(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078488
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ストレッチャー
(51)【国際特許分類】
A61G 1/013 20060101AFI20240604BHJP
A61G 1/00 20060101ALI20240604BHJP
A61G 1/044 20060101ALI20240604BHJP
A61G 1/048 20060101ALI20240604BHJP
A61G 1/017 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61G1/013
A61G1/00 702
A61G1/044
A61G1/048
A61G1/017
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190896
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】513014101
【氏名又は名称】キャピー・インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一敏
(57)【要約】
【課題】 使用時の安定性を高め、柔軟性,使い勝手及び利便性に優れたストレッチャーを提供するとともに、座った姿勢の被搬送者でも、安全,安定かつ迅速に搬送する。
【解決手段】 ストレッチャー本体部2の長手方向Feの一端2s側を所定の長さL1,L2にわたって折り返し可能な折返部2cとして形成するとともに、この折返部2cにおける長手方向Feに対して直交する幅方向Fwの両側部位の一部又は全部に、当該折返部2cを除くストレッチャー本体部2の主部2mに対して着脱可能な着脱部4p,4qを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に被搬送者を載せるフレキシブル性を有するシート状のストレッチャー本体部,及びこのストレッチャー本体部の外縁部又はその近傍における複数の位置にそれぞれ設けたグリップ部を備えた人力により搬送するストレッチャーにおいて、前記ストレッチャー本体部の長手方向の一端側を所定の長さにわたって折り返し可能な折返部として形成するとともに、この折返部における前記長手方向に対して直交する幅方向の両側部位の一部又は全部に、当該折返部を除く前記ストレッチャー本体部の主部に対して着脱可能な着脱部を設けてなることを特徴とするストレッチャー。
【請求項2】
前記折返部は、前記幅方向の両側部位における前記ストレッチャー本体部の一部又は全部を広幅形成することにより前記主部の外縁部に対して外方へ延出した取付部として形成するとともに、前記折返部を前記主部の上面側へ折り返し、かつ前記取付部を前記ストレッチャー本体部の下面側へ折り返した際に、当該下面と前記取付部が着脱可能な着脱部を設けたことを特徴とする請求項1記載のストレッチャー。
【請求項3】
前記着脱部は、面ファスナ部及び/又は位置を設定した一又は二以上の選択可能なボタン部により構成することを特徴とする請求項1又は2記載のストレッチャー。
【請求項4】
前記ストレッチャー本体部は、前記折返部を除く内部に、弾性部材により形成した所定の厚さを有するクッションシートを埋設することを特徴とする請求項1記載のストレッチャー。
【請求項5】
前記ストレッチャー本体部は、前記下面の一部又は全部に対して着脱可能な補助シート部を備えることを特徴とする請求項1記載のストレッチャー。
【請求項6】
前記ストレッチャー本体部は、一部に開口部を設け、かつこの開口部を、上下に通水性を有するネット部材により閉塞してなることを特徴とする請求項1,4又は5記載のストレッチャー。
【請求項7】
前記グリップ部は、内部に弾性素材により形成したクッション部材を埋設してなることを特徴とする請求項1記載のストレッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、怪我人や患者等の被搬送者を載せて人力により搬送するシート状のストレッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被搬送者を載せて人力により搬送するフレキシブル性を有するシート状のストレッチャーは広く知られており、既に、本出願人もこの種の用途に好適なストレッチャー(万能ストレッチャー)を特許文献1により提案した。
【0003】
