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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078471
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240604BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 652B
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 652M
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190871
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永久 克己
(72)【発明者】
【氏名】黒田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 仁
(72)【発明者】
【氏名】中西 翔
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体基板は、一対のトレンチTRの間において、Y方向で互いに離間している複数のエミッタ形成領域ERと、各エミッタ形成領域ERの間に位置する離間領域SRを有する。p型のベース領域PBは、各エミッタ形成領域ERおよび離間領域SRの各々の半導体基板内に形成されている。n型の不純物領域CSLは、各エミッタ形成領域ERのベース領域PB内に形成されている。不純物領域CSLは、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所において、ベース領域PB内にも形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、平面視で第1方向に延在する一対の第1トレンチと、
前記一対の第1トレンチの内部に形成された一対の第1ゲート絶縁膜と、
前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して前記一対の第1トレンチの内部に埋め込まれた一対の第1ゲート電極と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成された前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域と、
を備え、
前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、
前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、
前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、
前記第2不純物領域は、前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所において、前記ベース領域内に形成され、
前記第2不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、同じ不純物濃度を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1不純物領域は、前記第2不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第2不純物領域は、前記離間領域の前記ベース領域内の全体に形成され、
前記第2不純物領域の不純物濃度は、1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記一対の第1トレンチを覆うように、前記半導体基板の上面上に形成された層間絶縁膜と、
前記第1不純物領域を貫通し、且つ、前記ベース領域の内部に達するように、前記層間絶縁膜中および前記半導体基板中に形成された孔と、
前記層間絶縁膜上に形成されたエミッタ電極と、
を更に備え、
前記ベース領域、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、前記孔を介して前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記離間領域において、前記第2不純物領域は、前記孔から物理的に離れている、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記離間領域のうち前記孔に接する第2箇所において、前記ベース領域内には、前記第1導電型の第3不純物領域が形成され、
前記第3不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続され、
前記離間領域において、前記第2不純物領域および前記第3不純物領域は、互いに離れている、半導体装置。
【請求項7】
上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、平面視で第1方向に延在する一対の第1トレンチと、
前記一対の第1トレンチの内部に形成された一対の第1ゲート絶縁膜と、
前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して前記一対の第1トレンチの内部に埋め込まれた一対の第1ゲート電極と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成された前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域と、
を備え、
前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、
前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、
前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、
前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所における前記ベース領域の不純物濃度は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記一対の第1トレンチを覆うように、前記半導体基板の上面上に形成された層間絶縁膜と、
前記第1不純物領域を貫通し、且つ、前記ベース領域の内部に達するように、前記層間絶縁膜中および前記半導体基板中に形成された孔と、
前記層間絶縁膜上に形成されたエミッタ電極と、
を更に備え、
前記ベース領域および前記第1不純物領域は、前記孔を介して前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記第1箇所における前記ベース領域は、前記孔から物理的に離れている、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度は、1×1017/cm以上且つ1×1018/cm以下であり、
前記第1箇所における前記ベース領域の不純物濃度は、1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である、半導体装置。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記離間領域の前記ベース領域の全体の不純物濃度は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項11】
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)平面視で第1方向に延在するように、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、一対の第1トレンチを形成する工程、
(c)前記一対の第1トレンチの内部に、一対の第1ゲート絶縁膜を形成する工程、
(d)前記一対の第1トレンチの内部に、前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して一対の第1ゲート電極を埋め込む工程、
(e)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域を形成する工程、
(f)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、
を備え、
前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、
前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、
前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、
前記第2不純物領域は、前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所において、前記ベース領域内に形成され、
前記第2不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続されている、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、同じイオン注入によって、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程は、
