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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078494
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】止水シャッター装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240604BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240604BHJP
   E06B 7/22 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
E06B7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190903
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 達也
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
(72)【発明者】
【氏名】角 和博
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036EB07
2E036EC03
2E036FA10
2E036FB01
2E036GA02
2E036GA04
2E036HB08
2E036HC02
2E036HC06
2E139AA08
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 押圧装置による押圧状態を容易に解除する。
【解決手段】 止水シャッター装置であって、空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体10と、閉鎖状態の開閉体10を押圧して不動部位へ押し付ける押圧装置40とを備え、開閉体10は、開閉体10の閉鎖状態において押圧装置40によって押圧可能な押圧可能位置と、押圧装置40によって押圧不能な押圧不能位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部12bを具備する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体を押圧して不動部位へ押し付ける押圧装置とを備え、
前記開閉体は、前記開閉体の閉鎖状態において前記押圧装置によって押圧可能な押圧可能位置と、前記押圧装置によって押圧不能な押圧不能位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置。
【請求項2】
前記押圧装置は、閉鎖状態の前記開閉体をその上方側から押圧して下方側の不動部位へ押し付けることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項3】
前記開閉体は、前記可変部と、前記可変部の下方側で前記可変部を昇降可能に支持する基部とを有することを特徴とする請求項2記載の止水シャッター装置。
【請求項4】
前記可変部は、前記基部に対し開閉体厚さ方向に重なり合って上下方向へスライドする重ね合わせ部を有することを特徴とする請求項3記載の止水シャッター装置。
【請求項5】
前記可変部と前記基部の間には、前記可変部をスライド不能に係止したり、この係止状態を解除したりする係脱具が設けられていることを特徴とする請求項4記載の止水シャッター装置。
【請求項6】
前記係脱具を、前記可変部と前記基部のうちの一方に対し螺合するとともに他方に対し上下動可能に係合し、この係脱具の締め付けにより前記可変部をスライド不能に固定し、同係脱具の弛緩により前記可変部をスライド可能にすることを特徴とする請求項5記載の止水シャッター装置。
【請求項7】
前記開閉体は、閉鎖状態において上下方向へ積み上げられる複数のパネルにより構成され、複数の前記パネルのうちの最上部のパネルが、前記可変部と、前記可変部を昇降可能に支持する基部とを有することを特徴とする請求項3~6何れか1項記載の止水シャッター装置。
【請求項8】
一端側を前記基部に螺合するとともに他端側を上方へ向けた支持軸を備え、前記可変部は、前記支持軸の上端側に、前記支持軸と一体回転可能に設けられていることを特徴とする請求項3~7何れか1項記載の止水シャッター装置。
【請求項9】