特許文献1に記載の万能ストレッチャーは、排水能力を飛躍的に高め、水上であるか地上であるかに拘わらず、無用な搬送労力が強いられる弊害を回避するとともに、被搬送者に対する悪影響を回避する万能ストレッチャーの提供を目的としたものであり、具体的には、被搬送者を載せるマットレス部及びこのマットレス部を搬送するための搬送用部材を備えてなる万能ストレッチャーであって、被搬送者を載せる防水性を有するマットレス部と、所定の厚さを有し、かつフレキシブル性を有するとともに、マットレス部とほぼ同じ大きさに形成することにより、マットレス部の下に敷いた状態で当該マットレス部に取付けてなる合成樹脂素材により形成した台座パネル部と、マットレス部における上面部の被搬送者が当接する部位及びマットレス部における下面部の台座パネル部が当接する部位を覆う所定の寸法に選定した網目を有する通水ネット5とを備えて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1の万能ストレッチャーをはじめ、従来における同種のストレッチャーは、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、全体の平面形状が長方形状となり、かつサイズが固定されるため、使用時における柔軟性,使い勝手及び利便性において必ずしも十分とはいえない。即ち、被搬送者は、年齢や性別が様々であり、しかも、怪我人や患者等の状態も大きく異なるため、被搬送者とストレッチャーが適合するとは限らない。例えば、長身の被搬送者の場合、ストレッチャーが相対的に小さくなり、身体の一部がはみ出す虞れがあるともに、子供の場合、ストレッチャーが相対的に大きくなりすぎ、搬送が不安定になる虞れがある。
【0007】
第二に、患者によっては仰向けの状態で搬送される場合、呼吸しにくいなどの不具合が生じ、座った状態で搬送したほうが望ましい場合もある。しかし、座った状態の場合、足が下方に垂れ、不安定な状態になるため、足が地面や壁等に衝突する虞れがある。結局、安全性,安定性及び迅速搬送性を損なわれ、被搬送者の保護が不十分になるなど、実施は容易でない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したストレッチャーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、上面2uに被搬送者Hを載せるフレキシブル性を有するシート状のストレッチャー本体部2,及びこのストレッチャー本体部2の外縁部又はその近傍における複数の位置にそれぞれ設けたグリップ部3a…,3b…,3c…,3dを備えた人力により搬送するストレッチャー1を構成するに際して、ストレッチャー本体部2の長手方向Feの一端2s側を所定の長さL1,L2にわたって折り返し可能な折返部2cとして形成するとともに、この折返部2cにおける長手方向Feに対して直交する幅方向Fwの両側部位の一部又は全部に、当該折返部2cを除くストレッチャー本体部2の主部2mに対して着脱可能な着脱部4p,4qを設けてなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、折返部2cは、幅方向Fwの両側部位におけるストレッチャー本体部2の一部又は全部を広幅形成することにより主部2mの外縁部に対して外方へ延出した取付部2cp,2cqとして形成するとともに、折返部2cを主部2mの上面2u側へ折り返し、かつ取付部2cp,2cqをストレッチャー本体部2の下面2d側へ折り返した際に、当該下面2dと取付部2cp,2cqが着脱可能な着脱部4p,4qを設けることができる。なお、着脱部4p,4qは、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsにより構成してもよし、或いは位置を設定した一又は二以上の選択可能なボタン部4pb…-(4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)により構成してもよく、さらに、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qs,及びボタン部4pb…(-4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)の組合わせにより構成してもよい。一方、ストレッチャー本体部2には、折返部2cを除く内部に、弾性部材により形成した所定の厚さを有するクッションシート2iを埋設することができるとともに、ストレッチャー本体部2の下面2dの一部又は全部に対して着脱可能な補助シート部2dcを設けることができる。また、グリップ部3a…には、内部に弾性素材により形成したクッション部材3aiを埋設することができる。