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特開2024-78446リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特開-リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特開-リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078446
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240603BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240603BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240603BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/36 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200527
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0162834
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カン, ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】シム, ヒョンウー
(72)【発明者】
【氏名】パク, ビョンフン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, ミンキョン
(72)【発明者】
【氏名】クウォン, セマン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA15
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】ナノ化されたシリコン粒子サイズと前記粒子との間の適正隣接距離を調節する場合に寿命特性が良好であり、安全なリチウム二次電池用負極活物質を提供できることを知得しており、このような負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】本発明は、コア部及び前記コア外部に形成されたシェル部を含むリチウム二次電池用負極活物質であって、前記コア部は金属粒子を含む多孔性球状の粒子であり、前記シェル部は炭素を含有し、前記コア部の金属粒子間の距離が下記の式を満足することを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質に関する。
0.6×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)≦(金属粒子間の距離)≦0.85×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部及び前記コア外部に形成されたシェル部を含むリチウム二次電池用負極活物質であって、
前記コア部は、金属粒子を含む多孔性球状の粒子であり、
前記シェル部は炭素を含有し、
前記コア部の金属粒子間の距離が下記の式(1)を満足することを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質。
[式1]
0.6×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)≦(金属粒子間の距離)≦0.85×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)
(但し、前記金属粒子間の距離は、金属粒子の中心点間の距離を意味する)
【請求項2】
前記コア部の金属粒子は、Si、Ge、Sn及びこれらの酸化物からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記金属粒子の直径(Dv50)は50nm~150nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記金属粒子は、鱗片状シリコンナノ粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記コア部の金属粒子は、炭素リンクを介して互いに物理的に連結されている、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記炭素リンクは非晶質炭素を含む、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記非晶質炭素は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、ステアリン酸、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上に由来することを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項8】
前記シェル部の炭素は、結晶質炭素及び非晶質炭素からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記シェル部は、鱗片状シリコンナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項10】
金属粒子及び非晶質炭素前駆体を溶媒に混合して粉砕するステップ(S1)と、
前記粉砕した溶液を噴霧乾燥して金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)と、
前記金属前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素を混合した後、複合化して複合体粉末を製造するステップ(S3)と、
前記複合体粉末を熱処理して分級するステップ(S4)と、
を含むことを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記金属粒子は鱗片状シリコンナノ粒子であり、
前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群より選択された1つ以上を含み、
