(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078492
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】油性整髪用組成物及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240604BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190900
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】山岡 奈央
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083BB13
4C083CC32
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】熱処理により整髪した毛髪形状を長時間維持できる油性整髪用組成物、及び該油性整髪用組成物による毛髪処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は[A]ヨウ素価90以上の植物油を含有し、さらに[B]液状炭化水素を含有することが好ましい油性整髪用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ヨウ素価90以上の植物油を含有し、毛髪の熱処理の前又は後に毛髪に塗布して使用する油性整髪用組成物。
【請求項2】
水の含有量が1質量%以下であるか、水を含有しない請求項1に記載の油性整髪用組成物。
【請求項3】
炭素数が1~4である1価のアルコールの含有量が10質量%以下であるか、炭素数が1~4である1価のアルコールを含有しない請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項4】
前記毛髪の熱処理がヘアアイロンによるものである請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項5】
毛髪の熱処理前に毛髪に塗布して使用される請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項6】
さらに、[B]液状炭化水素を含有する請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項7】
前記[A]成分の含有量が15質量%以上である請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項8】
前記[A]成分のヨウ素価が98以上である請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物。
【請求項9】
前記[B]成分の含有量に対する前記[A]成分の含有量の比率([A]/[B])が0.01以上50以下である請求項6に記載の油性整髪用組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の油性整髪用組成物を毛髪に塗布する塗布工程と、毛髪の熱処理工程と、を備えた毛髪処理方法であって、
前記塗布工程が、前記毛髪の熱処理工程の前又は後に行われる毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性整髪用組成物及び毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアアイロンなどを用いた熱処理によって、毛髪を所望の形状に整髪することが一般的に行われており、熱処理に際しては整髪用組成物が使用されることがある。例えば、特許文献1には、両性樹脂などが配合された原液と、噴射剤とを含有した整髪剤組成物をヘアアイロンの使用前に毛髪に塗布して使用することで、スタイル形成能に優れ、毛髪に良好なやわらかさを付与でき、かつ洗髪時に良好に洗い流し得るといった技術が開示されている(特許文献1の実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱処理に際して使用される整髪用組成物として、様々な剤型の整髪用組成物が用いられるが、なかでもヘアオイルなどの油性整髪用組成物が、手に取って均一に塗り広げられるという取り扱いの容易さからよく使用されている。
【0005】
しかしながら、熱処理に際して使用される油性整髪用組成物においては、毛髪を所望の形状に整髪することが可能であるが、整髪後の時間経過により、整髪した毛髪形状を長時間維持できない場合があった。
そのため、整髪した毛髪形状を長時間維持できる熱処理に際して使用される油性整髪用組成物が要望されている。
【0006】
本発明は、上記要望に鑑みてなされたものであり、熱処理により整髪した毛髪形状を長時間維持できる油性整髪用組成物、及び該油性整髪用組成物による毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、油性整髪用組成物に含有する油性成分としてヨウ素価90以上の植物油を選択することで、毛髪への熱処理により整髪した毛髪形状を長時間維持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
