(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078442
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】縮合多環芳香族化合物及び該化合物を含む光電変換素子用材料
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20240603BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240603BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20240603BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240603BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240603BHJP
H10K 30/20 20230101ALN20240603BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/04 CSP
H10K30/60
H10K39/32
H01L27/146 C
H10K85/60
H10K30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200038
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022189902
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新見 一樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】前田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 駿介
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 秀典
(72)【発明者】
【氏名】本間 美希
【テーマコード(参考)】
3K107
4C071
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
3K107AA03
4C071AA01
4C071AA07
4C071BB01
4C071BB06
4C071CC22
4C071DD04
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG04
4C071JJ01
4C071JJ07
4C071LL05
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118HA26
5F149AB11
5F149BB03
5F149CB06
5F149FA04
5F149FA05
5F149GA02
5F149LA02
5F149XA01
5F149XA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】応答速度に優れた有機光電変換素子の材料となる有機化合物、及び該有機化合物を含む有機薄膜を有する有機光電変換素子を提供すること。
【解決手段】下記式(1)
(式(1)中、R
1はヘテロ芳香族残基を表す。但し、R
1がベンゾ[b]チオフェン-5-イル基の場合を除く。)で表される縮合多環芳香族化合物、該縮合多環芳香族化合物を含有する光電変換素子用材料、該光電変換素子用材料を含む有機薄膜、及び該有機薄膜を含む有機光電変換素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1はヘテロ芳香族残基を表す。)
で表される縮合多環芳香族化合物(但し、R
1がベンゾ[b]チオフェン-5-イル基の場合を除く)。
【請求項2】
R1がベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ナフトチエニル基、ナフトフリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフリル基である請求項1に記載の縮合多環芳香族化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の縮合多環芳香族化合物を含有する光電変換素子用材料。
【請求項4】
請求項3に記載の光電変換素子用材料を含む有機薄膜。
【請求項5】
請求項4に記載の有機薄膜を有する有機光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な縮合多環芳香族化合物とその用途に関する。更に詳しくは、本発明はベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(以下、「BTBT」と略す)誘導体である縮合多環芳香族化合物、該化合物を含む有機薄膜及び該有機薄膜を含む有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクスデバイスは、原材料に希少金属などを含まないため安定供給が可能であると共に、無機材料には無い屈曲性を有することや湿式成膜法によって製造可能なことから、近年盛んに研究開発がなされている。有機エレクトロニクスデバイスの具体例としては、有機EL素子、有機太陽電池素子、有機光電変換素子及び有機トランジスタ素子等が挙げられ、これら以外にもデバイスとしての性能は勿論のこと、有機化合物の特色を活かした様々な用途が検討されている。
【0003】
上記デバイスのうち、有機光電変換素子は光センサ等に利用されており、例えば撮像素子に用いることが検討されている(特許文献1)が、撮像素子には動体を捉えるための応答速度が求められている(特許文献2)。
【0004】
この要求を満たすために、有機半導体材料として高い移動度を示すことが知られているBTBT系の化合物を光電変換素子に用いることが検討されている(特許文献3)。
しかしながら、これまでに報告されているBTBT系の化合物を用いた光電変換素子では、実用上十分な応答速度が得られていなかった。
