(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078481
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190887
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB36
2C056HA07
(57)【要約】
【課題】ヘッドを支持するホルダがフレームに精度よく位置決めして固定される手段を提供する。
【解決手段】画像記録装置100は、インクを吐出するヘッドモジュール70と、ヘッドモジュール70を支持しており、貫通孔79を有するホルダ71と、ネジ孔75を有するフレーム72と、貫通孔79に挿通されてネジ孔75に螺合されることにより、ホルダ71をフレーム72に固定するネジ73と、を備える。ネジ73の頭部84における面86の第1表面粗さ(Ra)は、フレーム72における面87の第2表面粗さ(Ra)よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
上記ヘッドを支持しており、貫通孔を有するホルダと、
ネジ孔を有するフレームと、
上記貫通孔に挿通されて上記ネジ孔に螺合されることにより、上記ホルダを上記フレームに固定するネジと、を備えており、
上記ネジは、頭部と軸部とを有しており、
上記頭部における上記ホルダと接触する面の第1表面粗さ(Ra)は、上記フレームにおける上記ホルダと接触する面の第2表面粗さ(Ra)よりも大きい液体吐出装置。
【請求項2】
上記フレームは、複数の上記ホルダが固定される請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
上記第2表面粗さ(Ra)は、0.2μm未満である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記第1表面粗さ(Ra)は、0.2μm以上である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記ホルダの第1ビッカース硬度は、上記フレームの第2ビッカース硬度よりも小さい請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
上記ネジおよび上記フレームはステンレス製であり、
上記ホルダは合成樹脂製である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
上記ネジおよび上記フレームの熱膨張係数は、上記ホルダの熱膨張係数に対して±20%の範囲内である請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
上記ホルダは、上記貫通孔周りにおいて膨出しており、端面が平面である膨出部を有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
ヘッドのノズルの位置を撮像装置で観察しつつ、当該ヘッドを支持するホルダをフレームに対して位置決めする位置決めステップと、
上記ホルダの貫通孔にネジを挿通して上記フレームのネジ孔に螺合することにより、上記ホルダを上記フレームに固定する固定ステップと、を含み、
上記ネジの頭部における上記ホルダと接触する面の第1表面粗さ(Ra)は、上記フレームにおける上記ホルダと接触する面の第2表面粗さ(Ra)よりも大きいヘッドの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドからインクを吐出する液体噴出ヘッドとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の液体噴出ヘッドは、ヘッド本体が取り付け板を介してフレームに取り付けねじにより固定されている。取り付け板と取り付けねじとの間には、複数のワッシャが位置する。一方のワッシャと取り付け板との摩擦係数は、他方のワッシャと取り付けねじとの摩擦係数よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載された液体噴出ヘッドでは、取り付けねじが締結されるときの回転方向の力が、取り付け板に伝わり難くなる。しかし、取り付け板とフレームとの摩擦係数がさらに低ければ、取り付けねじが締結されるときの回転方向の力により、取り付け板がフレームに対して位置ズレを起こすおそれがある。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドを支持するホルダがフレームに精度よく位置決めして固定される手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するヘッドと、上記ヘッドを支持しており、貫通孔を有するホルダと、ネジ孔を有するフレームと、上記貫通孔に挿通されて上記ネジ孔に螺合されることにより、上記ホルダを上記フレームに固定するネジと、を備える。上記ネジは、頭部と軸部とを有する。上記頭部における上記ホルダと接触する面の第1表面粗さ(Ra)は、上記フレームにおける上記ホルダと接触する面の第2表面粗さ(Ra)よりも大きい。
【0007】
ネジが回転されることにより、ネジの頭部からホルダへ伝達される摩擦力よりも、ホルダとフレームとの間の摩擦力が大きくなるので、ホルダがフレームに対して位置ズレしない。