[A]ヨウ素価90以上の植物油を含有し、毛髪の熱処理の前又は後に毛髪に塗布して使用する油性整髪用組成物。
[発明2]
水の含有量が1質量%以下であるか、水を含有しない発明1に記載の油性整髪用組成物。
[発明3]
炭素数が1~4である1価のアルコールの含有量が10質量%以下であるか、炭素数が1~4である1価のアルコールを含有しない発明1又は2に記載の油性整髪用組成物。
[発明4]
前記毛髪の熱処理がヘアアイロンによるものである発明1~3のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明5]
毛髪の熱処理前に毛髪に塗布して使用される発明1~4のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明6]
さらに、[B]液状炭化水素を含有する発明1~5のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明7]
前記[A]成分の含有量が15質量%以上である発明1~6のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明8]
前記[A]成分のヨウ素価が98以上である発明1~7のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明9]
前記[B]成分の含有量に対する前記[A]成分の含有量の比率([A]/[B])が、0.01以上50以下である発明6~8のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物。
[発明10]
発明1~9のいずれか1発明に記載の油性整髪用組成物を毛髪に塗布する塗布工程と、毛髪の熱処理工程と、を備えた毛髪処理方法であって、
前記塗布工程が、前記毛髪の熱処理工程の前又は後に行われる毛髪処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る油性整髪用組成物は、毛髪への熱処理により整髪した毛髪形状を長時間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態である油性整髪用組成物及び毛髪処理方法を、以下詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0011】
なお、本明細書において「液状」とは、油性整髪用組成物又はそれに使用された構成成分を高さ12cm、口径4cmの円柱形のガラス管に入れ、25℃に設定した恒温水槽内に1時間静置後、B型粘度計で適宜なローターを用い、適宜な回転数を設定し、測定開始から60秒後に測定された粘度が5,000mPa・s以下であることをいう。
【0012】
(油性整髪用組成物)
本実施形態の油性整髪用組成物は、[A]ヨウ素価90以上の植物油を含有し、毛髪の熱処理の前又は後に毛髪に塗布して使用されるものである。
【0013】
なお、本実施形態の油性整髪用組成物における「油性」とは、ヨウ素価90以上の植物油を含有する油相を連続相としていることをいう。
【0014】
[A]ヨウ素価90以上の植物油
本実施形態の油性整髪用組成物におけるヨウ素価90以上の植物油(以下、ヨウ素価90以上の植物油を[A]成分ということがある)の含有量は、適宜設定され得るが、下限としては、例えば、5質量%以上であり、毛髪の形状の維持により優れる観点から、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。上限としては、例えば、100質量%以下であり、毛髪の形状維持及び毛髪に塗布した際のべたつき感の観点から、100質量%未満が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。なお、ここでヨウ素価とは、医薬部外品原料規格2021の方法に準じて測定されるものをいう。
【0015】
本実施形態の油性整髪用組成物に用いられる[A]成分のヨウ素価としては、90以上であれば適宜設定され得るが、低温安定性を向上させる観点から98以上であることが好ましく、毛髪形状の維持により優れる観点から、130以上であることがより好ましい。
【0016】
本明細書において、ヨウ素価が130以上の植物油を「乾性油」、ヨウ素価が100を超えて130未満の植物油を「半乾性油」、ヨウ素価が100以下の植物油を「不乾性油」とそれぞれ表すことがある。
本実施形態の油性整髪用組成物に使用される[A]成分は、例えば、乾性油、半乾性油、又はヨウ素価が90以上の一部の不乾性油を用いることができ、毛髪形状の維持により優れる観点から、乾性油又は半乾性油を用いることが好ましい。
【0017】