また、光電変換素子に用いることで明暗比に優れるBTBT系の化合物が報告されている(特許文献4)。しかしながら応答性については記載がなく、本発明者らが評価したところ実用上十分な応答速度が得られないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2022/114065
【特許文献2】特開2013-012535号公報
【特許文献3】WO2016/185858
【特許文献4】WO2018/016465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の状況を鑑み、本発明の目的は、応答速度に優れた有機光電変換素子の材料となる有機化合物、及び該有機化合物を含む有機薄膜を有する有機光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定構造の新規の縮合多環芳香族化合物を用いることにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
【0008】
【0009】
(式(1)中、R1はヘテロ芳香族残基を表す。)で表される縮合多環芳香族化合物(但し、R1がベンゾ[b]チオフェン-5-イル基の場合を除く)、
(2)R1がベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ナフトチエニル基、ナフトフリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフリル基である前項(1)に記載の縮合多環芳香族化合物、
(3)前項(1)又は(2)に記載の縮合多環芳香族化合物を含有する光電変換素子用材料、
(4)前項(3)に記載の光電変換素子用材料を含む有機薄膜、及び
(5)前項(4)に記載の有機薄膜を有する有機光電変換素子、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の縮合多環芳香族化合物を含む光電変換素子用材料を用いることにより、応答速度に優れた有機光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の有機光電変換素子の構造例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の縮合多環芳香族化合物は、上記式(1)で表される。
式(1)中、R1及は、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル基を除くヘテロ芳香族残基を表す。ここでいうヘテロ芳香族残基とは、酸素原子及び/又は硫黄原子を含み、かつ芳香性を有する化合物から水素原子を一つ除いた残基であり、酸素原子又は硫黄原子を含み、かつ芳香性を有する化合物から水素原子を一つ除いた残基が好ましい。尚、式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基は置換基を有していてもよい。
【0013】
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基は、上記の条件を満たしていれば特に限定されないが、例えば、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル基を除くベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ナフトチエニル基、ナフトフリル基、ベンゾジチエニル基、又はベンゾジフリル基が挙げられ、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル基を除くベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基又はジベンゾジフリル基が好ましく、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル基、ベンゾ[b]フラン-2-イル基、ベンゾ[b]フラン-5-イル基、ジベンゾ[b,d]チオフェン-3-イル基又はジベンゾ[b,d]フラン-3-イル基がより好ましい。
【0014】
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、例えば芳香族炭化水素残基、ヘテロ芳香族残基、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基としての芳香族炭化水素残基とは、芳香族炭化水素化合物の芳香環から水素原子を一つ除いた残基であり、具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェニルナフチル基、ターフェニル基、フェナンスレン基、アントラニル基及びナフチルフェニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基としてのヘテロ芳香族残基の定義は式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基と同じであり、その具体例も式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基と同じものが挙げられる。
【0015】
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアルキル基の具体例としては、炭素数1乃至12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1乃至8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、炭素数1乃至6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基又はターシャリーブチル基が更に好ましい。