外部の操作部に対する機械的な操作によって前記可変部を昇降する昇降装置を具備していることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流通しないように開口部を閉鎖する止水シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明は、例えば特許文献1に記載されるように、上下方向へ積み重ねられる複数のパネルからなるシャッターカーテンを、パワーシリンダ、ピストンロッド等からなる電動の押圧装置により押圧し、このシャッターカーテンを、水密ゴムを介して不動部位(床面やレール等)に圧接し、水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-94774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、閉鎖状態のシャッターカーテンを押圧装置により押圧している最中に停電が発生した場合、押圧装置による押圧状態を解除できず、シャッターカーテンの開放が困難になるおそれがある。
そこで、バッテリー等の予備電源を備える場合もあるが、予備電源自体が水害等により故障してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体を押圧して不動部位へ押し付ける押圧装置とを備え、前記開閉体は、前記開閉体の閉鎖状態において前記押圧装置によって押圧可能な押圧可能位置と、前記押圧装置によって押圧不能な押圧不能位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、押圧装置による押圧状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水シャッター装置の一例を屋外側から視た正面図である。
図2】同止水シャッター装置の全閉状態を示す縦断面図であり、閉鎖前のパネルを二点鎖線で示している。
図3図1の(III)-(III)線に沿う横断面図である。
図4】開閉体の要部縦断面図であり、(a)は可変部を押圧可能位置にした状態、(b)は可変部を押圧不能位置にした状態を示す。
図5】開閉体を垂直方向へ押圧する押圧装置の動作説明図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は押圧状態、(c)は押圧を解除した状態を示す。
図6】昇降装置の一例を屋内側から視た図であり、開閉体の一部を切欠して示している。
図7】可変部の他例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中、以下の文言がある場合、それぞれ以下の意味を有するものとする。
「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の開閉体の厚さ方向を意味する。また、「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
「開閉体開閉方向」とは、開閉体が開閉動作のために空間を仕切ったり開放したりするスライド方向を意味する。
【0009】
「開閉体幅方向外側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の外側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向外側は、右方向側になる。
「開閉体幅方向内側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の内側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向内側は、左方向側になる。
【0010】
「開閉体厚さ方向外側」とは、開閉体の厚みの中央部から開閉体厚さ方向に沿って離れる方向側を意味する。
また、「開閉体厚さ方向内側」とは、開閉体厚さ方向に沿って開閉体の厚みの中央部へ向かう方向側を意味する。
【0011】
<具体的実施形態>
本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
止水シャッター装置1は、建物等の躯体開口部を開閉体10によって開閉するように設置される。
この止水シャッター装置1は、空間を仕切るようにして閉鎖動作し閉鎖方向端部を対向する被当接面G(例えば、地面や床面等)に当接して全閉する開閉体10と、開閉体10の幅方向の両端部をそれぞれ横断面凹状に囲んで閉鎖方向へ案内する左右のガイドレール20,20と、開閉体10を上方側で収納したり繰り出したりする開閉体収納部30と、開閉体収納部30内で押圧力を発生する押圧装置40,50とを備え(図1参照)、閉鎖状態の開閉体10を、押圧装置40,50の押圧力により不動部位である被当接面Gやガイドレール20に押し付ける。
