(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078514
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】繰出容器、及び繰出容器用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
A45D 40/00 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A45D40/00 W
A45D40/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190934
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】本間 友梨
(57)【要約】
【課題】使用済みのカートリッジを新たなカートリッジに付け替えることができる繰出容器、及び繰出容器用カートリッジを提案する。
【解決手段】繰出容器1は、回転体5を備えるベース2と、ベース2に装着され回転体5を回転させると棒状内容物が繰り出されるカートリッジ7とを備え、ベース2は、回転体5とともに回転し且つ進退移動可能であって第一係合部6cと第一螺合部6bを有する軸体6を備え、カートリッジ7は、棒状内容物を支持する底壁9aと底壁9aに連結する第二係合部9gを有する中皿9Aと、棒状内容物と中皿9Aとを取り囲んでベース2に装着され第二螺合部8eを有するカートリッジ本体8を備え、第一係合部6cと第二係合部9gとは着脱可能に係合し、第一螺合部6bと第二螺合部8eとは着脱可能に螺合するものであって、回転体5を回転させると軸体6とともに中皿9Aが進退移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を備えるベースと、該ベースに装着され該回転体を回転させると棒状内容物が繰り出されるカートリッジとを備える繰出容器であって、
前記ベースは、
前記回転体とともに回転し且つ該回転体に対して進退移動可能であって、前記回転体の中心軸に沿って延在する筒状部と、径方向外側に向けて突出して外向き爪状をなしていて該筒状部に連結する第一係合部と、該筒状部の外周面に設けられた雄ねじ状の第一螺合部と、を有する軸体を備え、
前記カートリッジは、
前記棒状内容物を支持する底壁と、前記筒状部の径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状をなしていて該底壁に連結する第二係合部と、を有する中皿と、
前記棒状内容物と前記中皿とを取り囲んで前記ベースに装着され、前記筒状部の径方向外側に位置して前記回転体の中心軸に沿って延在する弾性片と、該弾性片の内周面に設けられた雄ねじ状の第二螺合部と、を有するカートリッジ本体を備え、
前記第一係合部と前記第二係合部とは着脱可能に係合し、前記第一螺合部と前記第二螺合部とは着脱可能に螺合するものであって、前記回転体を回転させると前記軸体とともに前記中皿が進退移動する繰出容器。
【請求項2】
前記中皿は、前記底壁における前記第二係合部の径方向内側が閉鎖されている、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記中皿は、前記底壁における前記第二係合部の径方向内側に挿入口を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記軸体は、前記回転体からの該軸体の抜け出しを阻止する抜け止め部を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項5】
前記カートリッジ本体に対して前記中皿が後退した状態で互いに係合する中皿側係合部とカートリッジ本体側係合部を有し、
前記中皿側係合部は、前記中皿に設けた弱化部に連結し該弱化部が破断すると弾性変形するように構成される、及び/又は、前記カートリッジ本体側係合部は、前記カートリッジ本体に設けた弱化部に連結し該弱化部が破断すると弾性変形するように構成される、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項6】
前記回転体は、前記弾性片の径方向外側に位置して該弾性片の弾性変形を規制する規制壁を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項7】
前記ベース、前記カートリッジ、及び前記棒状内容物は、平面視で扁平形状であって、
前記ベースと前記カートリッジの何れか一方は、扁平形状となる長辺側において弾性変形可能な爪部を有し、