【0008】
(2) 上記フレームは、複数の上記ホルダが固定されてもよい。
【0009】
複数のホルダにそれぞれ支持された複数のヘッドの位置関係がずれることなく、複数のホルダがそれぞれネジによりフレームに固定される。
【0010】
(3) 上記第2表面粗さ(Ra)は、0.2μm未満であってもよい。
【0011】
(4) 上記第1表面粗さ(Ra)は、0.2μm以上であってもよい。
【0012】
(5) 上記ホルダの第1ビッカース硬度は、上記フレームの第2ビッカース硬度よりも小さくてもよい。
【0013】
ホルダがフレームに密着しやすいので、ホルダがフレームに対して位置ズレし難い。
【0014】
(6) 上記ネジおよび上記フレームはステンレス製であり、上記ホルダは合成樹脂製であってもよい。
【0015】
(7) 上記ネジおよび上記フレームの熱膨張係数は、上記ホルダの熱膨張係数に対して±20%の範囲内であってもよい。
【0016】
(8) 上記ホルダは、上記貫通孔周りにおいて膨出しており、端面が平面である膨出部を有してもよい。
【0017】
膨出部の端面がネジの座面となるので、ホルダの膨出部以外の部分の反りやうねりがネジの座面に影響し難い。これにより、フレームに対するホルダの平行度が保たれる。
【0018】
(9) 本発明に係るヘッドの固定方法は、ヘッドのノズルの位置を撮像装置で観察しつつ、当該ヘッドを支持するホルダをフレームに対して位置決めする位置決めステップと、上記ホルダの貫通孔にネジを挿通して上記フレームのネジ孔に螺合することにより、上記ホルダを上記フレームに固定する固定ステップと、を含み、上記ネジの頭部における上記ホルダと接触する面の第1表面粗さ(Ra)は、上記フレームにおける上記ホルダと接触する面の第2表面粗さ(Ra)よりも大きい。
【0019】
固定ステップにおいてネジが回転されることにより、ネジの頭部からホルダへ伝達される摩擦力よりも、ホルダとフレームとの間の摩擦力が大きくなるので、位置決めステップにおいて位置決めされたホルダがフレームに対してズレない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヘッドを支持するホルダがフレームに精度よく位置決めして固定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置100の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、ヘッドユニット38を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ヘッドユニット38を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ヘッドユニット38のV-V断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、画像記録装置100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口33が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、画像記録装置100を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
【0023】
[画像記録装置100の外観構成]
図1に示される画像記録装置100は、インクジェット記録方式でロール体37(
図2参照)から延びるシートSに画像を記録する。画像記録装置100は、液体吐出装置の一例である。
【0024】
図1に示されるように、画像記録装置100は、筐体30を備える。筐体30は、上筐体31及び下筐体32を備える。上筐体31及び下筐体32は、全体として概ね直方体形状であって、卓上に載置可能な大きさである。すなわち、画像記録装置100は、卓上に載置されて使用されるのに適している。もちろん、画像記録装置100は、床面やラックに載置されて使用されてもよい。なお、筐体30の内部には、各部材を支持するためのフレームが適宜設けられてもよい。
【0025】
図2に示されるように、上筐体31は、下筐体32によって回動可能に支持されている。上筐体31は、後下端部に設けられ且つ左右方向9に延びる回動軸15周りに、
図2に示される閉位置と、開位置とに回動可能である。なお、上筐体31が回動する構成は、回動軸15によるものに限らず、例えば蝶番などによって回動してもよい。
【0026】
図2に示されるように、上筐体31が閉位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して遮蔽される。上筐体31が開位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して露出される。
【0027】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、左右方向9に長いスリット状の排出口33が形成されている。排出口33からは、画像記録済みのシートS(
図2参照)が排出される。
【0028】