(f1)前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記半導体基板内と、前記離間領域の前記第1箇所における前記半導体基板内とに、前記第1導電型の不純物をイオン注入する工程、
(f2)前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記半導体基板内に、前記第1導電型の不純物をイオン注入する工程、
を有し、
前記第2不純物領域は、前記(f1)工程でイオン注入された不純物を含み、
前記第1不純物領域は、前記(f1)工程でイオン注入された不純物と、前記(f2)工程でイオン注入された不純物とを含み、且つ、前記第2不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f1)工程では、前記第1導電型の不純物は、前記離間領域の前記半導体基板内の全体にイオン注入され、
前記第2不純物領域は、前記離間領域の前記ベース領域内の全体に形成され、
前記第2不純物領域の不純物濃度は、1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、
(b1)前記半導体基板の上面を選択的に覆うように、前記半導体基板の上面上に、ハードマスクを形成する工程、
(b2)前記(b1)工程後、前記ハードマスクから露出している前記半導体基板内に、前記一対のトレンチを形成する工程、
(b3)前記(b2)工程後、前記ハードマスクを除去する工程、
を有し、
前記(f)工程は、
(f3)前記(b1)工程と前記(b2)工程との間で、前記ハードマスクから露出している前記半導体基板内に、前記半導体基板の上面の法線に対して傾斜した角度から、前記第1導電型の不純物をイオン注入する工程、
(f4)前記(d)工程後、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記半導体基板内に、前記第1導電型の不純物をイオン注入する工程、
を有し、
前記第2不純物領域は、前記(f3)工程でイオン注入された不純物を含み、
前記第1不純物領域は、前記(f3)工程でイオン注入された不純物と、前記(f4)工程でイオン注入された不純物とを含み、且つ、前記第2不純物領域よりも高い不純物濃度を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記一対の第1トレンチを覆うように、前記半導体基板の上面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(h)前記第1不純物領域を貫通し、且つ、前記ベース領域の内部に達するように、前記層間絶縁膜中および前記半導体基板中に、孔を形成する工程、
(i)前記層間絶縁膜上に、エミッタ電極を形成する工程、
を更に備え、
前記ベース領域、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域は、前記孔を介して前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記離間領域において、前記第2不純物領域は、前記孔から物理的に離れている、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2不純物領域を形成する工程で、前記半導体基板内に、前記第1導電型の第3不純物領域が形成され、
前記第3不純物領域は、前記離間領域のうち前記孔に接する第2箇所において、前記ベース領域内に形成され、
前記第3不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続され、
前記離間領域において、前記第2不純物領域および前記第3不純物領域は、互いに離れている、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、トレンチの内部に形成されたゲート電極を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を備えた半導体装置が広く使用されている。また、オン抵抗の低いIGBTとして、トレンチの内部にゲート電極を埋め込んだ構造を用いたIGBTが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、IE(Injection Enhancement)効果を利用したGGEE構造のIGBTが開示されている。IE効果とは、IGBTがオン状態の際に、エミッタ電極EE側に正孔が排出され難くすることで、ドリフト領域に蓄積される電荷の濃度を高める技術である。
【0004】
なお、GGEE構造の「G」とは、ゲート電位に接続されたゲート電極がトレンチの内部に埋め込まれた構造を意味し、ゲートトレンチと呼称される。また、GGEE構造の「E」とは、エミッタ電位に接続されたゲート電極がトレンチの内部に埋め込まれた構造を意味し、エミッタトレンチと呼称される。従って、GGEE構造とは、一対のゲートトレンチからある程度離れた位置に、一対のエミッタトレンチが形成された構造である。
【0005】
特許文献1には、IE効果を利用したGGEE構造のIGBTが開示されている。このIGBTでは、一対のゲートトレンチの間に形成されているn型のエミッタ領域が、トレンチの延在方向に沿って、複数個に分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-140885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図39は、本願発明者らが検討を行った検討例の半導体装置を示す平面図であり、GGEE構造のIGBTを示している。アクティブセルACに形成されたトレンチTRと、トレンチTRの内部に形成されたゲート電極GE1とによって、ゲートトレンチが構成されている。また、インアクティブセルIACに形成されたトレンチTRと、トレンチTRの内部に形成されたゲート電極GE2とによって、エミッタトレンチが構成されている。複数のエミッタ形成領域ERには、n型の不純物領域NEが形成されている。複数のエミッタ形成領域ERの間の離間領域SRには、不純物領域NEが形成されていない。
【0008】
例えば750V~2300Vのような高耐圧を要求される製品では、電源電圧が高くなるので、負荷短絡耐量をより強くする必要がある。そのためには、Y方向において、エミッタ形成領域ERの幅を小さくし、離間領域SRの幅を大きくする等の手法を用いることで、チャネル密度を低減することが有効である。この手法は、マスクのレイアウト変更のみで対応できるので、製造コストの増加を抑制できるという利点もある。
【0009】
しかしながら、本願発明者らが高耐圧製品に関して検証を行ったところ、ターンオン時の順方向電圧Vceの波形に電圧テールが見られ、スイッチング損失の著しい増大が見られる場合があった。この原因を特定するために、本願発明者らは、TCADなどを用いて解析を行った。その結果、スイッチングの過程において、離間領域SRのp型のベース領域PBには、ゲート電極GE1の電圧によって反転層が広がることが判った。そして、この反転層の抵抗の影響によって、離間領域SRの中央付近には、十分な電子が供給されないことが判った。この電子の不足が上記電圧テールの原因の一つになっていることを、本願発明者らが見出した。
【0010】
本願の主な目的は、上記反転層の抵抗の影響を抑制し、スイッチング損失の改善を図ることで、半導体装置の性能を向上させることにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
一実施の形態に係る半導体装置は、上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、平面視で第1方向に延在する一対の第1トレンチと、前記一対の第1トレンチの内部に形成された一対の第1ゲート絶縁膜と、前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して前記一対の第1トレンチの内部に埋め込まれた一対の第1ゲート電極と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成された前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域と、を備える。前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、前記第2不純物領域は、前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所において、前記ベース領域内に形成され、前記第2不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続されている。
【0013】