前記ベースと前記カートリッジの何れか他方は、該ベースに該カートリッジを装着した際に前記爪部に係合して該ベースに該カートリッジを保持させる穴部を有する、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項8】
回転体を備えるベースに装着され、該回転体を回転させると棒状内容物が繰り出される繰出容器用カートリッジであって、
前記ベースは、前記回転体とともに回転し且つ該回転体に対して進退移動可能であって、前記回転体の中心軸に沿って延在する筒状部と、径方向外側に向けて突出して外向き爪状をなしていて該筒状部に連結する第一係合部と、該筒状部の外周面に設けられた雄ねじ状の第一螺合部と、を有する軸体を備えるように構成されていて、
前記棒状内容物を支持する底壁と、前記筒状部の径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状をなしていて該底壁に連結する第二係合部と、を有する中皿と、
前記棒状内容物と前記中皿とを取り囲んで前記ベースに装着され、前記筒状部の径方向外側に位置して前記回転体の中心軸に沿って延在する弾性片と、該弾性片の内周面に設けられた雄ねじ状の第二螺合部と、を有するカートリッジ本体を備え、
前記第一係合部と前記第二係合部とは着脱可能に係合し、前記第一螺合部と前記第二螺合部とは着脱可能に螺合するものであって、前記回転体を回転させると前記軸体とともに前記中皿が進退移動する繰出容器用カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状内容物を繰り出すことができる繰出容器、及び繰出容器用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップクリーム、或いはスティックタイプの糊のような棒状内容物を収容する容器として、全体として円柱状であって、有底筒状の袴部材を有する操作部と、袴部材の軸線に沿って操作部から突出するスリーブと、内容物を保持してスリーブの内側に設けられる保持部材とを備え、スリーブに対して操作部を回転させると保持部材が前進し、スリーブの繰出口から内容物が繰り出される繰出容器が既知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また近年は、化粧品等を棒状内容物として収容した大型の繰出容器も使用されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2の繰出容器は、ベース(ケース本体)に回転体が設けられていて、この回転体を回転させると、ベースに収容した棒状内容物をベースの開口から繰り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-248076号公報
【特許文献2】意匠登録第1568492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献2の繰出容器は、収容した棒状内容物を使い切った後はそのまま廃棄される。このため、省資源化や環境への負荷削減の観点から、ベース等の一部の部材を再利用可能であって、使い切った棒状内容物を含む使用済みのカートリッジを新たなカートリッジに付け替えることができる繰出容器が求められている。
【0006】
また棒状内容物をカートリッジに収容するにあたっては、通常、空のカートリッジに溶融した状態の内容物を充填してこれを固化させる方法が用いられる。このような充填方法としては、棒状内容物が繰り出される開口から充填ノズルを差し込んでこの充填ノズルからカートリッジ内に内容物を充填する方法(以下、「直充填」という)と、棒状内容物を支持する底壁に設けた挿入口から充填ノズルを差し込んでカートリッジ内に内容物を充填する方法(以下、「バック充填」という)の2通りが挙げられ、これらの充填方法は棒状内容物の先端形状や製造工程に応じて選択される。ここでカートリッジの構成は、通常、内容物の充填方法に応じて変更される。従って、充填方法に応じてカートリッジの構成を変更するにあたっては、変更される構成を最小限に抑えることがコスト削減及び省資源化の点で好ましく、そのような繰出容器が求められている。
【0007】
このような点に鑑み、本発明は、使用済みのカートリッジを新たなカートリッジに付け替えることができ、また充填方法に応じて変更する部材を最小限に抑えることが可能な繰出容器、及び繰出容器用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転体を備えるベースと、該ベースに装着され該回転体を回転させると棒状内容物が繰り出されるカートリッジとを備える繰出容器であって、
