(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078472
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】盤構造
(51)【国際特許分類】
H02B 1/56 20060101AFI20240604BHJP
H02B 1/28 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H02B1/56 A
H02B1/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190873
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆之
【テーマコード(参考)】
5G016
【Fターム(参考)】
5G016AA04
5G016CG04
5G016CG07
5G016CG12
5G016CG13
5G016CG18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一方の盤の排気口から排気された空気が他方の盤内に流入することを抑制し、盤の冷却効率の向上を図る。
【解決手段】屋外設置型の配電盤1は、PCS盤4とDC盤5とを横並びにして構成されている。この盤4,5の筐体6,7の上部には、ほぼ同等の高さに配置された庇部が形成されている。筐体6は、ファン1の駆動により庇部の下方向から吸気する吸気口(吸気孔・開口部)と、床板3bに形成された排気口とを備える。筐体7は、庇部12aの上方に排気する排気口と、開閉扉9の下部に形成された吸気孔群40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容する一対の筐体を連結させた盤の構造であって、
前記各筐体の上部に形成された庇部を備え、
一方の前記筐体は、前記庇部の下方から吸気する吸気口と、
下部に形成された排気口と、
を備え、
他方の前記筐体は、前記庇部の上方に排気する排気口と、
下部に形成された吸気口と、
を備えることを特徴とする盤構造。
【請求項2】
一方の前記庇部は、下部に前記吸気口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の盤構造。
【請求項3】
一方の前記庇部は、先端に開口部が形成され、
前記開口部から所定の間隔をおいて配置された塞ぎ板と、
前記開口部と前記塞ぎ板との間に設けられたメッシュ板とを備え、
前記塞ぎ板の下端部が開放されて内部に吸気可能なことを特徴とする請求項1記載の盤構造。
【請求項4】
他方の前記庇部は、先端に開口部が形成され、
前記開口部から所定の間隔をおいて配置された塞ぎ板と、
前記開口部と前記塞ぎ板との間に設けられたメッシュ板とを備え、
前記排気口は、前記塞ぎ板の上端部と前記メッシュ板の上端部との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の盤構造。
【請求項5】
一方の前記筐体は、底部に設けられたファンの駆動による上方から下方への強制空冷で内部の電気機器を冷却し、
他方の前記筐体は、下方向から上方向への自然空冷で内部の電気機器を冷却することを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の盤構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力変換装置などの各種電気機器を収容する盤の構造であって、特に屋根の設けられた屋外設置型盤の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の盤は、横方向に連結された一対の盤a,bを備え、一方の盤a内にはトランス(変圧器)が収容され、他方の盤b内には開閉器・継電器・計器類・操作部材・電力変換装置など発熱機器を含む電気機器類が収容されている。
【0003】
盤aの筐体上部には換気ダクトが設けられ、吸気ファンの駆動により盤aの換気ダクトから外気が筐体内に取り込まれる。一方、盤bの筐体上部には、ダクトを用いてカバーされた排気口が形成されている。
【0004】