一実施の形態に係る半導体装置は、上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、平面視で第1方向に延在する一対の第1トレンチと、前記一対の第1トレンチの内部に形成された一対の第1ゲート絶縁膜と、前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して前記一対の第1トレンチの内部に埋め込まれた一対の第1ゲート電極と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域と、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に形成された前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域と、を備える。前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所における前記ベース領域の不純物濃度は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度よりも低い。
【0014】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)平面視で第1方向に延在するように、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、一対の第1トレンチを形成する工程、(c)前記一対の第1トレンチの内部に、一対の第1ゲート絶縁膜を形成する工程、(d)前記一対の第1トレンチの内部に、前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して一対の第1ゲート電極を埋め込む工程、(e)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域を形成する工程、(f)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型の第1不純物領域および前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、を備える。前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、前記第2不純物領域は、前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所において、前記ベース領域内に形成され、前記第2不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記第1不純物領域に接続されている。
【発明の効果】
【0015】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置を示す要部平面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図5】本願発明者らによるシミュレーションの結果を示すグラフである。
図6】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く製造工程を示す断面図である。
図12図11に続く製造工程を示す要部平面図である。
図13図11に続く製造工程を示す断面図である。
図14図11に続く製造工程を示す断面図である。
図15図12図14に続く製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く製造工程を示す断面図である。
図18】変形例1における半導体装置を示す要部平面図である。
図19】変形例1における半導体装置を示す断面図である。
図20】変形例1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図21】変形例2における半導体装置を示す要部平面図である。
図22】変形例2における半導体装置を示す断面図である。
図23】実施の形態2における半導体装置を示す要部平面図である。
図24】実施の形態2における半導体装置を示す断面図である。
図25】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図26図25に続く製造工程を示す断面図である。
図27】実施の形態3における半導体装置を示す要部平面図である。
図28】実施の形態3における半導体装置を示す断面図である。
図29】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図30】実施の形態4における半導体装置を示す要部平面図である。
図31】実施の形態4における半導体装置を示す断面図である。
図32】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す要部平面図である。
図33】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図34】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図35】変形例3における半導体装置を示す要部平面図である。
図36】変形例3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図37図36に続く製造工程を示す断面図である。
図38図36に続く製造工程を示す断面図である。
図39】検討例における半導体装置を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0019】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1図4を用いて、実施の形態1における半導体装置100の構造について説明する。
【0020】
図1は、半導体装置100である半導体チップを示す平面図である。図1に示されるように、半導体装置100の大部分はエミッタ電極EEで覆われている。ゲート配線GWは、平面視においてエミッタ電極EEを囲むように形成されている。
【0021】
ここでは図示していないが、エミッタ電極EEおよびゲート配線GWは、ポリイミド膜のような保護膜によって覆われている。エミッタ電極EE上およびゲート配線GW上において、上記保護膜の一部には開口部が設けられ、上記開口部で露出している領域が、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPになる。エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上に、ボンディングワイヤまたはクリップなどの外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などに電気的に接続される。
【0022】
図2は、図1に示される領域1Aに対応した要部平面図である。領域1Aは、IGBTのようなパワー半導体素子が形成されるセル領域である。図2に示されるIGBTは、IE効果を利用したGGEE構造のIGBTである。半導体装置100は、IGBTの主動作を行うためのアクティブセルACと、アクティブセルAC以外のインアクティブセルIACとを有する。
【0023】
図2に示されるように、複数のトレンチTRは、Y方向に延在し、X方向で互いに隣接している。アクティブセルACのトレンチTRの内部には、ゲート電極GE1が形成されている。インアクティブセルIACのトレンチTRの内部には、ゲート電極GE2が形成されている。
【0024】
アクティブセルACのゲート電極GE1には、ゲート配線GWが電気的に接続され、IGBTの動作時にゲート電位が供給される。インアクティブセルIACのゲート電極GE2には、エミッタ電極EEが電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。また、アクティブセルACのベース領域PBおよび不純物領域CSLと、一対のゲート電極GE2の間のベース領域PBとには、プラグPGを介してエミッタ電極EEが電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。
【0025】
インアクティブセルIACにおいて、ゲート電極GE1とゲート電極GE2との間には、フローティング領域PFが設けられている。フローティング領域PFと、フローティング領域PF内に形成されているベース領域PBとは、電気的にフローティング状態になっている。
【0026】
また、半導体基板SUBは、アクティブセルACの一対のトレンチTRの間において、Y方向で互いに離間している複数のエミッタ形成領域ERと、各エミッタ形成領域ERとの間に位置する離間領域SRとを有する。エミッタ形成領域ERに形成されたn型の不純物領域が、IGBTのエミッタ領域になる。実施の形態1では、エミッタ形成領域ERに、n型の不純物領域CSLが形成されている。
【0027】
不純物領域CSLは、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所にも形成されている。離間領域SRの不純物領域CSLは、エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLに接続されている。実施の形態1では、これらの不純物領域CSLは、同じ不純物濃度を有する。
【0028】
実施の形態1の主な特徴は、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所に不純物領域CSLが形成されている点にあるが、このような特徴と、その効果とについては、後で詳細に説明する。
【0029】
なお、エミッタ形成領域ERのY方向における幅は、例えば0.25μm以上且つ2.0μm以下であり、離間領域SRのY方向における幅は、例えば0.25μm以上且つ50μm以下である。また、これら領域のY方向における幅の比は、「離間領域SR/エミッタ形成領域ER=0.125~200」に設定されていることが好ましい。