前記ベースは、
前記回転体とともに回転し且つ該回転体に対して進退移動可能であって、前記回転体の中心軸に沿って延在する筒状部と、径方向外側に向けて突出して外向き爪状をなしていて該筒状部に連結する第一係合部と、該筒状部の外周面に設けられた雄ねじ状の第一螺合部と、を有する軸体を備え、
前記カートリッジは、
前記棒状内容物を支持する底壁と、前記筒状部の径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状をなしていて該底壁に連結する第二係合部と、を有する中皿と、
前記棒状内容物と前記中皿とを取り囲んで前記ベースに装着され、前記筒状部の径方向外側に位置して前記回転体の中心軸に沿って延在する弾性片と、該弾性片の内周面に設けられた雄ねじ状の第二螺合部と、を有するカートリッジ本体を備え、
前記第一係合部と前記第二係合部とは着脱可能に係合し、前記第一螺合部と前記第二螺合部とは着脱可能に螺合するものであって、前記回転体を回転させると前記軸体とともに前記中皿が進退移動する繰出容器である。
【0009】
前記中皿は、前記底壁における前記第二係合部の径方向内側が閉鎖されているものでもよい。
【0010】
前記中皿は、前記底壁における前記第二係合部の径方向内側に開口を有するものでもよい。
【0011】
前記軸体は、前記回転体からの該軸体の抜け出しを阻止する抜け止め部を有することが好ましい。
【0012】
前記カートリッジ本体に対して前記中皿が後退した状態で互いに係合する中皿側係合部とカートリッジ本体側係合部を有し、
前記中皿側係合部は、前記中皿に設けた弱化部に連結し該弱化部が破断すると弾性変形するように構成される、及び/又は、前記カートリッジ本体側係合部は、前記カートリッジ本体に設けた弱化部に連結し該弱化部が破断すると弾性変形するように構成されることが好ましい。
【0013】
前記回転体は、前記弾性片の径方向外側に位置して該弾性片の弾性変形を規制する規制壁を有することが好ましい。
【0014】
前記ベース、前記カートリッジ、及び前記棒状内容物は、平面視で扁平形状であって、
前記ベースと前記カートリッジの何れか一方は、扁平形状となる長辺側において弾性変形可能な爪部を有し、
前記ベースと前記カートリッジの何れか他方は、該ベースに該カートリッジを装着した際に前記爪部に係合して該ベースに該カートリッジを保持させる穴部を有することが好ましい。
【0015】
また本発明は、回転体を備えるベースに装着され、該回転体を回転させると棒状内容物が繰り出される繰出容器用カートリッジであって、
前記ベースは、前記回転体とともに回転し且つ該回転体に対して進退移動可能であって、前記回転体の中心軸に沿って延在する筒状部と、径方向外側に向けて突出して外向き爪状をなしていて該筒状部に連結する第一係合部と、該筒状部の外周面に設けられた雄ねじ状の第一螺合部と、を有する軸体を備えるように構成されていて、
前記棒状内容物を支持する底壁と、前記筒状部の径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状をなしていて該底壁に連結する第二係合部と、を有する中皿と、
前記棒状内容物と前記中皿とを取り囲んで前記ベースに装着され、前記筒状部の径方向外側に位置して前記回転体の中心軸に沿って延在する弾性片と、該弾性片の内周面に設けられた雄ねじ状の第二螺合部と、を有するカートリッジ本体を備え、
前記第一係合部と前記第二係合部とは着脱可能に係合し、前記第一螺合部と前記第二螺合部とは着脱可能に螺合するものであって、前記回転体を回転させると前記軸体とともに前記中皿が進退移動する繰出容器用カートリッジでもある。
【発明の効果】
【0016】
上記のような構成になる本発明の繰出容器は、回転体を回転させると軸体とともに中皿が進退移動するため、中皿に保持させた棒状内容物をカートリッジ本体から繰り出したり繰り入れたりすることができる。また第一係合部と第二係合部とは着脱可能に係合し、第一螺合部と第二螺合部とは着脱可能に螺合するため、棒状内容物を使い切った後は、軸体に対して中皿とカートリッジ本体を分離させることによってベースに装着したカートリッジを取り外すことができ、また逆の手順で新たなカートリッジを元のベースに装着することができる。更にカートリッジは、中皿とカートリッジ本体で構成することが可能であって、棒状内容物を使い切った後に廃棄する部材を少なくすることができるため、省資源化や環境への負荷削減に優れる。