前記非晶質炭素は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、ステアリン酸、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上に由来したものである、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記(S1)ステップにおける金属粒子と溶媒の重量比は1:8~1:12である、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記(S1)ステップにおける金属粒子と非晶質炭素前駆体の重量比は10:3~10:12であることを特徴とする、請求項12に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(S2)における乾燥過程は、40℃~150℃の温度で実施される、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(S4)の熱処理は800~1200℃の温度で、10分~10時間の間に実施される、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及びこれを使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに切り替える素子として、二次電池は1次電池とは異なり、電池が放電された後再び充電して使用可能な電池を示す。そのうち、リチウム二次電池は、放電時にリチウムイオンが負極から正極に移動する化学反応を介して電気を生産する。
【0003】
最近、リチウム二次電池に対する市場需要が急増しており、そのため、その応用が多様化しながら要求される性能も上向き調整されており、リチウム二次電池の高容量化及び長寿命に対する要求がある。現在、幅広く使用されている負極活物質は黒鉛であり、この理論的な容量は372mAh/gであるため、市場で要求される高容量化の側面において足りない性能を有している。
【0004】
一方、シリコンは、理論的に黒鉛の10倍以上の容量を有するリチウム二次電池用負極素材として注目されている。しかし、シリコンは、リチウム二次電池でリチウム化過程で発生する大きい体積膨張の特性に応じて、シリコンと電解質の直接的な接触を制御するためのコーティング層の破壊が発生し、寿命特性が低下したり、極板の膨脹率が増加してセルの安全性が弱くなる短所がある。
【0005】
特に、シリコンは、電解質と接触して界面でSEI(Solid Electrolyte Interphase)層を形成し、SEIは電解質を原料にして生成されるため電解質を消耗する。従って、シリコンの膨張により、シリコンと電解質の接触界面が拡張することで電解質の持続的な消耗が発生し、セル抵抗が増加することになり、これは、電池の寿命特性及び出力特性を低下させる主な原因となる。
【0006】
関連する業界では上記のような問題点を補完するために、シリコン粒子のナノ化及びシリコン膨張収容空間の確保などの努力を務めているが、商用化においては依然として多くの問題が生じている実状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するために、ナノ化されたシリコン粒子サイズと前記粒子との間の適正隣接距離を調節する場合に寿命特性が良好であり、安全なリチウム二次電池用負極活物質を提供できることを知得しており、このような負極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものなどに制限されず、言及されない更なる課題は、下記の記載によって当該分野当業者にとって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、コア部及び前記コア外部に形成されたシェル部を含むリチウム二次電池用負極活物質であって、前記コア部は金属粒子を含む多孔性球状の粒子であり、前記シェル部は炭素を含有し、前記コア部の金属粒子間の距離が下記の式(1)を満足することを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
[式1]
0.6×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)≦(金属粒子間の距離)≦0.85×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)
(但し、前記金属粒子間の距離は、金属粒子の中心点間の距離を意味する)
【0010】
一側によれば、金属粒子及び非晶質炭素前駆体を溶媒に混合して粉砕するステップ(S1)、前記粉砕した溶液を噴霧乾燥して金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)、前記金属前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素を混合した後、複合化して複合体粉末を製造するステップ(S3)、及び、前記複合体粉末を熱処理して分級するステップ(S4)を含むことを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0011】
一側によれば、前記リチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、シリコン粒子間に適正な距離を確保することによって、極板の体積膨張特性及び寿命保持率が改善された負極活物質を提供することができる。
【0013】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコア-シェル構造を有するリチウム二次電池用負極活物質の断面を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用負極活物質のコア部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には様々な変更が加えられてもよく、特許出願の権利範囲がこのような実施形態によって制限されたり限定されることはない。実施形態に対する全ての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解しなければならない。
【0016】