盤a,bの連結部には、盤aの換気ダクトから取り込まれた外気の流れを制限する仕切部材が設けられている。すなわち、仕切部材により盤a,b間の上部空間が閉塞され、下部空間を開放して盤a,b間に空気を流入させる連通部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の盤構造によれば、換気ダクトから盤a内に取り込まれた外気は、連通部から盤b内に流入し、煙突効果による自然空冷で発熱機器を冷却して排気口から排気される。ところが、排気口から排気された前記冷却後の空気が換気ダクトか取り込まれ、盤a,b内に流入する場合がある。これでは盤内の冷却効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、一方の盤の排気口から排気された空気が他方の盤内に流入することを抑制し、冷却効率の向上を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、電気機器を収容する一対の筐体を連結させた盤の構造であって、
前記各筐体の上部に形成された庇部を備え、
一方の前記筐体は、前記庇部の下方から吸気する吸気口と、
下部に形成された排気口と、
を備え、
他方の前記筐体は、前記庇部の上方に排気する排気口と、
下部に形成された吸気口と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の一態様は、一方の前記庇部の下部に前記吸気口が形成されていることを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の他の態様は、
一方の前記庇部は、先端に開口部が形成され、
前記開口部から所定の間隔をおいて配置された塞ぎ板と、
前記開口部と前記塞ぎ板との間に設けられたメッシュ板とを備え、
前記塞ぎ板の下端部が開放されて内部に吸気可能なことを特徴とする。
【0011】
(4)本発明のさらに他の態様において、
他方の前記庇部は、先端に開口部が形成され、
前記開口部から所定の間隔をおいて配置された塞ぎ板と、
前記開口部と前記塞ぎ板との間に設けられたメッシュ板とを備え、
前記排気口は、前記塞ぎ板の上端部と前記メッシュ板上端部との間に設けられていることを特徴とする。
【0012】
(5)本発明のさらに他の態様において、
一方の前記筐体は、底部に設けられたファンの駆動による上方から下方への強制空冷で内部の電気機器を冷却し、
他方の前記筐体は、下方向から上方向への自然空冷で内部の電気機器を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一方の盤の排気口から排気された空気の他方の盤内への流入が抑制され、冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(a)は
図1のA-A断面図、(b)は(a)のB-B断面図。
【
図4】(a)は
図2(a)のD-D部詳細図、(b)は同E-E部詳細図。
【
図5】(a)は
図3のF-F部詳細図、(b)は同G-G部詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る盤構造を説明する。この盤構造は、屋根の設けられた屋外設置型盤にとって好適な構造であって、例えば電力変換装置などの電気機器の収容された配電盤・分電盤・制御盤あるいは無人の中継装置・キュービクル装置などに適用することが可能である。
【0016】
図1中の1は、前記盤構造の適用された屋外設置型盤を示している。この盤3は、PCS(Power Conditioning System)盤4と、DC(Direct Current)盤5とを横並びに連結して構成されている。
【0017】
各盤3,4の筐体6,7は、フレームを用いて構成され、筐体6の前後には観音開き式の開閉扉8aが設けられ、筺体7の前後には片開き式の開閉扉8bが設けられている。
【0018】
また、筐体6,7は、
図2および
図3に示すように、フレーム内を左右一対の側板3a,5a・屋根部9,10・床板3b,5bで覆われ(一方の側板5aの図示は省略する。)、屋根部9,10の前後端部から前後方向に延設された庇部11a,11b・12a,12bを有している。
【0019】
ここでは屋根部9,10内には通気用の通風路20,21が形成され、庇部11a,11bと庇部12a,12bは同等の高さに形成されている。また、庇部11aと庇部12aとが横並びに配置されている一方、庇部11bと庇部12bとが横並びに配置されている。
【0020】
≪筐体6≫
図2および