また中皿の底壁に設けた第二係合部は、筒状部の径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状になるものであるため、底壁における第二係合部の径方向内側にスペースが生まれる。すなわち、スペースを利用して底壁に挿入口を設ければバック充填用の中皿になるし、スペースを利用せずに底壁が閉鎖された状態であれば直充填用の中皿になる。従って、2通りの充填方法を選択するにあたっては中皿のみを変更すればよく、充填方法に応じて変更する部材を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る繰出容器の一実施形態を示した側面視での断面図である。
【
図2】
図1に示した繰出容器の正面視での断面図である。
【
図3】
図1に示した回転体に関し、(a)は平面図であり、(b)は側面視での半断面図であり、(c)は底面図である。
【
図4】
図1に示した軸体に関し、(a)は平面図であり、(b)は側面視での半断面図であり、(c)は底面図である。
【
図5】
図1に示したカートリッジ本体に関し、(a)は平面図であり、(b)は側面での半断面図である。
【
図6】
図1に示した中皿(バック充填用中皿)に関し、(a)は側面視での半断面図であり、(b)は正面視での半断面図である。
【
図7】
図6に示した中皿を用いたカートリッジにバック充填を行う状況を示した図である。
【
図8】
図1に示した繰出容器の使用開始状態を示した図であって、回転体を回転させて第一係合部と第二係合部を係合させた状態を示した図である。
【
図9】ベースからカートリッジを取り外すにあたり、爪部を押圧してカートリッジを引き上げる状態を示した図である。
【
図10】ベースからカートリッジを取り外した状態を示した図である。
【
図11】直充填用中皿に関し、(a)は側面視での半断面図であり、(b)は正面視での半断面図である。
【
図12】
図11に示した中皿を用いたカートリッジに直充填を行う状況を示した図である。
【
図13】
図1に示した繰出容器の変形例を示した側面視での断面図である。
【
図15】
図13に示した中皿を用いたカートリッジにバック充填を行う状況を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明に係る繰出容器と繰出容器用カートリッジ(本明細書では単にカートリッジと称することがある)の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において上下方向とは、図面に示した中心軸O(以下に説明する回転体5の中心軸)に沿う方向である。また径方向とは、中心軸Oに対して垂直な面内で中心軸Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で中心軸Oを中心として周回する方向である。
【0019】
まず図示した繰出容器1の構成について説明する。
図1、
図2に示すように本実施形態の繰出容器1は、ベース2と、カートリッジ7と、キャップ11で構成されている。またベース2は、ベース本体3と、底蓋体4と、回転体5、軸体6で構成されていて、カートリッジ7は、カートリッジ本体8と、中皿9Aと、カバー10で構成されている。これらの部材は、何れも中心軸Oを中心とする形状で形作られていて、本実施形態では何れも合成樹脂により形成されている。なおカートリッジ7の内部には、
図7に示すように棒状内容物Cが設けられているが、
図1等では棒状内容物Cを省略している。また中皿9Aは、後述するようにバック充填用の中皿である。
【0020】
ベース本体3は、筒状になる下側外周壁3aを備えている。下側外周壁3aは、
図5に示したカートリッジ本体8の上側外周壁8aと同様に、平面視で扁平形状(本実施形態ではトラック形状)をなすものである。下側外周壁3aの下端部には、下側外周壁3aよりも厚みの薄い嵌合壁3bが設けられている。下側外周壁3aの上下方向中間部における平面視で短手方向に位置する部位には、
図2に示すように下側外周壁3aを径方向に貫通する開口部3cが設けられている。そして、下側外周壁3aの上部における平面視で長手方向に位置する部位には、
図1に示すように下側外周壁3aを径方向に貫通する一対の穴部3dが設けられている。
【0021】
底蓋体4は、下側外周壁3aと同様に平面視でトラック形状に形作られている。底蓋体4の外縁部には、嵌合壁3bに嵌合する嵌合凹部4aが設けられている。そして底蓋体4の中央部には、円環状になる内側環状壁4bが設けられている。
【0022】
図1、
図2、