上筐体31の前面31Fには、操作パネル44が設けられている。ユーザは、操作パネル44に、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするための入力を行う。
【0029】
図1に示されるように、下筐体32の右面32Rには、右カバー35Aが位置する。右カバー35Aの開閉により、シート収容空間32Cに位置するホルダ35等(
図2参照)が露出したり遮蔽されたりする。
【0030】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、前カバー39が位置する。前カバー39は、下端付近において左右方向9に沿って延びる回動軸(不図示)周りに、上端側が前方へ倒れるように開くことができる。前カバー39の開閉により、下筐体32の内部空間32Aに位置する装着ケース110等(
図2参照)が露出されたり遮蔽されたりする。
【0031】
[画像記録装置100の内部構成]
図2に示されるように、内部空間31A,32Aには、ホルダ35、テンショナ45、搬送ローラ対36、搬送ローラ対40、ヘッドユニット38、プラテン51、インクタンク34、装着ケース110、およびインクサブタンク47などが配置されている。なお、図示されていないが、内部空間32Aには、定着ユニット、画像センサ、カッタ、メンテナンス機構等が位置してもよい。
【0032】
内部空間32Aには、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間32Aの後下部を仕切って、シート収容空間32Cを区画する。シート収容空間32Cは、隔壁41、下筐体32により包囲され、ヘッドユニット38などから隔離された空間である。
【0033】
テンショナ45は、内部空間32Aの後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、下筐体32の外側を向いている外周面45Aを有している。外周面45Aは、左右方向9においてシートの最大幅以上の大きさであり、通紙中心(シートSの左右方向9における中心)に対して互いに対称な形状を有している。外周面45Aの上端は、上下方向7において搬送ローラ対36のニップ位置と概ね同じ位置にある。
【0034】
外周面45Aには、ロール体37から引き出されたシートSが掛けられ当接する。シートSは、外周面45Aに沿って前方に湾曲して、搬送向き8Aに延びて搬送ローラ対36に案内される。搬送向き8Aは、前後方向8に沿う前向きである。テンショナ45は、周知の手法により、シートSにテンションを与える。
【0035】
テンショナ45の前方には、搬送ローラ対36が位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Aとピンチローラ36Bとを有する。搬送ローラ36A、及びピンチローラ36Bのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0036】
搬送ローラ対36の前方には、搬送ローラ対40が位置する。搬送ローラ対40は、搬送ローラ40Aとピンチローラ40Bとを有する。搬送ローラ40A、及びピンチローラ40Bのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0037】
搬送ローラ36A,40Aは、不図示のモータから駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対36は、テンショナ45から搬送向き8Aに延びるシートSをニップしつつ回転することにより、搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対40は、搬送ローラ対36から送り出されたシートSをニップしつつ回転することにより搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対36,40の回転により、シートSは、シート収容空間32Cから隙間42を通ってテンショナ45に向けて引き出される。
【0038】
図2に示されるように、内部空間32Aには、外周面45Aの上端から排出口33に至る搬送路43が形成されている。搬送路43は、搬送向き8Aに沿ってほぼ直線的に延びており、シートSが通過可能な空間である。搬送路43は、搬送向き8A及び左右方向9に拡がり且つ搬送向き8Aに長い搬送面43Aに沿っている。なお、
図2では、搬送面43Aは、搬送路43を示す二点鎖線で示されている。搬送路43は、上下方向7に離れて位置するガイド部材(不図示)や、ヘッドユニット38、プラテン51などによって区画されている。
【0039】
ヘッドユニット38は、搬送路43の上方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。ヘッドユニット38は、複数のノズル76を有するヘッドモジュール49を有する。複数のノズル76は、インクサブタンク47から供給されたインクを搬送ベルト101に支持されたシートSへ向かって下方へ吐出する。これにより、シートSに画像が記録される。インクは、液体の一例である。ヘッドユニット38の詳細は後述される。
【0040】