前記乾性油の具体例としては、ダイズ油、ブドウ種子油、ルリジサ種子油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、クランベリー種子油、アマナズナ種子油、ザクロ種子油、ククイナッツ油、クロフサスグリ種子油、カニナバラ果実油、アマニ油、ヨーロッパキイチゴ種子油、月見草油、プルケネチアボルビリス種子油などが挙げられ、前記半乾性油の具体的例としては、コメヌカ油、オレンジ種子油、ニンジン種子油、カノラ油、アンズ核油、モモ核油、アーモンド油、クランベアビシニカ種子油、ゴマ油、コメ胚芽油、スイカ種子油、グレープフルーツ種子油、トマト種子油、クダモノトケイソウ種子油、コムギ胚芽油、コーン油などが挙げられ、前記不乾性油の具体例としては、ピスタシオ種子油、バオバブ種子油、アルガニアスピノサ核油、スクレロカリアビレア種子油、アボガド油などが挙げられ、毛髪形状の維持に優れる観点及び取扱いのし易さの観点から、アンズ核油、ブドウ種子油、サフラワー油、月見草油などが好ましく、これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
その他任意成分
本実施形態の油性整髪用組成物は、本発明の目的に反しない限り、[A]成分の他に、任意成分を含有したものであってもよい。任意成分の具体例としては、液状炭化水素(以下、(以下、液状炭化水素を[B]成分ということがある)、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、液状炭化水素以外の炭化水素、シリコーン、エステル、脂肪酸、炭素数1~4の1価アルコール、高分子化合物、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粉体、ビタミン、防腐剤、香料、水などである。これらの中でも、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、液状炭化水素を含有することがより好ましい。
【0019】
[B]液状炭化水素
本実施形態の油性整髪用組成物は、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、液状炭化水素を含有することが好ましい。
【0020】
本実施形態の油性整髪用組成物に用いられる[B]成分の含有量は、適宜設定され得るが、下限としては、例えば5質量%以上であり、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限としては、例えば、85質量%以下であり、油性整髪用組成物の毛髪への塗布のし易さの観点から、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。
【0021】
本実施形態の油性整髪用組成物において、[B]成分が含有される場合、[B]成分の含有量に対する[A]成分の含有量の質量比率([A]/[B])は、適宜設定され得るが、上限としては、例えば、50以下であり、毛髪形状の維持により優れる観点から、10以下が好ましく、4以下がより好ましい。下限としては、例えば、0.01以上であり、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0022】
前記液状炭化水素の具体例としては、イソドデカン、テトラデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、(C13-15)アルカンなどの液状揮発性炭化水素;スクワラン、水添ポリデセン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動パラフィン、オレフィンオリゴマーなどの液状不揮発性炭化水素が挙げられる。これらの中でも、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、イソドデカン、テトラデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、(C13-15)アルカンなどの液状揮発性炭化水素が好ましい。
【0023】
水
本実施形態の油性整髪用組成物は、水を含有させたものであってもよく、水を含有しないものであってもよい。本実施形態の油性整髪用組成物における水の含有量は、適宜設定されるものであるが、例えば、1質量%以下であり、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。さらに好ましくは、本実施形態の油性整髪用組成物は、水を含有しないものである。
【0024】
炭素数1~4の1価アルコール
本実施形態の油性整髪用組成物は、炭素数1~4の1価アルコールを含有させてもよい。本実施形態の油性整髪用組成物における炭素数1~4の1価アルコールの含有量としては、適宜設定されるものであるが、例えば、10質量%以下であり、油性整髪用組成物の低温安定性がより向上する観点から、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。さらに好ましくは、本実施形態の油性整髪用組成物は、炭素数1~4の1価アルコールを含有しないものである。
【0025】
粘度
