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  • 特開-食事用具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078475
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】食事用具
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20240604BHJP
   A47G 21/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G16H20/60
A47G21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190876
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】網野 梓
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
【テーマコード(参考)】
3B115
5L099
【Fターム(参考)】
3B115DC01
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】食品の摂取者に対して忌避感を与えることなく、摂食行動を把握することの可能な食事用具を提供する。
【解決手段】手指によって把持される柄部と、食品を支持するヘッド部と、を備えた食事用具であって、前記ヘッド部に対して食品及び人体が接触したことを検知する接触検知手段と、前記ヘッド部の位置を検出する位置検出手段と、前記接触検知手段が検知した情報、及び、前記位置検出手段が検出した情報に基づいて、前記ヘッド部が前記食品から離間した第1位置と、前記ヘッド部が前記人体に接触した第2位置と、を演算するとともに、前記第1位置及び前記第2位置に基づいて、前記人体に対する前記食品の相対位置情報を演算する制御部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手指によって把持される柄部と、食品を支持するヘッド部と、を備えた食事用具であって、
前記ヘッド部に対して食品及び人体が接触したことを検知する接触検知手段と、
前記ヘッド部の位置を検出する位置検出手段と、
前記接触検知手段が検知した情報、及び、前記位置検出手段が検出した情報に基づいて、前記ヘッド部が前記食品から離間した第1位置と、前記ヘッド部が前記人体に接触した第2位置と、を演算するとともに、前記第1位置及び前記第2位置に基づいて、前記人体に対する前記食品の相対位置情報を演算する制御部と、
を有することを特徴とする食事用具。
【請求項2】
請求項1に記載の食事用具において、
情報を端末装置へ送信する通信部をさらに有し、
前記端末装置が、前記通信部から受信した前記相対位置情報、及び、予め取得していた食品配置情報に基づいて、摂取された前記食品の種類を特定することを特徴とする食事用具。
【請求項3】
請求項2に記載の食事用具において、
前記食品配置情報は、カメラで予め撮像された画像によって取得されるものであることを特徴とする食事用具。
【請求項4】
請求項2に記載の食事用具において、
前記ヘッド部で支持された前記食品の重量を計測する重量計測手段をさらに有し、
前記端末装置が、摂取された前記食品の種類、及び、前記通信部から受信した前記食品の重量情報に基づいて、摂取された栄養素の進捗を表示することを特徴とする食事用具。
【請求項5】
請求項2に記載の食事用具において、
食事が開始されてからの時間を計測する時間計測手段をさらに有し、
前記端末装置が、摂取された前記食品の種類、及び、前記通信部から受信した食事時間情報に基づいて、摂食のペースを表示することを特徴とする食事用具。
【請求項6】
請求項2に記載の食事用具において、
前記食品の匂いを検知する匂いセンサをさらに有し、
前記端末装置は、摂取された前記食品の種類、及び、前記通信部から受信した匂い情報を記憶部に記録することを特徴とする食事用具。
【請求項7】
請求項1に記載の食事用具において、
前記ヘッド部に、前記食品の温度を測定する温度計が設けられたことを特徴とする食事用具。
【請求項8】
請求項1に記載の食事用具において、
前記ヘッド部に、前記食品に含まれる塩分を測定する塩分センサが設けられたことを特徴とする食事用具。
【請求項9】
請求項1に記載の食事用具において、
前記柄部に、人体の脈波を測定する脈波センサが設けられ、
前記脈波に異常があった場合にアラームが出力されることを特徴とする食事用具。
【請求項10】
請求項1に記載の食事用具において、
前記位置検出手段は、前記柄部に内蔵され、加速度センサ及び角速度センサを含むことを特徴とする食事用具。
【請求項11】
請求項1に記載の食事用具において、
前記ヘッド部は、金属製であり、
前記接触検知手段は、静電容量センサを含むことを特徴とする食事用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事用具に関する。
【背景技術】
【0002】