実施形態で用いられる用語は、単に、説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図として解釈されることはない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0017】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0018】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略することにする。実施形態の説明において、関連する公知技術についての具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にするものと判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0019】
また、実施形態の構成要素を説明することにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いてもよい。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されることはない。
【0020】
いずれか1つの実施形態に含まれた構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態において、同一の名称を用いて説明することにする。反対の記載がない以上、いずれか1つの実施形態に記載した説明は他の実施形態にも適用することができ、重複する範囲で具体的な説明は省略することにする。
【0021】
明細書の全体にわたり、いずれかの部分がいずれかの構成要素を「含む」とするとき、これは他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、コア部及び前記コア外部に形成されたシェル部を含むリチウム二次電池用負極活物質であって、前記コア部は、金属粒子を含む多孔性球状の粒子であり、前記シェル部は炭素を含有し、前記コア部の金属粒子間の距離が下記の式(1)を満足することを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
[式1]
0.6×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)≦(金属粒子間の距離)≦0.85×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)
(但し、前記金属粒子間の距離は、金属粒子の中心点間の距離を意味する)
【0023】
前記負極活物質のコア部に含まれる金属粒子は、Si、Al、Zn、Ca、Mg、Fe、Mn、Co、Ni、Sn、Ge、これらの酸化物、炭化物、及び合金からなる群より選択された1つ以上を含んでもよく、好ましくはSi、Ge、Sn及びこれらの酸化物からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。さらに、より好ましくは、負極活物質のエネルギー密度及び最大容量などの改善のための側面で、前記金属粒子は、シリコン(Si)粒子であってもよい。
【0024】
前記シリコン粒子の場合、充電/放電によるシリコンの体積変化を抑制するために、1000nm以下の大きさのナノ粒子であることが好ましく、Dv50(レーザ回折法)基準50nm~150nmより好ましく、80nm~120nmがより好ましい。
【0025】
前記金属ナノ粒子の平均粒度(Dv50)が1000nmを超過する場合は、体積変化の抑制の効果が低下することで電池の寿命が短縮するということが現れ、前記平均粒度が50nm未満である場合には製造コストが高まり、電池容量及び効率が低下し得る。
【0026】
さらに、シリコンナノ粒子の形状は鱗片状であってもよく、金属粒子が上記のような形状を有することで、図1に示すように、長径と短径を有することができる。
【0027】
一方、本発明の一実施形態に係る負極活物質のコア部に含まれる金属粒子は互いに直接接触せず前記コア部に分散されてもよく、分散した金属粒子は、コア部に含まれる炭素リンクを介して物理的に互いに連結されている。そのため、電子が移動するとき粒子間の接触抵抗が減少し、その結果、電気伝導性が改善され、良好な出力特性や充電速度を取得することができる。
【0028】
また、シリコン粒子間の決着が強化され、リチウム二次電池の持続的な充電/放電時にも金属粒子の電気伝導経路が保持及び安定的な電気化学反応が可能になり、その結果、改善された寿命特性(長い寿命)を有することができる。
【0029】
一方、前記コア部に含まれる炭素リンクは非晶質炭素を含むことが好ましい。
【0030】
前記非晶質炭素の具体的な例として、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(styrene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、ステアリン酸、メソフェーズピッチ、タール、ブロック共重合体(block-copolymer)、ポリオール、及び低分子量中質油からなる群より選択される1つ以上に由来したものであってもよく、これに限定されることはない。より詳しくは、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、アクリル樹脂などに該当する。
【0031】
本発明の一実施形態に係る負極活物質のコア部に含まれる金属粒子は、上記に記述したように、互いに直接接触することなく非晶質炭素などの炭素リンクを介して連結されている状態で前記コア部に分散しており、前記コア部は一定の孔隙率を有するため、コア部に含まれる金属粒子は、互いに一定の間隔をもって配置されている状態である。
【0032】
本発明者は、シリコンなどの金属粒子サイズとその間隔に焦点を合わせ、特定の関係式を満足する場合には、これを含む負極活物質を活用して負極極板及び二次電池を製造したときに低い極板膨脹率及び優れた寿命保持率を示すことを発見し、前記特定の関係式は以下の式(1)の通りである。
[式1]
0.6×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)≦(金属粒子間の距離)≦0.85×(金属粒子の長径平均+金属粒子の短径平均)
前記式(1)において、金属粒子間の距離は金属粒子の中心点間の距離を示し、前記金属粒子の中心点は、例えば、鱗片状のような形状を有する金属粒子の長径と短径の交差点を意味する。
【0033】