本実施形態の油性整髪用組成物の粘度は特に限定されないが、毛髪への塗布のしやすさの観点から、高さ12cm、口径4cmの円柱形のガラス製スクリュー管瓶に本実施形態の油性整髪用組成物を入れて25℃に設定した恒温水槽内で1時間静置後、B型粘度計で適宜なローターを用い、適宜な回転数を設定して、測定開始後から60秒後に測定された場合に、上限としては、例えば、1,000,000mPa・s以下であり、20,000mPa・s以下が好ましく、5,000mPa・s以下がより好ましい。下限としては、例えば、1mPa・s以上であり、10mPa・s以上が好ましい。
【0026】
剤型
本実施形態の油性整髪用組成物の剤型としては特に限定されないが、固形状、ペースト状、又は液状であることが挙げられ、その中でも扱い性に優れる観点から液状であることが好ましい。前記液状の剤型としては、例えば、ヘアオイルが挙げられる。
【0027】
本実施形態の油性整髪用組成物の剤型としては特に限定されないが、例えば、W/O乳化系、W/Si乳化系などの油中水型乳化系;油相中に水が分散した可溶化系;非水系などが挙げられる。
【0028】
毛髪の熱処理
本実施形態の油性整髪用組成物における毛髪の熱処理は、前記油性整髪用組成物の毛髪への塗布前、及び塗布後のどちらであってもよいが、毛髪形状の維持により優れる観点から、油性整髪用組成物は毛髪の熱処理前に塗布することが好ましい。
【0029】
本実施形態の油性整髪用組成物における毛髪の熱処理は、例えば、発熱体を備える器具を用い、発熱体と毛髪を接触させ、毛髪を所望の形状に整髪することによって行われる。
【0030】
前記発熱体を備える器具としては、例えば、対向する一対の発熱体を備えるストレートヘアアイロン、円筒形の発熱体を備えるカーリングヘアアイロンなどのヘアアイロンが挙げられる。
【0031】
前記ヘアアイロンにおいて、発熱体の設定温度は、適宜設定し得るものであるが、例えば、下限温度は100℃以上であり、毛髪形状の維持により優れる観点から、120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。上限温度は、毛髪ダメージ軽減の観点から、220℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
【0032】
前記対向する一対の発熱体を備えるストレートアイロンとしては、例えば、ハッコー社製「ADST Premium DS」、小泉成器社製「KHS-8740」、クレイツ社製「ストレートプロSR」などが挙げられる。
【0033】
本実施形態の油性整髪用組成物における毛髪の熱処理として、前記対向する一対の発熱体を備えるストレートアイロンを用いる方法としては、例えば、毛髪をストレートヘアアイロンの対向する発熱体間に挟み、その後、毛髪を挟んだ状態で毛髪の長手方向の毛髪の末端に向かって滑らせるように移動させる処理、手、櫛、ブラシなどの道具により毛髪を伸ばしながらストレートアイロンで挟んでそのまま保持する処理、及びその両方を組み合わせた方法などが挙げられる。
【0034】
前記円筒形の発熱体を備えるカーリングヘアアイロンとしては、例えば、ハッコー社製「DIGITAL Perming Iron」、トリコインダストリーズ社製「アイビルDHセラミックアイロン」、クレイツ社製「クレイツカールプロSR」、MTG社製「ReFaRE-AG00A」などが挙げられる。
【0035】
本実施形態の油性整髪用組成物における毛髪の熱処理として、前記円筒形の発熱体を備えるカーリングヘアアイロンを用いる方法としては、例えば、毛髪をカーリングヘアアイロンの円筒形の発熱体に巻き付け、発熱体に対向するクリップ体で挟み、所定時間加熱する処理などが挙げられる。
【0036】
本実施形態の油性整髪用組成物における毛髪の熱処理は、本実施形態の毛髪処理方法における、毛髪の熱処理工程とすることができる。
【0037】
毛髪への塗布
本実施形態の油性整髪用組成物を使用する際の毛髪への塗布としては、適宜設定し得るものであるが、例えば、油性整髪料組成物を手に取って広げた後に毛髪に塗布することが挙げられる。
【0038】
(毛髪処理方法)
本実施形態の毛髪処理方法は、少なくとも[A]成分を含有する油性整髪用組成物を毛髪に塗布する塗布工程と、毛髪の熱処理工程とを備えた毛髪処理方法であって、前記塗布工程が、前記毛髪の熱処理工程の前又は後に行われるものである。
【0039】
塗布工程
前記塗布工程としては、適宜設定され得るが、例えば、前記本実施形態の油性整髪料組成物を手に取って広げた後で毛髪に塗布する工程が挙げられる。
【0040】
前記塗布工程は、前記毛髪の熱処理工程の前又は後のどちらで行ってもよいが、毛髪形状の維持により優れる観点から、前記毛髪の熱処理工程の前に行うことが好ましい。
【0041】
毛髪の熱処理工程
前記毛髪の熱処理工程としては、適宜設定され得るが、例えば、前記油性整髪用組成物における毛髪の熱処理による工程が挙げられる。それらの中でも、より整髪力に優れる観点から、前記対向する一対の発熱体を備えるストレートアイロンを用いる処理による工程、前記円筒形の発熱体を備えるカールヘアアイロンを用いる処理による工程が好ましい。
【実施例0042】
以下、実施例に基づき本発明に係る油性整髪用組成物をさらに詳述するが、本発明は、以下に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0043】