【0030】
図3は、図2に示されるA-A線に沿った断面図であり、エミッタ形成領域ERの断面構造を示す。図4は、図2に示されるB-B線に沿った断面図であり、離間領域SRの断面構造を示す。
【0031】
図3および図4に示されるように、半導体装置100は、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、n型のシリコンからなり、n型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、半導体基板SUBは、n型のシリコン基板と、シリコン基板上にエピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型のシリコン層との積層体であってもよい。その場合、n型のシリコン基板よりも低い不純物濃度を有するn型のシリコン層が、ドリフト領域NVを構成する。
【0032】
半導体基板SUBの下面側において、半導体基板SUB内には、n型のフィールドストップ領域(不純物領域)NSが形成されている。フィールドストップ領域NSは、IGBTのターンオフ時に、半導体基板SUBの上面側のpn接合から延びる空乏層が、p型のコレクタ領域PCに達することを抑制するために設けられている。
【0033】
半導体基板SUBの下面側において、半導体基板SUB内には、p型のコレクタ領域(不純物領域)PCが形成されている。コレクタ領域PCは、フィールドストップ領域NSの下方に位置している。
【0034】
半導体基板SUBの下面下には、コレクタ電極CEが形成されている。コレクタ電極CEは、コレクタ領域PCに電気的に接続され、コレクタ領域PCにコレクタ電位を供給する。コレクタ電極CEは、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような単層の金属膜であるか、これらを適宜積層させた積層の金属膜である。
【0035】
半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB内には、複数のトレンチTRが形成されている。トレンチTRの深さは、例えば2μm以上且つ5μm以下である。トレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GIが形成されている。ゲート電極GE1、GE2は、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTRの内部に埋め込まれている。ゲート絶縁膜GIは、絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GE1、GE2は、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば70nm以上且つ150nm以下である。
【0036】
アクティブセルACの半導体基板SUBの上面側において、一対のトレンチTR(一対のゲート電極GE1)の間の半導体基板SUB内には、ホールバリア領域(不純物領域)NHB、p型のベース領域(不純物領域)PBおよびn型の不純物領域CSLが形成されている。
【0037】
ベース領域PBは、エミッタ形成領域ERおよび離間領域SRの各々のホールバリア領域NHB内に形成されている。不純物領域CSLは、エミッタ形成領域ERのベース領域PB内に形成されている。また、不純物領域CSLは、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所において、ベース領域PB内にも形成されている。ベース領域PBは、トレンチTRおよびホールバリア領域NHBの各々の深さよりも浅くなるように形成されている。不純物領域NEは、ベース領域PBの深さよりも浅くなるように形成されている。
【0038】
インアクティブセルIACの半導体基板SUBの上面側において、一対のトレンチTR(一対のゲート電極GE2)の間の半導体基板SUBには、ホールバリア領域NHBおよびベース領域PBが形成されている。p型のベース領域PBは、ホールバリア領域NHB内に形成されている。
【0039】
また、ゲート電極GE1とゲート電極GE2との間の半導体基板SUBには、p型のフローティング領域(不純物領域)PFおよびベース領域PBが形成されている。p型のベース領域PBは、フローティング領域PF内に形成されている。
【0040】
フローティング領域PFと、フローティング領域PFに形成されているベース領域PBとは、ゲート配線GWおよびエミッタ電極EEに電気的に接続されておらず、電気的にフローティング状態である。フローティング領域PFは、接合耐圧の向上を図るために、トレンチTRの底部よりも深い位置にまで形成され、トレンチTRの底部を覆うように形成されている。
【0041】
半導体基板SUBの上面上には、トレンチTRを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば600nm以上且つ1500nm以下である。
【0042】
アクティブセルACにおいて、孔CHは、層間絶縁膜ILおよび不純物領域CSLを貫通し、且つ、ベース領域PBの内部に達している。また、孔CHは、エミッタ形成領域ERおよび離間領域SRにおいてベース領域PBに接し、エミッタ形成領域ERにおいて不純物領域CSLに接している。インアクティブセルIACにおいて、孔CHは、ベース領域PBの内部に達し、ベース領域PBに接している。
【0043】
孔CHの上部では、層間絶縁膜ILが後退している。すなわち、半導体基板SUBの上面よりも上方に位置する孔CHの開口の大きさは、半導体基板SUB内に位置する孔CHの開口の大きさよりも大きい。このため、不純物領域CSLの上面の一部が、層間絶縁膜ILから露出している。従って、エミッタ電極EEは、孔CHの内部において、不純物領域CSLの側面に接触するだけでなく、不純物領域CSLの上面の一部にも接触する。これにより、エミッタ電極EEと不純物領域CSLとの接触抵抗を低減することができる。
【0044】
アクティブセルACおよびインアクティブセルIACにおいて、孔CHの底部の周囲のベース領域PBには、p型の高濃度拡散領域(不純物領域)PRが形成されている。高濃度拡散領域PRは、エミッタ電極EEとの接触抵抗を低くするため、および、ラッチアップを防止するために設けられている。
【0045】
孔CHの内部には、プラグPGが埋め込まれている。プラグPGは、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜と、上記チタン膜上に形成された窒化チタン膜との積層膜である。上記導電性膜は、例えばタングステン膜である。
【0046】
なお、ここでは図示されていないが、孔CHは、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各々の一部上にも形成され、この孔CHの内部にもプラグPGが形成されている。
【0047】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEが形成されている。エミッタ電極EEは、孔CH(プラグPG)を介して、不純物領域CSL、ベース領域PB、高濃度拡散領域PRおよびゲート電極GE2に電気的に接続され、これらにエミッタ電位を供給する。なお、ここでは図示されていないが、層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEと同じ製造工程で形成されたゲート配線GWも形成されている。ゲート配線GWは、孔CH(プラグPG)を介してゲート電極GE1に電気的に接続され、ゲート電極GE1にゲート電位を供給する。
【0048】
このようなエミッタ電極EEおよびゲート配線GWは、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とを含む。上記バリアメタル膜は、例えばTiW膜である。上記導電性膜は、例えば、銅またはシリコンが添加されたアルミニウム合金膜である。上記アルミニウム合金膜は、エミッタ電極EEおよびゲート配線GWの主導体膜であり、上記TiW膜よりも十分に厚い。
【0049】
また、図3に示されるように、エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLは、孔CHに接するが、図4に示されるように、離間領域SRの不純物領域CSLは、孔CHから物理的に離れている。離間領域SRの不純物領域CSLには、エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLおよび孔CHを介して、エミッタ電極EEからエミッタ電位が間接的に供給される。
【0050】
以下に各不純物領域の不純物濃度を例示する。
【0051】
ドリフト領域NVの不純物濃度は、例えば1×1013cm-3以上且つ2×1014cm-3以下である。フィールドストップ領域NSの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、例えば5×1016cm-3以上且つ5×1017cm-3以下である。ホールバリア領域NHBの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、例えば2×1016cm-3以上且つ1×1017cm-3以下である。