【0012】
この止水シャッター装置1は、閉鎖状態の開閉体10上端側の可変部12bを、押圧装置40によって押圧可能な押圧可能位置(図4(a)参照)と、押圧装置40によって押圧不能な押圧不能位置(図4(b)参照)とで、選択的に位置変更が可能である。
【0013】
開閉体10は、開閉体収納部30によって閉鎖方向へ順次に繰出される複数のパネル11,12を略垂直に積み重ねて全閉状態になる(図2参照)。
複数のパネル11,12は、パネル連繋チェーン14によって開閉方向に繋がっている(図2参照)。
【0014】
一方のパネル11は、開閉体幅方向へ長尺な正面視矩形板状の部材である。このパネル11は、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、上下に仕切られた空洞を有する縦断面枠状に形成される。
このパネル11の下端部は、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V字状に突出しており、その突出する外面には、シール部16が一体的に設けられる。
【0015】
シール部16は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から、パネル11下端に沿う縦断面V字状に形成され、パネル11の下端部に開閉体幅方向の全長にわたって接合されている。
【0016】
パネル11の上端部には、上方に重なり合うパネル11(又は12)のシール部16に嵌り合うように、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V溝状の凹部11aが形成される。
そして、パネル11の横幅方向の両端部には、開閉体幅方向へ突出するように、支持軸部13が設けられる。
【0017】
最上部に位置する他方のパネル12は、基部12aと、基部12aの上方側で上下方向へスライドする可変部12bと、基部12aと可変部12bの間で可変部12bをスライド不能に係止したり、この係止状態を解除したりする係脱具12cとを備える(図4参照)。
【0018】
基部12aは、開閉体幅方向へ長尺状に連続する正面視矩形状を呈する。
この基部12aは、パネル11と略同様に、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、開閉体幅方向に連続する空洞を内在する縦断面枠状に形成される。
【0019】
基部12aの屋内側の面における上端側には、係脱具12cを螺合するための雌ネジ孔12a1が貫通状に設けられる。
また、基部12aの下端部には、パネル11と同様にシール部16が設けられる。さらに、パネル12の側面には、パネル11と同様に支持軸部13が設けられる。
【0020】
可変部12bは、基部12aの上方側に位置し、基部12aに対し昇降可能に支持される。基部12aから可変部12bにわたるパネル12の全高寸法は、パネル11よりも小さい。この全高寸法は、開閉体10によって開閉される開口部の高さ寸法等に応じて適宜に設定される。
【0021】
この可変部12bは、基部12aに対し開閉体厚さ方向に重なり合って上下方向へスライドする重ね合わせ部12b1を有する。
詳細に説明すれば、可変部12bは、下方を開口した縦断面凹状に形成され(図4参照)、基部12aに対し上方側から嵌り合っている。
この可変部12bにおいて、基部12aの表面と裏面にそれぞれ重なり合う部分が、重ね合わせ部12b1,12b1である。
【0022】
屋内側の重ね合わせ部12b1には、上下方向へ長尺な長孔12b11が貫通状に形成されている。
この長孔12b11は、係脱具12cの軸部分を遊挿する孔であり、可変部12bが前記押圧可能位置と前記押圧不能位置の間でスライドするように、その上下方向の長さ寸法が適宜に設定されている。
【0023】
係脱具12cは、基部12aに対し螺合するとともに可変部12bに対し上下動可能に係合する。この係脱具12cが締め付けられると、可変部12bが基部12aに対しスライド不能に固定される。また、同係脱具12cが緩められると、可変部12bが基部12aに対しスライド可能になる。
【0024】
図示例の係脱具12cは、つまみ部の先端側に雄ネジ部を有する蝶ボルトである。この係脱具12cは、雄ネジ部を可変部12bの長孔12b11に遊挿して基部12aに螺合している。この係脱具12cは、六角頭を有するネジや、頭部に十字穴や六角穴を有するネジ等、工具によって回転操作可能な態様に置換することが可能である。
【0025】