他方、ストレッチャー本体部2には、一部に開口部2oを設け、かつこの開口部2oを、上下に通水性を有するネット部材5により閉塞することもできる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るストレッチャー1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) ストレッチャー本体部2の長手方向Feの一端2s側を所定の長さL1,L2にわたって折り返し可能な折返部2cとして形成するとともに、この折返部2cにおける長手方向Feに対して直交する幅方向Fwの両側部位の一部又は全部に、当該折返部2cを除くストレッチャー本体部2の主部2mに対して着脱可能な着脱部4p,4qを設けたため、長身者や子供等、年齢や性別による様々な被搬送者Hであっても、ストレッチャー1のサイズを容易に適合させることができるため、使用時(搬送時)の安定性を高めることができるなど、柔軟性,使い勝手及び利便性に優れたストレッチャー1を提供することができる。
【0013】
(2) 被搬送者Hが座った姿勢でも安全に搬送することができるため、患者等が仰向けで搬送されることにより呼吸がしにくくなるなどの不具合を解消できる。即ち、座った状態で足が下方に垂れても折返部2cにより、いわば足ポケットにより、足が地面や壁等に衝突するなどの虞れを回避し、被搬送者Hに対する十分な保護を図ることができるため、座った姿勢の被搬送者Hであっても安全,安定かつ迅速に搬送することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、折返部2cを構成するに際し、幅方向Fwの両側部位におけるストレッチャー本体部2の一部又は全部を広幅形成することにより主部2mの外縁部に対して外方へ延出した取付部2cp,2cqとして形成するとともに、折返部2cを主部2mの上面2u側へ折り返し、かつ取付部2cp,2cqをストレッチャー本体部2の下面2d側へ折り返した際に、当該下面2dと取付部2cp,2cqが着脱可能な着脱部4p,4qを設けて構成すれば、取付部2cp,2cq等がストレッチャー本体部2の上面2u側に露出する部分をゼロ又は低減できるため、ストレッチャー1の外観性の向上に寄与できるとともに、折返部2cにより形成される足ポケットの強度をより高めることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、着脱部4p,4qを構成するに際し、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsにより構成すれば、容易に着脱可能になり、かつ面接触効果により無用な隙間の発生を回避できるとともに、位置を設定した一又は二以上の選択可能なボタン部4pb…-(4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)により構成すれば、折返部2cの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。しかも、両者を組合わせて構成すれば、上述した両者双方のメリットを享受することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、ストレッチャー本体部2における折返部2cを除く内部に、弾性部材により形成した所定の厚さを有するクッションシート2iを埋設すれば、使用時における被搬送者Hに対する衝撃を低減し、位置ズレ等を防止することができるとともに、折返部2cを除くことにより、折返部2cの折返しへの無用な干渉(悪影響)を回避することができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、ストレッチャー本体部2の下面2dの一部又は全部に対して着脱可能な補助シート部2dcを設ければ、下面2dの強度を高め、傷付や汚れ等を防止して下面2dの保護を図ることができるとともに、劣化した際には容易に交換することができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、グリップ部3a…の内部に弾性素材により形成したクッション部材3aiを埋設すれば、グリップ部3a…の適度な弾性を確保できるため、搬送者が握った際のスベリ等を防止し、安定した把持性を確保できるとともに、安全性の向上にも寄与できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、ストレッチャー本体部2の一部に開口部2oを設け、かつこの開口部2oを、上下に通水性を有するネット部材5により閉塞するようにすれば、被搬送者Hが雨や海水等に晒された状態にあっても、ストレッチャー本体部2の上面2uに溜まる雨や海水等を円滑かつ速やかに下方へ落下させて排出可能になるため、被搬送者Hに対する不快感や悪影響を回避できるとともに、搬送時の軽量化にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るストレッチャーの二つの使用態様を示す一部破断面を含む平面図、