食事中の行動、特に、摂食したメニュー、摂食の順序やペース等の把握のため、様々なセンシングシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザの食事風景を撮像部で撮像し、得られた画像データに基づいて、食品の種類や摂取量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-12174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような食事行動センシングシステムは、食事中のユーザ撮影が必要なため、ユーザによっては撮影されることへの忌避感を与えることとなり、普段通りの食事行動を阻害してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、食品の摂取者に対して忌避感を与えることなく、摂食行動を把握することの可能な食事用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、手指によって把持される柄部と、食品を支持するヘッド部と、を備えた食事用具であって、前記ヘッド部に対して食品及び人体が接触したことを検知する接触検知手段と、前記ヘッド部の位置を検出する位置検出手段と、前記接触検知手段が検知した情報、及び、前記位置検出手段が検出した情報に基づいて、前記ヘッド部が前記食品から離間した第1位置と、前記ヘッド部が前記人体に接触した第2位置と、を演算するとともに、前記第1位置及び前記第2位置に基づいて、前記人体に対する前記食品の相対位置情報を演算する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品の摂取者に対して忌避感を与えることなく、摂食行動を把握することの可能な食事用具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る食事行動センシングシステムの構成を示す機能ブロック図。
図2】食事用具の全体構成を示す図。
図3A】食事開始前の食品の位置を示す図。
図3B】摂食者が食事用具で1口の食品を支持した直後の様子を示す図。
図3C】摂食者が1口の食品を口の中に入れる瞬間の様子を示す図。
図3D】表示部が表示するダッシュボードを示す図。
図4】本実施形態に係る食事行動センシングシステムの主なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る食事行動センシングシステムの構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、食事行動センシングシステムは、食事用具100と、端末装置101と、により構成される。
【0011】
食事用具100は、スプーンやフォーク等のカトラリの他、箸を含むものであり、基本的な構造としては、手指によって把持される柄部と、食品を支持するヘッド部と、を備える。さらに、本実施形態の食事用具100は、センサ部10と、制御部20と、センサ情報記憶部21と、通信部22と、バッテリ23と、が設けられている。
【0012】
センサ部10には、接触検知手段11と、位置検出手段と12と、重量計測手段13と、が含まれる。接触検知手段11は、ヘッド部に対して食品及び人体(主に口)が接触したことを検知するものであり、例えば静電容量センサである。位置検出手段12は、ヘッド部の位置を検出するものであり、例えば加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ等である。位置検出手段は、柄部に内蔵されているが、複数のセンサの出力値を組み合わせることで、食事用具100の傾き(姿勢)を検出できるため、柄部に対して回転するヘッド部の位置を特定することが可能となっている。重量計測手段は、ヘッド部で支持された食品の重量を計測するものであり、例えばロードセルである。
【0013】
制御部20は、センサ部10の各センサから入力された情報に基づいて所定の演算を行うものであり、マイコン等の比較的消費電力の少ないコントローラが望ましい。例えば、制御部20は、接触検知手段11が検知した情報、及び、位置検出手段12が検出した情報に基づき、ヘッド部が食品から離間した位置と、ヘッド部が人体に接触した位置と、を演算し、当該演算結果を用いて、人体に対する食品の相対位置を演算する。また、制御部20は、図示しない時間計測手段を備えており、食事が開始されてからの時間も演算でき、食事開始時刻や食事終了時刻も演算できる。
【0014】
センサ情報記憶部21は、食品の相対位置情報や重量情報等を記録する。通信部22は、1口(1回の摂食)ごとに、食品の相対位置情報や重量情報等を端末装置101に送信するものである。なお、通信部22は、Bluetooth(登録商標)や無線LANのような無線通信が可能であり、一定の時間間隔にて情報を送受信する。バッテリ23は、柄部に内蔵され、センサ部10の各センサ、制御部20及び通信部22を駆動するべく電源を供給する。なお、バッテリは、繰り返しの使用が想定されるため充電池が望ましいが、乾電池であっても良い。
【0015】
端末装置101は、家庭であれば例えばスマートフォン等のタブレット端末であり、レストランや病院を含む施設であれば例えばPCである。図1に示すように、端末装置101は、通信部32と、食品情報データベース34と、制御部30と、食事情報記憶部31と、表示部33と、を備える。通信部32は、食事用具100の通信部22からの情報を受信するものである。
【0016】