支持軸部13は、各パネル11,12の幅方向の両端部から、それぞれ、開閉体幅方向外側へ突出している(図3参照)。
この支持軸部13は、パネル連繋チェーン14に挿通された軸状部材の先端側に、ローラを回転自在に支持してなる。
【0026】
パネル連繋チェーン14は、動力伝達用等に用いられる所謂ローラチェーンであり、その長さ方向において所定間隔置きに支持軸部13を回転自在に挿通している。
このパネル連繋チェーン14は、上下方向のすべてのパネル11,12を、支持軸部13を介して連結し、その上端側が開閉体収納部30内の複数(図示例によれば、二つ)のスプロケット31a,31bに掛けられている
【0027】
また、各パネル11の側面において、下端側の屋内寄りには、ガイド軸部15が設けられている(図2及び図3参照)。
ガイド軸部15は、各パネル11の幅方向端部から突出する軸状部材の先端側にローラを回転自在に支持してなる。
このガイド軸部15は、各パネル11が開閉体収納部30に収納される際に、開閉体収納部30内のガイド部材34(図2参照)に係合し案内され、開閉体厚さ方向の振れを抑制する。なお、このガイド軸部15は、省くことも可能である。
【0028】
ガイドレール20は、閉鎖状態の開閉体10の幅方向端部を囲むように、横断面凹状もしくはコ字状に形成される(図3参照)。このガイドレール20は、被当接面Gから開閉体収納部30へわたる長尺状に形成される。
ガイドレール20内には、閉鎖状態の開閉体10を屋外側から屋内側へ押圧する厚さ方向押圧機構55と、この厚さ方向押圧機構55によって押動された開閉体10を屋内側から受ける受部材21とが、上下方向へわたって連続的に設けられる。
【0029】
厚さ方向押圧機構55は、後述する押圧装置50の下方向きの力を開閉体厚さ方向の力に変換し、この力によって、全閉状態の開閉体10を屋内側へ押圧して、受部材21へ押し付けるように構成される。
この厚さ方向押圧機構55は、例えば、リンク機構により力方向を変換する構成や、平歯車とラック歯車等の歯車機構により力方向を変換する構成、これらの機構を適宜に組み合わせた構成等とすることが可能である。
【0030】
なお、図示を省略するが、押圧装置50又は厚さ方向押圧機構55には、押圧装置50のロッドが前進して押圧力を発生した状態に、停電等で電源供給が遮断された場合に、押圧装置50による前記押圧力を手動で解除するための解除手段が設けられる。
この解除手段は、例えば、押圧装置50のロッドから厚さ方向押圧機構55にわたる押圧力伝達経路中に着脱可能な部材を設け、この部材が手作業で外されることで前記押圧力が解除される構成や、前記押圧力伝達経路中に後退可能な部材を設け、この部材が手動で後退されることで、前記押圧力が解除される構成等とすればよい。
【0031】
また、受部材21は、閉鎖状態の開閉体10に対し、上下方向の全長にわたって接するようにした長尺状の部材である。この受部材21は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成され、開閉体10の屋内側面に弾性的に接触して、開閉体10とガイドレール20の間の水密性を保持する。
【0032】
また、開閉体収納部30は、開閉体10によって開閉される開口部の上方において、当該止水シャッター装置1の設置対象物である躯体等の壁面に固定される。
この開閉体収納部30は、図2に示すように、内側に空間を有する基体30aに、パネル連繋チェーン14を掛け回したスプロケット31a,31bと、これらスプロケット31a,31bを双方向へ回転させる駆動機構32と、パネル11,12を、支持軸部13により吊持して前後方向へ導く収納レール33と、パネル11下端側のガイド軸部15を水平方向へ案内するガイド部材34とを支持している。
【0033】
この開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを一方向へ回転させることで、収納状態にある複数のパネル11,12を屋外側へ順次に繰り出して下方へ閉鎖動作させる。また、同開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを逆方向へ回転させることで、閉鎖状態にあるパネル11,12を開放動作させ、上方側で屋内側へ収納する。
【0034】
一方のスプロケット31aは、全閉状態の開閉体10の上方側且つ屋内寄りに位置する。そして、他方のスプロケット31bは、スプロケット31aよりも上方側且つ屋内寄りに位置する。