【
図4】同ストレッチャーの折返部を折返して使用する場合の斜視図、
【
図5】同ストレッチャーの補助シート部の作用説明図、
【
図6】同ストレッチャーのグリップ部(第一グリップ部)の一部断面下面図、
【
図8】同ストレッチャーの折返部の三つの使用態様説明図、
【
図9】同ストレッチャーを座った状態で使用する場合の一部断面側面図、
【
図10】同ストレッチャーの変更例に係る一部を示す下面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係るストレッチャー1の構成について、
図1~
図8を参照して説明する。
【0023】
ストレッチャー1は、基本構成として、
図1及び
図2に示すように、ストレッチャー本体部2,及びこのストレッチャー本体部2の外縁部又はその近傍における複数の位置にそれぞれ設けたグリップ部3a…,3b…,3c…,3dにより構成する。
【0024】
ストレッチャー本体部2は、
図8に示すように全体を長方形状に構成する。例示のストレッチャー本体部2は、全長Loが2400〔mm〕,幅Lwが600〔mm〕である。ストレッチャー本体部2を製作する際には、
図3に示すように、ターポリン(塩化ビニル系多層素材)生地を二枚重ねに縫製するとともに、内部に、スポンジマット等により形成した弾性部材による所定の厚さ(例えば、20〔mm〕前後)を有するクッションシート2iを埋設する。この場合、クッションシート2iは、ストレッチャー本体部2の全体に埋設してもよいが、例示のように、ストレッチャー本体部2における後述する折返部2cを除くストレッチャー本体部2の主部2mの内部に埋設することが望ましい。
【0025】
このように、ストレッチャー本体部2を構成する際に、ストレッチャー本体部2における折返部2cを除く内部に、弾性部材により形成した所定の厚さを有するクッションシート2iを埋設すれば、使用時における被搬送者Hに対する衝撃を低減し、位置ズレ等を防止することができるとともに、折返部2cを除くことにより、折返部2cの折返しへの無用な干渉(悪影響)を回避することができる。
【0026】
また、
図1及び
図8に示すように、ストレッチャー本体部2の長手方向Feの一端2s側(被搬送者H(
図8参照)の足部Hf側)を、所定の長さL1(P1点)及びL2(P2点)にわたって折り返し可能な折返部2cとして形成する。なお、この場合、折返部2cは、P2点から一端2sまでの範囲となる。さらに、折返部2cは、長手方向Feに直交する幅方向Fwの両側部位の一部(又は全部)を広幅形成し、かつストレッチャー本体部2の外縁部に対して外方へ延出した取付部2cp,2cqを形成する。例示の場合、取付部2cp,2cqの長さLc(
図8参照)は300〔mm〕である。
【0027】
そして、
図1(b)に示すように、ストレッチャー本体部2の上面2uに位置する取付部2cp,2cqのそれぞれに、一方側(掛止側)の面ファスナ部4pf,4qfを縫製等により固定するとともに、
図2に示すように、ストレッチャー本体部2の下面2dにおける外縁部には、他方側(被掛止側)の面ファスナ部4ps,4qsを縫製等により固定する。これにより、折返部2cを上面2u側へ折り返した後、取付部2cp,2cqを下面2d側へ折り返した際には、取付部2cp,2cqの面ファスナ部4pf,4qfを、ストレッチャー本体部2の主部2mにおける他方側の面ファスナ部4ps,4qsに装着することが可能になる。このような面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsにより構成すれば、容易に着脱可能になり、かつ面接触効果により無用な隙間の発生を回避できる。
【0028】
さらに、
図1(b)に示すように、一方の取付部2cpには、位置を設定した前後一対の凸側のボタン部4pb,4pbを取付けるとともに、他方の取付部2cqには、位置を設定した前後一対の凸側のボタン部4qb,4qbを取付ける。また、
図2に示すように、ストレッチャー本体部2の下面2dにおける幅方向Fwの一方の外縁部に近接して、位置を設定した前後一対の凹側における二組のボタン部4pr,4prと、4pe,4peを上述したP1点の位置とP2点の位置に対応して取付けるとともに、幅方向Fwの他方の外縁部に近接して、位置を設定した前後一対の凹側における二組のボタン部4qr,4qrと、4qe,4qeを上述したP1点の位置とP2点の位置に対応して取付ける。このようなボタン部4pb…,4qb…,4pr…,4pe…,4qr…,4qe…を設ければ、折返部2cの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0029】