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基としてのアルコキシ基の具体例としては、炭素数1乃至12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1乃至8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基が好ましく、炭素数1乃至6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましい。
式(1)のR1が表すヘテロ芳香族残基が有していてもよい置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
式(1)で表される縮合多環芳香族化合物は、公知の方法で合成した下記式(A)で表されるジハロゲン化BTBT(2,7-ジハロゲノベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-b]チオフェン)に、下記式(B)及び(C)で表されるボロン酸エステル誘導体をカップリング反応させた後、例えば昇華精製で目的とする化合物を取り出すことにより得ることができる。
尚、下記式(A)中のXはハロゲン原子を表し、式(C)中のR1は式(1)におけるR1と同じ意味を表す。
【0017】
【0018】
式(1)で表される縮合多環芳香族化合物の精製方法は、特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また必要に応じてこれらの方法を組み合わせることができる。
【0019】
一般式(1)で表される本発明の縮合多環芳香族化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0020】
【0021】
本発明の光電変換素子用材料は本発明の式(1)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する。
本発明の光電変換素子用材料は、本発明の効果を損なわない範囲であれば式(1)で表される化合物以外の成分を含有しても構わないが、式(1)で表される化合物のみを含有することが好ましい。
光電変換素子用材料における式(1)で表される化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは99質量%以上である。
尚、光電変換素子用材料には、式(1)に包含される複数の化合物を併用しても構わない。
【0022】
本発明の有機薄膜は、本発明の光電変換素子用材料を含む。有機薄膜の膜厚は、その用途により選択すればよいが、通常1nm乃至1μm、好ましくは5nm乃至500nm、より好ましくは10nm乃至500nmである。
有機薄膜の形成方法は、蒸着法などのドライプロセス(光電変換素子用材料をそのまま用いる方法)や種々の溶液プロセス(光電変換素子用材料を有機溶媒等に溶解及び/又は分散した溶液を用いる方法)などがあげられる。溶液プロセスとしてはたとえば、スピンコート法、ドロップキャスト法、ディップコート法、スプレー法、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷などの凸版印刷法、オフセット印刷法、ドライオフセット印刷法、パッド印刷法などの平板印刷法、グラビア印刷法などの凹版印刷法、スクリーン印刷法、謄写版印刷法、リングラフ印刷法などの孔版印刷法、インクジェット印刷法、マイクロコンタクトプリント法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法が挙げられる。溶液プロセスで成膜する場合、上記の塗布、印刷したのち、溶媒を蒸発させて薄膜を形成することが好ましい。
【0023】
次に、本発明の有機光電変換素子について図面を参照しながら説明するが、本発明の光電変換素子の構造はこれに限定されない。
【0024】
図1は本発明の有機光電変換素子(撮像用の有機光電変換素子)の構造例を模式的に示した断面図であり、
図1中の1は基板、2は電極、3は電子ブロック層、4は光電変換層、5は正孔ブロック層、6は電極を表す。本発明の有機光電変換素子は、
図1の構造に限定されるものではなく、必要に応じて層を追加又は省略することが可能である。
【0025】
式(1)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する本発明の光電変換素子用材料は、有機光電変換素子の正孔輸送性材料として使用可能であり、具体的には
図1における電子ブロック層又は光電変換層に使用することができる。即ち、本発明の有機光電変換素子は、ブロック層又は光電変換層のどちらかに本発明の光電変換素子用材料を含む有機薄膜を有する。
尚、本発明の光電変換素子用材料は、式(1)で表される縮合多環芳香族化合物のみを含んでいてもよく、発明の効果を損なわない範囲であれば、式(1)で表される化合物以外の成分を含んでいてもよく、式(1)で表される化合物に併用し得る成分は特に限定されない。
【0026】
以下に、
図1中の各構成について説明する。
-基板-
本発明の有機光電変換素子は、基板に支持されていることが好ましい。基板の材質に特に制限はなく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。
尚、
図1における電極6側から光が入射する場合は、基板1は必ずしも透明性を有する(電流に変換すべき特定波長の光の透過率に優れる、以下、「透明性を有する」は同じ意味で用いられる)ものでなくてもよい。また電極6の外側に更に基板を有していてもよいが、基板1と電極6の外側の基板の少なくとも一方が、透明性を有するものであることが必要である。
【0027】
-電極-
本発明の有機光電変換素子に用いられる電極は、光電変換層で生成する正孔及び電子を捕集する機能を有する。また、光を光電変換層に入射させる機能も必要となるため、電極2と6の少なくとも一方は透明性を有する必要がある。