したがって、開閉体10の閉鎖動作の際、開閉体収納部30から繰り出されるパネル11,12は、スプロケット31a,31bにより屋外側斜め下方へ繰り出される。また、開閉体10の開放動作の際。パネル11,12はスプロケット31a,31bにより屋内側斜め上方へ移動し収納される。
【0035】
また、駆動機構32は、電動モータによってチェーン及びスプロケット31a,31b等を動作させる電動開閉機構と、操作部32aに対する手動操作により同チェーン及びスプロケット等を動作させる手動開閉機構とを備える。操作部32aは、図示例によれば、手で引っ張るようにして回転させることが可能なチェーンである。
【0036】
二種類の押圧装置40,50は、開閉体収納部30の基体30aに対し、開閉体幅方向に間隔を置いて複数装着される(図1参照)。
【0037】
一方の押圧装置40は、開閉体収納部30の基体30aに固定されたシリンダ状の本体部41と、本体部41に相対し前進するように嵌り合ったロッド42と、ロッド42を前進させるための駆動源(例えば、図示しない電動モータ等)とを備え、前記駆動源の駆動によりロッド42を前進させて押圧力を発生したり、同ロッド42を後退させて前記押圧力を解除したりする(図5参照)。
【0038】
複数の押圧装置40の下方側には、これら押圧装置40を跨るようにして、開閉体10を上方側から押圧して下方側の不動部位に押し付ける押圧部材43が設けられる。
詳細に説明すれば、押圧装置40は、左側と右側にそれぞれ複数(図1の一例によれば二つ)設けられる。そして、押圧部材43は、左側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられ、同様に、右側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられる。
【0039】
各押圧部材43は。水平片と垂直片を有するアングル状の部材であり、開閉体幅方向へ長尺状に延設されている。
この押圧部材43は、押圧装置40のロッド42先端側に、開閉体幅方向の軸を中心に回転するように枢着される(図5参照)。
さらに、この押圧部材43は、ロッド42の前進に伴って所定の軌跡を描いて開閉体10の上端へ近づくようにリンク機構44によって支持されている。
【0040】
リンク機構44は、基体30aにブラケット等を介して支持され回動する複数のアーム等からなる。このリンク機構44は、押圧部材43を、略水平に保持したまま、側面視円弧状の軌跡を描くようにして、開閉体10上端部に対し接近させたり離隔させたりする(図5参照)。
【0041】
また、他方の押圧装置50は、押圧装置40と略同様に、開閉体収納部30のケース等の不動部位に固定されたシリンダ状の本体部(図示せず)と、この本体部に相対し前進するように嵌り合ったロッド(図示せず)と、このロッドを前進させるための駆動源(例えば、図示しない電動モータ等)とを備え、前記ロッドの前進により押圧力を発生する。
この押圧装置50は、前記ロッドのストロークが、押圧装置40のものとは異なる。押圧装置50のロッドのストロークは、厚さ方向押圧機構55の動作量等に応じて適宜に設置される。
【0042】
この押圧装置50は、開閉体幅方向において複数の押圧装置40を間に置くようにして、その左側と右側に、それぞれ間隔をおいて設けられる(図1参照)。
各押圧装置50の下方側には、上述した厚さ方向押圧機構55が設けられる。
【0043】
なお、図2中の符号90は、開閉体幅方向の中央寄りへ可動柱91を移動させ、この可動柱91を開閉体10の屋内側面に押し付けて、開閉体10の撓みを抑制する撓み抑制装置である。
【0044】
<作用効果>
次に、上記構成の止水シャッター装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0045】
開閉体収納部30にパネル11,12が収納された状態で、駆動機構32による閉鎖動作が開始されると、複数のパネル11,12が、開閉体収納部30から順次に下方へ繰り出され、被当接面Gに積み重ねられる。そして、これら複数のパネル11,12からなる開閉体10は、図2に示す全閉状態で静止する。
【0046】
この全閉状態において、押圧装置40,50が動作すると、開閉体10は、押圧部材43により垂直方向へ押圧され、厚さ方向押圧機構55により水平方向に押圧される。
【0047】
垂直方向の動作について説明すれば、押圧装置40は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部41に相対しロッド42を下向きに伸長させる(図5(a)(b)参照)。
すると、ロッド42前端に接続された押圧部材43が、リンク機構44により円弧状に回動し、パネル12(開閉体10)の上端部(可変部12b)に当接し、開閉体10を下方へ押圧する。