このような面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsとボタン部4pb…,4qb…,4pr…,4pe…,4qr…,4qe…により、着脱部4p,4qが構成される。着脱部4p,4qは、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsのみにより構成してもよし、或いは位置を設定した一又は二以上の選択可能なボタン部4pb…-(4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)のみにより構成してもよいが、実施形態のように、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qs,及びボタン部4pb…-(4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)の組合わせにより構成すれば、上述した両者双方のメリットを享受することができる。
【0030】
一方、ストレッチャー本体部2の下面2dには、
図2及び
図5に示す着脱可能な補助シート部2dcを設ける。この補助シート部2dcは、例えば、軽量で強度に優れたポリエステル素材等を使用することが望ましい。例示する補助シート部2dcのサイズは、長手方向Feのサイズが1450〔mm〕,幅方向Fwのサイズが350〔mm〕である。
【0031】
この場合、
図5に示すように、ストレッチャー本体部2の下面2dに、補助シート部2dcの外縁形状に沿った枠型形状となる一方側(被掛止側)の面ファスナ部11を縫製等により固定するとともに、対向する補助シート部2dcの装着面2dcjに、当該面ファスナ部11と同一形状となる他方側(掛止側)の面ファスナ部12を縫製等により固定する。
【0032】
このように、ストレッチャー本体部2の下面2dに対して着脱可能な補助シート部2dcを設ければ、下面2dの強度を高め、傷付や汚れ等を防止して下面2dの保護を図ることができるとともに、劣化した際には容易に交換することができる。なお、例示は、補助シート部2dcを下面2dの一部に設けたが、下面2dの全部に設けてもよい。
【0033】
他方、グリップ部3a…,3b…,3c…,3dは、ストレッチャー本体部2の外縁部又はその近傍における複数の位置にそれぞれ設ける。
【0034】
ストレッチャー本体部2の左側の外縁部に近接した位置となる、前位置,中間位置,後位置には、それぞれ第一グリップ部3a,3a,3aを縫製等により取付けるとともに、ストレッチャー本体部2の右側の外縁部に近接した位置となる、前位置,中間位置,後位置には、それぞれ第一グリップ部3a,3a,3aを縫製等により取付ける。なお、後位置に設ける左右の第一グリップ部3a,3aは、前述した折返部2cと干渉しないように、折返部2c(P1点位置)よりも前側に取付ける。
【0035】
一つの第一グリップ部3aは、
図6に示すように、強度に優れたベルト布材をコの字形に形成し、両端部をストレッチャー本体部2の下面2dに縫製等により取付けるとともに、中間位置の内部には弾性部材、例えば、塩化ビニルチューブのカッティング材等を利用したクッション部材3aiを埋設して構成する。このように、グリップ部3aの内部に弾性素材により形成したクッション部材3aiを埋設すれば、グリップ部3aの適度な弾性を確保できるため、搬送者が握った際のスベリ等を防止し、安定した把持性を確保できるとともに、安全性の向上にも寄与できる。他の残りの第一グリップ部3a…も同様に構成する。
【0036】
また、ストレッチャー本体部2の長手方向Feにおける他端2t側(被搬送者H(
図8参照)の足部Hfの反対側)の端辺には、
図2に示すように、左右一対の第二グリップ部3b,3bを設ける。第二グリップ部3b…は、搬送者が持つことができるように比較的長いループ状に形成して他端2t側の端辺から突出させる。この第二グリップ部3b…は、縫製等によりストレッチャー本体部2の下面2dに取付ける。
【0037】
さらに、
図2に示すように、ストレッチャー本体部2の右側の外縁部に近接した前位置に設けた第一グリップ部3aに隣接した位置,及び中間位置に設けた第一グリップ部3aに隣接した位置には、それぞれ小ループ状の第三グリップ部3c,3cを縫製等により取付けるとともに、ストレッチャー本体部2の左側の外縁部に近接した前位置に設けた第一グリップ部3aに隣接した位置,及び中間位置に設けた第一グリップ部3aに隣接した位置には、それぞれ小ループ状の第三グリップ部3c,3cを縫製等により取付ける。
【0038】
