導管54を有する。
【0063】
図5は、第一の使用モードにおいて、保持要素18、すなわち第二の保持インサート50の遠位端28の実質的に平坦な平面保持面30、すなわち平面保持部分が、三次元生物サンプル56に対応するように変形し、一方では、サンプル56を細胞培養容器内のウェルのウェル底部(図示せず)にも勢いを付けて接触させ、それによって、サンプル56をウェル内の所望の位置に保持する様子を示す。
【0064】
一方で図6は、図3に示される第二の細胞培養保持インサート50の一部を形成し得る第二の保持要素18’の遠位端28を示す。
【0065】
第二の保持要素18’は、図4および図5に示される第一の保持要素18と非常に類似しているが、自身を通過する実質的に六角形の形状の複数の導管34が、第一の保持要素18の導管とは大きさも間隔も異なっている。
【0066】
この点に関して、導管34の大きさおよび形状、ならびにそれらの間の距離は、2つのパラメーター、すなわち、(i)保持される生物サンプルの大きさ、および(ii)液体交換および/または視察に必要な、当該サンプルの露出表面の割合パーセント、に従って調整され得る。例えば、サンプルの直径が1mm(すなわち、サンプルはオルガノイドである)の場合、または直径が200~300mm(すなわち、サンプルはスフェロイドである)の場合、生物サンプルがするりと通過してしまうことを回避するように導管34の大きさを選択する必要がある。同様に、導管34の間の距離は、露出表面の割合パーセントによって決定することができる。露出表面の割合は、大きなサンプル(例えばオルガノイドであり、典型的にはより多くの酸素/培地の交換を必要とする)は高い割合(例えば、80%)、小さなサンプル(例えばスフェロイド)は低い割合であり得る。選択された遠位端の作製材料の構造的特性によって与えられる制限の範囲内での導管34の大きさ、およびそれらの間の距離は、非常に柔軟に調整可能である。
【0067】
さらに、第二の保持要素18’の各保持壁32は、断面の厚さが減少した領域58を有する。
【0068】
一方、図6に示されるように、第二の使用モードにおいて、第二の保持要素18’の遠位端28の実質的に平坦な平面保持面30、すなわち平面保持部分は、ウェル底部(図示せず)の中心から離れて配置された第一の三次元生物サンプル56に対応するように変形し、一方で保持壁32ならびに保持面30の一部、すなわち平面保持部分の一部は、ウェル底部のさらに異なる位置にある第二のサンプル60に対応するように変形する。保持面30と保持壁32は再び同様に作動して、サンプル56、60をウェル底部に勢いを付けて接触させ、それによって、サンプル56、60はウェル内のそれぞれの位置に保持される。
【0069】
第三の保持要素18”とその遠位端28、すなわち図3に示される、第二の細胞培養保持インサート50の一部を形成し得る平面保持面30とそれに応じた保持壁32を図7に示す。
【0070】
第三の保持要素18”は、凸状の断面外形を有するその平面保持面30を除き、すなわち外側に弓形に曲がる平面保持面30を除き、第一の保持要素18と同一である。他の保持インサートの実施形態のさらなる保持要素は、凹状の断面外形を有する平面保持面、すなわち内側に弓形に曲がる平面保持面を有し得る。
【0071】
本発明の第三の実施形態による細胞培養保持インサート70を、図8(a)に断面図で示し、第三の保持インサート70の保持要素18の拡大透視図を図8(b)に示す。
【0072】
第三の保持インサート70は、第一の保持インサート10に最も類似しており、再度、同じ参照数字は、類似の特徴で共通している。
【0073】
しかし、第三の保持インサート70の保持要素18は、(ちょうど4つではなく)8つの保持壁32を含み、当該保持壁32のそれぞれにテーパー部分が省略されているという点で異なっている。さらに、連結形成部22は、規定されたグリップ形成部としては構成されておらず、むしろ、第三の保持インサート70のインサート本体12上の対応する連結形成部20と当該保持壁32との間の緊密な摩擦嵌合に依存している。
【0074】
図9は、本発明の第四の実施形態による細胞培養配置インサート80の断面概略図を示す。
【0075】
配置インサート80も同様に、剛性のインサート本体82を含み、当該インサート本体は、使用時に、配置インサート80を細胞培養容器に取り外し可能に固定するための係合形成部84を4つ有する。
【0076】
インサート本体82は、テーパー配置導管86も含んでおり、当該導管は、インサート本体82を通り、その遠位端88まで延在している。遠位端88は、図9に示されるように、使用時に、細胞培養容器のウェル92のウェル底部90に近接して配置可能である。