プラテン51は、搬送路43の下方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。プラテン51は、ヘッドユニット38の下方に位置しており、ヘッドユニット38と対向している。プラテン51は、搬送ベルト101と支持部104を有する。搬送ベルト101は、搬送ローラ対36によって搬送向き8Aに搬送されてヘッドユニット38の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト101は、支持しているシートSを搬送向き8Aに搬送する。
【0041】
装着ケース110は、下筐体32の前端および下端付近に位置しており、前方を向いて開口する箱形状である。装着ケース110には、後向きへインクタンク34が挿入される。装着ケース110の後向きの終面111には、前方へ向かって延びるインクニードル112が位置する。インクニードル112の前端は開口しており、後端はインクチューブ113に連結されている。インクチューブ113は、インクニードル112の内部空間とインクサブタンク47の内部空間47Aとをインクが流通可能に連結している。装着ケース110にインクタンク34が装着されると、インクニードル112がインクタンク34の流出口(図示せず)に挿入される。これにより、インクタンク34に貯留されたインクが、インクニードル112およびインクチューブ113を通じてインクサブタンク47に供給される。インクチューブ113には、インクチューブ113の流路を開閉可能なインク補給バルブ114が配置されている。インク補給バルブ114の開閉は、不図示のコントローラによって制御される。
【0042】
インクタンク34は、インクを貯留している。インクタンク34は、インクが消費されると装着ケース110から取り外され、インクを貯留している新しいインクタンク34と交換される。
【0043】
インクサブタンク47は、インクタンク34の上方に位置している。インクサブタンク47は、インクタンク34から供給されたインクを貯留している。インクサブタンク47には、液体供給路61、液体排出路62、及び大気連通路64が接続されている。液体供給路61および液体排出路62は、インクサブタンク47とヘッドユニット38とをインクが流通可能に連結している。大気連通路64の一端は、インクサブタンク47の内部空間47Aの上部に開口しており、他端は、上筐体31の内部空間31Aに開口している。
【0044】
液体供給路61には正圧ポンプ63が配置されている。正圧ポンプ63は、液体供給路61においてヘッドユニット38へ向かう向きにインクに圧力を付与する。正圧ポンプ63としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。正圧ポンプ63の駆動は、コントローラ130によって制御される。
【0045】
大気連通路64には負圧ポンプ65が配置されている。負圧ポンプ65は、インクサブタンク47の内部空間47Aの空気を吸引することにより、インクサブタンク47の内部空間47Aを減圧する。負圧ポンプ65としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。負圧ポンプ65によって吸引された空気は大気連通路64を通して大気に放出される。負圧ポンプ65の駆動は、不図示のコントローラによって制御される。
【0046】
液体供給路61にはフィルタ66が配置されている。フィルタ66は、正圧ポンプ63とヘッドユニット38との間に位置している。なお、
図2においては、液体供給路61の流路形状やフィルタ66の配置は簡略化されて示されている。フィルタ66は、流出ポートおよび流入ポートを有するハウジングの内部空間に、例えば、所定の内径の複数の孔を有するメッシュタイプのフィルタ部材が収容されたものである。流入ポートからハウジングの内部空間に流入したインクがフィルタ部材を通過するときに、インクに含まれる固体であって、フィルタ部材の孔の内径よりも大きなものがフィルタ部材に捕捉される。これにより、インクに含まれる固体がヘッドユニット38に流れることを抑制している。
【0047】
[ヘッドユニット38]
図3及び
図4に示されるように、ヘッドユニット38は、ヘッドモジュール70と、ホルダ71と、フレーム72と、ネジ73と、を備える。ヘッドモジュール70は、ヘッドの一例である。
【0048】
フレーム72は、ステンレス製の長方形をなす平板である。各図には示されていないが、フレーム72は、筐体30の内部に固定されて上下方向7及び前後方向8に拡がるサイドフレームなどに固定される。フレーム72には、各種部材を取り付けるための複数の貫通孔が位置する。本実施形態では、3個のヘッドモジュール70が取り付けられるための長方形の貫通孔74が3個位置する。3個の貫通孔74は、前後方向8において前方の1個の貫通孔74と後方の2個の貫通孔74とに分かれて位置する。また、後方の2個の貫通孔74は、左右方向9に離れている。各貫通孔74には、ヘッドモジュール70がそれぞれ挿通される。各貫通孔74の左右方向9の左方には1個のネジ孔75が位置しており、右方には2個のネジ孔75が位置する。各ネジ孔75にはネジ73が螺合される。
【0049】
ヘッドモジュール70は、駆動電圧が印加されることによりインクを吐出する素子である。ヘッドモジュール70は、概ね直方体形状であり、複数のノズル76が複数の列をなして位置するノズル面77を有する。各図には示されていないが、ヘッドモジュール70の内部にはインクが供給されるマニホールドが形成されており、各ノズル76はマニホールドと連通している。各ノズル76に対応するピエゾ素子に選択的に駆動電圧が印加されると、各ノズル76から選択的にインク滴が吐出される。