電極の材料は導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ITO、IZO、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2及びFTO等の導電性透明材料、金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル及びタングステン等の金属、ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマーなどが例示できる。これらの材料は必要により複数を混合して使用してもよく、また、2層以上を積層してもよい。
【0028】
-電子ブロック層-
電子ブロック層は、2枚の電極の間にバイアス電圧を印加した際に、片方の電極から光電変換層に電子が注入されることにより生じる暗電流を抑制するために設けられている。また、光電変換層での電荷分離により生じる正孔を電極に輸送する正孔輸送としての機能も有しており、必要に応じて単層又は複数層を配置することができる。
電子ブロック層には、正孔輸送性材料であるP型有機半導体材料を用いることができる。P型有機半導体材料としては、正孔輸送性を有する材料であればよく、P型有機半導体材料として上記式(1)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する光電変換素子用材料を用いるのが好ましい態様であるが、他のP型有機半導体材料を用いてもよい。
他のP型有機半導体材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合多環芳香族基を有する化合物、シクロペンタジエン誘導体、フラン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体などのπ電子過剰系芳香族基を有する化合物、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体を用いることができる。
【0029】
-光電変換層-
光電変換層は、入射光により生成した励起子の電荷分離により正孔と電子が生成する層である。単独の光電変換材料で形成されてもよいが、正孔輸送性材料であるP型有機半導体材料や、電子輸送性材料であるN型有機半導体材料と組み合わせて形成されてもよい。また、2種以上のP型有機半導体を用いてもよく、2種以上のN型有機半導体を用いてもよい。これら光電変換材料及び/又はP型有機半導体及び/又はN型半導体の1種以上は、可視領域での所望の波長の光を吸収する機能を有する色素材料を用いることが望ましい。正孔輸送性材料であるP型有機半導体材料として上記式(1)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する光電変換素子用材料を用いるのが好ましい態様である。
【0030】
光電変換材料としては、入射光により励起子が発生する材料であればよく、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合多環芳香族基を有する化合物、シクロペンタジエン誘導体、フラン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体などのπ電子過剰系芳香族基を有する化合物、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体を用いることができる。入射光の利用効率の観点から吸光係数が高い材料が好ましく、例えば、ピロメテン誘導体、ポルフィリン誘導体、サブポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピロール誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、芳香族アミン誘導体などを用いることができる。
【0031】
P型有機半導体材料として本発明の光電変換素子用材料を用いる場合には、他のP型有機半導体材料と組み合わせて使用してもよく、また、上記一般式(1)で表される縮合多環芳香族化合物を2種以上含む光電変換素子用材料を使用してもよい。
他のP型有機半導体材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合多環芳香族基を有する化合物、シクロペンタジエン誘導体、フラン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体などのπ電子過剰系芳香族基を有する化合物、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体を用いることができる。
また、高分子型P型有機半導体材料としては、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体を例示できる。また、高分子型P型有機半導体材料と共に、本発明の光電変換素子用材料や非高分子型のP型有機半導体材料を混合してもよく、高分子型P型有機半導体材料を2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
N型有機半導体材料としては、電子輸送性を有する材料であればよく、例えば、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドやペリレンテトラカルボン酸ジイミド、フラーレン類、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体などが例示できる。また、N型有機半導体材料から選ばれる2種以上を混合して用いてもよい。
尚、本発明の有機光電変換素子は、ブロック層又は光電変換層のどちらかに本発明の光電変換素子用材料を含む有機薄膜を有する。
【0033】
-正孔ブロック層-
正孔ブロック層は、2枚の電極の間にバイアス電圧を印加した際に、片方の電極から光電変換層に正孔が注入されることにより生じる暗電流を抑制するために設けられている。また、光電変換層での電荷分離により生じる電子を電極に輸送する電子輸送としての機能も有しており、必要に応じて単層又は複数層を配置することができる。正孔ブロック層には、電子輸送性を有するN型有機半導体を用いることができる。