【0052】
コレクタ領域PCの不純物濃度は、1×1017cm-3以上且つ1×1021cm-3以下である。フローティング領域PFの不純物濃度は、1×1015cm-3以上且つ1×1016cm-3以下である。ベース領域PBの不純物濃度は、フローティング領域PFの不純物濃度よりも高く、1×1016cm-3以上且つ1×1018cm-3以下である。高濃度拡散領域PRの不純物濃度は、ベース領域PBの不純物濃度よりも高く、1×1018cm-3以上且つ1×1021cm-3以下である。
【0053】
実施の形態1では、不純物領域CSLの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、ホールバリア領域NHBの不純物濃度よりも低く、例えば1×1015cm-3以上且つ1×1016cm-3以下である。不純物領域CSLの不純物濃度は、プラグPGとのオーミック接触が成立するような濃度に設定されている。
【0054】
<実施の形態1の主な特徴>
上述の課題で説明したように、図39の検討例では、スイッチングの過程において、離間領域SRのベース領域PBに、ゲート電極GE1の電圧によって反転層が広がる。しかし、この反転層の抵抗の影響によって、離間領域SRの中央付近には、十分な電子が供給されず、この電子の不足がスイッチング損失の増大の要因になっていた。
【0055】
実施の形態1では、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所に不純物領域CSLが形成されている。そのため、各エミッタ形成領域ERの間に、離間領域SRの幅に応じた拡散層抵抗が存在することになる。これにより、離間領域SRの中央付近には、この拡散層抵抗から電子が供給され易くなり、反転層の抵抗を低減できる。従って、スイッチング損失の改善を図ることができ、半導体装置100の性能を向上させることができる。
【0056】
図5は、本願発明者らによるシミュレーションの結果を示すグラフであり、検討例と実施の形態1との比較を示している。横軸は、順方向電圧Vceが5Vの場合の順方向飽和電流Ic(sat)を示し、縦軸は、ターンオン時のスイッチング損失を示している。
【0057】
図5に示されるように、実施の形態1では、検討例と比較して、スイッチング損失が改善されている。例えば、順方向飽和電流Ic(sat)が300Aの場合で比較すると、実施の形態1では、スイッチング損失が、検討例よりも21%程度改善されている。
【0058】
また、不純物領域CSLはプラグPGとオーミック接触するが、離間領域SRの不純物領域CSLは、孔CHから離れている。従って、離間領域SRにおける寄生PMOS動作によるホールの排出が阻害されない。離間領域SRの不純物領域CSLの幅および不純物濃度などを適切に調整することで、適切な順方向飽和電流Ic(sat)の調整を行うことができる。
【0059】
<半導体装置の製造方法>
以下に図6図17を用いて、実施の形態1における半導体装置100の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。
【0060】
図6に示されるように、まず、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを用意する。上述のように、ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、高濃度のn型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させた低濃度のn型の半導体層であってもよい。本願では、そのようなn型のシリコン基板およびn型の半導体層からなる積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0061】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUB内に、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBを形成する。フローティング領域PFのイオン注入には、不純物として例えばボロン(B)が用いられる。ホールバリア領域NHBのイオン注入には、不純物として例えば燐(P)が用いられる。フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの各々の形成では、エネルギーおよびドーズ量の条件が異なった複数回のイオン注入が行われる。次に、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBに含まれる不純物を活性化させるために、半導体基板SUBに対して熱処理を行う。この熱処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガスが充満された雰囲気中で行われ、900℃以上且つ1000℃以下であり、25分以上且つ40分以下である条件下で行われる。
【0062】
図7に示されるように、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。トレンチTRを形成するためには、まず、半導体基板SUBの上面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、上記酸化シリコン膜上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、上記酸化シリコン膜をパターニングし、ハードマスクHMを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0063】
次に、ハードマスクHMをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、ハードマスクHMを除去する。
【0064】
図8に示されるように、トレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、犠牲酸化膜IF1を形成する。これにより、半導体基板SUBに形成されたダメージ層が除去される。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、犠牲酸化膜IF1を除去する。なお、犠牲酸化膜IF1は、半導体基板SUBに対して熱酸化処理を行うことで形成される。この熱酸化処理は、例えば、酸素ガスが充満された雰囲気中で行われ、1000℃以上且つ1200℃以下であり、50分以上且つ70分以下である条件下で行われる。これにより、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの各々に含まれる不純物が拡散する。
【0065】
図9に示されるように、半導体基板SUBに対して熱処理を行う。この熱処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガスが充満された雰囲気中で行われ、1000℃以上且つ1200℃以下であり、80分以上且つ120分以下である条件下で行われる。この熱処理によって、フローティング領域PFがトレンチTRの底部を覆うように、フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHBの各々に含まれる不純物が更に拡散する。
【0066】
次に、トレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、熱酸化法によって、ゲート絶縁膜GIを形成する。次に、ゲート絶縁膜GIを介してトレンチTRの内部を埋め込むように、トレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、例えばCVD法によって、導電性膜CF1を形成する。導電性膜CF1は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。なお、ゲート絶縁膜GIは、熱酸化法によって形成された相対的に薄い酸化シリコン膜と、CVD法によって形成された相対的に厚い酸化シリコン膜との積層膜であってもよい。
【0067】
図10に示されるように、まず、異方性エッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜CF1を除去する。トレンチTRの内部に埋め込まれていた導電性膜CF1が、ゲート電極GE1、GE2として残される。次に、等方性エッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていたゲート絶縁膜GIを除去する。
【0068】
図11に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB(フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHB)内に、p型のベース領域PBを形成する。ベース領域PBのイオン注入には、p型の不純物として例えばボロン(B)が用いられる。
【0069】
図12図14は、n型の不純物領域CSLを形成するための製造工程を示している。まず、図13および図14に示されるように、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP1を形成する。レジストパターンRP1は、エミッタ形成領域ERの全体と、離間領域SRのうちトレンチTRに接する箇所とを開口するパターンを有する。