図3に示すように回転体5は、中心軸Oに沿って延在する筒状壁5aを備えている。筒状壁5aは、外周面が円形状で内周面が多角形状(本実施形態では2つの正六角形が中心軸O周りに30°ずれた形状)である。筒状壁5aの外径は、内側環状壁4bの内径よりも若干小さくなっていて、筒状壁5aは内側環状壁4bによって径方向に支持されている。すなわち回転体5は、筒状壁5aと内側環状壁4bによって底蓋体4に対して回転可能に支持されている。筒状壁5aの上方には、径方向内側に向けて突出するストッパー5bが設けられている。そしてストッパー5bの上方には、円環状になる規制壁5cが設けられている。
【0023】
また回転体5は、筒状壁5aから径方向外側に向けて延在した後、下方に向けて延在する操作壁5dを備えている。操作壁5dは、
図2に示すように開口部3cを設けたところに位置していて、操作壁5dの外周面は開口部3cから外側に露出している。
【0024】
図1、
図2、
図4に示すように軸体6は、中心軸Oに沿って延在する円筒状の筒状部6aを備えている。筒状部6aの外周面には、螺旋状に延在する雄ねじ状の第一螺合部6bが設けられている。そして筒状部6aの上部には、径方向外側に向けて突出して外向き爪状をなしていて筒状部6aに連結する第一係合部6cが設けられている。第一係合部6cは、筒状部6aに対して径方向内側に弾性変形可能である。
【0025】
また軸体6は、筒状部6aの下端部から径方向外側に向けて延在する板状の抜け止め部6eを備えている。抜け止め部6eは、本実施形態では筒状壁5aの内周面に対して回り止めされる機能も備えている。回り止め機能を具備させるため、本実施形態の抜け止め部6eは、筒状壁5aの内周面の形状に対応させて正六角形状に形作られている。なお筒状壁5aの内周面の形状と抜け止め部6eの形状は、正六角形状に限られず、三角形状でも四角形状でもよい。また抜け止め部6eは、筒状壁5aの内側に挿入される大きさで形作られている。すなわち、抜け止め部6eを筒状壁5aの内側に挿入した状態で回転体5を回転させると、軸体6は回転体5とともに回転する。なおこの状態で軸体6は回転体5に対して中心軸Oに沿う向きに移動可能であるが、抜け止め部6eはストッパー5bよりも大きいため、軸体6が回転体5に対して上方に抜け出すことはない。
【0026】
カートリッジ本体8は、
図5(a)に示すように平面視でトラック形状になる筒状の上側外周壁8aを備えている。ここで上側外周壁8aにおける上部の開口を繰出口8a1と称する。上側外周壁8aの下端部には、水平方向に延在する板状壁8bが設けられている。板状壁8bの中央部には、中心軸Oを中心とする円形貫通孔8cが設けられている。また板状壁8bは、円形貫通孔8cに対して平面視で長手方向外側に一対の弾性片8dを備えている。本実施形態の弾性片8dは、一端部が板状壁8bと連結し、そこから下方に向けて延在した後に径方向内側に向けて延在して更に下方に向けて延在する形状で形作られている。弾性片8dは、板状壁8bと連結する部位を起点として径方向外側に撓むように弾性変形可能である。また弾性片8dにおける最も下方に位置する部位の内周面には、螺旋状に延在する雌ねじ状の第二螺合部8eが設けられている。
【0027】
また板状壁8bには、弾性片8dに対して平面視で長手方向外側に、平面視で矩形状になる矩形貫通孔8fが設けられている。矩形貫通孔8fの内側には、カートリッジ本体側係合部8gが設けられている。本実施形態のカートリッジ本体側係合部8gは、
図5(b)に示すように爪状をなすように形作られている。またカートリッジ本体側係合部8gは、板状壁8bにおける長手方向外側で板状壁8bに連結していて、径方向外側に向けて弾性変形可能である。なお
図5(a)に示すように矩形貫通孔8fの内側には、板状壁8bにおける短手方向に位置し、カートリッジ本体側係合部8gと板状壁8bとを連結する薄板幅狭状の弱化部8hが設けられている。弱化部8hは破断可能であって、これが破断した状態においてカートリッジ本体側係合部8gは弾性変形可能であるが、弱化部8hがカートリッジ本体側係合部8gと板状壁8bに連結している状態においてはカートリッジ本体側係合部8gの弾性変形は抑制される。
【0028】
更にカートリッジ本体8は、板状壁8bから下方に向けて延在する筒状のガイド8jを備えている。ガイド8jにおける平面視で長手方向外側には、径方向内側に向けて弾性変形可能であって、径方向外側の側面を膨出させた爪部8kが設けられている。