N型有機半導体材料としては、電子輸送性を有する材料であればよく、例えば、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドやペリレンテトラカルボン酸ジイミドの如き多環芳香族多価カルボン酸無水物やそのイミド化物、C60やC70等のフラーレン類、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体、インドロカルバゾール誘導体などが例示できる。また、N型有機半導体材料から選ばれる2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例0034】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例中の「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。
【0035】
実施例1(本発明の縮合多環芳香族化合物の合成)
DMF(200部)に、特許第4945757号に記載の方法で合成したジヨードBTBT(4.9部)、上記式(B)で表されるピナコールボレート誘導体(3.4部)、公知の手法で合成した下記式1で表されるピナコールボレート誘導体(3.2部)、リン酸三カリウム(6.3部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.58部)を加え、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、水を加え、生成した固体をろ取した。得られた固体をアセトンで洗浄し乾燥し昇華精製することで、具体例のNo.2で表される本発明の縮合多環芳香族化合物(1.4部、収率22%)を黄色固体として得た。
【0036】
【0037】
実施例2(本発明の縮合多環芳香族化合物の合成)
式1で表されるピナコールボレート誘導体(3.2部)を公知の手法で合成した下記式2で表されるピナコールボレート誘導体(3.7部)に変更した以外は実施例1と同じ方法で、具体例のNo.7で表される本発明の縮合多環芳香族化合物(1.3部、収率19%)を得た。
【0038】
【0039】
実施例3(本発明の縮合多環芳香族化合物の合成)
式1で表されるピナコールボレート誘導体(3.2部)を公知の手法で合成した下記式3で表されるピナコールボレート誘導体(3.4部)に変更した以外は実施例1と同じ方法で、具体例のNo.1で表される本発明の縮合多環芳香族化合物(1.1部、収率17%)を得た。
【0040】
【0041】
実施例4(本発明の有機光電変換素子(光電変換素子A)の作製)
膜厚70nmのITOからなる電極が形成されたガラス基板上に、ブロック層として、基板温度室温、真空度4.0×10-5Paの条件でCzBDF(東京化成社製)を10nmの厚さに成膜した。次いで、光電変換層として、実施例1で得られた具体例のNo.2で表される化合物、Cl6-SubPc-OPh(Lumitec社製)及びフラーレン(C60、東京化成社製)を蒸着速度比4:4:2で共蒸着し、厚さ230nmの有機薄膜を成膜した。引き続き、一般に入手可能なdpy-NDI(東京化成社製)を10nm蒸着し、正孔ブロック層を形成した。最後に、電極としてアルミニウムを100nmの厚さに成膜して、光電変換素子Aを作製した。
【0042】
【0043】
実施例5及び6(本発明の有機光電変換素子(光電変換素子B及びC)の作製)
実施例1で得られた具体例のNo.2で表される化合物の代わりに、実施例2及び3で得られた本発明の化合物を使用したこと以外は実施例4と同じ操作によって、光電変換素子B及びCをそれぞれ作製した。
【0044】
比較例1乃至3(比較用の有機光電変換素子(光電変換素子D乃至F)の作製)
実施例1で得られた具体例のNo.2で表される化合物の代わりに、公知の手法で合成した下記式X乃至Zで表される化合物を使用したこと以外は実施例4と同じ操作によって、比較用の光電変換素子D乃至Fをそれぞれ作製した。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
(有機光電変換素子の評価)
実施例4乃至6、比較例1乃至3で作製した光電変換素子A乃至Fについて、ITOとアルミニウムを電極として2.6Vの電圧を印加し、ITO電極側に照射光波長560nm、1.6μW/cm2に調整したLEDで光照射を行い、下記の評価基準で外部量子効率(EQE)評価した。結果を表1に示した。本発明の光電変換素子のEQEは70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
・評価基準
80%以上の場合;「○」
80%未満の場合;「×」
実用上、EQEが大きいこと、即ち、照射光を効率的に光電変換できることが好ましいため、「○」が優れており、「×」が劣っていることを意味する。
【0049】
【0050】
(応答速度の評価)
WO2018-105269の実施例を基に応答速度の評価を実施した。具体的には、80%以上のEQEを示した実施例4乃至6、比較例1及び2で作製した光電変換素子A乃至Eに2.0×105V/cmの強度となるように電圧を印加した。その後、LED(light emitting diode)を瞬間的に点灯させて透明導電性膜(ITO)側である下部電極から光を照射し、そのときの光電流をオシロスコープで測定して、0から97%信号強度までの立ち上がり時間を計った。光電変換素子Dの電流値が97%まで立ちあがる時間を1とし、評価対象となる光電変換素子の電流値が97%まで立ち上がる時間の相対値を求めて、各光電変換素子の応答速度を下記の評価基準で評価した。結果を表2に示した。
・評価基準
立ち上がり時間の相対値が光電変換素子Dに対して、
0.3未満の場合;「AA」
0.3以上0.5未満の場合;「A」
0.5以上0.7未満の場合;「B」
0.7以上1未満の場合;「C」
1以上の場合;「D」
実用上、光電変換素子の光応答速度が速いこと、即ち、照射光を開始してから短時間で光電流値が100%に近づくことが好ましいため、「AA」が最も優れており、「D」が最も劣っていることを意味する。
【0051】
【0052】
表1及び2の結果から、式(1)で表される本発明の化合物を用いた光電変換素子は十分なEQEを持ったうえに、応答速度に優れていることは明らかである。