[油性整髪用組成物(実施例1~11、比較例1及び2)の調製]
下記に示す表1~3に示した組成(質量%)となるように、[A]成分又は[A]成分の代わりとしてヨウ素価90未満の[A’]成分と[B]成分とを混合して調製した。[A]成分として使用した植物油(乾性油:月見草、サフラワー油、ブドウ種子油、半乾性油:アンズ核油、不乾性油:アルガニアスピノサ核油)は、ヨウ素価96~156のものを使用した。比較例1は、[A’]成分としてヨウ素価90未満の植物油であるオリーブ果実油(ヨウ素価80)を使用した。[B]成分は、液状炭化水素としてイソドデカンを混合して調製した。
【0044】
[毛髪のカール率の評価]
上記調整した油性整髪用組成物を用いて評価用毛束で熱処理後の毛髪の形状維持の効果を評価した。評価用毛束は長さ18cm、重量0.8gのものを使用した。評価用毛束に試料の油性長髪用組成物を0.02g塗布し、180℃に設定したカールヘアアイロン(クレイツ社製、製品名:カールプロSR-26)に巻き付け10秒間の熱処理を行った。熱処理後の評価用毛束を室温25℃、湿度50%の条件下で根元部分のみを固定し吊り下げた状態で、24時間静置後の毛束の長さ(L24)を測定し、下記式によりカール率(C)を算出した。実施例6は、カールヘアアイロンの熱処理後に油性整髪用組成物を塗布した評価用毛束を評価した。比較例2は、油性整髪用組成物の塗布後、カールヘアアイロンの発熱体に巻き付けたのみで熱処理を行わない評価用毛束を評価した。評価結果を表1~3に示す。
C=(18-L24)/18
【0045】
[ヨウ素価の測定法]
ヨウ素価の測定は、医薬部外品原料規格2021(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)の方法に準じて行った。以下に、ヨウ素価測定法を示す。
試料のヨウ素価に応じて、試料採取量(ヨウ素価50~100:0.4~0.2g、ヨウ素価100~150:0.2~0.12g、ヨウ素価150~200:0.15~0.10g)をガラス器に精密に量り、500mLのヨウ素瓶中に容器とともに入れ、シクロヘキサン10mLを加えて溶かした。次いで、一塩化ヨウ素試液25mLを正確に加え、栓をして軽く振り混ぜた。遮光して20~30℃で、試料のヨウ素価に応じて、作用時間(ヨウ素価50~100:30分、ヨウ素価100~200:60分)の間ときどき振り混ぜながら放置した。次に、ヨウ化カリウム溶液(1mol/L)20mL及び水100mLを加えて振り混ぜた後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定した。下記式によりヨウ素価を算出した。同様の方法で空試験を行いブランクを求めた。
ヨウ素価=(a-b)×1.269/c
a:空試験の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液の消費量(mL)
b:試料の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム液の消費量(mL)
c:試料採取量(g)
【0046】
[低温安定性の評価]
下記に示す表1及び表3に示した組成(質量%)となるように、[A]成分又は[A]成分の代わりとしてヨウ素価90未満の[A’]成分と[B]成分とを混合して調製した油性整髪用組成物の25mlの各試験サンプルを、30mlのガラス製スクリュー管瓶に入れ試験に供した。低温安定性の試験は、各試験サンプルを低温インキュベーター(フクシマガリレイ社製、型番:FMU-4041)を用いて、-10℃で7日間静置し、各試験サンプルが-10℃の状態で目視により評価した。評価基準な以下の通りである。
〇:透明の液状を保っていた。
△:一部固体となり、成分が析出した。
×:ほぼ全体が固体となった。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
表1に示す結果によれば、[A]成分であるヨウ素価90以上の植物油を用いた実施例1~11では、[A]成分の代わりに[A’]成分であるヨウ素価80の植物油を用いた比較例1と比較してサンプル毛束の24時間後のカール率が高く維持された。また、[A]成分としてヨウ素価98以上の植物油を用いた実施例1~4では、[A]成分としてヨウ素価98未満の植物油を用いた実施例5及び比較例1よりも、低温安定性が高かった。
【0051】
表2に示す結果によれば、比較例2では、実施例2と同様の成分を含有させた油性整髪用組成物を毛髪に塗布しても毛髪に熱処理を加えないと毛髪の形状維持ができないことが示された。また、熱処理前に油性整髪料組成物を塗布した実施例2は、熱処理後に油性整髪料組成物を塗布した実施例6よりも、サンプル毛束の24時間後のカール率が高く維持された。
【0052】
表3に示す結果によれば、[A]成分を80質量%含有する実施例10は、[A]成分を100質量%含有する実施例11と比較してサンプル毛束の24時間後のカール率が高く維持された。また、[B]成分であるイソドデカンを含有する実施例2及び実施例7~10は、[B]成分を含有しない実施例11に比べて低温安定性が高かった。