図4に基づき筐体6を説明する。この筐体6内には、発熱量が相対的に多い電気機器、例えばリアクトル・電力変換装置・変圧器(トランス)などが設けられる。
【0021】
冷却構造として、
図2中の矢印P1~P6に示すように、ファン18の駆動によって屋根部9から床方向(床板3b方向)への強制空冷の方式が採用されている。ここでは筐体6内は、
図2(a)に示すように、屋根部9内の通風路20(
図4参照)に連通する風洞部13が設けられている。
【0022】
(1)風洞部13の前方スペースS1には、防塵性の要求される機器類、例えば電力変換装置15などが配置されている。また、風洞部13内には電力変換装置15のユニットヒートシンク16が設置されている。ここでは矢印P1,P2に示すように、通風路20から風洞部13内に流入した空気によりユニットヒートシンク16が冷却されている。これにより電力変換装置15が冷却される構造となっている。
【0023】
さらにスペースS1の床板3bには、
図2(b)に示すように、前述のファン18が左右一対に設置されている。このファン18はサイドに吸気孔(図示省略)が形成され、
図2(a)(b)の矢印P3,P4に示すように、風洞部13内からユニットヒートシンク16の冷却後の空気を吸気し、床板3bの排気口19から排気している。
【0024】
なお、より防塵性を要求される機器類については熱交換器14を経由して密閉された空間とし、熱交換器14の空冷されることで電力変換装置15を冷却する構造としてもよい。
【0025】
(2)後方スペースS2の床板(底部)3bには、
図2(a)(b)に示すように、変圧器17が設置されている。この変圧器17はファン18の間に配置され、各ファン18の前記吸気孔に隣接している。
【0026】
ここでは風洞部13の上部は、スペースS2側に図示省略の空間部が形成されている。したがって、各ファン18の駆動により風洞部13内に流入した空気は、矢印P5に示すように、スペースS2方向に分岐される。
【0027】
ここで分岐された空気は、矢印P6に示すように、下方向に向かって流れて変圧器17を冷却する。また、変圧器17は、前記吸気孔に隣接するため、風洞部13内から吸気される矢印P3の空気の流れによっても冷却される。この点で矢印P6の上方からの通風・矢印P3の横方向からの通風により変圧器17を冷却する二重冷却構造となっている。
【0028】
(3)
図4に基づき庇部11a,11bを説明する。
図4(a)は屋根部9から前方に延設された庇部11aを示し、
図4(b)は屋根部9から後方に延設された庇部11bを示し、筐体6の前後フレーム21a,21bのそれぞれの上端部には支持フレーム21cが連結ボルト23・ナット24を用いて固定されている。
【0029】
このとき屋根部9の下板9bは支持フレーム21cと共締めされ、同上板9aは支持フレーム21cの上端部に連結ボルト22を用いて固定されている。この支持フレーム21cには通気孔21dが形成されている。ここでは上下板9a,9bから通気孔21dの前後方向に延設された部分を庇部11a,11bと呼ぶ。
【0030】
庇部11aは、屋根部9の上下板9a,9bから延設された上下板25a,25bと、上下板25a,25bのサイドを閉塞する側板25cと、内部に飛び跳ねた雨水などの侵入を防ぐ水滴反射板27とを備え、水滴反射板27の一端部は、下板9bおよび支持フレーム21cと共締めされている。
【0031】
この各板25a~25cの前端部(先端部)には開口部Cが形成されている一方、下板25bには吸気孔(吸気口)26が形成されている。この開口部Cおよび吸気孔26は、エアフィルター28,29が装着被覆され、またメッシュ板30,31に囲繞されている。
【0032】
メッシュ板30の一端部30aは、上板25aに固定された押さえ板34に溶着されている。一方、メッシュ板31の一端部31bは、前フレーム21aに固定された押さえ板32に溶着されている。この両板30,31の他端部30b、31bは押さえ板33に溶着され、これにより両板30,31が連結されている。
【0033】
また、開口部Cから所定の間隔をもって塞ぎ板32が配置され、塞ぎ板32と開口部Cとの間にメッシュ板30が配置されている。この塞ぎ板32は逆L字状に形成され、上端部32aを側板25cの上部内面に溶着されている一方、下端部32bが解放されて開口部Dを形成している。
【0034】