【0077】
さらに、インサート本体82は、自身を通り延在する複数の流体導管94を含み、それによって配置導管86はインサート本体82の外部96と流体連結され、その結果、外部96と配置導管86の間で、例えば水性緩衝液、細胞培養培地またはハイドロゲルなどの流体の通過が可能となる。
【0078】
好ましくは、インサート本体82は複数の第二の流体導管98も含み、当該導管によって、ウェル92への流体の直接的な導入(または除去)が可能となる。すなわち、配置導管86とインサート本体82の外部96の間を通過することなく、流体を導入(または除去)することが可能となる。
【0079】
図9に示されるように、使用時、テーパー配置導管86は、三次元生物サンプル56、60を、細胞培養容器のウェル底部90中の所望の位置に向けて勢いを付けて移動させる。
【0080】
図10に、細胞培養配置インサートアセンブリ110の形態での本発明のさらなる実施形態を示す。
【0081】
本発明の配置インサートアセンブリ110は、複数の、例えば24個の細胞培養配置インサート80を含み、当該インサートは、互いにしっかりと固定されている。より詳細には、示される実施形態において、配置インサート80はそれぞれインサート本体82を有し、それらは一体化して形成される。すなわち、互いに一体化して成形される。
【0082】
細胞培養配置インサートアセンブリの他の実施形態は、24個よりも少ない、または多い細胞培養配置インサートを有してもよく、それらは互いにしっかりと固定され、例えば互いに一体化して形成される。さらにそのような配置インサートアセンブリは、それぞれのインサート本体を有してもよく、インサート本体は成形とは異なる様式で互いに一体化して形成される。
【0083】
図11は、本発明のさらなる実施形態による細胞アッセイ120の一部を示す。
【0084】
第一の細胞アッセイには、複数のウェル92(そのうち3つのみ図示)を有する細胞培養容器122を含む。細胞培養保持インサート、例えば第三の保持インサート70が各ウェル92に関連付けられ(1つの第三の保持インサート70のみが示されている)、細胞培養容器122に取り外し可能に固定される。
【0085】
より詳細には、上述の細胞培養配置インサートアセンブリ110は、第三の保持インサート70と複数のウェル92、すなわち細胞培養容器122との間に挟まり、より詳細には、配置インサートアセンブリ110は、例えば自身のそれぞれの係合形成部84を介して細胞培養容器122に取り外し可能に固定され、次いで第三の保持インサート70は、第三の保持インサート70のそれぞれの係合形成部14を介して配置インサートアセンブリ110に取り外し可能に固定される。
【0086】
図12(a)、図12(b)および図12(c)は、本発明のさらなる実施形態による第二、第三および第四の細胞アッセイ130、140、150を示す。
【0087】
第二の細胞アッセイ130は、マルチウェルの細胞培養容器132、例えば72個のウェル134を有する細胞培養容器を、同一の数、すなわち72個の細胞培養配置インサート80を有する細胞培養配置インサートアセンブリ136とともに含み、当該細胞培養配置インサートは互いにしっかりと固定され、例えばそれぞれのインサート本体82が互いに一体化して成形されている。配置インサートアセンブリ136は、細胞培養容器132に取り外し可能に固定される。
【0088】
第三の細胞アッセイ140も同様に、前述のマルチウェルの細胞培養容器132、および配置インサートアセンブリ136、ならびに細胞培養保持インサートアセンブリ142を含む。保持インサートアセンブリ142は、同じ数、すなわち72個の細胞培養保持インサート(すなわち、第一、第二、または第三の保持インサート10、50、70のいずれか)を有し、これらは同様に互いにしっかりと固定され、例えばそれぞれのインサート本体12が互いに一体化して成形されるなど、一体化して形成されている。配置インサートアセンブリ136は再び細胞培養容器132に取り外し可能に固定され、一方で保持インサートアセンブリ142は配置インサートアセンブリ136に取り外し可能に固定され、つまりは細胞培養容器132に取り外し可能に固定される。
【0089】
第四の細胞アッセイ150は、第二および第三の細胞アッセイ130、140のそれぞれと類似しているが、配置インサートアセンブリが省略されており、代わりに対応する保持インサートアセンブリ142が細胞培養容器132に直接取り外し可能に固定されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】