【0070】
次に、レジストパターンRP1をマスクとしてイオン注入を行うことで、エミッタ形成領域ERの半導体基板SUB内と、離間領域SRのうちトレンチTRに接する箇所における半導体基板SUB内とに、n型の不純物として、例えば砒素(As)イオンを注入する。これにより、図12に示されるような平面パターンの不純物領域CSLが形成される。
【0071】
次に、アッシング処理によってレジストパターンRP1を除去する。その後、半導体基板SUBに対して熱処理を行うことで、ベース領域PBおよび不純物領域CSLの各々に含まれる不純物を活性化させる。不純物の活性化のための熱処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガスが充満された雰囲気中で行われ、900℃以上且つ1000℃以下であり、30秒以上且つ50秒以下である条件下で行われる。
【0072】
なお、ベース領域PBを形成する工程と、不純物領域CSLを形成する工程とは、何れが先であっても構わない。
【0073】
図15に示されるように、トレンチTRを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。
【0074】
図16に示されるように、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、アクティブセルACにおいて、不純物領域CSLを貫通し、且つ、ベース領域PBの内部に達するように、層間絶縁膜IL中および半導体基板SUB中に、孔CHを形成する。同時に、インアクティブセルIACにおいても、層間絶縁膜IL中および半導体基板SUB中に、孔CHが形成される。なお、図示はしていないが、孔CHは、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各々の一部上にも形成される。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、孔CHの底部において、ベース領域PB内に、p型の高濃度拡散領域PRを形成する。高濃度拡散領域PRのイオン注入には、p型の不純物として例えば二フッ化ボロン(BF)が用いられる。次に、層間絶縁膜ILに対して等方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜ILを後退させる。これにより、半導体基板SUBの上面上に位置する孔CHの開口幅は、半導体基板SUBの内部に位置する孔CHの開口幅よりも大きくなる。
【0076】
図17に示されるように、孔CHの内部にプラグPGを形成し、層間絶縁膜IL上にエミッタ電極EEを形成する。まず、孔CHの内部および層間絶縁膜IL上に、バリアメタル膜を形成する。例えばスパッタリング法によって孔CHの内部および層間絶縁膜IL上にチタン膜を形成し、例えばスパッタリング法によって上記チタン膜上に窒化チタン膜を形成することで、上記バリアメタル膜を形成できる。次に、孔CHの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、上記バリアメタル膜上に、例えばタングステン膜からなる導電性膜を形成する。次に、異方性エッチング処理によって、孔CHの外部に形成されている上記導電性膜および上記バリアメタル膜を除去する。これにより、孔CHの内部を埋め込むように、プラグPGが形成される。
【0077】
次に、例えばスパッタリング法によって、層間絶縁膜IL上にTiW膜を形成し、例えばスパッタリング法によって、上記TiW膜上にアルミニウム合金膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、上記TiW膜および上記アルミニウム合金膜をパターニングすることで、エミッタ電極EEを形成する。なお、エミッタ電極EEを形成する工程と同じ工程で、ゲート配線GWも層間絶縁膜IL上に形成される。
【0078】
その後、以下の製造工程を経て、図3および図4に示される構造が得られる。まず、必要に応じて、半導体基板SUBの下面を研磨する。次に、半導体基板SUBの下面側からイオン注入を行うことで、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCを形成する。これらのイオン注入の後に、レーザアニールを行うことで、フィールドストップ領域NSおよびコレクタ領域PCに含まれる不純物を活性化させる。次に、半導体基板SUBの下面下に、例えばスパッタリング法によって、例えばAu膜、Ni膜、Ti膜またはAlSi膜のような金属膜を形成する。この金属膜が、コレクタ電極CEとなる。コレクタ電極CEは、上述の金属膜を適宜積層させた積層膜であってもよい。
【0079】
実施の形態1では、エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLが、IGBTのエミッタ領域として機能する。エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLと、離間領域SRの不純物領域CSLとは、同じ製造工程で形成されるので、新たな製造工程の追加を行う必要が無く、製造コストの増加を抑制できる。
【0080】
例えば、検討例(図39)では、不純物領域NEがIGBTのエミッタ領域として機能しているが、検討例の不純物領域NEを形成するためのマスクを変更するだけで、実施の形態1の不純物領域CSLを形成できる。従って、製造コストの増加を抑制できる。
【0081】
(変形例1)
図18および図19は、実施の形態1の変形例1における半導体装置100を示している。図18および図19に示されるように、変形例1では、エミッタ形成領域ERに、n型の不純物領域NEが形成されている。不純物領域NEの不純物濃度は、不純物領域CSLの不純物濃度よりも高く、例えば1×1018cm-3以上且つ1×1021cm-3以下である。不純物領域NEの不純物濃度は、プラグPGとのオーミック接触が成立するような濃度に設定されている。
【0082】
エミッタ形成領域ERにおいて、不純物領域CSLとプラグPGとの接触抵抗が大きい場合には、このような高濃度の不純物領域NEを設けることで、接触抵抗を低減させることができる。
【0083】
図20は、不純物領域NEを形成するための製造工程を示している。図12図14の製造工程の後、図20に示されるように、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP2を形成する。レジストパターンRP2は、エミッタ形成領域ERの全体を開口するパターンを有する。
【0084】
次に、レジストパターンRP2をマスクとしてイオン注入を行うことで、エミッタ形成領域ERの半導体基板SUB内に、n型の不純物として、例えば砒素(As)イオンを注入する。これにより、図20に示されるような平面パターンの不純物領域NEが形成される。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP2を除去する。
【0085】
不純物領域CSLは、図12図14の製造工程でイオン注入された不純物を含む。不純物領域NEは、図12図14の製造工程でイオン注入された不純物と、図20の製造工程でイオン注入された不純物とを含む。最終的に、不純物領域NEの不純物濃度が上記数値内になるように、図20のイオン注入による不純物の量が調整される。
【0086】
なお、ベース領域PBを形成する工程と、不純物領域CSLを形成する工程と、不純物領域NEを形成する工程とは、何れが先であっても構わない。また、不純物の活性化のための熱処理は、これらの領域を形成した後に行われる。
【0087】
(変形例2)
図21は、実施の形態1の変形例2における半導体装置100を示している。図21に示されるように、変形例2では、離間領域SRのうち孔CHに接する箇所において、ベース領域PB内にもn型の不純物領域CSLが形成されている。この不純物領域CSLも、トレンチTRに接する箇所の不純物領域CSLと同様に、エミッタ形成領域ERの不純物領域CSLに接続されている。
【0088】
また、孔CHに接する箇所の不純物領域CSLと、トレンチTRに接する箇所の不純物領域CSLとは、互いに離れている。従って、離間領域SRにおける寄生PMOS動作によるホールの排出が阻害されない。
【0089】
このような孔CHに接する箇所の不純物領域CSLを形成するためには、図12図14で使用されるマスクを変更することで達成できる。レジストパターンRP3に、離間領域SRの中央付近を通過し、且つ、Y方向に延在するような開口パターンを設ける。その開口パターンの開口幅が、孔CHの開口幅を包括するようになっていれば、図21のような不純物領域CSLを形成できる。
【0090】
なお、変形例2でも、変形例1のように、エミッタ形成領域ERに高濃度の不純物領域NEを形成してもよい。
【0091】
(実施の形態2)
以下に図23図26を用いて、実施の形態2における半導体装置100およびその製造方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0092】
実施の形態1では、レジストパターンRP1を用いて不純物領域CSLを形成していた。それ故、レジストパターンRP1の形成位置に合わせずれが発生すると、X方向における不純物領域CSLの幅が変動し、拡散層抵抗としての抵抗値が変動するという課題がある。実施の形態2は、そのような抵抗値の変動を抑制できる技術を提供する。