図1に示したように爪部8kにおける径方向外側に向けて膨出する部分は、径方向内側から穴部3dに挿入される。そしてこの膨出する部分の上面は、水平方向に延在していて、穴部3dにおける上面に係合する。またこの膨出する部分の下面には、下方に向けて径方向内側に傾く傾斜面8mが設けられている。
【0029】
図1、
図2、
図6に示すように中皿9Aは、上側外周壁8aの径方向内側に位置し、平面視で上側外周壁8aよりも一回り小さいトラック形状になる板状の底壁9aを備えている。底壁9aの外縁部には、上方に向けて上側外周壁8aの内周面に沿って延在する中皿外周壁9bが設けられている。中皿外周壁9bの径方向内側には、上方に向かうにつれて径方向外側に向けて傾く突出壁9cが設けられている。なお図示は省略するが、中皿9Aの内側には、棒状内容物が設けられていて、棒状内容物は底壁9aより下方から支持される。また底壁9aで支持された棒状内容物には、突出壁9cが埋入されている。
【0030】
底壁9aの中央部には、底壁9aを貫通する円形の挿入口9dが設けられている。そして底壁9aの下面には、挿入口9dを取り囲む円筒状の挿入筒9eが設けられている。挿入口9dと挿入筒9eは、後述するように棒状内容物を形成するための充填ノズルが差し込まれる部位である。また
図1に示すように底壁9aの下面には、筒状部6aの径方向外側に位置するとともに径方向内側に向けて突出して内向き爪状をなしていて底壁9aに連結する第二係合部9gが設けられている。
【0031】
更に底壁9aは、その下面に中皿側係合部9fを備えている。本実施形態の中皿側係合部9fは、
図1に示すように爪状に形作られていて、カートリッジ本体側係合部8gに係合させることができる。
【0032】
カバー10は、繰出口8a1を閉鎖するカバー頂壁10aを備えている。本実施形態のカバー頂壁10aは、中央部は水平方向に延在していて、外縁部に向かうにつれて湾曲しながら下方に向けて延在する形状で形作られている。カバー頂壁10aの外縁部は、上側外周壁8aの内側に挿入されて、カバー10はカートリッジ本体8に嵌合保持される。またカバー頂壁10aの外縁部には、上方に向けて延在して上端部が径方向外側に向けて広がるカバー外周壁10bを備えている。
【0033】
キャップ11は、カバー10の上方に位置する板状のキャップ頂壁11aと、キャップ頂壁11aの外縁部から下方に向けて延在し、カバー外周壁10bや上側外周壁8a、下側外周壁3a、爪部8k等を取り囲むキャップ外周壁11bを備えている。なおキャップ外周壁11bは、下側外周壁3aに着脱可能に嵌合されるように構成されていて、キャップ11はベース本体3に保持される。
【0034】
次に、
図7を参照しながらバック充填によってカートリッジ7に内容物を充填する方法について説明する。まず、カートリッジ本体8に中皿9Aを挿入して、カートリッジ本体側係合部8gと中皿側係合部9fとを係合させる。これにより中皿9Aは、底壁9aが板状壁8bに近づいた位置でカートリッジ本体8に保持される。なおこの状態において、
図5(a)に示した弱化部8hは、カートリッジ本体側係合部8gに連結している。すなわち、カートリッジ本体側係合部8gは、弾性変形が抑制された状態で中皿側係合部9fと係合しているため、カートリッジ本体8に対する中皿9Aの抜け出しが防止される。そしてカバー10をカートリッジ本体8に嵌合させた後、
図7(a)に示すように、カバー10が下方に位置するようにカートリッジ7を倒立姿勢に変位させる。上述したようにカバー外周壁10bの上端部は径方向外側に向けて広がっているため、カートリッジ7を机等の上に載置した際、倒立姿勢のカートリッジ7を安定的に支持することができる。
【0035】
そして倒立姿勢のカートリッジ7に対し、上方から充填ノズルNを近づけて、これを挿入筒9e及び挿入口9dに挿入する。そしてカバー10と上側外周壁8aで区画される内部空間に、溶融した状態の内容物を充填ノズルNから吐出してこの内部空間に充填する。内容物を必要量充填した後は、これを内部空間で固化させることにより、
図7(b)に示すように棒状内容物Cがカートリッジ7の内部に設けられる。
【0036】
次に、繰出容器1の使用方法について、図面を参照しながら説明する。なお
図1、
図2は、
図7に示した棒状内容物Cを備えるカートリッジ7をベース2に装着した直後の状態(棒状内容物Cの図示は省略)を示している。カートリッジ7をベース2に装着した際、爪部8kは穴部3dに係合しているため、カートリッジ7はベース2から不用意に外れることはない。また第二係合部9gは第一係合部6cの上方に位置していて両者は非係合の状態にある一方、中皿側係合部9fはカートリッジ本体側係合部8gに係合しているため、カートリッジ本体8に対して中皿9Aが抜け出すことはない。なおこの状態において、第一螺合部6bと第二螺合部8eは螺合している。また弾性片8dの下端部は、規制壁5cの径方向内側に位置していて、弾性片8dの径方向外側への過度の弾性変形は規制壁5cによって規制されている。