庇部11bは、庇部11aとほぼ同等に構成されているものの、開口部C・吸気孔26・メッシュ板30,31・塞ぎ板32が省略されている。すなわち、庇部11は閉塞板50により塞がれ、また下板25bに吸気孔26も形成されていなく、通風路20内に外気を取り入れる構成となっていない。
【0035】
このような筐体6によれば、ファン18を駆動させると、矢印Q1,Q2に示すように、外気が開口部Cおよび吸気孔26から庇部11a内に流入する。すなわち、庇部11aの下方から外気が取り込まれ、矢印Q3に示すように通風路20内に流れ込んで風洞部13内に流入し、ユニットヒートシンク16・変圧器17の冷却後に排気口19から排気される。
【0036】
なお、開口部Cおよび吸気孔26をメッシュ板30,31で被覆することで流入する外気から塵・埃などを除去し、筐体6内の防塵性を向上させている。
【0037】
≪筐体7≫
図3および
図5に基づき筐体7を説明する。この筐体7内には、例えば制御装置や他の盤への配電のための遮断機・導体など発熱量の相対的に少ない電気機器が収容される。そのため、冷却構造として床部(床板5b)から庇部12への自然空冷方式を採用する。
【0038】
すなわち、冷気が下側に溜まりやすい一方、暖気が上側から逃げやすい煙突効果の特性を利用し、筐体7の下側から上側への通気を基本とする。このとき前後の開閉扉8bの下部には吸気孔群(吸気口)40が形成され、吸気孔群40から筐体7内に取り込まれた空気は収容された電気機器の冷却後に庇部12a上から排気される。
【0039】
図5(a)(b)に基づき庇部12a,12bを説明する。この庇部12a,12bは、それぞれ庇部11a,11bとほぼ同等に構成されている。
【0040】
すなわち、後フレーム21bの上端部に支持フレーム21cが連結ボルト23・ナット24を用いて固定されている。この支持フレーム21cには通気孔21dが形成され、通気孔21dの前方に庇部12aが配置されている。
【0041】
庇部12aは、屋根部10の上下板10a,10bから延設された上下板25a,25bと、上下板25a,25bの両サイドを閉塞する側板25cと、飛び跳ねた雨水などの侵入を防ぐ水滴反射板27とを備え、庇部11aと同じく開口部C・吸気孔26・メッシュ板30,31・塞ぎ板32を備える。
【0042】
ただし、庇部12aは、塞ぎ板32の一端部32aとメッシュ板30の一端部30aとの間の空間部Eを排気口に利用する(以下、排気口Eと呼ぶ。)。また、庇部12bは、庇部11bと同様に開口部C・吸気孔26・メッシュ板30,31・塞ぎ板32が省略されている。
【0043】
このような筐体7によれば、前後の開閉扉8bの吸気孔群40から取り込まれた矢印P11の外気は、
図3中の矢印P12に示すように、内部に収容された電気機器の冷却後に前記特性から屋根部10内の通風路21内に流入する。
【0044】
ここで流入した空気は、庇部12bが閉塞されているため、矢印P13に示すように、庇部12aに向かって流れ、
図5中の矢印P14に示すように、庇部12a内に流入する。
【0045】
その後、庇部12a内に流入した空気は、前記特性から吸気孔26方向には向かわず、上板25aに沿って開口部Cに流れてエアフィルター28およびメッシュ板30を通過し、矢印P15~P17に示すように、上方に流れて排気口Eを通って屋根部10上に排気される。
【0046】
このとき盤4は庇部11aの下方から吸気しているため、盤5の庇部12aから屋根部10上に排気した空気を吸気することはなく、盤5の排気した空気が盤4内に流入することが防止される。
【0047】
すなわち、盤4,5は庇部11a,12aを同等の高さに形成されているものの、庇部11aの吸気方向と庇部12aの排気方向が相違するため、盤4内に盤5の排気した暖かい空気が取り込まれることはなく、この点で盤4内の冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することできる。例えば筐体6の庇部11aは、必ずしも開口部Cと吸気孔26の双方を設ける必要はなく、収容された電気機器の冷却効率に応じていずれか一方のみの採用でもよいものとする。
【符号の説明】
【0049】
1…屋外設置型の配電盤
4…PCS盤
5…DC盤
6,7…筐体
18…ファン
19…排気口
26…吸気孔
40…吸気孔群
C,D…開口部
E…空間部(排気口)
25a…上下板
25b…側板
30…メッシュ板
32…塞ぎ板
32a…上端部
32b…下端部