食品情報データベース34には、摂食者の前のテーブル等に並べられた各料理(食品)の位置(重心座標)に関する食品配置情報や、各料理に含まれる栄養素(カロリー、塩分、脂質等)に関する栄養素情報が、予め格納されている。ここで、食品配置情報は、端末装置101が摂食者の所持するスマートフォン等である場合、スマートフォン等に付属のカメラで予め撮像した画像に基づいて、端末装置101が取得することも可能である。また、複数の料理の位置を取得するための画像は、天井や照明器具等に設けられたカメラで撮像されても良い。さらに、食事が施設で提供される場合、メニューごとに各料理の位置が決まっている場合があるので、その場合は、カメラを用いずに、メニューから自動的に各料理の位置が取得されても良い。栄養素情報は、各料理の位置と同様に、画像から取得されても良いし、メニューから自動的に取得されても良い。
【0017】
制御部30は、通信部22を介して食事用具100から受信した相対位置情報、及び、食品情報データベース34に格納されている食品配置情報及び栄養素情報に基づいて、1口ごとに摂取された食品の種類及び栄養素を特定する。食事情報記憶部31は、制御部30によって特定された食品の種類や栄養素、通信部22を介して食事用具100から受信した食品の重量情報等の情報を、1口ごとに記録する。表示部33は、制御部30によって特定された情報や、食事情報記憶部31に記録された情報に基づいて、摂取された栄養素の進捗をダッシュボードに表示する。表示部33には、野菜を先に食べ肉や魚を後に食べるといったような、望ましい摂食の順序を知らせるメッセージ等が表示されても良い。また、制御部30は、通信部22を介して食事用具100から受信した食事時間情報も用いて、摂取のペースを表示部33に表示させても良い。摂食のペースが一定の条件より早い場合には、ゆっくり摂食するように促すメッセージ等が表示部33に表示されても良い。
【0018】
図2は、食事用具の全体構成を示す図である。ここでは、食事用具100として、スプーンを例に挙げて説明する。図2に示すように、食事用具100(スプーン)は、ヘッド部40(つぼ)と、柄部41(持ち手)と、で構成されている。
【0019】
ヘッド部40は、柄部41に内蔵されたロードセルに接続されており、ヘッド部40に加わる力がロードセルによって測定可能となっている。なお、ヘッド部40は、柄部41内のロードセルに対して着脱でき、ヘッド部40を取り外して洗浄することも可能である。また、ヘッド部40は、接触検知手段11として静電容量センサを使用するために、導電性の素材(例えば金属製)が望ましい。一方、柄部41には、位置検出手段12としての加速度センサや角速度センサの他、制御部20、通信部22及びバッテリ23が内蔵されている。
【0020】
図3A図3Dは、本実施形態において摂食行動を把握するための主な処理を示す図である。
【0021】
図3Aは、食事開始前の食品の位置を示す図である。例えば、端末装置101であるスマートフォンは、すべての食品51を含む画像をカメラにより撮像し、その撮像画像に基づいて、各食品51の位置(重心座標52)を定義する食品配置情報や、栄養素情報を取得する。なお、食品配置情報や栄養素情報は、前述のとおり、スマートフォン以外のカメラで撮像した画像から取得されても良いし、メニューから自動的に取得されても良い。
【0022】
図3Bは、摂食者が食事用具で1口の食品を支持した直後の様子を示す図である。食事用具100は、ヘッド部で支持された食品の重量を重量計測手段13により計測するとともに、皿等の上に残った食品からヘッド部が離間したか否かを接触検知手段11により判定する。
【0023】
図3Cは、摂食者が1口の食品を口の中に入れる瞬間の様子を示す図である。食事用具100は、皿等の上の食品からヘッド部が離間した時点から、位置検出手段12によりヘッド部の位置を検出する。その後、食事用具100は、ヘッド部が摂食者の口50に接触したか否かを接触検知手段11により判定する。ヘッド部が口50に接触したと判定されると、食事用具100は、その時点でのヘッド部の位置を口座標53として記録する。また、食事用具100は、口座標53を基準として、ヘッド部が食品から離間した時点での位置を、食品の口に対する相対位置として記録する。このとき、食事用具100は、食品から口までの移動軌跡55を演算して記録しても良い。
【0024】
図3Dは、表示部が表示するダッシュボードを示す図である。端末装置101は、食事用具100から受信した相対位置情報を、食品情報データベース34に格納されている食品配置情報と照合することで、摂取された食品の種類を特定する、また、端末装置101は、食事用具100から受信した重量情報と、食品情報データベース34に格納されている栄養素情報と、に基づいて、摂取された食品に含まれる各栄養素の量を演算する。演算結果は、端末装置101の表示部33に、1口ごとに更新して表示される。図3Dの例では、成人が1日に摂取すべき栄養素の何%まで摂取したかの進捗が、ダッシュボード57に示されている。これにより、食品を摂取している摂食者に対して、食事行動への気付きをリアルタイムで与えることができる。
【0025】
図4は、本実施形態に係る食事行動センシングシステムの主なフローチャートである。
【0026】
まず、接触検知手段11により、ヘッド部40が食品から離間したか否かが判定される(ステップS101)。具体的には、食事用具の制御部20が、静電容量センサの測定値を監視し、所定の変化があった場合に、ヘッド部40が食品から離間したことを検知する。
【0027】
ヘッド部40の食品からの離間が検知されると、位置検出手段12により、ヘッド部40の位置推定が開始される(ステップS102)。具体的には、加速度センサ及び角速度センサが加速度及び角速度の測定を開始し、制御部20は、各測定時点での加速度及び角速度の測定値を積分することで、ヘッド部40の位置を推定していく。ここで、食品から離間した時点におけるヘッド部40の位置を第1位置とする。