【0050】
ヘッドモジュール70は、合成樹脂製のホルダ71に保持されている。ホルダ71は、ヘッドモジュール70が嵌合される長方形の枠体である。ホルダ71は、外向きへ延びるフランジ78を有する。ホルダ71にヘッドモジュール70が嵌合された状態において、フランジ78は、ノズル面77と反対側に位置する。例えば、ノズル面77が下向きであるとき、フランジ78は、ヘッドモジュール70の上側に位置する。フランジ78は、平板形状である。フランジ78において、左右方向9の左方には1個の貫通孔79が位置しており、右方には2個の貫通孔79が位置する。各貫通孔79の配置は、フレーム72の各ネジ孔75に対応する。
【0051】
図5に示されるように、ホルダ71の主面80,81において、各貫通孔79の周りに、主面80,81からそれぞれ膨出する膨出部82がそれぞれ位置する。膨出部82は、主面80,81からそれぞれ膨出する円柱形状である。膨出部82の端面83において1つの貫通孔79が開口する。端面83は、主面80,81と平行な平面である。
【0052】
ネジ73は、頭部84と軸部85とを有する。軸部85の外周面に雄ネジが形成されている。ネジ73は、軸部85が、ホルダ71の貫通孔79に挿通されてフレーム72のネジ孔75に螺合されている。頭部84は、ホルダ71のフランジ78に当接している。これにより、フレーム72とネジ73の頭部84とにホルダ71のフランジ78が挟み込まれて、ホルダ71がフレーム72に対して固定されている。
【0053】
ネジ73の頭部84におけるホルダ71のフランジ78と接触する面86の第1表面粗さ(Ra)は、フレーム72においてホルダ71のフランジ78と接触する面87の第2表面粗さ(Ra)よりも大きい。第1表面粗さ(Ra)は、0.2μm以上が好ましく、さらに好ましくは、0.7μm以上である。第2表面粗さ(Ra)は、0.2μm未満が好ましく、さらに好ましくは、0.1μm未満である。
【0054】
ホルダ71の第1ビッカース硬度(HV)は、フレーム72の第2ビッカース硬度(HV)よりも小さい。第1ビッカース硬度は、HV150未満が好ましく、さらに好ましくはHV100未満である。第2ビッカース硬度は、HV150以上が好ましく、さらに好ましくはHV200以上である。
【0055】
フレーム72およびネジ73の熱膨張係数は、ホルダ71の熱膨張係数に対して±20%の範囲内であることが好ましい。例えば、ホルダ71がエポキシ樹脂製であるときの熱膨張係数は、およそ9である。フレーム72およびネジ73がステンレス製であるときの熱膨張係数は、およそ10.4である。
【0056】
[ヘッドモジュール70の固定方法]
以下、ヘッドモジュール70がフレーム72に固定される方法が説明される。本実施形態では3個のヘッドモジュール70がフレーム72に固定される。3個のヘッドモジュール70の各ノズル面77には、複数のノズル76が複数の列をなして位置する。画像記録装置100は、3個のヘッドモジュール70の各ノズル76から選択的にインク滴を吐出して画像記録を行う。高精度な画像記録が実現されるには、各ノズル76の列は、所定の間隔で配置されていることが望ましい。したがって、フレーム72において、3個のヘッドモジュール70の前後方向8および左右方向9の位置、ならびに上下方向7を軸とする回転位置が、精度よく位置決めされて、3個のヘッドモジュール70がフレーム72に固定されることが望ましい。
【0057】
3個のヘッドモジュール70は、予めホルダ71にそれぞれ嵌合される。ヘッドモジュール70をそれぞれ保持する3個のホルダ71は、ヘッドモジュール70のノズル面77が下方を向くようにして、フレーム72の貫通孔74にそれぞれ挿通される。フレーム72は、治具などにより固定されている。ホルダ71のフランジ78の外形は貫通孔74より大きいので、フランジ78がフレーム72の主面に当接した状態となる。この状態において、ホルダ71は、フレーム72に対して、前後方向8および左右方向9の位置、ならびに上下方向7を軸とする回転位置が調整可能である。また、ホルダ71の各貫通孔79は、フレーム72の各ネジ孔75の上方に位置しており、各貫通孔79を通じて各ネジ孔75にネジ73の軸部85が螺合可能である。
【0058】
操作者は、フレーム72の下方に位置する撮像装置(カメラ)により、3個のヘッドモジュール70のノズル76の列を観察する。例えば、撮像装置により撮影された画像には、ノズル76の各列または特定の列が位置すべき直線が示されており、その直線とノズル76の位置が合致するように、3個のヘッドモジュール70の前後方向8および左右方向9の位置、ならびに上下方向7を軸とする回転位置を、ハンドリング装置や手によって調整して、フレーム72に対して各ホルダ71を位置決めする。この操作が位置決めステップの一例である。
【0059】
フレーム72に対する各ホルダ71の位置決めが終了すると、各貫通孔79を通じて各ネジ孔75にネジ73の軸部85を螺合する。1個のホルダ71には左右に分かれて合計3個の貫通孔79が位置するので、例えば、3個の貫通孔79に3個のネジ73の軸部85を挿通してネジ孔75に螺合してホルダ71を仮止めし、3個のネジ73を順に所定の回転量またはトルクだけ締め付けることを繰り返して、3個のネジ73を締め付ける。この操作が固定ステップに相当する。