この場合、左右の前後に位置する二つの第三グリップ部3c,3cには、左右一対の担架棒をそれぞれ挿通させて使用できるとともに、必要により搬送者が手で持つことができる補助取手として機能させることができる。なお、ストレッチャー本体部2の後位置には第三グリップ部を設けないが、後位置に設けた一方の第一グリップ部3aに、バンド部材13の一端を連結することにより第四グリップ部3dとして機能させる。即ち、バンド部材13を後位置に設けた他方の第一グリップ部3aに架け渡し、両端側を結合してループ状の第四グリップ部3dとして機能させる。13x,13yは、バンド部材13に設けた一方側と他方側の面ファスナ部を示す。
【0039】
次に、本実施形態に係るストレッチャー1の使用方法及び機能について、
図7~
図9を参照して説明する。
【0040】
本実施形態に係るストレッチャー1は、
図8に示すように、三つの使用モードにより利用することかできる。即ち、
図8(a)に示す全長Loが最も長く使用できるラージモードMo(全長Lo:2400〔mm〕),
図8(b)に示す折返部2cをP1点位置で折り返した中間長さとなるミディアムモードM1(長さL1:2100〔mm〕),
図8(c)に示す折返部2cをP2点位置で折り返した最も短いショートモードM2(長さL2:1900〔mm〕)の三つの使用モードMo,M1,M2により利用できる。
【0041】
これにより、例えば、ラージモードMoでは、長身の被搬送者Hに適し、また、ミディアムモードM1は、お年寄りや女性を含む標準的な身長を有する被搬送者Hに適し、さらに、ショートモードM2は子供や小柄の被搬送者Hに適するなど、身長等に最適な使用モードMo,M1,M2を選択して使用可能である。
【0042】
図7(a)-(c)は、一例として、ショートモードM2により使用する場合のセッティング手順を示す。
【0043】
まず、
図7(a)は、ストレッチャー1の全体を広げた状態、即ち、上面2uを上向きにしたストレッチャー1のラージモードMoの状態を示す。この状態において、まず、P2点を折り位置として、折返部2cを、
図7(b)の矢印Fa方向となる上面2u側へ折り返す。折り返した状態が
図7(b)となる。この状態では、取付部2cp,2cqも開いた状態にあるため、着脱部4p,4qは非装着状態となる。
【0044】
次いで、
図7(c)に示すように、折返部2cにおける片側の取付部2cqを、矢印Fb方向へ折り返し、取付部2cqの面ファスナ部4qfを、主部2mの底面2dの面ファスナ部4qsに装着するとともに、取付部2cqにおける一対のボタン部4qb,4qbを、第二のボタン部4qr,4qrに装着する。折返部2cにおける片側の取付部2cqについて説明したが、折返部2cにおける残りの取付部2cpについても同様の手順で装着を行う。
【0045】
これにより、
図7(c)に示すショートモードM2に容易に変更できるとともに、ストレッチャー1の他端2t側に、足Hfを収容できる足ポケットXpを形成することができる。
【0046】
以上は、ショートモードM2にセッティングする場合について説明したが、ミディアムモードM1に変更する場合も、折返部2cをP1点で折り返すとともに、装着を第一のボタン部4qe,4qeに変更する点を除いて、ショートモードM2の場合と同様に行うことができる。
【0047】
なお、このようにセッティングを行うため、前述した主部2mの底面2dおける他方側の面ファスナ部4ps,4qsの長手方向Feの長さは、ショートモードM2にセットした際に、一方側の面ファスナ部4pf,4qfの全面が装着できる長さを選定する。具体的には、
図8に示すように、P2点位置で折り返す折返部2cの長さをL2hとした場合、面ファスナ部4ps,4qsの長さは、「L2h×2」の長さとなる。
【0048】
したがって、折返部2cの範囲(例示は、Lc又はL2h)は、固定した範囲ではなく、折返部2cの位置(例示は、P1又はP2)を決定した時点で当該位置から一端2s側が折返部2cとなり、当該位置から他端2t側が主部2mとなる。
【0049】
このように、折返部2cを構成するに際し、幅方向Fwの両側部位におけるストレッチャー本体部2の一部又は全部を広幅形成することにより主部2mの外縁部に対して外方へ延出した取付部2cp,2cqとして形成するとともに、折返部2cを主部2mの上面2u側へ折り返し、かつ取付部2cp,2cqをストレッチャー本体部2の下面2d側へ折り返した際に、当該下面2dと取付部2cp,2cqが着脱可能な着脱部4p,4qを設けて構成したため、取付部2cp,2cq等がストレッチャー本体部2の上面2u側に露出する部分をゼロ又は低減できるため、ストレッチャー1の外観性の向上に寄与できるとともに、折返部2cにより形成される足ポケットの強度をより高めることができる。
【0050】