【0048】
また、水平方向の動作について説明すれば、押圧装置50は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、厚さ方向押圧機構55を介して、開閉体10を屋内側へ押し動かして受部材21に押し付ける(図3参照)。
【0049】
押圧装置40及び押圧部材43等による垂直方向の押圧力により、最下側のパネル11は、下端のシール部16を被当接面Gに押し付けて弾性変形する。また、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間でも、シール部16が挟まれ弾性変形する。
また、押圧装置50及び厚さ方向押圧機構55等による水平方向の押圧力により、開閉体10の各パネル11,12は、ガイドレール20の受部材21に押し付けられて、受部材21が弾性変形する。
よって、開閉体10の下端と被当接面Gの間、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間、及び開閉体10とガイドレール20の間において、水密性が保持される。
【0050】
<解除動作>
前記押圧状態において、開閉体10を開放する場合、通常は、前記制御回路等を介した電気的な操作により、押圧装置40,50を逆方向へ動作させ、前記押圧状態を解除すればよい。
しかしながら、例えば停電等の発生により、押圧装置40,50や前記制御回路へ電力が供給されず、電気的な解除操作ができない場合には、以下の手順で押圧力を手動解除すればよい。
【0051】
押圧装置40による垂直方向の押圧力を解除するには、係脱具12cを緩めて、可変部12bを手動で下方へスライドさせて押圧不能位置(図4(b)参照)にする。この後、係脱具12cを締めて、可変部12bを押圧不能位置に固定する。
また。押圧装置50による水平方向の押圧力を解除するには、上述した解除手段を手動で操作する。
【0052】
これらの作業によって、開閉体10は、上方へ開放動作可能な状態になる(図5(c)参照)。
停電状態のまま開閉体10を開放させるには、操作部32aを手で操作して、駆動機構32を人力で開放方向へ動作させればよい。
【0053】
よって、上記構成の止水シャッター装置1によれば、押圧装置40,50による押圧状態を手動で容易に解除することができ、ひいては、停電等により電力供給がない場合でも、押圧装置40,50による押圧状態を解除して開閉体10を開放することができる。このため、停電時に押圧装置40,50を電動で解除するための予備電源を不要にすることも可能である。
【0054】
また、他の作用効果として、開閉体10全体の高さ寸法を、可変部12bを固定する高さ位置によって調整することが可能である。
【0055】
<昇降装置について>
上記構成の止水シャッター装置1には、外部の操作部64aに対する機械的な操作によって可変部12bを昇降する昇降装置60を具備することが可能である。
【0056】
図6の実施態様は、上記止水シャッター装置1について、昇降装置60を加えたものである。なお、上述した係脱具12cは、省くことが可能であるが、省かずに係脱手段として用いてもよい。
【0057】
昇降装置60は、パネル12の基部12aに固定された基台61と、この基台61に支持されたガイド部62と、このガイド部62に沿って上下方向へ移動自在な可動部63と、この可動部63を上下方向へ進退させる進退駆動装置64とを具備し、可動部63を、パネル12の可変部12bに対し一体的に接続している。
【0058】
基台61は、上下方向へわたる略板状の部材であり、その下端側を基部12aの上端部に固定している。
【0059】
ガイド部62は、平行する複数(図示例によれば二つ)のガイド軸であり、両端側が基台61によって支持される。
可動部63は、複数のガイド部62に対し跨るように嵌り合っており、ガイド部62の延設方向へ移動自在である。
なお、これらガイド部62及び可動部63には、リニアガイド等と呼称される周知のガイド機構を適用することが可能である。
【0060】
進退駆動装置64は、押圧装置40から離れた位置で機械的に操作される操作部64aと、操作部64aが操作された際の操作力を油圧により伝達する油圧管64bと、各油圧管64bの油圧により可動部63を進退させる油圧シリンダ64cとを備え、操作部64aが操作された際の操作力により可動部63を前進したり後退したりする。
【0061】
操作部64aは、操作者等が手元位置で操作できるように、開閉体10から離れた適宜な高さ位置に設けられる。