【0037】
次いで、カバー10とキャップ11を取り外した後、第二螺合部8eに対して第一螺合部6bが上昇する向きに回転体5を回転させる。上述したように、回転体5を回転させると軸体6も回転するため、螺合する第一螺合部6bと第二螺合部8eによって軸体6は、
図8に示すようにカートリッジ本体8に対して上昇する。上述したように第一係合部6cは、筒状部6aに対して径方向内側に弾性変形可能である。従って軸体6が上昇することにより、第一係合部6cは第二係合部9gを乗り越えてこれに係合する。これにより回転体5の回転に応じて軸体6とともに中皿9Aを上下動させることができるため、中皿9Aの底壁9aで支持した不図示の棒状内容物をカートリッジ本体8の繰出口8a1から繰り出して塗布先に塗布し、塗布後は棒状内容物を繰り入れてカートリッジ本体8の内側に収容することができる。
【0038】
また中皿9Aが最初に上昇した際、中皿側係合部9fに係合するカートリッジ本体側係合部8gも引き上げられるため、
図5(a)に示した弱化部8hは破断し、カートリッジ本体側係合部8gは弾性変形可能な状態になる。すなわち、弱化部8hを破断させた後、中皿9Aを下降させると、カートリッジ本体側係合部8gは弾性変形して中皿側係合部9fとは非係合の状態(
図10参照)になるため、カートリッジ本体側係合部8gが中皿9Aの上昇の妨げになることはない。
【0039】
カートリッジ本体8の上端部に至るまで中皿9Aを繰り出して棒状内容物を使い切った後は、使用後のカートリッジ7を新たなカートリッジ7に付け替えることが可能である。付け替えを行うにあたっては、
図9に示すようにベース2に取り付けている使用後のカートリッジ7の爪部8kを径方向内側に向けて押圧する。これにより爪部8kが径方向内側に撓むため、爪部8kと穴部3dとの係合が解除され、ベース2に対してカートリッジ7を引き上げることができる。なお、カートリッジ7を引き上げ始めると、弾性片8dの下端部は、規制壁5cよりも上昇するため、弾性片8dは径方向外側へ弾性変形可能な状態になる。また上述したように第一係合部6cは第二係合部9gに係合しているため、カートリッジ7を引き上げると中皿9Aとともに軸体6も引き上げられることになるが、軸体6が引き上げられた際、抜け止め部6eがストッパー5bに係合するため、軸体6が回転体5に対して上方に抜け出すことはない。
【0040】
カートリッジ7を引き上げていくと、軸体6と中皿9Aに対してカートリッジ本体8が上昇する。このとき第一螺合部6bと第二螺合部8eは螺合しているが、弾性片8dは径方向外側へ弾性変形して両者の螺合は解除されるため、軸体6に対してカートリッジ本体8を上昇させることができる。
【0041】
そしてカートリッジ7の引き上げを継続し、カートリッジ本体8が中皿9Aに対して下方から接触する状態になると、カートリッジ本体8とともに中皿9Aも引き上げられるため、その際の力によって第一係合部6cが径方向内側に弾性変形して第二係合部9gと第一係合部6cとの係合が解除され、
図10に示すように軸体6から中皿9Aを分離させることができる。すなわち本実施形態の繰出容器1において、カートリッジ7としてベース2から取り外される部材は、カートリッジ本体8と中皿9Aのみである。なお第二係合部9gと第一係合部6cとの係合が解除された後は、軸体6は自重により下方へ移動する。
【0042】
使用後のカートリッジ7を取り外した後は、ベース2の上方から新たなカートリッジ7を挿入することにより、カートリッジ7をベース2に取り付けることができる。上述したように爪部8kの下面には、下方に向けて径方向内側に傾く傾斜面8mが設けられている。すなわち、カートリッジ7をベース本体3に挿入していくと、傾斜面8mが下側外周壁3aの上端面に接触して爪部8kが径方向内側に撓むため、指で爪部8kを押圧せずともカートリッジ7をベース本体3に取り付けることができる。
【0043】
このように本実施形態の繰出容器1によれば、棒状内容物を使用した後はベース2やキャップ11を再利用することができるため、特許文献2の如き従来の繰出容器に比して、省資源化や環境への負荷削減の点で優れている。
【0044】
本実施形態の繰出容器1では、上述したバック充填用の中皿9Aに変えて、
図11に示す中皿9Bを用いることにより、棒状内容物を直充填により形成することも可能である。
【0045】