【0028】
その後、接触検知手段11により、ヘッド部40が口に接触したか否かが判定される(ステップS103)。具体的には、制御部20が、静電容量センサの測定値を監視し、所定の変化があった場合に、ヘッド部40が口に接触したことを検知する。なお、口に接触した場合は、食品に接触した場合と比べて、静電容量の変化がより大きくなるため、異なる閾値を設けることで、接触対象を区別することが可能である。
【0029】
ヘッド部40の口への接触が検知されると、ヘッド部40の位置推定が終了する(ステップS104)。ここで、口と接触した時点におけるヘッド部40の位置を第2位置とする。
【0030】
次に、制御部20は、第2位置を基準(原点)としたときの第1位置の座標を、摂取された食品の口に対する相対位置情報として、センサ情報記憶部21に記録するとともに、当該食品の相対位置情報を通信部22により端末装置101へ送信する(ステップS105)。このとき、制御部20は、食品が配置されていた場所を示す相対位置情報だけでなく、食品が口に運ばれるまでに移動した軌跡情報を、センサ情報記憶部21に記録したり、端末装置101へ送信したりしても良い。
【0031】
端末装置101の制御部30は、端末装置101の通信部32によって受信した相対位置情報と、予め食品情報データベース34に格納されている食品配置情報と、に基づいて、摂取された食品の種類を特定する。具体的には、制御部30が、相対位置情報である推定座標と、食品配置情報に含まれる各メニューの重心座標と、の距離を計算する(ステップS106)。すべてのメニューの重心座標について、推定座標との距離の計算が終了すると、制御部30は、距離が最小となる重心座標に対応するメニューを、摂取された食品と見做す(ステップS107)。
【0032】
さらに、端末装置の制御部30は、食品情報データベース34に格納されている栄養素情報を参照することで、特定された食品に対応する栄養素を抽出し、表示部33に出力されるダッシュボードに摂取された栄養素を反映させる。また、制御部30は、特定された食品、及び、当該食品に含まれる栄養素の情報を食事情報記憶部31に記録する。
【0033】
また、食事用具100の制御部20は、食事が継続されているか否かを判定する(ステップS108)。例えば、ヘッド部40が食品と接触していない状態が一定時間以上続いた場合には、食事が終了したと見做すことが可能である。ここで、接触検知手段11により、ヘッド部40が食品に再び接触したことが検知された場合、制御部20は、食事が継続されていると見做し、ステップS101に戻る。以降、食事が終了したと判定されるまで、1口ごとに、ステップS101~S108の処理が繰り返される。
【0034】
本実施形態における摂食行動の主なセンシング方法は、前述のとおりであるが、移動の少ない口の位置を基準とすることで、センシング精度が向上する。なお、位置検出手段12を構成する加速度センサや角速度センサは、温度等の影響を受けて出力にドリフト誤差を含むため、ヘッド部の位置の検出精度を低下させ、結果として摂食行動のセンシング精度を低下させる可能性がある。したがって、ヘッド部が口に接触した時点で各センサの出力をリセットすることで、ドリフト誤差を抑制し、センシング精度を向上させることも可能である。また、テーブルの上にある食品と口とを比較すると、一般的に口の方が高い位置にあるため、高さ方向の座標に着目することで、食品に接触したのか口に接触したのかを区別することもできる。
【0035】
さらに、食事用具100に搭載されるセンサとして、温度センサ、匂いセンサ、塩分センサ、脈波センサ等が設けられても良い。例えば、非接触で測定可能な放射温度計等の温度センサをヘッド部に設けることで、食品の有無を温度により判定したり、食品の温度や摂食者の体温を測定したりできる。また、食品の匂いを検知する匂いセンサを柄部に設け、匂いデータも通信部を介して端末装置の記憶部に記録することで、料理の再現に役立てることもできる。例えば、香辛料や調味料の成分が匂いデータとして取得できれば料理の味を推定したり、腐敗臭の成分が匂いデータとして取得できれば摂食の可否を判定したりできる。さらに、食品に含まれる塩分を測定する塩分センサを柄部に設けることで、味付けの目安としたり、塩分の過剰摂取を抑制したりできる。また、人体の脈波を測定する脈波センサを柄部に設け、摂食者の食事中の脈波の変化を表示部に出力しても良い。例えば、空腹時に糖質を多く含む食品が摂取され、血糖値が急上昇して脈波に異常があった場合には、他の食品を食べるよう促すアラームが表示部に出力されるようにしても良い。
【0036】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、前述の実施形態では、食事用具としてスプーンを例に挙げて説明したが、フォークを含む他のカトラリであっても、本発明を適用できる。また、柄部とヘッド部が一体に形成される箸であっても、同様に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…センサ部、11…接触検知手段、12…位置検出手段、13…重量計測手段、20…制御部、21…センサ情報記憶部、22…通信部、23…バッテリ、30…制御部、31…食事情報記憶部、32…通信部、33…表示部、34…食品情報データベース、40…ヘッド部、41…柄部、100…食事用具、101…端末装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4