【0060】
ネジ73の頭部84の面86の第1表面粗さ(Ra)は、フレーム72の面87の第2表面粗さ(Ra)よりも大きいので、ネジ73が締め付けられることにより、頭部84の面86とホルダ71のフランジ78の上面との間に生じる摩擦力F1は、フレーム72の面87とホルダ71のフランジ78の下面との間に生じる摩擦力F2よりも小さい。なお、フランジ78の上面の表面粗さと下面の表面粗さは同等であるとする。また、ネジ73の締め付けにより生じる面圧は、面86および面87において同等であるとする。フレーム72の面87とホルダ71のフランジ78の下面とは、ともに表面粗さが小さいので、表面粗さが小さい面同士が接触することにより摩擦力が大きくなる。したがって、頭部84の面86からフランジ78に摩擦力F1によって伝達される回転力は、摩擦力F2を超えないので、ネジ73が締め付けられると、頭部84がフランジ78に対して滑りつつ回転し、フレーム72に対するホルダ71の位置が維持される。
【0061】
ホルダ71の第1ビッカース硬度(HV)は、フレーム72の第2ビッカース硬度(HV)よりも小さいので、ネジ73の締め付けにより面87に生じる圧力(面圧)が大きくなると、フレーム72の面87の微細な凹凸がホルダ71のフランジ78の下面に噛み込むようにして、フレーム72の面87とフランジ78の下面とが密着する。
【0062】
フレーム72およびネジ73の熱膨張係数は、ホルダ71の熱膨張係数に対して±20%の範囲内であるので、筐体30の内部空間の温度が変化したときに、フレーム72、ネジ73、およびホルダ71が熱膨張により変化する寸法が大きく異ならない。
【0063】
[実施形態の作用効果]
前述された実施形態では、ネジ73の頭部84の面86の第1表面粗さ(Ra)は、フレーム72の面87の第2表面粗さ(Ra)よりも大きいので、ネジ73が締め付けられることにより、頭部84の面86とホルダ71のフランジ78の上面との間に生じる摩擦力F1は、フレーム72の面87とホルダ71のフランジ78の下面との間に生じる摩擦力F2よりも小さい。したがって、頭部84の面86からフランジ78に摩擦力F1によって伝達される回転力は、摩擦力F2を超えないので、ネジ73が締め付けられると、頭部84がフランジ78に対して滑りつつ回転し、フレーム72に対するホルダ71の位置が維持される。
【0064】
フレーム72には、3個のホルダ71が固定されるので、3個のホルダ71にそれぞれ支持されたヘッドモジュール70のノズル76の列の位置関係がずれることなく、3個のホルダ71がそれぞれネジ73によりフレーム72に固定される。
【0065】
ホルダ71の第1ビッカース硬度(HV)は、フレーム72の第2ビッカース硬度(HV)よりも小さいので、フレーム72の面87の微細な凹凸がホルダ71のフランジ78の下面に噛み込むようにして、フレーム72の面87とフランジ78の下面とが密着する。これにより、ホルダ71がフレーム72に対して位置ズレし難い。
【0066】
フレーム72およびネジ73の熱膨張係数は、ホルダ71の熱膨張係数に対して±20%の範囲内であるので、筐体30の内部空間の温度が変化したときに、フレーム72、ネジ73、およびホルダ71が熱膨張により変化する寸法が大きく異ならない。
【0067】
ホルダ71において、膨出部82の端面83がネジ73の座面となるので、ホルダ71の膨出部82以外の部分の反りやうねりがネジ73の座面に影響し難い。これにより、フレーム72に対するホルダ71の平行度が保たれ、その結果、ノズル面77の平行度が保たれる。
【0068】
[変形例]
前述された実施形態では、フレーム72に3個のホルダ71が固定されているが、ホルダ71の数は限定されない。フレーム72に固定されるホルダ71の数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0069】
また、画像記録装置100の内部構成は、前述された実施形態から変更されてもよい。例えば、画像記録装置100は、シートSに吐出されたインクを定着させるためのヒータや、シートSに記録された画像を読み取る読取りセンサなどを有していてもよい。
【0070】
また、ホルダ71は合成樹脂製に限定されず、また、フレーム72およびネジ73はステンレス製に限定されない。また、ホルダ71、フレーム72、およびネジ73の素材が変わることにより、ビッカース硬度の関係や熱膨張係数の関係が、前述された実施形態から変わってもよい。
【0071】
また、ネジ73の頭部84の面86の第1表面粗さ(Ra)や、フレーム72の面87の第2表面粗さ(Ra)は、面86,87が適宜加工されることにより実現されてもよい。その場合、例えばフレーム72の面87のすべてが均一な表面粗さを有する必要はなく、例えば膨出部82の端面83が当接する領域のみが加工されて所定の表面粗さを有してもよい。
【符号の説明】
【0072】
70・・・ヘッドモジュール(ヘッド)
71・・・ホルダ
72・・・フレーム
73・・・ネジ
75・・・ネジ孔
79・・・貫通孔
84・・・頭部
85・・・軸部
100・・・画像記録装置(液体吐出装置)