よって、本実施形態に係るストレッチャー1によれば、基本的な構成として、ストレッチャー本体部2の長手方向Feの一端2s側を所定の長さL1,L2にわたって折り返し可能な折返部2cとして形成するとともに、この折返部2cにおける長手方向Feに対して直交する幅方向Fwの両側部位の一部又は全部に、当該折返部2cを除くストレッチャー本体部2の主部2mに対して着脱可能な着脱部4p,4qを設けたため、長身者や子供等、年齢や性別による様々な被搬送者Hであっても、ストレッチャー1のサイズを容易に適合させることができるため、使用時(搬送時)の安定性を高めることができるなど、柔軟性,使い勝手及び利便性に優れたストレッチャー1を提供することができる。
【0051】
しかも、
図8(b)及び(c)のように、ストレッチャー本体部2の他端2t側には、被搬送者Hの足Hfを収容できる足ポケットXpが形成されるため、
図8(b)及び(c)に示すように、被搬送者Hが横たわった状態のみならず、
図9に示すように、被搬送者Hを座った状態で搬送することができる。
【0052】
これにより、被搬送者Hが座った姿勢でも安全に搬送することができるため、患者等が仰向けで搬送されることにより呼吸がしにくくなるなどの不具合を解消できる。特に、座った状態の場合、被搬送者Hの足が下方に垂れ、不安定な状態になった場合にも、折返部2cにより足ポケットが形成されるため、足が地面や壁等に衝突するなどの虞れを回避できる。この結果、被搬送者Hが座った状態でも被搬送者Hの足Hfに対する保温や安心感を付与できるとともに、安全,安定かつ迅速に搬送できるなど、被搬送者Hに対する十分な保護を図ることができる。
【0053】
なお、
図10は、ストレッチャー1におけるストレッチャー本体部2の変更例を示す。この変更例は、同図に示すように、ストレッチャー本体部2の一部に開口部2oを設け、かつこの開口部2oを、上下に通水性を有するネット部材5により閉塞するようにしたものである。
【0054】
このように構成することにより、被搬送者Hが雨や海水等に晒された状態にあっても、ストレッチャー本体部2の上面2uに溜まる雨や海水等を円滑かつ速やかに下方へ落下させて排出可能になるため、被搬送者Hに対する不快感や悪影響を回避できるとともに、搬送時の軽量化にも寄与できる利点がある。
【0055】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0056】
例えば、折返部2cを形成するに際し、二つの所定の長さL1,L2にわたって折り返し可能に形成する例を示したが、所定の長さL1…は、一つでもよいし、三以上であってもよい。また、折返部2cは、幅方向Fwの両側部位におけるストレッチャー本体部2の一部又は全部を広幅形成することにより主部2mの外縁部に対して外方へ延出した取付部2cp,2cqとして形成する形態を例示したが、このような取付部2cp,2cqを設けることなく、折返部2cの外縁部又はその近傍を、直接的に主部2mへ着脱できるようにしてもよい。さらに、着脱部4p,4qは、面ファスナ部4pf-4ps,4qf-4qsにより構成する場合と、位置を設定した一又は二以上の選択可能なボタン部4pb…-(4pr…,4pe…),4qb…-(4qr…,4qe…)により構成した例を示したが、他の各種公知の着脱手段を利用することができる。一方、ストレッチャー本体部2に設けるクッションシート2iや補助シート部2dcは必須の構成要素ではなく、無い場合を排除するものではない。また、クッションシート2iや補助シート部2dc、さらに、ストレッチャー本体部2やグリップ部3a…,3b…,3c…,3dの形成素材は、例示の素材に限定されるものではないとともに、グリップ部3a…,3b…,3c…,3dの取付位置や数量は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、怪我人や患者等の被搬送者を載せて人力により搬送するシート状の各種ストレッチャーに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:ストレッチャー,2:ストレッチャー本体部,2u:ストレッチャー本体部の上面,2d:ストレッチャー本体部の下面,2dc:補助シート部,2s:ストレッチャー本体部の一端,2c:折返部,2cp:取付部,2cq:取付部,2m:主部,2i:クッションシート,2o:開口部,3a…:グリップ部(第一グリップ部),3ai:クッション部材,3b…:グリップ部(第二グリップ部),3c…:グリップ部(第三グリップ部),3d:グリップ部(第四グリップ部),4p:着脱部,4q:着脱部,4pf-4ps:面ファスナ部,4qf-4qs:面ファスナ部,4pb…-(4pr…,4pe…):ボタン部,4qb…-(4qr…,4qe…):ボタン部,5:ネット部材,H:被搬送者,Fe:長手方向,Fw:幅方向,L1:所定の長さ,L2:所定の長さ