【0093】
図25に示されるように、図7で、ハードマスクHMを形成する工程と、トレンチTRを形成する工程との間に、斜めイオン注入によって不純物領域CSLを形成する工程を追加する。すなわち、半導体基板SUBの上面の法線に対して傾斜した角度から、n型の不純物として、例えば砒素(As)イオンを注入する。ここで、ハードマスクHMの厚さおよび注入エネルギーは、イオンがハードマスクHMを通過して半導体基板SUBに達しないように調整されている。その後、図26に示されるように、半導体基板SUB内にトレンチTRを形成する。
【0094】
ハードマスクHMをマスクとして斜めイオン注入を行うことで、トレンチTRに接する箇所に、不純物領域CSLを自己整合的に形成することができる。従って、レジストパターンRP1の合わせずれによる問題が発生しないので、不純物領域CSLの幅の変動を抑制できる。また、トレンチTRも同一のハードマスクHMをマスクとして自己整合的に形成されるので、トレンチTRおよび不純物領域CSLの位置関係も変動し難い。
【0095】
また、図26に示されるように、実施の形態2では、エミッタ形成領域ERの全体に不純物領域CSLを形成することが難しい。従って、IGBTのエミッタ領域を形成するためには、変形例1の図20で説明したイオン注入を行う必要がある。これにより、図23および図24に示されるように、エミッタ形成領域ERに不純物領域NEを形成できる。
【0096】
実施の形態2では、不純物領域CSLを形成する際にレジストパターンは使用されず、不純物領域NEを形成する際にレジストパターンRP2が使用される。そのため、マスクの枚数という点では、実施の形態1と実施の形態2とは、同じであるので、製造コストの増加を抑制できる。また、実施の形態2は、不純物領域CSL用のマスクが無い分、変形例1よりもマスクの枚数を削減できる。
【0097】
なお、図23および図24に示されるように、実施の形態2では、レジストパターンを使用せずに不純物領域CSLを形成しているので、フローティング領域PF内のベース領域PBの一部にも不純物領域CSLが形成される。しかしながら、フローティング領域PFは電気的にフローティング状態であるので、これらの不純物領域CSLも電気的にフローティング状態である。従って、これらの不純物領域CSLによって、IGBTの特性は、特に影響を受けない。
【0098】
また、一対のゲート電極GE2の間におけるベース領域PB内にも、不純物領域CSLが形成される。しかしながら、これらの不純物領域CSLは、孔CHから物理的に離れているので、電気的にフローティング状態である。これらの不純物領域CSLによっても、IGBTの特性は、特に影響を受けない。
【0099】
(実施の形態3)
以下に図27図29を用いて、実施の形態3における半導体装置100およびその製造方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0100】
実施の形態3における不純物領域CSLは、離間領域SRのうち一対のトレンチTRに接する箇所だけでなく、アクティブセルACおよびインアクティブセルIACの半導体基板SUB内(ベース領域PB内)の全体に形成されている。ただし、実施の形態3では、不純物領域CSLの不純物濃度は、プラグPGとのオーミック接触が成立しないような濃度に設定されている。不純物領域CSLの不純物濃度は、例えば1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である。
【0101】
実施の形態3のような低濃度の不純物領域CSLも、拡散層抵抗として機能でき、離間領域SRの中央付近に電子が供給され易くなる。そのため、スイッチング損失の改善を図ることができ、半導体装置100の性能を向上させることができる。
【0102】
実施の形態3における不純物領域CSLを形成するためには、図12図14の製造工程においてレジストパターンRP1を形成せずに、アクティブセルACおよびインアクティブセルIACの半導体基板SUB内に、イオン注入を行うことで達成できる。そのため、マスクの枚数を削減できるので、実施の形態1と比較して、製造コストを抑制できる。ただし、実施の形態1よりも低濃度の不純物領域CSLなので、電子の供給量およびスイッチング損失の改善という点では、実施の形態1の方が、実施の形態3よりも優れている。
【0103】
なお、実施の形態3でも、フローティング領域PF内のベース領域PBの一部に不純物領域CSLが形成されるが、実施の形態2と同様の理由により、IGBTの特性は、特に影響を受けない。また、一対のゲート電極GE2の間におけるベース領域PB内にも、不純物領域CSLが形成されるが、不純物領域CSLはプラグPGとオーミック接触しないので、これらの不純物領域CSLによっても、IGBTの特性は、特に影響を受けない。
【0104】
また、不純物領域CSLはプラグPGとオーミック接触しないので、実施の形態3では、IGBTのエミッタ領域を形成するために、変形例1の図20で説明したイオン注入を行う必要がある。これにより、図27および図28に示されるように、エミッタ形成領域ERに不純物領域NEを形成できる。
【0105】
(実施の形態4)
以下に図30図34を用いて、実施の形態4における半導体装置100およびその製造方法について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0106】
実施の形態1では、電子供給用の拡散層抵抗としてn型の不純物領域CSLを形成していたが、実施の形態4では、p型のベース領域PBの構成を変更することで、同様の機能を有する強反転層抵抗を形成する。
【0107】
図30および図31に示されるように、実施の形態4でも、p型のベース領域PBは、各エミッタ形成領域ERおよび離間領域SRの各々の半導体基板SUB内に形成されている。しかし、離間領域SRのうちトレンチTRに接する箇所におけるベース領域PBの不純物濃度は、各エミッタ形成領域ERのベース領域PBの不純物濃度よりも低い。そのような箇所におけるベース領域PBが、低濃度領域PBaとして図示されている。低濃度領域PBaの不純物濃度は、例えば1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である。
【0108】
なお、実施の形態4では、IGBTのエミッタ領域として、変形例1で説明した高濃度のn型の不純物領域NEが適用されている。また、離間領域SRにおいて、低濃度領域PBaは、孔CHから物理的に離れている。
【0109】
上述のようにベース領域PBが構成されていることで、離間領域SRにおける閾値電圧は、エミッタ形成領域ERにおける閾値電圧よりも低くなっている。ターンオン時に、エミッタ形成領域ERのベース領域PBにチャネルが形成される際に、離間領域SRでは、低濃度領域PBaによって、強反転層が形成される。そのため、トレンチTRに接する箇所における抵抗値が低減されるので、離間領域SRの中央付近に電子が供給され易くなり、スイッチング損失が改善される。
【0110】
図5のグラフに示されるように、実施の形態4では、検討例と比較して、スイッチング損失が改善されていることが判る。例えば、順方向飽和電流Ic(sat)が300Aの場合で比較すると、実施の形態4では、スイッチング損失が、検討例よりも37%程度改善されている。このように、実施の形態4においても、スイッチング損失を改善でき、半導体装置100の性能を向上できる。
【0111】
図32図34を用いて、実施の形態4におけるベース領域PBおよび低濃度領域PBaを形成するための製造工程について説明する。図32図34の製造工程は、図11の製造工程の代わりに行われる。
【0112】
図32図34に示されるように、実施の形態4では、まず、離間領域SRのうちトレンチTRに接する箇所を覆うように、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP3を形成する。次に、レジストパターンRP3をマスクとして、各エミッタ形成領域ERの半導体基板SUB内と、上記箇所を除く離間領域SRの半導体基板SUB内とに、p型の不純物をイオン注入する。p型の不純物は、例えばボロン(B)である。これにより、ベース領域PBを形成する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP3を除去する。
【0113】
この状態では、離間領域SRにおいて、ベース領域PBとトレンチTRとの間には、n型のホールバリア領域NHBが存在している。その後、不純物の活性化のための熱処理を行った際に、離間領域SRのp型の不純物がトレンチTRに接する箇所に拡散し、低濃度領域PBaが形成される。
【0114】
なお、上記熱処理によって、トレンチTRに接する箇所は、必ずしもp型になっていなくてもよく、非常に薄いn型になっていてもよい。例えば、トレンチTRに接する箇所は、実施の形態3の不純物領域CSLのような、プラグPGとのオーミック接触が成立しないような濃度を有する不純物領域であってもよい。
【0115】
(変形例3)
図35は、実施の形態4の変形例3におけるベース領域の構成を示している。図35に示されるように、変形例3では、各エミッタ形成領域ERのベース領域PBは実施の形態4と同様であるが、離間領域SRの全体に、ベース領域PBよりも低い不純物濃度を有する低濃度領域PBbが形成されている。低濃度領域PBbの不純物濃度は、例えば1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である。