この操作部64aは、回転自在に支持されたクランク状のハンドル64a1と、このハンドルが操作された際の回転力により油圧を発生する油圧発生器64a2とを備え、油圧発生器64a2により発生した油圧を油圧管64bへ供給する。
【0062】
油圧管64bは、フレキシブルな可撓性の管体であり、動力伝達媒体としてのオイルを内在している。この油圧管64bは、一端側を油圧発生器64a2に接続するとともに、他端側を油圧シリンダ64cの油圧注入口に接続し、内在するオイルによる流体圧を油圧シリンダ64cへ伝達する。
【0063】
油圧シリンダ64cは、基台61に対し進退不能に固定されたシリンダ64c1と、このシリンダから突出するピストン64c2とを備え、油圧管64b内の油圧の変化に応じて、ピストン64c2を前進または後退させる。ピストン64c2の先端側は、可動部63に接続されている。
【0064】
よって、図6に示す実施態様によれば、開閉体10が押圧装置40によって押圧された状態で、停電等によりこの押圧力を解除できない場合、操作部64aを手動で回転すれば、可動部63の後退により、パネル12の可変部12bを下降させることができ、ひいては、上記止水シャッター装置1と同様に、操作部32aを手動操作して開閉体10を開放することができる。
【0065】
<可変部の他例>
上記止水シャッター装置1において、可変部12b及び係脱具12c等は、図7に示す可変部12d及び支持軸12eに置換することが可能である。
【0066】
支持軸12eは、外周に雄ネジ部を有するボルト状の部材であり、一端側を基部12aの上端に螺合するとともに他端側を上方へ向けている。
【0067】
可変部12dは、略円盤状(別表現をすれば、薄肉円柱状)の回転体であり、押圧部材43を受けるように配置される。この可変部12dは、支持軸12eと一体回転するように、中心部を支持軸12eの上端部に接続している。
【0068】
よって、図7に示す構成によれば、可変部12dが押圧装置40によって押圧された状態で、停電等によりこの押圧状態を解除できない場合に、可変部12dを手動で回転して支持軸12eを基部12aにねじ込むようにすれば、可変部12dを押圧装置40から下方へ引き離して、前記押圧状態を解除することができ、ひいては、上記止水シャッター装置1と同様に、操作部32aの手動操作により、開閉体10を開放することができる。
【0069】
なお、図示を省略するが、支持軸12eの下端側には、必要に応じて、内周面に雌ネジ部を有するナット状部材を螺合してもよい。このナット状部材は、支持軸12eの上端部に圧接されて、支持軸12eが安易に緩まないようにする。このナット状部材は、可変部12dを昇降する際には緩められる。
【0070】
<他の変形例>
止水シャッター装置1において、可変部12bは上記押圧可能位置と上記押圧不能位置とで、選択的に位置変更が可能な構成であればよく、以下の他例とすることが可能である。
すなわち、他例としては、上記構成の係脱具12cの基端側を可変部12bに螺合し、この係脱具12cの先端部により基部12aに押圧して、可変部12bを押圧可能位置に固定するようにしてもよい。この構成によれば、係脱具12cを緩めれば、可変部12bを下降させて押圧不能位置にすることができる。
【0071】
また、他例としては、図4に示す可変部12bから長孔12b11を省き、係脱具12cを基部12aと係脱具12cの両方に螺合して押圧可能位置を維持するようにしてもよい。この構成によれば、係脱具12cが緩められ抜き取られることで、可変部12bを下降させて押圧不能位置にすることができる。
【0072】
さらに、他例としては、基部12aと可変部12bの重ね合わせ部12b1にネジ部の無いピンを貫通状に差し込んで上記押圧可能位置を維持するようにしてもよい。この構成によれば。前記ピンが抜き取られることで、可変部12bを下降させて押圧不能位置にすることができる。
【0073】
また、上記止水シャッター装置1では、上記押圧可能位置にある可変部12bを下方へ移動して上記押圧不能位置にするように構成したが、他例としては、押圧可能位置にある可変部を、開閉体厚さ方向に移動して、押圧装置40によって押圧されることのない押圧不能位置にする態様や、押圧可能位置にある可変部を、開閉体幅方向に移動して、押圧装置40によって押圧されることのない押圧不能位置にする態様等とすることも可能である。
【0074】
また、図6に示す昇降装置60によれば、シリンダ64c1と一体的に昇降する可動部63により可変部12bを昇降させたが、他例としては、可動部63及びガイド部62等を省き、シリンダ64c1の先端側を可変部12bに対し直接的に接続した態様とすることも可能である。
【0075】