本発明の一実施形態に係る負極活物質の金属粒子の粒子間距離が前記金属粒子の長径平均と短径平均の和の0.6倍~0.85倍の範囲に含まれる場合、充電/放電によるシリコン金属粒子の膨張特性によるシリコンコーティング層の損傷が制限され、電解質とシリコン金属粒子との直接的な接触による不可逆反応が抑制されることにより、高い寿命特性を示し、事前に膨張空間の確保により極板の膨張率も減少させて安全性を図ることができる。
【0034】
これは、以下で記述する実施形態1~4及び比較例1~4の比較に基づいて明確に裏付けらえることが確認される。
【0035】
一方、本発明の一実施形態に係る負極活物質のシェル部は、炭素を含有するもので、前記炭素の種類として非晶質炭素及び/又は結晶質炭素を含み、ここで、コアに含まれる金属粒子がさらに含まれてもよい。
【0036】
前記非晶質炭素の例として、前述した炭素リンクを構成している非晶質炭素の例と実質的に同一であると見られ、前記結晶質炭素の具体的な例として、黒鉛系炭素が挙げられる。さらに、前記黒鉛系炭素は、自然で生成されて採掘される天然黒鉛(natural graphite)と石油系及び石炭系ピッチなどを熱処理して製造された人造黒鉛(artificial、synthetic、pyrolytic graphite)であってもよい。
【0037】
本発明の一態様によれば、金属粒子及び非晶質炭素前駆体を溶媒に混合して粉砕するステップ(S1)と、前記粉砕した溶液を噴霧乾燥して金属前駆体粉末を製造するステップ(S2)と、前記金属前駆体粉末、非晶質炭素前駆体、及び結晶質炭素を混合した後、複合化して複合体粉末を製造するステップ(S3)と、前記複合体粉末を熱処理して分級するステップ(S4)とを含むことを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0038】
前記ステップ(S1)における金属粒子及び非晶質炭素前駆体は、前記に詳細に記述した金属粒子及び非晶質炭素と実質的に同一であり、前記金属粒子の好ましい例として、鱗片状シリコンナノ粒子であってもよい。さらに、前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群に選択された1つ以上を含んでもよく、その中でも好ましくは、イソプロピルアルコール(IPA)であってもよい。
【0039】
前記ステップ(S1)で混合されている金属粒子と溶媒の重量比は、例えば、1:8~1:12であってもよく、金属粒子と非晶質炭素前駆体の重量比は10:3~10:12であってもよい。より詳しくは、金属粒子、非晶質炭素前駆体、溶媒の混合比は10:100:4~10:100:9程度であってもよい。
【0040】
このような混合比で混合することで、その後ステップ(S2)~ステップ(S4)を介して形成される負極活物質のコア部に含まれる金属粒子間の距離が前記式(1)を満足するように製造され、窮極的に良好な寿命特性及び膨張特性を示すことができる。
【0041】
一方、前記ステップ(S2)における乾燥過程は、例えば、40℃~150℃の温度で実施されてもよく、前記ステップ(S3)は、ハンソルケミカルで自体製造した複合化器(コーティング装備)に投入して複合体粉末を製造することができる。
【0042】
さらに、前記ステップ(S4)における熱処理は、800~1200℃の温度で約10分~10時間の間に実施されるが、これに限定されることはない。
【0043】
本発明の他の実施形態によれば、前記リチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0044】
前記リチウム二次電池は、前記負極活物質を含む負極、正極、及び電解質を含んでもよく、前記負極は、前述した負極活物質以外に当技の術分野でリチウム電池の負極活物質として通常使用される負極活物質の材料を追加的にさらに含んでもよい。前記通常使用される負極活物質の材料として、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物、及び炭素系材料からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0045】
また、前記正極は正極活物質を含んでもよく、前記正極活物質の種類としてリチウム含有金属酸化物に該当し、当技術分野で通常に使用されるものであれば、本発明のリチウム二次電池に適用可能である。
【0046】
さらに、前記電解質は、リチウム塩含有の非水系電解質を含んでもよく、具体的に、非水電解液、固体電解質、無機固体電解質などを使用することができる。
【0047】
その他にも、正極と負極の物理的な接触を遮断する機能を行うもので、微細孔を含んでおり、リチウムイオンが透過でき、前記電解質は、リチウムイオンの移動を可能にする媒介体である分離膜が追加的に配置されてリチウム二次電池に含まれてもよく、前記分離膜の一例として、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。
【0048】
以下、実施形態と比較例を介して本発明の構成及びそれによる効果についてより詳細に説明する。しかし、本実施形態は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこの実施形態に限定されることはない。
【0049】
1)試験例1:リチウム二次電池用負極活物質の製造
比較例1
以下の方法によってリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:2の重量比で含む混合物をビーズミルを用いて中間粒度(Dv50)100nmになるよう粉砕した溶液を製造した。前記溶液を排出温度基準60℃で噴霧乾燥して中間粒度が5μmであるシリコン前駆体粉末を製造した。その後、前記シリコン前駆体粉末と黒鉛(純度99.9%以上、粒度200メッシュ以上)及び石油系ピッチを1:0.6:0.3重量比で4時間の間に撹拌した後、自体製造したコーティング装備に投入して複合体粉末を製造した。複合体粉末を950℃の窒素の雰囲気加熱炉で7時間熱処理し、400メッシュふるいを用いて分級して製造した。そのため、中心点間の平均距離48nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0050】
比較例2
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:13の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例1と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離92nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0051】