【0116】
すなわち、トレンチTRに接する箇所だけでなく、離間領域SRのベース領域の全体の不純物濃度が、各エミッタ形成領域ERのベース領域の不純物濃度よりも低い。変形例3においても、実施の形態4と同程度にスイッチング損失を改善できる。
【0117】
図36図38を用いて、変形例3におけるベース領域PBおよび低濃度領域PBbを形成するための製造工程について説明する。図36図38の製造工程は、図11の製造工程の代わりに行われる。
【0118】
図36に示されるように、変形例3では、まず、アクティブセルACおよびインアクティブセルIACの半導体基板SUB内に、p型の不純物をイオン注入し、低濃度領域PBbを形成する。p型の不純物は、例えばボロン(B)である。
【0119】
図37および図38に示されるように、まず、離間領域SRを覆うように、半導体基板SUBの上面上に、レジストパターンRP4を形成する。次に、レジストパターンRP4をマスクとして、各エミッタ形成領域ERの半導体基板SUB内に、p型の不純物をイオン注入する。p型の不純物は、例えばボロン(B)である。これにより、ベース領域PBを形成する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP4を除去する。なお、インアクティブセルIACの半導体基板SUB内にも、ベース領域PBが形成される。
【0120】
離間領域SRのベース領域(低濃度領域PBb)は、図38の製造工程でイオン注入された不純物を含む。各エミッタ形成領域ERのベース領域PBは、図38の製造工程でイオン注入された不純物と、図39の製造工程でイオン注入された不純物を含む。最終的に、各エミッタ形成領域ERのベース領域PBの不純物濃度が、実施の形態1のベース領域PBの不純物濃度と同程度になるように、図39のイオン注入による不純物の量が調整される。
【0121】
実施の形態4では、レジストパターンRP3を用いて低濃度領域PBbが形成される。ここで、レジストパターンRP3の形成位置に合わせずれが発生すると、離間領域SRにおいてレジストパターンRP3に覆われるホールバリアNHBの幅が変動する。そうすると、X方向における低濃度領域PBbの幅が変動し、強反転層抵抗としての抵抗値が変動するという課題がある。
【0122】
変形例3では、レジストパターンRP4を用いるが、レジストパターンRP4の端部は、X方向においてゲート絶縁膜GI上またはゲート電極GE1上に位置していればよく、比較的大きなマージンを有して配置できる。従って、X方向における合わせずれは、上記マージン内で対処できる。
【0123】
Y方向においては、レジストパターンRP4の一方の端部がずれれば、レジストパターンRP4の他方の端部も、同じ方向にずれる。すなわち、Y方向において、レジストパターンRP4の形成位置に合わせずれが発生しても、離間領域SRの低濃度領域PBbの幅が変わらない。従って、変形例3によれば、X方向およびY方向において、低濃度領域PBbの幅の変動を抑制できる。
【0124】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0125】
例えば、上記実施の形態では、IGBTがGGEE構造である場合を例示したが、IGBTは、GGEE構造がシュリンクされたGGEEs構造であってもよい。GGEE構造では、一対のゲート電極GE1の間の幅と、一対のゲート電極GE2の間の幅とがほぼ同じである。GGEEs構造では、一対のゲート電極GE2の間の幅が、一対のゲート電極GE1の間の幅よりも小さくなっている。
【0126】
以下に上記実施の形態に記載された内容の一部を記載する。
【0127】
[付記1]
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)平面視で第1方向に延在するように、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、一対の第1トレンチを形成する工程、
(c)前記一対の第1トレンチの内部に、一対の第1ゲート絶縁膜を形成する工程、
(d)前記一対の第1トレンチの内部に、前記一対の第1ゲート絶縁膜を介して一対の第1ゲート電極を埋め込む工程、
(e)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型と反対の第2導電型のベース領域を形成する工程、
(f)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板内に、前記第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
を備え、
前記半導体基板は、前記一対の第1トレンチの間において、前記第1方向で互いに離間している第1エミッタ形成領域および第2エミッタ形成領域、並びに、前記第1エミッタ形成領域と前記第2エミッタ形成領域との間に位置する離間領域を有し、
前記ベース領域は、前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に形成され、
前記第1不純物領域は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域内に形成され、
前記離間領域のうち前記一対の第1トレンチに接する第1箇所における前記ベース領域の不純物濃度は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【0128】
[付記2]
上記付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記一対の第1トレンチを覆うように、前記半導体基板の上面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(h)前記第1不純物領域を貫通し、且つ、前記ベース領域の内部に達するように、前記層間絶縁膜中および前記半導体基板中に、孔を形成する工程、
(i)前記層間絶縁膜上に、エミッタ電極を形成する工程、
を更に備え、
前記ベース領域および前記第1不純物領域は、前記孔を介して前記エミッタ電極に電気的に接続され、
前記第1箇所における前記ベース領域は、前記孔から物理的に離れている、半導体装置の製造方法。
【0129】
[付記3]
上記付記2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度は、1×1017/cm以上且つ1×1018/cm以下であり、
前記第1箇所における前記ベース領域の不純物濃度は、1×1012/cm以上且つ1×1014/cm以下である、半導体装置の製造方法。
【0130】
[付記4]
上記付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程は、
(e1)前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記半導体基板内と、前記第1箇所を除く前記離間領域の前記半導体基板内とに、前記第2導電型の不純物をイオン注入する工程、
(e2)前記半導体基板に対して熱処理を行う工程、
を有し、
前記熱処理によって、前記(f1)工程でイオン注入された前記離間領域の不純物の一部が、前記第1箇所に拡散する、半導体装置の製造方法。
【0131】
[付記5]
上記付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程は、
(e3)前記第1エミッタ形成領域、前記第2エミッタ形成領域および前記離間領域の各々の前記半導体基板内に、前記第2導電型の不純物をイオン注入する工程、
(e4)前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記半導体基板内に、前記第2導電型の不純物をイオン注入する工程、
前記離間領域の前記ベース領域は、前記(e3)工程でイオン注入された不純物を含み、
前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域は、前記(e3)工程でイオン注入された不純物と、前記(e4)工程でイオン注入された不純物とを含み、
前記離間領域の前記ベース領域の全体の不純物濃度は、前記第1エミッタ形成領域および前記第2エミッタ形成領域の各々の前記ベース領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0132】
100 半導体装置
1A 領域(セル領域)
AC アクティブセル
CE コレクタ電極
CF1 導電性膜
CH 孔
CSL 不純物領域
EE エミッタ電極
EP エミッタパッド
ER エミッタ形成領域
GE1、GE2 ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
HM ハードマスク
IAC インアクティブセル
IF1 犠牲酸化膜
IL 層間絶縁膜
NE 不純物領域
NHB ホールバリア領域
NS フィールドストップ領域
NV ドリフト領域
PB ベース領域
PBa、PBb 低濃度領域
PC コレクタ領域
PF フローティング領域
PG プラグ
PR 高濃度拡散領域
RP1~RP4 レジストパターン
SR 離間領域
SUB 半導体基板
TR トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39