また、図6に示す昇降装置60によれば、油圧により可変部12bを昇降させる構成としたが、他例としては、手動操作される操作部の回転力を機械的に伝達し、この回転力によって可変部12bを昇降させる構成とすることも可能である。
【0076】
また、上記止水シャッター装置1によれば、開閉体10を複数のパネル11,12により構成したが、他例としては、開閉体10を単一のパネルにより構成し、このパネルの上端側に、押圧装置40によって押圧可能であって且つ昇降可能な上記可変部を設けることも可能である。
【0077】
また、上記パネル11,12の縦断面形状は、図示例のものに限定されず、例えば、金属材料を箱状に加工したものや、内部に空洞を有さない中実状に形成したもの等とすることも可能である。
【0078】
また、上記実施形態によれば、押圧装置40,50をピストンシリンダ方式により押圧力を発生する機構としたが、前記押圧装置の他例としては、駆動回転するネジ部材に螺合したナット状部材によって押圧力を発生する機構や、駆動回転する平歯車とラック歯車によって押圧力を発生する機構、リニアモータによって押圧力を発生する機構、その他の機構とすることが可能である。
【0079】
また、上記実施形態よれば、押圧装置40と押圧装置50をストロークの異なるものとしたが、図示しない他例としては、厚さ方向押圧機構55の動作量等を適宜に調整して、二つの押圧装置40,50のストロークを略同一にすることも可能である。
【0080】
また、上記実施形態によれば、押圧装置40,50を開閉体収納部30内に設けたが、図示例以外の他例としては、押圧装置40,50のうち、その一方又は双方を開閉体収納部30の外側に設けることも可能である。
【0081】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0082】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、閉鎖状態の前記開閉体を押圧して不動部位へ押し付ける押圧装置とを備え、前記開閉体は、前記開閉体の閉鎖状態において前記押圧装置によって押圧可能な押圧可能位置と、前記押圧装置によって押圧不能な押圧不能位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置(図1図7参照)。
(2)
前記押圧装置は、閉鎖状態の前記開閉体をその上方側から押圧して下方側の不動部位へ押し付けることを特徴とする(1)に記載の止水シャッター装置。
(3)
前記開閉体は、前記可変部と、前記可変部の下方側で前記可変部を昇降可能に支持する基部とを有することを特徴とする(2)に記載の止水シャッター装置(図4参照)。
(4)
前記可変部は、前記基部に対し開閉体厚さ方向に重なり合って上下方向へスライドする重ね合わせ部を有することを特徴とする(3)に記載の止水シャッター装置(図4参照)。
(5)
前記可変部と前記基部の間には、前記可変部をスライド不能に係止したり、この係止状態を解除したりする係脱具が設けられていることを特徴とする(4)に記載の止水シャッター装置(図4参照)。
(6)
前記係脱具を、前記可変部と前記基部のうちの一方に対し螺合するとともに他方に対し上下動可能に係合し、この係脱具の締め付けにより前記可変部をスライド不能に固定し、同係脱具の弛緩により前記可変部をスライド可能にすることを特徴とする(5)に記載の止水シャッター装置(図4参照)。
(7)
前記開閉体は、閉鎖状態において上下方向へ積み上げられる複数のパネルにより構成され、複数の前記パネルのうちの最上部のパネルが、前記可変部と、前記可変部を昇降可能に支持する基部とを有することを特徴とする(3)~(6)のいずれかに記載の止水シャッター装置(図2参照)。
(8)
一端側を前記基部に螺合するとともに他端側を上方へ向けた支持軸を備え、前記可変部は、前記支持軸の上端側に、前記支持軸と一体回転可能に設けられていることを特徴とする(3)~(7)のいずれかに記載の止水シャッター装置(図7参照)。
(9)
外部の操作部に対する機械的な操作によって前記可変部を昇降する昇降装置を具備していることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の止水シャッター装置(図6参照)。
【符号の説明】
【0083】
1:止水シャッター装置
10:開閉体
11,12:パネル
12a:基部
12b,12d:可変部
12e:支持軸
20:ガイドレール
30:開閉体収納部
40,50:押圧装置
G:被当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7