比較例3
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:2の重量比で含む混合物をビーズミルを用いて中間粒度(Dv50)115nmになるよう粉砕したことを除外しては、前記比較例1と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離57nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0052】
比較例4
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:13の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例3と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離97nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0053】
実施形態1
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:5の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例1と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離64nmのリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0054】
実施形態2
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:8の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例1と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離78nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0055】
実施形態3
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:5の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例3と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離89nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0056】
実施形態4
シリコン、イソプロピルアルコール、及びステアリン酸を10:100:13の重量比で含む混合物を使用したことを除外しては、前記比較例3と同じ方法で実施し、これによって中心点間の平均距離97nmであるリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0057】
2)試験例2:電池の製造
コインフルセルの製造
前記に試験例1を介して製造された負極活物質の容量保持率と膨脹率などを評価するためにCR2032電池を用いて評価した。
【0058】
前記試験例1で製造された負極活物質、導電材(Super P)及びバインダー(SBR-CMC)を93:2:5の重量比で蒸留水溶媒に混合した負極活物質スラリーを準備した。その後、前記準備した負極活物質スラリーを厚さが11μmである銅ホイール集電体にコーティングし、コーティングが完了した極板は120℃で30分間乾燥させた後、密度1.6g/ccで圧延(pressing)して負極を製造した。
【0059】
正極は、NCM活物質、導電材(アセチレンブラック)、バインダー(PVdF)を96:2:2の重量比でn-メチルピロリドン溶媒中に混合した正極活物質スラリーをアルミホイル集電体にコーティング乾燥して製造した。
【0060】
前記製造された負極と正極の対面容量比率を(N/P ratio)1.1に設定し、1M LiPF in EC:DEC(3:7)、FEC7%電解質を用いて評価した。
【0061】
3)試験例3:分析及び評価
寿命特性
コインフルセル方式で製造されたセルを0.1C2回フォーメーションの後(CC/CV4.2V充電、CC2.75V放電)1C100回(CC/CV4.2V充電、CC2.75V放電)評価した後、1Cの1番目の放電容量と1C100回の放電容量を分率で算出した。
【数1】
【0062】
極板膨脹率
コインフルセルを1C100回の充電/放電を行った後、セルを分解して負極の厚さを測定した。充電/放電を実施する前の負極極板の厚さと比較して下記の式について膨脹率を測定した。
【数2】
【0063】
粒子サイズ
粒子の1次粒子及び2次粒子サイズは、マルバーン(Malvern)社のマスターサイザー(mastersizer)3000を用いて測定した。
【0064】
断面情報の測定
粒子の長径及び短径の平均と中心点間の距離は、負極活物質をFIB(Focus Ion Beam)で切削した後、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。
【0065】
前記試験例1~3における結果を下記の表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
前記試験例から照らしてみると、本発明に係るリチウム二次電池用負極活物質が請求範囲に記載された、特定の隣接距離と長径平均及び短径平均との関係を有する場合は、優れた膨張特性(低い膨脹率)及び優れた寿命保持率(高い寿命保持率)を有するリチウム二次電池を提供できることが確認される。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明された構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても、適切な結果を達成することができる。
【0069】
従って、他の実現、他の実施形態、及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求の範囲の範囲に属する。
【符号の説明】
【0070】
100:コア部
110:鱗片状シリコンナノ粒子
120:炭素リンク
130:孔隙
140:シリコン粒子間の距離
200:シェル部
図1
図2