図11に示した中皿9Bは、上述した中皿9Aと同様の底壁9a、中皿外周壁9b、突出壁9c、中皿側係合部9f、第二係合部9gを備える一方、上述した挿入口9dと挿入筒9eは廃止している。すなわち中皿9Bにおける底壁9aにおいて、第二係合部9gの径方向内側は閉鎖されている。
【0046】
図12は、中皿9Bを用いたカートリッジ7に対して直充填によって内容物を充填する状況について示している。直充填を行う場合も、カートリッジ本体8に中皿9Bを挿入して、カートリッジ本体側係合部8gと中皿側係合部9fとを係合させる。
【0047】
そして
図12(a)に示すように、正立姿勢のカートリッジ7に対し、上方から充填ノズルNを近づけて、これを繰出口8a1に挿入する。そして底壁9aと上側外周壁8aで区画される内部空間に、溶融した状態の内容物を充填ノズルNから吐出してこの内部空間に充填する。内容物を必要量充填した後は、これを内部空間で固化させることにより、
図12(b)に示すように棒状内容物Cがカートリッジ7の内部に設けられる。
【0048】
なお、中皿9Bを用いたカートリッジ7も、第二螺合部8eや第二係合部9gの形状は中皿9Aを用いたカートリッジ7と同様であるため、上述したようにベース2に装着して棒状内容物Cを使用することができる。
【0049】
繰出容器1は、
図13、
図14に示したように構成してもよい。
図13、
図14に示した繰出容器1は、概ね
図1、
図2に示したものと同じような構成である一方、中皿9Aに替えて中皿9Cを用いたところが相違する。
【0050】
中皿9Cは、上述した中皿9Aと同様の底壁9a、中皿外周壁9b、突出壁9c、挿入口9d、中皿側係合部9fを備える一方、上述した挿入筒9eは廃止している。また第二係合部9gに替えて、第二係合部9hを備えている。第二係合部9hの上部は、挿入口9dの径方向外側において底壁9aの下面と連結し、そこから下方に向けて延在した後、径方向外側に延在している。そして第二係合部9hの下部は、上部における径方向外側に延在した部位から下方に向けて延在し、その内周面には径方向内側に向けて突出する部位が設けられていて内向き爪状に形作られている。ここで第二係合部9hの下部は、図示したように筒状部6aの径方向外側に位置している。
【0051】
中皿9Cは、バック充填用の中皿である。中皿9Cを用いたカートリッジ7に内容物を充填するにあたっては、
図15に示すようにカートリッジ本体8に中皿9Cを挿入してカートリッジ本体側係合部8gと中皿側係合部9fとを係合させ、更にカバー10をカートリッジ本体8に嵌合させた後、図示したようにカバー10が下方に位置するようにカートリッジ7を倒立姿勢に変位させる。そして倒立姿勢のカートリッジ7に対し、上方から充填ノズルNを近づけてこれを挿入口9dに挿入し、カバー10と上側外周壁8aで区画される内部空間に溶融した状態の内容物を充填ノズルNから吐出する。その後は、内部空間に充填された内容物を固化させることにより、カートリッジ7の内部に棒状内容物を設けることができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0053】
例えば上述した実施形態では、カートリッジ本体8に設けた弱化部8hをカートリッジ本体側係合部8gと連結させたが、中皿9Aに弱化部を設けてこの弱化部と中皿側係合部9fを連結させてもよい。また上述した実施形態では、カートリッジ本体8に爪部8kを設け、ベース本体3に穴部3dを設けたが、カートリッジ本体8に穴部を設け、ベース本体3に爪部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:繰出容器
2:ベース
3:ベース本体
3a:下側外周壁
3b:嵌合壁
3c:開口部
3d:穴部
4:底蓋体
4a:嵌合凹部
4b:内側環状壁
5:回転体
5a:筒状壁
5b:ストッパー
5c:規制壁
5d:操作壁
6:軸体
6a:筒状部
6b:第一螺合部
6c:第一係合部
6e:抜け止め部
7:カートリッジ
8:カートリッジ本体
8a:上側外周壁
8a1:繰出口
8b:板状壁
8c:円形貫通孔
8d:弾性片
8e:第二螺合部
8f:矩形貫通孔
8g:カートリッジ本体側係合部
8h:弱化部
8j:ガイド
8k:爪部
8m:傾斜面
9A、9B、9C:中皿
9a:底壁
9b:中皿外周壁
9c:突出壁
9d:挿入口
9e:挿入筒
9f:中皿側係合部
9g、9h:第二係合部
10:カバー
10a:カバー頂壁
10b:カバー外周壁
11:キャップ
11a:キャップ頂壁
11b:キャップ外周壁
C:棒状内容物
N:充填ノズル
O:中心軸